説明

換気システム

【課題】 各室内空間の在室人数に応じて、導入する外気の量を調整し、且つ外気の増減に応じてダクトへの外気送給量も調整して、簡略な構成で各室内空間での換気量を適切なものとしつつ、換気に係るコストを抑制できる換気システムを提供する。
【解決手段】 外気をダクト10を介して各室内空間70の吹出口71、72に送込む際、人感センサ30での検出結果から推定した室内空間70での在室人数が十分多い場合には、吹出口上流側の定風量調整部11、12を十分な量の外気の通過状態とする一方、在室人数が数人以下の場合には、定風量調整部11、12における外気の通過を抑制して、在室人数に応じた換気を行うことから、換気不良を防止しつつ、室内空間の空調負荷を低減できる。また、定風量調整部11、12の動作切替えに伴うダクト圧力の変化に対応して送風機20を制御することで、簡略な制御構成ながら換気に係るエネルギー消費を抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外から取入れた空気を、ダクトを介して室内に送給して換気を行う換気システムに関し、特に、人感センサにより検出した人の在室状況に応じて換気量を制御するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物における各室内空間では、人の在室によって二酸化炭素等の濃度が高くなった室内空気の所定量を新鮮な外気と入換え、室内空気の一定の清浄度を維持する換気が必要である。換気では、室内空間に在室する人数に応じた空気量の入換えが要求されており、こうした換気に際しては、通常、外部空間から室内空間に外気を取入れつつ、室内空間の汚れた空気を外部に排出する、換気のための設備を用いる。
【0003】
このような換気のための設備として、近年、省エネルギー性を重視したものが採用されるようになっている。特に、外部空間から外気を取入れ、この外気を室内空間に送込む一方、室内空間の汚れた空気を取込んで外部に排出し、その過程で、外部から取入れた外気と、排出しようとする室内側の空気とを熱交換させて、外気の温度を室内空気の温度に近付け、室内空間に入る外気の温度調整に要するエネルギー消費を抑えられる換気装置を用いる例が増えている。このような従来の換気装置の例として、特開平5−223306号公報や、特開平9−133386号公報等に開示されるものがある。
【0004】
前記従来の換気装置は、室内空間又はその近傍の天井裏空間等に配設されて、外部空間から外気を取入れ、この外気を室内空間に送込む機能と、室内空間の汚れた空気を取込んで外部に排出する機能とを一つの装置にまとめており、さらに、外部から取入れた外気と、排出しようとする室内側の空気とを、装置内部の熱交換器で熱交換させ、外気温度を室内空気温度に近付ける温度調整を行った上で室内空間へ送出せるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−223306号公報
【特許文献2】特開平9−133386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の換気装置は前記各特許文献に示される構成となっており、装置内の熱交換器で、外気と室内空気とを熱交換させ、外気温度を室内空気温度に近付けられる分、室内空間における空気調和負荷、すなわち、室内空間の空気調和機による、外気を室内空気と同じ温度に調整するのに要するエネルギー、を大きく低減でき、空気調和の面で省エネルギー化が図れる。
【0007】
しかしながら、建物が大規模なオフィスビルや学校など、建物内に部屋が多く存在するものに、こうした従来の熱交換型の換気装置を採用する場合、換気装置が少なくとも一部屋に一つは必要となるため、多数の換気装置の設置を要することとなり、設備のコストだけでなく、各換気装置ごとに行う必要のある、例えば熱交換器入口側のフィルターの定期交換等の、メンテナンスコストも大きなものとなってしまうという課題を有していた。
【0008】
一方、部屋ごとの換気装置による換気とは異なり、外部空間から取入れた外気を中央の空調機からダクトを介して各室内空間に送給し、室内空間への外気導入による換気を行えるものが従来から広く知られていた。こうした中央管理方式のシステムの場合でも、各室内空間に設けたセンサで検出した在室人数により変風量装置を制御して、各室内空間への外気供給量の調整を行い、在室人数に応じた適切な外気供給を確保すると共に、在室人数が少ない場合には、必要以上の外気を取入れないようにして、空調負荷を抑え、省エネルギー化を図れるものが用いられている。
【0009】
ただし、こうしたシステムで省エネルギー化を実現するためには、制御部において、センサで得られた在室人数に応じた外気供給量を演算し、それに基づいて中央の空調機制御や、各室内空間に対応した変風量装置のダンパ開度調整制御を行うなど、室内温度調整など他の制御と両立させる複雑な制御処理が要求されることから、制御系が複雑化して、コスト上昇を招いてしまうという課題を有していた。
【0010】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、外部からまとめて取入れた外気を、ダクトを介して複数の室内空間に分配、導入すると共に、各室内空間の在室人数に応じて室内空間ごとに導入する外気の量を調整し、且つダクトでの各室内空間へ向う外気量の増減に応じてダクトへの外気送給量も調整するようにして、簡略な構成で各室内空間での換気量を適切なものとしつつ、換気系統全体での省エネルギー化を図り、換気に係るコストを抑制できる換気システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る換気システムは、外部空間から取入れられた外気を室内空間に供給して、室内空間の換気を行う換気システムにおいて、外部空間に面した外気の取入口、及び、複数の室内空間に面して配設された複数の吹出口にそれぞれ連通し、外部空間から取入れられた外気を各室内空間の吹出口に分配するダクトと、当該ダクトの外気取入口近傍に接続され、ダクトを通じて外気を所定圧力で各吹出口に送給する送風機と、各吹出口の近傍位置でダクトの途中に介在する状態として配設され、吹出口を経て室内空間へ向う外気の流量をあらかじめ設定された値に調整する定風量調整部と、室内空間と外部空間とに連通し、室内空気を外部空間に導く排気通路と、室内空間に複数配設され、所定検出範囲内における人の存在の有無を検出する人感センサと、室内空間の各人感センサにおける人の存在の検出状態から、室内空間における在室人数が所定の閾値より多いとみなせる場合は、前記室内空間の吹出口に対応する定風量調整部における外気流量を所定の最大流量に、また、前記在室人数が前記閾値より少ないとみなせる場合は、前記室内空間における少なくとも一つの吹出口に対応する定風量調整部における外気流量を0又は所定の最小流量に、それぞれ切替える制御を行う換気量制御部と、前記ダクト内の圧力を検出する圧力センサと、当該圧力センサの検出結果に基づいて送風機による外気の送給量を調整する送風機制御部とを備えるものである。
【0012】
このように本発明によれば、外部空間から取入れた外気を、送風機でダクトを介して各室内空間の吹出口に送込むと共に、この吹出口の上流側に定風量調整部を配設し、また、室内空間に設けた人感センサで室内空間での人の存在状態を検出し、制御部で室内空間の在室人数を推定して、得られた在室人数が十分多く、室内空間の二酸化炭素濃度が上昇しやすい場合には、定風量調整部を十分な所定量の外気が室内空間側へ通過する状態とする一方、在室人数が数人以下となって大量の外気導入が要求されない状況では、定風量調整部を外気の室内空間側への通過を抑制する状態として、室内空間の換気量を状況に応じた最適な状態とすることにより、室内空間における換気不良を防止して、室内空気の良好な状態を維持できることに加え、室内空間の在室人数が少ない場合には、換気を継続しつつ換気量を抑えて、室内空間の空調負荷を低減できる。また、定風量調整部の動作切替えに伴うダクト圧力の変化に対応して送風機を制御することで、送風機出力も抑えられ、換気に係るエネルギー消費を小さくすることができ、簡略な制御構成ながら効率よくシステムを運用でき、換気に係るコストの抑制が図れる。さらに、中央の送風機制御と、各室内空間に対応する定風量調整部の在室人数に基づく制御とを相互に接続、連係させて制御を行う必要が無く、独立させて運用できるため、制御系を簡略化でき、換気調整を行う部屋の追加、削減も容易である。
【0013】
また、本発明に係る換気システムは必要に応じて、同じ室内空間における各人感センサが、センサ検出範囲が重ならない配置として配設され、前記換気量制御部が、室内空間の各人感センサにおける人の存在を検出した信号の波形における所定時間あたりの変化の頻度から、室内空間における在室人数を推定し、在室人数が所定の閾値より多い場合は、定風量調整部における外気流量を前記最大流量とする一方、在室人数が所定の閾値より少ない場合は、定風量調整部における外気流量を0又は前記最小流量とするよう制御するものである。
【0014】
このように本発明によれば、室内空間の在室人数が多くなると、人感センサによる検出機会も増える事象を利用して、換気量制御部において、人感センサの出力信号波形にあらわれる人の検出に伴う変化の頻度から、室内空間の在室人数の推定を実行し、得られた在室人数の推定値に基づいて定風量調整部の動作状態を切替えることにより、人の存在の有無のみを検出する人感センサから適切に概略の在室人数を把握して制御に用いることができ、人感センサを多数用いなくても適切に室内空間に存在する人数に応じた定風量調整部の制御を実行でき、人感センサをより効率的に使用してその設置数を削減でき、システムのコストダウンが図れる。
【0015】
また、本発明に係る換気システムは必要に応じて、前記ダクトにおける送風機の近傍位置に配設されて、外部空間から取入れられた外気の温度を調整する温度調整部を備え、前記圧力センサにより検出されるダクト内圧力が、各室内空間に対応する定風量調整部がいずれも室内空間への外気の供給流量を抑えた状態に切替えられた場合に相当する圧力になると、外気の温度調整を停止するものである。
【0016】
このように本発明によれば、いずれの室内空間においても、人感センサが在室人数の少ないことを検出し、換気量制御部が定風量調整部を室内空間への外気流量を抑えた状態にすると、この状態への移行に伴い上昇したダクト内圧力が圧力センサで検出され、この圧力の検出に基づいて、送風機で送給される外気の温度調整が一旦停止されることにより、各室内空間で換気が停止か最小限の換気量で行われている場合に、ほとんど不要となる外気の温度調整を省略して、温度調整用に供給される外部からのエネルギーを削減することができ、さらに省エネルギー化を実現して換気に係るコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る換気システムの概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る換気システムを適用した室内空間の要部概略説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る換気システムのブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る換気システムにおける最大換気状態の概略説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る換気システムにおける中間換気状態の概略説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る換気システムにおける最小換気状態の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る換気システムを前記図1ないし図6に基づいて説明する。本実施形態においては、建物内の多数の室内空間ごとに設置された空気調和機による個別の空気調和が行われる状況で、各室内空間に対する換気を行う例を説明する。
【0019】
前記各図において本実施形態に係る換気システムは、建物に対する外部空間80から取入れられた外気を建物内の多数の室内空間70の吹出口71、72に分配供給するダクト10と、このダクト10の外気取入口近傍に接続され、ダクト10を通じて外気を所定圧力で各吹出口71、72に送給する送風機20と、吹出口71、72の近傍におけるダクト10の途中に介在する状態で配設される定風量調整部11、12と、室内空間70と外部空間80との間に配設されて前記各空間と連通する排気通路73と、室内空間70に複数配設され、室内空間70の所定検出範囲内における人の存在の有無を検出する人感センサ30と、この人感センサ30の検出状態に応じて、前記定風量調整部11、12の動作状態を切替えて室内空間70への外気の供給量を変化させる換気量制御部40と、ダクト10内の圧力を検出する圧力センサ50と、この圧力センサ50の検出結果に基づいて送風機20による外気の送給量を調整する送風機制御部60とを備える構成である。
【0020】
前記ダクト10は、建物における外部空間80に面した外気の取入口、及び、各室内空間70に面して配設された複数の吹出口71、72にそれぞれ連通し、取入口から各室内空間70の複数の吹出口71、72に至る間に複数分岐した管路として、建物内に配設されるものである。
【0021】
このダクト10で、外部空間80から導入した外気を、室内空間70側の端部に接続した吹出口71、72まで到達させることで、吹出口71、72から室内空間70に外気を吹出して換気を行えることとなる。
【0022】
前記送風機20は、各室内空間70の吹出口71、72に向けて外気を圧送可能にダクト途中に配設されるものである。送風機構そのものは公知の機構であり、詳細な説明を省略する。
この送風機20の近傍には、外部空間80から取入れられた外気の温度を調整する温度調整部21が配設されており、取入れた直後の外気を加熱及び/又は冷却して、夏季、冬季、中間季のそれぞれで所定の温度に調整し、室内空間に導入された外気と、室内空間における空気調和の設定温度との過剰な温度差が生じるのを防いで、空調負荷を抑制する仕組みである。
【0023】
前記定風量調整部11、12は、通過風速を検出するセンサや、開度を調整するダンパを内蔵して、ダクトの静圧が変化してもあらかじめ設定された風量を維持するよう調整制御を行う公知の装置であり、詳細な説明を省略する。この定風量調整部11、12が、換気量制御部40からの制御信号を受けて、設定風量を切替え、室内空間へ向う外気の流量(風量)を、あらかじめ設定された最大流量と、0又は最小流量との二段階に調整することとなる。
【0024】
例えば、室内空間70に面して二つの吹出口71、72が設置される場合、在室人数が多く二つの定風量調整部11、12が最大流量となっている最大換気状態から、在室人数が少ない状況に至ると、一方の吹出口71と連通する定風量調整部11が、換気量制御部40による制御で、室内空間へ向う外気の流量を0とするのに対し、他方の吹出口72と連通する定風量調整部12の方は、室内空間へ向う外気の流量を最大流量のまま変化させないようにして、この他方の吹出口72からのみ外気が吹出されて、換気に供される状態(中間換気状態)が得られる。さらに、在室人数が0となった状況では、換気量制御部40による制御で、他方の吹出口72と連通する定風量調整部12が、室内空間へ向う外気の流量を最小流量とすることで、室内空間には他方の吹出口72からのみ必要最小限の外気が吹出される最小換気状態となり(図6参照)、二つの定風量調整部11、12で、室内空間70に対し外気流量の異なる三段階の換気状態が得られる仕組みである。
【0025】
前記排気通路73は、室内空間への人の出入口となるドアや戸の下部に設けられる隙間であり、室内空間70と外部空間80とのいずれにも連通して、ダクト10を通じた外気の導入で室内空間70の圧力が外部空間80より高くなるのに伴い、室内空間70の空気の一部を外部空間80へ向けて排出するものである。その構造自体はこうした換気における室内空気の外部空間への排出用として利用される公知の設備と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0026】
前記人感センサ30は、人の動きに伴う入射赤外線の変化を検出して電気信号を出力する公知の焦電型の人体検出用センサであり、詳細な説明を省略する。この人感センサ30は、室内空間70の天井に、検出部分の天井面からの突出量を調整されて、室内空間70におけるセンサの検出範囲が適切な大きさで得られ、且つ検出範囲が互いに近接しながらも重ならないようにして複数配設され、各々から出力された信号が換気量制御部40に入力される。
【0027】
前記換気量制御部40は、各人感センサ30の検出信号を受取り、各検出信号から、それぞれの人感センサ30の検出範囲における人の存在の有無を識別すると共に、各人感センサ30における人の存在を検出した信号の波形における所定時間あたりの変化の頻度から、室内空間70における在室人数の大小を推定し、在室人数が所定の閾値、すなわち、室内空間ごとの空気中の二酸化炭素濃度が上昇しやすくなる在室人数の下限値、より多い場合は、定風量調整部11、12における外気流量を最大流量とする一方、在室人数が前記閾値より少ない場合は、定風量調整部11、12における外気流量を0又は最小流量とする制御を行うものである。
【0028】
室内空間70の在室人数が多くなると、在室人数が少ない場合と比べて、人感センサ30による検出機会も増え、人感センサ30の出力信号波形にあらわれる人の検出に伴う変化の頻度が増大することから、換気量制御部40では、このセンサ出力信号波形の変化の頻度を解析して在室人数の推定を実行する。例えば、換気量制御部40は、あらかじめ、室内空間70ごとの空気中の二酸化炭素濃度が上昇しやすくなる在室人数の下限に相当する人数が在室している場合における、人感センサ30の出力信号波形の変化頻度を記録して、実際の室内空間70で人感センサ30の出力信号波形にあらわれる人の検出に伴う変化の頻度を取得して比較解析し、頻度の大小関係から、実際の在室人数が閾値、すなわち前記空気中の二酸化炭素濃度が上昇しやすくなる在室人数の下限値、を上回るか、逆に下回るかを判定することとなる。
【0029】
人の存在の有無のみを検出する人感センサの出力信号から、適切に概略の在室人数を把握して制御に用いることで、人感センサを多数用いなくても適切に室内空間70に存在する人数に応じた定風量調整部11、12の制御を換気量制御部40で実行でき、こうした効率的な使用により、在室人数に対し人感センサ30の設置数を少なくすることができる。
【0030】
前記送風機制御部60は、外部からの指令に基づいて送風機20の送風動作を開始又は停止させる一方、ダクト10内の所定箇所に配設された圧力センサ50の、ダクト内圧力の検出に伴って出力した信号を受取り、この信号から判別できるダクト内圧力の大きさに基づいて送風機20の送給能力を増減変化させ、ダクト10を通じた各吹出口71、72への外気の送給量を調整するものである。
【0031】
各室内空間に対応する定風量調整部11、12が、在室人数の関係で最大流量状態から最小流量状態又は閉止状態(流量0の状態)に切替えられると、ダクト内圧力は大きくなり、逆に定風量調整部11、12が、室内空間における在室人数の増加で最小流量状態又は閉止状態から最大流量状態に切替えられると、ダクト内圧力は小さくなる。下流側の定風量調整部11、12が最小流量状態又は閉止状態の場合には、送風機20側では外気の送給能力は小さくても済み、逆に定風量調整部11、12が最大流量状態の場合には、送風機20側では外気の送給能力を大きくする必要があることから、この定風量調整部11、12の変化に対応したダクト内圧力の変化を圧力センサ50で検出し、送風機制御部60で送風機20を制御することで、極めて簡略な制御機構ながら、定風量調整部11、12の状態に送風機20の動作を適切に対応させられ、無駄のない外気の送給が可能となる。
【0032】
次に、前記構成に基づく換気システムにおける換気状態の調整動作について説明する。まず、送風機20がダクト10を通じて外気を各室内空間側に送給している定常状態で、室内空間70に人が多数存在している場合、室内空間70の人感センサ30により人の存在が検出され、換気量制御部40で室内空間70に在室人数の閾値(例えば、10人)を超える人が存在していると認定されることで、この室内空間に対応する二つの定風量調整部11、12はそれぞれ最大流量状態となり、外気を十分な流量で各吹出口側へ通過させる。そして、各吹出口71、72から、在室人数に対応した換気量を実現する十分な量の外気が、室内空間に導入される最大換気状態となる(図4参照)。
【0033】
この時、各吹出口71、72からの外気導入で室内空間70の圧力が高くなり、室内空間70に元から存在した空気が、室内空間70から押出される形で、排気通路73を通じて外部空間80へ流出することで、換気、すなわち、二酸化炭素濃度の高い室内空気の一部と外気との置換、が実現する。
【0034】
こうした換気が継続して行われている中で、室内空間70に居た人が空間外に移動し、室内空間における在室人数が、空気中の二酸化炭素濃度の増加が生じにくい少人数となり、室内空間70の人感センサ30による人の検出を経て、換気量制御部40で室内空間70に在室人数の閾値を下回る人が存在していると認定されると、換気量制御部40は二つの定風量調整部11、12のうち一方を閉止状態とし、他方はそのまま最大流量状態を維持する。これにより、室内空間は他方の吹出口72からのみ外気が導入される、中間の換気状態となる(図5参照)。この状態では、少ない在室人数に対応した量の外気が室内空間に導入され、且つ室内空間70に元から存在した空気の一部が外部空間80へ流出しており、室内空間の空気は良好な状態に維持される。
【0035】
また、この時は、室内空間70への外気の導入量も少なくなっているため、室内空間70で空気調和機75により空気調和が行われている場合、その空調負荷を低減できる。すなわち、外気の流入量が少ない分、室内空気の温度とは異なる温度で流入する外気を室内空気温度に近付けるために費やされる、空気調和のためのエネルギーを抑制できる。
【0036】
さらに、換気が継続される中で、室内空間70に居た人が全て空間外に移動し、室内空間の在室人数が0、すなわち室内空間が無人となった場合、室内空間70の人感センサ30による人の検出がなされず、換気量制御部40で室内空間70に人が存在しないと認定されると、換気量制御部40は二つの定風量調整部11、12のうち一方を閉止状態としたまま、他方を最小流量状態に変化させる。これにより、室内空間は他方の吹出口72からのみ少量の外気が導入される、最小換気状態となる(図6参照)。この状態でも、必要最小限の外気が室内空間に導入され、且つ室内空間70に元から存在した空気の一部が外部空間80へ流出しており、室内空間の空気は良好な状態に維持される。
【0037】
このような換気量制御部40による制御で、換気状態を最大換気状態から中間換気状態、さらに最小換気状態に変えるために、各定風量調整部11、12が最大流量状態から最小流量状態又は閉止状態に切替ると、その定風量調整部11、12の対応する室内空間70へ向う外気に対する圧力損失が増大することから、その分ダクト10内の圧力が大きくなる。こうした定風量調整部11、12の変化に基づくダクト内圧力の変化は圧力センサ50で検出され、圧力センサ50の信号を受けた送風機制御部60により、送風機20は外気の送給能力を抑えるように調整制御されることとなる。これにより、定風量調整部11、12が最小流量状態又は閉止状態となった室内空間70の吹出口71、72に向けて、送風機20から過剰な送給能力で外気が送られることはなくなり、送風機20の送給動作に係るエネルギー消費を抑えて、無駄なく適切に外気を送給できる。
【0038】
逆に、室内空間における在室人数の増加に伴い、換気状態を最小換気状態から中間換気状態、さらに最大換気状態に変えるために、定風量調整部11、12が、最小流量状態又は閉止状態から最大流量状態に切替えられると、ダクト内圧力はより小さく変化することとなり、このダクト内圧力の変化は圧力センサ50で検出され、圧力センサ50からの信号を受けた送風機制御部60により、送風機20は外気の送給能力を大きくするように調整制御される。こうして、送風機20から室内空間70の吹出口71、72に向けて十分な送給能力で外気が送られることとなり、在室人数の増加で室内空気の二酸化炭素濃度が高くなりやすい状況でも、適量の外気を送給して確実に換気を行え、室内空気を良好な状態に維持できる。
【0039】
このように、本実施形態に係る換気システムにおいては、外部空間80から取入れた外気を、送風機20でダクト10を介して各室内空間70の複数の吹出口71、72に送込むと共に、各吹出口71、72の上流側に定風量調整部11、12を配設し、また、室内空間70に設けた人感センサ30で室内空間70での人の存在状態を検出し、換気量制御部40で室内空間の在室人数を推定して、得られた在室人数が十分多く、室内空間の二酸化炭素濃度が上昇しやすい場合には、定風量調整部11、12を十分な所定量の外気が室内空間側へ通過する最大換気状態とする一方、在室人数が数人以下となって大量の外気導入が要求されない状況では、一つの定風量調整部12のみ外気を室内空間側へ通過させる中間換気状態として、室内空間70の換気量を状況に応じた最適な状態とすることから、室内空間70における換気不良を防止して、室内空気の良好な状態を維持できることに加え、換気を継続しつつ換気量を抑えて、室内空間70の空調負荷を低減できる。
【0040】
また、定風量調整部11、12の動作切替えに伴うダクト内圧力の変化に対応して送風機20を制御することで、外気流量の低減に合わせて送風機出力も抑えられ、換気に係るエネルギー消費を小さくすることができ、簡略な制御構成ながら効率よくシステムを運用でき、換気に係るコストの抑制が図れる。さらに、中央の送風機制御と、各室内空間に対応する定風量調整部11、12の在室人数に基づく制御とを相互に接続、連係させて制御を行う必要が無く、独立させて運用できるため、制御系を簡略化でき、換気調整を行う対象となる室内空間の追加、削減も容易である。
【0041】
なお、前記実施形態に係る換気システムにおいては、定風量調整部11、12の動作切替えに伴って、ダクト内圧力が変化した場合に、圧力センサ50でこれを検出して、送風機20の外気送給量を調整する構成としているが、この他、圧力センサ50により検出されるダクト内圧力が、各室内空間70に対応する定風量調整部11、12がいずれも室内空間70への外気の供給量を抑えた状態に切替えられた場合に相当する圧力となったら、外気の温度調整を停止する構成とすることもでき、いずれの室内空間においても、人感センサ30で在室人数が0又は少ない状態が検出されて、換気量制御部40が定風量調整部11、12を室内空間70への外気供給量を抑えた状態にすると、送風機20で送給される外気の温度調整が一旦停止されることから、各室内空間70で換気が最小限の換気量で行われている場合に、ほとんど不要となる外気の温度調整を省略して、温度調整用に供給される外部からのエネルギーを削減することができ、さらに省エネルギー化を実現して換気に係るコストを低減できる。
【0042】
また、前記実施形態に係る換気システムにおいては、人感センサ30による在室人数の検出結果に基づく定風量調整部11、12の動作切替えを、最大流量状態と最小流量状態又は閉止状態との二段階で行い、同じ室内空間に対応した二つの定風量調整部11、12が最大流量状態である最大換気状態、二つのうち一つの定風量調整部12のみが最大流量状態である中間換気状態、及び、二つの定風量調整部の一方が閉止状態で他方が最小流量状態である最小換気状態の、三段階の換気状態を生じさせる構成としているが、この他、同じ室内空間に対応する複数の定風量調整部を、いずれも最大流量状態の最大換気状態と、いずれも最小流量状態又は閉止状態である最小換気状態との、二段階の換気状態のみ生じさせるものとしたり、最大流量状態と最小流量状態の間に一又は複数の流量値を設定可能とした複数の定風量調整部11、12の、人感センサ30による在室人数の推定結果に合わせた動作切替えで、三以上の複数段階の換気状態を生じさせる構成とすることもでき、換気制御を簡略化したり、逆に在室人数により細かく適合させた換気を実行できることとなる。
【0043】
また、前記実施形態に係る換気システムにおいては、室内空間70への人の出入口となるドアや戸の下部に設けられる隙間を、室内空気を外部空間80へ導く排気通路73として用いる構成としているが、これに限らず、排気通路が、前記ダクト10より短い管路として形成され、一方の開口端部を室内空間の外部空間寄り所定箇所に連通させると共に、他方の開口端部を外部空間に連通させたものとするなど、壁等を貫通する空気の通路を特別に設ける構成とすることもでき、室内空間と外部空間を最短距離で連通させられ、こうした換気における室内空気の外部空間への排出を効率よく実行できる。
【符号の説明】
【0044】
10 ダクト
11、12 定風量調整部
20 送風機
21 温度調整部
30 人感センサ
40 換気量制御部
50 圧力センサ
60 送風機制御部
70 室内空間
71、72 吹出口
73 排気通路
75 空気調和機
80 外部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部空間から取入れられた外気を室内空間に供給して、室内空間の換気を行う換気システムにおいて、
外部空間に面した外気の取入口、及び、複数の室内空間に面して配設された複数の吹出口にそれぞれ連通し、外部空間から取入れられた外気を各室内空間の吹出口に分配するダクトと、
当該ダクトの外気取入口近傍に接続され、ダクトを通じて外気を所定圧力で各吹出口に送給する送風機と、
各吹出口の近傍位置でダクトの途中に介在する状態として配設され、吹出口を経て室内空間へ向う外気の流量をあらかじめ設定された値に調整する定風量調整部と、
室内空間と外部空間とに連通し、室内空気を外部空間に導く排気通路と、
室内空間に複数配設され、所定検出範囲内における人の存在の有無を検出する人感センサと、
室内空間の各人感センサにおける人の存在の検出状態から、室内空間における在室人数が所定の閾値より多いとみなせる場合は、前記室内空間の吹出口に対応する定風量調整部における外気流量を所定の最大流量に、また、前記在室人数が前記閾値より少ないとみなせる場合は、前記室内空間における少なくとも一つの吹出口に対応する定風量調整部における外気流量を0又は所定の最小流量に、それぞれ切替える制御を行う換気量制御部と、
前記ダクト内の圧力を検出する圧力センサと、
当該圧力センサの検出結果に基づいて送風機による外気の送給量を調整する送風機制御部とを備えることを
特徴とする換気システム。
【請求項2】
前記請求項1に記載の換気システムにおいて、
同じ室内空間における各人感センサが、センサ検出範囲が重ならない配置として配設され、
前記換気量制御部が、室内空間の各人感センサにおける人の存在を検出した信号の波形における所定時間あたりの変化の頻度から、室内空間における在室人数を推定し、在室人数が所定の閾値より多い場合は、定風量調整部における外気流量を前記最大流量とする一方、在室人数が所定の閾値より少ない場合は、定風量調整部における外気流量を0又は前記最小流量とするよう制御することを
特徴とする換気システム。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の換気システムにおいて、
前記ダクトにおける送風機の近傍位置に配設されて、外部空間から取入れられた外気の温度を調整する温度調整部を備え、
前記圧力センサにより検出されるダクト内圧力が、各室内空間に対応する定風量調整部がいずれも室内空間への外気の供給流量を抑えた状態に切替えられた場合に相当する圧力になると、外気の温度調整を停止することを
特徴とする換気システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate