説明

揮散容器

【課題】容器の開栓によって内容物の揮散効果を発現させるに当たり、開栓作業が容易となる揮散容器を提案する。
【解決手段】本発明の揮散容器は、内容物の充填空間Mを有する容器本体10と、頂部開口21を有し口部14に装着されるキャップ本体20Aと、揮散孔45を有しキャップ本体20Aにヒンジ43を介して連結される蓋体40とを備え、キャップ本体20Aは、頂部開口21より口部14の内壁に沿って伸延する内周壁24と、内周壁24の下端部を閉鎖する底部25とを備え、内周壁24は、底部25に向けて伸延する一方、上部をキャップ本体20Aから突出させる筒体30Aを有し、筒体30Aは、その上部の押し込みに伴い底部25を開放して充填空間M内の内容物を揮散させる刃部32を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香剤、消臭剤等の揮散する成分を含む内容物を、揮散孔を通して外界へ放出させる揮散容器に関するものであり、特に、開栓作業を容易に行うことができる揮散容器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器の内側に充填された、例えば芳香剤、消臭剤等の揮散する成分を含む内容物を、容器に設けた揮散孔を通して外界へ放出させる揮散容器としては、種々のものが知られている。このようなものとして例えば特許文献1には、容器本体の口部に装着され内容物を吸い上げる芯棒を保持する中栓と、この中栓に水密に嵌着される指掛けリング付き栓体と、この栓体を覆うとともに揺動変位する蓋体とを設け、リング付き蓋体の取り外しによって開栓して、蓋体を開いた状態にして内容物を揮散させる芳香剤収納容器が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平6−13724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した芳香剤収納容器において、内容物を揮散させるために指掛けリング付き栓体を取り外す開栓作業は、まずリング内に指を挿入し、次いで指を上方に向けて引き上げる、2つの動作が必要となるものである。このため、この指掛けリングによって開栓する容器よりも簡単に開栓することができる改善が、従来から強く望まれていた。
【0005】
本発明の課題は、容器の開栓によって内容物の揮散効果を発現させるに当たり、開栓作業が容易となる新たな揮散容器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、揮散する内容物の充填空間を有する容器本体と、頂部開口を有し該容器本体の口部に装着されるキャップ本体と、揮散した内容物を外界に向け放出する揮散孔を有し該キャップ本体にヒンジを介して開閉可能に連結される蓋体とを備える揮散容器であって、
前記キャップ本体は、前記頂部開口より口部内壁に沿って伸延する内周壁と、該内周壁の下端部を閉鎖して該充填空間を気密に維持する底部とを備え、
前記内周壁は、該内周壁の内面に沿って底部に向けて伸延する一方、上部を該キャップ本体から突出させる筒体を有し、
該筒体は、該筒体上部の押し込みに伴い該底部を開放して該充填空間内の内容物を揮散させる刃部を備えることを特徴とする揮散容器である。
【0007】
前記筒体は、前記内周壁及び前記底部との協働にて形成され添加剤を収納する上向き開放の区画凹所と、該区画凹所につながる上端開口とを備え、該上端開口に、該区画凹所を封止するシール材を備えることが望ましい。
【0008】
前記添加剤は、前記内容物との混合にて該内容物をゲル化するものであることが望ましい。
【0009】
前記筒体は、該筒体に破断部を介して一体連結するとともに該キャップ本体に当接して該筒体の押し込みを阻止するバージンバンドを有することが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
容器の口部に装着されるキャップ本体に、口部内壁に沿って伸延する内周壁と、この内周壁の下端部を閉鎖して内容物の充填空間を気密に維持する底部とを設け、さらに内周壁の内面に沿って底部に向けて伸延する一方、上部を該キャップ本体から突出させる筒体を設け、この筒体に刃部を設けて、筒体の押し込みに伴って底部が開放されるようにしたので、筒体を容器本体に向けて押し込む1つの動作で容器本体が開栓でき、開栓作業が容易となる。
【0011】
筒体に、内周壁及び底部との協働にて形成され添加剤を収納する上向き開放の区画凹所と、区画凹所につながる上端開口とを設け、この上端開口に、区画凹所を封止するシール材を設ける場合は、容器内の内容物と添加剤とを使用する直前に混合させることができるので、保存期間に関わらず、新鮮な状態で揮散効果を発現させることができる。
【0012】
添加剤が、内容物との混合によって内容物をゲル化するものである場合は、容器本体を誤って転倒させた際に混合物が流れ出す不具合を確実に防ぐことができる。
【0013】
筒体に、破断部を介して一体連結するとともにキャップ本体に当接するバージンバンドを設ける場合は、筒体が不用意に押し込まれて意図せず開栓してしまうおそれがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に従う揮散容器の第1の実施の形態につき、(a)は蓋体を閉めた未使用時の姿勢を示す断面図であり、(b)は(a)の平面図である。
【図2】図1に示す揮散容器につき、筒体を押し込んで底部を開放した姿勢で示す断面図である。
【図3】図2に示す揮散容器につき、蓋体を閉めた姿勢で示す断面図である。
【図4】本発明に従う揮散容器の第2の実施の形態につき、蓋体を閉めた未使用時の姿勢を示す断面図である。
【図5】図4に示す揮散容器につき、蓋体を開けた姿勢での平面図である。
【図6】図4に示す揮散容器につき、蓋体を開けてシール材及びバージンバンドを取り外すとともに、筒体を押し込んで底部を開放した姿勢で示す断面図である。
【図7】図6に示す揮散容器につき、蓋体を閉めた姿勢で示す断面図である。
【図8】本発明に従う揮散容器の第3の実施の形態につき、蓋体を閉めた未使用時の姿勢を示す断面図である。
【図9】図8に示す揮散容器につき、蓋体を開けてシール材及びバージンバンドを取り外すとともに、筒体を押し込んで底部を開放した姿勢で示す断面図である。
【図10】本発明に従う揮散容器の第4の実施の形態につき、蓋体を閉めた未使用時の姿勢を示す断面図である。
【図11】図10に示す揮散容器につき、蓋体を開けてシール材及びバージンバンドを取り外すとともに、筒体を押し込んで底部を開放した姿勢で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明に従う揮散容器の第1の実施の形態につき、(a)は蓋体を閉めた未使用時の姿勢を示す断面図であり、(b)は(a)の平面図であって、図2は、図1に示す揮散容器につき、筒体を押し込んで底部を開放した姿勢で示す断面図である。
【0016】
図1(a)、(b)において、10は容器本体である。図示の例で容器本体10は、底部11の縁部を取り囲んで起立する胴部12を有し、肩部13を介して胴部12に一体連結する口部14を備え、それらで区画形成される内側が、揮散する内容物を収納する充填空間Mとなっている。口部14の外面には、ねじやアンダーカットで形成される結合部14a(図示の例ではねじ)が設けられている。
【0017】
20Aは、口部14に装着されるキャップ本体である。キャップ本体20Aは、充填空間Mにつながる頂部開口21を有するリング状の天壁22と、天壁22の外側端縁より口部14を取り囲んで垂下される外周壁23とを備えている。外周壁23の内面には、結合部14aに対応する被結合部23aが設けられていて、キャップ本体20Aは口部14に着脱自在に取り付けられている。また、天壁22は、頂部開口21から口部14の内壁に沿って充填空間Mに向けて伸延するとともにその内壁と気密に当接する内周壁24を備えている。これにより、揮散した内容物が口部14とキャップ本体20Aとの相互間から漏れ出すことを有効に防止している。さらに、図1(a)に示す例で内周壁24には、その下端部を閉鎖する底部としての底壁25を、薄肉部26を介して一体連結している。
【0018】
30Aは、内周壁24の内側に配設される筒体である。筒体30Aは、内周壁24に沿って延在する筒体周壁31を備えている。筒体周壁31の下部は、図1(a)に示す例では側面視での断面形状が斜めに切り取られた刃部32であって、筒体周壁31の上部は、キャップ本体20Aから突出する押圧部33となっている。また、押圧部33には、中央部に上端開口34を有するリング壁35が一体連結されている。これにより、筒体30Aの内側には、内周壁24及び底壁25との協働によって充填空間Mから区画されて、上端開口34にて上方が開放する区画凹所Nが形成される。
【0019】
40は、頂部開口21を覆う蓋体である。蓋体40は、頂壁41と、この頂壁41の縁部を取り囲んで垂下される周壁42とからなり、周壁42と外周壁23とをヒンジ43を介して一体連結している。周壁42においてヒンジ43に対向する部位には、凸部44が形成されていて、下方からこの凸部44に指を当てて押し上げることで、片手でも蓋体40を開くことができる。また、図1(a)蓋体40は、その表裏を貫通する少なくとも1つの揮散孔45が設けられていて(図示の例では、ヒンジ43側及び凸部44側に各1個形成されている)、揮散した内容物は、この揮散孔45を通して外界に向け放出される。
【0020】
上記のように構成される揮散容器を使用するに当たっては、まず凸部44に指を掛けて、図2に示すように蓋体40を開き、筒体30Aの押圧部33を容器本体10に向けて押し込む。これにより、刃部32が薄肉部26を破断することで底壁25が開放されて内容物を揮散させることができる。そして揮散した内容物は、図3に矢印で示すように上端開口34を経由して、閉じられた蓋体40の揮散孔45を通り外界に向けて放出される。
【0021】
図4〜図7は、本発明に従う揮散容器の第2の実施の形態であって、容器本体10、キャップ本体20A、及び蓋体40については第1の実施の形態と共通するのでここでは説明を省略する。
【0022】
図4に示す第2の実施の形態に係る筒体30Bは、押圧部33に破断部36を介して一体連結するバージンバンド37を設けたものであって、その他の構成は筒体30Aと共通するものである。図4に示すようにバージンバンド37の下端部は、キャップ本体20Aの天壁22に当接していて、筒体30Bの不用意な押し込みを有効に防止している。また、図4、図5に示す例で破断部36は、リング壁35の周りに間隔をあけて設けられる複数の連結片36aであって、図示の例では合計7個設けられている。また、バージンバンド37は、環状体の一部を切り欠いたC字リング37aとなっていて、連結片36aを設けていない把持部37bからの引きちぎりによって、押圧部33から取り外すことができ、その後は第1の実施の形態と同様に、筒体30Bを押し込んで、底壁25を開放することができる。
【0023】
また、区画凹所N内には、充填空間M内の内容物と混合することによって揮散して、所要の効能を発揮する各種の添加剤を収納しておくことが好ましい。またこの場合、上端開口34には、区画凹所Nを封止するシール材50を設けることが好ましい。図示の例でシール材50は、例えば片面に貼着部を有する薄手のシートであって、筒体30Bのリング壁35に貼着することで区画凹所N内が気密に維持される。なお、シール材50は、頂壁41で覆われて外部からの意図しない接触が避けられているので、シール材50の破損を確実に防ぐことができる。
【0024】
上記のように構成される揮散容器を使用するに当たっては、図6に示すように蓋体40を開いた後、シール材50及びバージンバンド37を取り外し、筒体30Bを容器本体10に向けて押し込む。これにより、刃部32が薄肉部26を破断することで底壁25が開放され、区画凹所N内の添加剤が充填空間Mに落下して内容物と添加剤とが混合されて、所期する揮散効果が発現する。この場合、内容物と添加剤との混合は、使用開始直前に行われるため、保存期間に関わらず、新鮮な混合物を得ることができる。なお、バージンバンド37を一体連結したまま押圧部33を押し込んで、バージンバンド37を分離させるとともに底壁25を開放させるようにしてもよい。その後、揮散した充填空間M内の混合物は、図7に矢印で示すように上端開口34を経由して、閉じられた蓋体40の揮散孔45を通り外界に向けて放出される。
【0025】
図8〜図9は、本発明に従う揮散容器の第3の実施の形態であって、第2の実施の形態に示すキャップ本体20Aを、キャップ本体20Bに置き換えたものであり、その他の構成については第2の実施の形態と共通するのでここでは説明を省略する。
【0026】
図8に示すようにキャップ本体20Bは、上述したキャップ本体20Aの底壁25及び薄肉部26に代えて、内周壁24の下端部を閉鎖する底部としてのシート部材27を内周壁24の下端に貼着したものである。
【0027】
そして、図9に示すように蓋体40を開いた後、シール材50及びバージンバンド37を取り外し、筒体30Bを容器本体10に向けて押し込むことで、シート部材27が破断する。これにより、第2の実施の形態と同様に、区画凹所N内の添加剤が充填空間Mに落下して、内容物と添加剤とが混合される。
【0028】
図10〜図11は、本発明に従う揮散容器の第4の実施の形態であって、第2の実施の形態に示すキャップ本体20Aを、キャップ本体20Cに置き換えたものであり、その他の構成については第2の実施の形態と共通するのでここでは説明を省略する。
【0029】
図10に示すようにキャップ本体20Cは、上述したキャップ本体20Aの底壁25及び薄肉部26に代えて、内周壁24の下端部を閉鎖する底部としての底蓋28を設けたものである。図示の例では、底蓋28の外周側に設けた環状凸部28aを、内周壁24の内面に設けた環状凹部24aに係合させて抜け止め保持されている。なお、底蓋28に環状凹部を設けるとともに内周壁24に環状凸部を設けてもよい。
【0030】
そして、図11に示すように蓋体40を開いた後、シール材50及びバージンバンド37を取り外し、筒体30Bを容器本体10に向けて押し込むことで、底蓋28の係合が外れ、この底蓋28は充填空間M内に落下する。これにより、第2の実施の形態と同様に、区画凹所N内の添加剤も充填空間Mに落下して、内容物と添加剤とが混合される。
【0031】
ここで、内容物及び添加剤の組み合わせは、使用目的に応じて所要のものを適用することができるが、特に、添加剤を混合させることによって内容物がゲル化するものが好ましい。これにより、誤って容器本体を転倒させた場合に混合物が流れ出す不具合を確実に抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、容器の開栓によって内容物の揮散効果を発現させるに当たり、開栓作業が容易であって、使い勝手がよい薬液注出器を提供することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 容器本体
11 底部
14 口部
20A、20B、20C キャップ本体
21 頂部開口
24 内周壁
25 底壁(底部)
27 シート部材(底部)
28 底蓋(底部)
30A、30B 筒体
32 刃部
34 上端開口
36 破断部
37 バージンバンド
40 蓋体
43 ヒンジ
45 揮散孔
50 シール材
M 充填空間
N 区画凹所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮散する内容物の充填空間を有する容器本体と、頂部開口を有し該容器本体の口部に装着されるキャップ本体と、揮散した内容物を外界に向け放出する揮散孔を有し該キャップ本体にヒンジを介して開閉可能に連結される蓋体とを備える揮散容器であって、
前記キャップ本体は、前記頂部開口より口部内壁に沿って伸延する内周壁と、該内周壁の下端部を閉鎖して該充填空間を気密に維持する底部とを備え、
前記内周壁は、該内周壁の内面に沿って底部に向けて伸延する一方、上部を該キャップ本体から突出させる筒体を有し、
該筒体は、該筒体上部の押し込みに伴い該底部を開放して該充填空間内の内容物を揮散させる刃部を備えることを特徴とする揮散容器。
【請求項2】
前記筒体は、前記内周壁及び前記底部との協働にて形成され添加剤を収納する上向き開放の区画凹所と、該区画凹所につながる上端開口とを備え、該上端開口に、該区画凹所を封止するシール材を備えてなる請求項1に記載の揮散容器。
【請求項3】
前記添加剤は、前記内容物との混合にて該内容物をゲル化するものである請求項2に記載の揮散容器。
【請求項4】
前記筒体は、該筒体に破断部を介して一体連結するとともに該キャップ本体に当接して該筒体の押し込みを阻止するバージンバンドを有する請求項1〜3の何れかに記載の揮散容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−28368(P2013−28368A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165891(P2011−165891)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】