説明

揮発性有機化合物が低減された仕上げ組成物

不揮発性シリコーン材料を実質的に含有せず、かつ研磨粒子と、水、揮発性シロキサンおよび潤滑剤を含有するエマルジョンと、の混合物を含む仕上げ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕上げ組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、低濃度の揮発性有機化合物を有し、かつ優れた取扱性を示す仕上げ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
仕上げ組成物を塗装塗り換え材料として使用して、研磨によって残された掻き傷を除去することができ、それによって、車両表面上の塗装の欠陥が除去される。一般に、塗装の欠陥を除去する場合、欠陥はクリアコートで吹付け塗りされ、次いで、研摩材(例えば、サンドペーパー)を使用して除去される。しかしながら、これによって、車両表面上に目に見える掻き傷が残る。この掻き傷は、研磨バフパッドで仕上げ組成物を塗布し、分散させることによって除去される。次いで、表面保護シーラント(シールコート)が任意に塗布される。
【0003】
従来の仕上げ組成物は、組成物の取扱性(例えば、作業時間、表面への製品の付着、バフパッドでの吸い取り、清掃)を向上させるために溶媒を含有する。これらの溶媒は、仕上げ塗りを表面に塗布した後に蒸発する。しかしながら、環境規制から、特定の製品において揮発性有機化合物(VOC)は比較的低濃度(例えば、17重量%未満)である必要がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、優れた取扱性を示し、かつ塗布後に実質的に油性残留物を残さない仕上げ組成物に関する。本発明の組成物は、塗面、マリンゲルコート、金属、およびセラミックスなどの表面を仕上げするための、配合物、艶出し剤、またはうわぐすりとして配合することができる。この仕上げ組成物は、不揮発性シリコーン材料を実質的に含有せず、研磨粒子とエマルジョンとの混合物を含有し、そのエマルジョンは、水、揮発性シロキサン、および潤滑剤を含有する。「不揮発性シリコーン材料」という用語は、25℃で5センチストークス(cSt)(5.0×10-62/s)を超える動粘度を示す非環状シリコーン含有材料;仕上げ組成物中のかかる非環状シリコーン含有材料の濃度が少なくとも7重量%であるという条件で、25℃で5cSt(5.0×10-62/s)の動粘度を示す非環状シリコーン含有材料;および25℃で7cSt(7.0×10-62/s)を超える動粘度を示す環状シリコーン含有材料;から選択される、少なくとも250℃の沸点を有するシリコーンとして、本明細書において定義される。
【0005】
本発明の仕上げ組成物には、修復される車両表面など、処理されるべき表面上に油性残留物を残し得る量で高沸点溶媒を使用することを避けると同時に、環境上許容できる溶媒が使用される。油性残留物は、車両表面から除去するのが難しく、除去すべき掻き傷を目に見えにくくする。かかる高沸点溶媒を使用すると、確実に塗装の欠陥を適切に修復するのに余分な時間と労力が必要である。不揮発性シリコーン材料および油性残留物を含有しない場合には、本発明の仕上げ組成物によって、塗面の外観が改善される。
【0006】
本発明はさらに、組成物を製造する方法に関する。この方法は、水、揮発性シロキサン、非シリコーンベースの潤滑剤、および乳化剤の混合物を合わせて、エマルジョンを形成することを含み、その乳化剤は、安定なエマルジョンを製造するのに有効である。研磨粒子をエマルジョン中に混合して、組成物の形成が完了する。
【0007】
本発明はさらに、表面を処理する方法に関する。この方法は、表面上に仕上げ組成物を塗布することを含み、その仕上げ組成物は、水、研磨粒子、揮発性シロキサン、非シリコーンベースの潤滑剤、および安定なエマルジョンを生成するのに有効な乳化剤を含有する。その揮発性シロキサンは、実質的に表面から蒸発し、その表面上に仕上げ組成物の残留分を残し、前記残留分は油性残留物を実質的に含有しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、塗装塗り換え材料、または研磨用化合物として機能することができる仕上げ組成物を含み、かつエマルジョン中に分散された研磨粒子の混合物を含む。エマルジョンは乳化剤を使用して形成され、水、揮発性シロキサン、および潤滑剤を含有する。仕上げ組成物は優れた取扱性を示し、塗布後に実質的に油性残留物を残さない。
【0009】
仕上げ組成物は、不揮発性シリコーン材料も実質的に含有しない(つまり、本発明の仕上げ組成物に対して0.2重量%未満である)。従来の仕上げ組成物には、取扱性、光沢、撥水性を促進するために、不揮発性シリコーン材料が組み込まれている。しかしながら、揮発性シロキサンなどの揮発性シリコーン材料とは異なり、不揮発性シリコーン材料は、塗布後に蒸発しない。不揮発性シリコーン材料は、周りの空気中に拡散し(例えば、車体修理場において飛沫として)、かつ他の表面(塗装される他の車両など)を汚し得る、残留フィルムを形成する。仕上げ組成物における不揮発性シリコーン材料の使用には、車体修理場などの設備に特別な浄化対策(clean−up measure)が必要である。
【0010】
1種または複数種の揮発性シロキサンが、取扱性を向上させるために本発明の仕上げ組成物中に含有される。揮発性シロキサンにより影響を受ける特に重要な取扱性は作業時間である。一般に、仕上げ組成物によって、3サイクルプロセスに対して約4分30秒〜約5分の作業時間が可能となるはずである(つまり、3回仕上げ組成物を塗布し、バフ仕上げして、すべての掻き傷が除去される)。作業時間は一般に、仕上げ組成物中の揮発性溶媒の蒸発速度によって左右される。溶媒の蒸発が速過ぎる場合には、掻き傷を適切に除去するには作業時間が短すぎる。次いで、仕上げ材料をさらに塗布する必要がある。蒸発が遅すぎる、または存在しない場合には、残留フィルムが残る。残留フィルムまたは油性残留物は一般に、非蒸発高沸点有機溶媒からなる。揮発性シロキサンが、本発明の仕上げの塗布フィルムから蒸発する場合には、仕上げ組成物の残留分は、少なくとも実質的には油性残留物を含有しない。
【0011】
本発明において使用される揮発性シロキサンは、直鎖状、環状、分岐状構造、およびその組み合わせを含み、そのすべてが250℃未満の沸点を有する。一般に、環状シロキサンは、非環状シロキサンよりも高い動粘度で揮発性を有する。非環状揮発性シロキサンの適切な動粘度は、25℃で5cSt(5.0×10-62/s)未満であり、さらに、仕上げ組成物中での非環状揮発性シロキサンの濃度が約7重量%未満である場合には25℃で5cSt(5.0×10-62/s)を含み得る。環状揮発性シロキサンの場合には、適切な動粘度は25℃で7cSt(7.0×10-62/s)以下である。25℃でより高い動粘度を有するシロキサンは一般に、それほど揮発性ではなく、既存の材料を塗り換える場合には望ましくない影響を及ぼす(塗装工には「フィッシュアイ(はじき)」と呼ばれる)。フィッシュアイの影響は、表面上の塗装のビーディングであり、所望の外観を損なう。
【0012】
本発明において使用可能な揮発性直鎖状シロキサンは、平均式:
(CH32SiO{SiO(CH32aSi(CH33
(式中、「a」の適切な整数値は0〜5を含む)
によって表される。したがって、適切な揮発性直鎖状シロキサンの例としては、式(CH33SiOSi(CH33を有するヘキサメチルジシロキサン;式(CH33SiO(CH32Si(CH33を有するオクタメチルトリシロキサン;式(CH33SiO{SiO(CH322Si(CH33を有するデカメチルテトラシロキサン;式(CH33{SiO(CH3)}3Si(CH33を有するドデカメチルペンタシロキサン;式(CH33SiO{SiO(CH324Si(CH33を有するテトラデカメチルヘキサシロキサン;式(CH33SiO{SiO(CH325Si(CH33を有するヘキサデカメチルヘプタシロキサン;およびその組み合わせが挙げられる。
【0013】
揮発性環状シロキサンは、揮発性シロキサンに特に適している材料であり、式{SiO(CH32b(式中、「b」の適切な整数値が4〜6を含む)によって表される。適切な揮発性環状シロキサンの例としては、式{(CH32SiO}4を有し、かつミシガン州ミッドランドのダウ・コーニング社(Dow Corning Corp.,Midland,Michigan)から商品名「ダウ・コーニング(Dow Corning)244および344 Fluids」(25℃での動粘度0.25cSt(2.5×10-72/s))として市販されている、オクタメチルシクロテトラシロキサン;式{(CH32SiO}5を有し、かつダウ・コーニング社から商品名「ダウ・コーニング(Dow Corning)245および345 Fluids」(25℃でのそれぞれの動粘度4.2cSt(4.2×10-62/s)および5cSt(5.0×10-62/s))として市販されている、デカメチルシクロペンタシロキサン;式{(CH32SiO}6を有し、かつダウ・コーニング社から商品名「ダウ・コーニング(Dow Corning)246 Fluids」(25℃での動粘度6.8cSt(6.8×10-62/s))として市販されている、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン;およびその組み合わせが挙げられる。
【0014】
揮発性分岐状シロキサンは、揮発性直鎖状および環状シロキサンの誘導体である。本発明において使用可能な揮発性分岐状シロキサンの例としては、式C10303Si4を有するヘプタメチル−3−{(トリメチルシリル)オキシ}トリシロキサン;式C12364Si5を有するヘキサメチル−3,3,ビス{(トリメチルシリル)オキシ}トリシロキサン;式C8244Si4を有するペンタメチル{(トリメチルシリル)オキシ}シクロトリシロキサン;式C10305Si5を有するヘプタメチル{(トリメチルシリル)オキシ}シクロテトラシロキサン;およびその組み合わせが挙げられる。
【0015】
本明細書に記載の適切な揮発性シロキサンは、単独で、またはいずれかの組み合わせで使用することができる。適切な揮発性シロキサンに関する同様な情報が、その全体が参照により本明細書に援用される、Bahrら、米国特許第5,531,814号明細書に開示されている。
【0016】
仕上げ組成物において使用することができる潤滑剤としては、潤滑および取扱性において仕上げ組成物を助ける実質的にシリコーンを含有しない材料が挙げられる。適切な潤滑剤の例としては、オイル(例えば、鉱物油、パイン油、およびパラフィン系オイル)、オレイン酸、グリセロール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、およびその組み合わせが挙げられる。
【0017】
仕上げ組成物の乳化剤は、安定な水中油型エマルジョンまたは安定な油中水型エマルジョンを調製するのに有用である。安定なエマルジョンは、その分散相が、長時間にわたって連続相内に実質的に分散した状態であり、そのため実質的に、時間の経過にしたがった相の分離が防止される(組成物の貯蔵に十分に)エマルジョンである。適切な乳化剤の例としては、非イオン乳化剤、アニオン乳化剤、カチオン乳化剤、およびその組み合わせが挙げられる。非イオン乳化剤は、仕上げ組成物に使用するのに特に適しており、アルコールエトキシレート(例えば、テキサス州ヒューストンのシェル・ケミカル社(Shell Chemical,Houston,Texas)から市販されている「ネオドール(Neodol)」;ウィスコンシン州ミルトン(Milton,Wisconsin)のTomah3 Products社から市販の「トマドール(Tomadol)」;およびダウ・コーニング社から市販されている「タージトール(Tergitol)」、アルキルフェノールエトキシレート(例えば、ダウ・コーニング社から市販されている「トリトン(Triton)」;およびニュージャージー州マウントオリーブ(Mount Olive,New Jersey)のBASF社から市販されている「Macol OP 10 SP」)、ポリオキシプロピレン(polyoxypropolene)/ポリオキシエチレンブロックコポリマー(例えば、BASF社から市販されている「プルロニック(Pluronic)」)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,Deleware)のICI Americas社から市販されている「スパン(Span)」、ヒマシ油(例えば、ニュージャージー州ベイヨン(Bayonne,New Jersey)のCasChem社から市販されている「Emulsion A Oil」、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンモノステアリン酸エステル(例えば、デラウェア州ニューキャッスルのユニケマ社(Uniquema,New Castle,Deleware)から市販されている「トゥウィーン(Tween)」、アルキノール(例えば、ペンシルバニア州アレンタウンのエアープロダクツ・アンド・ケミカルズ社(Air Products and Chemicals,Inc.,Allentown,Pennsylvania)から市販の「サーフィノール(Surfynol)」、ポリオキシエチレンノニルフェノール、ポリオキシエチレン脂肪アルコール、およびその組み合わせが挙げられる。適切なアニオン乳化剤としては、アルキルアリールスルホン酸エステルが挙げられる。適切なカチオン乳化剤としては、ポリオキシエチレン脂肪アミンが挙げられる。
【0018】
適切な研磨粒子の例としては、酸化アルミニウム、シリカ、ケイ酸アルミニウム、炭化ケイ素、およびその組み合わせが挙げられる。適切な平均粒径は、約0.1〜約100マイクロメートルの範囲である。特に適している平均粒径は、約2〜約50マイクロメートルの範囲である。仕上げ組成物において使用される充填剤の種類は一般に、仕上げ組成物に色を付与する。例えば、シリカ研磨粒子を組み込む場合、仕上げ組成物は黄褐色を示す。あるいは、酸化アルミニウム研磨粒子を組み込んだ場合、仕上げ組成物は白色を示す。
【0019】
本明細書におけるすべての濃度は、別段の指定がない限り、重量%で表される。さらに、別段の指定がない限り、すべての量は重量基準で表される。仕上げ組成物における適切な組成範囲は、有効量の約10.0%〜約60.0%の水、約3.0%〜約20.0%の揮発性シロキサン、約0.1%〜約10.0%の潤滑剤、約0.1%〜約10.0%の乳化剤、0%を超え約60.0%までの研磨粒子を含む。特に適切な組成範囲は、水約30.0%〜約50.0%、揮発性シロキサン約5.0%〜約10.0%、潤滑剤約1.0%〜約5.0%、乳化剤約0.1%〜約5.0%、研磨粒子約3.0%〜約50.0%を含む。
【0020】
上記の成分に加えて、仕上げ組成物は、増粘剤、揮発性炭化水素溶媒、保存剤、分散剤、および芳香など、仕上組成物に使用される従来の他の添加剤も適切な量で含有し得る。
【0021】
粘度を増加し、流動学的特性を変化させるために、約0.2%〜約5.0%、さらに詳しくは約0.5%〜約3.0%の有効量で、増粘剤が仕上げ組成物中に組み込まれる。適切な増粘剤の例としては、カルボキシビニル樹脂(例えば、オハイオ州クリーブランドのノベオン社(Noveon Inc.,Cleveland,Ohio)から市販の「カルボポール(Carbopol)」、アクリル樹脂(例えば、ペンシルバニア州フィラデルフィアのローム・アンド・ハース社(Rohm and Haas Co.,Philadelphia,Pennsylvania)から市販されている「アクリソール(Acrysol)」、粘土(例えば、ニュージャージー州ハイスタウン(Highstown,New Jersey)のElementis Specialties Rheox社から市販の「Bentone」、およびその組み合わせが挙げられる。アクリソール(Acrysol)アクリル樹脂などの増粘剤は、結合されるベース化学物質を必要とする結合性増粘剤である。ベース化学物質は、約0.05%〜約3.0%、さらに詳しくは約0.1%〜約1.0%の有効量で仕上げ組成物中に組み込まれる。適切なベース化学物質としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、およびその組み合わせが挙げられる。
【0022】
取扱性を助けるために、揮発性炭化水素溶媒が、仕上げ組成物中に組み込まれる。使用される揮発性炭化水素溶媒は望ましくは、実質的にシリコーンを含有しない。揮発性炭化水素溶媒は、約5.0%〜約17.0%の有効量で、さらに詳しくは約10.0%〜約17.0%の有効量で仕上げ組成物中に存在する。適切な揮発性炭化水素溶媒の例としては、石油蒸留物(例えば、テキサス州ヒューストンのエクソンモービル・ケミカル社(ExxonMobil Chemical Co.,Houston,Texas)からどちらも市販されている「ストッダード溶剤(Stoddard Solvent)」および「ミネラルスピリット(Mineral Sprits)」;イリノイ州ローリングメドウズのCitgo Petroleum社(Rolling Meadows,Illinois)から市販されている「Unocal」;およびエクソンモービル・ケミカル社から市販されている「Varsol」)、イソパラフィン溶媒(例えば、エクソンモービル・ケミカル社から市販されている「アイソパー(Isopar)」、飽和炭化水素溶媒(例えば、テキサス州ヒューストンのペンレコ社(Penreco,Houston,Texas)から市販の「Drakesol」)、脂肪族炭化水素溶媒(例えば、エクソンモービル・ケミカル社から市販されている「エクソール(Exxsol)」、アルコール、エトキシ化アルコール、エトキシ化グリコール、およびその組み合わせが挙げられる。
【0023】
適切な保存剤の例としては、水性非塩素化、非金属保存剤(例えば、ニュージャージー州ウェインのインターナショナル・スペシャリティ・プロダクツ社(International Specialty Products,Wayne,New Jersey)から市販の「Nuosept」)、殺菌保存剤(例えば、ニュージャージー州ウェインのインターナショナル・スペシャリティ・プロダクツ社から市販の「Nuocide」)、パーソナルケア製品保存剤(例えば、ローム・アンド・ハース社(Rohm and Haas Co.)から市販の「Kathon」)、およびその組み合わせが挙げられる。保存剤は、約0.1%〜約0.5%の有効量で、さらに詳しくは約0.1%〜約0.3%の有効量で仕上げ組成物中に存在する。
【0024】
仕上げ組成物のエマルジョンへの研磨粒子の分散を助けるために、分散剤が添加される。適切な分散剤の例としては、アニオン懸濁化剤(例えば、「Disperbyk」,ニューヨーク州メルヴィルのビックケミーUSA社(Byk−Chemie USA,Melville,New York)、アニオン湿潤剤(例えば、「Bykumen」,ビックケミーUSA社)、およびその組み合わせが挙げられる。分散剤は、約0.1%〜約5.0%の有効量で、さらに詳しくは約0.2%〜約3.0%の有効量で仕上げ組成物中に存在する。
【0025】
本発明の仕上げ組成物は、水、揮発性シロキサン、潤滑剤、任意に他の添加剤、例えば揮発性炭化水素溶媒、ベース化学物質、および保存剤を室温で混合することによって形成される。安定なエマルジョンは、乳化剤と混合物を室温で合わせることによって形成される。安定なエマルジョンが形成した後、研磨粒子をエマルジョン中に混合し、分散させる。次いで、分散剤が任意に添加され、エマルジョンに研磨粒子が分散される。次いで、仕上げ組成物の粘度を増加するために、任意のベース化学物質と反応するのに適切な量で、任意に増粘剤が添加される。所望の成分のすべてが組み込まれた後に、高せん断ミキサーを使用して、仕上げ組成物を室温で約5分間混合する。適切な高せん断ミキサーとしては、ペンシルバニア州テンプルのDispersator Companyから市販のプレミアモデルミキサー(Premier model mixer)が挙げられる。
【0026】
製造した後、本発明の仕上げ組成物を使用して、車両表面上の塗装欠陥を除去する。欠陥がクリアコートで吹付け塗りされ、研摩材で除去された後、掻き傷は車両表面上に残っている。次いで、研磨バフパッドを使用して、本発明の仕上げ組成物を車両表面上に塗布し、分散させて、掻き傷を除去する。揮発性シロキサンのために、仕上げ材料は、許容可能なバフ仕上げ時間など、優れた取扱性を示す。
【0027】
最初の塗布およびバフ仕上げサイクルが完了した後、揮発性シロキサンは、残りの仕上げ組成物から蒸発する。残っている仕上げ組成物の部分は、油性残留物を実質的には含有せず、残りの掻き傷がそれを通して目に見えるクリアコーティングを提供する。
【0028】
研磨バフパッドを使用して、表面上の仕上げ組成物を分散させる更なるサイクルもまた行われる。好ましくは、これは、一連の研磨バフパッドを使用して、研磨材の減少に伴って行われ、車両表面に対して細かい研磨効果が得られる。一般に、総作業時間約4分30秒〜約5分で約3サイクルが、掻き傷を除去し、かつ完了時に滑らかな表面を得るのに十分である。しかしながら、個々の必要性に応じて適宜、更なる塗布およびバフ仕上げサイクルが用いられる。完了後、表面保護シーラント(シールコート)が任意に、バフ仕上げ表面に塗布される。
【0029】
特性の分析および特徴付けの手順
本発明の仕上げ組成物を特徴付けるために、種々の分析技術が利用可能である。分析技術のうちのいくつかが本明細書で用いられる。これらの分析技術の説明は以下のとおりである。
【0030】
表面エネルギー試験
以下の試験法を用いて、種々の仕上げ組成物で処理された後の塗装パネルの表面エネルギーを定性的に評価した。各仕上げ組成物を直径5.1センチメートル(cm)の円で塗装パネル上に塗布し(バフ仕上げせず)、1分間放置した。その時間の後、残存する仕上げ組成物を拭き取った。次いで、オハイオ州クリーブランドのシャーウィン・ウイリアムズ社(Sherwin Williams,Cleveland,Ohio)から市販のKrylon Blackスプレー塗料を塗装パネル上に仕上げサイクル(finishinged circle)で吹付け塗装した。次いで、吹付け塗装をフィッシュアイビーディング(fisheye beading)(例えば、吹付け塗装の収縮および不均一性)について評価した。仕上げサイクルが低表面エネルギー残留物で汚染された場合には、塗装のフィッシュアイビーディングは、1分以内に目で確認できるだろう。
【0031】
作業時間および油性残留物の量の試験
以下の試験法を用いて、種々の仕上げ組成物について、総作業時間および残存する油性残留物の量を定性的に評価した。各仕上げ組成物に関して、ミネソタ州セントポールの3M社(3M Company,St.Paul,Minnesota)から商品名「Perfect−it」,品番05723で市販されている20.3cmフォームバフパッドに仕上げ組成物8グラムを塗布した。メリーランド州ボルティモアのデウォルト・インダストリアル・ツール社(Dewalt Industrial tool Company,Baltimore,Maryland)から市販されているバフ仕上げ器具,型番DW849にバフパッドを取り付けた。次いで、ミシガン州ヒルズデール(Hillsdale,Michigan)のACT Laboratory社から市販の45.7×61.0×0.081cm未仕上げ黒色自動車用試験パネル上で角度0度にて1,500回転/分(rpm)でバフパッドを回転させた。試験パネルは、以下のコーティング:ED6060E−コート;764204プライマー;542AB921ベースコート;RK8010Aクリアコートを含む。
【0032】
乾燥するまで、または残留フィルムがまだ残っている場合には約1分30秒〜2分が過ぎるまで、どちらが先であっても、試験パネルをバフ仕上げした。約1分30秒後には、仕上げ組成物中の揮発性物質が実質的に蒸発しているため、バフ仕上げサイクルには、1分30秒〜2分の限度が課せられた。残りの残留フィルムは、バフ仕上げによって妥当な時間内で除去するのが難しい。バフ仕上げサイクル後、残存する油性残留物の量を定性的に決定した。
【0033】
次いで、試験パネルの同じ領域で、バフ仕上げサイクルをさらに2回繰り返した(つまり、合計3回のバフ仕上げサイクル)。3回のバフ仕上げサイクル後、3回のバフ仕上げサイクルの総作業時間を記録した。表1に、バフ仕上げサイクル3回すべての総作業時間および各バフ仕上げサイクル後に残っている油性残留物の量の数値的尺度を示す。
【0034】
【表1】

【0035】
総作業時間および油性残留物の量についての4以上の評点は、許容できないとみなした。
【実施例】
【0036】
本発明の範囲内の多くの変更形態および変形形態が当業者には明らかであろうことから、本発明はさらに詳しくは、実例としてのみ意図される以下の実施例で説明される。別段の指定がない限り、以下の実施例に記載のすべての部、パーセンテージ、および比は重量に基づき、実施例で使用されるすべての試薬が、ミズーリ州セントルイスのシグマ・アルドリッチ・ケミカル社(Sigma−Aldrich Chemical Company,Saint Louis,Missouri)などの一般の化学製品供給業者から入手されたか、または市販されており、あるいは従来の技術によって合成することができる。
【0037】
以下の組成の略語が、以下の実施例において使用される:
「シロキサン1」:25℃で動粘度5cSt(5.0×10-62/s)を示し、かつミシガン州ミッドランドのダウ・コーニング社(Dow Corning Corp.,Midland,Michigan)から商品名「ダウ・コーニング(Dow Corning)345 Fluid」として市販されている、デカメチルシクロペンタシロキサンおよびドデカメチルシクロヘキサシロキサンの流体混合物;
「シロキサン2」:25℃で動粘度0.65cSt(6.5×10-72/s)を示し、かつミシガン州ミッドランドのダウ・コーニング社から商品名「ダウ・コーニング(Dow Corning)200 Fluid,0.65CST.」として市販されている、ヘキサメチルジシロキサン液体;
「シロキサン3」:25℃で動粘度5cSt(5.0×10-62/s)を示し、かつミシガン州ミッドランドのダウ・コーニング社から商品名「ダウ・コーニング(Dow Corning)200 Fluid,5CST.」として市販されている、ポリジメチルシロキサン液体;
「シロキサン4」:25℃で動粘度10cSt(1.0×10-52/s)を示し、かつミシガン州ミッドランドのダウ・コーニング社から商品名「ダウ・コーニング(Dow Corning)200 Fluid,10CST.」として市販されている、ポリジメチルシロキサン液体;
「潤滑剤1」:ペンシルバニア州フィラデルフィアのスノコ社(Sunoco,Inc.,Philadelphia,Pennsylvania)から商品名「Sunpar110」として市販されているパラフィン系オイル;
「潤滑剤2」:テネシー州メンフィスのウィトコ社(Witco Corporation,Memphis,Tennessee)から市販されているグリセロール;
「潤滑剤3」:テキサス州ヒューストンのペンレコ社(Penreco,Houston,Texas)から商品名「Parol 70」として市販されている鉱油;
「乳化剤1」:ウィスコンシン州ミルトン(Milton,Wisconsin)のTomah3 Products,Inc.から商品名「トマドール(Tomadol)1−5」として市販されている非イオン性界面活性剤;
「乳化剤2」:ペンシルバニア州アレンタウンのエアープロダクツ・アンド・ケミカルズ社(Air Products and Chemicals,Inc.,Allentown,Pennsylvania)から商品名「サーフィノール(Surfynol)465」として市販されているアセチレンジオールエチレンオキシド付加物界面活性剤;
「乳化剤3」:デラウェア州ニューキャッスルのユニケマ社(Uniquema,NewCastle,Delaware)から商品名「トゥウィーン(Tween)80」として市販されているポリ(オキシエチレン)(20)−ソルビタンモノオレエート非イオン性界面活性剤;
「乳化剤4」:ミシガン州ミッドランドのダウ・ケミカル社(Dow Chemical Company)から商品名「トリトン(Triton)X−45」として市販されている4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル−ポリエチレングリコール非イオン性界面活性剤;
「乳化剤5」:ウィスコンシン州ミルトン(Milton,Wisconsin)のTomah3 Products,Inc.から商品名「トマドール(Tomadol)1−9」として市販されている非イオン性界面活性剤;
「乳化剤6」:ニュージャージー州マウントオリーブ(Mount Olive,New Jersey)のBASF社から商品名「Macol OP 10 SP」として市販されているポリオキシエチレン(10)オクチルフェノールエーテル非イオン性性界面活性剤;
「乳化剤7」:ニュージャージー州ベイヨン(Bayonne,New Jersey)のCasChem社から商品名「Emulsion A Oil」として市販されているヒマシ油;
「研磨材1」:オハイオ州クリーブランドのフェロ社(Ferro Corporation,Cleveland,Ohio)によって「784」と指定され、製造されている40重量%水性分散液の酸化アルミニウム研磨材;
「研磨材2」:ジョージア州ドライブランチのイメリス・パフォーマンス・ミネラルズ社(Imerys Performance Minerals,DryBranch,Georgia)から商品名「Kaopolite SF」として市販されているケイ酸アルミニウム;
「研磨材3」:ジョージア州ドライブランチのイメリス・パフォーマンス・ミネラルズ社から商品名「Kaopolite 1152」として市販されているケイ酸アルミニウム;
「研磨材4」:オハイオ州クリーブランドのフェロ社によって「783」と指定され、製造されている酸化アルミニウム研磨材;
「増粘剤」:ペンシルバニア州フィラデルフィアのローム・アンド・ハース社(Rohm and Haas Co.,Philadelphia,Pennsylvania)から商品名「Acrysol TT−615」として市販されているアルカリ膨潤性アクリル結合性増粘剤;
「ベース」:ミズーリ州セントルイスのシグマ・アルドリッチ・ケミカル社から市販されているトリエタノールアミン;
「溶媒1」:テキサス州ヒューストンのエクソンモービル・ケミカル社(ExxonMobil Chemical Co.,Houston,Texas)から商品名「アイソパー(Isopar)H」として市販されているイソパラフィン溶媒;
「溶媒2」:テキサス州ヒューストンのエクソンモービル・ケミカル社から商品名「アイソパー(Isopar)M」として市販されているイソパラフィン溶媒;
「溶媒3」:テキサス州ヒューストンのエクソンモービル・ケミカル社から商品名「エクソール(Exxsol)D80」として市販されている脱芳香族化(De−aromitized)脂肪族炭化水素溶媒;
「溶媒4」:テキサス州ヒューストンのペンレコ社から商品名「Drakesol 165AT」(以前は「ペンレコ(Penreco)2251」)として市販されている飽和炭化水素溶媒;
「溶媒5」:テキサス州ヒューストンのエクソンモービル・ケミカル社から商品名「ストッダード溶剤(Stoddard Solvent)」として市販されている石油蒸留物;
「溶媒6」:テキサス州ヒューストンのエクソンモービル・ケミカル社から商品名「ミネラルスピリット(Mineral Sprits)」として市販されている石油蒸留物;
「溶媒7」:テキサス州ヒューストンのエクソンモービル・ケミカル社から商品名「アイソパー(Isopar)G」として市販されているイソパラフィン溶媒;
「保存剤」:ニュージャージー州ウェインのインターナショナル・スペシャリティ・プロダクツ社(International Specialty Products,Wayne,New Jersey)から商品名「Nuosept 95」として市販されている水性非塩素化非金属保存剤;
「分散剤」:ニューヨーク州メルヴィルのビックケミーUSA社(Byk−Chemie USA,Melville,New York)から商品名「Disperbyk」として市販されているアニオン懸濁化剤。
【0038】
表2〜19には、所定の仕上げ組成物の全重量を基準にした重量%で、実施例1〜7および比較例A〜Kの仕上げ組成物の成分濃度を示す。以下の一般化された手順で、各仕上げ組成物を形成した。液体成分(例えば、脱イオン水、シロキサン1〜4、潤滑剤1〜3、溶媒1〜7、ベース、および保存剤)を乳化成分(例えば、乳化剤1〜7)と合わせ、実験室用ミキサーで21℃にて15分間混合し、エマルジョンを形成した。研磨粒子(例えば、研磨材1〜3)をエマルジョンに添加し、実験室用ミキサーで21℃にて5分間混合し、エマルジョン中に研磨粒子を分散させた。次いで、高せん断ミキサー(ペンシルバニア州テンプル(Temple,Pennsylvania)のDispersator社から市販のプレミアモデル)を使用して、混合物全体を21℃で5分間混合した。高せん断混合中、増粘剤を徐々に増やしながら添加した。
【0039】
分散剤を含む組成物については、研磨粒子を添加し、混合した後に、かつ高せん断混合前に、分散剤を添加した。分散剤を添加し、実験室用エアミキサーで21℃にてさらに5分間混合した。
【0040】
実施例1
実施例1−揮発性環状シロキサンである、デカメチルシクロペンタシロキサンとドデカメチルシクロヘキサシロキサンとの流体混合物約6%を含有する仕上げ組成物。この流体混合物は、25℃で動粘度5cSt(5.0×10-62/s)を示す。表2に、実施例1の仕上げ組成物についての成分濃度を示す。
【0041】
【表2】

【0042】
実施例2
実施例2−揮発性環状シロキサン流体約7%を含有する仕上げ組成物。表3に、実施例2の仕上げ組成物についての成分濃度を示す。
【0043】
【表3】

【0044】
実施例3
実施例3−25℃で動粘度0.65cSt(6.5×10-72/s)を示す揮発性直鎖状シロキサンである、ヘキサメチルジシロキサンを含有する仕上げ組成物。表4に、実施例3の仕上げ組成物についての成分濃度を示す。ヘキサメチルジシロキサンは、実施例1の仕上げ組成物において示される揮発性環状シロキサンとおよそ同じ濃度である。
【0045】
【表4】

【0046】
実施例4
実施例4−揮発性環状シロキサン流体約8%を含有する仕上げ組成物。表5に、実施例4の仕上げ組成物についての成分濃度を示す。
【0047】
【表5】

【0048】
実施例5
実施例5−揮発性環状シロキサン流体約8.5%を含有する仕上げ組成物。表6に、実施例5の仕上げ組成物についての成分濃度を示す。
【0049】
【表6】

【0050】
実施例6
実施例6−揮発性環状シロキサン流体約8.75%を含有する仕上げ組成物。表7に、実施例6の仕上げ組成物についての成分濃度を示す。
【0051】
【表7】

【0052】
実施例7
実施例7−25℃で動粘度5cSt(5.0×10-62/s)を示す、ポリジメチルシロキサン約3%を含有する仕上げ組成物。表8に、実施例7の仕上げ組成物についての成分濃度を示す。
【0053】
【表8】

【0054】
比較例A
比較例A−揮発性シロキサンを含有しないが、炭化水素溶媒総濃度19%を含む仕上げ組成物。表9に、比較例Aの仕上げ組成物についての成分濃度を示す。
【0055】
【表9】

【0056】
比較例B
比較例B−25℃で動粘度10cSt(1.0×10-52/s)を示す不揮発性直鎖状シロキサンである、ポリジメチルシロキサン約7%を含有する仕上げ組成物。比較例Bは、炭化水素溶媒総濃度15%も含む。表10に、比較例Bの仕上げ組成物についての成分濃度を示す。
【0057】
【表10】

【0058】
比較例C
比較例C−揮発性シロキサンを含有しないが、炭化水素溶媒総濃度15%を含む仕上げ組成物。表11に、比較例Cの仕上げ組成物についての成分濃度を示す。
【0059】
【表11】

【0060】
比較例D
比較例D−揮発性シロキサンを含有しないが、炭化水素溶媒総濃度22%を含む仕上げ組成物。表12に、比較例Dの仕上げ組成物についての成分濃度を示す。
【0061】
【表12】

【0062】
比較例E
比較例E−揮発性シロキサンを含有しないが、炭化水素溶媒総濃度約15%を含む仕上げ組成物。表13に、比較例Eの仕上げ組成物についての成分濃度を示す。
【0063】
【表13】

【0064】
比較例F
比較例F−揮発性シロキサンを含有しないが、炭化水素溶媒総濃度約21%を含む仕上げ組成物。表14に、比較例Fの仕上げ組成物についての成分濃度を示す。
【0065】
【表14】

【0066】
比較例G
比較例G−揮発性シロキサンを含有しないが、22%を超える炭化水素溶媒総濃度を含む仕上げ組成物。表15に、比較例Gの仕上げ組成物についての成分濃度を示す。
【0067】
【表15】

【0068】
比較例H
比較例H−揮発性シロキサンを含有しないが、炭化水素溶媒総濃度約15%を含む仕上げ組成物。表16に、比較例Hの仕上げ組成物についての成分濃度を示す。
【0069】
【表16】

【0070】
比較例I
比較例I−揮発性シロキサンを含有しないが、炭化水素溶媒総濃度約15%を含む仕上げ組成物。表17に、比較例Iの仕上げ組成物についての成分濃度を示す。
【0071】
【表17】

【0072】
比較例J
比較例J−揮発性シロキサンを含有しないが、炭化水素溶媒総濃度約23%を含む仕上げ組成物。表18に、比較例Jの仕上げ組成物についての成分濃度を示す。
【0073】
【表18】

【0074】
比較例K
比較例K−25℃で動粘度5cSt(5.0×10-62/s)を示す不揮発性直鎖状シロキサンである、ポリジメチルシロキサン約7%を含有する仕上げ組成物。比較例Kは、炭化水素溶媒総濃度約15%も含む。表19に、比較例Kの仕上げ組成物についての成分濃度を示す。
【0075】
【表19】

【0076】
実施例2、3、7および比較例B、D、Kについての表面エネルギー試験
実施例2、3、7および比較例B、D、Kの仕上げ組成物を上述の「表面エネルギー試験」に従って試験した。表20には、実施例2、3、7および比較例B、D、Kの仕上げ組成物についての塗装の収縮および不均一性のレベル(すなわち、フィッシュアイビーディングのレベル)を示す。
【0077】
【表20】

【0078】
表20に示されるデータから、本発明の仕上げ組成物に揮発性シロキサンを組み込む利点が実証されている。実施例2および3の仕上げ組成物は、確認可能なフィッシュアイビーディングを示さなかった。実施例2の仕上げ組成物は、25℃で動粘度0.65cSt(6.5×10-72/s)を有するポリジメチルシロキサン7%を含有した。同様に、実施例3の仕上げ組成物は、25℃で動粘度5cSt(5.0×10-62/s)を有する、デカメチルシクロペンタシロキサンとドデカメチルシクロヘキサシロキサンとの流体混合物7%を含有した。これらは、塗布すると蒸発する揮発性シロキサンである。比較例Dの仕上げ組成物も、組成物がシロキサン物質を実質的に含有しないために、フィッシュアイビーディングを示さなかった。
【0079】
それに対して、比較例BおよびKの仕上げ組成物はフィッシュアイビーディングを示した。これは、これらの仕上げ組成物内に含有される不揮発性シロキサンによるものであった。比較例Bの仕上げ組成物は、25℃で動粘度10cSt(1.0×10-72/s)を有するポリジメチルシロキサン7%を含有した。比較例Kの仕上げ組成物は、25℃で動粘度5cSt(5.0×10-62/s)を有するポリジメチルシロキサン7%を含有した。ポリジメチルシロキサンは不揮発性シロキサンであり、塗布した際に実質的に蒸発しなかった。その代わりに、それらはまだ組成物中にあり、それによって、試験パネルの表面エネルギーが低下し、その結果フィッシュアイビーディングが生じた。
【0080】
さらに比較すると、25℃で動粘度5cSt(5.0×10-62/s)を有する揮発性環状シロキサン7%を含有する実施例2の仕上げ組成物は、実施例7および比較例Kの仕上げ組成物よりも観察可能なフィッシュアイビーディングを示さなかった。
【0081】
実施例1〜7および比較例A〜Kについての作業時間および油性残留物量の試験
上述の「作業時間および油性残留物の量の試験」に従って、実施例1〜7および比較例A〜Kの仕上げ組成物を試験した。表1に示される数値的尺度に従って、実施例1〜7および比較例A〜Kの仕上げ組成物についての総作業時間の評点および油性残留物量の評点を表21に示す。各仕上げ組成物に関して、総作業時間の評点の数値は、バフ仕上げサイクル3回すべての後の作業時間を表す。油性残留物量の評点の3つの数値は、各バフ仕上げサイクル後の油性残留物の量を表す。実施例1〜7および比較例A〜Kの仕上げ組成物によって生成される油性残留物の量の違いをさらに実証するために、各バフ仕上げサイクル後の油性残留物の量の値を表21に示す。
【0082】
【表21】

【0083】
表20に示されるデータによって、本発明の仕上げ組成物に揮発性シロキサンを組み込む利点がさらに実証されている。実施例1〜7の仕上げ組成物は、許容可能な総作業時間と許容可能な油性残留物量のどちらも示した。実施例1〜7の仕上げ組成物は、掻き傷をバフ仕上げにより除去するのに適切な長さの時間を提供し、迅速かつ効率的にバフ仕上げするのに十分に速く蒸発する、揮発性シロキサンを含有した。さらに、蒸発した際、揮発性シロキサンは、望ましくない油性残留物を残さなかった。
【0084】
それに対して、比較例A〜Kの仕上げ組成物は、許容できない総作業時間または許容できない油性残留物量を示した。一般に、シロキサン物質を含有せず、高濃度の揮発性炭化水素溶媒を含有する仕上げ組成物(つまり、比較例A、D、F、G、およびJ)は、許容可能な総作業時間および許容できない油性残留物量を示した。シロキサン物質を含有せず、低濃度の揮発性炭化水素溶媒を含有する仕上げ組成物(つまり、比較例C、E、H、I、およびK)は、許容可能な油性残留物量および許容できない総作業時間を示した。
【0085】
比較例Bの仕上げ組成物は、フィッシュアイビーディングの量が多かったために、試験しなかった。このことから、比較例Bの仕上げ組成物は、事実上使用することができないだろう。
【0086】
実施例7および比較例Kの仕上げ組成物に関して、表21のデータから、揮発性シロキサンと不揮発性シロキサンとの間の粘度の壁(viscosity barrier)がさらに示されている。比較例Kの仕上げ組成物は、実施例7の仕上げ組成物と比較して高い量の油性残留物を示した。濃度の差が小さいにもかかわらず、かつ25℃で動粘度5cSt(5.0×10-62/s)を示すポリジメチルシロキサンがどちらの組成物にも組み込まれているという事実にもかかわらず、この結果がある。
【0087】
比較すると、25℃で動粘度5cSt(5.0×10-62/s)を有する環状シロキサン流体約6%〜約8.75%を含有する、実施例1、2、および4〜6の仕上げ組成物は、許容可能な総作業時間および油性残留物量を示した。さらに、25℃で動粘度0.65cSt(6.5×10-72/s)を有するポリジメチルシロキサン7%を含有する実施例3の仕上げ組成物もまた、許容可能な総作業時間および油性残留物量を示した。
【0088】
本発明は、好ましい実施形態を参照して説明されているが、当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細に変化を加えることができることは理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨粒子とエマルジョンとの混合物を含有する仕上げ組成物であって、
前記エマルジョンが、水、揮発性シロキサン、および潤滑剤を含み、
前記仕上げ組成物が、不揮発性シリコーン材料を実質的に含有しない、仕上げ組成物。
【請求項2】
前記揮発性シロキサンが、仕上げ組成物の約3〜20重量%を占める、請求項1に記載の仕上げ組成物。
【請求項3】
前記仕上げ組成物が、揮発性炭化水素溶媒をさらに含有する、請求項1に記載の仕上げ組成物。
【請求項4】
前記研磨粒子が、約100マイクロメートル以下の平均粒径を有する、請求項1に記載の仕上げ組成物。
【請求項5】
前記研磨粒子が、酸化アルミニウム、シリカ、ケイ酸アルミニウム、炭化ケイ素、およびその組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の仕上げ組成物。
【請求項6】
前記水が、仕上げ組成物の約10〜約60重量%を占め、
前記揮発性シロキサンが、仕上げ組成物の約3〜約20重量%を占め、
前記潤滑剤が、仕上げ組成物の約0.1〜約10重量%を占め、
前記研磨粒子が、仕上げ組成物の約1〜約60重量%を占める、請求項1に記載の仕上げ組成物。
【請求項7】
前記水が、仕上げ組成物の約30〜約50重量%を占め、
前記揮発性シロキサンが、仕上げ組成物の約5〜約10重量%を占め、
前記潤滑剤が、仕上げ組成物の約1〜約5重量%を占め、
前記研磨粒子が、仕上げ組成物の約3〜約50重量%を占める、請求項6に記載の仕上げ組成物。
【請求項8】
前記揮発性シロキサンが、揮発性環状シロキサンを含む、請求項1、5、または7に記載の仕上げ組成物。
【請求項9】
揮発性環状シロキサン;
非シリコーンベースの潤滑剤;
増粘剤;
揮発性炭化水素溶媒;
水;
揮発性環状シロキサンを含有する安定なエマルジョンを生成するのに有効な乳化剤;
酸化アルミニウム粒子;
を含有する仕上げ組成物であって、
ただし、不揮発性シリコーン材料を実質的に含有しないことを条件とする、仕上げ組成物。
【請求項10】
前記揮発性環状シロキサンが、オクタメチル環状テトラシロキサン、デカメチル環状ペンタシロキサン、ドデカメチル環状ヘキサシロキサン、およびその組み合わせからなる群から選択される、請求項8または9に記載の仕上げ組成物。
【請求項11】
前記揮発性シロキサンが、仕上げ組成物の約3〜約20重量%を占め;
前記潤滑剤が、仕上げ組成物の約0.1〜約10重量%を占め;
前記増粘剤が、仕上げ組成物の約0.2〜約5重量%を占め;
前記揮発性炭化水素溶媒が、仕上げ組成物の約5〜約17重量%を占め;
水が、仕上げ組成物の約10〜約60重量%を占め;
前記乳化剤が、仕上げ組成物の約0.1〜約10重量%を占め;
研磨粒子が、仕上げ組成物の約1〜約60重量%を占める、請求項9に記載の仕上げ組成物。
【請求項12】
水と、揮発性シロキサンと、非シリコーンベースの潤滑剤と、乳化剤との混合物を合わせて、エマルジョンを形成する工程であって、前記乳化剤が、安定なエマルジョンを生成するのに有効である工程と;
前記エマルジョン中に研磨粒子を混合して、組成物を形成する工程と;
を含む、組成物を製造する方法において、
ただし、前記組成物の製造に使用される成分に不揮発性シリコーン材料が実質的に存在しないことを条件とする、方法。
【請求項13】
仕上げ組成物を表面上に塗布する工程であって、前記仕上げ組成物が、水と、研磨粒子と、揮発性シロキサンと、非シリコーンベースの潤滑剤と、安定なエマルジョンを生成するのに有効な乳化剤と、を含有する工程と;
前記揮発性シロキサンを表面から実質的に蒸発させて、表面上に前記仕上げ組成物の残留分を残す工程であって、前記仕上げ組成物の残留分が油性残留物を実質的に含有しない工程と;
を含む、表面を仕上げ塗りする方法において、
ただし、前記仕上げ組成物が、不揮発性シリコーン材料を実質的に含有しないことを条件とする、方法。

【公表番号】特表2007−523231(P2007−523231A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551056(P2006−551056)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/039959
【国際公開番号】WO2005/075590
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】