説明

搬送コンテナ用ビーム

【課題】アジャスタ部材のスライド範囲の全長にわたってアジャスタ部材の外部への滑り出しを防止できるようにすること、および、荷物のずれ動きを防止する使用状態で異音の発生を抑制できるようにすることである。
【解決手段】角筒状のビーム本体10の端部内にスライド自在に挿入されたアジャスタ部材11に長孔22を形成し、その長孔22に挿入されたピン23の両端部をビーム本体10に固定する。ピン23の外側にスプリング24を設け、そのスプリング24でアジャスタ部材11をビーム本体10の一方の内側面に押し付け、その接触面に作用する摩擦抵抗によりアジャスタ部材11が自重でスライドするのを防止すると共に、ビーム本体10内でアジャスタ部材11がガタつくのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、荷物搬送用コンテナの対向内側面間に掛け渡される搬送コンテナ用ビームに関する。
【背景技術】
【0002】
図5および図6に示すように、トラック1の荷台2に積載された箱型のコンテナ3内に荷物Wを積み込んで輸送する場合、トラック1の急加速や急減速により荷物Wがずれ動き、荷崩れが生じたり、荷物同士の衝突あるいはコンテナの内面に対する荷物Wの衝突等によって荷物Wが破損するおそれがある。
【0003】
特に、図5に示すように、キャリヤ4に積み込まれた荷物Wの輸送に際しては、上記キャリヤ4には接地輪5を有するため、コンテナ3内でキャリヤ4が移動し易く、コンテナ3の内面に対する衝突により大きな衝突音が発生し、ドライバに不快感を与えることが多い。
【0004】
そのような不都合を解消するため、コンテナ3の対向内面に一対のレール部材6を固定し、その対向するレール部材6間にビームAを掛け渡して荷物Wのずれ動きを防止することが行なわれている。
【0005】
上記ビームAとして、断面角形のビーム本体内にアジャスタ部材をスライド自在に挿入し、そのアジャスタ部材の外端部をレール部材6に形成された係合孔7に着脱自在に係合させるようにしたものが知られている。
【0006】
ここで、アジャスタ部材がビーム本体内に単にスライド自在に挿入されていると、上記アジャスタ部材の外端部をレール部材の係合孔に係合させるビームの掛け渡し時に、そのビームが傾斜状態に保持されてアジャスタ部材が下向きとされた場合に、そのアジャスタ部材が自重によりビーム本体内から外部に滑り出し、取り扱いが困難になるという問題が生じる。
【0007】
また、滑り出したアジャスタ部材が荷物に衝突して、荷物を損傷させるおそれがある。
【0008】
そのような問題点を解決するため、特許文献1に記載された搬送コンテナ用ビームにおいては、ビーム本体の端部内に挿入されたスライド自在のアジャスタ部材にその両端方向に長く延びる長孔を形成し、その長孔内に挿入されたピンの両端をビーム本体に固定して、ピンに対する長孔の両端の当接によりアジャスタ部材のスライド量を規制し、上記アジャスタ部材にストッパ部材を設け、そのストッパ部材によりアジャスタ部材をビーム本体の内部に押し込んだ収容状態に仮止め保持し、アジャスタ部材に所定大きさの引き出し外力が付与された際に、そのアジャスタ部材を引き出せるようしている。
【0009】
【特許文献1】特開平9−267893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記特許文献1に記載された搬送コンテナ用ビームにおいては、ビーム本体内にアジャスタ部材を完全に収容した状態でそのアジャスタ部材を仮止め保持する構成であるため、上記アジャスタ部材が不完全に収容されていると、アジャスタ部材が外部に滑り出す危険がある。
【0011】
また、ビーム本体に対するアジャスタ部材の嵌め合いが隙間をもつ嵌め合いであるため、対向一対のレール部材間に掛け渡して荷物のずれ動きを防止する使用状態において、トラックの振動によりアジャスタ部材がビーム本体内でガタつき、異音を発生させてドライバに不快感を与えるという不都合がある。
【0012】
この発明の課題は、アジャスタ部材のスライド範囲の全長にわたってアジャスタ部材の外部への滑り出しを防止できるようにすること、および、荷物のずれ動きを防止する使用状態で異音の発生を抑制できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、この発明においては、角筒状のビーム本体と、そのビーム本体の端部内にスライド自在に挿入され、外端部がコンテナの内壁面に固定されたレール部材の係合孔に対して係脱自在とされたアジャスタ部材とを有し、前記アジャスタ部材にその両端方向に長い長孔を形成し、その長孔に挿入されたピンの両端部をビーム本体に固定し、そのピンに対する長孔の両端の当接によりアジャスタ部材のスライド量を制限するようにした搬送コンテナ用ビームにおいて、前記ピンの外側に、アジャスタ部材をビーム本体の一方の内側面に押し付けて、アジャスタ部材が自重によりスライドするのを阻止する摩擦抵抗をアジャスタ部材に付与するスプリングを設けた構成を採用したのである。
【0014】
上記の構成からなる搬送コンテナ用ビームにおいて、コンテナ内に積み込まれた荷物のずれ動きの防止に際しては、摩擦抵抗に打ち勝つ大きさの引抜き外力をアジャスタ部材に付与して、そのアジャスタ部材をビーム本体の外部に引き出し、そのアジャスタ部材の外端部をコンテナの内側面に固定された対向一対のレール部材の係合孔に係合して、ビームを対向一対のレール部材間に掛け渡し、そのビームによって荷物のずれ動きを防止する。
【0015】
上記のような使用において、アジャスタ部材はビーム本体の一方の内側面に押し付けられているため、トラックの振動によってアジャスタ部材がビーム本体内でガタつくようなことが殆どなく、アジャスタ部材のガタつきによる異音の発生を抑制することができる。
【0016】
ここで、スプリングとアジャスタ部材の対向部間にワッシャを組込んでおくと、アジャスタ部材の抜き差し時にスプリングに外力が負荷されることが少なくなり、スプリングの破損防止に効果を挙げることができる。また、アジャスタ部材を比較的容易に抜き差しすることができる。
【発明の効果】
【0017】
上記のように、この発明に係る搬送コンテナ用ビームにおいては、アジャスタ部材のスライド量を規制するピンの外側にスプリングを設け、そのスプリングによりアジャスタ部材をビーム本体の一方の内側面に押し付けるようにしたので、アジャスタ部材のスライド領域の全長にわたって、そのアジャスタ部材の外部への滑り出しを防止することができ、ビームの取り扱いの容易化を図ることができる。
【0018】
また、荷物のずれ動きを防止する使用状態でアジャスタ部材がビーム本体内で長さ方向と直交する方向にガタつくようなことが殆どなく、ガタつきによる異音の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、この発明に係る搬送コンテナ用ビームは長さ方向の中央を境にして左右対称であるため、図1および図2では、ビームの一端部のみを示している。
【0020】
図1乃至図4に示すように、搬送コンテナ用ビームはビーム本体10を有している。このビーム本体10は断面が角形の筒状をなし、その端部内にアジャスタ部材11がスライド自在に挿入されている。
【0021】
アジャスタ部材11は、2枚のチャンネル状鋼材12、12を、そのウエブ12aが対向するよう組み合わせて、リベット13の加締めにより結合一体化した構成とされ、その長さはビーム本体10の長さの1/3〜1/6程度の長さとされている。
【0022】
また、2枚の鋼材12、12の対向面間には間隙が形成され、アジャスタ部材11の外端部の間隙に係合板14が組込まれ、リベット15の加締めによってアジャスタ部材11に固定されている。
【0023】
係合板14はL形をなし、その水平板部14aの端部はアジャスタ部材11の外端面から外方に突出し、その突出端部の下辺に係合凹部16が形成されている。
【0024】
係合凹部16は、コンテナ3の内側面に固定されたレール部材6の係合孔7の内周下辺部に対して係合可能とされている。ここで、係合孔7は、レール部材6の長さ方向に等間隔に形成されている。
【0025】
係合板14の水平板部14aの上側おいて、アジャスタ部材11の外端部の間隙にロック板17が組込まれている。ロック板17は、その下端部を挿通する軸18を中心に揺動自在とされ、上端部にはアジャスタ部材11の上面より上側に突出する操作片19が形成されている。
【0026】
ロック板17は、その背部に組込まれた板ばね20によりアジャスタ部材11の外端に向けて付勢されて、その下辺が係合板14における水平板部14aの上辺に当接している。その当接状態において、ロック板17の上辺と係合孔7の内周上辺間に形成された隙間21は係合孔7の内周下辺部に係合する係合凹部16の係合深さより小さく、係合凹部16を係合状態に保持するようになっている。
【0027】
ここで、ロック板17の操作片19を図1の右方向に押圧してロック板17を板ばね20の弾性に抗して傾動させ、アジャスタ部材11を斜め上方に引き上げることによって、係合孔7の内周下辺部に対する係合凹部16の係合を解除することができるようになっている。
【0028】
アジャスタ部材11には、その両端方向に長く延びる長孔22が形成され、その長孔22に挿通されたピン23の両端部はビーム本体10の対向側板10aに支持され、上記長孔22の両端がピン23に当接する範囲内においてアジャスタ部材11はスライド自在とされている。
【0029】
ピン23の外側にはスプリング24が設けられ、そのスプリング24とアジャスタ部材11間にワッシャ25が組込まれている。スプリング24はアジャスタ部材11をビーム本体10の一方の内側面に向けて付勢している。その付勢によってアジャスタ部材11はビーム本体10の一方の内側面に圧接し、その圧接部の摩擦抵抗はアジャスタ部材11が自重によって滑り出さない程度の大きさとされている。
【0030】
実施の形態で示す搬送コンテナ用ビームは上記の構成からなり、図5に示すコンテナ3内の荷物Wのずれ動き防止に際しては、アジャスタ部材11に負荷された摩擦抵抗に打ち勝つ大きさの引抜き外力をアジャスタ部材11に付与して、そのアジャスタ部材11をビーム本体10の外部に引き出し、そのアジャスタ部材11の外端部をレール部材6の係合孔7に係合して、ビームを対向一対のレール部材6間に掛け渡し、そのビームによって荷物Wのずれ動きを防止する。
【0031】
ここで、アジャスタ部材11は、スプリング24の押圧によりビーム本体10の一方の内側面に押し付けられて摩擦抵抗が付与され、その摩擦抵抗はアジャスタ部材11が自重によって滑り出さない程度の大きさであるため、対向一対のレール部材6間にビームを掛け渡す際、ビーム本体10が傾斜状に保持されてもアジャスタ部材11は滑り出すことはなく、ビームの長さは変化しない。
【0032】
このため、ビームの掛け渡し作業を安全に容易に行なうことができると共に、荷物Wを損傷させるという不都合の発生もない。
【0033】
また、アジャスタ部材11はビーム本体10の一方の内側面に押し付けられているため、トラック1の振動によってアジャスタ部材11がビーム本体10内でガタつくことはない。このため、荷物Wの輸送時に異音を発生させるようなことはなく、ドライバに不快感を与えることなく荷物Wを輸送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明に係る搬送コンテナ用ビームの一部分を示す正面図
【図2】図1の一部切欠平面図
【図3】図1のIII−III線に沿った断面図
【図4】図1のIV−IV線に沿った断面図
【図5】搬送コンテナを示す一部切欠正面図
【図6】図5に示す搬送コンテナの扉を開放した状態の側面図
【符号の説明】
【0035】
3 コンテナ
6 レール部材
7 係合孔
10 ビーム本体
11 アジャスタ部材
22 長孔
23 ピン
24 スプリング
25 ワッシャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角筒状のビーム本体と、そのビーム本体の端部内にスライド自在に挿入され、外端部がコンテナの内壁面に固定されたレール部材の係合孔に対して係脱自在とされたアジャスタ部材とを有し、前記アジャスタ部材にその両端方向に長い長孔を形成し、その長孔に挿入されたピンの両端部をビーム本体に固定し、そのピンに対する長孔の両端の当接によりアジャスタ部材のスライド量を制限するようにした搬送コンテナ用ビームにおいて、
前記ピンの外側に、アジャスタ部材をビーム本体の一方の内側面に押し付けて、アジャスタ部材が自重によりスライドするのを阻止する摩擦抵抗をアジャスタ部材に付与するスプリングを設けたことを特徴とする搬送コンテナ用ビーム。
【請求項2】
前記スプリングとアジャスタ部材の対向部間にワッシャを組込んだ請求項1に記載の搬送コンテナ用ビーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−105687(P2010−105687A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278982(P2008−278982)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000208101)大洋製器工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】