説明

搬送制御方法、搬送制御装置およびプログラム

【課題】 ヤードにおける山高さを高くすることと、鋼材の搬送回数を少なくすることとを同時に実現できるようにする。
【解決手段】 山仕分けステップと、その山仕分けを行うための搬送順決定ステップと、該搬送順決定ステップで決定した搬送順に従い、搬送機器に搬送指示を作成する搬送指示作成ステップとを有することを特徴とし、更に、前記山仕分けステップ及び搬送順決定ステップでは、山高さを最大化する指標と搬送回数を最小化する指標とを持つ目的関数を設定し、山立て及び搬送に関する制約条件を満たす数理計画問題に帰着させ、山仕分け及び搬送順を同時に最適化する技術を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄鋼プロセスにおいて、スラブやコイルなどの鋼材を次工程へ円滑に供給するために設けられたヤードの操業を効率的に運用するための鋼材の山仕分けを実現するための方法、その装置およびコンピュータプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鉄プロセスにおいて、例えば製鋼工程から次工程の圧延工程へ鋼材を搬送する際、鋼材は、一旦ヤードと呼ばれる一時保管場所に置かれた後、次工程である圧延工程の処理時刻に合わせてヤードから搬出される。そのヤードのレイアウトの一例を図8に示す。ヤードとは、図8に示すように、上流工程より払い出されたスラブなどの鋼材を、下流工程に供給するためのバッファーエリアとして、縦横に区画された置場101〜104である。縦方向(クレーン1A、1B、2A、2Bの移動可能方向)の分割区分を"棟"、横方向の分割区分を"列"と称することが多く、搬送指令を作成する際は"棟"及び"列"を指定することにより、どこへ鋼材を搬送するかを示す。
【0003】
次に、図8を例にヤードでの基本的な作業の流れを示す。図8ではまず、前工程である製鋼工程の連鋳機110から搬出された鋼材は、パイラー111を経由して受入テーブルXでヤードまで運ばれ、クレーン1A、1B、2A、2Bにより、区画された置場101〜104の何れかに搬送され、山積みして置かれる。そして、後工程である圧延工程の製造スケジュールに合わせ、再びクレーン1A、1B、2A、2Bにより払出テーブルZに載せられ、圧延工程へと搬送される。一般に、ヤードにおいて鋼材は、前記の様に山積みされた状態で置かれる。これは、限られたヤード面積を有効に活用するためである。一方、当然、鋼材を積上げる際、次工程へ供給し易いよう、次工程処理順番に鋼材が上から積まれている必要がある。ここで、鋼材を複数の山に分けることを山仕分けと呼ぶ。
【0004】
なお、本明細書では、「次工程処理順番」を表す指標として、次工程が圧延工程である場合を例にして、「圧延単位」、「ロットNo.」なる概念を定義する。まず、「圧延単位」とは、1ロール分の圧延スケジュールを区別する単位で、この数値が若い順に圧延が行われるものとする。次に「ロットNo.」は、同じ「圧延単位」の中における、更に詳細な圧延順を表す概念で、これも、この数値が若い順に圧延が行われるものとする。なお、同一の「ロットNo.」が複数の鋼材に付与されることがあるが、その場合、それら複数の鋼材は、「ロットNo.」が同一の範囲内で、どの順に次工程へ払い出されても問題ないものとする。
【0005】
以上のように、鋼材の山仕分け作業はヤード管理上、極めて重要な作業であるが、その方法には多くの組合せが考えられ、以下のような要件を考慮する必要がある。
(1)ヤード内での山積み順番が上から順に次工程処理順番になるように鋼材を積む。
(2)ヤードのスペースを有効活用するために一ヶ所に積む鋼材の枚数を極力多くする(つまり山高さをできるだけ高くする)。
(3)クレーンの移動の制約にならない積み高さとする。
(4)積姿が不安定とならぬよう、下に積まれたサイズ(鋼材の幅、長さ)と上に積まれたサイズとの差がある基準値を超えて大きくならないようにする。
(5)鋼材を搬送するクレーンの作業負荷軽減のため、ヤード内に分散されている鋼材を集約し目的とする山姿を構成する際の鋼材の搬送回数を出来るだけ少なくする(搬送回数を少なくするには、搬送順を考慮する必要がある場合がある)。
【0006】
従来、鋼材の山仕分け計画は、計画作成担当者が、ヤードに流入する鋼材の情報と、ヤードの空き状態の情報と、ヤードから流出する鋼材の情報とを基に、前記(1)から(5)の条件を加味して試行錯誤的に行っていた。しかし、このような人手による計画では、計画対象が長時間に及ぶ場合には情報量が膨大となり"適切な"山仕分け計画が作成できないことが多かった。また、計画の作成には熟練を要するため、作成された計画に個人差が発生し、計画の作成者によっては、ヤードの有効利用ができないという問題があった。さらに、熟練担当者の育成に長期間を要する点も問題であった。ちなみに、ここでの"適切な"山仕分け計画とは、(1)、(3)、(4)の制約条件下において、山高さを出来るだけ高くし((2))、そのための鋼材の搬送回数を出来るだけ少なくする((5))ことである。
【0007】
(2)について補足すると、鋼材置場での鋼材の温度低下を防止するため保温台車などにて鋼材を保管する場合には、高い山を構成して保温台車を有効活用することにより、鋼材の温度降下量を低減することができる。次工程が加熱炉ならば鋼材の温度は燃料コストに直結するため、高い山を作ることはヤードの有効利用のみならず、コストの削減にも大きく寄与する。
また、(5)についてであるが、ヤードにおける山立ての場合には、鋼材が前工程から到着する時点で、次工程でのロットNo.、即ち次工程への払出順が決まっている場合と、鋼材が前工程から到着する時点では次工程への払出順が決まっておらず、ヤード内に滞留している内に次工程への払出順が決まる場合とがある。前者の場合には、到着順に従い山立てを行うため、そのための搬送順は必然的に到着順に依存する。従って、この場合には、鋼材の搬送回数は、ほぼ最終山姿のみに依存するため、搬送順を考慮する必要性は薄い。この様なケースを「受入材山立てケース」と称するものとする。
一方、後者のケースの様に、既に、ヤード内で、払出順とは全く無関係に山積みされた複数の鋼材山(これを元山と呼ぶ)を、次工程への払出順に積み直す場合には、同じ最終山を作るにしても、どの順に元山を解体し、集約するかによって、全体の搬送回数が異なってくる。従って、ヤード内に滞留している鋼材に対し、次工程でのロットNo.が決まった後、払出順に山立てを行うケースでは、最終山姿を適性にすることのみならず、それを作成するための鋼材の搬送順の適正化も必要となる。これを「受入済材山立てケース」と称する。本発明はこの「受入済材山立てケース」に適用されるものである。
【0008】
これらのことが要求される置場管理方法に対し、いくつかの方法が開発されている。特許文献1に記載の技術は、山入れに関する情報ファイルを利用し、払い出しの際に山繰りが生じないよう順に製品を積むという基本的なものである。特許文献2でも大ロットの物品を単独の山とすることにより、小ロットの物品の上に大ロットの物品が積上げられる事態を防ぐことなどにより出荷の際の配替え作業を削減するという極基本的な置場管理方法が提案されている。
【0009】
また、特許文献3では、計画対象鋼板数が膨大になった場合においても、ヤードに積む際の条件を満たす最適な山積み順番の計画を自動的に比較的短時間に作成することを目的とした鋼板山積み計画方法が提案されている。この技術は、鋼板のサイズ、圧延順番等の条件を基に鋼板をグループ化し、その各グループの配列順番が異なる配列パターンを複数作成し、その配列パターンの先頭のグループから積山判定条件を基に山積みシミュレーションを行い、その結果に基づいて配列パターン毎に積山数を求め、この積山数が最少の配列パターンを選定し、更に、作成した配列パターンの中から積山数が少ない順番に所定個数の配列パターンを選定し、その選定した配列パターン間相互におけるグループ配列順番の組み替えを行って新たな配列パターンを複数作成し、この作成した配列パターンと積山数が最少の配列パターンとから同様に積山数が最少の配列パターンを選定する手順をとるものである。
【0010】
更に、特許文献4には、どのスラブをどの将来山に割り当てるかを決める山仕分け工程と、スラブをどのような搬送ロットに分割するか決めるロット分け工程と、該ロット分け工程で決めた搬送ロットをどういう順番で生成するかを決めるロット生成順決定工程と、該ロット生成順決定工程で決めたロット生成順を実行するためのハンドリング装置の作業指示を生成する作業指示生成工程と、対象スラブを掘り出す際の邪魔なスラブをどこに退避させるか決める空き地番決定工程を有する置場管理方法が提案されている。
また、特許文献5では、山仕分け対象となる鋼材を集合とみなし、まず、その集合の部分集合である鋼材部分集合を生成し、続いて鋼材部分集合の内、山積み制約を満たす部分集合である実現可能山を抽出した後、置き場管理上最適な実現可能山の部分集合としての最適解を算出することにより山仕分けを実現する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−179525号公報
【特許文献2】特開2000−226123号公報
【特許文献3】特開平11−255336号公報
【特許文献4】特開2007−84201号公報
【特許文献5】特開2008−260630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1、2、3、5に記載の発明は、前記「受入材山立てケース」に対する発明であり、最終山姿、即ち、対象となる鋼材の山仕分けをいかに適切に行うかという点に対する検討はなされているが、そのような最終山を作るための、鋼材の搬送順を適正化する課題については検討がなされていない。従って、ヤード内に滞留している鋼材に対し、次工程への払い出し順番が決まった後、払出順に山立てを行うケースでは、これらの発明では有効な計画を立てることができない。この課題については、特許文献4のみが検討している。ただし、特許文献4では、まず、最終山姿を最適化して、その後、それを作るための鋼材の搬送順を最適化するという二段階の最適化方法を採用している。この方法では、山高さと鋼材の搬送回数とを総合的に見た場合、最適にならない場合が起こりうる。
以上のような従来技術の問題点に鑑みると、ヤードにおける鋼材の山仕分け計画においては、払出山(最終山)姿のみならず、それを作成するための搬送順も合わせて同時に最適化を行うことにより、山高さを高くすることと搬送回数を少なくすることとを総合的に実現する最適な搬送制御を計画することが重要な課題となる。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、ヤードにおける山高さを高くすることと、鋼材の搬送回数を少なくすることとを同時に実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これまでヤードにおける山数と鋼材の搬送回数との同時最小化が実現できていない主たる理由は、山立ての組み合わせ数及び鋼材の搬送順の組み合わせ数が、いずれも莫大な規模であることのみならず、本問題がとりわけ以下に示す二つの難易度の高い課題を内包していることに起因している。
(1)本問題の要求している最適解が「山姿(空間的最適化)」と「搬送順(時間的最適化)」という異質の解であることから、同一の土俵で定式化することが容易でない。
(2)元山を分解し、払出山を再構築する際の効率的な(無駄のない)鋼材の搬送順を定式化(数式化)すること自体が困難である。
【0014】
まず、(1)に対し、本発明者は、搬送ロットを、いずれかの"山"と、いずれかの"搬送順"とに割り付ける異なる二次元の割付問題として定式化することを試みた。また、この際、搬送ロットが割り付けられた"山"における積み位置を別の変数識別パラメータとせず、同じく搬送ロットが割り付けられた"搬送順"によって表現できるよう工夫した。これは、"搬送順"を、払出山における最終位置への"搬送順"として定義することにより可能で、同一の山に割り付けられた"搬送順"の内、若い"搬送順"が割り付けられた搬送ロットほど、下に積まれているという具合である(なお、詳細は、(3)決定変数設定手段5(決定変数設定ステップS3−1)(i)x[i][m][s]にて説明する)。
【0015】
次に、(2)に対して本発明者は、元山を分解し、払出山(最終山姿)を構築する際の、非効率な搬送回数を計数し、それを最小化するよう表現することにより、効率的な搬送順を定式化(数式化)するが可能であることを見出した。即ち、ここで言う"非効率な搬送"とは、元山から払出山(最終山姿)に搬送ロットを搬送する際、払出山側において、当該搬送ロットを置ける状況にないなどの理由で直接搬送できず、最終置場とは別の場所(仮置き場)に一旦仮置きされ、状況が整ったら、仮置き場から最終位置に搬送する場合である。この様に、元の置かれた状態から最終的に置かれる状態へ直接搬送できず、一旦仮置きを要する場合には、この仮置き場への搬送が不要な(余分な)搬送となるため、本明細書ではこの搬送を"非効率な搬送"と称することにする。つまり、元山を分解し、払出山を再構築する際の最小の搬送回数はこの"非効率な搬送"回数が「0」であるケースだから、これを何らかの方法で表現し、最小化するよう定式化すれば良い。これまでの説明からも判るように、"非効率な搬送"は仮置きの発生と同義であることから、「仮置き発生」が表現できればよい。本発明者らは"仮置き"は、元山の積み順と、払出山への搬送順とが食い違う際に発生することに注目し、この元山の積み順と払出山への搬送順との食い違いを検出し、それを目的関数で評価する手法を開発した(この点についても、詳細は、(3)決定変数設定手段5(決定変数設定ステップS3−1)(ii)のy[p][s1][s2]」にて説明する)。
【0016】
従って、本発明の搬送制御方法は、鉄鋼プロセスにおける工程間置場として鋼材を配置するヤードに山積みされた鋼材を積み替えて、該ヤードの後工程に払い出すための払出山を、搬送機器を用いて作成するための搬送制御方法であって、前記払出山を作成する対象となる複数の鋼材についての情報である鋼材情報を取り込む鋼材情報取込ステップと、前記鋼材情報取込ステップにより取り込んだ鋼材情報に基づいて、前記複数の鋼材を複数の払出山に分ける山仕分けと、該山仕分けの作業を実行するための、前記搬送機器による該複数の鋼材の搬送作業の搬送順とを、該搬送順に関する制約である搬送制約式と、該払出山の積姿に関する制約である積姿制約式とを満足し、かつ、所定の目的関数を最小にする様に同時に決定する、山仕分け及び搬送順決定ステップと、前記決定された搬送順を搬送機器に指示する搬送指示ステップと、を有することを特徴とする。
また、本発明の搬送制御装置は、鉄鋼プロセスにおける工程間置場として鋼材を配置するヤードに山積みされた鋼材を積み替えて、該ヤードの後工程に払い出すための払出山を、搬送機器を用いて作成するための搬送制御装置であって、前記払出山を作成する対象となる複数の鋼材についての情報である鋼材情報を取り込む鋼材情報取込手段と、前記鋼材情報取込ステップにより取り込んだ鋼材情報に基づいて、前記複数の鋼材を複数の払出山に分ける山仕分けと、該山仕分けの作業を実行するための、前記搬送機器による該複数の鋼材の搬送作業の搬送順とを、該搬送順に関する制約である搬送制約式と、該払出山の積姿に関する制約である積姿制約式とを満足し、かつ、所定の目的関数を最小にする様に同時に決定する、山仕分け及び搬送順決定手段と、前記決定された搬送順を搬送機器に指示する搬送指示手段と、を有することを特徴とする。
更に、本発明では、コンピュータに、前記搬送制御方法の各ステップを実行させることを特徴とするコンピュータプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ヤードの操業を効率的に運用するための鋼材の山仕分け方法とそれを実現するための搬送方法において、山立て及び搬送に関する制約条件を満たし、山高さを最大化する指標と搬送回数を最小化する指標とのバランスを任意に調整できるよう定式化した最適化問題を解いて山仕分け及び搬送順を算出することにより、山仕分け及び搬送順を同時に最適化するヤードの置場管理技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態による搬送制御装置の構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態による搬送制御方法の各ステップの一例を示すフローチャートである。
【図3】図2の山仕分け及び搬送順決定ステップの詳細なステップの一例を示す図である。
【図4】本発明の実施例での搬送対象となる鋼材情報を表した図である。
【図5】本発明の実施例の比較例として、人手による山仕分け・搬送順計画例を示す図である。
【図6】本発明の実施例の比較例として、山仕分け最適化と搬送順最適化とを分離して行った計画例を示す図である。
【図7】本実施例による山仕分けと搬送順との同時最適化による計画例を示す図である。
【図8】ヤードの一般的なレイアウトの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態の鉄鋼プロセスなどにおけるヤードの搬送制御装置の構成の一例を図1に示す。また、その搬送制御装置を用いて実行する搬送制御方法の各ステップの一例を図2及び図3に示す。搬送制御装置のハードウェアは、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、通信インターフェース、及びユーザインタフェース等を備えたコンピュータシステム(例えばパーソナルコンピュータ)を用いることにより実現できる。
なお、本発明は、前記の様に複数の元山を分解し、複数の払出山を構築する作業を前提としている。また、搬送は本発明によって求められた順にシリアルに実行されるので、本作業に資する搬送機器は単数でも複数でも全く区別無く本発明を適用可能であるが、ここでは、説明を容易にするために、搬送機器が1基である場合を例に以降の説明を行う。
【0020】
(1)鋼材情報取込手段3(鋼材情報取込ステップS1)
まず、ビジネスコンピュータなどの鋼材全般に関するデータベースである鋼材管理系計算機1より、山仕分けの対象となる鋼材に関する以下の情報を、搬送制御装置2の鋼材情報取込手段3にて受け取る。即ち、鋼材情報取込手段3は、ヤード(元山)における鋼材の置場位置、元山姿(即ち、元山に積まれた鋼材の枚数、元山に積まれた各鋼材のサイズとその積み順)、次工程への鋼材の払出順、鋼材寸法、目的関数のバランスを取るための調整係数(後述の「目的関数設定手段8」にて説明)、及びヤードの各置場における山の状態を表すヤード状態(後述の「搬送作業指示生成手段10」にて説明)を受け取る。
【0021】
そして、搬送機器が二つ以上の鋼材を一度に搬送可能である場合、鋼材情報取込手段3は、以下に説明する搬送ロット情報生成手段4に対し、ヤードにおける鋼材の置場位置、元山姿、次工程への鋼材の払出順、および鋼材寸法を出力する。
一方、搬送機器が一度に一つの鋼材しか搬送できない場合、該鋼材情報取込手段3は、以下に説明する決定変数設定手段5に対し、元山姿を出力し、同じく以下に説明する積姿制約式設定手段7に対し、ヤードにおける鋼材の置場位置、元山姿、次工程への鋼材の払出順、および鋼材寸法を出力する。
更に、鋼材情報取込手段3は、以下に説明する目的関数設定手段8に対し、元山姿、および調整係数を出力する。また、鋼材情報取込手段3は、同じく以下に説明する搬送作業指示生成手段10に対し、ヤードにおける鋼材の置場位置、およびヤード状態を出力する。
鋼材情報取込手段3は、例えば、搬送制御装置2の通信インターフェースが鋼材管理系計算機1と通信すると共に、搬送制御装置2のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
【0022】
(2)搬送ロット情報生成手段4(搬送ロット情報生成ステップS2)
搬送ロット情報生成手段4(搬送ロット情報生成ステップS2)では、搬送機器が二つ以上の鋼材を一度に搬送可能である場合に、対象鋼材の元山姿より、元山の鋼材を、クレーンなどの搬送機器により搬送する際の鋼材のまとまり(つまり搬送ロット)に分割する。分割方法は、通常以下の(i)、(ii)のルールに基づき行われる。
(i)元山の最上段の鋼材から下段に向かって順にチェックし、重量やサイズからクレーンが把握可能なところまでを一つの単位とし、当該単位の最終鋼材の次鋼材より同様の操作を繰り返し、元山の鋼材を複数の搬送ロットに分割する。ここでの把握可能な範囲とは、クレーンが吊ることが可能な重量や厚みの制限範囲を意味する。
(ii)前記(i)の例外処理として、クレーンが把握可能な範囲にある鋼材でも、当該鋼材の上の鋼材と次工程での圧延単位が異なり、山を分ける必要がある場合、あるいは同一の圧延単位でも、ロットNo.が払い出す順と逆順の場合には、その鋼材間で搬送ロットを分ける。
【0023】
前記の様にして、元山のクレーンにて把握可能な搬送ロット(搬送単位)への分割が完了したら、以降の処理の準備として、搬送ロット毎に以下の(i)〜(viii)の項目を求める。これらを「搬送ロット情報」と称し、後述する決定変数設定手段5、積姿制約式設定手段7及び搬送作業指示生成手段10に出力する。
(i)鋼材ロットリスト:当該搬送ロットに含まれる鋼材No.のリスト
(ii)最大長さ:当該搬送ロットに含まれる鋼材の内、最大の鋼材長さ
(iii)最小長さ:当該搬送ロットに含まれる鋼材の内、最小の鋼材長さ
(iv)最大幅:当該搬送ロットに含まれる鋼材の内、最大の鋼材幅
(v)最小幅:当該搬送ロットに含まれる鋼材の内、最小の鋼材幅
(vi)最遅払出順:当該搬送ロットに含まれる鋼材の内、最も遅い払出順
(vii)最早払出順:当該搬送ロットに含まれる鋼材の内、最も早い払出順
(viii)圧延単位:1ロール分の圧延スケジュールを区別する単位
なお、搬送機器が一度に1つの鋼材しか搬送出来ない場合は、前記各搬送ロットは1つの鋼材から成るものとする。
搬送ロット情報生成手段4は、例えば、搬送制御装置2のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
【0024】
(3)決定変数設定手段5(決定変数設定ステップS3−1)
次に、決定変数設定手段5は、搬送機器が一度に一つの鋼材しか搬送できない場合には、前記鋼材情報取込手段3より元山姿の情報を取得する。一方、搬送機器が二つ以上の鋼材を一度に搬送可能な場合には、決定変数設定手段5は、搬送ロット情報生成手段4より搬送ロット情報を取得する。そして、決定変数設定手段5は、後述する最適化計算にて変数となる決定変数を以下の様に定める。
(i)x[i][m][s]:山仕分け・搬送順変数
山仕分け・搬送順変数x[i][m][s]は、搬送ロットiを払出山(最適山)mに搬送順sで
搬送する場合に「1」、そうでない場合に「0」となる0-1変数である。この山仕分け・搬送順変数の最適解により、払出山(最適山)姿及びそれを作成するための鋼材の搬送順が定まる。これは、例えばm=1に関し、最適解xopt[i][m][s]=1となる変数がxopt[1][1][3]=1,xopt[3][1][5]=1,xopt[7][1][9]=1の3変数であったとすると、m=1に対応する最適山は、下段から、搬送ロット1、搬送ロット3、搬送ロット7の順に積まれた山であり、それぞれ3、5、9番目に最終山に搬送されることになる。
【0025】
(ii)y[p][s1][s2]:仮置き判定変数
仮置き判定変数y[p][s1][s2]は、元山において上下に隣接して積まれている搬送ロット(あるいは鋼材)のペアp(pに対応する搬送ロットペアをi1,i2とし、ここでは搬送ロットi1が上、搬送ロットi2が下にある隣接関係とする)を、搬送順s1、s2の順に搬送する場合に「1」、そうでない場合に「0」となる0-1変数である。搬送ロットのペアpの区分数Npは、元山において上下に隣り合う搬送ロットのペアpの総数に相当する。
この仮置き判定変数は、本発明の実施形態の概要で記したように、元山から払出山へ搬送ロットを搬送する際、直接搬送できない状況、即ち仮置きの発生の有無を定式化するため導入したものである。ここでは、搬送ロットi1が上、搬送ロットi2が下にある隣接関係をpとしていることから、s1>s2の際に最適解yopt[p][s1][s2]=1となれば、元山の積順と搬送順とが食い違い、「仮置き」が発生するケースとなる。
【0026】
(iii)δ[m]:最適山存在判定変数
最適山存在判定変数δ[m]は、払出山(最適山)mが存在する場合に「1」、存在しない場合に「0」となる0-1変数である。
尚、(3)(ii)において設定される仮置き判定変数y[p][s1][s2]は、元山において上下に隣接する搬送ロットのペアの搬送順を表現したもので、その識別パラメータp、s1、s2だけを見ると、複数の元山を区別していないように見えるが、この変数でも元山の区別は行われている。例えば、元山が例えば上から搬送ロットi1、i2、i3により構成されるとすると、搬送ロットのペアpは、pa(i1,i2)、pb(i2,i3)となり、搬送ロットi1と搬送ロットi3とは直接変数化されていないが、paとpbとにより繋がっている。しかし、元山が異なればこのような繋がりも生じないことにより区別されている。本発明の実施形態においては、このように複数の元山を直接的に(元山の識別パラメータがないという意味で)区別せず、簡易的な変数体系での定式化を実現するので、計算時間を短縮することができる。
決定変数設定手段5は、例えば、搬送制御装置2のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
【0027】
(4)搬送制約式設定手段6(搬送制約式設定ステップS3−2)
続いて、搬送制約式設定手段6は、決定変数設定手段5で定義された決定変数(x[i][m][s]、y[p][s1][s2]、δ[m])が満たすべき基本的な(変数の定義に付随する)以下の制約式を設定する。
(i)搬送ロットiの一意制約
この制約は、いずれの搬送ロットiに対しても、いずれかの払出山(最適山)m及び搬
送順sの組が必ず一つだけ割当てられねばならないという制約であり、一つの搬送ロットに複数の搬送順や払出山を割当てることはできないという基本的な制約である。本制約は(式1-1)のように設定される。
【0028】
【数1】

【0029】
(ii)搬送順sの一意制約
この制約は、いずれの搬送順sに対しても、いずれかの搬送ロットi及び払出山(最適
山)mの組が必ず一つだけ割当てられねばならず、一つの搬送順sに複数の搬送ロットi
あるいは払出山(最適山)mを割当てることはできないという基本的な制約である。本制約は(式1-2)のように設定される。
【0030】
【数2】

【0031】
(iii)x[i][m][s]とy[p][s1][s2]との関係制約
この制約は、搬送ロットのペアp(搬送ロットi1、i2)が元山において上下関係に
ある場合、x[i][m][s]とy[p][s1][s2]との間には両者の定義より(式2-1)、(式2-2)の制約式(関係式)が成り立たねばならないという制約である。
【0032】
【数3】

【0033】
搬送制約式設定手段6は、例えば、搬送制御装置2のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
【0034】
(5)積姿制約式設定手段7(積姿制約式設定ステップS3−3)
また、積姿制約式設定手段7は、決定変数設定手段5で定義された決定変数(x[i][m][s]、y[p][s1][s2]、δ[m])が満たすべき積姿に関する以下の制約式を、搬送機器が二つ以上の鋼材を一度に搬送可能である場合には、搬送ロット情報生成手段4からの"搬送ロット情報"を基に、搬送機器が一度に一つの鋼材しか搬送できない場合は、鋼材情報取込手段1からの"ヤードにおける鋼材の置場位置"、"元山姿"、"次工程への鋼材の払出順"、及び"鋼材寸法"を基に設定する。ここで積姿とは、山に積まれた鋼材の枚数と、各鋼材のサイズと、その積み順とを指す。
(i)払出山(最適山)積み制約
決定変数x[i][m][s]にて記したように、その最適解がxopt[i1][m][s1]=1,xopt[i2][m][s2]=1であった場合、搬送ロットi1と搬送ロットi2とは、同じ払出山mに
積まれ、もしs1<s2であれば、搬送ロットi1が搬送ロットi2より下段に積まれる
ことになる。前記したようにヤードにて鋼材を山積する場合、積み姿が不安定な逆ピラミッド状態とならないよう、以下のような積制約がある。
・長さ制約:下積鋼材長さ−上積鋼材長さ ≧ L(基準値:マイナスのケースもあり)
・幅制約:下積鋼材幅−上積鋼材幅 ≧ W(基準値:マイナスのケースもあり)
・高さ制約:総積高さ≦H(基準値) または、総積枚数≦P(基準値)
以上の制約の内、長さ制約と幅制約については、払出山(最適山)mにおいて上下関係となる二つの搬送ロットi1、i2との間で判定可能である。また、払出山(最適山)で
は、積姿とは別に、払出を円滑に行うため、払出順の若い搬送ロットほど上に積まれている必要がある。従って、この払出に関する制約も積姿制約と同様に二つの搬送ロットi1
、i2の間で判定可能である。つまり、任意の二つの搬送ロットi1、i2に対し、以下
の4通りのケースのいずれかであることが判定できる。
・ケース1:搬送ロットi1が搬送ロットi2の下でなければならないケース
・ケース2:搬送ロットi1が搬送ロットi2の上でなければならないケース
・ケース3:搬送ロットi1と搬送ロットi2との上下関係に制約がないケース
・ケース4:搬送ロットi1と搬送ロットi2とを同一の山にできないケース
【0035】
積姿制約式設定手段7は、任意の二つの搬送ロットi1、i2に対し、それらの関係が前記の4ケースのいずれであるかに応じ、以下の様に制約式を設定する。ちなみに、ケース4は、例えばサイズ的には、搬送ロットi1が搬送ロットi2の下でなければならないが、払出順では、搬送ロットi1が搬送ロットi2の上でなければならないケースなどに生ずる。
【0036】
搬送ロットi1、i2の関係が、
・ケース1の場合:搬送ロットi1が搬送ロットi2の下でなければならないので、s1
>s2となる任意のs1、s2に対し、(式3-1)の制約を課す。
・ケース2の場合:搬送ロットi1が搬送ロットi2の上でなければならないので、s1
<s2となる任意のs1、s2に対し、(式3-2)の制約を課す。
・ケース3の場合:もちろん、制約は不要。
・ケース4の場合:搬送ロットi1と搬送ロットi2とを同一の山にできないので、任意
のs1、s2に対し、(式3-3)の制約を課す。
【0037】
【数4】

【0038】
また、山高さ制約に関しては、総積高さ制約を(式4-1)とし、総積枚数制約を(式4-2)として設定することにより制約できる。
【0039】
【数5】

【0040】
積姿制約式設定手段7は、例えば、搬送制御装置2のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
【0041】
(6)目的関数設定手段8(目的関数設定ステップS3−4)
以上で、制約式の設定が完了したので、目的関数を目的関数設定手段8にて設定する。ここでの目的関数は、山高さを高くする目的の関数及び搬送回数を少なくする目的の関数の二つである。それぞれの関数の設定方法を以下に示す。
(i)山高さを高くする目的関数
山高さを高くすることは、山数を少なくすることと同義だから、この目的を達するための目的関数Jは、(式5-1)の様に山数の総和を目的関数として設定すればよい。
【0042】
【数6】

【0043】
(ii)搬送回数を少なくする目的関数
搬送回数は、最低でも搬送ロット数を要するが、それより大きくなるのは、元山から払出山(最適山)mへ搬送する際、直接搬送できず、一旦仮置きを行う必要がある場合である。従って、元山を分解して払出山(最適山)mを作る際、何回「仮置き」が必要となるかにより、搬送回数が決まることから、このための目的関数は、「仮置き数」を評価してやれば良い。この「仮置き」は、元山の積順と搬送順sとが食い違う際に発生する。従って、元山の積順に従い上から順に搬送されていない場合は、仮置きが発生することとなり、これは、決定変数y[p][s1][s2]により計数可能である。
つまり、元山において上下に隣接して積まれている搬送ロットのペアp(搬送ロットi
1,i2:搬送ロットi1が上、搬送ロットi2が下)の搬送順s1、s2がs1>s2の際にyopt[p][s1][s2]=1となれば、元山の積順と搬送順とが食い違い、「仮置き」が発生するケースとなる。このため、(式5-2) の様に、s1>s2となるケースでの仮置き判定変数y[p][s1][s2]の総和を目的関数として設定すればよい。
【0044】
【数7】

【0045】
(iii)両者のバランスをとる目的関数
山高さの最大化と搬送回数の最小化とのバランスを調整するには、鋼材情報取込手段3より入手した"目的関数のバランスを取るための調整係数Weight"を用い(式5-3)のように目的関数を設定すればよい。
J=Weight・J1+J2 ・・・(式5-3)
目的関数設定手段8は、例えば、搬送制御装置2のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
【0046】
(7)最適解算出手段9(最適解算出ステップS3−5)
ここまでの処理により、最適化計算を行う準備が整ったこととなるので、搬送制約式設定手段6及び積姿制約式設定手段7にて設定された制約式の条件下において、目的関数設定手段8にて設定した目的関数を最小化する決定変数であるxopt[i][m][s]、yopt[p][s1][s2]、及びδopt[m]の最適値(これを以降最適解と称する)を最適解算出手段9にて算出する。ここで、最適解算出にあたっては、例えば0-1整数計画問題解法solverを用いる。
また、前記決定変数設定手段5(決定変数設定ステップS3−1)、搬送制約式設定手段6(搬送制約式設定ステップS3−2)、積姿制約式設定手段7(積姿制約式設定ステップS3−3)、目的関数設定手段8(目的関数設定ステップS3−4)、及び最適解算出手段9(最適解算出ステップS3−5)の5手段(ステップ)は、山仕分けと搬送順とを同時に最適化する山仕分け及び搬送順決定手段13(山仕分け及び搬送順決定ステップS3)に対応している。つまり、山仕分け及び搬送順決定手段13(山仕分け及び搬送順決定ステップS3)は前記の5つの手段5〜9(ステップS3−1〜S3−5)から構成されている。
最適解算出手段9は、例えば、搬送制御装置2のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
【0047】
(8)搬送作業指示生成手段10(搬送作業指示生成ステップS4)
搬送作業指示生成手段10は、最適解算出手段9(最適解算出ステップS3−5)により算出された最適解xopt[i][m][s]、yopt[p][s1][s2]、及びδopt[m]に基づき、各搬送ロットの搬送順を定め、更に、鋼材情報取込手段3からの"元山の置場位置(情報)"より鋼材の移動開始位置(搬送開始位置)を求め、"ヤード状態(情報)"より、空きのある所を移動先の位置(搬送終了位置)として定め、搬送作業指示を生成する。搬送ロットiの搬送作業順番は、最適解xopt[i][m][s]=1となる搬送順sである。しかし、この搬送順sは、最終的に払出山に搬送する際の順番である。したがって、もし仮置きが発生する場合は、その仮置きが必要な鋼材を、その搬送順sより先に元山から仮置き場所に搬送する必要がある。これは、yopt[p][s1][s2]より判定できる。即ち、yopt[p][s1][s2]=1となった変数の内、s1>s2となるものがあれば、その際の搬送ロットのペアp(搬送ロットi1、i2:搬送ロットi1が上、搬送ロットi2が下)に対応する搬送ロットi1が仮置きの対象となる。この場合に、搬送ロットi1を元山から仮置き場へ搬送する順番は、搬送順s2よりも早いタイミングであればいつでも良いが、ここでは、搬送作業指示生成手段10は、便宜的に搬送順s2の直前に搬送するものとして計画する。また、yopt[p][s1][s2]=1となった変数の内、s1>s2となるものがなく、全てs1<s2であれば、仮置きは発生しないので、搬送作業指示生成手段10は、搬送ロットiを搬送順sの順に元山から払出山へ直接搬送する搬送作業指示を生成すればよい。
搬送作業指示生成手段10は例えば、搬送制御装置2のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
【0048】
(9)搬送作業指示手段11(搬送作業指示ステップS5)
搬送作業指示手段11は、搬送作業指示生成手段10にて算出された搬送量(各搬送ロットの搬送順、移動開始位置、及び移動先の位置を含む搬送作業指示)を適宜、搬送機器12へ出力しヤード内の物流を管理する。
搬送作業指示手段11は、例えば、搬送制御装置2の通信インターフェースがクレーン1A、1B、2A、2B等の搬送機器12と通信すると共に、搬送制御装置2のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
【0049】
以上のように、本実施形態では、鉄鋼プロセスにおける半製品の工程間の置場としてのヤードに山積された鋼材を積み替えて、後工程に払い出すための払出山を作るためのヤードの置場管理方法において、どの鋼材をどの山に割当てるかという山仕分けと、その山仕分けを行うために、どの鋼材をどの様な順に搬送するかとを同時に決める山仕分け及び搬送順決定ステップと、該山仕分け及び搬送順決定ステップで決定した搬送順に従い、搬送機器に搬送指示を作成する搬送指示作成ステップとを有することを特徴とし、更に、前記山仕分け及び搬送順決定ステップでは、山高さを最大化する指標と搬送回数を最小化する指標とを持つ目的関数を設定し、山立て及び搬送に関する制約条件を満たす数理計画問題に帰着させ、山仕分け及び搬送順を同時に最適化するため(両者のバランスをとるため)、先の課題であった「払出山姿のみならず、それを作成するための搬送順も合わせて同時に最適化すること(両者のバランスをとること)」を可能とする。
【実施例】
【0050】
次に、簡単な例題を用いて本発明の実施例を詳細に示す。
図4は、本実施例での搬送対象となる鋼材情報を表したものである。「元山No.」、「積段」は元山とその山での積段を表す。なお、積段は最下段から数えた段数である。
この搬送対象となる鋼材を「圧延単位」別に、「ロットNo.」順に上から積まれた状態で山立てする問題を考える(つまり、「圧延単位」別に山を分ける場合を考える)。また山立ての際の、積姿制約は、長さ、幅、高さに関し以下の制約とする。
・長さ:上に積まれた鋼材の長さが、下に積まれた鋼材のそれより4000[mm]を超えないこと。
・幅:上に積まれた鋼材の幅が、下に積まれた鋼材の(1.5×下に積まれた鋼材の最小幅−290)[mm]を超えないこと。
・高さ:積段数が13段を超えないこと。
【0051】
図5は、この制約下での、人手による山仕分け・搬送順計画例を示す。図6は、特許文献4に示したような山仕分け最適化と搬送順最適化とを分離して行った計画例を示す。図7は、本実施例による山仕分けと搬送順との同時最適化による計画例を示す。なお、本実施例による同時最適化の際の目的関数は、J=10×(山数)+(搬送数)を最小化することとする。
図5〜7における、「搬送順(仮置)」は、元山から最適山(払出山)へ直接搬送できず、一旦仮置きが発生する場合の元山から仮置場への鋼材の搬送順を表している。従って「搬送順」は、元山あるいは仮置場(仮置きが発生する場合)から最適山(払出山)へ鋼材を搬送する順番を示す。
【0052】
まず、図5に示すように、人手による計画例では、仮置きが発生していないが、山数が6山となっている。一方、図6に示すように、山仕分け最適化と搬送順最適化とを分離して行った計画例では、山数が4山に減らされているが、その分、搬送ロット4及び10において仮置きが発生しているため、人手による計画よりも搬送回数が2回多くなっている。この場合の仮置きの発生状況について考えてみる。まず、図6において、最適山No.2には、元山No.7から搬送ロット4及び6が搬送される(図6の上から13〜17行の欄を参照)。しかしながら、両搬送ロット4、6の元山No.7における位置関係は、最適山No.2と同じく搬送ロット4が上、搬送ロット6が下という関係である(図6の上から13〜17行の欄を参照)。したがって、いかにうまく搬送順を考えても搬送ロット4の仮置きを防ぐことはできない。これは搬送ロット10についても同様で、この搬送ロット10が属する最適山No.4には、元山No.8から搬送ロット10、12が搬送され、両搬送ロット10、12の位置関係が両方の山で同じ関係となっている(搬送ロット10が上、搬送ロット12が下、図6の上から34行〜37行の欄を参照)。
【0053】
これに対し、図7に示す本実施例による山仕分けと搬送順との同時最適化による計画例では、搬送ロット4に対しては、圧延単位2の山が一つしかないので、図6のケースと同様だが、搬送ロット10については、搬送ロット12と山を分けることにより、山仕分け最適化と搬送順最適化とを分離して行った計画例で発生していた仮置きの発生を防止し、1回だけの仮置きの発生で山数も4となる。
【0054】
(本発明に係る他の実施の形態)
また、本発明の搬送制御方法の各ステップは、前述した実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(CPU若しくはMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えばフレキシブルディスク,ハードディスク,光ディスク,光磁気ディスク,CD−ROM,CD−R,磁気テープ,不揮発性のメモリカード,ROMなどを用いることができる。
また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
更に、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0055】
尚、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 鋼材管理系計算機
2 搬送制御装置
3 鋼材情報取込手段
4 搬送ロット情報生成手段
5 決定変数設定手段
6 搬送制約式設定手段
7 積姿制約式設定手段
8 目的関数設定手段
9 最適解算出手段
10 搬送作業指示生成手段
11 搬送作業指示手段
12 搬送機器
13 山仕分け手段&搬送順決定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鋼プロセスにおける工程間置場として鋼材を配置するヤードに山積みされた鋼材を積み替えて、該ヤードの後工程に払い出すための払出山を、搬送機器を用いて作成するための搬送制御方法であって、
前記払出山を作成する対象となる複数の鋼材についての情報である鋼材情報を取り込む鋼材情報取込ステップと、
前記鋼材情報取込ステップにより取り込んだ鋼材情報に基づいて、前記複数の鋼材を複数の払出山に分ける山仕分けと、該山仕分けの作業を実行するための、前記搬送機器による該複数の鋼材の搬送作業の搬送順とを、該搬送順に関する制約である搬送制約式と、該払出山の積姿に関する制約である積姿制約式とを満足し、かつ、所定の目的関数を最小にする様に同時に決定する、山仕分け及び搬送順決定ステップと、
前記決定された搬送順を搬送機器に指示する搬送指示ステップと、
を有することを特徴とする搬送制御方法。
【請求項2】
前記山仕分け及び搬送順決定ステップは、
前記山仕分け及び搬送順を決定する際に決定されるべき変数である決定変数を設定する決定変数設定ステップと、
前記搬送順に関する制約であり、前記決定変数についての関係として定義される前記搬送制約式を設定する搬送制約式設定ステップと、
前記払出山の積姿に関する制約であり、前記決定変数についての関係として定義される前記積姿制約式を設定する積姿制約式設定ステップと、
前記山仕分けにより作成される払出山の数が少ないほど、かつ、前記搬送作業の回数が少ないほど小さな値を取る関数である前記目的関数を設定する目的関数設定ステップと、
前記搬送制約式と前記積姿制約式とを満足し、かつ、前記目的関数を最小にする、前記決定変数の最適解を算出する最適解算出ステップと、
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の搬送制御方法。
【請求項3】
前記鋼材情報取込ステップにより取り込んだ、前記払出山を作成する対象となる複数の鋼材についての鋼材情報から、該複数の鋼材を、前記搬送機器が一度に搬送可能な単位である搬送ロットに分割し、該搬送ロットについての情報を生成する搬送ロット情報生成ステップ
を更に有することを特徴とする請求項1または2に記載の搬送制御方法。
【請求項4】
前記決定変数設定ステップで設定される決定変数には、前記搬送ロットの前記払出山への搬送順を表す変数である山仕分け・搬送順変数と、元山に於いて上下に隣接して積まれている二の前記搬送ロットが、前記払出山に搬送される際の途中での仮置きの発生の有無を表す変数である仮置き判定変数とを含み、
前記目的関数は、前記仮置きの数が少ないほど前記搬送作業の回数が少ないと評価する関数である
ことを特徴とする請求項2または3に記載の搬送制御方法。
【請求項5】
前記山仕分け及び搬送順決定ステップでは、0−1整数計画問題として前記最適解を計算し、山仕分け及び搬送順を同時に最適化することを特徴とする
請求項1〜4のいずれか1項に記載の搬送制御方法。
【請求項6】
鉄鋼プロセスにおける工程間置場として鋼材を配置するヤードに山積みされた鋼材を積み替えて、該ヤードの後工程に払い出すための払出山を、搬送機器を用いて作成するための搬送制御装置であって、
前記払出山を作成する対象となる複数の鋼材についての情報である鋼材情報を取り込む鋼材情報取込手段と、
前記鋼材情報取込ステップにより取り込んだ鋼材情報に基づいて、前記複数の鋼材を複数の払出山に分ける山仕分けと、該山仕分けの作業を実行するための、前記搬送機器による該複数の鋼材の搬送作業の搬送順とを、該搬送順に関する制約である搬送制約式と、該払出山の積姿に関する制約である積姿制約式とを満足し、かつ、所定の目的関数を最小にする様に同時に決定する、山仕分け及び搬送順決定手段と、
前記決定された搬送順を搬送機器に指示する搬送指示手段と、
を有することを特徴とする搬送制御装置。
【請求項7】
前記山仕分け及び搬送順決定手段は、
前記山仕分け及び搬送順を決定する際に決定されるべき変数である決定変数を設定する決定変数設定手段と、
前記搬送順に関する制約であり、前記決定変数についての関係として定義される前記搬送制約式を設定する搬送制約式設定手段と、
前記払出山の積姿に関する制約であり、前記決定変数についての関係として定義される前記積姿制約式を設定する積姿制約式設定手段と、
前記山仕分けにより作成される払出山の数が少ないほど、かつ、前記搬送作業の回数が少ないほど小さな値を取る関数である前記目的関数を設定する目的関数設定手段と、
前記搬送制約式と前記積姿制約式とを満足し、かつ、前記目的関数を最小にする、前記決定変数の最適解を算出する最適解算出手段と、
を更に有することを特徴とする請求項6に記載の搬送制御装置。
【請求項8】
前記鋼材情報取込ステップにより取り込んだ、前記払出山を作成する対象となる複数の鋼材についての鋼材情報から、該複数の鋼材を、前記搬送機器が一度に搬送可能な単位である搬送ロットに分割し、該搬送ロットについての情報を生成する搬送ロット情報生成手段
を更に有することを特徴とする請求項6または7に記載の搬送制御装置。
【請求項9】
前記決定変数設定ステップで設定される決定変数には、前記搬送ロットの前記払出山への搬送順を表す変数である山仕分け・搬送順変数と、元山に於いて上下に隣接して積まれている二の前記搬送ロットが、前記払出山に搬送される際の途中での仮置きの発生の有無を表す変数である仮置き判定変数とを含み、
前記目的関数は、前記仮置きの数が少ないほど前記搬送作業の回数が少ないと評価する関数である
ことを特徴とする請求項7または8に記載の搬送制御装置。
【請求項10】
前記山仕分け及び搬送順決定手段では、0−1整数計画問題として前記最適解を計算し、山仕分け及び搬送順を同時に最適化することを特徴とする
請求項6〜9のいずれか1項に記載の搬送制御装置。
【請求項11】
コンピュータに、請求項1〜5のいずれか1項に記載の搬送制御方法の各ステップを実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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