説明

搬送用ローラ及びこれを用いたベルトコンベア

【課題】ベアリングに粉粒体が一定量進入した状態を容易に視認でき、かつこの粉粒体が一定量進入した状態においても、ローラ本体の回転性を低下させることのなく使用できる搬送用ローラ及びこれを備えるベルトコンベアの提供を目的とするものである。
【解決手段】本発明は、回転軸と、この回転軸に外嵌する一対の第一ベアリングと、上記回転軸における一対の第一ベアリングの外側に外嵌する一対の第二ベアリングと、上記回転軸に第一ベアリングを介して回転可能に周設されるローラ本体と、上記第二ベアリングを介して上記回転軸を回転可能に架設する一対のコンベアフレームとを備える搬送用ローラである。上記第一及び第二ベアリングが内輪と外輪と複数のボールとを備え、この第二ベアリングの内輪半径が第一ベアリングの外輪半径より小さいことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送用ローラ及びこれを用いたベルトコンベアに関し、詳細には粉状ないしは粒状の搬送物を搬送する際に好適な搬送用ローラ及びこれを用いたベルトコンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、工場内等において原材料や製品等を搬送する装置としてベルトコンベアが使用されている。図4に示されるように、このベルトコンベア31は、一般的にヘッドローラ32と、このヘッドローラ32と平行に配置されるテールローラ33と、このヘッドローラ32及びテールローラ33に巡回可能に掛け渡されている無端ベルト34とを備えている。また、ベルトコンベア31は、搬送距離が長い場合は、無端ベルト34の弛みを防止するためにヘッドローラ32とテールローラ33との間に複数のキャリアローラ35を備える。
【0003】
ベルトコンベア31は、図示しないモーター等の駆動部を有するヘッドローラ32を回転させることで、無端ベルト34を巡回させている。この際、テールローラ33及びキャリアローラ35は、駆動部を有していなくても自由回転するため、無端ベルト34の動きと共に回転する。従って、このベルトコンベア31は、無端ベルト34を滑らかに巡回させることができる。このようなベルトコンベア31によれば、テールローラ33側の無端ベルト34上に積載物Aを順次積載し、無端ベルト34を巡回させることで、ヘッドローラ32側に積載物Aを順次搬送させることができる。
【0004】
テールローラ33は一般的に図5に示される断面構造を有している。図5に示されるテールローラ33は、左右一対のコンベアフレーム36と、このコンベアフレーム36に両先端部分を固定される固定軸37と、この固定軸37の両端部かつコンベアフレーム36の内側に外嵌する一対のベアリング38と、この固定軸37にベアリング38を介して回転可能に周設されるローラ本体39とを備えている。このローラ本体39は、表面に無端ベルト34から周方向の力が加わることで、固定軸37周りに回転することができる。テールローラ33は、このように固定軸37とローラ本体39との間にベアリング38を有していることで回転摩擦を低減させ、ローラ本体39をスムーズに回転させることができる。
【0005】
このテールローラ33に用いられるベアリング38としては、ボールベアリングが一般的に採用されている。ボールベアリングは、固定軸37に固着される内輪40、ローラ本体39に固着される外輪41、及びこの内輪40と外輪41との間に回転可能に配設される複数のボール42を備えている。このようにベアリング38としてボールベアリングを備えているテールローラ33によれば、固定軸37及びこの固定軸37に固着される内輪40が固定した状態で、この内輪40の外周上で複数のボール42が回転することができるため、外輪41及びこの外輪41に固着されるローラ本体39が低摩擦でスムーズに回転することができる。
【0006】
砂利、砂、セメント、肥料、小麦粉等の粉状ないしは粒状の積載物を搬送するために用いられるベルトコンベアにおいては、この積載物からこぼれ落ちる粉粒体がベアリング38に進入することでボールベアリング、特に複数のボール42の回転を妨げ、ローラ本体39がスムーズに回転しなくなる。ベルトコンベアがこのような状態になると、そのメンテナンスのため工場等のライン全体を停止させる必要が生じ、生産性が著しく低下してしまう。またローラ本体39の回転が完全に停止するに至らなくとも、ベアリング38に粉粒体が進入し、摩擦が高くなった状態で使用を続けると、ひどい場合は故障に至ってしまう。このため、ベアリングへの粉粒体進入に係るローラのメンテナンスは、工場ライン等の恒常的な維持のための重要な課題となっている。
【0007】
このような中、ボールベアリング内に粉粒体が進入することを防ぐ様々な技術が提案されている。上記技術として、例えば、ローラの端部、すなわちベアリングの外側にローラ本体と同径を有する落下粉粒物進入防止用のドーナツ型円盤が装着されたローラがある(実開平7−38028号公報参照)。当該ローラによれば、このドーナツ型円盤によってベアリング部分に蓋をした状態となるため、またコンベアフレームとベアリングとの間隔がこのドーナツ円盤によって小さくなるため、ベアリングへの粉粒体の進入を低減させることができる。
【0008】
しかしながら、上記ローラによっても、ベアリングに進入する粉粒体を完全に遮ることは困難である。すなわち当該ローラによれば、ベアリングへの粉粒体の混入頻度が低下するため使用に支障のない間隔は長くなるが、少量ながらも進入した粉粒体がベアリングに徐々に蓄積されていくため、最終的には粉粒体がベアリングのボール間に詰まってローラがスムーズに回転しにくくなる。
【0009】
また、他の技術として、ベアリングへの粉粒体進入による回転性の低下を検知する技術も提案されている。上記技術としては、例えば、ローラ本体内に比較的高温で溶融する溶融材を用いて固着された告知部材を備えるローラがある(特開平8−91536号公報参照)。このローラによれば、ベアリングに粉粒体が進入して摩擦が生じた際に、摩擦熱により溶融材が溶融し、告知部材が離脱することでローラ本体内でこの告知部材が回転し、異音を発することができる。上記ローラによれば、ベアリングに粉粒体が進入したことで摩擦が生じ、ローラ本体の回転が悪くなっていることを気付かせることができる。
【0010】
しかしながら、上記技術は、摩擦抵抗の増大を知らせるだけであり、ローラのロングランを可能にするものではない。すなわち、上記ローラによれば、この異音により粉粒体がベアリングに一定量進入し回転性が悪くなっていることに気付いても、その気付いたタイミングでベルトコンベアを停止させてメンテナンスしない限りは粉粒体はベアリングに進入し続けることとなり、回転性は低下し続けてしまう。実際、工場ライン等において、この回転性が低下したタイミング毎にメンテナンスを行うことは、ラインを途中で停止させることとなるため非常に不効率である。従って、上記ローラによっても、粉粒体進入を検知してもそのタイミングでメンテナンスしない限り、この回転性の悪い状態のローラを使い続けることとなり、搬送速度が低下する、又はベルトコンベアに余分な付加をかけるという不都合が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実開平7−38028号公報
【特許文献2】特開平8−91536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり、ベアリングに粉粒体が一定量進入した状態を容易に認識することができ、かつこの粉粒体が一定量進入した状態においても、ローラ本体の回転性を低下させることのなく使用でき、メンテナンス頻度を少なくしてランニングコストを抑制可能な搬送用ローラ及びこれを備えるベルトコンベアの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するためになされた発明は、
回転軸と、
この回転軸に外嵌する一対の第一ベアリングと、
上記回転軸における一対の第一ベアリングの外側に外嵌する一対の第二ベアリングと、
上記回転軸に第一ベアリングを介して回転可能に周設されるローラ本体と、
上記第二ベアリングを介して上記回転軸を回転可能に架設する一対のコンベアフレームと
を備える搬送用ローラである。
【0014】
当該搬送用ローラによれば、回転軸とコンベアフレームとが第二ベアリングを介して接続されているため、内側の第一ベアリングが粉粒体の進入等によって回転性が低下した場合においても、第二ベアリングによって回転軸自体が回転することができる。従って当該搬送用ローラは、第一ベアリングに粉粒体が進入した場合においても、ローラ本体の回転性を低下させることなくベルトコンベアを使用し続けることができる。
【0015】
また、当該搬送用ローラによれば、上記構造を有することで、第一ベアリングの回転性が低下した時はじめて第二ベアリングが作用し、回転軸自体が回転することとなる。従って、当該搬送用ローラによれば、回転軸の回転を目視にて確認することによって、粉粒体の進入によるローラの不都合を事前に察知することができる。すなわち、当該搬送用ローラによれば、ローラ本体の回転性を低下させないまま、ベアリングへの粉粒体進入が一定程度進行した状態を確認することができるため、確認後任意のタイミングでこのベアリングのメンテナンスを行うことができる。
【0016】
上記第一ベアリング及び第二ベアリングが、上記回転軸に固着される内輪と、上記ローラ本体又はコンベアフレームに固着される外輪と、この内輪と外輪との間に回転可能に配設される複数のボールとを備え、この第二ベアリングの内輪半径が、第一ベアリングの外輪半径より小さいことが好ましい。
【0017】
当該搬送用ローラによれば、各ベアリングが上記構造を有することによって、第一ベアリングの回転が低下する際に、周方向への力として第二ベアリングの内輪に第一ベアリングの外輪より大きい力が加わることとなる。従って、当該搬送用ローラによれば、第一ベアリング及び第二ベアリングの内部に粉粒体が一定量進入して各ベアリングの摩擦抵抗が一定程度上昇して、第一ベアリングの回転が停止するまでに、確実に第二ベアリングが機能し、回転軸自体が回転し始めることにより使用を続けることができる。また、このように当該搬送用ローラによれば、通常の使用時においては回転軸が固定したままの状態を維持し、少なくとも第一ベアリングの内部に一定量の粉粒体が混入した場合にはじめて回転軸自体が回転することとなるため、メンテナンスのタイミングを目視で容易に確認でき、このメンテナンス等の作業を効率的に行うことができる。
【0018】
上記第一ベアリングの内輪半径と第二ベアリングの内輪半径とが等しく、上記第二ベアリングのボールの直径が、第一ベアリングのボールの直径の1倍以上2倍以下であることが好ましい。
【0019】
当該搬送用ローラによれば、第一ベアリング及び第二ベアリングの内輪半径を等しくすることで、簡単な構造で上記の第二ベアリングの内輪半径と第一ベアリングの外輪半径との好ましい関係を成立させることができる。
【0020】
また、当該搬送用ローラは、第二ベアリングのボールの直径を第一ベアリングのボールの直径の1倍以上2倍以下としているため、第二ベアリングの方が第一ベアリングより粉粒体進入による回転性の低下を受けにくくなっている。このため、当該搬送用ローラによれば、第一ベアリングの回転性が低下した際に、確実に第二ベアリングを回転させることができる。従って、当該搬送用ローラによれば、第一ベアリング及び第二ベアリングの内部に粉粒体が一定量進入し、回転軸とローラ本体との間の摩擦力が一定程度上昇した場合において、より確実に第二ベアリングが機能し、回転軸自体を回転させ始めることができる。
【0021】
従って、当該搬送用ローラを備えるベルトコンベアによれば、粉粒体状の積載物を搬送する場合において、ローラのベアリング内部に一定程度粉粒体が進入した場合も通常通り使用することができ、また目視によって容易にベアリングに粉粒体が進入したことを確認することができる。
【0022】
ここで、ベアリングの内輪半径とは、ベアリングの中心軸(X)から内輪とボールとが接する内輪内面の最底部までの距離をいう。また、ベアリングの外輪半径とは、ベアリングの中心軸(X)から外輪とボールとが接する外輪内面の最底部までの距離をいう。従って、内輪半径とボールの径との和が外輪半径となる関係が成立する。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明の搬送用ローラによれば、ベアリングに粉粒体が進入した場合も回転性が下がることなく使用することができる。また、本発明の搬送用ローラによれば、ベアリングに粉粒体が進入したことを回転軸が回転することで目視により容易に確認することができるため、この粉粒体が混入したベアリングのメンテナンスをタイミング良く効率的に行うことができる。
【0024】
従って、本発明の搬送用ローラを備えるベルトコンベアは、粉粒体状の積載物の搬送作業において、ローラのベアリングに粉粒体が詰まることで搬送作業を滞らせることなく、また粉粒体混入に係るメンテナンスもタイミング良く効率的に行うことができる。さらには、ベアリングの不具合が早期に確認でき、ローラひいてはベルトコンベアの重大故障を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る搬送用ローラを示す断面図である。
【図2】図1の搬送用ローラを示す部分的拡大図である。
【図3】図1の搬送用ローラを備えるベルトコンベアを示す模式図である。
【図4】従来の一般的なベルトコンベアを示す模式図である。
【図5】従来の一般的な搬送用ローラを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の搬送用ローラ及びこれを備えるベルトコンベアについて詳説する。
【0027】
図1の搬送用ローラ1は、回転軸2と、この回転軸2に外嵌する一対の第一ベアリング3と、上記回転軸2における一対の第一ベアリング3の外側に外嵌する一対の第二ベアリング4と、上記回転軸2に第一ベアリング3を介して回転可能に周設されるローラ本体5と、上記第二ベアリング4を介して上記回転軸2を回転可能に架設する一対のコンベアフレーム6とを備えている。
【0028】
回転軸2は、円柱形状を有しており、中空でも中実でもよい。また、回転軸2の材質としては、ローラ本体5や積載物の荷重に耐えうるものであれば特に制限されず、合成樹脂や金属が適宜採用されるが、耐久性及び第一ベアリング3及び第二ベアリング4との固着性の面から金属であることが好ましい。
【0029】
第一ベアリング3は、回転軸2の両端部に対称に一対外嵌している。当該第一ベアリング3としては、ボールベアリング、ニードルベアリング等が用いられるが、好ましくは図1に示したような内輪7、外輪8及び複数のボール9を備える一般的なボールベアリングが用いられる。上記内輪7は、回転軸2に外嵌し、この回転軸2と固着している。一方、外輪8は、ローラ本体5と固着している。また、複数のボール9は、それぞれが回転可能に内輪7と外輪8との間に挟まれた状態で配設されている。当該第一ベアリング3の材質としては特に限定されないが、耐久性や回転軸2及びローラ本体5との固着性の点から金属が好ましい。この第一ベアリング3の材料として用いられる金属としては、一般的には鋼であり、高炭素クロム軸受鋼、ステンレス鋼等が好適に用いられる。また、第一ベアリング3は、シールやシールド等によって覆われていてもよい。また、ボール9間にはグリースなどの潤滑剤が充填されていてもよい。
【0030】
当該第一ベアリング3は、回転軸2とローラ本体5との間の回転摩擦を限りなく低くすることができるため、ローラ本体5の周方向に力を加えた場合においても、回転軸2を固定したまま、ローラ本体5のみを回転させることができる。
【0031】
第二ベアリング4は、回転軸2の両端部でかつ第一ベアリング3の更に外側に対称に一対外嵌している。この第二ベアリング4も、第一ベアリング3と同様な構成を有し、内輪10、外輪11及び複数のボール12を備える一般的なボールベアリングが用いられる。上記内輪10は、回転軸2に外嵌し、この回転軸2と固着している。一方、外輪11は、コンベアフレーム6と固着している。また、複数のボール12は、それぞれが回転可能に内輪10と外輪11との間に挟まれて配設されている。当該第二ベアリング4の材質としては、第一ベアリング3と同様な金属が好適に用いられる。また、第二ベアリング4も、シールやシールド等によって覆われていてもよい。また、ボール12間にもグリースなどの潤滑剤が充填されていてもよい。
【0032】
当該第二ベアリング4は、回転軸2とコンベアフレーム6との間の回転摩擦を限りなく低くすることができ、回転軸2の周方向に一定の力が加わった際に、この回転軸2をスムーズに回転させることができる。
【0033】
ローラ本体5は、中空な円筒形状を有し、ドーナツ平面状の一対の底部13と、曲面状の円筒部14とを備えている。この底部13の内縁端と第一ベアリング3の外輪8とが固着されている。ローラ本体5の材質としては特に限定されないが、耐久性及び第一ベアリング3との固着性などの点から金属であることが好ましい。なお、当該ローラ本体5はベルトコンベアとして使用の際には、円筒部14の表面に無端ベルトが巻かれる。
【0034】
当該ローラ本体5は、上述の通り第一ベアリング3と固着されており、通常、回転軸2との回転摩擦は限りなく小さい状態となっている。従って、このローラ本体5に、無端ベルトが巡回するように力が加わる、すなわち円筒部14の周方向に力が加わった際には、回転軸2が固定されたまま、ローラ本体5のみが回転することとなる。
【0035】
コンベアフレーム6は、回転軸2の両端を支えるものであり、略円形にくり抜かれた開口部を有する第二ベアリング固定部15を備えている。当該コンベアフレーム6は、第二ベアリング固定部15によって回転軸2を第二ベアリング4を介して支持していることで回転軸2を回転可能に架設している。
【0036】
なお、このコンベアフレーム6は、回転軸2の垂直方向かつ水平方向に移動可能に設けられていてもよい。このようにコンベアフレーム6が移動可能であることで、例えば、ベルトコンベアの長さや弛み具合等に応じて、コンベアフレーム6の位置を容易に調整することができる。
【0037】
当該コンベアフレーム6は、このように回転軸2を第二ベアリング4を介して架設しているため、回転軸2の周方向に所定の力が加わった際に、この回転軸2を回転させることができる。また、当該コンベアフレーム6は、略円形にくり抜かれた開口部を有する第二ベアリング固定部15を備えていることで、この搬送用ローラ1を軸方向の外側から見た場合に、第二ベアリング固定部15から回転軸2を見ることができる。すなわち、当該搬送用ローラ1によれば、回転軸2が回転しているか否かを目視により容易に確認することができる。
【0038】
次に、この搬送用ローラ1の機能について詳説する。
【0039】
当該搬送用ローラ1は、通常使用される場合は、第一ベアリング3及び第二ベアリング4ともに粉粒体の詰まり等がないために、回転摩擦が限りなく小さい状態となっている。この状態において、当該搬送用ローラ1のローラ本体5に無端ベルトを通じて周方向の力が加わった場合、第一ベアリング3が機能するため、回転軸2にはこの周方向の力はほとんど作用することはない。従って、通常の使用時において、当該搬送用ローラ1は、回転軸2が固定された状態のまま、ローラ本体5のみを回転させることができる。
【0040】
この搬送用ローラ1を用いて粉粒体状の積載物を搬送し続けていると、この積載物からこぼれ落ちる粉粒体が搬送用ローラ1の各ベアリング部分(第一ベアリング3及び第二ベアリング4)に混入する。第一ベアリング3、具体的には内輪7及び外輪8とボール9とがなす空間内に粉粒体が進入すると、この粉粒体によりボール9への摩擦が大きくなり、ボール9の回転性が低下することで、第一ベアリング3の機能が低下し、ローラ本体5と回転軸2との間の回転摩擦を増加させることとなる。すなわち、第一ベアリング3に一定量の粉粒体が進入した場合、ローラ本体5に加わった周方向の力は、第一ベアリング3を介して回転軸2へ伝わることとなる。
【0041】
回転軸2は、第二ベアリング4を介してコンベアフレーム6によって架設されているため、この回転軸2の周方向へ一定の力が加わることで、回転軸2が回転することとなる。この際、第二ベアリング4にも多少の粉粒体が混入している場合もあるが、第二ベアリング4は、上部がコンベアフレーム6本体によって覆われており、さらには通常は回転していないため、第一ベアリング3と比較して粉粒体の進入量は少ない。
【0042】
このように当該搬送用ローラ1によれば、回転軸2とコンベアフレーム6との間に第二ベアリング4を備えているため、第一ベアリング3が粉粒体の進入によって回転性が低下した場合においても、第二ベアリング4によって回転軸2自体が回転することができる。従って当該搬送用ローラ1は、第一ベアリング3に粉粒体が進入した場合においても、ローラ本体5の回転性を低下させることなくベルトコンベアを使用し続けることができる。
【0043】
また、当該搬送用ローラ1は、第一ベアリング3の回転性が低下した時はじめて第二ベアリング4が作用し、回転軸2自体が回転することとなる。従って、当該搬送用ローラ1によれば、回転軸2の回転を確認することによって、粉粒体の進入によるローラ1の故障を事前に察知することができる。すなわち当該搬送用ローラ1によれば、ローラ本体5の回転性を低下させないまま、粉粒体混入が一定程度進行した状態を確認することができ、そのベアリング(第一ベアリング3及び第二ベアリング4)のメンテナンスを行うことができる。
【0044】
さらに、本発明の搬送用ローラ1においては、ローラ本体5や積載物等の荷重、2つのベアリング3、4の性能に起因する実質的な回転摩擦の存在等を考慮して第一ベアリング3及び第二ベアリング4のサイズを設定することで、第一ベアリング3及び第二ベアリング4への粉粒体の進入具合と、ローラ1自体、具体的には回転軸2の回転性を調整することができる。この調整を行うことで、当該搬送用ローラ1は、回転性を高め、かつ効率的なメンテナンスを行うことができる。この第一ベアリング3及び第二ベアリング4の径等のサイズ設定について、以下説明する。
【0045】
図1及び図2の搬送用ローラ1においては、第一ベアリング3の内輪半径(R11)と第二ベアリング4の内輪半径(R21)とが等しく形成されている。このように形成されていることで、第二ベアリング4の内輪半径(R21)が、第一ベアリング3の外輪半径(R12)より小さい長さとなっている。また、第二ベアリング4のボール12の直径(D)は、第一ベアリング3のボール9の直径(D)以上となるよう、より好ましくは、第一ベアリング3のボールの直径(D)の1倍以上2倍以下となるように形成されている。
【0046】
第一ベアリング3及び第二ベアリング4においては、粉粒体が全く進入していない通常の状態においても少なからず回転摩擦が生じている。また、第二ベアリング4にも粉粒体が混入するため、搬送用ローラ1の使用により当然第二ベアリングの回転性も、ある程度低下する。従って、第一ベアリング3に粉粒体が進入し摩擦抵抗が上昇したにもかかわらず、第二ベアリング4が機能せず、回転軸2が回転し始めない事態も生じうる。しかしながら当該搬送用ローラ1によれば、第一ベアリング3の内部に一定量の粉粒体が進入し、回転軸2とローラ本体5との間の摩擦抵抗がある程度上昇したときに、回転軸2を確実に回転させることができる。以下、上記の原理について説明する。
【0047】
ローラ本体5は、第一ベアリング3における上方の外輪8とボール9との接点Pで最も荷重して、回転軸2に支えられている。また、回転軸2は、第二ベアリング4における下方の内輪10とボール12との接点Qで最も荷重して支えられている。ここで、回転軸2自体の重量等を無視すると、接点Pにかかる鉛直方向の力と接点Qにかかる鉛直方向の力が実質的に等しい。また、接点Pと接点Qにおける摩擦係数が等しいとすると、接点Pと接点Qの最大静摩擦力は等しい。この場合、第一ベアリング3の摩擦抵抗が上昇することでボール9の回転が止まり、回転軸2が回り始めようとする状態において、接点Pで第一ベアリング3の外輪8がボール9に与える周方向の力F(回転軸2側にかかり、回転軸2を回転させる力)と、接点Qで第二ベアリング4の内輪10がボール12に与える周方向の力F(コンベアフレーム6側にかかる力)との間には、回転軸2へのトルクを考慮することで以下の関係式(1)が成立する。
=F(R12/R21) ・・・ (1)
【0048】
当該搬送用ローラ1においては、R12≧R21の関係となっているので、F≧Fとなる。ここで、物理的に、物体に加えた力が最大静摩擦力より大きい場合にその物体は運動を開始することとなる。点Qにおいてボール12に加わる力(F)は、点Pにおいてボール9に加わる力(F)以上である。従って、第一ベアリング3の内部へ一定量の粉粒体が進入して、回転軸2とローラ本体5との間の摩擦力が上昇し、その点Pにおける力がFとなったとき点QにはそのFより大きいFの力が働くこととなる。点Pと点Qにおける最大静摩擦力は等しいとしているため、この際の点Qにおける最大静摩擦力はF(≦F)である。すなわちこの時点で点Qには、最大静止摩擦力以上の周方向への力Fが加わっているため、第二ベアリング4は回転し、回転軸2も回転することができる。従って、第一ベアリング3の回転性が低下し、回転軸2へ一定の力(F)を与え始めたとき、第二ベアリング4のボール12に加わる力(F)によって、確実に回転軸2自体が回転することができる。
【0049】
なお、実質的には、第一ベアリング3はローラ本体5の真下に位置するのに対し、第二ベアリング4は斜め下に位置し、さらにコンベアフレーム6の存在により、第二ベアリング4は、第一ベアリング3に比して粉粒体進入量が少ない。従って、第二ベアリング4のほうが摩擦抵抗の上昇が小さいため、R12とR21との比に基づく理論的なタイミングより早い段階、すなわち第一ベアリング3の回転性低下幅が小さい段階で、第二ベアリング4が機能し、回転軸2を回すことができる。
【0050】
さらに、第二ベアリング4のボール12の直径(D)は、第一ベアリング3のボール9の直径(D)以上である。この場合、同じ力が加わった際に、第二ベアリングのボール12の方が回転しやすい。さらに、第二ベアリングのボール12は直径が大きいため、進入した粉粒体の影響を受けにくい。従って、第一ベアリング3のボール9の直径(D)と、第二ベアリング4のボール12の直径(D)とが上記関係を有する当該搬送用ローラ1によれば、第一ベアリング3の回転性が低下した際、さらに確実に、回転軸2自体を回転させることができる。
【0051】
なお、点Pと点Qとの間には回転軸2の重量等による荷重差が生じるため、また各ベアリング固有の摩擦係数の差異等の要因で、回転軸2自体の回転しやすさは異なってくる。また、各ベアリングにシールやシールドを設けたり、潤滑剤が充填されていることによる粉粒体の進入や、回転性の低下防止手段と併せて、第一ベアリング3の各径と第二ベアリング4の各径等の比を調整することで、実情に応じて回転軸2自体の回転性を調整することができる。
【0052】
図3のベルトコンベア21は、駆動部を有するヘッドローラ22と、テールローラとして搬送用ローラ1と、このヘッドローラ22及び搬送用ローラ1に巡回可能に掛け渡されている無端ベルト23とを備えている。また、ベルトコンベア21は、無端ベルト23の弛みを無くすためにヘッドローラ22と搬送用ローラ1との間に複数のキャリアローラ24を更に備えている。
【0053】
無端ベルト23は、輪状にされた幅広のベルトである。この無端ベルト23の材質としては、特に限定されず、ゴム製、合成樹脂製、フェルト製などが適宜用いられる。また、この無端ベルト23のサイズとしては、工場ラインの長さや積載物の種類やサイズ等に応じ適宜設定される。
【0054】
当該ベルトコンベア21は、図示しないモーター等の駆動部を有するヘッドローラ22を回転させることで、無端ベルト23を巡回させることができる。この際、搬送用ローラ1及び各キャリアローラ24は、無端ベルト23の動きと共に回転することで、無端ベルト23が滑らかに巡回することができる。当該ベルトコンベア21によれば、搬送用ローラ1側のベルトコンベア21端部の無端ベルト23上に積載物Aを積載し、無端ベルト23を巡回させることによって、ヘッドローラ22側に無端ベルト23上の積載物Aを搬送させることができる。
【0055】
当該ベルトコンベア21は、テールローラとして本発明の搬送用ローラ1を備えていることで、積載物Aからこぼれ落ちる粉粒体がベアリングに進入した場合においても、第二ベアリングが機能することで回転軸が回転し、通常通り使用することができる。また、当該ベルトコンベア31は、通常はローラ本体5自体のみが回転しているが、粉粒体が第一ベアリング内に一定量進入すると、回転軸2が回転し始める。従って、当該ベルトコンベア21によれば、ベアリング内への粉粒体の進入を、回転軸2の回転の目視により容易に確認することができる。
【0056】
すなわち当該ベルトコンベア21によれば、粉粒体がベアリングに進入した状態を容易に気付くことができると共に、粉粒体がベアリングに混入した状態でもローラ本体5の回転性を落とさず通常通り積載物Aを搬送することができる。従って、当該ベルトコンベア21によればこのベアリングのメンテナンスを粉粒体混入を発見した後の、しかるべき定期的なメンテナンス時等に行うことができるため、逐一ラインを止める必要が生じず、作業性を高めることができる。
【0057】
なお、本発明の搬送用ローラは、上記実施形態に限定されるものではなく、例えばベアリングにおいて転動体としてボールを用いる代わりに、ころを用いたころ軸受、具体的には円筒状、円錐状、たる状等のころ若しくは自動調心ころ等を用いたころ軸受、又は転動体を有さない滑り軸受を採用してもよい。更には、第一ベアリングと第二ベアリングにおいて内輪径の異なるベアリングを採用してもよい。また、本発明の搬送用ローラは、ベルトコンベアに用いることに限定されず、その他、ローラコロコンベアや、チェーン等を用いたコンベア等にも用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明の搬送用ローラは、工場内等において、砂利、砂、セメント、肥料、小麦粉等の粉粒体状の搬送物を搬送するための搬送用のローラとして利用される。
【符号の説明】
【0059】
1 搬送用ローラ
2 回転軸
3 第一ベアリング
4 第二ベアリング
5 ローラ本体
6 コンベアフレーム
7 内輪
8 外輪
9 ボール
10 内輪
11 外輪
12 ボール
13 底部
14 円筒部
15 第二ベアリング固定部
21 ベルトコンベア
22 ヘッドローラ
23 無端ベルト
24 キャリアローラ
X 回転中心軸
P 第一ベアリングにおける上方の外輪とボールとの接点
Q 第二ベアリングにおける下方の内輪とボールとの接点
A 積載物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
この回転軸に外嵌する一対の第一ベアリングと、
上記回転軸における一対の第一ベアリングの外側に外嵌する一対の第二ベアリングと、
上記回転軸に第一ベアリングを介して回転可能に周設されるローラ本体と、
上記第二ベアリングを介して上記回転軸を回転可能に架設する一対のコンベアフレームと
を備える搬送用ローラ。
【請求項2】
上記第一ベアリング及び第二ベアリングが、
上記回転軸に固着される内輪と、
上記ローラ本体又はコンベアフレームに固着される外輪と、
この内輪と外輪との間に回転可能に配設される複数のボールと
を備え、
この第二ベアリングの内輪半径が、第一ベアリングの外輪半径より小さい請求項1に記載の搬送用ローラ。
【請求項3】
上記第一ベアリングの内輪半径と第二ベアリングの内輪半径とが等しく、
上記第二ベアリングのボールの直径が、第一ベアリングのボールの直径の1倍以上2倍以下である請求項2に記載の搬送用ローラ。
【請求項4】
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の搬送用ローラを備えるベルトコンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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