説明

搬送用ロール、搬送テーブル、及び、鋼板の製造方法

【課題】表面への疵の発生及び表面の摩耗を抑制することが可能な搬送用ロール、該搬送用ロールを複数具備する搬送テーブル、並びに、該搬送テーブルを用いる鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】表面から少なくとも深さ5mmの領域が、300℃の熱履歴を受けた場合であってもビッカース硬さがHv350以上である物質によって構成され、該物質のシャルピー衝撃値が30J/cm以上である搬送用ロール1、複数の搬送用ロール1、1、…を具備する搬送テーブル10、及び、該搬送テーブル10を用いて鋼板を搬送する工程を有する鋼板の製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材等を搬送する搬送用ロール、該搬送用ロールを複数具備する搬送テーブル、及び、該搬送テーブルを用いる鋼板の製造方法に関し、特に、厚み4.0mm以上といった比較的厚い厚鋼板の製造工程において、切断後の厚鋼板を搬送するために有用な搬送用ロール、搬送テーブル、及び、鋼板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送用ロール(以下において単に「ロール」ということがある。)は、一般に金属製品を製造する場合に用いられ、製造途中又は製造後の金属製品は、搬送用ロールの集合体である搬送テーブルにより次工程へと搬送される。ところが、搬送用ロールと接触する金属は、一定の硬度を有するため、搬送用ロールを疵つけやすい。
【0003】
例えば、厚鋼板を例に取った場合、製造の際、所望の大きさに板を切断する工程があり、せん断加工により切断された加工面には、「カエリ」と呼ばれる切断残渣が残る場合がある。このほか、レーザ切断した場合には、「ノロ」(酸化物を含む溶鋼の切断裏面への付着物)と呼ばれる切断残渣が残る場合がある。このような切断残渣が残った鋼板が搬送用ロール上を通過すると、切断残渣によって搬送用ロールの表面に疵が発生する。また、このような切断残渣がないとしても、鋼板表面に凹凸が存在すると、同様に搬送用ロールの表面に疵が発生する場合がある。
【0004】
このような疵を有する搬送用ロールを用いて厚鋼板を搬送すると、その搬送用ロールと接触する鋼板の面(以下において「鋼板面」ということがある。)に引掻き疵や押し込み疵が発生する。かかる引掻き疵や押し込み疵の発生を防止するため、搬送用ロールの表面に疵が発生した場合には、その疵を手入れする必要があり、疵が発生した搬送用ロールの属する搬送ラインを停止する必要がある。このような緊急的なライン停止は生産能率の低下につながる。それゆえ、生産能率の低下を抑制するために、搬送用ロールの疵の発生を抑制することが望まれている。
【0005】
搬送用ロールの疵の発生を抑制する方法としては、これまでに、搬送用ロールの表面を樹脂等で覆う方法のほか、スリーブ(いわゆるロール全長より短い幅の板または中空ロール)をロールに巻き付けたり、はめ込んだりすることにより、搬送用ロール表面及び鋼板面への疵発生を抑制する方法等が提案されている。
【0006】
一方、搬送用ロールには不可避的に摩耗の問題も生じる。加えて、搬送用ロール表面の摩耗は、搬送用ロールの全長に亘って一定ではない。すなわち、通常、製品(例えば、鋼板等に代表される金属製品。以下において「鋼板」ということがある。)の搬送は、搬送用ロールの中央部で、又は、搬送用ロールの両端のうち一端に寄せて行う。この場合、中央部又は一端の近傍が集中的に摩耗する。摩耗が大きくなると、鋼板が搬送中に斜行し、斜行搬送の修正又はロールのメインテナンスのために、生産能率が低下する問題も生じる。それゆえ、生産能率の低下を抑制するために、搬送用ロールの摩耗を抑制することも望まれている。
【0007】
搬送用ロールの摩耗を抑制する技術として、例えば特許文献1には、ロール表面に溶着金属層を形成して耐摩耗性を向上させた搬送用ロールが開示されている。また、特許文献2には、搬送用ロールの一端に寄せて行う鋼板の搬送を行う際に生じる摩耗の問題に対し、搬送用ロールの当該一端から他端に向けて表面の硬度が順次小さくなるような硬化層を設けた鋼板搬送ローラーが開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−167599号公報
【特許文献2】実開昭60−115614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示されている技術のように、搬送用ロールの表面を構成する物質の衝撃値(シャルピー衝撃値)を考慮しないまま、表面を硬度の大きい物質によって構成すると、疵発生の防止効果や耐摩耗性の向上効果が低減する虞があるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、表面への疵の発生及び表面の摩耗を抑制することが可能な搬送用ロール、該搬送用ロールを複数具備する搬送テーブル、及び、該搬送テーブルを用いる鋼板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究の結果、ロール表面を構成する物質の硬度及び衝撃値を制御することにより、ロール表面への疵の発生、及び、ロールの摩耗が抑制されることを知見し、本発明を完成させた。以下、本発明について説明する。
【0012】
第1の本発明は、表面から少なくとも深さ5mmの領域が、300℃の熱履歴を受けた場合であってもビッカース硬さがHv350以上である物質によって構成され、該物質のシャルピー衝撃値が30J/cm以上であることを特徴とする、搬送用ロールである。
【0013】
第1の本発明において、「300℃の熱履歴を受けた場合であってもビッカース硬さがHv350以上である物質(以下において、「物質X」ということがある。)」とは、最大で300℃へと加熱された環境を経た場合であっても、加熱された環境を経ていない場合(すなわち、加熱されていない場合)であっても、JIS Z 2244:2003「ビッカース硬さ試験−試験方法」に記載された方法に基づいてビッカース硬さを測定すると、Hv350以上である物質、をいう。ここで、搬送用ロールを製造する際の熱履歴は、「300℃の熱履歴」に含まれない。さらに、第1の本発明において、「表面から少なくとも深さ5mmの領域が、物質Xによって構成され」とは、(1)ロール全体が物質Xによって構成される形態、(2)ベースとなるロール表面に肉盛溶接を行うことにより、物質Xによって構成される厚さ5mm以上の肉盛層がロール表面に形成されている形態、(3)ベースとなるロール表面に、スリーブとして、物質Xからなる厚さ5mm以上の板が巻きつけられている形態、及び、(4)ベースとなるロール表面に、物質Xからなる厚さ5mm以上の中空ロールが嵌め込まれた形態、を含む概念である。さらに、第1の本発明において、「該物質のシャルピー衝撃値が30J/cm以上である」とは、JIS Z 2242:2005「金属材料のシャルピー衝撃試験方法」に記載された方法に基づいて測定した物質Xのシャルピー衝撃値が、30J/cm以上であることをいう。
【0014】
第2の本発明は、上記第1の本発明にかかる搬送用ロールを複数具備することを特徴とする、搬送テーブルである。
【0015】
第3の本発明は、上記第2の本発明にかかる搬送テーブルを用いて鋼板を搬送する工程を有することを特徴とする、鋼板の製造方法である。
【0016】
第3の本発明において、「鋼板」とは、厚鋼板及び薄鋼板を含む概念である。
【発明の効果】
【0017】
第1の本発明によれば、ロール表面から少なくとも深さ5mmの領域を構成する物質Xの硬さ及び衝撃値が制御されるので、ロール表面への疵の発生が抑制され、ロール表面の摩耗も抑制される。そのため、第1の本発明によれば、表面への疵の発生及び表面の摩耗を抑制することが可能な、搬送用ロールを提供することができる。このようにしてロール表面への疵の発生が抑制されると、搬送用ロールと接触する部材の表面(例えば、鋼板面等。以下において同じ。)への疵の発生も抑制される。したがって、第1の本発明によれば、ロールの補修周期を長くすることが可能になり、製品の生産能率を向上させることが可能になる。
【0018】
第2の本発明によれば、第1の本発明にかかる搬送用ロールを複数具備しているので、搬送用ロールと接触する製品表面(例えば、鋼板面等。以下において同じ。)への疵の発生を抑制することが可能な、搬送テーブルを提供することができる。加えて、第2の本発明によれば、ロールの補修周期を長くして、製品の生産能率を向上させることが可能な、搬送テーブルを提供することができる。
【0019】
第3の本発明によれば、第2の本発明にかかる搬送テーブルを用いて鋼板が搬送されるので、鋼板面への引掻き疵や押し込み疵の形成を抑制することができる。したがって、第3の本発明によれば、鋼板の品質を向上させることが可能な、鋼板の製造方法を提供することができる。加えて、第3の本発明によれば、鋼板面への引掻き疵や押し込み疵の形成が抑制されるので、緊急的なライン停止を抑制することができる。したがって、第3の本発明によれば、生産能率を向上させることが可能な、鋼板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
ロール表面の疵・摩耗は生産能率の低下を招く。ロール表面の疵・摩耗は避けられない問題であるが、可能な限り、疵の発生を防止し、摩耗速度を低減させることが好ましい。そこで、発明者らは、ロール表面の特性に着目した。鋼板と接触するロール表面の特性が上記の問題に大きく関係すると考えたためである。
【0021】
一般には、鋼板が接触するロール表面の硬度が疵の発生に大きく関係すると考えられる。すなわち、硬度が高くなる(=硬くなる;ビッカース硬さHvが大きくなる)ほど疵の発生は少なくなると考えられる。そこで、搬送用ロールの表面に所定の硬度を有する材料を肉盛溶接にて溶着した。ここで、溶接は、搬送用ロールに対し厚み30mmとなるように肉盛した。このようにして作製した搬送用ロールを用いて、実際の厚鋼板を搬送した後、ロール表面に形成された疵の発生状況を観察した。より具体的には、複数の搬送用ロールを具備する搬送テーブルに、作製した搬送用ロールを配置し、8ヶ月間実操業して、ロール表面への疵の発生状況を観察した。肉盛溶接した材料のビッカース硬さ、及び、疵の発生状況の観察結果を、表1に併せて示す。また、図1に、実操業に用いた搬送テーブルの形態を概略的に示す。図1の矢印は鋼板の搬送方向であり、図1のA〜Dは搬送用テーブルに肉盛溶接された材料を示している。
【0022】
【表1】

【0023】
表1において、「Hv」は、いわゆるビッカース硬さであり、JIS Z 2244:2003「ビッカース硬さ試験−試験方法」に記載された方法に基づいて測定した。また、表1において、「ササクレ」とは、ロール表面に凸状に発生した疵をいう。また、表1において、「欠け」とは、ロール表面に凹状に発生した疵をいう。
【0024】
ビッカース硬さHvが大きいほど疵の発生が少ないという仮定が正しいのであれば、表1で上段に記載されているものほど疵は発生し難くなるはずである。しかしながら、表1に示すように、材料CよりもHvが大きい材料A及び材料Bは、材料Cよりも疵が発生しやすく、上記仮定に反する結果となった。
【0025】
そこで、さらに調査をしたところ、本発明者らは以下の知見を得た。すなわち、
1)ロール上を搬送される鋼材は必ずしも冷却されたものではなく、一定の温度(例えば300℃程度)を有する。このため、製造トラブル等で鋼材がロール上で一定時間放置されると、ロールは最大で300℃程度まで温度が上昇する。この熱によりロールの材質が影響を受け、Hvが低下すると(=柔らかくなると)、疵の発生量は多くなる。
【0026】
図2は、表1に示す材料A〜材料Cについて、試験前後のビッカース硬さHvを調べた結果を示したものである。図2より、材料Bは鋼材からの熱の影響を受けてビッカース硬さHvが低下し、柔らかくなった。Hvが比較的大きい材料Bを用いたロールで疵の発生が多くなったのは、熱の影響によってビッカース硬さHvが低下したためであると考えられる。さらに、図2より、試験後の材料Bは、表面から深さ1mmの箇所のビッカース硬さがHv350程度に低下しているだけでなく、表面から深さ2mm〜30mmの箇所では、ビッカース硬さがさらに低下していた。この結果から、ロールの疵の発生を抑制するためには、ロール表面のみならず、ロールから一定の深さの部分についても、一定のビッカース硬さが必要とされることが分かった。
【0027】
さらに、本発明者らは、鋭意研究の結果、以下の知見を得た。すなわち、
2)ロールの硬度は疵の発生に影響を与える大きな要素であるが、必ずしも硬度単独で疵の発生の大小が決まるわけではない。より詳細には、疵の発生に加えて、ロール表面を構成する材質の衝撃値も、疵の発生に影響する。
【0028】
図2より、材料A及び材料Cは、いずれも、鋼材から熱の影響を受けた場合であってもHvの低下がほとんど起こらない。すなわち、材料A及び材料Cの硬度は、鋼材からの熱の影響を受け難いことが分かるが、Hvを考慮すれば、材料Aは材料Cよりも疵の発生が少なくなるはずである。しかし、表1より、そのような結果にはなっていない。そこで、本発明者らは、材料A〜材料Cの衝撃値を調査した。表2に、各材料の衝撃値を示す。
【0029】
【表2】

【0030】
ここで、表2に示した衝撃値は、いわゆるシャルピー衝撃値であり、JIS Z 2242:2005「金属材料のシャルピー衝撃試験方法」に記載された方法に基づいて測定した。表2に示すように、最も疵の発生の少なかった材料Cの衝撃値は52[J/cm]であり、材料Aの衝撃値(39[J/cm])よりも大きかった。したがって、材料Cが材料Aよりも疵の発生が少なかったのは、衝撃値の大きさが影響していると考えられる。
【0031】
さらに、本発明者らは、鋭意研究の結果、以下の知見を得た。すなわち、
3)所定のビッカース硬さ、及び、所定の衝撃値を有する材料は、摩耗量が極めて少ない。
【0032】
試験開始から2ヶ月が経過した時点における材料A〜材料Cの摩耗量を用いて換算することにより、試験開始から12ヵ月後におけるロールの摩耗量を見積もった。表3に、材料A〜材料Cの摩耗量、並びに、ビッカース硬さ及び衝撃値を併せて示す。
【0033】
【表3】

【0034】
表3より、Hv350以上のビッカース硬さを有し、シャルピー衝撃値が30J/cm以上である材料A及び材料Cは、摩耗量がそれぞれ、0.04mm(材料A)及び0.01mm(材料C)であった。これに対し、Hv350以上のビッカース硬さを有する一方で、シャルピー衝撃値が30J/cmに満たない材料Bは、摩耗量が0.27mmとなった。すなわち、所定のビッカース硬さ(Hv350以上)、及び、所定の衝撃値(30J/cm以上)を有する材料を用いることで、ロールの摩耗量を低減することが可能であった。
【0035】
本発明は、上記知見1)〜3)に基づいて完成したものである。以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、図面に示した形態は本発明の例示であり、本発明は図示した形態に限定されるものではない。
【0036】
1.搬送用ロール
図3は、本発明の搬送用ロール1の形態例を示す概念図である。図3に示す本発明の搬送用ロール1は、表面から少なくとも深さ5mmの領域が、300℃の熱履歴を受けた場合であってもビッカース硬さがHv350以上である物質(物質X)によって構成され、該物質のシャルピー衝撃値が30J/cm以上である。当該形態の搬送用ロール1とすることにより、本発明によれば、ロール表面への疵の発生及びロール表面の摩耗を抑制することが可能な、搬送用ロール1を提供することができる。このようにしてロール表面への疵の発生が抑制されると、搬送用ロール1と接触する部材の表面(例えば、鋼板面等。以下において同じ。)への疵の発生も抑制される。したがって、本発明によれば、ロールの補修周期を長くすることが可能になり、製品(例えば、鋼板等。以下において同じ。)の生産能率を向上させることが可能な、搬送用ロール1を提供することができる。
【0037】
<表面から少なくとも深さ5mm>
本発明の搬送用ロール1は、ロール表面から少なくとも深さ5mmの領域が、物質Xによって構成されていれば良い。そのため、本発明の搬送用ロール1は、例えば、(1)ロール全体が物質Xによって構成される形態、(2)ベースとなるロール表面に肉盛溶接を行うことにより、物質Xによって構成される厚さ5mm以上の肉盛層がロール表面に形成されている形態、(3)ベースとなるロール表面に、スリーブとして、物質Xからなる厚さ5mm以上の板が巻きつけられている形態、及び、(4)ベースとなるロール表面に、物質Xからなる厚さ5mm以上の中空ロールが嵌め込まれた形態、とすることができる。
【0038】
<ビッカース硬さがHv350以上>
本発明の搬送用ロール1において、物質Xは、搬送用ロール1が製造された後に、最大で300℃へと加熱された環境を経た場合であっても、加熱された環境を経ていない場合(すなわち、加熱されていない場合)であっても、JIS Z 2244:2003「ビッカース硬さ試験−試験方法」に記載された方法に基づいてビッカース硬さを測定すると、Hv350以上の物質である。本発明の搬送用ロール1において、疵の発生を抑制しやすくする等の観点から、物質Xは、300℃の熱履歴を受けた場合であっても(以下において、「熱履歴の有無にかかわらず」という。)ビッカース硬さがHv350以上である物質とする。物質Xは、熱履歴の有無にかかわらずビッカース硬さがHv400以上の物質であることが好ましい。一方、ビッカース硬さが大きすぎると、ロール表面に欠け疵が発生しやすくなる、また、疵付いたロール表面の手入れ(一般にはグラインダ手入れ)が困難になるという観点から、物質Xのビッカース硬さはHv800以下とする。好ましくはHv600以下である。
【0039】
<シャルピー衝撃値が30J/cm以上>
本発明の搬送用ロール1において、疵の発生を抑制しやすくする等の観点から、JIS Z 2242:2005「金属材料のシャルピー衝撃試験方法」に記載された方法に基づいて測定した物質Xのシャルピー衝撃値は、30J/cm以上とする。好ましくは45J/cm以上である。一方、シャルピー衝撃値が大きすぎると、ロール表面にササクレ疵が発生しやすくなるという観点から、物質Xのシャルピー衝撃値は100J/cm以下とする。好ましくは70J/cm以下である。
【0040】
2.搬送テーブル
図4は、本発明の搬送テーブル10の形態例を示す概念図である。図4では、本発明の搬送テーブル10の一部のみを抽出している。図4において、図3と同様の構成を採るものには、図3で使用した符号と同符号を付し、その説明を省略する。
【0041】
図4に示すように、本発明の搬送テーブル10は、複数の搬送用ロール1、1、…を具備している。上述のように、本発明の搬送用ロール1、1、…によれば、ロール表面への疵の発生及びロール表面の摩耗を抑制することが可能になるので、搬送用ロール1、1、…と接触する部材の表面への疵の形成を抑制して、製品の生産能率を向上させることが可能になる。したがって、複数の搬送用ロール1、1、…を具備する本発明の搬送テーブル10によれば、製品表面への疵の形成を抑制することを通じて、製品の生産能率を向上させることが可能になる。
【0042】
3.鋼板の製造方法
図5は、本発明にかかる鋼板の製造方法に含まれる工程例を示すフローチャートである。以下、図3〜図5を参照しつつ、本発明にかかる鋼板の製造方法について説明する。図5に示すように、本発明にかかる鋼板の製造方法は、鋼板製造工程(工程S1)及び鋼板搬送工程(工程S2)を有し、図5に示す本発明にかかる鋼板の製造方法では、工程S1及び工程S2を経て、鋼板が製造される。
【0043】
<工程S1>
工程S1は、本発明の搬送テーブル10を用いて搬送される鋼板を製造する工程である。工程S1の形態は特に限定されるものではなく、公知の形態とすることができる。また、工程S1で製造される鋼板の形態も特に限定されるものではなく、厚鋼板や薄鋼板等、公知の鋼板を製造することができる。
【0044】
<工程S2>
工程S2は、上記工程S1で製造された鋼板を、本発明の搬送テーブル10を用いて搬送する工程である。上述のように、本発明の搬送テーブル10は、複数の搬送用ロール1、1、…を具備しており、本発明の搬送用ロール1、1、…は、表面への疵の発生及び表面の摩耗を抑制することができる。本発明の搬送テーブル10を用いて鋼板を搬送することにより、工程S2で搬送される鋼板は、表面への疵の発生及び表面の摩耗が抑制された搬送用ロール1、1、…と接触する。そのため、鋼板面に引掻き疵や押し込み疵が形成される事態を抑制することができる。したがって、本発明によれば、疵の少ない鋼板を製造することが可能な、鋼板の製造方法を提供することができる。加えて、本発明にかかる鋼板の製造方法では、複数の搬送用ロール1、1、…を具備する搬送テーブル10が使用されるので、ロール表面の疵を手入れすること等を目的として行われる搬送ラインの緊急停止の頻度を低減することができ、その結果、鋼板の生産能率を向上させることができる。したがって、本発明によれば、生産能率を向上させることが可能な、鋼板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】搬送テーブルの形態を示す図である。
【図2】試験前後のビッカース硬さHvを調べた結果を示す図である。
【図3】本発明の搬送用ロールの形態例を示す図である。
【図4】本発明の搬送テーブルの形態例を示す図である。
【図5】本発明にかかる鋼板の製造方法に含まれる工程例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0046】
1…搬送用ロール
10…搬送テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面から少なくとも深さ5mmの領域が、300℃の熱履歴を受けた場合であってもビッカース硬さがHv350以上である物質によって構成され、
前記物質のシャルピー衝撃値が30J/cm以上であることを特徴とする、搬送用ロール。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送用ロールを複数具備することを特徴とする、搬送テーブル。
【請求項3】
請求項2に記載の搬送テーブルを用いて鋼板を搬送する工程を有することを特徴とする、鋼板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−75941(P2010−75941A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245360(P2008−245360)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】