説明

搬送装置

【課題】例えば半導体素子製造用の各種基板を収容するFOUP等の被搬送物を、複数の階層の間で搬送する搬送装置において、比較的簡単な構成により複数の階層の間で被搬送物をやり取りする。
【解決手段】搬送システム(100)は、上階層及び下階層を相互から区分すると共に上階層及び下階層を相互に連通する連通口が開けられた区分部材(1)と、上階層に敷設された上側軌道(2)と、上側軌道に沿って被搬送物(10)を搬送する上側搬送車(12)と、下階層に敷設された下側軌道(3)と、下側軌道に沿って被搬送物を搬送する下側搬送車(13)と、連通口の下方に配置され、上側搬送車及び下側搬送車との間で夫々被搬送物を移載可能に構成されており、被搬送物を一時的に保管する一時保管棚(4)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体素子製造用の各種基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)等の被搬送物を、複数の階層の間で搬送する搬送装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の搬送装置として、エレベータ機能を有するリフトを備え、複数の階層の各々に敷設された軌道に沿って搬送される被搬送物を、該複数の階層の間でやり取り可能とするものがある(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−261145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1では、エレベータ機能を有するリフトが、複数の階層を跨って配置されるために、当該搬送装置全体が大掛かりになってしまうという技術的問題点がある。
【0005】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、比較的簡単な構成により複数の階層の間で被搬送物をやり取り可能な搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の搬送装置は上記課題を解決するために、上階層及び下階層を相互から区分すると共に前記上階層及び前記下階層を相互に連通する連通口が開けられた区分部材と、前記上階層に敷設された上側軌道と、該上側軌道に沿って被搬送物を搬送する上側搬送車と、前記下階層に敷設された下側軌道と、該下側軌道に沿って前記被搬送物を搬送する下側搬送車と、前記連通口の下方に配置され、前記上側搬送車及び前記下側搬送車との間で夫々前記被搬送物を移載可能に構成されており、前記被搬送物を一時的に保管する一時保管棚とを備える。
【0007】
本発明の搬送装置によれば、例えばビークル等の搬送車が、例えば半導体素子製造に用いられるウェハ(基板)等を収容するFOUP等の被搬送物を、工場等内の各種製造工程へ搬送する。本発明の搬送装置は特に、複数の階層に配置される各種製造工程への搬送を行うために、複数の階層の間(具体的には、複数の階層の各々に敷設された軌道に沿って走行する複数の搬送車の間)で、被搬送物を行き来(やり取り)可能とする。
【0008】
本発明の搬送装置は、具体的には、上階層及び下階層を相互から区分する区分部材に、上階層及び下階層を相互に連通する連通口を開けると共に、該連通口の下方に、一時保管棚を配置する。一時保管棚は、上階層に敷設された上側軌道に沿って搬送する上側搬送車、及び下階層に敷設された下側軌道に沿って搬送する下側搬送車との間で、夫々被搬送物を移載可能に構成される。
【0009】
ここで、一時保管棚が「移載可能」とは、上側搬送車との間では、上側搬送車によって、連通口を介して上下方向に移動される被搬送物を、一時保管棚へ載置したり、逆に一時保管棚から取り去ったりが可能であることを意味し、下側搬送車との間では、下側搬送車によって、一時保管棚に対して水平方向や上下方向に移動される被搬送物を一時保管棚へ載置したり、逆に一時保管棚から取り去ったりが可能であることを意味する。
【0010】
具体的には、上側搬送車との間で移載しようとする場合に、例えば上側搬送車が連通口の上方に停止した際に、被搬送物を保持可能なグリッパ等の保持手段の上下方向の移動範囲内に、一時保管棚に載置された被搬送物の鍔部等の被保持部が存在するように、一時保管棚を配置する。この配置により、例えば上側搬送車の本体部内に在る保持手段が、下方向に移動され、保持している被搬送物の底面と一時保管棚の載置面とが接触した位置で停止された後に、被搬送物を解放することで、上側搬送車から一時保管棚への移載が行われる。
【0011】
また、下側搬送車との間で移載しようとする場合に、例えば下側搬送車が連通口と一時保管棚との間の空間の側方に停止した際に、保持手段の上下方向及び水平方向の移動範囲内に、一時保管棚に載置された被搬送物の被保持部が存在するように、一時保管棚を配置する。この配置により、例えば下側搬送車の本体部内に在る保持手段が、一時保管棚の上方まで水平方向に移動されると共に、下方向に移動され、保持している被搬送物の底面と一時保管棚の載置面とが接触した位置で停止された後に、被搬送物を解放することで、下側搬送車から一時保管棚への移載が行われる。
【0012】
このように、一時保管棚を、例えば上側搬送車における保持手段の移動範囲、及び下側搬送車における保持手段の移動範囲に応じた上下方向の位置に配置することで、該一時保管棚と、上側搬送車及び下側搬送車との間で夫々被搬送物を移載可能である。
【0013】
以上のように、連通口が開けられた区分部材の下方に、上側搬送車及び下側搬送車との間で夫々被搬送物を移載可能に構成された一時保管棚を配置することで、上側搬送車及び下側搬送車の間で、一時保管棚を介して、被搬送物の受け渡しが可能となる。
【0014】
尚、上階層及び下階層は、典型的には、区分部材を介して相互に隣接して重なっている。即ち、例えば、上階層の床兼下階層の天井としての区分部材一枚を隔てて両階層は重ねられていてもよい。但し、両階層は、間に他の階層(例えば、中階層)を介して、重なっていてもよく、この場合、連通口は、一又は複数の中階層を素通りする形で、言い換えれば、各階層で天井や床として機能する複数の区分部材を一挙に貫通する形で、両階層を相互に連通することになる。
【0015】
本発明の搬送装置の一態様では、前記上側搬送車は、前記被搬送物を保持可能であると共に上下移動可能な上下移動手段を有し、前記下側搬送車は、前記被搬送物を水平移動可能な水平移動手段を有する。
【0016】
この態様によれば、上側搬送車は、例えば保持手段を有するホイスト機構等の上下移動手段を有する。上下移動手段は、例えば保持手段に固定されたベルト等を巻き下げ又は巻き上げて、被搬送物を上下移動する。上側搬送車は、該上下移動の動作により、被搬送物を一時保管棚に移載することができる。下側搬送車は、例えば上下移動手段を水平移動可能な水平移動手段を有する。水平移動手段は、例えばスライド機構により上下移動手段を水平移動することで、該上下移動手段に保持されている被搬送物を、一時保管棚の上方に移動する。下側搬送車は、該水平移動の動作により、該被搬送物を一時保管棚に移載することができる。
【0017】
尚、上側搬送車は、上下移動手段に加えて、水平移動手段を有してもよいし、下側搬送車は、水平移動手段に加えて、上下移動手段を有してもよい。
【0018】
前記下側搬送車が前記水平移動手段を有する態様では、前記下側搬送車は、前記被搬送物を上下移動可能な上下移動手段を更に有してもよい。
【0019】
このように構成すれば、下側搬送車は、上側搬送車と同様に、上述の上下移動手段を有する。下側搬送車は、水平移動手段による水平移動の動作に加えて、上下移動手段による上下移動の動作により、一時保管棚以外の半導体素子製造装置や保管庫等のポートとの間で、被搬送物を移載(即ち縦移載)可能となる。更に、下側搬送車は、例えば後述の如き一時保管棚や下側軌道が水平移動する機構を採用すること等により、上下移動手段による上下移動の動作により、被搬送物を一時保管棚に移載することも可能となる。
【0020】
尚、上側搬送車は、被搬送物を水平移動可能な水平移動手段を更に有してもよい。これにより、上側搬送車においても、一時保管棚以外の半導体素子製造装置や保管庫等のポートとの間で、被搬送物を横移載可能となる。
【0021】
本発明の搬送装置の他の態様では、前記一時保管棚を昇降可能である昇降手段と、前記被搬送物の移載を前記上側搬送車との間で行うのか又は前記下側搬送車との間で行うかに応じて、前記一時保管棚を昇降させるように、前記昇降手段を制御する制御手段とを更に備える。
【0022】
この態様によれば、昇降手段は、一時保管棚を昇降可能である。制御手段は、例えば搬送車制御装置、棚制御装置、及び軌道制御装置等を含んでおり、当該搬送装置を総括的に制御する。制御手段は、例えば棚制御装置であって、昇降手段を制御する。制御手段は、具体的には、被搬送物の移載が上側搬送車との間で行われる場合に、例えば被搬送物の上下方向の移動距離が短くなるように、一時保管棚を上昇させる。また、被搬送物の移載が下側搬送車との間で行われる場合に、例えば連通口と一時保管棚との間に、下側搬送車に保持されている被搬送物が水平方向から進入可能な空間を形成するように、一時保管棚を下降させる。このように、被搬送物の移載を上側搬送車との間で行うのか又は下側搬送車との間で行うかに応じて、一時保管棚を変位させることで、上側搬送車との間の移載時間を短縮することができる。
【0023】
本発明の搬送装置の他の態様では、前記一時保管棚を鉛直方向に交差する方向に移動可能な棚移動手段と、前記被搬送物の移載を前記上側搬送車との間で行うのか又は前記下側搬送車との間で行うかに応じて、前記一時保管棚を前記交差する方向に移動させるように前記棚移動手段を制御する制御手段とを更に備える。
【0024】
この態様によれば、棚移動手段は、一時保管棚を鉛直方向に交差する方向に移動可能である。制御手段は、例えば棚制御装置であって、棚移動手段を制御する。制御手段は、具体的には、被搬送物の移載が上側搬送車との間で行われる場合に、例えば一時保管棚を連通口に対向する位置に配置し、上側搬送車からの被搬送物を移載可能とする。また、被搬送物の移載が下側搬送車との間で行われる場合に、例えば一時保管棚を下側搬送車の直下に配置し、下側搬送車からの被搬送物を移載可能とする。この下側搬送車との間の移載時、下側搬送車における水平移動手段による水平移動の動作が不要になるので、下側搬送車との間の移載時間を短縮することができる。
【0025】
本発明の搬送装置の他の態様では、前記下側軌道を、前記連通口に対向しない第1位置にスライド可能であると共に前記連通口に対向する第2位置にスライド可能であるスライド手段と、前記連通口を介して前記被搬送物を前記上側搬送車及び前記一時保管棚間で移載する際には、前記下側軌道を前記第1位置へスライドさせるように前記スライド手段を制御し、前記被搬送物を前記下側搬送車及び前記一時保管棚間で移載する際には、前記下側軌道を前記第2位置へスライドさせるように前記スライド手段を制御する制御手段とを備える。
【0026】
この態様によれば、スライド手段は、下側軌道を、連通口に対向しない第1位置にスライド可能であると共に連通口に対向する第2位置にスライド可能である。制御手段は、例えば軌道制御装置であって、スライド手段を制御する。制御手段は、具体的には、連通口を介して被搬送物が上側搬送車及び一時保管棚間で移載される際に、例えば被搬送物の上下移動を妨げないように、下側軌道を第1位置へスライドさせる。また、被搬送物が下側搬送車及び一時保管棚間で移載される際に、例えば下側搬送車が一時保管棚の直上に停止可能に、下側軌道を第2位置へスライドさせる。この場合に、下側搬送車は、例えば上下移動手段による上下移動の動作のみにより、被搬送物を移載するので、水平移動手段を有する必要が無い。これにより、下側搬送車を軽量化すると共に、下側搬送車及び一時保管棚間の移載時間を短縮することができる。
【0027】
尚、上側軌道を連通口に対向しない第1位置にスライド可能であると共に、連通口に対向する第2位置にスライド可能であるスライド手段を更に備えてもよい。いずれの場合にも、スライド可能な軌道部分を、本線をなす軌道部分から部分的に切り離した形でスライド可能に構成することで、当該スライド手段を比較的簡単にして実現できる。
【0028】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
<第1実施形態>
【0030】
先ず、第1実施形態に係る搬送装置の構成について図1及び図2を参照して説明する。ここに図1は、第1実施形態に係る搬送装置の外観を示し、図2は、図1に示した下側搬送車及び一時保管棚間の移載動作を示す。
【0031】
図1において、搬送装置100は、区分部材1と、上側軌道2と、下側軌道3と、一時保管棚4と、上側搬送車12と、下側搬送車13とを備えており、半導体素子製造用の製造装置やストッカ等へFOUP10を搬送可能である。
【0032】
区分部材1は、上階層F1及び下階層F2を相互から区分する。この区分部材1には、連通口H1が開けられており、この連通口H1は、上階層F1及び下階層F2を相互に連通する。区分部材1は、下層階F2の天井をなすように或いは上層階F1の床をなすように、比較的広範なエリアに渡って存在していてもよいし、連通口の周囲或いは近隣にのみ部分的に存在していてもよい。区分部材1は、一枚板から構成される必要は無く、例えば、複数の棒、ポール、H型鋼等の柱状部材が、ストライプ状、格子状、網目状等に組み立てられたものであってもよいし、グレーティング等であってもよい。更に、複数の板が組み合わされたものでもよく、複数の板以外の部材が組み合わされたものでもよく、段差があってもよい。加えて、連通口H1以外の穴、孔、口などが開けられていてもよいし、上層階及び下層階を区分する限りにおいて組みだけが存在するような構成でもかまわない。
【0033】
上側軌道2は、上階層F1に敷設されている。この上側軌道2に沿って、上側搬送車12は、FOUP10を搬送する。
【0034】
下側軌道3は、下階層F2に敷設されている。この下側軌道3に沿って、下側搬送車13は、FOUP10を搬送する。
【0035】
一時保管棚4は、連通口H1から下方に所定距離Lxをとった位置に配置されており、上側搬送車12及び下側搬送車13との間で夫々FOUP10を移載可能である。但し、所定距離Lxは、一時保管棚4が、後述のホイストスライド機構25により水平移動されるFOUP10の底面よりも下方に位置するような距離を示す。一時保管棚4は、FOUP10を一時的に保管すると共に、上側搬送車12及び下側搬送車13の間でFOUP10のやり取りを可能とする。
【0036】
上側搬送車12及び下側搬送車13の各々は、搬送装置100における、例えばプロセッサ、メモリ等を備えて構成される制御用のコンピュータである搬送車制御装置102により、FOUP10の搬送元及び搬送先を指示される。上側搬送車12及び下側搬送車13の各々は、走行部20と、ホイスト機構21とを備えており、指示された搬送元及び搬送先へ走行すると共に、FOUP3の移載を独立して行う。走行部20は、搬送車制御装置102の指示により、上側軌道2又は下側軌道3に沿って走行、又は所定移載位置で停止する。但し、FOUP10を搬送する(即ち、空荷でない)上側搬送車12及び下側搬送車13の各々では、搬送しているFOUP1が本体部12a又は13a内に収容(配置)される場合に、走行部20は走行可能である。本実施形態では、上側搬送車12の所定移載位置が、連通口H1の直上に設定され、下側搬送車13の所定移載位置が、下側搬送車13が連通口H1に最も接近する側方に設定されている。
【0037】
ホイスト機構21は、本発明に係る「上下移動手段」の一例として、本体部12a内に配置されており、ホイスト本体部22と、グリッパ23と、ベルト24とを有する。ホイスト本体部22は、ベルト24を介してグリッパ23と連結されている。ホイスト機構21は、ベルト24を巻き下げ又は巻き上げることで、グリッパ23を上下方向に移動する。グリッパ23は、FOUP10を保持する保持状態と、FOUP10を解放する解放状態とに変位する保持部23aを有する。
【0038】
下側搬送車13は更に、ホイストスライド機構25を備える。図2において、ホイストスライド機構25は、本発明に係る「水平移動手段」の一例として、本体部13a内で、ホイスト機構21の上方に配置されており、被スライド部25aを有する。被スライド部25aは、伸縮自在に構成されており、その先端部は、ホイスト機構21の上面に固定されている。被スライド部25aは、下側搬送車13が一時保管棚4との間で移載する際に、一時保管棚4側の水平方向(即ち、図2における下側搬送車13の水平左方向)に延伸して、ホイスト機構21を水平左方向に移動する。この移動により、ホイストスライド機構25は、保持部23aに保持されるFOUP10を水平左方向に移動して、一時保管棚4の上方に配置する。
(第1実施形態の搬送装置による移載制御処理)
【0039】
次に、第1実施形態に係る搬送装置の移載制御処理について再び図1及び図2を参照して説明する。
【0040】
図1において、先ず、搬送車制御装置102によって、FOUP10の移載が、一時保管棚4を介して、上側搬送車12から下側搬送車13に移載される、又はこれと逆に、下側搬送車13から上側搬送車12に移載されるかが判定される。ここで上側搬送車12から下側搬送車13への移載が行われる場合に、上階層F1にて、上側搬送車12における走行部20が所定移載位置で停止される。すると、ホイスト機構21により、保持部23aに保持されているFOUP10が下方向に移動され、一時保管棚4上で解放される。この解放により、上側搬送車12から一時保管棚4にFOUP10が移載される。
【0041】
続いて、図2において、下階層F2にて、下側搬送車13における走行部20が所定移載位置で停止される。すると、ホイストスライド機構25により、ホイスト機構21が水平左方向に移動された後、ホイスト機構21により、グリッパ23が下方向に移動される。すると、グリッパ23により、一時保管棚4に保管されているFOUP10が保持される。この保持により、一時保管棚4から下側搬送車13にFOUP10が移載される。これにより、一連の移載制御処理が終了される。
【0042】
この後、下側搬送車13から、製造装置40のロードポート41への移載が行われる場合に、一時保管棚4上のFOUP10を保持しているグリッパ23が、ホイスト機構21及びホイストスライド機構25により、上方向及び水平右方向に移動され、FOUP10が本体部13a内に収容される。すると、下側搬送車13における走行部20が走行され、ロードポート41の直上で停止される。すると、ホイスト機構21により、保持されているFOUP10が下方向に移動され、ロードポート41上で解放される。この解放により、下側搬送車13から製造装置40のロードポート41にFOUP10が移載される。
【0043】
このように、連通口H1が開けられた区分部材1の下方に、上側搬送車12及び下側搬送車13との間で夫々FOUP10を移載可能に構成された一時保管棚4を配置することで、上側搬送車12及び下側搬送車13間で、一時保管棚4を介して、FOUP10を受け渡しすることができる。
<第2実施形態>
【0044】
次に、第2実施形態に係る搬送装置の構成について図3を参照して説明する。ここに図3は、第2実施形態に係る搬送装置の外観を示す。第2実施形態に係る搬送装置では、一時保管棚が上下方向に移動するという点が、第1実施形態のものと異なる。尚、第2実施形態に係る搬送装置について、第1実施形態と同様に構成される要素には、第1実施形態の要素と同一の符号を付し、該要素について詳細な説明を省略する。
【0045】
図3において、搬送装置200は、一時保管棚54を上下方向に移動するために、昇降部50と、棚制御装置202bとを備える。棚制御装置202bは、上側搬送車12及び下側搬送車13を制御する搬送車制御装置202aと相互に連携し合う。
【0046】
昇降部50は、本発明に係る「昇降手段」の一例として、一時保管棚54を昇降可能であり、軸受け部52と、モータ部53とを有する。軸受け部52の外周には、螺子が切られており、該螺子に螺合された不図示のボルトを介して、一時保管棚54が固定されている。軸受け部52の一端部(即ち、図3における軸受け部52の下側の端部)には、モータ部53の出力部が連結されている。棚制御装置202bの制御下で、モータ部53が駆動され、その出力部が回転されると、これに伴って軸受け部52が回転する。
【0047】
棚制御装置202bは、本発明に係る「制御部」の一部として機能し、FOUP10の移載を上側搬送車12との間で行うのか、又は下側搬送車13との間で行うのかに応じて、モータ部53の駆動を制御する。棚制御装置202bは、FOUP10の移載を上側搬送車12との間で行う場合に、モータ部53の出力部を左回転させ、FOUP10の移載を下側側搬送車12との間で行う場合に、該出力部を右回転させる。本実施形態では、該出力部の左回転により、一時保管棚54が上昇し、該出力部の右回転により、一時保管棚54が下降する。
(第2実施形態の搬送装置による移載制御処理)
【0048】
次に、第2実施形態に係る搬送装置の移載制御処理について図3を参照して説明する。
【0049】
図3において、先ず、一時保管棚54へのFOUP10の移載が、上側搬送車12及び下側搬送車13のどちらとの間で行われるかが判定される。ここで上側搬送車12との間で行われる場合に、棚制御装置202bにより、出力部が左回転されるように、モータ部53が駆動される。すると、軸受け部52が左回転され、一時保管棚54が上昇される。この上昇により、一時保管棚54が上側搬送車12に近づけられる。
【0050】
一方、一時保管棚54へのFOUP10の移載が、下側搬送車13との間で行われる場合に、棚制御装置202bにより、出力部が右回転されるように、モータ部53が駆動される。すると、軸受け部52が右回転され、一時保管棚54が下降される。この下降により、連通口H1との間に所定距離Lx(図1に示す)をとった空間が形成され、下側搬送車13との間で移載可能となる。これにより、一連の移載制御処理が終了される。
【0051】
このように、FOUP10の移載を上側搬送車12との間で行うのか又は下側搬送車13との間で行うかに応じて、一時保管棚54を上下方向に変位させることで、上側搬送車12との間の移載時間を短縮することができる。
<第3実施形態>
【0052】
次に、第3実施形態に係る搬送装置の構成について図4を参照して説明する。ここに図4は、第3実施形態に係る搬送装置の外観を示す。第3実施形態に係る搬送装置では、一時保管棚が鉛直方向に交差する方向に移動する、及び下側搬送車における水平移動手段が不要になるという点が、第2実施形態のものと異なる。尚、第3施形態に係る搬送装置について、第2実施形態と同様に構成される要素には、第2実施形態の要素と同一の符号を付し、該要素について詳細な説明を省略する。
【0053】
図4において、搬送装置300は、一時保管棚64を鉛直方向に交差する方向に移動するために、棚移動部60と、棚制御装置302bとを備える。棚制御装置302bは、上側搬送車12及び下側搬送車13を制御する搬送車制御装置302aと相互に連携し合う。
【0054】
棚移動部60は、本発明に係る「棚移動手段」の一例として、一時保管棚64を鉛直方向に交差する方向に移動可能であり、軸受け部62と、モータ部63とを有する。軸受け部62の外周には、螺子が切られており、該螺子に螺合する不図示の取付部の上面に、一時保管棚64が固定されている。軸受け部62の一端部(即ち、図4における軸受け部62の左側の端部)には、モータ部63の出力部が連結されている。棚制御装置302bの制御下で、モータ部63が駆動され、その出力部が回転されると、これに伴って軸受け部62が回転する。
【0055】
棚制御装置302bは、本発明に係る「制御部」の一部として機能し、FOUP10の移載を上側搬送車12との間で行うのか、又は下側搬送車13との間で行うのかに応じて、モータ部63の駆動を制御する。棚制御装置302bは、FOUP10の移載を上側搬送車12との間で行う場合に、モータ部63の出力部を左回転させ、FOUP10の移載を下側搬送車12との間で行う場合に、該出力部を右回転させる。本実施形態では、該出力部の左回転により、一時保管棚64が連通口H1に対向する位置(図4において一時保管棚64を実線で示す)に移動し、該出力部の右回転により、一時保管棚64が連通口H1に対向しない所定位置(図4において二点鎖線で示す)に移動する。
【0056】
下側搬送車14は、第1実施形態の下側搬送車13におけるホイストスライド機構25(図1及び図2に示す)を備えていない。これは、棚移動部60により一時保管棚64が所定位置に移動されることで、FOUP10を水平左方向に移動する動作が不要となるためである。即ち、下側搬送車13の所定移載位置の鉛直下方向に、該所定位置が設定されている。
(第3実施形態の搬送装置による移載制御処理)
【0057】
次に、第3実施形態に係る搬送装置の移載制御処理について図4を参照して説明する。該移載制御処理では、初期設定として、一時保管棚が連通口に対向しない位置に配置されている。
【0058】
図4において、先ず、搬送車制御装置302aによって、一時保管棚64へのFOUP10の移載が、上側搬送車12及び下側搬送車13のどちらとの間で行われるかが判定される。ここで上側搬送車12との間で行われる場合に、棚制御装置302bにより、出力部が左回転されるように、モータ部63が駆動される。すると、軸受け部62が左回転され、一時保管棚64が連通口H1に対向する位置に移動される。この移動により、上側搬送車12との間で移載可能となる。
【0059】
一方、一時保管棚64へのFOUP10の移載が、下側搬送車13との間で行われる場合に、棚制御装置302bにより、出力部が右回転されるように、モータ部63が駆動される。すると、軸受け部62が左回転され、一時保管棚64が連通口H1に対向しない所定位置に移動される。この移動により、下側搬送車13との間で移載可能となる。これにより、一連の移載制御処理が終了される。
【0060】
これにより、FOUP10の移載を上側搬送車12との間で行うのか又は下側搬送車13との間で行うかに応じて、一時保管棚64を鉛直方向に交差する方向に変位させることで、下側搬送車13における水平移動の動作が不要となり、下側搬送車13との間の移載時間を短縮することができる。
【0061】
尚、棚移動部60は、モータ部63の駆動により一時保管棚64を鉛直方向に交差する方向に移動するが、モータの代わりに、リンク機構、アクチュエータ等により、一時保管棚64を移動してもよい。
<第4実施形態>
【0062】
次に、第4実施形態に係る搬送装置の構成について図5を参照して説明する。ここに図5は、第4実施形態に係る搬送装置における下階層の外観を示す。第4実施形態に係る搬送装置では、下側軌道が連通口に対向する位置にスライドするという点が、第3実施形態のものと異なる。尚、第4施形態に係る搬送装置について、第3実施形態と同様に構成される要素には、第3実施形態の要素と同一の符号を付し、該要素について詳細な説明を省略する。
【0063】
図5において、搬送装置400は、下側軌道73を連通口H1に対向する位置にスライドするために、軌道スライド機構80と、軌道制御装置402bとを備える。軌道制御装置402bは、上側搬送車12及び下側搬送車13を制御する搬送車制御装置402aと相互に連携し合う。
【0064】
軌道スライド機構80は、本発明に係る「スライド手段」の一例として、下側軌道73を、第1位置又は第2位置にスライド可能である。本実施形態では、第1位置は、図5(a)に示すように、下側軌道73が連通口H1に対向しない位置であり、第2位置は、図5(b)に示すように、下側軌道73が連通口H1に対向する位置である。軌道スライド機構80は、軸受け部82と、モータ部83とを有する。軸受け部82の外周には、螺子が切られており、該螺子に螺合する不図示の取付部の下面に、下側軌道73が固定されている。軸受け部82の一端部(即ち、図5における軸受け部82の右側の端部)には、モータ部83の出力部が連結されている。軌道制御装置402bの制御下で、モータ部83が駆動され、その出力部が回転されると、これに伴って軸受け部82が回転する。
【0065】
軌道制御装置402bは、本発明に係る「制御部」の一部として機能し、FOUP10の移載を上側搬送車12との間で行うのか、又は下側搬送車13との間で行うのかに応じて、モータ部83の駆動を制御する。軌道制御装置402bは、FOUP10の移載を上側搬送車12との間で行う場合に、モータ部83の出力部を左回転させ、FOUP10の移載を下側搬送車12との間で行う場合に、該出力部を右回転させる。本実施形態では、該出力部の左回転により、下側軌道73が連通口H1に対向しない第1位置に移動し、該出力部の右回転により、下側軌道73が連通口H1に対向する第2位置に移動する。
【0066】
下側搬送車14は、第1実施形態の下側搬送車13におけるホイストスライド機構25(図1及び図2に示す)を備えていない。これは、軌道スライド機構80により下側軌道73が第2位置に移動されることで、FOUP10を水平左方向に移動する動作が不要となるためである。即ち、第2位置は、下側搬送車14が所定移載位置に停止された後、下側軌道73の第2位置への移動が行われた時に、一時保管棚84の直上に下側搬送車14が配置されるように、設定されている。
(第4実施形態の搬送装置による移載制御処理)
【0067】
次に、第4実施形態に係る搬送装置の移載制御処理について図5を参照して説明する。該移載制御処理では、初期設定として、一時保管棚が連通口に対向する第2位置に配置されている。
【0068】
図5(a)において、先ず、搬送車制御装置402aによって、一時保管棚84へのFOUP10の移載が、上側搬送車12及び下側搬送車13のどちらとの間で行われるかが判定される。ここで上側搬送車12との間で行われる場合に、軌道制御装置402bにより、出力部が左回転されるように、モータ部83が駆動される。すると、軸受け部82が左回転され、下側軌道73が連通口H1に対向しない第1位置に移動される。この移動により、上側搬送車12との間で移載可能となる。
【0069】
一方、図5(b)において、一時保管棚84へのFOUP10の移載が、下側搬送車13との間で行われる場合に、軌道制御装置402bにより、出力部が右回転されるように、モータ部83が駆動される。すると、軸受け部82が左回転され、下側軌道73が連通口H1に対向する第2位置に移動される。この移動により、下側搬送車13との間で移載可能となる。これにより、一連の移載制御処理が終了される。
【0070】
これにより、FOUP10の移載を上側搬送車12との間で行うのか又は下側搬送車13との間で行うかに応じて、下側軌道73を第1位置又は第2位置に変位させることで、下側搬送車13における水平移動の動作が不要となり、下側搬送車13との間の移載時間を短縮することができる。
【0071】
尚、軌道スライド機構80は、モータ部83の駆動により下側軌道73をスライドするが、モータの代わりに、リンク機構、アクチュエータ等により、下側軌道73をスライドしてもよい。
【0072】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う搬送装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】第1実施形態に係る搬送装置の外観を図式的に示す正面図である。
【図2】図1の下側搬送車及び一時保管庫間の移載動作を図式的に示す正面図である。
【図3】第2実施形態に係る搬送装置の外観を示す図1と同趣旨の正面図である。
【図4】第3実施形態に係る搬送装置の外観を示す図1と同趣旨の正面図である。
【図5】第4実施形態に係る搬送装置における下階層の外観を図式的に示す正面図である。
【符号の説明】
【0074】
1…区分部材,2…上側軌道,3…下側軌道,4…一時保管棚,12…上側搬送車,13…下側搬送車,10…FOUP,100…搬送システム,102…搬送車制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上階層及び下階層を相互から区分すると共に前記上階層及び前記下階層を相互に連通する連通口が開けられた区分部材と、
前記上階層に敷設された上側軌道と、
該上側軌道に沿って被搬送物を搬送する上側搬送車と、
前記下階層に敷設された下側軌道と、
該下側軌道に沿って前記被搬送物を搬送する下側搬送車と、
前記連通口の下方に配置され、前記上側搬送車及び前記下側搬送車との間で夫々前記被搬送物を移載可能に構成されており、前記被搬送物を一時的に保管する一時保管棚と
を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記上側搬送車は、前記被搬送物を保持可能であると共に上下移動可能な上下移動手段を有し、
前記下側搬送車は、前記被搬送物を水平移動可能な水平移動手段を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記下側搬送車は、前記被搬送物を上下移動可能な上下移動手段を更に有する
ことを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記一時保管棚を昇降可能である昇降手段と、
前記被搬送物の移載を前記上側搬送車との間で行うのか又は前記下側搬送車との間で行うかに応じて、前記一時保管棚を昇降させるように、前記昇降手段を制御する制御手段と
を更に備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記一時保管棚を鉛直方向に交差する方向に移動可能な棚移動手段と、
前記被搬送物の移載を前記上側搬送車との間で行うのか又は前記下側搬送車との間で行うかに応じて、前記一時保管棚を前記交差する方向に移動させるように前記棚移動手段を制御する制御手段と
を更に備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記下側軌道を、前記連通口に対向しない第1位置にスライド可能であると共に前記連通口に対向する第2位置にスライド可能であるスライド手段と、
前記連通口を介して前記被搬送物を前記上側搬送車及び前記一時保管棚間で移載する際には、前記下側軌道を前記第1位置へスライドさせるように前記スライド手段を制御し、前記被搬送物を前記下側搬送車及び前記一時保管棚間で移載する際には、前記下側軌道を前記第2位置へスライドさせるように前記スライド手段を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−64833(P2010−64833A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231775(P2008−231775)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(309031466)ムラテックオートメーション株式会社 (52)
【Fターム(参考)】