説明

搬送装置

【課題】十分な防水機能を備えると共に、異なる処理工程間でのワークの移載が不要な搬送装置を提供する。
【解決手段】搬送装置10は、搬送台車1に支持されたワークBを連続的に搬送する。搬送装置10は、搬送台車1から上方に延びてワークBを支持する支柱2と、搬送台車1の外側かつ両側に対向するように配置された一対の第1防水カバー7・7と、を備える。一対の第1防水カバー7・7を開閉自在に動作させると共に、支柱2を一対の第1防水カバー7・7で両側から挟み込むことにより、ワークBを所定位置に支持する嵌合部7r・7rを一対の第1防水カバー7・7に設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置に関する。特に、自動車のバンパなどのワークを搬送し、かつ防水機能を備える搬送装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の搬送ラインでは、塗装工程の前段で、ワークの表面に付着した粉塵などを洗浄水で洗浄する表面処理(以下、「前処理工程」という)が実施されている。この前処理工程では、ハンガでワークを吊り下げて搬送するオーバーヘッド式コンベアが用いられている。オーバーヘッド式コンベアは、搬送機構に洗浄液が容易に浸入しない上、洗浄水の排出又は再利用が容易であるという利点がある。
【0003】
一方、塗装工程では、搬送台車から立脚した支柱に、バンパなどのワークを支持した状態で塗装処理が実施されている。このような搬送台車を利用したフロア式コンベアは、上記のオーバーヘッド式コンベアとは異なり、ハンガなどに遮られることなくワークを塗装できるという利点がある。
【0004】
このように、前処理工程とその後の塗装工程とでは、使用するコンベア(搬送装置)の形式が異なっている。したがって、オーバーヘッド式コンベアからフロア式コンベアにワークを移し替えるための高価な移載装置が必要であった。又、ワークを移し替える工程を必要とするので、全体の工程時間の短縮や作業要員の削減が困難であった。
【0005】
このような不具合を解消するため、搬送台車から立脚した支柱にワークを支持した状態で処理室(ライン)を走行する形式でありながら、搬送機構に塗料や粉塵などが付着することを防止する搬送装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1の搬送装置では、処理室内を貫通すると共に上部にスリットを有するカバーが配設されている。スリットには、一対の可撓体からなるシール装置が設けられており、カバーの内部には、搬送台車を支持案内するガイド装置と、搬送台車を走行させる駆動装置とが設けられている。この搬送台車は、本体の中央部から立脚して設けられ、かつスリットを通る支柱を備えている。又、搬送台車の本体を、走行支持部を覆い、かつ支柱の径よりも大きな幅のカバー形式としている。
【0007】
特許文献1の搬送装置は、一対の可撓体を左右に分けながら支柱が前進することから、シール装置には、支柱の前進に伴って楕円状の開口が生じる。すると、この開口を通って塗料や粉塵がカバーの内部に移入してくるが、移入した塗料や粉塵は、カバー形式の本体に受け止められ、走行支持部に付着することが阻止される、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭62−135685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の搬送装置は、異なる処理工程間でのワークの移載は不要であるものの、前処理工程において、洗浄液が搬送機構に浸入しないように、支柱に伝わる洗浄水を十分に阻止することができなかった。又、特許文献1の搬送装置は、ワークをタクト搬送する場合に、防水が不十分であった。
【0010】
したがって、十分な防水機能を備えると共に、異なる処理工程間でのワークの移載が不要な搬送装置の開発が望まれる。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、ワークをタクト搬送する搬送装置を十分に防水可能とすると共に、前処理工程と塗装工程との間で同一の搬送装置を利用して、ワークの移載を不要とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、搬送台車(1)に支持されたワーク(B)を連続的に搬送する搬送装置(10)において、前記搬送台車から上方に延びて前記ワークを支持する支柱(2)と、前記搬送台車の外側かつ両側に対向するように配置された一対の第1防水カバー(7・7)と、を備え、前記一対の第1防水カバーを開閉自在に動作させると共に、前記支柱を前記一対の第1防水カバーで両側から挟み込むことにより、前記ワークを所定位置に支持する嵌合部(7r・7r)を当該一対の第1防水カバーに設けたことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、搬送装置は以下のように動作する。先ず、一対の第1防水カバーを開いた状態で、搬送台車を所定の位置まで搬送する。次いで、一対の第1防水カバーを閉じ、ワークを支持する支柱を一対の第1防水カバーで両側から挟み、第1防水カバー同士を当接させる。このとき、一対の第1防水カバーに設けられた嵌合部が支柱の外周に嵌合することにより、ワークの位置決めがなされる。この状態で、ワークに洗浄処理などの所定の処理を施す。即ち、一対の第1防水カバーが閉じている間に、ワークに対して所定の処理を施す。所定の処理が終了した後、一対の第1防水カバーを開いて、第1防水カバー同士を離間させる。この状態で、搬送台車を搬出する。
【0014】
このように、ワークに所定の処理を施す際には、ワークを支持する支柱を挟んで、一対の第1防水カバー同士が当接すると共に、嵌合部が支柱の外周に嵌合している。このため、支柱が一対の第1防水カバーの上面部から上方に突出した状態で、これらの上面部により、搬送装置が上方から覆われる。又、一対の第1防水カバーの側面部により、搬送装置が側方から覆われる。
【0015】
したがって、この発明によれば、例えばワークに対して洗浄処理を施す場合に、ワークを洗浄した洗浄水がワークの下方に流れても、この洗浄水が搬送装置の内部に浸入することを防止できる。又、本発明によれば、洗浄処理などの所定の処理において、搬送台車を用いることができるため、異なる処理工程間でワークの移載が不要である。ひいては、高価な移載装置が不要であり、設備投資費用の削減、省スペース化が可能である。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の搬送装置において、前記一対の第1防水カバーは、前記支柱から見て左右の長さが異なることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、一対の第1防水カバーの上面部の長さが異なり、一対の第1防水カバーを閉じた際には、一方の上面部の先端が他方の上面部の先端に重なるようにして当接する。これにより、防水効果を向上できる。
【0018】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の搬送装置において、前記一対の第1防水カバーの前記嵌合部には、シール部材(7c・7d)が設けられていることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、嵌合部にシール部材が設けられているので、特に支柱を伝って下方に流れた洗浄水などが、搬送装置の内部に浸入するのを防止でき、より防水効果を向上できる。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の搬送装置において、前記一対の第1防水カバーの外側に設けられた一対の第2防水カバー(5・5)と、前記一対の第1防水カバーの内部に配置された一対の第3防水カバー(6・6)と、を備えることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、一対の第1防水カバーの外側に設けられた一対の第2防水カバーと、一対の第1防水カバーの内部に配置された一対の第3防水カバーと、を備えるので、搬送装置の内部に洗浄水などがより浸入し難い3重の防水カバー構造となっており、防水効果をさらに向上できる。
又、防水効果をさらに向上できるため、搬送装置の保守に要する時間を削減できる。したがって、この搬送装置を、ワークの洗浄処理などの前処理工程に適用することにより、設備(ライン)稼動率を向上できる。
【0022】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の搬送装置において、前記一対の第2防水カバーは、前記支柱を繊維状部材(50・50)で両側から挟み込む構造を有することを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、一対の第2防水カバーに設けられた繊維状部材により、ワークを支持する支柱を両側から挟み込む。これにより、搬送台車から上方に延びて設けられた支柱が、搬送ラインに沿って移動するのを可能とする一方で、搬送装置の内部に洗浄水などが浸入し難い構造を実現できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、間欠的な搬送を行う搬送装置を十分に防水できると共に、異なる処理工程間でのワークの移載が不要な搬送装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態におけるワーク処理装置のレイアウトを示す平面図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるワーク処理装置のレイアウトを示す正面図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるワーク処理装置の第3処理室の断面図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるワーク処理装置の第3処理室の正面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る搬送装置の構成を示す断面図である。
【図6】図5の要部拡大図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る搬送装置の拡大正面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る搬送装置に備わる一対の第1防水カバーの平面図であり、図8(A)は、一対の第1防水カバーが開いた状態図、図8(B)は、一方の第1防水カバーが閉じた状態図、図8(C)は、一対の第1防水カバーの両方が閉じた状態図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る搬送装置に配置された複数の一対の第1防水カバーの平面図であり、図9(A)は、一対の第1防水カバーが一斉に開いた状態図、図9(B)は、一方の第1防水カバーが一斉に閉じた状態図、図9(C)は、一対の第1防水カバーの両方が一斉に閉じた状態図である。
【図10】搬送装置を備えた第3処理室の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
具体的には、本発明の一実施形態として、搬送装置を、ワークに対して塗装前の洗浄処理を施すワーク処理装置に適用した実施形態について説明する。
【0027】
[ワーク処理装置]
先ず、ワーク処理装置について説明する。図1は、本発明の一実施形態におけるワーク処理装置のレイアウトを示す平面図であり、図2がその正面図である。
【0028】
ワーク処理装置100は、前工程BPから搬送されてくるワークBに対して、洗浄処理を施す第1処理室1stから第8処理室8stを備えている。これらの第1処理室1st〜第8処理室8stは、搬送ラインに沿って配置されている。
又、ワーク処理装置100は、ワークBを搬送ラインに沿って搬送する、後述する搬送装置10を備えている(図5〜図7参照)。
なお、図1又は図2に示された処理室のステーション数は一例であり、本実施形態の搬送装置10は、任意に対応可能である。
【0029】
第1処理室1st〜第8処理室8stについて説明する。
第1処理室1st〜第8処理室8stでは、それぞれ所定の処理を施した後、後述する搬送装置10により、後段の処理室へとワークBを移動させるタクト搬送が行われる。
なお、第1処理室1st〜第8処理室8stには、それぞれ、処理後の洗浄水から搬送装置10を防水するために、防水機能を備えた一対の位置決め板7a・7bが配置されている。この一対の位置決め板7a・7bにより、各処理室において、ワークは常に所定の位置で支持される。この一対の位置決め板7a・7bは、搬送装置10の設けられているため、後段で詳述する。
【0030】
第1処理室1st及び第2処理室2stでは、ワークBの洗浄などに有用な洗浄液(洗浄剤)又は裏面処理剤を、ワークBに噴霧する。
なお、第1処理室1stの前段には、射出成型工程などの前工程BPから搬送されたワークBを、後述する支柱2に乗り移すための第1移動室S1が設けられている。
【0031】
第3処理室3stには、2基の洗浄ロボットRBが配置されており、これら2基の洗浄ロボットRBにより、ワークBの表面をブラシ洗浄する。これにより、塗装トラブルの原因となる塵芥が除去される。
第4処理室4stには、上記2基の洗浄ロボットRBが移動できるようになっており、前後に位置する一組のワークBを、パラレル(並列)にブラシ洗浄する。
【0032】
第5処理室5st及び第6処理室6stでは、ワークBを、純水で温水洗浄する。具体的には、第5処理室5stでは、ワークBを高打力で温水洗浄する一方、第6処理室6stでは、いわゆる「すすぎ」が行われる。これにより、ワークBに付着していた油性成分が除去される。
【0033】
第7処理室7stでは、ワークBに対して、高速のエアーを噴霧する。これにより、ワークBに付着していた水分が除去される。即ち、第7処理室7stでは、いわゆるエアーブロー(水切乾燥)が実施される。
第8処理室8stでは、ワークBに対して、熱風又はエアーを噴霧する。これにより、ワークBを乾燥する。
なお、第8処理室8stの後段には、第2移動室S2が設けられている。この第2移動室S2は、洗浄処理が終了したワークBを、例えば塗装工程APに搬送する前に待機させるバッファとして機能する。
【0034】
次に、第3処理室3st及び第4処理室4stにおけるブラシ洗浄について、詳しく説明する。
図3は、洗浄ロボットRBが配置される第3処理室3stの断面図であり、図4は、第3処理室3stの正面図である。
【0035】
洗浄ロボットRBのアームには、回転ブラシBrが取り付けられている。回転ブラシBrは、回転棒の周囲に弾力性のある多数の繊維が放射状に植設されている。又、回転ブラシBrは、多数の繊維の先端が円筒状に形成されている。
【0036】
図3及び図4に示すように、ワークBの側面部を洗浄する場合には、回転ブラシBrは、ワークBを僅かに付勢しつつ、回転しながら下方から上方に向かって移動する。回転ブラシBrが下方から上方に向かって移動中は、回転ブラシBrとワークBとの当接箇所に、温水(純水)を噴射する。回転ブラシBrが所定の位置まで移動した後は、温水の噴出を停止し、回転ブラシBrは初期の位置に復帰する。これにより、ワークBの側面部の洗浄が行われる。
【0037】
又、ワークBの上面部を洗浄する場合には、回転ブラシBrは、ワークBを僅かに付勢しつつ、回転しながら左右に移動する。回転ブラシBrが一方の方向に移動中は、回転ブラシBrとワークBとの当接箇所に、温水(純水)を噴射する。回転ブラシBrが所定の位置まで移動した後は、温水の噴射を停止し、回転ブラシBrは移動方向を逆転して、初期の位置に復帰する。これにより、ワークBの上面部の洗浄が行われる。
【0038】
[搬送装置]
次に、本発明の一実施形態に係る搬送装置10について説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る搬送装置10の構成を示す断面図である。又、図6は、図5の要部拡大図であり、図7は、搬送装置10の拡大正面図である。
【0039】
図5に示すように、搬送装置10は、箱状の搬送台車1と、円柱状の支柱2と、を備えている。又、搬送装置10は、一対の第1防水カバー7・7、一対の第2防水カバー5・5、及び一対の第3防水カバー6・6を備えている。搬送台車1とこれらの防水カバーについては、後段で詳述する。
支柱2は、搬送台車1の略中央部から上方に延びて設けられている。又、支柱2は、対向配置された一対のドレンパンDp・Dpにより形成された間隙SLを貫通している。支柱2の先端部には、支持部21を介してワークBが支持されている(図3参照)。
【0040】
(搬送台車)
搬送台車1について説明する。
搬送台車1は、その前後・左右に4個配置された車輪1aにより支持されている。これら一対一組の車輪1aは、一対のフレーム31・31の上面311を転動する。又、搬送台車1には、走行支持装置となるトロリ11、及びトロリ12が前後に設けられている。
【0041】
図7に示すように、トロリ11は、支持部材11aと、一対のローラ11b・11bとで構成されている。支持部材11aの基端部は、搬送台車1の前端部に固定されている。支持部材11aの先端部は、搬送台車1の下方に突出して、その両翼に一対のローラ11b・11bを回転可能に支持している。さらに、支持部材11aの先端部には、受動爪11cが下方に突出して設けられている。
【0042】
同様に、トロリ12は、支持部材12aと、一対のローラ12b・12bとで構成されている。支持部材12aの基端部は、搬送台車1の後端部に固定されている。支持部材12aの先端部は、搬送台車1の下方に突出して、その両翼に一対のローラ12b・12bを回転可能に支持している。
【0043】
一対のローラ11b・11b、及び一対のローラ12b・12bは、一対のフレーム31・31の中段に対向して配置された断面コの字形状のレール32・32に規制されている。これにより、搬送台車1は、レール32・32に沿って走行する。
【0044】
一対のフレーム31・31は、基台33に固定されている。一対のフレーム31・31、一対のレール32・32、及び基台33は、搬送台車1の進行方向に沿って伸長している。又、これら一対のフレーム31・31、一対のレール32・32、及び基台33は、搬送台車1の進行方向に沿って搬送台車1を支持案内するガイド装置3を構成している。
【0045】
ガイド装置3は、第1処理室1st〜第8処理室8stの各長さに対応して伸長している。つまり、搬送台車1は、第1処理室1st〜第8処理室8stを進行できる。
【0046】
トロリ11及びトロリ12の下方には、搬送台車1を移動させる駆動装置4となるシャトルコンベア40が配置されている。シャトルコンベア40は、両翼に一対のローラ4b・4bを有するトロリチェーン4aからなり、一対のフレーム31・31の間に配置されている。
【0047】
トロリチェーン4aは、図示しない一対のスプロケット間に掛け渡されている。一方のスプロケットを駆動(回転)すると、トロリチェーン4aは、カーブしながら進行することができ、例えば図1に示したような屈曲した軌道を描くことができる。
【0048】
図7に示すように、上方のトロリチェーン4aは、一対のローラ4b・4bが断面コの字形状のレール35・35に規制されている。したがって、上方のトロリチェーン4aは、下方に湾曲することなく軌道上を移動できる。又、下方のトロリチェーン4aは、ブラケット36に案内される。
【0049】
上方のトロリチェーン4aには、係止爪4cが立設されている。トロリチェーン4aが進行方向に移動すると、係止爪4cが受動爪11cに係合する。そして、搬送台車1を前進させると共に、後続の搬送台車1を前の搬送台車1と同じ位置に移動できる。なお、係止爪4cには、搬送台車1の位置決め機構を付加してもよい。
【0050】
搬送台車1が停止中に、係止爪4cは、受動爪11cとの係合を解除し、逆方向に進行することができ、搬送台車1を移動させるまで待機している。このように、トロリチェーン4aからなるシャトルコンベア40は、第1処理室1st〜第8処理室8stの各処理室に、搬送台車1を間欠的に進行させることができる。そして、上述した通り、搬送台車1が停止中に、各処理室においてワークBに所定の処理が施される(図1〜図4参照)。
【0051】
(第1防水カバー)
第1防水カバー7・7について説明する。
図5に示すように、一対の第1防水カバー7・7は、一対の位置決め板7a・7bと、これらの位置決め板7a・7bを先端部に有する一対の防水板71・71とで構成されている。防水板71は、ステンレス材からなることが好ましい。
【0052】
防水板71は、側面カバー部71aと、上面カバー部71bとから構成されている。側面カバー部71aは、後述する第3防水カバー6を構成する防水板61の側面を覆うように設けられており、フレーム31と回動可能に連結されている。上面カバー部71bは、側面カバー部71aの上端に設けられており、防水板61の上面を覆うように設けられている。上面カバー部71bは、傾斜するように屈折されて、その先端部には、位置決め板7a又は位置決め板7bが設けられている。
【0053】
一対の位置決め板7a・7bは、比較的硬質の剛性がある合成樹脂板又は金属板から構成されている。図5に示すように、位置決め板7bは、位置決め板7aに比して幅方向(搬送方向に直交する方向)の長さが大きく形成されているため、位置決め板7a・7bの先端部同士は、重なるようにして当接している。
【0054】
一対のフレーム31・31は、相反する向きに一対のアーム37・37を突出している。アーム37は、フレーム31の伸長方向に所定の距離で離間して一対に配置されている。そして、アーム37の先端部が、防水板71の中間部と回動自在に連結されている。
【0055】
基台33には、相反する向きに一対の複動型のエアシリンダ38・38が取り付けられている。エアシリンダ38は、ピストンロッド38aを進退させる。そして、ピストンロッド38aの先端部が、側面カバー部71aの下端部と回動自在に連結されている。側面カバー部71aは、搬送方向を回動軸37aとして、回動自在に支持されている。側面カバー部71aを駆動する機構は、エアシリンダ、電動式などいずれでもよい。
【0056】
図5又は図7に示すように、一対のピストンロッド38a・38aが進出すると、一対の第1防水カバー7・7が閉じ、一対の上面カバー部71b・71bが当接する。一方、一対のピストンロッド38a・38aが後退すると、図5の二点鎖線で示されるように、一対の第1防水カバー7・7が開き、一対の上面カバー部71b・71bは、互いに離間する。
【0057】
次に、一対の第1防水カバー7・7の開閉動作について、図8を参照して説明する。
図8は、搬送装置10の一対の第1防水カバー7・7の平面図である。詳しくは、図8(A)は、一対の第1防水カバー7・7が開いた状態図、図8(B)は、一方の第1防水カバー7が閉じた状態図、図8(C)は、一対の第1防水カバー7・7の両方が閉じた状態図である。
【0058】
図8に示すように、一対の位置決め板7a・7bは、半径方向から支柱2に嵌合する円弧溝状の嵌合部7rを有している。なお、一対の位置決め板7a・7bには、互いに接触する部分に弾性シール材7c・7dが取り付けられている。又、支柱2の外周にシール材2aを巻いて、防水性を向上させることもできる。
【0059】
先ず、図8(A)では、支柱2に対して、一対の位置決め板7a・7bは開いており、このときに支柱2を移動(進行)させる。
次いで、図8(B)では、支柱2の移動を停止し、一方のピストンロッド38aを進出させて、位置決め板7aの嵌合部7rを支柱2の半径に嵌合させる。
次いで、図8(C)では、他方のピストンロッド38aを進出させて、位置決め板7bの嵌合部7rを支柱2の半径に嵌合させる。
これにより、支柱2を一対の第1防水カバー7・7で両側から挟み込むことができ、ワークBを所定位置に支持すると共に、搬送装置10への浸水を防止する。
【0060】
ここで、一対の第1防水カバー7・7を閉じるときは、その順番が規定されている。即ち、一対のエアシリンダ38・38の駆動のタイミングに時間差が設けられている。これにより、一対の第1防水カバー7・7が相互に邪魔されることなく、支柱2の外周を囲うことができる。そして、位置決め板7a・7bは、支柱2をクランプして位置決めすると共に、支柱2を伝わる洗浄水を阻止できる。
【0061】
なお、一対の位置決め板7a・7bは、図5に示したように、横方向視で、山の形で支柱2を囲むため、排水性が大幅に向上している。又、一対の位置決め板7a・7bが、互いに左右の長さが異なる(幅方向の長さが異なる)ように形成されており、互いに重なるようにして当接するため、防水効果がより向上している。又、支柱2を固定する一対の嵌合部7r・7rの長さが左右で異なるため、防水効果がさらに向上している。
【0062】
次に、一対の第1防水カバー7・7の一斉開閉動作について、図9を参照して説明する。
図9は、搬送装置10に配置された複数の一対の第1防水カバー7・7の平面図である。詳しくは、図9(A)は、一対の第1防水カバー7・7が一斉に開いた状態図、図9(B)は、一方の第1防水カバー7が一斉に閉じた状態図、図9(C)は、一対の第1防水カバー7・7の両方が一斉に閉じた状態図である。
【0063】
図9(A)では、第1処理室1st〜第8処理室8stにそれぞれ配置された一対の第1防水カバー7・7を開き、シャトルコンベア40を駆動して、複数の支柱2を一斉に移動させる。
次いで、図9(B)では、第1処理室1st〜第8処理室8stにそれぞれ配置された各支柱2の移動を停止し、一方のピストンロッド38aを進出させて、位置決め板7aの嵌合部7rを支柱2の半径に一斉に嵌合させる。
次いで、図9(C)では、他方のピストンロッド38aを進出させて(図6参照)、位置決め板7bの嵌合部7rを支柱2の半径に一斉に嵌合させる。
これにより、支柱2をクランプして位置決めすると共に、防水の準備が完了した後に、第1処理室1st〜第8処理室8stの各処理室で各処理が開始される。
【0064】
(第2防水カバー)
第2防水カバー5・5について説明する。
図5に示すように、搬送装置10の上方には、一対の対向するドレンパンDp・Dpの先端部から、間隙SLに突出する一対の第2防水カバー5・5が配置されている。第2防水カバー5は、ドレンパンDpと、基端部がドレンパンDpに植設された多数の繊維状部材からなる繊維ブラシ50とにより構成されている。
【0065】
繊維ブラシ50は、その先端部が支柱2の外周を覆っており、比較的硬質であるが弾力性がある合成樹脂繊維からなる。弾性変形が容易な繊維ブラシ50を合成樹脂繊維の集合体で形成することにより、支柱2の通過と防水の両立を可能としている。繊維ブラシ50は、耐水性及び耐油性を満足することが好ましい。
【0066】
一対の繊維ブラシ50・50の先端部は、互いに交差している。支柱2は、一対の繊維ブラシ50・50の先端部を左右に分け入るように進行する。又、支柱2が停止中は、支柱2を伝って下方に流れ込む洗浄水が、一対の繊維ブラシ50・50に導かれて、一対のドレンパンDp・Dpに回収される。
又、図6に示すように、繊維ブラシ50は、長さの異なる組合せとすることで防水性がさらに向上する。
【0067】
(第3防水カバー)
第3防水カバー6・6について説明する。
一対の第3防水カバー6・6は、上述した一対の第1防水カバー7・7の下方に配置されている。第3防水カバー6は、弾性部材60と防水板61とで構成されている。防水板61は、ステンレス材からなることが好ましい。
【0068】
図5に示すように、防水板61は、その側面カバー部61aがガイド装置3及び駆動装置4を覆うように、フレーム31に取り付けられている。側面カバー部61aは、上端部が屈折されて、上面カバー部61bが搬送台車1の上方を覆っている。上面カバー部61bは、傾斜するように屈折され、その先端部に弾性部材60が設けられている。
一対の弾性部材60・60は、間隙SLに突出しており、支柱2の外周を覆うようにして設けられている。
【0069】
弾性部材60は、比較的軟質の弾力性がある合成樹脂板又はゴム板からなり、一対の弾性部材60・60の先端部が重なるようにして当接している。支柱2は、一対の弾性部材60・60の先端部を左右に分け入るように進行する。又、支柱2が停止中は、支柱2を伝って下方に流れ込む洗浄水を阻止し、防水板61に排出する。
又、一対の弾性部材60・60は、左右の長さ(幅)が異なっており、これにより、防水効果が向上する。
【0070】
以上のような構成からなる搬送装置10は、第1処理室1st〜第8処理室8stの各処理室に対応して配置される。図10は、例として、搬送装置10が配置された第3処理室3stの断面図である。第3処理室3stには、洗浄ロボットが配置されると共に、1/100程度の勾配で一対のドレンパンDp・Dpが配置されている。一対のドレンパンDp・Dpに落ちた洗浄水Wは、排水管81に集められる。
【0071】
なお、一対のドレンパンDp・Dpは、第1処理室st〜第8処理室18stの各処理室に対応して個別に設ける必要は必ずしもない。図2に示されるように、複数の処理室を集約して、一対のドレンパンDp・Dpを配置することが好ましい。又、ドレンパンDpはステレス材などを使用することが好ましい。
【0072】
複数のドレンパンDpで集められた洗浄水Wは、回収されてタンク82に貯蔵される。タンク82に貯蔵された洗浄水Wは、ポンプ83で吸い上げられ、フィルタユニットで濾過された後、純水として再利用される。
この洗浄水の回収構造は、第3処理室3stに限定されるものではなく、第1処理室1st〜第8処理室8stのいずれの処理室においても同様の構造である。
【0073】
[作用及び効果]
以下、本実施形態の作用及び効果について説明する。
本実施形態によれば、搬送台車1に支持されたワークBを連続的に搬送する搬送装置10において、搬送台車1から上方に延びてワークBを支持する支柱2と、搬送台車1の外側かつ両側に対向するように配置された一対の第1防水カバー7・7を設けた。又、一対の第1防水カバー7・7を開閉自在に動作させると共に、支柱2を一対の第1防水カバー7・7で両側から挟み込むことにより、ワークBを所定位置に支持する嵌合部7rを、一対の第1防水カバー7・7に設けた。
【0074】
これにより、搬送装置10は以下のように動作する。
先ず、一対の側面カバー部71a・71aを回動させて(開いて)、一対の上面カバー部71b・71b同士を離間させた状態で、駆動装置4により搬送台車1を処理室に搬送する。次に、一対の側面カバー部71a・71aを回動させて(閉じて)、一対の上面カバー部71b・71bを、支柱2を挟んで互いに当接させる。この状態で、ワークBに洗浄処理を施す。即ち、一対の上面カバー部71b・71bが閉じている間に、ワークBに対して所定の処理を行う。
【0075】
次に、一対の側面カバー部71a・71aを回動させて(開いて)、一対の上面カバー部71b・71bを再び離間させる。この状態で、駆動装置4により搬送台車1を処理室から搬出する。
【0076】
このように、ワークBを洗浄する際に、ワークBを支持する支柱2を挟んで、一対の第1防水カバー7・7の上面カバー部71b・71b同士が当接しているので、支柱2が上面カバー部71b・71bから上方に突出した状態で、これらの上面カバー部71b・71bにより搬送装置10が上方から覆われる。又、側面カバー部71a・71aにより搬送装置10が側方から覆われる。
【0077】
したがって、ワークBを洗浄した洗浄水がワークBの下方に流れても、この洗浄水が搬送装置10に浸入することを防止できる。又、本実施形態によれば、搬送台車1を用いることができるため、異なる処理工程間でワークの移載が不要である。ひいては、高価な移載装置が不要であり、設備投資費用の削減、省スペース化が可能である。
【0078】
又、本実施形態によれば、一対の第1防水カバー7・7を、支柱2から見て左右の長さが異なるようにして設けた。
これにより、一対の第1防水カバー7・7の上面カバー部71b・71bの幅方向(搬送方向に直行する方向)の長さが異なり、一対の第1防水カバー7・7を閉じた際には、一方の上面カバー部71bの先端が他方の上面カバー部71bの先端に重なるようにして当接する。これにより、防水効果を向上できる。
【0079】
又、本実施形態によれば、一対の第1防水カバー7・7の嵌合部7r・7rに、弾性シール材7c・7dを設けた。
これにより、特に支柱2を伝って下方に流れた洗浄水などが、搬送装置10の内部に浸入するのを防止でき、より防水効果を向上できる。
【0080】
又、本実施形態によれば、一対の第1防水カバー7・7の外側に設けられた一対の第2防水カバー5・5と、一対の第1防水カバー7・7の内部に配置された一対の第3防水カバー6・6と、を設けた。
これにより、搬送装置10の内部に洗浄水などがより浸入し難い3重の防水カバー構造となり、防水効果をさらに向上できる。
又、防水効果をさらに向上できるため、搬送装置10の保守に要する時間を削減できる。したがって、この搬送装置10を、ワークBの洗浄処理などの前処理工程に適用することにより、設備(ライン)稼動率を向上できる。
【0081】
又、本実施形態によれば、一対の第2防水カバー5・5を、支柱2を繊維ブラシ50・50で両側から挟み込む構造とした。
これにより、搬送台車1から上方に延びて設けられた支柱2が、搬送ラインに沿って移動するのを可能とする一方で、搬送装置10の内部に洗浄水などが浸入し難い構造を実現できる。
【0082】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれる。
例えば、ワークBは、自動車のバンパに限定されない。間欠的に移動するワークであって、洗浄処理などの処理が施されるワークは、本発明のワークに全て含まれる。
又、ワーク処理装置100の洗浄処理ラインは、第1処理室1st〜第8処理室8stに限定されない。処理室は一つでもよく、第1処理室1st〜第8処理室8stの中で取捨選択されて適宜に組み合わせてもよい。
又、搬送装置10は、洗浄処理ラインのみでなく、塗装ラインにそのまま利用できる。これにより、塗装品質が大幅に向上する。
又、搬送台車1を間欠的に進行させる駆動装置4としては、トロリチェーン4aからなるシャトルコンベア40に限定されない。適宜なリンク装置を用いて、搬送台車1を間欠的に進行させてもよい。
又、搬送台車1を間欠的に進行させる以外にも、可動式の第1防水カバー7の一対のb・71bに、スライド機構を追加するなどして対応が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 搬送台車
2 支柱
5 第2防水カバー
6 第3防水カバー
7 第1防水カバー
7r 嵌合部
10 搬送装置
B ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送台車に支持されたワークを連続的に搬送する搬送装置において、
前記搬送台車から上方に延びて前記ワークを支持する支柱と、
前記搬送台車の外側かつ両側に対向するように配置された一対の第1防水カバーと、を備え、
前記一対の第1防水カバーを開閉自在に動作させると共に、前記支柱を前記一対の第1防水カバーで両側から挟み込むことにより、前記ワークを所定位置に支持する嵌合部を当該一対の第1防水カバーに設けたことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記一対の第1防水カバーは、前記支柱から見て左右の長さが異なることを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記一対の第1防水カバーの前記嵌合部には、シール部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の搬送装置。
【請求項4】
前記一対の第1防水カバーの外側に設けられた一対の第2防水カバーと、
前記一対の第1防水カバーの内部に配置された一対の第3防水カバーと、を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項5】
前記一対の第2防水カバーは、前記支柱を繊維状部材で両側から挟み込む構造を有することを特徴とする請求項4記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−20608(P2011−20608A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168617(P2009−168617)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】