説明

搬送装置

【課題】搬送対象物の実際の搬送状態での移動量を計測することを可能として、計測した移動量に基づいて正確な検査実行や分別を行わせることができるようにする。
【解決手段】物品を搬送する搬送手段20と、該搬送手段20によって搬送される搬送対象物の所定の位置通過を検知する複数のセンサ11と、センサ11からの検知信号により搬送手段20上の搬送対象物に対する処理を実行する実行装置22と、実行装置22の実行結果により搬送対象物に対の分別を行う分別装置23と、センサ、実行装置、分別装置の動作を制御する制御装置とを備え、制御装置は、センサが搬送対象物の通過タイミングを所定の回数計測する計測中、センサからの物品検知信号発生時のカウンタの値を記憶装置に書き込み、所定の回数の計測終了後、記憶装置の内容を読み出して、複数のセンサ位置での搬送対象物の通過タイミングを演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置に係り、特に、搬送対象物の検査や仕分け分別を行う工程に使用して好適な物品の搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、物品等の検査工程や仕分け工程に使用される搬送装置は、搬送対象物が搬送されてきたことを検知するセンサからの検知信号を受け、検査の実行や不良品の排出、または、品種判別による仕分けを行うように構成されている。
【0003】
前述したような搬送装置に関する従来技術として、例えば、特許文献1、特許文献2等に記載された技術が知られている。これらの従来技術は、搬送対象物を検知して検査を実行する場合、検知するセンサから検査実行場所までの移動量(搬送量)を予め制御装置へ登録しておき、適切なタイミングで検査の実行を行うことが必要なものであり、このため、搬送手段として搬送量を計測するエンコーダ装置が使用されている。
【0004】
また、搬送対象物の検知から検査ステージ、仕分けステージ、さらに、次の作業ステージへの搬送等の制御手段としては、プログラマブルコントローラのシフトレジスタ機能が知られており、搬送装置において多用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭62−26836号公報
【特許文献2】特開2009−82763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来技術による搬送装置は、前述したように、搬送対象物を検知して検査を実行する場合、検知するセンサから検査実行場所までの移動量(搬送量)を予め制御装置へ登録しておき、適切なタイミングで検査の実行を行うため、搬送手段に搬送量を計測するエンコーダ装置が用いられている。
【0007】
しかし、従来技術による搬送装置は、搬送手段がベルトコンベア等であって、搬送手段と搬送対象物との間でスリップが発生し移動量がずれてしまう場合等、特に、高速な搬送を行う場合、エンコーダ装置の移動量計測値のみでは適切な移動量を求めることができず、予測した移動量を仮登録し、実行検証し、仮登録再調整を行うということを繰り返し行い最適値を求めるようにせざるを得ないという問題点を有している。
【0008】
また、前述した従来技術による搬送装置は、前述の仮登録再調整時に、複数の搬送対象物を連続して搬送させる場合にはスリップ量が1つの搬送物の場合とは異なっており、搬送装置の実際の運用に即した移動量の計測を行うことができなかったという問題点を有している。
【0009】
本発明の目的は、前述した従来技術の問題点を解決し、搬送対象物の実際の搬送状態での移動量を計測することを可能として、計測した移動量に基づいて正確な検査実行や分別を行わせることができるようにした搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば前記目的は、搬送対象物の検査、仕分け分別を行う工程に設けられる搬送装置において、物品を搬送する搬送手段と、該搬送手段によって搬送される搬送対象物の所定の位置通過を検知する複数のセンサと、該センサからの検知信号により前記搬送手段上の搬送対象物に対する処理を実行する実行装置と、該実行装置の実行結果により搬送対象物に対の分別を行う分別装置と、前記センサ、前記実行装置、前記分別装置の動作を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、カウント動作をするカウンタと、カウンタの値を記憶する記憶手段と、前記カウンタの値を前記記憶装置に書き込み、また、読み出す制御回路と、搬送対象物の前記複数のセンサ位置の通過タイミングを演算する演算手段とを備えて構成され、前記制御回路は、前記センサが搬送対象物の通過タイミングを所定の回数計測する計測中、前記センサからの物品検知信号発生時の前記カウンタの値を前記記憶装置に書き込み、前記所定の回数の計測終了後、前記記憶装置の内容を読み出して、前記演算手段に前記複数のセンサ位置での搬送対象物の通過タイミングを演算させることにより達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、搬送装置の搬送手段と搬送対象物との間でスリップが発生して搬送手段の移動量のみでは搬送対象物の移動量が正確に求められない場合にも、実際の搬送状態での搬送対象物の移動量を正確に計測することができ、計測した移動量に基づいて正確な検査実行や分別を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による搬送装置に含まれる制御装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による搬送装置全体の構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による搬送装置に含まれる制御装置の他の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による搬送装置の実施形態を図面により詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態による搬送装置に含まれる制御装置の構成例を示すブロック図、図2は本発明の一実施形態による搬送装置全体の構成例を示すブロック図である。図2に示す例は、搬送装置を構成する搬送手段上に搬送される搬送対象物の検査実施とその結果により良品不良品を選別する検査装置とを含んだ例である。
【0015】
まず、図2を参照して、本発明の実施形態による搬送装置全体の構成について説明する。本発明の実施形態による搬送装置は、図2に示すように、ベルトコンベア等の搬送手段20と、排出コンベア21と、搬送対象物を検知する最上流に位置するセンサ11−1と、カメラによる映像の取り込み及び取り込んだ映像による搬送対象物の検査や認識を行う実行装置22と、所定時間(T2)経過後に搬送対象物が通過したことを検知するセンサ11−2と、搬送対象物の分別を行う分別装置23と、分別装置23により排出されずに、所定時間(T3)経過後に搬送対象物が通過したことを検知するセンサ11−3と、排出された搬送対象物が通過したことを検知するセンサ11−4と、図2に示す搬送装置全体を制御する制御装置10とにより構成されている。そして、搬送手段20上には、ビン、缶、箱等の種々の形状をした搬送対象物30が図2の左から右へ搬送されている。
【0016】
前述において、最上流に位置するセンサ11−1は、搬送手段20上を搬送されてくる搬送対象物30を検知し、その信号を制御装置10に送信する。制御装置10は、前述の信号を受信した後、所定時間(T1)経過後カメラによる映像の取り込みと取り込んだ映像による搬送対象物30の検査や認識を行う実行装置22に対し起動指令を発する。実行装置22は、制御装置10からの起動指令を受け取り、それに基づく処理を行った結果を制御装置10に送信する。
【0017】
実行装置22からの結果を受け取った制御装置10は、内部に備えられる図示していないプログラマブルコントローラの持つシフトレジスタ等の手段により、搬送対象物30が所定時間(T2)経過後にセンサ11−2の位置を通過した時点で同期化して分別装置23に指令を発して搬送対象物30を排出コンベア21に排出させる。
【0018】
また、制御装置10は、分別装置23により排出されない搬送対象物30が所定時間(T3)経過後にセンサ11−3の位置を通過したことを示す信号を受けて、搬送対象物30が正常に排出されなかったことを確認する。また、制御装置10は、排出された搬送対象物30の通過をセンサ11−4からの信号を受けて検知し、所定時間(T4)以内に排出が正しく行われたか否かの確認を行う。
【0019】
次に、図1を参照して、制御装置10の構成とその動作とについて説明する。図1に示す制御装置の内部構成は、本発明に関わる部分を示しており、前述で説明した時間T1〜T4等の設定値を求めるために必要な構成である。
【0020】
制御装置10は、搬送手段の移動量に比例してパルスを発生するパルス発生装置からのパルスをカウントするカウンタ3と、前述したセンサ11−1〜11−4からそれぞれの入力順を示す値を持つポインタ2と、このポインタ2が示す値をアドレスとし、そのときのカウンタ3の値が書き込まれるセンサ毎に備えられる記憶装置1と、時間T1〜T4等の値を求める演算回路4と、アドレスバス5及びデータバス6と、各センサからの入力タイミングで記憶装置1にカウンタ3の値を書き込み、演算回路4の指示により記憶装置1の内容を読み出す制御回路7とにより構成される。
【0021】
前述において、カウンタ3は、搬送手段の回転部に取り付けられた搬送手段の移動量に比例してパルスを発生するパルス発生装置であるエンコーダからのパルスをカウントアップするカウンタ、あるいは、一定時間例えば0.1ms毎にカウントアップするフリーランカウンタ動作を行うカウンタである。
【0022】
制御回路7は、複数のセンサ11−1〜11−4のそれぞれからの入力71のタイミングで、入力71に対応するセンサ11−1〜11−4の1つを選択する選択信号73により、その入力順を示す値を持つポインタ2が示す値を記憶装置1のアドレスとして、そのときのカウンタ3の値を記憶装置1に書き込む。1つの値を書き込み終わると、該当するポインタ2の値は、+1インクリメントされて次の入力に備える。ポインタ2は、センサ11−1〜11−4のそれぞれに対応して、センサ毎に個別に備えられており、また、記憶装置1も、センサ11−1〜11−4のそれぞれに対応して、センサ毎に個別に備えられている。また、制御装置7は、信号線72を介して、実行装置22との間でのデータの送受信を行い、また、分別装置23に指令を発する。
【0023】
そして、演算回路4は、予め設定した個数分、例えば、100ケの搬送対象物30がセンサ11−1〜11−4により検知され、記憶装置1にそれぞれの通過タイミングのカウンタ3の値の格納が終了すると、制御装置7に記憶装置1の内容を読み出させ、アドレスバス5及びデータバス6を使用して記憶装置1の内容を受け取る。読み出された値は、センサ11−1〜11−4の位置を通過したタイミングを示しているので、演算回路4は、それぞれの差分、例えば、センサ11−2の通過タイミングの値からセンサ11−1の通過タイミングの値を引くことによりT2の値を求めることができる。
【0024】
演算回路4は、前述のような演算を行うことにより、複数の搬送対象物30が搬送手段20上を流れる実際の運用に近い状態で各センサ11−1、11−4の位置を通過するタイミングを計測することができ、所望のT1〜T4を求めることが可能となる。
【0025】
前述では、記憶装置1への書き込みタイミングとしてセンサ11からの入力と説明したが、ここでの入力とは、OFFからONへのタイミング、または、ONからOFFへのタイミング、または、その両方のタイミングである。両方のタイミングを計測すると、搬送対象物の中心の位置を両方の計測値の平均値として求めることができ、例えば、搬送対象物が飲料缶で、分別装置23がエアーによる排出装置である場合、飲料缶の重心位置に最大風力を働かせるように設定する場合等に有効である。
【0026】
また、前述の説明では、設定値を求めるときに本発明を利用するように説明したが、本発明は、搬送装置の実際の運用、例えば、検査や仕分け等の運用中に、搬送手段20上を搬送対象物30が次々と流れ、そのタイミングを計測し記憶装置1に順次書き込み、所定の回数、例えば、100回計測するとその結果から搬送対象物30のそのときのスリップ状態等を含んだ搬送時間を計測して、当初設定したT1〜T4等の設定値の微調整を行うようにすることができ、これにより、搬送状態を常に最適な状態に保つことが可能となる。
【0027】
図3は本発明の一実施形態による搬送装置に含まれる制御装置の他の構成例を示すブロック図であり、次に、これについて説明する。
【0028】
図1に示して説明した制御装置の例は、記憶装置1をセンサ11−1〜11−4のそれぞれに対応して、センサ毎に個別に備えられているとして説明したが、図3に示す例は、記憶装置1を1つに纏めて構成した例である。
【0029】
図3に示す例の制御装置は、センサ11−1〜11−4毎に設けられたポインタ2の出力を演算回路4からのアドレス5含めて選択するセレクタ8を設け、1つの記憶装置1内にセンサ毎にアドレスの割り振りが行われたアドレスにカウンタ3の値を格納するように構成されており、図1に示した場合と同様に動作する。
【0030】
前述した本発明の実施形態によれば、搬送装置の搬送手段と搬送対象物との間でスリップ等が発生して搬送手段の移動量のみでは搬送対象物の移動量を正確に求められないような場合にも、センサを設置した複数地点を搬送対象物が通過するタイミングを計測し、または、複数の搬送対象物の通過タイミングを連続して計測しているので、搬送装置と制御装置との調整時に最適な調整を行うことが容易となり、調整の手間を少なくすることができる。
【0031】
前述までに説明した本発明の実施形態は、飲料ビン、飲料缶、梱包箱等の外観検査による不良品選別や、印字文字検査による不良品選別、印字内容読み取りによる搬送物選別等を行わせる搬送装置に利用して好適である。
【符号の説明】
【0032】
1 記憶装置
2 ポインタ
3 カウンタ
4 演算回路
5 アドレスバス
6 データバス
7 制御回路
8 セレクタ
10 制御装置
11 センサ
20 搬送手段
22 実行装置
23 分別装置
30 搬送対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物の検査、仕分け分別を行う工程に設けられる搬送装置において、
物品を搬送する搬送手段と、該搬送手段によって搬送される搬送対象物の所定の位置通過を検知する複数のセンサと、該センサからの検知信号により前記搬送手段上の搬送対象物に対する処理を実行する実行装置と、該実行装置の実行結果により搬送対象物に対の分別を行う分別装置と、前記センサ、前記実行装置、前記分別装置の動作を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、カウント動作をするカウンタと、カウンタの値を記憶する記憶手段と、前記カウンタの値を前記記憶装置に書き込み、また、読み出す制御回路と、搬送対象物の前記複数のセンサ位置の通過タイミングを演算する演算手段とを備えて構成され、
前記制御回路は、前記センサが搬送対象物の通過タイミングを所定の回数計測する計測中、前記センサからの物品検知信号発生時の前記カウンタの値を前記記憶装置に書き込み、前記所定の回数の計測終了後、前記記憶装置の内容を読み出して、前記演算手段に前記複数のセンサ位置での搬送対象物の通過タイミングを演算させることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記カウンタが、一定時間毎にカウントアップするフリーランカウンタ動作を行うカウンタであることを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記カウンタが、前記搬送手段の移動量に比例してパルスを発生するパルス発生装置からのパルスをカウントアップするカウンタであることを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項4】
前記複数のセンサのそれぞれが前記搬送対象物の通過を検知し、その検出信号を記憶装置に書き込むセンサからの入力は、前記搬送対象物の1つのセンサ位置の通過に対して1回または複数回であることを特徴とする請求項1、2または3記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−56385(P2011−56385A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208232(P2009−208232)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000153443)株式会社日立情報制御ソリューションズ (359)
【Fターム(参考)】