説明

搬送装置

【課題】封筒の表裏を高精度で検出する。
【解決手段】搬送装置は、封筒90を搬送する搬送部と、搬送される封筒90に対して斜め方向から光を照射する光源部71と、封筒90による反射光を受光する受光部72と、受光部72による受光量に基づき、封筒90の裏面90b側における胴部91とフラップ92との境界に位置する段差93により形成される影を検出することにより封筒90の表裏を判定する判定部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に設けられ、封筒を搬送可能な搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置において、印刷媒体として封筒が使用されることがある。封筒には表面と裏面の区別があるため、表裏に応じた画像が印刷されなければならない。しかし、例えば、ユーザが給紙台に封筒の表裏を誤ってセットした場合、そのまま給紙され印刷が行われれば、表裏に逆の画像が印刷される誤印刷となる。封筒への印刷の実行前に、表裏を検出できれば、誤印刷を回避する処置が可能となる。
【0003】
そこで、透過率検知センサやレーザ距離センサを用いて、印刷装置において搬送中の封筒の厚さを検出し、これにより表裏を検出する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。封筒は部分によって紙の重なり方が異なり、それにより厚さが異なることから、厚さの検出結果を用いて表裏を判定することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−92841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、封筒の種類によっては、厚さの検出が困難なことがある。例えば、透過率検知センサを用いる場合、透過率が小さい封筒の厚さの検出は困難である。このため、封筒の表裏の検出ができないことがあった。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、封筒の表裏を高精度で検出できる搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る搬送装置の第1の特徴は、封筒を搬送する搬送部と、搬送される封筒に対して斜め方向から光を照射する光源部と、封筒による反射光を受光する受光部と、前記受光部における受光量に基づき、封筒の一方の面側における胴部とフラップとの境界に位置する段差により形成される影を検出することにより封筒の表裏を判定する判定部とを備えることにある。
【0008】
本発明に係る搬送装置の第2の特徴は、前記光源部は、封筒に対して搬送方向の上流側から光を照射する第1の光源と、封筒に対して前記搬送方向の下流側から光を照射する第2の光源とを備え、前記第1の光源と前記第2の光源とは、交互に点灯することにある。
【0009】
本発明に係る搬送装置の第3の特徴は、前記光源部は、封筒の搬送方向に略直交する方向に配列された複数の第1の発光素子を有し、封筒に対して前記搬送方向の上流側から光を照射する第1の光源と、前記搬送方向に略直交する方向に配列された複数の第2の発光素子を有し、封筒に対して前記搬送方向の下流側から光を照射する第2の光源とを備え、前記第1の発光素子および前記第2の発光素子は、少なくとも一部が前記搬送方向に略直交する方向において異なる位置に配置されていることにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る搬送装置の第1の特徴によれば、光源部が封筒に斜め方向から光を照射し、受光部が封筒による反射光を受光する。判定部は、受光部における受光量に基づき、封筒の一方の面側における胴部とフラップとの境界に位置する段差により形成される影を検出することにより封筒の表裏を判定する。これにより、搬送装置は、封筒の表裏を高精度で検出できる。
【0011】
本発明に係る搬送装置の第2の特徴によれば、封筒に対して搬送方向の上流側から光を照射する第1の光源と、下流側から光を照射する第2の光源とが、交互に点灯する。これにより、封筒の搬送方向における向きが、フラップを上流側にした向きでもその反対でも、段差による影が形成され、搬送装置は、封筒の表裏を高精度で検出できる。
【0012】
本発明に係る搬送装置の第3の特徴によれば、複数の第1の発光素子および複数の第2の発光素子は、少なくとも一部が前記搬送方向に略直交する方向において異なる位置に配置されている。これにより、封筒の搬送方向における向きが、フラップを上流側にした向きでもその反対でも、段差による影が形成され、搬送装置は、封筒の表裏を高精度で検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施の形態に係る搬送装置を備えた印刷装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す印刷装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す印刷装置のセンサ部を下側から見た平面図である。
【図4】図3におけるA−A線に沿った断面図である。
【図5】封筒を裏面側から見た平面図である。
【図6】封筒の部分側面図である。
【図7】第1の実施の形態におけるセンサ部による読み取り動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図8】第1の実施の形態におけるセンサ部による封筒への光の照射を説明する図である。
【図9】封筒の段差により形成される影を示す図である。
【図10】センサ部で封筒の胴部を読み取ったラインの読取データを示す図である。
【図11】裏面が上向きの封筒の影を読み取ったラインの読取データを示す図である。
【図12】センサ部で封筒のフラップを読み取ったラインの読取データを示す図である。
【図13】1つの画素における読取データの変化を示す図である。
【図14】第1の実施の形態におけるセンサ部による封筒への光の照射を説明する図である。
【図15】第1の実施の形態におけるセンサ部による封筒への光の照射を説明する図である。
【図16】第1の実施の形態における片面印刷の動作を説明するためのフローチャートである。
【図17】第1の実施の形態における両面印刷の動作を説明するためのフローチャートである。
【図18】第2の実施の形態に係る印刷装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図19】第2の実施の形態におけるセンサ部を下側から見た平面図である。
【図20】図19におけるB−B線に沿った断面図である。
【図21】第2の実施の形態におけるセンサ部による読み取り動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図22】第2の実施の形態におけるセンサ部による封筒への光の照射を説明する図である。
【図23】第2の実施の形態におけるセンサ部による封筒への光の照射を説明する図である。
【図24】第2の実施の形態における片面印刷の動作を説明するためのフローチャートである。
【図25】第2の実施の形態における両面印刷の動作を説明するためのフローチャートである。
【図26】第2の実施の形態の変形例におけるセンサ部を下側から見た平面図である。
【図27】第2の実施の形態の変形例におけるセンサ部による読み取り動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図28】第2の実施の形態の変形例における封筒の段差による影を読み取ったラインの読取データを示す図である。
【図29】第2の実施の形態の変形例における封筒の段差による影を読み取ったラインの読取データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0015】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る搬送装置を備えた印刷装置の概略構成図、図2は、図1に示す印刷装置の制御系の構成を示すブロック図である。以下の説明において、ユーザが位置する図1の紙面表方向を前方とする。また、図1に示すように、ユーザから見て、上下左右を上下左右方向とする。上下方向、左右方向、前後方向は、互いに略直交する方向である。
【0017】
図1において太線で示す経路が、印刷媒体が搬送される搬送経路である。搬送経路のうち、実線で示す経路が通常経路RC、一点鎖線で示す経路が反転経路RR、破線で示す経路が排紙経路RD、二点鎖線で示す経路が給紙経路RSである。以下の説明における上流、下流は、搬送経路における上流、下流を意味する。
【0018】
図1、図2に示すように、第1の実施の形態に係る印刷装置1は、給紙部2と、搬送印刷部3と、上面搬送部4と、排紙部5と、反転部6と、センサ部7と、制御部8と、各部を収納する筐体9とを備える。なお、請求項の搬送装置は、搬送印刷部3の一部(後述のレジストローラ31、ベルト搬送部32)と、センサ部7と、制御部8とを備える。
【0019】
給紙部2は、搬送印刷部3に印刷媒体を供給する。給紙部2は、搬送経路の最も上流側に設けられる。給紙部2は、外部給紙台21と、外部給紙ローラ22と、複数の内部給紙台23と、複数の内部給紙ローラ24と、複数対の縦搬送ローラ25とを備える。
【0020】
外部給紙台21は、印刷媒体が積載されるものである。外部給紙台21は、一部が印刷装置1の筐体9の外部に露出して設置されている。
【0021】
外部給紙ローラ22は、外部給紙台21から印刷媒体を1枚ずつ取り出して給紙経路RSに沿って後述のレジストローラ31に向けて搬送する。外部給紙ローラ22は、外部給紙台21の上側に設けられる。
【0022】
内部給紙台23は、印刷媒体が積載されるものである。内部給紙台23は、筐体9の内部に設けられる。
【0023】
内部給紙ローラ24は、内部給紙台23から印刷媒体を1枚ずつ取り出して給紙経路RSに送り出す。内部給紙ローラ24は、内部給紙台23の上側に設けられる。
【0024】
縦搬送ローラ25は、内部給紙台23から取り出された印刷媒体を後述のレジストローラ31に向けて搬送する。複数対の縦搬送ローラ25は、給紙経路RSに沿って配置される。
【0025】
また、給紙部2は、外部給紙ローラ22、内部給紙ローラ24、縦搬送ローラ25を回転駆動させる複数のモータ(いずれも図示せず)を備える。
【0026】
搬送印刷部3は、印刷媒体を搬送しつつ、印刷媒体に画像を印刷する。搬送印刷部3は、給紙部2の下流側に配置されている。搬送印刷部3は、レジストローラ31と、ベルト搬送部32と、インクジェットヘッド部33とを備える。
【0027】
レジストローラ31は、給紙部2または反転部6から搬送されてきた印刷媒体を一旦止めた後、所定のタイミングでベルト搬送部32へと送り出す。レジストローラ31は、搬送印刷部3の上流部の通常経路RC上に配置されている。換言すると、レジストローラ31は、給紙経路RSと反転経路RRとの合流地点の近傍に配置されている。
【0028】
ベルト搬送部32は、レジストローラ31から搬送されてきた印刷媒体を上面搬送部4へと搬送する。ベルト搬送部32は、レジストローラ31の下流側に設けられている。ベルト搬送部32は、インクジェットヘッド部33の下方に対向して設けられた環状の搬送ベルト321と、搬送ベルト321を周回駆動させるベルト駆動ローラ322と、ベルト駆動ローラ322に従動する従動ローラ323〜325とを備える。搬送ベルト321は、多数の穴が空けられた無端ベルトからなり、図示しない吸引ファンにより穴から空気が吸引されることにより発生する負圧で印刷媒体を吸着保持して搬送する。
【0029】
インクジェットヘッド部33は、ベルト搬送部32の上方に配置され、印刷媒体の搬送方向と略直交する方向(前後方向)に複数のノズルが配列されたラインタイプの複数のインクジェットヘッドを有する。インクジェットヘッド部33は、ベルト搬送部32により搬送される印刷媒体にインクジェットヘッドからインクを吐出して画像を印刷する。
【0030】
また、搬送印刷部3は、レジストローラ31を回転駆動させるモータと、ベルト駆動ローラ322回転駆動させるモータ(いずれも図示せず)とを備える。
【0031】
上面搬送部4は、ベルト搬送部32によって搬送されてきた印刷媒体を右方向から左方向にUターンするように搬送する。上面搬送部4は、複数対の上面搬送ローラ41を備える。
【0032】
上面搬送ローラ41は、印刷媒体をニップして搬送する。複数対の上面搬送ローラ41は、搬送印刷部3と排紙部5との間の通常経路RCに沿って配置されている。1対の上面搬送ローラ41は、反転経路RRの上流部に配置されている。
【0033】
また、上面搬送部4は、複数対の上面搬送ローラ41を回転駆動させる複数のモータ(図示せず)を備える。
【0034】
排紙部5は、印刷済みの印刷媒体を排紙して積載するものである。排紙部5は、切替部51と、排紙ローラ52と、排紙台53とを備える。
【0035】
切替部51は、排紙経路RDと反転経路RRとの分岐点に配置され、印刷媒体の搬送経路を排紙経路RDと反転経路RRとの間で切り替える。排紙経路RDは、通常経路RCの下流側の端部から排紙台53に向けて延びる経路である。
【0036】
排紙ローラ52は、上面搬送部4により搬送されてきた印刷媒体を排紙経路RDに沿って搬送して排紙台53へと排紙する。排紙ローラ52は、切替部51と排紙台53との間に配置されている。
【0037】
排紙台53は、排紙ローラ52により搬送されてきた印刷済みの印刷媒体を積載するためのものである。排紙台53は、排紙経路RDの下流端に配置されている。排紙台53の一部は、筐体9から突出している。
【0038】
また、排紙部5は、切替部51を駆動させるソレノイドと、排紙ローラ52を回転駆動させるモータ(いずれも図示せず)とを備える。
【0039】
反転部6は、両面印刷の際に、片面印刷済みの印刷媒体を反転させて搬送印刷部3に再供給するものである。反転部6は、反転ローラ61と、スイッチバック部62と、再給紙ローラ63と、切替ゲート64とを備える。
【0040】
反転ローラ61は、上面搬送部4により搬送されてきた印刷媒体をスイッチバック部62に一時的に搬入した後に搬出して、再給紙ローラ63へと搬送する。反転ローラ61は、反転経路RR上において、上面搬送ローラ41とスイッチバック部62の搬入口との間に配置されている。
【0041】
スイッチバック部62は、反転ローラ61が印刷媒体を一時的に搬入するための空間である。スイッチバック部62は、排紙台53の下部に形成された空間からなる。スイッチバック部62は、反転ローラ61の近傍が印刷媒体を搬入するために開口されている。
【0042】
再給紙ローラ63は、反転ローラ61により搬送されてきた印刷媒体をレジストローラ31へと搬送する。再給紙ローラ63は、反転ローラ61とレジストローラ31との間の反転経路RR上に配置されている。
【0043】
切替ゲート64は、上面搬送ローラ41によって搬送されてきた印刷媒体を反転ローラ61へとガイドする。また、切替ゲート64は、反転ローラ61によってスイッチバック部62から搬出される印刷媒体を再給紙ローラ63へとガイドする。切替ゲート64は、最も下流側の上面搬送ローラ41、反転ローラ61、および再給紙ローラ63の3個所の重心近傍に配置されている。
【0044】
また、反転部6は、反転ローラ61を回転駆動させるモータと、再給紙ローラ63を回転駆動させるモータ(いずれも図示せず)とを備える。
【0045】
センサ部7は、搬送経路を搬送される印刷媒体の幅(前後方向の長さ)および前後方向における位置を検出するためのものである。また、センサ部7は、印刷媒体として封筒が用いられる場合に、搬送経路を搬送される封筒の上向きの面が、表面であるか裏面であるかを判定するために用いられる。センサ部7は、レジストローラ31とインクジェットヘッド部33との間の通常経路RCに沿って配置されている。センサ部7は、例えば、CIS(Contact Image Sensor)により構成される。
【0046】
図3は、センサ部7を下側から見た平面図、図4は、図3におけるA−A線に沿った断面図である。図3、図4に示すように、センサ部7は、光源部71と、受光部72と、集光レンズ73と、カバーガラス74と、枠体75とを備える。
【0047】
光源部71は、通常経路RC上を搬送される印刷媒体Pに対して光を照射する。光源部71は、複数の発光素子であるLED76と、基板77とを備える。
【0048】
LED76は、白色光を射出する。複数のLED76は、印刷媒体Pの搬送方向に略直交する前後方向に沿って直線状に配列されている。
【0049】
基板77は、複数のLED76を実装するものである。基板77は、前後方向に細長い板状に形成されている。基板77は、LED76の実装面が水平面に対して約45°傾斜し、LED76の光が、集光レンズ73の直下の搬送経路上の所定位置(読取位置)を通過する印刷媒体Pに対して下流側(右側)の斜め方向から照射されるように配置されている。
【0050】
受光部72は、LED76からの光が印刷媒体Pで反射された反射光を受光するラインセンサである。受光部72は、複数の光電変換素子78と、基板79とを備える。
【0051】
複数の光電変換素子78は、印刷媒体Pによる反射光の一部を受光し、光電変換して電気信号を生成する。複数の光電変換素子78は、主走査方向(前後方向)に沿って直線状に配列されている。光電変換素子78は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)により構成される。
【0052】
基板79は、複数の光電変換素子78を実装するものである。基板79は、前後方向に細長い板状に形成されている。基板79は、光電変換素子78の実装面を下向きにして、光電変換素子78が集光レンズ73の光軸の延長上に位置するように設置されている。
【0053】
集光レンズ73は、印刷媒体による反射光の一部を光電変換素子78に集光するものである。集光レンズ73は、例えば、セルフォック(登録商標)レンズアレイにより構成される。集光レンズ73は、上下方向を光軸方向として、受光部72の下方に配置されている。
【0054】
カバーガラス74は、光源部71等を保護するものである。カバーガラス74は、光源部71、集光レンズ73の下方に配置されている。カバーガラス74は、光の透過性を有する。これにより、光源部71のLED76から射出された光がカバーガラス74を通過して印刷媒体Pに照射される。また、印刷媒体Pによる反射光がカバーガラス74を通過して集光レンズ73に入射する。なお、図3ではカバーガラス74を省略している。
【0055】
枠体75は、光源部71等の各部を収納、保持するものである。枠体75は、前後方向に細長い形状に形成されている。
【0056】
制御部8は、印刷装置1全体の動作を制御するものである。制御部8は、CPU、RAM、ROM等を備えて構成される。
【0057】
印刷媒体として封筒を用いる場合、制御部8は、受光部72による受光量に基づき、封筒の一方の面側における胴部とフラップとの境界に位置する段差により形成される影を検出することにより、封筒の表裏を判定する。この判定処理の詳細は後述する。制御部8は、請求項の判定部に相当する。封筒の表裏を判定すると、制御部8は、判定結果に応じた処理を実行するよう各部を制御する。
【0058】
ここで、封筒について説明する。図5は、封筒を裏面側から見た平面図、図6は、封筒の部分側面図である。
【0059】
図5、図6に示すように、封筒90は、胴部91と、フラップ92とを有する。封筒90において、一般に宛名等が記載される面を表面90a、その反対の面を裏面90bとする。胴部91は、書類等を収容する部分である。胴部91は、フラップ92側が開口した筒状に形成され、紙2枚分の厚さを有する。フラップ92は、封筒90を封緘するための折り返し部分である。フラップ92は、裏面90b側に折り返される。これにより、胴部91の開口部が閉じられるようになっている。フラップ92は、紙1枚分の厚さを有する。このように、胴部91とフラップ92とでは厚さが異なり、その境界において、裏面90b側に紙1枚の厚さ分の段差93が形成されている。
【0060】
次に、印刷媒体として封筒90を用いる場合の印刷装置1の動作について説明する。
【0061】
封筒90を用いて印刷を行う場合、外部給紙台21または内部給紙台23に封筒90が予めセットされる。第1の実施の形態では、給紙部2から搬送印刷部3に向かう封筒90がフラップ92の反対側である底側を下流側にして搬送されるような向きで、封筒90が外部給紙台21または内部給紙台23にセットされるものとする。つまり、片面印刷時および両面印刷の第1面印刷時において、封筒90は、底側が下流側(フラップ92が上流側)に向いた状態で、センサ部7の下を通過するものとする。
【0062】
封筒90の表裏判定について説明する。印刷動作を行う際、制御部8は、給紙部2から封筒90を搬送印刷部3に給紙させる。給紙部2から封筒90が給紙されると、制御部8は、センサ部7を用いて、封筒90の上向きの面が表面90aであるか否かを判定する。
【0063】
ここで、センサ部7による封筒90の読み取り動作について説明する。図7は、センサ部7による読み取り動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0064】
印刷動作を開始すると、図7に示すように、制御部8は、センサ部7の受光部72にクロック信号CLKを供給する。また、制御部8は、光源部71のLED76を点灯(ON)させる。次いで、制御部8は、受光部72にスタート信号SIを供給する。受光部72にスタート信号SIが入力されると、複数の光電変換素子78がクロック信号CLKの1クロックごとに順次、受光量に応じた電気信号を出力する。制御部8は、光電変換素子78からの電気信号にA/D変換等の所定の処理を施し、1ライン分の各画素の読取データを得る。ここで、1画素は1つの光電変換素子78に対応する。
【0065】
制御部8は、所定周期でスタート信号SIを受光部72に供給する。これにより、制御部8は、センサ部7が副走査方向(左右方向)における所定の読取間隔(mm)で封筒90を読み取った読取データを取得する。制御部8は、このようにして順次得られるラインごとの読取データを用いて、封筒90の上向きの面が表面90a、裏面90bのいずれであるかを判定する。
【0066】
封筒90の裏面90bが上向きである場合、図8に示すように、LED76の光が封筒90に右斜め上方向から照射されることで、集光レンズ73直下の読取位置において、図9に示すような段差93による影94がフラップ92側に形成される。このとき、受光部72による受光量が小さくなる。
【0067】
センサ部7の読取間隔(スタート信号SIの周期)は、封筒90の搬送速度に応じて、段差93により形成される影94の部分を読み取り可能に設定される。このように設定される読取間隔は、例えば、0.1mm程度とする。
【0068】
図10は、封筒90の胴部91を読み取ったラインの読取データを示す図、図11は、裏面90bが上向きの封筒90の影94を読み取ったラインの読取データを示す図、図12は、封筒90のフラップ92を読み取ったラインの読取データを示す図である。
【0069】
搬送される封筒90の胴部91の先端が集光レンズ73の直下の読取位置に到達し、胴部91による反射光が受光部72で受光されると、図10に示すような読取データが得られる。図10では、封筒90の幅に応じた領域(x1〜x2)の画素において、封筒90からの反射光により読取データのレベルが上昇して明度d1となっている。封筒90が搬送方向に進んで段差93が読取位置近傍に達し、影94が形成されると、図11に示すような読取データが得られる。図11では、図10の明度d1がd2(<d1)に低下している。その後、フラップ92による反射光が受光部72で受光されると、図12に示すような読取データが得られる。図12では、図10と同様の明度d1に戻っている。なお、フラップ92は端に向かって幅が狭くなる台形形状であるので、図12では図10よりも明度d1となる領域(x3〜x4)が狭くなっている。
【0070】
図13は、裏面90bが上向きの封筒90をセンサ部7で読み取った場合の、1つの画素における読取データの変化を示す図である。図13において、時刻t1で読取データのレベルが上昇して明度d1になっている。時刻t1は、図14に示すように、封筒90の先端がセンサ部7の読取位置に到達した時点に対応する。このときのライン全体の読取データは、図10に示したものとなる。
【0071】
時刻t2では、読込データが落ち込んで明度d2となり、その後、明度d1に戻っている。時刻t2は、図8に示したような、封筒90の段差93による影94がセンサ部7の読取位置に形成された時点に対応する。このときのライン全体の読取データは、図11に示したものとなる。
【0072】
時刻t3の経過後は明度が低下している。時刻t3は、図15に示すように、封筒90の後端(フラップ92の端)がセンサ部7の読取位置に到達した時点に対応する。このときのライン全体の読取データは、図12に示したものとなる。
【0073】
図10〜13に示したように、封筒90の裏面90bが上向きの場合、封筒90の先端がセンサ部7に到達してから後端が通過するまでの間に、影94による読取データの落ち込みが見られる。これに対し、封筒90の表面90aが上向きの場合は、このような読取データの落ち込みは生じない。
【0074】
上記のような違いから、制御部8は、封筒90の表裏を判定する。具体的には、制御部8は、ラインごとの読取データを順次取得し、図10のように、主走査方向における所定範囲以上の領域において各画素の読取データが所定値以上に上昇したラインが検出された場合、封筒90の先端がセンサ部7の読取位置に到達したと判断する。その後、封筒90の後端が読取位置を通過するまでに、図11のように、封筒90の幅に相当する領域において各画素の読取データが閾値以上低下したラインが検出された場合、制御部8は、封筒90の上向きの面が裏面90bであると判定する。
【0075】
次に、印刷装置1における片面印刷の動作について説明する。ここで、封筒90の表面90aに印刷する設定であるものとする。図16は、片面印刷の動作を説明するためのフローチャートである。
【0076】
まず、ステップS10において、制御部8は、給紙部2により封筒90を搬送印刷部3に給紙させる。
【0077】
次いで、ステップS20において、制御部8は、レジストローラ31により封筒90をベルト搬送部32に送り出し、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させつつ、センサ部7に封筒90を読み取らせる。そして、制御部8は、センサ部7に封筒90を読み取らせて得られた読取データに基づき、封筒90の表裏判定を行う。センサ部7による封筒90の読み取り動作、および制御部8による封筒90の表裏判定方法については前述のとおりである。
【0078】
次いで、ステップS30において、制御部8は、ステップS20の表裏判定結果に基づき、封筒90の上向きの面が表面90aであるか否かを判断する。前述のように、ここでは、封筒90の表面90aに印刷する設定であるため、給紙部2に正しく封筒90がセットされていれば、上向きの面が表面90aとなる。
【0079】
上向きの面が表面90aであると判断した場合(ステップS30:YES)、ステップS40において、制御部8は、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させつつ、インクジェットヘッド部33により封筒90の表面90aに画像を印刷させる。そして、制御部8は、印刷済みの封筒90を、上面搬送ローラ41により通常経路RCを搬送させ、切替部51により排紙経路RDに導き、排紙ローラ52により排紙台53に排紙させる。
【0080】
一方、封筒90の上向きの面が裏面90bであると判断した場合(ステップS30:NO)、ステップS50において、制御部8は、搬送印刷部3で印刷を行わずに未印刷の封筒90を通過させ、上面搬送ローラ41により通常経路RCを搬送させ、切替部51により反転経路RRに導く。制御部8は、封筒90を反転部6により反転させ、レジストローラ31に向けて再給紙させる。そして、制御部8は、レジストローラ31により封筒90をベルト搬送部32に送り出し、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させる。
【0081】
反転部6により反転された封筒90は、表裏が反転されているとともに、搬送方向における向き(縦方向の向き)も反転されている。すなわち、封筒90は、表面90aを上向きとし、フラップ92が下流側(底側が上流側)に向いた状態で、ベルト搬送部32に送られる。したがって、この再給紙された封筒90の表面90aに、ステップS40と同様の画像を印刷すると、封筒90に天地が逆に画像が印刷される。
【0082】
そこで、ステップS60において、制御部8は、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させつつ、本来の印刷用の画像を180°回転させた画像を、インクジェットヘッド部33により封筒90の表面90aに印刷させる。180°回転させた画像を印刷させることは、例えば、制御部8のCPUがRAMから画像データを逆順に読み出すことにより可能となる。印刷済みの封筒90は、通常経路RC、排紙経路RDを搬送され、排紙台53に排紙される。
【0083】
次に、印刷装置1における両面印刷の動作について説明する。ここで、封筒90の表面90aを先に印刷する面(第1面)とする設定であるものとする。図17は、両面印刷の動作を説明するためのフローチャートである。
【0084】
図17のステップS110〜S130は、前述した図16のステップS10〜S30と同様であるため説明を省略する。
【0085】
ステップS130において、上向きの面が表面90aであると判断した場合(ステップS130:YES)、ステップS140において、制御部8は、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させつつ、インクジェットヘッド部33により封筒90の表面90aに表面印刷用の画像(表面用画像)を印刷させる。
【0086】
次いで、ステップS150において、制御部8は、片面印刷済みの封筒90を、上面搬送ローラ41により通常経路RCを搬送させ、切替部51により反転経路RRに導く。制御部8は、封筒90を反転部6により反転させ、レジストローラ31に向けて再給紙させる。そして、制御部8は、レジストローラ31により封筒90をベルト搬送部32に送り出し、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させる。このとき、封筒90の未印刷面(第2面)である裏面90bが上向きとなっている。また、封筒90は、フラップ92を下流側にした向きになっている。
【0087】
そして、ステップS160において、制御部8は、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させつつ、裏面印刷用の画像(裏面用画像)を、インクジェットヘッド部33により封筒90の裏面90bに印刷させる。
【0088】
上述のように、先に表面90aに印刷する設定であるため、給紙部2に正しく封筒90がセットされていれば、第1面印刷時は、上向きの面が表面90aとなる。ステップS130で上向きの面が裏面90bと判断されるのは、給紙部2に封筒90が表裏を誤ってセットされていた場合である。なお、封筒90が表裏を誤ってセットされていても、第1の実施の形態では、前述のように、第1面印刷時における封筒90の搬送方向における向きは、フラップ92を上流側にした向きであるものとする。
【0089】
封筒90の上向きの面が裏面90bであると判断した場合(ステップS130:NO)、ステップS170において、制御部8は、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させつつ、本来の裏面印刷用の画像を180°回転させた画像を、インクジェットヘッド部33により封筒90の裏面90bに印刷させる。本来の裏面印刷用の画像は、ステップS150で表裏および縦方向の向きが反転された封筒90に整合する向きになっている。したがって、ステップS170では、封筒90と画像の天地を一致させるため、制御部8は、本来の裏面印刷用の画像を180°回転させた画像を印刷させる。
【0090】
次いで、ステップS180において、制御部8は、ステップS150と同様に、片面印刷済みの封筒90を反転部6により反転させ、レジストローラ31に向けて再給紙させる。そして、制御部8は、レジストローラ31により封筒90をベルト搬送部32に送り出し、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させる。このとき、封筒90の未印刷面である表面90aが上向きとなっている。また、封筒90は、フラップ92を下流側にした向きになっている。
【0091】
そして、ステップS190において、制御部8は、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させつつ、本来の表面印刷用の画像を180°回転させた画像を、インクジェットヘッド部33により封筒90の表面90aに印刷させる。両面印刷済みの封筒90は、通常経路RC、排紙経路RDを搬送され、排紙台53に排紙される。
【0092】
以上説明したように、第1の実施の形態では、センサ部7の光源部71により、封筒90に斜め方向から光を照射する。裏面90bが上向きの場合、段差93による影94が形成される。制御部8は、受光部72による受光量に基づき、影94が検出されるか否かにより、封筒90の上向きの面が表面90aであるか裏面90bであるかを判定する。これにより、印刷装置1によれば、封筒90の表裏を高精度で検出できる。
【0093】
そして、印刷装置1は、図16、図17を用いて説明したように、表裏判定結果に応じた印刷処理を実行できる。この結果、印刷装置1では、給紙部2において封筒90の表裏が誤ってセットされた場合でも、ユーザの手を煩わすことなく、誤印刷を回避して適切な印刷物が得られる。
【0094】
(第2の実施の形態)
図18は、第2の実施の形態に係る印刷装置の制御系の構成を示すブロック図である。図18に示すように、第2の実施の形態に係る印刷装置1Aは、第1の実施の形態の印刷装置1に対して、センサ部7をセンサ部7Aに置き換えた構成である。
【0095】
図19は、センサ部7Aを下側から見た平面図、図20は、図19におけるB−B線に沿った断面図である。図19、図20に示すように、センサ部7Aは、第1の実施の形態におけるセンサ部7の光源部71を、光源部71Aに置き換えた構成である。
【0096】
光源部71Aは、第1の光源81aと、第2の光源81bとを備える。第1および第2の光源81a,81bは、それぞれ、前後方向に配列された複数のLED76と、LED76を実装する基板77とを備える。
【0097】
第1の光源81aは、基板77におけるLED76の実装面が水平面に対して約45°傾斜し、LED76の光が、集光レンズ73の直下の読取位置を通過する印刷媒体Pに対して上流側(左側)の斜め方向から照射されるように配置されている。
【0098】
第2の光源81bは、集光レンズ73の光軸を中心にして第1の光源81aと左右対称になるように配置されている。第2の光源81bのLED76の光は、集光レンズ73の直下の読取位置を通過する印刷媒体Pに対して下流側(右側)の斜め方向から照射される。
【0099】
センサ部7Aによる封筒90の読み取り動作について説明する。図21は、センサ部7Aによる読み取り動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0100】
印刷動作を開始すると、図21に示すように、制御部8は、センサ部7Aの受光部72にクロック信号CLKを供給する。また、制御部8は、第1の光源81aのLED76を点灯(ON)させる。次いで、制御部8は、受光部72にスタート信号SIを供給する。受光部72にスタート信号SIが入力されると、複数の光電変換素子78がクロック信号CLKの1クロックごとに順次、受光量に応じた電気信号を出力する。
【0101】
光電変換素子78の出力が1ライン分終了すると、制御部8は、第1の光源81aを消灯(OFF)させ、第2の光源81bの複数のLED76を点灯させる。次いで、制御部8は、受光部72にスタート信号SIを供給する。これにより、複数の光電変換素子78が1クロックごとに順次、受光量に応じた電気信号を出力する。光電変換素子78の出力が1ライン分終了すると、制御部8は、第2の光源81bを消灯させ、第1の光源81aの複数のLED76を点灯させる。制御部8は、以上の動作を繰り返させる。
【0102】
このように、制御部8は、第1の光源81aと第2の光源81bとを交互に点灯させる。そして、制御部8は、第1および第2の光源81a,81bそれぞれの点灯中に、光電変換素子78の出力を1ライン分ずつ取得する。制御部8は、光電変換素子78からの電気信号にA/D変換等の所定の処理を施し、ラインごとの各画素の読取データを得る。
【0103】
封筒90が、裏面90bが上向きで、フラップ92を上流側(底側を下流側)に向けた状態で、センサ部7の下を通過する場合、図22に示すように、第2の光源81bの光が封筒90に右斜め上方向から照射されることで、図9に示したような影94が形成される。この場合、第1の光源81aが点灯しても、影94は形成されない。
【0104】
一方、封筒90が、裏面90bが上向きで、フラップ92を下流側(底側を上流側)に向けた状態で、センサ部7の下を通過する場合、図23に示すように、第1の光源81aの光が封筒90に左斜め上方向から照射されることで、影94が形成される。この場合、第2の光源81bが点灯しても、影94は形成されない。
【0105】
制御部8が封筒90の表裏を判定する方法は、第1の実施の形態と同様である。すなわち、制御部8は、センサ部7の読取位置に封筒90の先端が到達してから後端が通過するまでに、図11のように、封筒90の幅に相当する領域において各画素の読取データが閾値以上低下したラインが検出された場合、封筒90の上向きの面が裏面90bであると判定する。なお、センサ部7の読取間隔(スタート信号SIの周期)は、第1および第2の光源81a,81bのいずれかの点灯時に封筒90に形成される影94の部分を読み取り可能に設定される。
【0106】
第2の実施の形態では、第1および第2の光源81a,81bにより2方向から交互に封筒90へ光を照射することで、封筒90の搬送方向における向きが、フラップ92を上流側にした向きでもその反対でも、影94が形成される。したがって、制御部8は、封筒90の搬送方向における向きが、フラップ92を上流側にした向きでもその反対でも、封筒90の表裏を判定できる。
【0107】
また、制御部8は、封筒90の上向きの面が裏面90bである場合、第1および第2の光源81a,81bのどちらの点灯中に影94が検出されたかにより、封筒90の搬送方向における向きも判定できる。影94を読み取ったことにより読取データの落ち込みを示したラインが、第2の光源81bの点灯中に対応するラインであった場合、制御部8は、封筒90が図22のようにフラップ92を上流側にした向きであると判定する。一方、影94を読み取ったことにより読取データの落ち込みを示したラインが、第1の光源81aの点灯中に対応するラインであった場合、制御部8は、封筒90が図23のようにフラップ92を下流側にした向きであると判定する。
【0108】
次に、印刷装置1Aにおける片面印刷の動作について説明する。ここで、封筒90の表面90aに印刷する設定であるものとする。また、給紙部2から搬送印刷部3に給紙される際に、フラップ92を上流側(底側を下流側)にした向きが封筒90の設定方向であるとする。図24は、片面印刷の動作を説明するためのフローチャートである。
【0109】
まず、ステップS210において、制御部8は、給紙部2により封筒90を搬送印刷部3に給紙させる。
【0110】
次いで、ステップS220において、制御部8は、レジストローラ31により封筒90をベルト搬送部32に送り出し、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させつつ、センサ部7Aに封筒90を読み取らせる。そして、制御部8は、センサ部7Aに封筒90を読み取らせて得られた読取データに基づき、封筒90の表裏判定および搬送方向における向きの判定を行う。センサ部7による封筒90の読み取り動作、および制御部8による封筒90の表裏判定方法については前述のとおりである。
【0111】
また、封筒90の上向きの面が裏面90bである場合の、封筒90の搬送方向における向きの判定方法についても、前述のとおりである。封筒90の上向きの面が表面90aである場合、制御部8は、読取データからフラップ92の形状を読み取る。これにより、制御部8は、封筒90が、フラップ92を上流側にした向きであるか、フラップ92を下流側(底側を上流側)にした向きであるかを判定する。
【0112】
次いで、ステップS230において、制御部8は、ステップS220の表裏判定結果に基づき、封筒90の上向きの面が表面90aであるか否かを判断する。上述のように、封筒90の表面90aに印刷する設定であるため、給紙部2に正しく封筒90がセットされていれば、上向きの面が表面90aとなっている。
【0113】
上向きの面が表面90aであると判断した場合(ステップS230:YES)、ステップS240において、制御部8は、封筒90の搬送方向における向きが、フラップ92を上流側にした向きであるか否かを判断する。上述のように、給紙の際にフラップ92を上流側にした向きが封筒90の設定方向であるため、給紙部2に正しく封筒90がセットされていれば、封筒90は、フラップ92を上流側にした向きとなっている。
【0114】
フラップ92を上流側にした向きであると判断した場合(ステップS240:YES)、ステップS250において、制御部8は、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させつつ、インクジェットヘッド部33により封筒90の表面90aに画像を印刷させる。
【0115】
ステップS240でフラップ92を下流側(底側を上流側)にした向きであると判断した場合(ステップS240:NO)、ステップS260において、制御部8は、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させつつ、本来の印刷用の画像を180°回転させた画像を、インクジェットヘッド部33により封筒90の表面90aに印刷させる。
【0116】
一方、ステップS230で封筒90の上向きの面が裏面90bであると判断した場合(ステップS230:NO)、ステップS270において、制御部8は、封筒90の搬送方向における向きが、フラップ92を上流側にした向きであるか否かを判断する。
【0117】
フラップ92を上流側にした向きであると判断した場合(ステップS270:YES)、ステップS280において、制御部8は、未印刷の封筒90を反転部6により反転させ、レジストローラ31に向けて再給紙させる。そして、制御部8は、レジストローラ31により封筒90をベルト搬送部32に送り出し、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させる。このとき、封筒90の表面90aが上向きとなっている。また、封筒90は、フラップ92を下流側にした向きになっている。
【0118】
そして、ステップS290において、制御部8は、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させつつ、本来の画像を180°回転させた画像を、インクジェットヘッド部33により封筒90の表面90aに印刷させる。
【0119】
ステップS270でフラップ92を下流側にした向きであると判断した場合(ステップS270:NO)、ステップS300において、制御部8は、未印刷の封筒90を反転部6により反転させ、レジストローラ31に向けて再給紙させる。そして、制御部8は、レジストローラ31により封筒90をベルト搬送部32に送り出し、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させる。このとき、封筒90の表面90aが上向きとなっている。また、封筒90は、フラップ92を上流側にした向きになっている。
【0120】
そして、ステップS310において、制御部8は、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させつつ、インクジェットヘッド部33により封筒90の表面90aに画像を印刷させる。印刷済みの封筒90は、通常経路RC、排紙経路RDを搬送され、排紙台53に排紙される。
【0121】
次に、印刷装置1Aにおける両面印刷の動作について説明する。ここで、封筒90の表面90aを先に印刷する面(第1面)とする設定であるものとする。また、給紙部2から搬送印刷部3に給紙される際に、フラップ92を上流側(底側を下流側)にした向きが封筒90の設定方向であるとする。図25は、両面印刷の動作を説明するためのフローチャートである。
【0122】
図25のステップS410〜S440は、前述した図24のステップS210〜S240と同様であるため説明を省略する。
【0123】
ステップS440でフラップ92を上流側にした向きであると判断した場合(ステップS440:YES)、ステップS450において、制御部8は、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させつつ、インクジェットヘッド部33により封筒90の表面90aに表面印刷用の画像を印刷させる。
【0124】
次いで、ステップS460において、制御部8は、片面印刷済みの封筒90を反転部6により反転させ、レジストローラ31に向けて再給紙させる。そして、制御部8は、レジストローラ31により封筒90をベルト搬送部32に送り出し、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させる。このとき、封筒90の未印刷面(第2面)である裏面90bが上向きとなっている。また、封筒90は、フラップ92を下流側にした向きになっている。
【0125】
そして、ステップS470において、制御部8は、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させつつ、裏面印刷用の画像を、インクジェットヘッド部33により封筒90の裏面90bに印刷させる。
【0126】
ステップS440でフラップ92を下流側にした向きであると判断した場合(ステップS440:NO)、ステップS480において、制御部8は、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させつつ、本来の表面印刷用の画像を180°回転させた画像を、インクジェットヘッド部33により封筒90の表面90aに印刷させる。
【0127】
次いで、ステップS490において、制御部8は、片面印刷済みの封筒90を反転部6により反転させ、レジストローラ31に向けて再給紙させる。そして、制御部8は、レジストローラ31により封筒90をベルト搬送部32に送り出し、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させる。このとき、封筒90の裏面90bが上向きとなっている。また、封筒90は、フラップ92を上流側にした向きになっている。
【0128】
そして、ステップS500において、制御部8は、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させつつ、本来の裏面印刷用の画像を180°回転させた画像を、インクジェットヘッド部33により封筒90の表面90aに印刷させる。
【0129】
ステップS430で封筒90の上向きの面が裏面90bであると判断した場合(ステップS430:NO)、ステップS510において、制御部8は、封筒90の搬送方向における向きが、フラップ92を上流側にした向きであるか否かを判断する。
【0130】
フラップ92を上流側にした向きであると判断した場合(ステップS510:YES)、ステップS520において、制御部8は、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させつつ、インクジェットヘッド部33により封筒90の裏面90bに本来の裏面印刷用の画像を180°回転させた画像を印刷させる。
【0131】
次いで、ステップS530において、制御部8は、片面印刷済みの封筒90を反転部6により反転させ、レジストローラ31に向けて再給紙させる。そして、制御部8は、レジストローラ31により封筒90をベルト搬送部32に送り出し、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させる。このとき、封筒90の未印刷面である表面90aが上向きとなっている。また、封筒90は、フラップ92を下流側にした向きになっている。
【0132】
そして、ステップS540において、制御部8は、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させつつ、本来の表面印刷用の画像を180°回転させた画像を、インクジェットヘッド部33により封筒90の表面90aに印刷させる。
【0133】
ステップS510でフラップ92を下流側にした向きであると判断した場合(ステップS510:NO)、ステップS550において、制御部8は、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させつつ、裏面印刷用の画像を、インクジェットヘッド部33により封筒90の裏面90bに印刷させる。
【0134】
次いで、ステップS560において、制御部8は、片面印刷済みの封筒90を反転部6により反転させ、レジストローラ31に向けて再給紙させる。そして、制御部8は、レジストローラ31により封筒90をベルト搬送部32に送り出し、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させる。このとき、封筒90の表面90aが上向きとなっている。また、封筒90は、フラップ92を上流側にした向きになっている。
【0135】
そして、ステップS570において、制御部8は、ベルト搬送部32により封筒90を搬送させつつ、表面印刷用の画像を、インクジェットヘッド部33により封筒90の表面90aに印刷させる。両面印刷済みの封筒90は、通常経路RC、排紙経路RDを搬送され、排紙台53に排紙される。
【0136】
以上説明したように、第2の実施の形態では、センサ部7Aが、第1および第2の光源81a,81bにより2方向から交互に封筒90へ光を照射する。これにより、封筒90の搬送方向における向きが、フラップ92を上流側にした向きでもその反対でも、段差93による影94が形成される。これにより、第2の実施の形態の印刷装置1Aでは、封筒90の搬送方向における向きが、フラップ92を上流側にした向きでもその反対でも、封筒90の表裏を高精度で検出できる。
【0137】
(変形例)
図26は、第2の実施の形態の変形例におけるセンサ部を下側から見た平面図である。図26に示すように、本変形例では、センサ部7Aにおいて、第1の光源81aのLED76と、第2の光源81bのLED76とが、前後方向において異なる位置に配置されている。具体的には、第1の光源81aと第2の光源81bとで、LED76の配列ピッチが半ピッチずれている。つまり、光源部71AにおいてLED76が千鳥配置になっている。本変形例における第1および第2の光源81a,81bのうちの一方のLED76が請求項の第1の発光素子に相当し、他方のLED76が請求項の第2の発光素子に相当する。
【0138】
本変形例におけるセンサ部7Aによる封筒90の読み取り動作について説明する。図27は、本変形例におけるセンサ部7Aによる読み取り動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0139】
図27において、図21を用いて説明した第2の実施の形態における読み取り動作と異なる点は、本変形例では、制御部8は、第1の光源81aおよび第2の光源81bのLED76を同時に点灯させることである。LED76が千鳥配置となっているので、裏面90bを上向きにしてセンサ部7Aの読取位置を通過する封筒90の搬送方向の向きが、フラップ92を上流側にした向きであってもその反対の向きであっても、段差93による影94が形成される。
【0140】
図28は、本変形例において裏面90bが上向きの封筒90の影94を読み取ったラインの読取データを示す図である。図28では、主走査方向において、明度が大きい画素からなる領域と、明度が小さい画素からなる領域とが交互に存在し、約半数の画素で明度が低下している。これは、LED76が千鳥配置されているため、影94に周期的な濃淡が生じるからである。この濃淡の模様は、センサ部7Aの読取位置を通過する封筒90の搬送方向の向き、つまり影94のできる向きによって異なる。図29は、図28の場合とは封筒90の搬送方向における向きが反対である場合の影94を読み取ったラインの読取データを示す図である。図28と図29とでは、明度d3である画素と明度d4(<d3)である画素とが逆転している。なお、本変形例において封筒90の胴部91、フラップ92を読み取ったラインの読取データは、第1の実施の形態で示した図10、図12と同様になる。
【0141】
制御部8は、センサ部7の読取位置に封筒90の先端が到達してから後端が通過するまでに、図28、図29のような、主走査方向に周期的に読取データが閾値以上低下したラインが検出された場合、封筒90の上向きの面が裏面90bであると判定する。また、制御部8は、明度が低下した画素の位置に基づき、封筒90の搬送方向における向きも判定できる。
【0142】
上述のように、本変形例では、LED76を千鳥配置とすることで、封筒90の搬送方向における向きが、フラップ92を上流側にした向きでもその反対でも、段差93による影94を形成させることができる。これにより、本変形例によれば、封筒90の搬送方向における向きが、フラップ92を上流側にした向きでもその反対でも、封筒90の表裏を高精度で検出できる。
【0143】
なお、LED76の配置は千鳥配置に限らない。第1の光源81aのLED76と第2の光源81bのLED76とで、少なくとも一部が前後方向の異なる位置に配置され、封筒90がフラップ92を上流側にした向きでもその反対でも、影94を形成させることができればよい。
【0144】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態にわたる構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0145】
1,1A 印刷装置
2 給紙部
3 搬送印刷部
4 上面搬送部
5 排紙部
6 反転部
7,7A センサ部
8 制御部
71,71A 光源部
72 受光部
73 集光レンズ
76 LED
78 光電変換素子
81a 第1の光源
81b 第2の光源
90 封筒
91 胴部
92 フラップ
93 段差
94 影

【特許請求の範囲】
【請求項1】
封筒を搬送する搬送部と、
搬送される封筒に対して斜め方向から光を照射する光源部と、
封筒による反射光を受光する受光部と、
前記受光部における受光量に基づき、封筒の一方の面側における胴部とフラップとの境界に位置する段差により形成される影を検出することにより封筒の表裏を判定する判定部と
を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記光源部は、
封筒に対して搬送方向の上流側から光を照射する第1の光源と、
封筒に対して前記搬送方向の下流側から光を照射する第2の光源とを備え、
前記第1の光源と前記第2の光源とは、交互に点灯することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記光源部は、
封筒の搬送方向に略直交する方向に配列された複数の第1の発光素子を有し、封筒に対して前記搬送方向の上流側から光を照射する第1の光源と、
前記搬送方向に略直交する方向に配列された複数の第2の発光素子を有し、封筒に対して前記搬送方向の下流側から光を照射する第2の光源とを備え、
前記第1の発光素子および前記第2の発光素子は、少なくとも一部が前記搬送方向に略直交する方向において異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−236693(P2012−236693A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107128(P2011−107128)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】