説明

搬送補助装置およびこの搬送補助装置を備えた搬送装置

【課題】多段ローラコンベアの搬送ローラ板をスライドさせる経路の中途に段差があっても、搬送ローラ板を円滑にスライドさせて、作業効率を向上させることができる搬送補助装置およびこの搬送補助装置を備えた搬送装置を提供する。
【解決手段】自走台車2が前進し、先端の搬送ローラ板1aが前方が低くなっている段差を通過する際に連結リンク4が回転することによって、搬送ローラ板1aの進行方向に対する傾斜を大きくして、搬送ローラ板1aに曲げ応力を与えることもなく、搬送ローラ板1aの底面が段差に接触、干渉することを防いで搬送ローラ板1aを円滑にスライドさせることができ、積み込む高さに合わせて作業台3を昇降させると、平行リンク18と支持リンク19とによって、連動して駆動コンベア16の傾斜角度が変化し、常に、作業者8が保持しやすい位置に商品が搬送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送補助装置およびこの搬送補助装置を備えた搬送装置に関し、さらに詳しくは、多段ローラコンベアの搬送ローラ板をスライドさせる経路の中途に段差があっても、搬送ローラ板を円滑にスライドさせて、作業効率を向上させることができる搬送補助装置およびこの搬送補助装置を備えた搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、倉庫等から被搬送物となる商品等を輸送トラック等の荷室に搬入するには、例えば、図7、図8に示すように倉庫のプラットホーム6に固定柱21等によって固定された多段ローラコンベア1を使用していた。この多段ローラコンベア1は複数の搬送ローラ板1aを有し、連設される搬送ローラ板1aどうしがスライドして伸縮可能な構造となっている。搬送ローラ板1aには、搬送用フリーローラまたは搬送用駆動ローラが長手方向に所定間隔で連設されている。
【0003】
プラットホーム6から輸送トラック10の荷室11に商品を搬入する際には、搬送ローラ板1aを手動または自動で順次、スライドさせてプラットホーム6から荷室11の中まで伸ばし、荷室11側が低くなるように傾斜させて設置する。設置後に、プラットホーム6側から商品14を搬送ローラ板1aの上に載せて、傾斜によって荷室11に向かって搬送する。搬送用駆動ローラを装備した搬送ローラ板1aの場合は、この駆動ローラの駆動力によって商品14を搬送する。搬送された商品14は、作業者8が踏み台7等を用いて積み込んでゆく。
【0004】
プラットホーム6と荷室11との間には、スロープ9が架けられて、スライドして荷室11に延設される搬送ローラ板1aがこのスロープ9上を進んでゆく。プラットホーム6と荷室11との間に段差がない場合は問題は生じないが、輸送トラック10の荷室11の床面の高さは、種々あるので、例えば、荷室11が低床の場合は、先端の搬送ローラ板1aがスロープ9を越えて前進してゆくと、搬送ローラ板1aの底面がプラットホーム6の床面やスロープ9に接触、干渉することで搬送ローラ板1aを前方にスライドさせにくくなる。この場合は、搬送ローラ板1aを上方に持ち上げる必要があり、作業が大変であった。商品14の搬入が済んで、搬送ローラ板1aを格納するためにプラットホーム6に向かって後方にスライドさせる場合も同様の問題が生じ、搬送ローラ板1aの底面に移動用ローラが突設されていると特に、このローラが引っ掛かるので大変であった。
【0005】
輸送トラック10の車輪を高さ調整台の上にして停車させて、段差を解消する方法では、停車の位置決めに時間がかかり、作業効率が低下するという問題があった。
【0006】
輸送トラック等に商品を搬入する搬送装置は、種々提案されていて、スライド可能に長手方向に連結された複数の搬送ローラ板の先端に台車を連結してスライドさせて、倉庫のプラットホームから輸送トラックの荷室に搬送ローラ板を延設するものがある(例えば、特許文献1、2参照)。しかしながら、これらの搬送装置では、台車とスライド可能な搬送ローラ板とが単に回転可能に連結している構造となっているので、プラットホームと荷室とに段差があると、円滑に搬送ローラ板をスライドさせることができない場合があり、上記した問題を解決することが困難であった。
【特許文献1】特開平7−228357号公報
【特許文献2】特開平11−171347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、多段ローラコンベアの搬送ローラ板をスライドさせる経路の中途に段差があっても、搬送ローラ板を円滑にスライドさせて、作業効率を向上させることができる搬送補助装置およびこの搬送補助装置を備えた搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明の搬送補助装置は、複数の搬送ローラ板どうしを長手方向にスライド可能に連結した多段ローラコンベアの前記搬送ローラ板をスライドさせる搬送補助装置であって、自走台車と、該自走台車と前記多段ローラコンベアのスライドして先端となる搬送ローラ板とを上下方向に回転可能に連結する連結リンクとを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の搬送装置は、複数の搬送ローラ板どうしを長手方向にスライド可能に連結した多段ローラコンベアと、自走台車と該自走台車と前記多段ローラコンベアのスライドして先端となる搬送ローラ板とを上下方向に回転可能に連結する連結リンクとを備えた搬送補助装置とから構成されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の搬送補助装置によれば、複数の搬送ローラ板どうしを長手方向にスライド可能に連結した多段ローラコンベアの搬送ローラ板をスライドさせる搬送補助装置であって、自走台車と、この自走台車と多段ローラコンベアのスライドして先端となる搬送ローラ板とを上下方向に回転可能に連結する連結リンクとを備えたので、自走台車の前後進によって多段ローラコンベアの搬送ローラ板を容易にスライドさせることができる。そして、スライドする経路の中途に段差があっても連結リンクが上下方向に回転することで搬送ローラ板を段差部分に接触、干渉させることなく、円滑にスライドさせることができ、作業効率を向上させることができる。
【0011】
以上の効果を既存の多段ローラコンベアに対して本発明の搬送補助装置を取付けることによって得ることができる。
【0012】
また、本発明の搬送装置によれば、複数の搬送ローラ板どうしを長手方向にスライド可能に連結した多段ローラコンベアと、自走台車とこの自走台車と多段ローラコンベアのスライドして先端となる搬送ローラ板とを上下方向に回転可能に連結する連結リンクとを備えた搬送補助装置とから構成するので、自走台車の前後進によって多段ローラコンベアの搬送ローラ板を容易にスライドさせることができる。そして、スライドする経路の中途に段差があっても連結リンクが上下方向に回転することで搬送ローラ板を段差部分に接触、干渉させることなく、円滑にスライドさせることができ、作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の搬送補助装置および搬送装置を図に示した実施形態に基づいて説明する。図1〜3に搬送補助装置5がプラットホーム6から輸送トラック10の荷室11に向かって、スロープ9の段差を乗り越えて前進して多段ローラコンベア1の搬送ローラ板1aを引き出す過程を示す。
【0014】
搬送補助装置5は、自走台車2と連結リンク4とを備えて、多段ローラコンベア1のスライドして先端に引き出される搬送ローラ板1aと自走台車2とが、連結リンク4を介して連結ピン4aによって上下方向に回転可能に連結されている。
【0015】
自走台車2には、搬送ローラ板1aから搬送される商品(被搬送物)14を移送する駆動コンベア16と、前方には昇降可能な作業台3とが設けられている。駆動コンベア16の先端近傍には、傾斜テーブル20が傾動可能に設置され、その先端にはフリーローラを備えたストッパ20aが突設されている。
【0016】
駆動コンベア16は自走台車2上のパワーシリンダ17によって、その傾斜角度が変更可能となっている。作業台3は、支持リンク19によって駆動コンベア16と回転可能に連結され、平行リンク18によって自走台車2と回転可能の連結されている。
【0017】
したがって、この一つのパワーシリンダ17で、支持リンク19と平行リンク18とからなるリンク機構によって、作業台3の昇降と連動して駆動コンベア16の傾斜角度が変更される。加えて、傾斜テーブル20も連動して傾動する構造となっている。
【0018】
この搬送補助装置5に多段ローラコンベア1を連結したものが本発明の搬送装置となる。多段ローラコンベア1は、複数の搬送ローラ板1aどうしを長手方向にスライド可能に連結したもので、搬送ローラ板1aには、搬送用フリーローラまたは搬送用駆動ローラが長手方向に所定間隔で連設されている。
【0019】
図1に示すように、倉庫等のプラットホーム6を搬送補助装置5が輸送トラック10の荷室11に向かって前進しているときは、自走台車2の図示しない駆動モータで駆動される移動用駆動ローラ15によって、作業台3の移動用ローラ22と自走台車2前方の移動用ローラ22とともに、自走台車2は滑らかに前進する。多段ローラコンベア1のスライドして先端となる搬送ローラ板1aも連結リンク4を介して、円滑に引き出される。
【0020】
さらに前進して、自走台車2がプラットホーム6から荷室の床面13に移動している状態を図2に示している。プラットホーム6と荷室の床面13とのすき間には、スロープ用シリンダ9aによってスロープ9が架けられ、段差になっている。低床の荷室11の場合は、このように荷室の床面13側が下がった段差となる。
【0021】
自走台車2がこの段差を乗り越えるときは、前方の移動用ローラ22をパワーシリンダ17によって上方移動させて宙に浮かせ、作業台3の移動用ローラ22と自走台車2後方の移動用駆動ローラ15とで、自走台車2を支えて自走台車2の底面2aをへの字状にして段差に接触、干渉しないようにすることで円滑に搬送ローラ板1aをスライドさせることができる。
【0022】
自走台車2の前後方向の長さが短い場合等は、このような機構を設けなくとも段差を円滑に乗り越えることができるが、ある程度の長さの自走台車2においては、その底面2aを上下方向に移動可能とするのが好ましい。
【0023】
底面2aを上下方向に移動させる機構は、上記したものに限定されず、底面2aと接地面との間を広くできる機構を採用して、段差に接触、干渉しないようにすればよい。
【0024】
さらに自走台車2が荷室の床面13上を前進し、先端の搬送ローラ板1aが段差を通過する状態を図3に示している。自走台車2が荷室の床面13に対して平行な状態となっても連結リンク4が回転することによって、搬送ローラ板1aのスライド進行方向に対する傾斜を大きくすることなく、搬送ローラ板1aに曲げ応力を与えることもない。したがって、搬送ローラ板1aの底面が段差に接触、干渉することを防ぐことができ、搬送ローラ板1aを円滑にスライドさせて引き出すことができ、作業効率を向上させることができる。この連結リンク4の長さは、想定される段差を考慮して上述した効果が得られるように設定する。
【0025】
荷室11への商品14の搬送が終了した後に、搬送補助装置5の自走台車2を後進させ、搬送ローラ板1aをスライドさせて後退させる場合は、搬送ローラ板1aを引き出した反対の過程を経るので、引き出した際と同様の効果を得ることができる。
【0026】
搬送ローラ板1aを荷室11の所定位置まで引き出した後は、図5、図6に例示するように、搬送補助装置5と多段ローラコンベア1とから構成される本発明の搬送装置がプラットホーム6から荷室11まで、直列に配置される。
【0027】
プラットホーム6で多段ローラコンベア1端部の搬送ローラ板1a上に載せられた商品14は、傾斜によって搬送ローラ板1a上を荷室11に向かって搬送される。搬送補助装置5にまで搬送されると、駆動コンベア16によって上方に移送されて作業台3上の作業者8によって積み込まれる。搬送ローラ板1aに搬送用駆動ローラが設けられている場合は、商品14はその駆動力によって、搬送補助装置5まで搬送される
【0028】
搬送補助装置5による搬送工程を図4に基づいて説明する。まず、作業台3を荷室の床面13に接触させ、駆動コンベア16の傾斜を小さい状態として、多段ローラコンベア1で搬送された商品14を駆動コンベア16で上方に移送して傾斜テーブル20に送り込み、そこで作業者8が商品14を保持して積み込み作業をおこなう。荷室の床面13に置いた商品14上に順次、商品14を積み込んでゆく際に、積み込む高さに合わせて図示しない手元スイッチで作業台3を昇降させる。平行リンク18と支持リンク19とからなるリンク機構によって作業台3の昇降に連動して駆動コンベア16の傾斜角度が変化し、常に、作業者8が保持しやすい位置に商品14が搬送される。
【0029】
ここで、駆動コンベア16で搬送された商品14は、傾斜テーブル10に載るとストッパ20aで落下しないように止められる。ストッパ20aには、フリーローラが備わっているので作業者8は商品14を持ち上げることなく、容易に取出すことができる。
【0030】
このように、荷室11に商品14を高く積み上げる際の重労働、踏み台7等の用意が不要となり、作業の軽労化およびこれに伴なう作業効率の向上が可能となる。作業者8が一人でも十分に作業することができ、コスト削減効果も生じる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の搬送補助装置がプラットホームから輸送トラックの荷室に向かって前進している状態を例示する説明図である。
【図2】図1から更に自走台車が前進して、プラットホームと輸送トラックの荷室との間の段差を乗り越えて荷室の床面に移動している状態を例示する説明図である。
【図3】図2から更さらに自走台車が荷室の床面上を前進し、先端の搬送ローラ板が段差を通過する状態を例示する説明図である。
【図4】本発明の搬送補助装置による搬送工程を例示する説明図である。
【図5】本発明の搬送装置の全体概要を例示する説明図である。
【図6】図5の平面図である(図5を上から見た図である)。
【図7】従来の搬送装置の搬送ローラ板をスライドさせている状態を例示する説明図である。
【図8】従来の搬送装置によって、輸送トラックの荷室に商品を搬入する作業状態を例示する説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 多段ローラコンベア 1a 搬送ローラ板
2 自走台車 2a 自走台車の底面
3 作業台
4 連結リンク 4a 連結ピン
5 搬送補助装置
6 プラットホーム
7 踏み台
8 作業者
9 スロープ 9a スロープ用シリンダ
10 輸送トラック
11 荷室
12 荷室の天面
13 荷室の床面
14 商品(被搬送物)
15 移動用駆動ローラ
16 駆動コンベア
17 パワーシリンダ
18 平行リンク
19 支持リンク
20 傾斜テーブル 20a ストッパ
21 固定柱
22 移動用ローラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の搬送ローラ板どうしを長手方向にスライド可能に連結した多段ローラコンベアの前記搬送ローラ板をスライドさせる搬送補助装置であって、自走台車と、該自走台車と前記多段ローラコンベアのスライドして先端となる搬送ローラ板とを上下方向に回転可能に連結する連結リンクとを備えたことを特徴とする搬送補助装置。
【請求項2】
前記自走台車の底面を上下方向に移動可能とした請求項1に記載の搬送補助装置。
【請求項3】
前記自走台車に前記ローラコンベアから搬送される被搬送物を移送する駆動コンベアを設けた請求項1または2に記載の搬送補助装置。
【請求項4】
前記駆動コンベアを傾斜角度変更可能に設けた請求項3に記載の搬送補助装置。
【請求項5】
前記自走台車に昇降可能な作業台を備えた請求項1〜4のいずれかに記載の搬送補助装置。
【請求項6】
前記作業台の昇降と前記駆動コンベアの傾斜角度の変更とを連動させるリンク機構を設けた請求項4を引用する請求項5に記載の搬送補助装置。
【請求項7】
複数の搬送ローラ板どうしを長手方向にスライド可能に連結した多段ローラコンベアと、請求項1〜6のいずれかの搬送補助装置とからなる搬送装置。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−225100(P2006−225100A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−40193(P2005−40193)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】