説明

搬送車システム

【課題】不要な追い出し走行を行わずに、追い出しを実行できるようにする。
【解決手段】搬送車10は、コントローラ14の制御下で、予め定められた走行ルートを走行する。コントローラは、搬送車の現在位置と移動指令の有無と移動指令を有する搬送車の目的地とを把握する。コントローラは、移動指令を有する第1の搬送車の現在位置から所定の範囲内で、かつ目的地を越えない追い出し範囲内に位置し、移動指令を有さない第2の搬送車を検出して追い出し先を決定すると共に、第2の搬送車の現在位置から追い出し先までの範囲内に位置し、かつ移動指令を有さない第3の搬送車を検出して追い出し先を決定する。コントローラは、第3の搬送車が追い出し先へ先着でき、かつ第2の搬送車が、第3の搬送車を除いて、追い出し先へ先着できるか否かを判断し、先着できると判断された場合に、第2の搬送車及び第3の搬送車に追い出し先への移動を指令する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は搬送車システムに関し、特に走行ルートを空けるための追い出しに関する。
【背景技術】
【0002】
搬送車を目的地まで走行させるには、途中で停止している他の搬送車等を目的地までの走行ルートから追い出す必要がある。このような処理を追い出しと呼び、例えば特許文献1(JPH11-143537A)は合流部等のブロッキング範囲からの追い出しを開示している。発明者は、追い出しを実行するタイミングが重要であることに着目した。例えば追い出す必要がある搬送車を検出すると、直ちに追い出しを実行するものとする。しかし追い出された搬送車が追い出し先の位置まで移動できないと、走行ルートを空けることにはならない。この場合の追い出しは無駄である。また追い出し先の位置が不適切な場合は、不要な移動を行うことになる。追い出しを効率的に実行するため、追い出しに関係する搬送車の走行をシミュレーションすることも可能である。しかしシミュレーションはコントローラの負担が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】JPH11-143537A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の課題は、シミュレーション等の複雑な処理を行わずに、かつ丁度必要な時に追い出しを実行することにある。
この発明の補助的な課題は、周回ルートでの追い出し先の位置の選択範囲を拡げることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、予め定められた走行ルートを走行する複数の搬送車と、複数の搬送車を制御するコントローラとを備え、かつ搬送車が目的地まで走行できるように他の搬送車を目的地までの走行ルートから追い出す搬送車システムに関する。
この発明では、コントローラは、
複数の搬送車の現在位置を把握する現在位置把握手段、例えば実施例の搬送車ファイルと、
搬送車への移動指令の有無を把握する指令把握手段、例えば実施例の搬送指令ファイルと、
移動指令を有する搬送車の目的地を把握する目的地把握手段、例えば実施例の搬送指令ファイル、とを備えている。
コントローラは、
移動指令を有する第1の搬送車の現在位置から所定の範囲内で、かつ目的地を越えない追い出し範囲内に位置し、移動指令を有さない第2の搬送車を検出して追い出し先(実施例での追い出し位置)を決定すると共に、前記第2の搬送車の現在位置から追い出し先までの範囲内に位置し、かつ移動指令を有さない第3の搬送車を検出して追い出し先を決定する追い出し位置決定手段、例えば実施例の追い出し制御部と、
前記第3の搬送車が追い出し先へ先着でき、かつ前記第2の搬送車が、前記第3の搬送車を除いて、追い出し先へ先着できるか否かを判断する先着判断手段、例えば実施例の追い出し制御部を備えて、
先着できると判断された場合に、前記第2の搬送車及び前記第3の搬送車に追い出し先への移動を指令する。
【0006】
この発明では、第2の搬送車を追い出すために第3の搬送車を検出して追い出しを制御するので、追い出しが必要な搬送車が連鎖的に増えても処理できる。また追い出し先へ先着できると判断するまでは追い出しを指令しないので、追い出し先まで追い出すことができないのに、追い出しを指令することがないので、省エネルギーである。なお先着できるか否かは搬送車毎に判断し、第3の搬送車が存在しない場合、第3の搬送車への処理は不要である。この発明では、シミュレーション等の複雑な処理を行わずに、丁度適切な時点で、追い出しを指令できる。
【0007】
好ましくは、前記第1の搬送車の現在位置から見て、合流部の下流側に位置する第2の搬送車及び第3の搬送車に対して、第1の搬送車が合流部の通過を前記コントローラから許可されるまで、追い出し先へ先着できるか否かの判断に係わらず、追い出し先への移動を指令しないようにする。合流部の通過を許可されるまでは合流部の下流側の搬送車を追い出す必要はないので、合流部の通過を許可されるのを待って追い出し先への移動を指令すると、丁度必要なときに追い出しを実行できる。
【0008】
また好ましくは、前記第1の搬送車が周回ルートを走行する際に、前記第2及び第3の搬送車の追い出し先として、第1の搬送車の現在位置及びその下流側で目的地よりも上流側の位置を指定自在にする。このようにすると、第1の搬送車が目的地までに周回ルートをほぼ一周する場合でも、周回ルート内に追い出し先を指定できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例の搬送車システムのレイアウトを示す図
【図2】実施例でのコントローラのブロック図
【図3】実施例での追い出し制御アルゴリズムを示すフローチャート
【図4】実施例での追い出しの基本的な例を示す図で、1)で搬送車Aのための追い出し範囲を決定し、2)で搬送車B,Cの追い出し位置を仮に決定し、3)で搬送車Cが追い出し位置に先着できることと、追い出し位置が搬送車Bのための拡張追い出し範囲に含まれることとから、搬送車Cの追い出し位置をポイントP2へ変更し、4)で搬送車B,Cに追い出しの実行を指令する。
【図5】合流部が追い出し範囲に含まれる際の処理を示し、1)で搬送車A,B各々の追い出し範囲を決定し、2)で搬送車Cの追い出し位置を追い出し範囲外のポイントP1へ決定する。
【図6】合流部が追い出し範囲に含まれる他の例を示し、1)で搬送車A,Bのための強制追い出し範囲を決定し、2)では搬送車Bが先に合流部を通過し、3)では搬送車Cが先に合流部を通過するので、搬送車Bの追い出し範囲に入り、追い出し先のポイントP4にいる搬送車Dを追い出す。
【図7】周回ルートでの追い出しの例を示し、1)で搬送車Aの1周目の強制追い出し範囲を決定し、2)で搬送車Bは搬送車Aの2周目の強制追い出し範囲内のポイントP2を追い出し位置とし、3)で搬送車A,Bは移動を完了する。
【図8】分岐部を利用した追い出し位置の振り替えを示し、1)で搬送車B,Cが搬送車Aのための追い出し範囲に所在し、2)で搬送車B,Cの追い出し位置をポイントP2,P3へ分散させる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づき、明細書の記載とこの分野での周知技術とを参酌し、当業者の理解に従って定められるべきである。
【実施例】
【0011】
図1〜図8に実施例を示す。実施例は地上を無軌道で走行する無人搬送車を例とするが、搬送車は天井走行車もしくは有軌道台車でもよい。また搬送車の位置はポイント単位で管理するが、ポイントに代えて、走行ルートに沿った座標等で管理しても良い。実施例ではポイントを単位として搬送車の位置を管理するので、搬送車が新たなポイントへ移動する毎に現在位置としてポイント番号を報告する。これに対して座標で搬送車の位置を管理する場合、例えば所定の時間間隔で搬送車が現在位置を報告する。さらに実施例では、合流部を搬送車が通過する場合、地上側のコントローラによるブロッキング制御により、合流部の通過を許可する。特に複数の搬送車が同じ合流部を通過しようとする場合、ブロッキングの許可により合流部を搬送車が通過する順序を定める。ブロッキング制御に代えて、搬送車間での自発的な通信により、合流部を通過する順序を定めても良い。
【0012】
各図において、2は搬送車システムで、4はその走行ルートであり、工場の建屋内、クリーンルームの内部などに配置されている。走行ルート4は合流部6と分岐部8とを備え、これらの内、合流部6に対しブロッキング制御を行う。また十字路状に構成されて、合流と分岐の双方が可能な個所があり、この個所にもブロッキング制御を行う。搬送車10が合流部等を通過する場合、地上側に固定のコントローラ14に合流部等を通行する許可を求め、このことをブロッキング要求と呼ぶ。ブロッキング要求に対して、通行が許可されることをブロッキングの許可と呼び、ブロッキングが許可されると合流部等を通過する。このようにして合流部6等で複数の搬送車10が互いに干渉することを防止する。合流部等よりも以遠(合流部等よりも下流側)の追い出しは、搬送車がブロッキング許可を得た時点で開始する。なお分岐部8にもブロッキング制御を行う場合、分岐部以遠の追い出しは、搬送車が分岐部に対するブロッキング許可を得た時点で開始する。
【0013】
走行ルート4に沿ってロードポート12が多数設けられ、搬送車10はロードポート12間で荷物を搬送する。ロードポート12は工作機械への荷物の出し入れ口、自動倉庫のステーション、ストッカのステーションなどである。ロードポート12以外にバッファを設けて、バッファとロードポート間などで荷物を搬送しても良い。図1のPはポイントで、走行ルート4上に位置をポイント単位で管理する。
【0014】
図2はコントローラ14の構成を示し、コントローラ14は通信部15を備えて複数台の搬送車10の車載コントローラと通信する。搬送車10の制御は車載コントローラが行い、以下では車載コントローラによる処理であることを省略して、「搬送車は…する」等と記載する。搬送車10は、新たなポイントに到着した、荷物を荷積みした、荷物を荷下ろしした、電池の充電量が不足し、充電ステーションへの走行が必要になった、などの状態の変化が起こる都度、コントローラ14へ自己が所在するポイント番号、自己の状態の変化等を報告する。コントローラ14は、通信部15から搬送車10に対し、搬送指令を割り付け、他にブロッキングに関する指令と追い出しに関する指令、配車に関する指令等を通信する。
【0015】
コントローラ14はメモリを備えて、ファイル16〜24を記憶する。搬送車ファイル16は、個々の搬送車10毎のその位置(所在するポイント番号)、搬送車の状態、目的地などのデータからなる。搬送車の状態には、搬送指令の割付の有無と割付済みの搬送指令のID、目的地、などがある。搬送指令ファイル18は、搬送指令とその実行状況のデータからなり、実行状況には未割付、割付済み、実行完了などがある。ルートマップ20は走行ルート4のレイアウトデータからなるファイルで、ブロッキングデータファイル22は、合流部毎のブロッキング要求の有無とブロッキングの許可状況とのデータからなるファイルである。ブロッキング要求は例えばブロッキングを要求した搬送車のIDで示され、ブロッキングの許可はブロッキングを許可した搬送車のIDで示される。なお搬送車が合流部等を通過してブロッキングを解除すると、ブロッキング要求とブロッキング許可に関するデータを抹消し、図示しないログファイルにデータを移す。
【0016】
追い出しファイル24は、搬送車毎の追い出しに関するデータのファイルである。追い出しでは、搬送、配車、充電などの、追い出し以外の移動指令を割り付けられた搬送車が移動できるように、走行ルートから移動指令を割り付けられていない他の搬送車を追い出す。他の搬送車を追い出す範囲が追い出し範囲である。搬送車を追い出す先のポイント(追い出し位置)が他の搬送車に占められている場合、追い出し範囲を拡げる必要がある。このようにして拡張した追い出し範囲を拡張追い出し範囲とする。強制追い出し範囲は、追い出し以外の処理を行う搬送車が移動するために追い出しが必要な範囲である。追い出しファイル24は、強制追い出し範囲内に存在する他の搬送車のリストを含んでいる。追い出しファイル24では、強制追い出し範囲内の他の搬送車に対し追い出しを指令し、強制追い出し範囲から追い出すための走行を開始させる。追い出しを指令された搬送車は、追い出しファイル24のリストから消去する。
【0017】
搬送制御部26は搬送指令を搬送車10に割り当て、その実行状況を管理する。ブロッキング制御部28は合流部等でのブロッキングを制御し、具体的には搬送車10からのブロッキング要求を受け付けて、所定の基準によりブロッキングを許可する。追い出し制御部30は、搬送、配車、充電、追い出しのための搬送車10の移動を妨げる、他の搬送車を検出して、追い出しを制御する。追い出す範囲は搬送車10の現在地から目的地までの全域としても良く、あるいは現在地から所定のポイント数離れた位置までの区間、あるいは現在値から次の合流部等の手前などと制限しても良い。追い出す範囲を制限するのは、目的地が遠い場合に、不必要に広い範囲で追い出しを行わないためである。追い出し先への移動を指令するのは、追い出される搬送車が追い出し先へ先着できると判断した時点で、先着できない場合は、移動を指令しない。配車制御部31は、空の搬送車10が走行ルート上で、渋滞を避け、かつ発生した荷物を速やかに荷積みできるように分布するように、空の搬送車を移動させる。コントローラ14は、これ以外に搬送車10の充電を制御する充電制御部等を備えている。
【0018】
図3に追い出し制御のアルゴリズムを示し、追い出し制御は、搬送車の現在位置などの状態に変化が生じる毎、もしくは所定時間毎などに実行する。追い出し制御では搬送車毎の強制追い出し範囲を決定し、強制追い出し範囲内の他の搬送車を追い出すことに伴い必要となる拡張追い出し範囲を決定する。追い出し対象リストは、強制追い出し範囲内に所在し、かつ追い出し範囲外に目的地を持たない他の搬送車をリストする。追い出し位置の決定では、追い出し対象の搬送車を追い出す先(追い出し先のポイント)を追い出し位置として決定する。追い出し位置は、追い出しに伴う移動距離を最短とするため、好ましくは強制追い出し範囲の次のポイントとするが、次の次のポイント、あるいは荷積み等の要求の発生頻度が高いポイントなどでもよい。
【0019】
ループ状の走行ルートを走行する場合、1周目の走行と2周目の走行とを区別することにより、追い出し位置の候補が増す。これによって、搬送車の現在位置及びその下流側で目的地よりも上流側の位置が、追い出し位置として指定自在になる。またループ状の走行ルート以外でも、複数の追い出し位置が可能な場合、追い出し位置を振り替えること、及び追い出し位置が分散するように選択することにより、追い出しに伴う移動距離を短縮すると共に、搬送車が走行ルート上に分散するように追い出すことができる。
【0020】
先着判断では、追い出し位置へ追い出された搬送車が先着できるかどうか、即ち追い出し位置へ他の搬送車よりも先に到着できるかどうかを判断し、先着できる際に追い出し指令を搬送車に送信する。言い換えると搬送車が追い出し位置に先着できるようになるまで、追い出しは実行しない。なお単に追い出し位置を通過するに過ぎない搬送車、即ち追い出し位置よりも遠方の目的地を持つ搬送車は、先着判断の対象とはしない。実施例では、搬送車の現在位置から先着できるかどうかを判断するが、追い出し位置までの走行距離、平均の所要時間等を比較して、先着できるかどうかを判断しても良い。追い出し位置に先着できる際に追い出しを実行することにより、無駄な渋滞等を防止し、また搬送車の移動回数を減らしてエネルギー消費量を少なくする。先着できると判断されるまでの間、空荷の搬送車がロードポートに面した位置で待機すると、ロードポートに荷積み物品が出現した場合に、直ちに荷積みできるとの利点もある。なお先着できないと判断される状態が所定時間以上続くと走行ルートを塞ぐ。そこでこのような場合、例えば追い出し位置を手前の位置へ変更したうえで先着判断を行い、先着できると判断される場合に移動を指令しても良い。あるいはまたこのような場合は先着判断を省略し、前方の搬送車との間を詰めるように移動を指令しても良い。
【0021】
図4〜図8に、追い出しの例を示し、個別の搬送車を区別するために、A,B,Cなどの記号を用いる。32は搬送車が搬送中の荷物で、搬送車が目的地まで荷物32を搬送できるようにすること等のために追い出しを行う。荷物32を持たず、かつ荷積み、充電、配車、追い出し位置への走行などの指令を実行していない搬送車のためには、追い出しを行わない。言い換えると要求の処理を行っていない搬送車を移動させるために、追い出しを行うことはない。個々のポイントを区別するためにP1〜P4などの記号を用い、追い出し範囲を表わすためS1などの記号を用いる。また目的地及び追い出し位置を矢印で示す。
【0022】
図4は基本的な追い出しの例を示し、搬送車Aの目的地はポイントP1で、搬送車Aの強制追い出し範囲はS1で、強制追い出し範囲S1に搬送車B,Cが所在するため、搬送車Aの強制追い出しリストに搬送車B,Cを登録する。搬送車B,Cの仮の追い出し位置を共にポイントP2とし、ポイントP2への先着判断では搬送車Cが先着する。このためポイントP2を搬送車Cの追い出し位置とする。搬送車Bの追い出し位置もポイントP2で、搬送車Cは搬送車Bの拡張追い出し範囲S2に存在するので、搬送車Cを搬送車Bの拡張追い出しリストに登録し、搬送車Cの追い出し位置をポイントP3に変更する。搬送車CはポイントP2を通過し、ポイントP3へ先着できるので、搬送車BはポイントP2へ先着できる。搬送車B,Cは各々ポイントP2,P3へ先着できるので、搬送車Aの強制追い出しリストから削除すると共に、搬送車Bの拡張追い出しリストも空にする。そして搬送車B,Cへ追い出し指令を送信して移動を開始させる。これにより搬送車AはポイントP1への移動を開始できる。なお図4の1)から3)への途中の処理は任意で、搬送車C,Bへの追い出し指令の送信順序も任意である。
【0023】
図5は合流が関係する際の追い出しを示し、搬送車Aの目的地はポイントP1で、搬送車Bの目的地はポイントP2である。S4は搬送車Aの強制追い出し範囲、S5は搬送車Bの強制追い出し範囲で、いずれの強制追い出し範囲S4,S5にも他の搬送車Cが存在して追い出し対象となる。そこで搬送車Aの強制追い出しリストには搬送車Cが、搬送車Bの強制追い出しリストにも搬送車Cがリストされる。強制追い出し範囲S4,S5は重複するので、これらを合体して強制追い出し範囲S6とし、搬送車Cの追い出し位置をポイントP3として、S7を搬送車Cの拡張追い出し範囲とする。
【0024】
搬送車Cは、搬送車A,Bのいずれからも、合流部等の下流側に位置するので、搬送車A,Bのいずれかに対して、合流部等がブロッキングされるまで、追い出す必要はない。即ち合流部等をいつ通過するか不明な搬送車のために、追い出しは行わない。そして搬送車A,Bのいずれかに対してブロッキングされ、搬送車CがポイントP3へ先着し得ると判断した時点で追い出しを指令する。ここで搬送車Bが先に合流部へ進入すると、搬送車BはポイントP2へ、搬送車AはポイントP1へ移動する。搬送車Aが先に合流部へ進入すると、搬送車BがポイントP2へ移動できるようにするため、搬送車AをポイントP3等へ追い出す必要がある。なお搬送車A,Bへのブロッキングの順序は、ブロッキング制御のアルゴリズムに委ね、例えば先にブロッキングを要求したものに先にブロッキング許可を与える。あるいはブロッキングの制御ではなく、先に合流部等へ進入できると判断した搬送車が進入し、他の搬送車は進入を控えるアルゴリズムでも良い。搬送車Cが追い出しを実行する回数は1回で、必要最小限の追い出しで良い。
【0025】
図6は合流部等が追い出しに関係し、かつ搬送車Cの追い出しに伴って、搬送車Dの追い出しが追加的に必要になる例である。搬送車Aの目的ポイントはP1、搬送車Bの目的ポイントはP4で、合流部P2は追い出し位置とはならないものとする。搬送車Aの強制追い出し範囲がS8で、その拡張追い出し範囲がS10で、搬送車Cの追い出し位置はポイントP3である。搬送車Bの目的ポイントはP4で、強制追い出し範囲はS9であり、強制追い出し範囲S8,S9は重複しないのでこれらは合体しない。このため搬送車Aの追い出しリストには搬送車Cが含まれ、搬送車Bの追い出しリストは空である。ここで仮に搬送車Bが先に合流部P2を通過すると、搬送車BがポイントP3を先に通過することが分かるので、搬送車CはポイントP3に先着すると判断できる。そこで搬送車CへポイントP3への移動を指示し、これに伴い搬送車Aは、追い出しリストが空になり、ポイントP1への移動を開始できる。ここでは搬送車Bのためには、搬送車Cを追い出していないことが重要である。
【0026】
逆に搬送車Cが先に合流部P2を通過できる場合、即ち搬送車Cが先に合流部P2のブロッキングを許可された場合、搬送車Aは合流部P2の手前の目的ポイントP1へ移動する。搬送車Bの強制追い出し範囲S9内に搬送車Cが出現したので、拡張追い出し範囲S12が必要になり、これに伴って搬送車DをポイントP5から移動させる。そしてポイントP5へ搬送車Cが先着できると判断した時点で、搬送車Cを移動させる。このため搬送車BはポイントP4へ移動できる。追い出し範囲S8,S9を合体しないことにより、図6の2)では搬送車Cを搬送車Dが占めているポイントP5まで追い出す必要が無くなった。また搬送車Cを追い出す場合でも、正確な追い出しが行われている。
【0027】
図7は周回ルートでの追い出しを示す。走行ルートは周回ルートを含むことが多く、周回ルート内の搬送車を周回ルートの外部へ追い出すと、周回ルート内で新たな搬送物品が出現する可能性が高い場合に非効率である。図7の1) では、搬送車AはポイントP1を目的ポイントとし、強制追い出し範囲はS13となるので、一見したところ搬送車Bの追い出し位置が存在しない。ここで追い出し範囲S13を1周目の追い出し範囲と考える。搬送車Bは搬送車Aよりも先行しているので、搬送車Aが通過した後のポイントを2周目のポイントと見なすことにより、搬送車Bの追い出し位置とすることができる。そこで2周目のポイントP2を搬送車Bの追い出し位置とすると、図7の3) のように移動できる。搬送車Aは1周目でポイントP2を通過済みなので、搬送車Bは2周目のポイントP2に先着できると判断できる。周回ルートでの追い出しでは、同じ位置を1周目のポイントか2周目のポイントか、3周目のポイントか、4周目のポイントか等、周回数により区別することにより、追い出し位置の選択範囲を拡げることができる。
【0028】
図8は追い出し位置の決定に分岐部が関係する場合を示し、搬送車Aの目的ポイントはP1で、S14が強制追い出し範囲となり、搬送車B,Cを追い出す必要がある。ここで例えばポイントP2を搬送車C,Bの共通の追い出し位置とすると、追い出し位置が重複する。搬送車Cの追い出し位置をポイントP2の次のポイントP4とするのではなく、2)のようにロードポートのあるポイントP3とすると、追い出し位置を分散させることができ、また荷積み要求を速やかに処理できる。またポイントP4を追い出し位置とする場合に対し、ポイントP3を追い出し位置とすることにより、移動距離を短縮できる。図8の2)のように追い出し位置を決定するアルゴリズムとしては、
・ ポイントP2が搬送車B,Cの追い出し位置として重複した際に、追い出し位置をポイントP4からポイントP3へ分岐を利用して振り替える、
・ もしくは追い出し位置と現在位置との間に分岐が存在する場合、追い出し位置を分岐の両側に分散させる、などのようにすると良い。
【0029】
実施例では以下の効果が得られる。
1) 先着し得ると判断した際に追い出しを実行することにより、無駄な移動を減らす。
2) 複数台の搬送車を追い出す必要がある場合でも、効率的に処理できる。
3) 合流が追い出しに関係する場合でも、正確に追い出しの制御ができる。
4) 周回ルートでの追い出し位置を、1周目のポイントと2周目のポイントとに区別することにより、追い出し位置の選択範囲を拡張することができる。
5) 合流部等から下流側での追い出しを、合流部等のブロッキングが許可されるまで実行しないので、早過ぎる追い出しを実行することがない。
6) 追い出し位置までの間に分岐がある場合、分岐を利用して追い出し位置を分散させることができる。

【符号の説明】
【0030】
2 搬送車システム
4 走行ルート
6 合流部
8 分岐部
10 搬送車
12 ロードポート
14 コントローラ
15 通信部
16 搬送車ファイル
18 搬送指令ファイル
20 ルートマップ
22 ブロッキングデータファイル
24 追い出しファイル
26 搬送制御部
28 ブロッキング制御部
30 追い出し制御部
31 配車制御部
32 荷物

P ポイント
S1 強制追い出し範囲
S2,S7 拡張追い出し範囲
S4〜S6 強制追い出し範囲
S8,S9 強制追い出し範囲
S10, S12 拡張追い出し範囲
S13 1周目の強制追い出し範囲
S14 強制追い出し範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた走行ルートを走行する複数の搬送車と、複数の搬送車を制御するコントローラとを備え、かつ搬送車が目的地まで走行できるように他の搬送車を目的地までの走行ルートから追い出す搬送車システムにおいて、
前記コントローラは、
複数の搬送車の現在位置を把握する現在位置把握手段と、
搬送車への移動指令の有無を把握する指令把握手段と、
移動指令を有する搬送車の目的地を把握する目的地把握手段と、
移動指令を有する第1の搬送車の現在位置から所定の範囲内で、かつ目的地を越えない追い出し範囲内に位置し、移動指令を有さない第2の搬送車を検出して追い出し先を決定すると共に、前記第2の搬送車の現在位置から追い出し先までの範囲内に位置し、かつ移動指令を有さない第3の搬送車を検出して追い出し先を決定する追い出し位置決定手段と、
前記第3の搬送車が追い出し先へ先着でき、かつ前記第2の搬送車が、前記第3の搬送車を除いて、追い出し先へ先着できるか否かを判断する先着判断手段とを備えて、
先着できると判断された場合に、前記第2の搬送車及び前記第3の搬送車に追い出し先への移動を指令するようにしたことを特徴とする、搬送車システム。
【請求項2】
前記第1の搬送車の現在位置から見て、合流部の下流側に位置する第2の搬送車及び第3の搬送車に対して、第1の搬送車が合流部の通過を前記コントローラから許可されるまで、追い出し先へ先着できるか否かの判断に係わらず、追い出し先への移動を指令しないようにしたことを特徴とする、請求項1の搬送車システム。
【請求項3】
前記第1の搬送車が周回ルートを走行する際に、前記第2及び第3の搬送車の追い出し先として、第1の搬送車の現在位置及びその下流側で目的地よりも上流側の位置を指定自在にしたことを特徴とする、請求項1または2の搬送車システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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