説明

搬送車

【課題】例えば半導体素子製造用の各種基板を収容するFOUP等の被搬送物を搬送する搬送車に対して、各種制約を考慮しつつ、簡単な構成により識別手段及び障害物検知手段を配置する。
【解決手段】側面の下端側に識別タグ(12)を有する被搬送物(10)を搬送する搬送車(20)は、下方及び一側方に夫々開いている本体部(20a)と、識別タグが一側方を向いた状態にある被搬送物を上下移動可能である上下移動手段(21)と、識別タグが一側方を向いた状態にある被搬送物を水平移動可能である水平移動手段(22)と、識別タグを読み取る識別手段(23)と、識別手段を、本体部における一側方の下端側に取り付ける取付手段(24)と、本体部における一側方の上端側に取り付けられており、識別手段及び取付手段の脇を介して、下方に存在する障害物を検知する障害物検知手段(25)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体素子製造用の各種基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)等の被搬送物を搬送する搬送車の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の搬送車として、例えば被搬送物のIDを読み取るID読み取り装置を備え、製造装置やストッカとの間で被搬送物を出入庫する度に、ID読み取り装置により、被搬送物に備えられたIDカードからIDを読み取るものがある(特許文献1)。特に、上述のID読み取り装置の一部の機能を有するIDリーダが、出入庫や搬送車の走行の障害とならないように、被搬送物の下方でIDを読み取る読取状態、及び被搬送物の昇降時にその下方から退避する退避状態に、IDリーダを変位させる搬送車もある(特許文献2)。典型的には、FOUPにおけるIDカード等の識別タグの配置は、SEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)スタンダードにより規定されており、この識別タグを読み取るためのID読み取り装置やIDリーダ等の識別センサは、FOUPに対して識別タグに対向するように配置される。また、例えば被搬送物の下方の障害物を検知する障害物検知センサ等の障害物センサを備える搬送車がある(特許文献3)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−273457号公報
【特許文献2】特開2006−298566号公報
【特許文献3】特開2000−225938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、搬送車が走行する工場等内における天井の高さ、製造装置やストッカの高さ、ロードポート等のポート寸法、FOUP寸法、SEMIスタンダード等の業界標準による制約等から、搬送車の形状や寸法は略決定されてしまう。そのため、搬送車に、仮に上述の識別センサ及び障害物センサの両者を備えようとすると、それらの設置条件がかなり限定されてしまう。例えば障害物センサが光センサの場合、障害物センサからの光が識別センサで遮られてしまうような状態が生じる。このため、検知範囲を如何様に設定しても、識別センサよりも下方の範囲については、障害物の有無が検知できないという技術的問題点が生じる。他方、障害物センサからの光が遮られることがない、上述の特許文献2のIDリーダ等の識別センサの場合、読取状態及び退避状態に変位させる機構のために、搬送車の構成が複雑になると共に、例えばセンサ用のリード線が過度に屈曲して切れる恐れがあり、識別センサの耐久性及び信頼性が低下するという技術的問題点がある。
【0005】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、各種制約を考慮しつつ、簡単な構成により、識別センサ等の識別手段、及び障害物センサ等の障害物検知手段を配置することを可能ならしめる搬送車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の搬送車は上記課題を解決するために、側面の下端側に識別タグを有する被搬送物を搬送する搬送車であって、前記被搬送物を内部に収容可能であると共に下方及び少なくとも一側方に夫々開いている本体部と、前記識別タグが前記少なくとも一側方を向いた状態にある前記被搬送物を、前記本体部における前記下方への開きを介して上下移動可能であると共に前記内部に保持可能である上下移動手段と、前記識別タグが前記少なくとも一側方を向いた状態にある前記被搬送物を、前記本体部における前記少なくとも一側方への開きを介して水平移動可能である水平移動手段と、前記識別タグを読み取るための識別手段と、該識別手段を、前記本体部における前記少なくとも一側方の下端側に取り付ける取付手段と、前記上下移動手段又は前記水平移動手段又は前記本体部における前記少なくとも一側方の上端側に取り付けられており、前記識別手段及び前記取付手段の脇を介して、前記下方に存在する障害物を検知する障害物検知手段とを備える。
【0007】
本発明の搬送車によれば、例えば半導体素子製造の工程で、FOUP等の被搬送物を搬送する。該被搬送物は、例えば業界標準であるSEMIスタンダードに準拠して、側面の下端側に識別タグを有する。ここで「側面」は、例えば被搬送物がFOUPである場合に、蓋部である前面に対する背面である。被搬送物は、識別タグが本体部の一側方を向いた状態で、搬送車の内部に保持される。ここに「一側方」は、本体部が被搬送物の水平移動が可能となるように開いている方向、即ち水平移動を妨げないように本体部を構成する側壁が少なくとも部分的に存在していない方向である。
【0008】
本発明の搬送車は、本体部と、上下移動手段と、水平移動手段と、識別手段と、取付手段と、障害物検知手段とを備える。本体部は、被搬送物を搬送するため及び被搬送物の識別情報を取得するために、被搬送物を内部に収容可能である。また、該本体部は、収容している被搬送物を下方及び一側方に移動可能に、下方及び一側方に夫々開いている。このような本体部において、下方への開きを介して上下方向に、或いは一側方への開きを介して水平方向に、被搬送物が移動可能である。尚、本体部は、例えば下方及び一側方に加えて、該一側方と反対側の側方が開いている場合に、本体部の両側方向に被搬送物が移動可能である。
【0009】
上下移動手段は、例えばホイスト機構であり、ホイスト機構の例えばグリッパ等の把持機構により、被搬送物を、本体部の内部に保持すると共に、その下方への開きを介して上下移動させる。水平移動手段は、例えば上下移動手段を一側方へ動かす機械的な或いは電気機械的な水平移動機構であり、被搬送物を、本体部の一側方への開きを介して水平移動させる。被搬送物が上下移動手段により保持される或いは上下移動される、並びに水平移動手段により水平移動される際に、該被搬送物が有する識別タグは、一側方を向いた状態にある。
【0010】
識別手段は、例えばRFIDアンテナ及びリーダ等の識別センサであり、近接位置において被搬送物が有する識別タグと無線通信を行うことで、被搬送物に固有の識別情報を取得する。取付手段は、該識別手段が上下移動及び水平移動される被搬送物の移動経路に夫々立ち入らないように、識別手段を本体部の一側方の下端側に取り付ける。具体的に、該取付手段は、識別手段を、例えば識別タグの正面に、但し該移動経路よりも下方に配置するように、取り付ける。
【0011】
障害物検知手段は、例えば光照射型の障害物センサであり、上下移動手段又は水平移動手段又は本体部の一側方の上端側に取り付けられる。ここに「上端側」は、例えば搬送車の内部に保持されている被搬送物の上方の水平方向である。この場合に、「一側方の上端側に取り付けられる」は、例えば、上下移動手段又は水平移動手段又は本体部における一側方の面のうち、該水平方向に対応する範囲に取り付けられることである。該障害物検知手段は、取り付け位置から下方へ光を照射する。すると、照射された光が、識別手段及び取付手段の脇を介して、下方に配置されるポートへ到達する。例えば障害物検知手段から該ポートまでの間に設定された検知範囲内に、障害物が存在する場合に、照射物センサから照射された光が反射される。この反射光に基づいて、障害物検知手段よりも下方に障害物が存在するか否かが検知される。
【0012】
以上のように、識別タグに対して、被搬送物の移動経路の外に識別手段を配置すると共に、障害物検知手段からの光が識別手段及び取付手段の脇を介して下方を検知するように、識別手段に対して障害物検知手段を配置するので、障害物検知手段からの光が識別手段及び取付手段により遮られない。言い換えれば、取付手段により、取付手段及び識別手段が、障害物検知手段の検知範囲に入らないように識別手段が取り付けられている。しかも、検知範囲に立ち入らせることなく、規格等に従って配置された識別タグに対して識別手段を近接配置することが可能となる。
【0013】
これらの結果、識別手段を変位させなくとも、識別手段は本来の位置で検知範囲に含まれないので、識別手段の取付手段が比較的簡単に構成される。従って、各種制約を超越しつつ、簡単な構成により、識別手段及び障害物検知手段を配置することができる。
【0014】
本発明の搬送車の一態様では、前記障害物検知手段は、検知範囲を含む範囲に光を照射する照射部、該照射された光が前記障害物で反射した反射光を受光する受光部、及び該受光された反射光に基づいて前記検知範囲内における前記障害物の有無を判別する判別部を有し、前記検知範囲は、前記本体部における前記少なくとも一側方への開きの上辺を規定する部分を通る鉛直平面のうち前記下方へ延びる略矩形領域を含むと共に、前記識別手段及び前記取付手段を含まないように、設定されている。
【0015】
この態様によれば、照射部は、検知範囲を含む範囲に、光を、例えば光走査或いは光学的なスキャン動作によって放射状に照射する。障害物検知手段による検知について、照射部から照射された光が障害物で反射する。すると、該反射した反射光が受光部で受光される。すると、判別部により該受光された反射光に基づいて障害物の有無が判別される。尚、例えば変調光の位相差に基づいて障害物までの距離を算出することで、障害物の有無が判定されてもよい。該障害物検知手段は、例えば本体部における一側方の上端側に取り付けられる場合に、一側方への開きの上辺を規定する。この「上辺」は、本体部の内部に収容される被搬送物の上面よりも上方を示しており、障害物検知手段が被搬送物の水平移動を妨げることはない。ここで「検知範囲」は、該規定される部分を通る鉛直平面のうち、本体部の下方へ延びる略矩形領域を含む。また「鉛直平面」は、但し、該検知範囲は、識別手段及び取付手段を含まないように、設定される。具体的に、判別部は、例えば受光部による光の受光時間を、照射方向別に設定しており、照射される光が届く範囲内である限りにおいて検知範囲をどんな形状にも設定可能である。判別部は、例えば当該障害物検知手段と、搬送車の下方に配置されるポートの全域とを結ぶ領域のうち識別手段及び取付手段を含まない領域を、検知範囲として設定する。これにより、識別手段及び取付手段が障害物として検知されることはない。
尚、障害物検知手段は、例えば障害物センサ、及び搬送車の各部を制御する制御部の一部であってもよい。具体的に、例えば、障害物センサが照射部及び受光部を備え、制御部が判別部を含んでいる。
【0016】
この態様では、前記障害物検知手段は、前記上端側における、前記取付手段から離れる側に寄った位置に取り付けられており、前記照射部は、光軸が前記鉛直方向を基準として前記取付手段に向かう方向に傾けられた光ビームを、前記光として照射し、前記判別部は、前記受光された反射光に基づいて、前記照射された光ビームが前記検知範囲内で反射されることを判別する。
【0017】
この態様によれば、障害物検知手段は、例えば取付手段が左側に寄って取り付けられる場合に、右側に寄った位置に取り付けられる。このような障害物検知手段及び取り付け手段の位置関係では、照射部は、光軸が障害物検知手段の鉛直方向から取付手段に向かう方向に傾けられるように、光ビームを照射(スキャン)する。判別部は、光ビームが検知範囲内で何かしらの障害物に反射されるのを判別する。このように照射される光を全体に傾けるという比較的簡単な構成を採用することで、識別手段及び取付手段が障害物として検知されないようにしつつ、それらの下方に広範に広がる検知範囲における検知が可能となる。
【0018】
本発明の搬送車の他の態様では、前記取付手段は、前記少なくとも一側方への開きの下辺を部分的に規定する棒状部材を有し、該棒状部材は、根元にて前記本体部に取り付けられており、前記識別手段は、前記棒状部材の先端又は該先端の近傍に取り付けられており、前記障害物検知手段は、前記脇として、前記先端の先に存在する空きを介して前記障害物を検知する。
【0019】
この態様によれば、取付手段は、棒状部材を有する。該棒状部材において、根本部分は、例えば本体部における一側方の右下端部に取り付けられ、該根元部分と反対側である先端には、識別手段が取り付けられる。該棒状部材は、本体部における一側方への開きの下辺を一部規定する。この「下辺」は、本体部の内部に収容される被搬送物の底面よりも下方を示しており、棒状部材が被搬送物の上下移動及び水平移動を妨げることはない。棒状部材の先端の先、即ち、本体部における一側方の左下側は、識別手段及び取付手段の脇として空いている。障害物検知手段は、該空きを介して、障害物を検知する。このように棒状部材の先端に識別手段を取り付けるという比較的簡単な構成を採用することで、識別手段及び取付手段が障害物として検知されないようにしつつ、それらの下方に広範に広がる検知範囲における検知が可能となる。
【0020】
本発明の搬送車の他の態様では、前記水平移動手段は、前記被搬送物を、前記上下移動手段ごと水平移動させ、前記障害物検知手段は、前記上下移動手段又は前記水平移動手段に取り付けられている。
【0021】
この態様によれば、例えば水平移動手段の下面には、上下移動手段が取り付けられている。水平移動手段は、例えば本体部の内部に備えられた、一側方に延びるレールに沿って水平方向に移動する。この水平移動の際に、上下移動手段は、水平移動手段と共に水平移動される。これにより、当該搬送車は、上下移動及び水平移動を組み合わせた移載が可能であり、例えば被搬送物を水平移動した後に、水平移動された被搬送物を上下移動可能である。障害物検知手段は、上下移動手段又は水平移動手段に、詳細には、例えば一側方へ水平移動される上下移動手段又は水平移動手段の先端に取り付けられている。これにより、被搬送物の下方を常時検知可能であり、水平移動の後にも被搬送物を下方へ安全に移動させることができる。尚、水平移動手段及び上下移動手段は、別体に構成せずに、例えば水平移動手段の一部が、上下移動手段であってもよい。
【0022】
本発明の搬送車の他の態様では、前記水平移動手段は、前記被搬送物を、前記上下移動手段から独立して水平移動させ、前記障害物検知手段は、前記本体部に取り付けられている。
【0023】
この態様によれば、水平移動手段は、例えば本体部における内部の天壁に備えられた、一側方に延びるレールに沿って水平方向に移動する。この水平移動の際に、水平移動手段は、上下移動手段から独立して水平移動される。これにより、当該搬送車は、上下移動及び水平移動を組み合わせた移載が不可能であり、例えば水平移動された被搬送物を上下移動することはできない。この場合、水平移動された被搬送物の下方を検知する必要性がないために、障害物検知手段は、本体部に取り付けられている。従って、本体部の下方を常時検知して、被搬送物を本体部の下方へ安全に移動させることができる。
【0024】
本発明の搬送車の他の態様では、前記識別タグは、前記識別情報が記録されたRFIDタグを有し、前記識別手段は、前記RFIDタグと交信可能なRFIDアンテナを有し、該RFIDアンテナは、前記収容されている被搬送物の前記RFIDタグに対向するように、前記取付手段により取り付けられている。
【0025】
この態様によれば、RFIDタグは、SEMIスタンダードの規定により、本体部における背面の下端部に配置される。ここで、本体部の内部に収容されている被搬送物の「背面」は、一側方に対応する。取付手段において、具体的に、棒状部材の先端がRFIDタグに対向するように、その根元部分が例えば本体部における一側方の右下端部に取り付けられることで、RFIDアンテナがRFIDタグに近接位置にて対向している。ここに「対向」とは真正面にて対向している場合のみならず、斜めに対向している場合も含む。特にRFIDアンテナをRFIDタグの斜め下方にて対向させることで、RFIDアンテナを被搬送物の移動経路に立ち入らないようにしつつ、RFIDタグに近接配置させることが可能となる。これにより、被搬送物の水平移動を妨げることなく、RFIDアンテナ及び取付手段を配置することができる。
【0026】
この態様では、前記障害物検知手段は、少なくとも前記収容されている被搬送物の上部の水平方向に、且つその鉛直方向が前記RFIDアンテナの鉛直方向と異なるように、配置されることが好ましい。
【0027】
この態様によれば、障害物検知手段は、例えば本体部における一側方の上端側のうち、本体部の内部に収容されている被搬送物のフランジの水平方向に対応する位置に、配置される。該障害物検知手段の鉛直方向は、RFIDアンテナの鉛直方向と異なる。例えば本体部における一側方の右下端部に取付手段が取り付けられた場合に、障害物検知手段は、一側方の左上端部に配置される。このように、障害物検知手段からの光が識別手段及び取付手段の脇を介して下方を検知するように、識別手段に対して障害物検知手段を配置するので、障害物検知手段からの光が識別手段及び取付手段により遮られない。故に結果として、識別手段の取付手段を比較的簡単に構成しつつ、識別手段及び障害物検知手段を配置することができる。
【0028】
本発明の搬送車の他の態様では、前記識別タグは、前記識別情報が記録されたバーコードラベルであって、前記識別手段は、前記収容されている被搬送物の前記バーコードラベルに対向するように、前記取付手段により取り付けられている。
【0029】
この態様によれば、バーコードラベルは、SEMIスタンダードの規定により、本体部における背面の下端部に配置される。ここで、本体部の内部に収容されている被搬送物の「背面」は、一側方に対応する。取付手段において、具体的に、棒状部材の先端がバーコードラベルに対向するように、その根元部分が例えば本体部における一側方の右下端部に取り付けられることで、識別手段がバーコードラベルに近接位置にて対向している。ここに「対向」とは真正面にて対向している場合のみならず、斜めに対向している場合も含む。特に識別手段をバーコードラベルの斜め下方にて対向させることで、識別手段を被搬送物の移動経路に立ち入らないようにしつつ、バーコードラベルに近接配置させることが可能となる。これにより、被搬送物の水平移動を妨げることなく、識別手段及び取付手段を配置することができる。
【0030】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0032】
先ず、実施形態に係る搬送車を適用した搬送システムの構成について図1から図5を参照して説明する。ここに図1は、実施形態に係る搬送車を適用した搬送システムの外観を示す図式的な側面図である。図2(a)及び図2(b)は、図1に示した被搬送物を抽出して示す側面図及び該被搬送物において左側から視た背面図であり、図2(b)では特に、障害物検知手段における検知範囲が示されている。図3は、図1の搬送システムを一側方から視た側面図であり、図4は、図3のF1−F1断面図である。図5は、実施形態に係る障害物検知手段の構成を示すブロック図である。
【0033】
図1において、搬送システム100は、軌道2と、搬送車20と、図示しないコントローラとを備える。コントローラは、半導体素子製造工程のスケジュールに基づいて、軌道2に沿って搬送車20を走行させると共に、FOUP10を、図示しない半導体素子製造用の製造装置やストッカへ搬送する。コントローラは、搬送先である製造装置やストッカとの間でFOUP10の出入庫を行う際に、製造装置やストッカの各々に設定されるポートP1及びP2上に、FOUP10を載置する。搬送車20は、軌道2の下方D1に配置されるポートP1、及び軌道2の一側方D2に配置されるポートP2に対して、搬送しているFOUP10を移載可能である。
【0034】
図3及び図4において、搬送車20は、本体部20aと、上下移動部21と、水平移動部22と、RFIDアンテナ23と、取付部24と、障害物センサ25とを備えており、SEMIスタンダードに準拠したFOUP10を搬送する。
【0035】
本体部20aは、内部に、上下移動部21と、水平移動部22とを配置している。上下移動部21は、水平移動部22に取り付けられており、上下移動部21の下方には、FOUP10を収容可能な空間が形成されている。本体部20aは、該空間よりも下方D1の底面(即ち、本発明に係る「下方への開き」の一例)、及び該空間よりも一側方D2の背面(即ち、本発明に係る「一側方への開き」の一例)を夫々開放しており、収容しているFOUP10の上下移動及び水平移動が可能である。
【0036】
上下移動部21は、本発明に係る「上下移動手段」の一例として、ホイスト21aと、ベルト21bと、グリッパ21cとを備える縦移載機構である。ホイスト21aは、図示しないモータを備え、このモータの制御により、ベルト21bを繰り出す又は巻き上げる動作を行う。ベルト21bにおいて、一端がホイスト21aの図示しない巻き軸に固着されており、他端がグリッパ21cの上面に固定されている。グリッパ21cは、FOUP10の上部に形成された鍔部を把持可能に、両端部が内側に向けて屈曲されている。グリッパ21cは、この鍔部を把持する把持状態と、この鍔部を解放する解放状態との間で変位可能であり、把持状態でFOUP10を保持する。ホイスト21aは、ベルト21bの繰り出し又は巻き上げ動作により、把持状態にあるFOUP10を上下移動させる。上下移動部21は、この上下移動により、把持状態にあるFOUP3をポートP1又はP2に縦移載する。
【0037】
水平移動部22は、本発明に係る「水平移動手段」の一例として、第1スライド部22aと、第2スライド部22bと、図示しないアクチュエータとを備える二段スライド式の横移載機構である。第1スライド部22aは、図示しない複数の歯車を備え、アクチュエータの制御により、複数の歯車を左回り又は右回りに回転させる。複数の歯車について、該上面が本体部20aの内壁と接触しており、該下面が、第2スライド部22bの一面と接触している。水平移動部22における一側方D2の先端(即ち、第2スライド部22bの下面)には、FOUP10を保持可能な上下移動部21が取り付けられている。
本実施形態では、本体部20aにFOUP10を収容している搬送車20において、複数の歯車が左回転されると、第1スライド部22aが一側方D2へ水平移動され、図1に示す位置まで水平移動される。更に、複数の歯車が左回転されると、第2スライド部22bが、第1スライド部22aを超えて一側方D2へ水平移動され、図1に示すように、二段階で、ポートP2に対応する位置まで水平移動される。水平移動部22は、この水平移動により、上下移動部21が把持しているFOUP3を、ポートP2に横移載する。
一方、水平移動部22が該横移載可能な状態にあって、複数の歯車が右回転されると、先ず第2スライド部22bが本体部20aへ向けて水平移動され、第1スライド部22aの下方まで水平移動される。更に、複数の歯車が右回転されると、第1スライド部22aが本体部20aへ向けて水平移動され、最終的には本体部20aの内部に収容される位置まで水平移動される。
【0038】
FOUP10の側面図を示す図2(a)において、FOUP10は、本発明に係る「被搬送物」の一例として、内部に、半導体素子製造用の各種基板を収納可能である。FOUP10は、収納部10aと、蓋部10bと、フランジ11と、RFIDタグ12とを備える。収納部10aの前面(即ち図2(a)における右側面)には、開閉自在な蓋部10bが取り付けられており、蓋部10bの側がFOUP10の正面である。蓋部10bの開閉により、収納部10aに対して、各種基板が出し入れされる。収納部10aの上面には、フランジ11が取り付けられている。フランジ11の一部は、グリッパ21cに把持される鍔部に形成されている。
【0039】
FOUP10において、一側方D2(即ち、図2(a)における左側面の方向)から視た背面図を示す図2(b)において、収納部10aの下端部には、RFIDタグ12が取り付けられている。RFIDタグ12は、本発明に係る「識別タグ」の一例として、個々のFOUP10を識別するための識別情報を記録している。
【0040】
図3及び図4において、RFIDアンテナ23は、本発明に係る「識別手段」の一例として、RFIDタグ12を読み取り、FOUP10の識別情報を取得する。RFIDアンテナ23は、取付部24を介して、本体部20aに取り付けられている。取付部24は、RFIDアンテナ23がFOUP10の上下移動及び水平移動の障害とならないように、且つRFIDタグ12と交信可能な近接位置に、RFIDアンテナ23を配置する。具体的に、図2に示すように、RFIDアンテナ23は、RFIDタグ12の正面よりも下方に配置されている。
【0041】
図3及び図4において、取付部24は、棒状に形成されており、本発明に係る「根元」である一端が、本体部20aにおける一側方D2の右下端部に固定され、本発明に係る「棒状部材の先端」である他端に、RFIDアンテナ23が取り付けられている。
【0042】
障害物センサ25は、本発明に係る「障害物検知手段」の一例として、第2スライド部22bにおける一側方D2の左下端部に取り付けられている。障害物センサ25は、ラインL1及びL2に沿う領域(即ち、図1に一点鎖線で示される)に存在する障害物を検知する。ラインL1は、第2スライド部22aが本体部20a内に配置されている場合に、ポートP1に対向する第2スライド部22bの下方(言い換えれば、本体部20aの下方)について検知するための領域を示す。ラインL2は、第2スライド部22aが一側方D2へ水平移動された場合に、ポートP2に対向する第2スライド部22bの下方について検知するための領域を示す。各ラインL1及びL2は、対向するポートP1又はP2が障害物として誤って検知されないように、ポートP1又はP2から離れる側に傾けられている。尚、障害物センサ25の取り付け対象は、第2スライド部22bの代わりに、上下移動部21又は本体部20aであってもよい。
【0043】
図5において、障害物センサ25は、照射部25aと、受光部25bと、判別部25cとを備える光照射型のセンサである。図2(b)及び図3において、照射部25aは、検知範囲A1を含む範囲に、光ビームを照射する。受光部25bは、照射部25aから照射された光ビームが何かしらの障害物で反射した反射光を、受光する。判別部25cは、受光部25bに受光された反射光を示すデータ(反射光データ)に基づいて、検知範囲A1内の障害物の有無を検知する。判別部25cは、本実施形態では特に、光ビームの照射方向別に、距離(例えば、受光時間に対応される)を設定可能である。この設定により、判別部25cは、照射された光ビームが届く範囲内において、障害物センサ25より下方に配置される本体部20aの一部、RFIDアンテナ23、及び取付部24を含めない形状の検知範囲A1を、図3の如くに設定している。
【0044】
次に、本実施形態に係る搬送車による被搬送物の移載制御処理について図1から図4を参照して説明する。
【0045】
図1において、先ず搬送車20にFOUP10が収容される段階で、RFIDアンテナ23により、識別タグ12が読み取られる。この後、搬送車20が、行き先目標であるポートP1の上方又はポートP2の側方に達し、搬送車が停止される。続いて、障害物センサ25の照射部25aから光が照射されると共に、照射された光の反射光が受光部25bに受光される。続いて、受光された反射光に基づいて、判定部25cにより、検知範囲A1内の障害物の有無が検知され、障害物が有ると判別された場合に、搬送車20が所定時間待機状態とされる。或いは、所定種類の警告メッセージが表示又は音声出力等される。
【0046】
一方、障害物が無いと判定された場合に、上下移動部21が駆動され、本体部20a内に収容されているFOUP10が、ポートP1に移載される。この際に、FOUP10が本体部20aの下方への開き又は一側方への開きを介して上下移動及び/又は水平移動されるが、RFIDアンテナ23が障害になることはない。これにより、一連の移載制御処理が終了される。この移載時において、障害物を検知する動作が終始実行される。
【0047】
このように、本実施形態によれば、FOUP10の移動経路の外にRFIDアンテナ23を配置すると共に、障害物センサ25からの光がRFIDアンテナ23及び取付部24の脇を介して下方を検知するように、RFIDアンテナ23に対して障害物センサ25を配置するので、障害物センサ25からの光がRFIDアンテナ23及び取付部24により遮られない。故に結果として、各種制約を超越して、簡単な構成によりRFIDアンテナ23及び障害物センサ25を配置することができる。
【0048】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う搬送車もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施形態に係る搬送車を適用した搬送システムの外観を示す側面図である。
【図2】図1の被搬送物を示す側面図及び背面図である。
【図3】図1の搬送システムを一側方から視た側面図である。
【図4】図3のF1−F1断面図である。
【図5】実施形態に係る障害物検知手段の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0050】
10…被搬送物,20…搬送車,21…上下移動部,22…水平移動部,23…RFIDアンテナ,24…取付部,25…障害物センサ,100…搬送システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面の下端側に識別タグを有する被搬送物を搬送する搬送車であって、
前記被搬送物を内部に収容可能であると共に下方及び少なくとも一側方に夫々開いている本体部と、
前記識別タグが前記少なくとも一側方を向いた状態にある前記被搬送物を、前記本体部における前記下方への開きを介して上下移動可能であると共に前記内部に保持可能である上下移動手段と、
前記識別タグが前記少なくとも一側方を向いた状態にある前記被搬送物を、前記本体部における前記少なくとも一側方への開きを介して水平移動可能である水平移動手段と、
前記識別タグを読み取るための識別手段と、
該識別手段を、前記本体部における前記少なくとも一側方の下端側に取り付ける取付手段と、
前記上下移動手段又は前記水平移動手段又は前記本体部における前記少なくとも一側方の上端側に取り付けられており、前記識別手段及び前記取付手段の脇を介して、前記下方に存在する障害物を検知する障害物検知手段と
を備えることを特徴とする搬送車。
【請求項2】
前記障害物検知手段は、検知範囲を含む範囲に光を照射する照射部、該照射された光が前記障害物で反射した反射光を受光する受光部、及び該受光された反射光に基づいて前記検知範囲内における前記障害物の有無を判別する判別部を有し、
前記検知範囲は、前記本体部における前記少なくとも一側方への開きの上辺を規定する部分を通る鉛直平面のうち前記下方へ延びる略矩形領域を含むと共に、前記識別手段及び前記取付手段を含まないように、設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送車。
【請求項3】
前記障害物検知手段は、
前記上端側における、前記取付手段から離れる側に寄った位置に取り付けられており、
前記照射部は、光軸が前記鉛直方向を基準として前記取付手段に向かう方向に傾けられた光ビームを、前記光として照射し、
前記判別部は、前記受光された反射光に基づいて、前記照射された光ビームが前記検知範囲内で反射されることを判別する
ことを特徴とする請求項2に記載の搬送車。
【請求項4】
前記取付手段は、前記少なくとも一側方への開きの下辺を部分的に規定する棒状部材を有し、
該棒状部材は、根元にて前記本体部に取り付けられており、
前記識別手段は、前記棒状部材の先端又は該先端の近傍に取り付けられており、
前記障害物検知手段は、前記脇として、前記先端の先に存在する空きを介して前記障害物を検知する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の搬送車。
【請求項5】
前記水平移動手段は、前記被搬送物を、前記上下移動手段ごと水平移動させ、
前記障害物検知手段は、前記上下移動手段又は前記水平移動手段に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送車。
【請求項6】
前記水平移動手段は、前記被搬送物を、前記上下移動手段から独立して水平移動させ、
前記障害物検知手段は、前記本体部に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送車。
【請求項7】
前記識別タグは、識別情報が記録されたRFIDタグを有し、
前記識別手段は、前記RFIDタグと交信可能なRFIDアンテナを有し、
該RFIDアンテナは、前記収容されている被搬送物の前記RFIDタグに対向するように、前記取付手段により取り付けられている
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の搬送車。
【請求項8】
前記障害物検知手段は、少なくとも前記収容されている被搬送物の上部の水平方向に、且つその鉛直方向が前記RFIDアンテナの鉛直方向と異なるように、配置される
ことを特徴とする請求項7に記載の搬送車。
【請求項9】
前記識別タグは、前記識別情報が記録されたバーコードラベルであって、
前記識別手段は、前記収容されている被搬送物の前記バーコードラベルに対向するように、前記取付手段により取り付けられている
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の搬送車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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