説明

搬送車

【課題】例えば半導体装置製造用の各種基板等が収容された容器などの被搬送物を、軌道上で搬送する搬送車において、渋滞を防止しつつ、効率よく走行する。
【解決手段】搬送車(3)は、走行時に、障害物を検知可能な第1検知手段(5)と、搬送車の存在を示す存在提示信号を、軌道(1)における本体部の後方に向けて発信する発信手段(8)と、軌道における本体部の前方に存在すると共に、前方走行車が備える発信手段と同一構成を有する発信手段から発信された存在提示信号を受信する受信手段(7)と、第1検知手段により障害物が検知された場合に、検知された障害物への衝突を避けるように搬送車の走行を制御し、存在提示信号が受信されたことを条件に、検知された障害物と搬送車との間の車間距離が、存在提示信号が受信されない場合より短くなるように、搬送車の走行を制御する走行制御手段(9)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体装置製造用の各種基板等が収容された容器などの被搬送物を、軌道上で搬送する搬送車の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の搬送車として、例えば走行に伴って、走行経路における搬送車の前方にある障害物を監視する際に、複数のセンサにおける検知エリアのパターンを、走行経路の形状に沿わせるように変化させるものがある(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−222320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1によれば、複数のセンサによって検知される障害物が、前方を走行する搬送車(以下、単に「前方走行車」と言う)であっても、走行経路を横切る人や走行経路に落下した部品等であっても、搬送車は、障害物から同一の距離をとった後方位置で停止されてしまう。
【0005】
特に本願発明者の知るところによれば、このような同一の距離は、例えば、最高速で走行する搬送車が、障害物を検知してから完全に停止するまでに必要な制動距離であって、搬送車との衝突を回避するために比較的長めに設定されている。ここで、障害物を、規定速度で走行している前方走行車、又は移載等で停止している前方走行車とする場合に、前方走行車と、これに続く搬送車との間にとる車間距離を、上述した同一の距離とする。この場合に、前方走行車が移載等のために停止するのに伴って、後続の複数の搬送車も停止される。すると、後続の複数の搬送車が、前方走行車が停止する走行経路と接続される他の走行経路まで連なり、複数の走行経路で渋滞が生じてしまいかねないという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、渋滞を防止しつつ、効率よく走行可能な搬送車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の搬送車は上記課題を解決するために、軌道に沿って走行すると共に、被搬送物を搬送する搬送車であって、本体部と、走行時に、前記本体部及び前記被搬送物の少なくとも一部が接触する可能性のある障害物を検知可能な第1検知手段と、当該搬送車の存在を示す存在提示信号を、前記軌道における前記本体部の後方に向けて発信する発信手段と、前記軌道における前記本体部の前方に存在すると共に、当該搬送車と同一構成を有する前方走行車が備える前記発信手段と同一構成を有する発信手段から発信された存在提示信号を受信する受信手段と、前記第1検知手段により前記障害物が検知された場合に、前記検知された障害物への衝突を避けるように当該搬送車の走行を制御し、前記存在提示信号が受信されたことを条件に、前記検知された障害物と当該搬送車との間の車間距離が、前記存在提示信号が受信されない場合より短くなるように、当該搬送車の走行を制御する走行制御手段とを備える。
【0008】
本発明の搬送車によれば、その動作時には、例えば天井或いはその付近に敷設されたレール等の軌道上を走行する、例えばビークル、OHT(Overhead Hoist Transport)、OHS(Over Head Shuttle)等の搬送車によって、例えばFOUP(Front Opening Unified Pod)等の荷或いは被搬送物は搬送される。この搬送時に、例えば、軌道における搬送車の前方において、搬送車を管理する管理者、搬送される被搬送物の一部等が過って進入してしまうことがある。また、該前方を走行する前方走行車に、搬送車が達することがある。これら搬送車の前方に存在する管理者、被搬送物の一部、及び前方走行車等は全て障害物と見なされる。
【0009】
このため先ず、走行中に、例えば赤外線、超音波等の信号を発信し、障害物に反射した赤外線、超音波等の反射信号を受信する反射型センサ等の第1検知手段によって、障害物が検知される。この検知の際には、障害物が前方走行車であるか否かを問わずに検知される。この後、コントローラ、メモリ等を含んでなる走行制御手段によって、第1検知手段により障害物が検知された場合に、この検知された障害物への衝突を避けるように当該搬送車の走行が制御される。即ち、衝突回避用の処理或いは動作(以下、適宜「衝突回避用処理」と称する)が実行される。よって、障害物への衝突は起こらない。但し、このような衝突回避用処理を、障害物が検知された場合に、無条件に実行するのではなく、次のように、衝突回避用処理に先んじて又は遅れて、前方走行車が存在する場合用の処理或いは動作が、衝突回避用処理に代えて実行される。
【0010】
即ち、このような障害物を検知するのに相前後して又は並行して、例えば受光装置、受波装置等を含んでなる受信手段によって、前方走行車における、例えば投光装置、送波装置等を含んでなる発信手段から発信された、例えば赤外線、超音波等の存在提示信号が受信される。この受信された存在提示信号から、当該搬送車の前方に前方走行車が存在することが示される。
【0011】
よって、上述の如く第1検知手段により障害物が検知された以後に、又はこのような第1検知手段により障害物が検知される以前に、走行制御手段によって、受信手段で存在提示信号が受信されたことを条件に、この検知された障害物と当該搬送車との間の車間距離が、存在提示信号が受信されない場合より短くなるように、当該搬送車の走行が制御される。即ち、存在提示信号が受信されると、障害物は前方走行車であるものとして、車間距離を短くする処理或いは動作(以下、適宜「前詰め処理」と称する)を実行可能となる。
尚、この車間距離の長さは、同一の形態に構成される複数の搬送車について、相互衝突を回避可能である、例えば20cmの最小長さであってもよい。これにより、前方走行車が移載等のために停止しても、後続の複数の搬送車について最小長さの車間距離を相互間でとることによって、複数の搬送車が、前方走行車が停止する軌道より他の軌道まで連なる事態を回避することも可能となる。
【0012】
以上の結果、複数の軌道における渋滞を防止しつつ、搬送車を効率よく走行させることが可能となる。
【0013】
本発明の搬送車の一の態様では、前記第1検知手段は、前記第1検知手段を中心として所定の第1範囲内で、前記障害物を検知可能であり、前記発信手段は、前記発信手段を中心として前記第1範囲よりも広い第2範囲内で受信可能となるように前記存在提示信号を発信し、前記受信手段は、前記発信手段が前記第2範囲内に存在する場合に、前記存在提示信号を受信する。
【0014】
この態様によれば、第1検知手段によって、障害物が、所定の第1範囲内で検知される。ここに「所定の第1範囲」は、衝突回避用処理を衝突前に完了可能な範囲として設定される。例えば、軌道及びその近傍に沿っており、当該搬送車の前面から前方へ200cmの距離をとった範囲であってもよい。この後、検知された結果に基づいて、コントローラ、メモリ等を含んでなる走行制御手段によって、衝突回避用処理が実行される。
【0015】
他方で、このような第1範囲よりも広い第2範囲に当該搬送車があると、前方走行車の発信手段から発信された存在提示信号が、当該搬送車の受信手段により受信されるので、第1検知手段により障害物として検知される以前に、この障害物は前方走行車であるものとして、衝突回避用処理を適時に実行可能となる。よって、衝突回避用処理を実行するのに先立って、前詰め処理を適時に開始することが可能となり、無駄に衝突回避用処理を実行しないで済む。
【0016】
尚、第2範囲を第1範囲よりも狭く設定することも可能である。この場合、先ず、衝突回避用処理が開始されてから、前方走行車が存在するか否かが発覚し、その時点で、前詰め処理の実行が開始される。よって、衝突する可能性を低減する観点或いは装置故障時等の異常時における安全を期す観点からは有利となる。
【0017】
本発明の搬送システムの他の態様では、前記障害物を、前記第1範囲に含まれる第3範囲内で検知可能な第2検知手段を更に備え、前記走行制御手段は、前記存在提示信号が受信されず且つ前記障害物が前記第1範囲内で検知された場合、又は前記検知された障害物が前記第3範囲内で検知された場合に、当該搬送車が直ちに停止するように前記走行を制御する。
【0018】
この態様によれば、走行中に、例えば第1検知手段による検知の後に、例えば赤外線、超音波等の信号を発信し、障害物に反射した赤外線、超音波等の反射信号を受信する反射型センサ等の第2検知手段によって、障害物である前方搬送車が第3範囲内で検知される。ここに「第3範囲」は、第1範囲に含まれており、例えば、当該搬送車の前面から前方へ20cmの距離をとった領域であってもよい。すると、走行制御手段によって、衝突回避用処理の一つとして、当該搬送車が停止される。これにより、搬送車が前方走行車に追突するのを防止できる。
【0019】
一方で、走行中に、存在提示信号が受信されないまま、第1検知手段によって、障害物が所定の第1範囲内で検知される。すると、走行制御手段によって、衝突回避用処理の一つとして、当該搬送車が停止される。これにより、搬送車が障害物に衝突するのを防止できる。
【0020】
よっていずれの場合にも、確実に搬送車が障害物に衝突するのを防止できる。
【0021】
この態様によれば、前記走行制御手段は、前記障害物が前記第1検知手段により検知されてから、前記第2検知手段により検知されるまでの間、当該搬送車が低速で走行するように前記走行を制御してもよい。
【0022】
このように構成すれば、走行中に、例えば前方走行車が、先ず、より遠方を検知対象とする第1範囲内で検知された後に、より近方を検知対象とする第3範囲内で検知されるまで、走行制御手段によって、搬送車が低速で走行される。これにより、障害物への衝突を安全確実に回避することが可能となると共に、前方走行車との間に一定の距離以上の車間距離をとって、前方搬送車の後を搬送車に追走させることも可能となる。
【0023】
本発明の搬送システムの他の態様では、前記第1検知手段は、前記前方走行車における後面の相異なる部分を、夫々検知可能な複数のセンサを有しており、前記走行制御手段は、前記存在提示信号が受信されたことを条件に、前記複数のセンサが同時期に前記障害物を前記部分で夫々検知した場合に、前記車間距離が、前記存在提示信号が受信されない場合より短くなるように、当該搬送車の走行を制御する。
【0024】
この態様によれば、走行中に、例えば当該搬送車における前面の中央、右側、及び左側等に夫々取り付けられた中央センサ、右センサ、及び左センサ等の複数のセンサによって、前方走行車の検出が行われる。ここに「相異なる部分」は、例えば前方走行車における後面の中央部、右部、及び左部等であって、当該搬送車の前面に取り付けられている複数のセンサの検知領域に夫々対応している。複数のセンサの検知領域について、例えば上述した左部よりも中央部が突出している場合に、中央部の検知領域を左部のものより短くする等、検知領域(又は検知距離)に差異があってもよい。具体的には、例えば、中央センサが中央部について、右センサが右部について、左センサが左部について障害物を検知する。この場合に、例えば、搬送車が検知領域の差異を考慮した所定距離を走行する間(即ち、時期)に、これら3つのセンサが、各部(中央部、右部、及び左部)で障害物を検知すると、検知された障害物が前方走行車と断定される。例えば、上述した3つのセンサによって検知された結果に基づいて、走行制御手段によって、当該搬送車の走行が制御される。尚、走行制御手段によって、3つのセンサによる検知の結果により、一度、障害物が前方走行車と断定されると、例えば、3つのセンサ全てが検知しなくなるまで継続して、障害物が前方走行車と断定されてもよい。
【0025】
尚、複数のセンサにより、前方走行車における後面の同一部分を、冗長的に検知するのでもよい。このように構成すれば、冗長性を持って確実に、特定の一部分を検知できる。
【0026】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0028】
先ず、実施形態に係る搬送車を適用する搬送システムの構成について説明する。ここに図1は、実施形態に係る搬送車及び前方走行車の一状態を模式的に示し、図2は、図1の搬送車の前面における複数のセンサの配置を示す。
【0029】
図1において、搬送システム100は、軌道1、ビークル3、及び搬送コントローラ10を備える。軌道1は、ビークル3が走行するためのレールである。軌道1上には、ビークル3の他に、前走ビークル3xが存在している。前走ビークル3xは、本実施形態に係る「前方走行車」の一例として、ビークル3と同一に構成されている。
【0030】
ビークル3は、本実施形態に係る「搬送車」の一例として、軌道1に沿って走行すると共に、不図示の製造装置やストッカにFOUPを搬送する。図2において、ビークル3は、本体部3a、複数のセンサ5〜7、投光部8、及び制御部9を備える。複数のセンサ5〜7は、3つの衝突防止センサ5、前詰めセンサ6、及び前走検出センサ7を含む。これらのセンサ5〜7は、本体部3aの前面に取り付けられている。
【0031】
3つの衝突防止センサ5は、本発明に係る「第1検知手段」の一例として、所定の検知領域で、障害物を検知する。3つの衝突防止センサ5は、超音波を発し、発された超音波の反射波を受け取ることで、走行時に障害となる障害物の有無を検出する超音波センサである。図2に示すように、3つの衝突防止センサ5は、前方センサ5a、右方センサ5b、及び左方センサ5cを含む。前方センサ5aは、本体部3aの前面下側に取り付けられており、ビークル3の前方における障害物を検知可能とする。右方センサ5bは、本体部3aの前面右側に取り付けられており、ビークル3の前右方における障害物を検知可能とする。左方センサ5cは、本体部3aの前面左側に取り付けられており、ビークル3の前左方における障害物を検知可能とする。
【0032】
図1において、3つの衝突防止センサ5は、相異なる検知領域を夫々設定している。前方センサ5a及び右方センサ5bは、検知領域として、本体部3aの前面から走行方向へ距離L3をとった領域(即ち、本発明に係る「第1範囲」の一例)を設定しており、障害物が前走ビークル3xであれば、前走ビークル3xの後面中央及び後面右方を検知可能とする。左方センサ5cは、検知領域として、本体部3aの前面から走行方向へ距離L2をとった領域(即ち、本発明に係る「第1範囲」の一例)を設定しており、障害物が前走ビークル3xであれば、前走ビークル3xの後面左方を検知可能とする。図1に示すように、前走ビークル3xについて、後面左方に対応する距離L2は、後面中央及び後面右方に対応する距離L3より長く設定されており、これら距離L2,L3は、前走ビークル3xの後面の形状に対応している。各衝突防止センサ5は、設定された検知領域に障害物が存在している場合に、障害物がある旨の信号を制御部9に送る。
【0033】
前詰めセンサ6は、本発明に係る「第2検出手段」の一例として、3つの衝突防止センサ5に含まれる所定の検知領域で、障害物を検知可能とする。前詰めセンサ6は、3つの衝突防止センサ5と同様にして超音波センサである。図2に示すように、前詰めセンサ6は、本体部3aの前面上側に取り付けられており、ビークル3の前方における障害物を検知可能とする。図1において、前詰めセンサ6は、検知領域として、本体部3aの前面から走行方向へ距離L4をとった領域(即ち、本発明に係る「第3範囲」の一例)を設定している。図1に示すように、距離L4は、距離L2,L3より短く設定されており、障害物が前走ビークル3xであることに関わらず、ビークル3が何かしらの障害物に衝突することを防止する距離(言い換えれば、ビークル3及び前走ビークル3x間の車間距離、並びに前詰め距離)として設定される。前詰めセンサ6は、設定された検知領域に障害物が存在している場合に、障害物がある旨の信号を制御部9に送る。
【0034】
前走検出センサ7は、本発明に係る「受信手段」の一例として、受光部のみを備える受光センサであって、3つの衝突防止センサ5の検知領域より広い所定の検出領域で、所定の光を受光する。図2に示すように、前走検出センサ7は、本体部3aの前面上側に取り付けられており、前走ビークル3xから後述する識別光を検出する。図1において、前走検出センサ7は、検知領域として、本体部3aの前面から走行方向へ距離L1をとった領域(即ち、本発明に係る「第2範囲」の一例)を設定している。図1に示すように、距離L1は、距離L2,L3,L4より長く設定される。前走検出センサ7は、設定された検出領域内で識別光を受光した場合に、前走ビークル3xが存在している(言い換えれば、障害物がビークル3である)旨の存在提示信号を制御部9に送る。
【0035】
投光部8は、本実施形態に係る「発信手段」の一例として、障害物を識別するための識別光を発光する。投光部8は、本体部3aの後面に取り付けられており、ビークル3の後方へ識別光を発光する。投光部8は、この発光によって、当該ビークル3の存在を示している。
【0036】
制御部9は、搬送コントローラ10からの搬送指示に従って、ビークル3の各部を制御する。制御部9は、本発明に係る「走行制御手段」の一例として、障害物の断定結果に応じて、ビークル3の走行を制御する。
【0037】
次に、制御部9の走行制御について説明する。
【0038】
制御部9は、前走検出センサ7で検出或いは受信された存在提示信号に基づいて、前走ビークル3xの有無を判定する。また、制御部9は、3つの衝突防止センサ5からの信号に基づいて、障害物が前走ビークル3xであると断定する。本実施形態では特に、ビークル3が所定の距離(例えば、200mm)走行する間に、3つの衝突防止センサ5による検出が確認される。即ち、3つの衝突防止センサ5の各々から、障害物がある旨の信号を受信することで、障害物が前走ビークル3xであると断定する。更に、制御部9は、前詰めセンサ6からの信号に基づいて、ビークル3を停止させるか否かを判定する。
【0039】
制御部9は、これら複数のセンサ5〜7の判定又は断定の結果に基づいて、不図示の駆動部を制御する。制御部9は、前走検出センサ7からの存在提示信号を受け取って前走ビークル3xが存在すると判定され、且つ障害物が前走ビークル3xであると断定された場合に、駆動部を制御して、ビークル3の走行速度を低速に切り替える。この後、制御部9は、複数のセンサ5〜7から受け取る信号に応じて、走行速度を通常通り又は低速に切り替える。この切り替えによって、ビークル3が前走ビークル3xに付き従うように走行する追走が可能となる。
【0040】
一方で、制御部9は、前走検出センサ7からの存在提示信号を受け取って前走ビークル3xが存在しないと判定され、且つ3つの衝突防止センサ5のうちの一つからでも信号を受け取った場合に、障害物と衝突するのを防止するために、ビークル3を停止させる。また、制御部9は、前走ビークル3xが存在すると判定され、且つ前詰めセンサ6から信号を受け取った場合にも、前走ビークル3xに追突するのを防止するために、ビークル3を停止させる。
【0041】
このように、制御部9は、前走ビークル3xの存在を検知した場合に、3つの衝突防止センサ5の検知領域より狭い前詰めセンサ6の検知領域内で前走ビークル3xが検知されるまで、ビークル3を停止させない。従って、前走ビークル3xの存在が検知されない場合と比較して、ビークル3と前走ビークル3xとの間の車間距離が、最小で前詰めセンサ6の検知領域(即ち、距離L4)まで短くなる(言い換えれば、前詰めされる)。
(走行制御処理)
【0042】
次に、本実施形態に係る搬送車の走行制御処理について図3を参照して説明する。図3は、本実施形態の走行制御処理を示すフローチャートである。尚、図3に示される走行制御処理において、図1に示すように、軌道1上を、前走ビークル3xに続いて、ビークル3が走行する場合を想定する。
【0043】
図3において、先ず、軌道1上を走行するビークル3の前走検出センサ7によって、前走ビークル3xの投光部8が発光している識別光が、受光されたか否かが判定される(ステップS51)。この判定の結果、受光されない場合に(ステップS51:NO)、ビークル3から距離L1をとった検出領域内に前走ビークル3xが存在しないとして、3つの衝突防止センサ5によって、ビークル3から距離L2,L3をとった2つの検出領域のうち、何れかの検出領域内に障害物が存在しているか否かが判定される(ステップS52)。この判定の結果、何れの検知領域内にも存在していない場合に(ステップS52:NO)、制御部9によって、ビークル3が通常速度で走行され(ステップS53)、ステップS51の処理が再度行われる。
【0044】
一方、ステップS52の判定の結果により、例えば距離L2をとった検知領域内に障害物が存在している場合に(ステップS52:YES)、障害物との衝突を防止するために、ステップS59の処理が行われる。
【0045】
一方、ステップS51の判定の結果により、識別光が受光された場合に(ステップS51:YES)、前走ビークル3xが存在しているとして、上述したステップS52の処理が行われる。ステップS52の判定の結果、何れの検知領域内にも前走ビークル3xが存在していない場合に(ステップS52:NO)、ビークル3が通常速度で走行され(ステップS54)、ステップS51の処理が再度行われる。
【0046】
一方、ステップS52の判定の結果により、3つの衝突防止センサ5によって、例えば、先ずビークル3から距離L2をとった検知領域内に前走ビークル3xが存在している場合に(ステップS52:YES)、もう1つの検知領域である、ビークル3から距離L3をとった検知領域内にも前走ビークル3xが存在しているか否かが判定される(ステップS55)。この判定の結果、もう1つの距離L3をとった検知領域内(言い換えれば、全ての検知領域内)に存在していない場合に(ステップS55:NO)、制御部9によって、例えば不図示のエンコーダによる検出値から、ビークル3が所定の距離(例えば、何れかの検知領域内での存在が最初に確認されてから200mm)走行したか否かが判定される(ステップS56)。この判定の結果、未だ所定の距離走行していない場合に(ステップS56:NO)、制御部9によって、ビークル3が所定の低速で走行され(ステップS60)、ステップS51の処理が再度行われる。
【0047】
一方、ステップS56の判定の結果により、全ての検知領域内に前走ビークル3xの存在が確認できずに、ビークル3が所定の距離走行した場合に(ステップS56:YES)、ステップS59の処理が行われる。
【0048】
一方、ステップS55の判定の結果により、もう1つの距離L3をとった検知領域内(言い換えれば、全ての検知領域内)に前走ビークル3xが存在している場合に(ステップS55:YES)、制御部9によって、ビークル3が所定の低速で走行される(ステップS57)。続いて、前詰めセンサ6によって、ビークル3から距離L4をとった検知領域内に前走ビークル3xが存在しているか否かが判定される(ステップS58)。この判定の結果、存在していない場合に(ステップS58:NO)、制御部9によって、ステップS51の処理が再度行われる。
【0049】
一方、ステップS58の判定の結果により、距離L4をとった検知領域内に前走ビークル3xが存在している場合に(ステップS58:YES)、制御部9によって、前走ビークル3xにビークル3が追突するのを防止するために、ビークル3が停止される(ステップS59)。これにより、一連の走行制御処理が終了される。
【0050】
このように、前走ビークル3xが移載等のために停止しても、後続の複数のビークル3について距離L4を最小長さとする車間距離を相互間でとることによって、複数のビークル3が、前走ビークル3xが停止する軌道1より他の軌道まで連なる事態を回避することが可能となる。従って、複数の軌道における渋滞を防止しつつ、ビークル3を効率よく走行させることが可能となる。
【0051】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施形態に係る搬送車及び前方走行車の一例を示す模式図である。
【図2】実施形態に係る複数のセンサの配置を示す模式図である。
【図3】実施形態に係る走行制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
1…軌道、3…搬送車、5…衝突防止センサ、6…前詰めセンサ、7…前走検出センサ、8…投光部、9…制御部、10…搬送コントローラ、100…搬送システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道に沿って走行すると共に、被搬送物を搬送する搬送車であって、
本体部と、
走行時に、前記本体部及び前記被搬送物の少なくとも一部が接触する可能性のある障害物を検知可能な第1検知手段と、
当該搬送車の存在を示す存在提示信号を、前記軌道における前記本体部の後方に向けて発信する発信手段と、
前記軌道における前記本体部の前方に存在すると共に、当該搬送車と同一構成を有する前方走行車が備える前記発信手段と同一構成を有する発信手段から発信された存在提示信号を受信する受信手段と、
前記第1検知手段により前記障害物が検知された場合に、前記検知された障害物への衝突を避けるように当該搬送車の走行を制御し、前記存在提示信号が受信されたことを条件に、前記検知された障害物と当該搬送車との間の車間距離が、前記存在提示信号が受信されない場合より短くなるように、当該搬送車の走行を制御する走行制御手段と
を備えることを特徴とする搬送車。
【請求項2】
前記第1検知手段は、前記第1検知手段を中心として所定の第1範囲内で、前記障害物を検知可能であり、
前記発信手段は、前記発信手段を中心として前記第1範囲よりも広い第2範囲内で受信可能となるように前記存在提示信号を発信し、
前記受信手段は、前記発信手段が前記第2範囲内に存在する場合に、前記存在提示信号を受信する
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送車。
【請求項3】
前記障害物を、前記第1範囲に含まれる第3範囲内で検知可能な第2検知手段を更に備え、
前記走行制御手段は、
前記存在提示信号が受信されず且つ前記障害物が前記第1範囲内で検知された場合、又は前記検知された障害物が前記第3範囲内で検知された場合に、当該搬送車が直ちに停止するように前記走行を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の搬送車。
【請求項4】
前記走行制御手段は、
前記障害物が前記第1検知手段により検知されてから、前記第2検知手段により検知されるまでの間、当該搬送車が低速で走行するように前記走行を制御する
ことを特徴とする請求項3に記載の搬送車。
【請求項5】
前記第1検知手段は、
前記前方走行車における後面の相異なる部分を、夫々検知可能な複数のセンサを有しており、
前記走行制御手段は、
前記存在提示信号が受信されたことを条件に、前記複数のセンサが同時期に前記障害物を前記部分で夫々検知した場合に、前記車間距離が、前記存在提示信号が受信されない場合より短くなるように、当該搬送車の走行を制御する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の搬送車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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