説明

携帯可能電子装置および携帯端末システム

【課題】複数の非接触ICカードアプリの中から実施の条件に応じた非接触ICカードアプリを選択するプロセスを簡略化する。
【解決手段】非接触通信チップ21を具備した携帯電話端末11に装着されるICカード10は、携帯電話端末11と通信を行うための接触インターフェース55と非接触インターフェース56とを有する。当該ICカード10は、非接触インターフェース56を用いた処理を行う複数のアプリケーションプログラムを記憶しておき、記憶しているアプリケーションプログラムのうち非接触インターフェース56を用いた処理が実行可能なアプリケーションプログラムを設定し、非接触リーダライタ13からのアクセス要求を非接触インターフェース56を介して受けた場合、非接触インターフェース56を用いた処理が実行可能と設定されているアプリケーションプログラムのみが非接触リーダライタ13に応答する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば、非接触ICカードの通信方式で外部機器と通信を行う複数のアプリケーションが実行可能なICカードなどの携帯可能電子装置およびICカードが装着された携帯電話端末などの携帯端末システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、欧州を始め海外の多くの国では、携帯電話システム方式として、GSM(Global System for Mobile communications)方式が存在している。GSM方式においては、携帯電話端末内にICカードの一種であるSIM(Subscriber Identitiy Module)カードを装着することが必須となっている。日本では、従来、SIMカードを必要としないPDC(Personal Digital Cellular)方式の携帯電話システムが存在している。近年、日本を始め、欧州などの地域では、3GPP(3rd Generation Partnership Project)規格を採用した携帯電話システムが普及してきている。3GPP規格では、SIMカードのように、USIM(Universal dentitiy Module)カードと呼ばれるICカードを携帯電話端末に装着することが必須となっている。
【0003】
上記GSMあるいは3GPPで使用されるSIMカードあるいはUSIMカードは、携帯電話端末に装着されるICカードである。SIMカードあるいはUSIMカードには、携帯通信システムに接続するのに必要な鍵情報、暗号アルゴリズム、各種ネットワークパラメータ、および、ユーザの個人情報などの情報が記録されている。このような携帯電話端末では、SIMカードあるいはUSIMカードに記憶されている情報を通信事業者のOTA(Over The Air)サーバあるいは認証サーバなどに送信し、これらのサーバと認証を行う。上記サーバとの認証が成功した携帯電話端末は、当該通信事業者の通信サービスを受けることが可能となる。
【0004】
特に上記3GPP規格の携帯電話端末に用いられるUSIMには、各通信事業者が提供する様々なアプリケーションが記憶される。また、上記USIMには、各ユーザごとにカスタマイズされた独自の情報が記憶されることも多くなってきている。さらに、近年では、大容量のメモリを有するUSIMの開発が進んでいる。大容量のメモリを有するUSIMでは、当該メモリにおけるユーザ領域を拡大することが可能となる。たとえば、携帯電話端末の内部メモリあるいは携帯電話端末に装着される外部メモリ(たとえば、メモリカード)に格納されるアドレス帳の情報などの個人情報もセキュリティが高いUSIMに格納されることが多くなってきている。
【0005】
上記USIMが装着される3GPP規格の携帯電話端末では、海外で利用するために、海外ローミングが可能なものが多くなってきている。上記海外ローミングを行う場合、USIMを3GPP規格の携帯電話端末から抜き取り、GSMで使用できる携帯電話端末にUSIMを差し替えて使用する方法が一般的である。さらに、近年では、3GPPとGSMで両方使用可能な携帯電話が市場に出てきており、海外でも3GPPネットワークが普及してきている。このように、現在では、携帯電話サービスがシームレスとなってきているため、携帯電話端末で利用するアプリケーションも、国内外と問わず利用可能であることが要望されている。
【0006】
一方、近年では、非接触ICカードの通信規格ISO/IEC14443に準拠するインターフェースを持つ携帯電話端末が多くなってきている。このような携帯電話端末は、種々の運用形態で利用されることが想定される。上記非接触ICカード機能を有する携帯電話端末は、非接触ICカードとして利用されたり、非接触ICカードリーダライタとして利用することが可能である。たとえば、上記携帯電話端末に搭載される非接触ICカードの機能は、クレジットカード型あるいはプリペイド型の電子マネーによる決済取引などに利用されることがある。このような非接触ICカード機能による処理は、携帯電話端末本体あるいはUSIM内に格納されるアプリケーションプログラムにより実現される。
【0007】
ただし、非接触ICカード機能により様々な処理を実現するためのアプリケーションプログラム(以下、非接触ICカードアプリとも称する)は、セキュリティ性および可搬性を考慮して、USIMにインストールすることを推奨する運用形態が多い。複数の非接触ICカードアプリがUSIMにインストールされると、どの非接触ICカードアプリを使用するか選択する必要が生じる。さらに、上記のような運用形態では、通常、1枚の非接触ICカードではビジネス的に同居を許されない非接触ICカードアプリあるいは類似の処理を行う非接触ICカードアプリが、1枚のUSIMに同居する状況となる。
【0008】
このように、複数の非接触ICカードアプリがUSIMにインストールされた場合、どの非接触ICカードアプリを使用するかは、リーダライタ(上位装置)側で選択する必要がある。この場合、リーダライタでは、所望の1つの非接触ICカードアプリを選択する処理手続きが必要になるため、処理に時間を要している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特願2004−207757号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ISO/IEC7816
【非特許文献2】ISO/IEC14443
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明の一形態は、複数のアプリケーションプログラムから所定の条件にマッチしたアプリケーションプログラムを効率的に選択することが可能となる携帯可能電子装置および携帯端末システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の一形態としての携帯可能電子装置は、非接触通信チップを具備した携帯端末機器に装着されるものにおいて、前記携帯端末機器と通信を行うための接触インターフェースと、前記非接触通信チップを用いて近距離無線通信を行うための非接触インターフェースと、前記非接触インターフェースを介して前記非接触通信チップによる近距離無線通信での処理を行う複数のアプリケーションプログラムを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶されている複数のアプリケーションプログラムのうち前記近距離無線通信でのアクセス要求に対して応答可能なアプリケーションプログラムを設定する設定部と、前記非接触インターフェースを介して前記近距離無線通信でアクセス要求を受けた場合、前記設定部により前記近距離無線通信でのアクセス要求に対して応答可能と設定されているアプリケーションプログラムのみが応答する処理部とを有する。
【0013】
この発明の一形態としての携帯端末システムは、携帯端末機器と携帯可能電子装置とを有するシステムにおいて、前記携帯端末機器は、携帯可能電子装置が装着されるインターフェースと、前記インターフェースを介して携帯可能電子装置とのデータ通信を行う制御ユニットと、前記インターフェースを介して携帯可能電子装置に接続され、近距離無線通信を行う非接触通信チップとを具備し、前記携帯可能電子装置は、前記携帯端末機器の制御ユニットと通信を行うための接触インターフェースと、前記非接触通信チップと接続するための非接触インターフェースと、前記非接触インターフェースを介して前記非接触通信チップによる近距離無線通信での処理を行う複数のアプリケーションプログラムを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶されている複数のアプリケーションプログラムのうち前記近距離無線通信でのアクセス要求に対して応答可能なアプリケーションプログラムを設定する設定部と、前記非接触インターフェースを介して前記近距離無線通信でアクセス要求を受けた場合、前記設定手段により前記近距離無線通信でのアクセス要求に対して応答可能と設定されているアプリケーションプログラムのみが応答する処理部とを有する。
【発明の効果】
【0014】
この発明の一形態によれば、複数のアプリケーションプログラムから所定の条件にマッチしたアプリケーションプログラムを効率的に選択することが可能となる携帯可能電子装置および携帯端末システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施の形態に係るICカードが装着される携帯端末機器としての携帯電話端末の構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、携帯電話端末の構成例を示すブロック図である。
【図3】図3は、ICカードのハードウエア的な構成例を示すブロック図である。
【図4】図4は、ICカード内におけるアプリケーションプログラムによる処理機能を説明するための図である。
【図5】図5は、アプリケーションリスト内の構成例を示す図である。
【図6】図6は、ICカードにインストールされている非接触ICカードアプリに携帯電話端末側で選択する例を説明するための図である。
【図7】図7は、アプリケーションリストの設定方法を説明するための図である。
【図8】図8は、アプリケーションリストにおいて各種の条件で開示可能な情報の範囲(領域)の設定例を示す図である。
【図9】図9は、非接触ICカードアプリによる処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、この発明の実施の形態に係るICカード10が装着される携帯端末機器としての携帯電話端末11の構成を概略的に示す図である。
本実施の形態に係る携帯端末機器としての携帯電話端末11は、無線通信事業者の通信システムにより提供されている通信サービス(音声通話、データ通信などの無線通信)を受ける機能を有している。事業者が提供する通信サービスは、当該事業者用のICカード10を装着した携帯電話端末11と当該事業者の通信システムとが無線通信を行うことにより提供されるようになっている。すなわち、各携帯電話端末11は、各ユーザが契約している事業者用のICカード10を装着した状態で携帯電話端末としての音声通話あるいはデータ通信などの無線通信が利用可能となっている。
【0017】
上記携帯電話端末11は、制御ユニット(ベースバンド)20、非接触通信チップ(近距離通信部)21、近距離無線通信(非接触通信)用のアンテナ22などを有している。また、上記携帯電話端末11には、ICカード10が着脱可能なインターフェースを有している。上述したように、上記携帯電話端末11は、ICカード10が装着された状態で携帯電話端末としての各種の機能が有効となるものである。
【0018】
上記制御ユニット20は、当該携帯電話端末11の制御を司るものである。上記制御ユニット20は、当該携帯電話端末11が携帯電話として機能するための種々の処理部を有する。なお、上記制御ユニット20内の構成例については、後で詳細に説明するものとする。
【0019】
上記非接触通信チップ21とアンテナ22とは、非接触ICカードとしての通信機能を実現するためのユニットである。図1に示すように、上記非接触通信チップ21およびアンテナ22は、非接触ICカードとしての通信機能により、非接触リーダライタ13との近距離無線通信が可能となっている。なお、上記非接触通信チップ21およびアンテナ22による通信機能についても、後で詳細に説明する。
【0020】
次に、上記携帯電話端末11の構成について詳細に説明する。
図2は、上記携帯電話端末11の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、携帯電話端末11は、主制御部31、RAM32、ROM33、不揮発性メモリ34、ICカードインターフェース35、非接触通信チップ21、アンテナ22、アンテナ37、通信部38、音声部39、表示部40、操作部41、電源部42などを有している。
【0021】
上記主制御部31は、携帯電話端末11内の各部を制御するものである。上記主制御部31は、CPU、内部メモリ、各種のインターフェースなどを有している。上記主制御部31は、各種のインターフェースなどを介して上記各部と接続される。たとえば、上記主制御部31は、その基本機能として、上記表示部40の表示を制御する表示制御機能、PLL(Phase Locked Loop)回路、データストリーム経路切換え、DMA(Direct Memory Access)コントローラ、割り込みコントローラ、タイマ、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)、秘匿、HDLC(High-level Data Link Control procedure)フレーミング、ディバイスコントローラなどの機能を有している。
【0022】
上記RAM32は、作業用のデータを記憶するための揮発性メモリである。上記ROM33は、制御プログラムや制御データなどが記憶されている不揮発性メモリである。上記ROM33は、不揮発性メモリである。たとえば、上記ROM33には、当該携帯電話端末11の基本的な制御を行うための制御プログラムおよび制御データが予め記憶されている。すなわち、上記主制御部31は、上記ROM33に記憶されている制御プログラムを実行することにより、当該携帯電話端末11の基本的な制御を実現している。
【0023】
上記不揮発性メモリ34は、種々のデータが記憶される書き換え可能な不揮発性メモリである。上記不揮発性メモリ34には、携帯電話端末11用の種々のアプリケーションプログラム、制御データ、および、ユーザデータなどが記憶される。たとえば、上記主制御部31は、上記不揮発性メモリ34に記憶されているアプリケーションプログラムを実行することにより、携帯電話としての種々の機能を実現するようになっている。
【0024】
上記ICカードインターフェース35は、ICカード10が装着されるインターフェースである。上記ICカードインターフェース35は、上記主制御部31に接続されている。これにより、上記制御ユニット20は、上記ICカードインターフェース35を介して上記ICカード10とのデータ通信(接触通信)が可能となっている。また、上記ICカードインターフェース35に装着されるICカード10は、当該ICカードインターフェース35を介して非接触通信チップ21に接続され、上記制御ユニット20を介さずに上記非接触通信チップ21及びアンテナ22による近距離無線通信(非接触通信)で非接触リーダライタ13と通信する機能が実現されている。
【0025】
上記非接触通信チップ21には、近距離無線通信用のアンテナ22が接続されている。上記非接触通信チップ21は、上記近距離通信用のアンテナ22を介して非接触リーダライタ13との近距離無線通信を行う。上記非接触通信チップ21およびアンテナ22による近距離無線通信は、非接触ICカードの無線通信と同等の無線通信であるものとする。すなわち、上記非接触通信チップ21およびアンテナ22は、電磁結合により接続状態となった非接触リーダライタ13と近距離無線通信を行うものである。また、上記非接触通信チップ21およびアンテナ22は、非接触ICカードと同様に、非接触リーダライタ13との間で、所定のコマンドとレスポンスとを繰り返し送受信することにより通信を行うものとなっている。
【0026】
上記通信部38には、携帯電話通信用のアンテナ37が接続される。上記通信部38は、上記アンテナ37を介して通話データあるいはデータ通信用のデータを電波で送受信するものである。上記音声部39は、アナログフロントエンド部及びオーディオ部を有し、音声の入出力を行うものである。上記音声部39には、図示しないスピーカ、レシーバ、マイクなどが接続されている。
【0027】
上記表示部40は、たとえば、表示制御部により構成される。上記表示部40は、液晶表示装置などの表示装置が接続される。上記表示部40は、上記主制御部31の制御に基づいて表示内容などを制御するようになっている。また、携帯電話端末11がシェル型などの形状である場合、上記表示部40としては、筐体を開放した場合に現れるメインの表示部と筐体の背面に設けられるサブの表示部とから構成されるようにしても良い。上記操作部41は、操作部インターフェースおよびキーボードなどの操作装置により構成される。上記操作部41は、ユーザによる操作指示が入力される。
【0028】
上記電源部42は、バッテリーなどにより構成され、当該携帯電話端末11内の各部に電源を供給するようになっている。また、上記電源部42は、上記ICカードインターフェース35を介して接続されたICカード10および上記非接触通信チップ21にも電源を供給するようにしても良い。
【0029】
次に、上記のような携帯端末機器としての携帯電話端末11に装着される携帯可能電子装置としてのICカード10の構成について説明する。
上記ICカード10は、上記のような携帯端末機器としての携帯電話端末11に着脱可能な構成を有している。上記ICカード10は、例えば、基本仕様として、ISO/IEC14443仕様、ISO/IEC7816仕様などを満たすものである。
図3は、上記ICカード10のハードウエア的な構成例を示すブロック図である。図3に示すように、ICカード10は、制御部51、ROM52、RAM53、不揮発性メモリ54、接触インターフェース(I/F)55および非接触インターフェース(I/F)56などを有している。
【0030】
上記制御部51は、当該ICカード10全体の制御を司るものである。上記制御部51は、上記ROM52あるいは不揮発性メモリ54に記録されているプログラムに基づいて種々の処理を実行することにより種々の機能を実現するものである。上記ROM52は、当該ICカードの基本的な動作を実現するための制御プログラム及び制御データなどが記憶される。上記RAM53は、一時的にデータを格納するワーキングメモリとして機能する。
【0031】
上記不揮発性メモリ54は、たとえば、EEPROMやフラッシュメモリ等により構成される。上記不揮発性メモリ54は、各種の認証データ、ユーザデータ、あるいは、アプリケーションプログラム(以下、単にアプリケーションとも称する)などが記憶される。上記不揮発性メモリ54には、外部のサーバからダウンロードしたデータなども記憶される。また、上記不揮発性メモリ54の一部または全部の領域は、耐タンパ性を有している。これにより、上記不揮発性メモリ54には、セキュアにデータが格納できるようになっている。上記インターフェース55は、上記携帯電話端末11との通信を行うためのユニットである。
【0032】
また、上記耐タンパ性を有する上記不揮発性メモリ54には、アプリケーションプログラムおよびデータベースなどがセキュアに記憶される。たとえば、上記不揮発性メモリ54には、認証処理用のアプリケーション、非接触ICカードアプリケーション、データベースなどが記憶される。上記制御部51は、たとえば、上述した各アプリケーションをオペレーティングシステム(OS)上で動作させることにより各アプリケーションによる処理を実行する。
【0033】
上記接触インターフェース(I/F)55は、携帯電話端末11のICカードインターフェース35を介して、携帯電話端末11本体の制御ユニットとしての携帯電話端末ベースバンド20と接続するインターフェースである。つまり、上記ICカード10は、上記接触インターフェース55を介して携帯電話端末11本体からアクセスされる。
上記非接触インターフェース(I/F)56は、携帯電話端末11のICカードインターフェース35を介して、携帯電話端末11内の非接触通信チップ21に接続するためのインターフェースである。つまり、上記ICカード10は、非接触インターフェース56と携帯電話端末11の非接触通信チップ21と携帯電話端末11のアンテナ22とにより非接触ICカードとして機能するように構成されている。
【0034】
なお、上記ICカード10には、上記接触I/F55および上記非接触I/F56の他に、第3のインターフェースを設けるようにしても良い。たとえば、第3のインターフェースとしては、USBインタフェースなどが想定される。この場合、USBインターフェースを介して携帯電話端末11側に設けられたUSB用の端子に接続された機器とICカード10とが直接的に通信を行うような運用形態も実現できる。
【0035】
次に、上記ICカード10内の各アプリケーションプログラムの動作について概略的に説明する。
図4は、上記ICカード10内におけるアプリケーションプログラムによる処理機能を説明するための図である。
図4に示すように、ICカード10内においてソフトウエアにより非接触ICカードとしての種々の処理(サービス)を実現するシステムは、接触I/F55、非接触I/F56、プラットフォーム61、アプリケーション管理部62、複数のアプリケーションプログラム63a、63b、63c、アプリケーションリスト64、アイコンデータベース65などにより実現される。また、図4に示す構成例は、接触I/F55および非接触I/F56が含まれる階層をH/W層、プラットフォームが含まれる階層をOS層、複数のアプリケーションプログラム、アプリケーションリストおよびアイコンデータが含まれる階層をアプリケーション層と称するモデルとして表現することが可能である。
【0036】
図4に示すように、ICカード10は、接触インターフェース55および非接触インターフェース56の少なくとも2つの通信インターフェースをサポートしている。上記接触インターフェース55は、携帯電話端末11のベースバンド20に接続される。これにより、上記接触インターフェース55は、携帯電話端末11のベースバンド20からの信号をハンドリングする。上記非接触インターフェース56は、非接触通信チップ21に接続される。これにより、上記非接触インターフェース56は、非接触通信チップ21からの信号をハンドリングする。たとえば、ICカード10がUSIMとして機能する電子装置である場合、プラットフォーム61とアプリケーション管理部62とは、ジャバ(登録商標)カード(Java(登録商標) Card)仕様とグローバルプラットフォーム(Global Platform)仕様に準拠するものが想定される。
【0037】
上記プラットフォーム61は、当該ICカード10における基本的な制御を実行する機能である。上記プラットフォーム61は、たとえば、制御部51が実行するOS(オペレーティングシステム)プログラムにより実現される。また、上記プラットフォーム61としては、環境設定モジュール、アプリケーションインターフェース群などのモジュールなどを有するようにしても良い。上記プラットフォームとしてのソフトウエアは、当該ICカード10の基本的な動作を司るプログラムであり、各種のハードウエアを制御したり、各種のハードウエアからの処理結果などの情報を受けて動作したりするプログラムである。上記プラットフォーム61としてのソフトウエアは、ICカード10内における不揮発性のメモリに予め記憶されているものであり、たとえば、上記ROM52あるいは不揮発性メモリ54に記憶される。
【0038】
上記アプリケーション管理部62は、各アプリケーションプログラムを管理する機能である。上記アプリケーション管理部62は、たとえば、制御部51が実行するアプリケーション管理プログラムにより実現される。上記アプリケーション管理部62としてのソフトウエアは、ICカード10内における不揮発性のメモリに予め記憶されているものであり、たとえば、上記ROM52あるいは不揮発性メモリ54に記憶される。
【0039】
上記各アプリケーションプログラム63a、63b、63cは、当該ICカード10が携帯電話端末11を用いて提供(格納)する各種の機能である。ここでは、各アプリケーションプログラム63a、63b、63cは、本携帯電話端末11に搭載される非接触ICカードの機能(非接触通信チップ21およびアンテナ22)を用いた様々なサービスを実現するためのアプリケーションプログラム(以下、非接触ICカードアプリとも称する)であるものとする。上記各アプリケーションプログラム63a、63b、63cは、たとえば、制御部51により選択的に実行される。上記各アプリケーションプログラム63a、63b、63cは、ICカード10内における不揮発性のメモリに記憶される。たとえば、上記各アプリケーションプログラム63a、63b、63cは、上記不揮発性メモリ54あるいはROM52に記憶される。
【0040】
上記非接触ICカードアプリとしては、近距離無線通信(非接触ICカードの通信方式)によりクレジットカード型あるいはプリペイド型の電子マネーとしての決済取引を行うアプリケーション(決済アプリケーション)、近距離無線通信により施設利用などの特定のサービス(会員サービス)などを受けるための証明書として機能するアプリケーション、近距離無線通信により物品購入あるいはサービスの利用などの実績に応じたポイントが付与されるアプリケーションなどの様々なアプリケーションが考えられる。
【0041】
たとえば、非接触ICカードアプリとしての決済アプリケーションは、近距離無線通信によりクレジットカード型あるいはプリペイド型の電子マネーとしての決済取引を行う。上記決済アプリケーションによる決済取引は、当該ICカード10が装着された携帯電話端末11を所持する人物(ICカードの使用者)が物品購入などの代金の決済などに用いられる。たとえば、上記決済アプリケーションは、非接触リーダライタ13から与えられるコマンドに応じて決済アプリケーションが起動する。所定の認証処理による認証が成功した場合、上記制御部51により実行される決済アプリケーションは、上記携帯電話端末11の非接触通信チップ21とリーダライタ13とが近距離無線通信を行うことにより決済取引を行う。
【0042】
上記アプリケーションリスト64は、当該ICカード10に記憶(インストール)されている各アプリケーションプログラムに対する設定内容を示す情報である。図4に示す例では、上記アプリケーションリスト64は、各アプリケーションプログラム63a、63b、63cを一覧で示す情報である。上記アプリケーションリスト64の構成例については、後で詳細に説明するものとする。
【0043】
また、上記アプリケーションリスト64は、不揮発性メモリ54に記憶され、不揮発性メモリ54上で更新されるようにしても良いし、ICカード10が活性化された場合にRAM53上に読み出されてRAM53上で更新されるようにしても良い。不揮発性メモリ54上で更新される場合、上記アプリケーションリスト64は、ICカード10が不活性化された場合(ICカード10の電源がオフされた場合)であっても、更新された内容が保持される。この結果として、1度更新された内容は、再度ICカード10が活性化された場合にも有効となる。
【0044】
また、RAM53上に読み出されたアプリケーションリスト64が更新される場合、上記アプリケーションリスト64は、ICカード10が不活性化された場合に、更新された内容が消去される。つまり、ICカード10が活性化された際にRAM53上に読み出されたアプリケーションリスト64が更新される形態では、ICカード10が活性化されてから不活性化されるまでの間、更新内容が有効となり、再度ICカード10が活性化された場合(再起動された場合)にはアプリケーションリスト64はリセットされる。
【0045】
上記アイコンデータベース65は、各アプリケーションプログラム63a、63b、63cに対応するアイコンデータ65a、65b、65cを格納している。つまり、特定のアプリケーションプログラムをユーザが選択するための選択画面において、上記アイコンデータ65a、65b、65cが携帯電話端末11の表示部(図示しない)に表示される。このため、アイコンデータ65a、65b、65cは、それぞれ対応するアプリケーションプログラムにより提供されるサービスが直感的に認識しやすい図柄が設定される。
【0046】
上記ICカード10にインストールされるアプリケーションプログラム63は、各ユーザごとに異なるが、上記アプリケーションリスト64および上記アイコンデータベース65は、全てのユーザのICカード10に実装される。なお、図4に示す構成例では、認証処理に関するアプリケーションあるいは認証データなどに関しては図示していない。通常、ICカード10内の不揮発性メモリ54には、複数のアプリケーションプログラム63a、63b、63c、アプリケーションリスト64およびアイコンデータベース65の他に、認証処理に用いられるアプリケーションなどのアプリケーションおよび各種のデータが記憶される。これらのアプリケーションおよびデータは、図4では図示していない。
【0047】
また、上記携帯電話端末ベースバンド20は、携帯電話端末11の携帯電話としての機能を司る制御ユニットである。たとえば、上記携帯電話端末ベースバンド20は、図4に示すように、表示機能および選択機能を有している。上記表示機能では、たとえば、各アプリケーションプログラム63に対応するアイコンを表示部40により表示する機能を有する。上記選択機能としては、表示機能により表示したアイコンに対応するアプリケーションプログラムを操作部41を用いてユーザに選択させる機能を有する。
【0048】
次に、本ICカード10にインストールされているアプリケーションプログラムの動作について概略的に説明する。
まず、携帯電話端末ベースバンド(制御ユニット)20は、ICカード10に対してアプリケーションリスト64を要求する。この要求に応じて、ICカード10は、アプリケーションリスト64を携帯電話端末11の制御ユニット20へ供給する。これにより、携帯電話端末11の制御ユニット20は、ICカード10に実装されている非接触ICカードアプリのアプリケーションID(AID)を示すアプリケーションリスト64を取得する。
【0049】
上記ICカード10からアプリケーションリスト64を取得すると、制御ユニット20は、各アプリケーション(AID)に対応するアイコンデータをICカード10に要求する。この要求に応じて、ICカード10は、アイコンデータを携帯電話端末ベースバンド20へ供給する。これにより、携帯電話端末の制御ユニット20は、ICカード10に実装されている非接触ICカードアプリに対応するアイコンデータを取得する。
【0050】
取得したアプリケーションリスト64における各AIDに対応するアイコンデータを取得すると、携帯電話端末の制御ユニット20は、取得したアイコンデータに基づくアイコンを上記表示機能により表示する。上記表示機能により表示したアイコンは、上記選択機能によりユーザが選択する。上記選択機能によりユーザが1つのアイコンを選択すると、携帯電話端末の制御ユニット20は、選択されたアイコンに対応するアプリケーションを非接触ICカードの機能として開示(非接触インターフェース56から参照)可能なアプリケーションリストの範囲を設定する。
【0051】
たとえば、アプリケーション63aに対応するアイコンが選択された場合、携帯電話端末の制御ユニット20は、アプリケーション63aのみを非接触ICカードとして開示可能なアプリケーションリストの範囲として設定する。このような設定がなされたICカード10では、リーダライタ13から非接触通信チップを経由してアクセスされた場合、アプリケーション63aのみをアプリケーションリストとして開示する。このため、アプリケーション63aを使用した非接触ICカードとしてのサービスは、リーダライタ13側での簡単な操作で提供できる。
【0052】
次に、上記アプリケーションリスト64の構成例について説明する。
図5は、上記アプリケーションリスト64内の構成例を示す図である。
図5に示す構成例では、アプリケーションリスト64は、各アプリケーションプログラムごとのデータ列71、72、73により構成される。各アプリケーションプログラムごとのデータ列71、72、73は、それぞれアプリケーションID(AID)81、アプリケーション名(データ)82、第1パラメータ83、第2パラメータ84、第3パラメータ85、第4パラメータ86により構成されている。
【0053】
上記アプリケーションID81は、対応するアプリケーションプログラムに固有な識別情報としてのID情報である。上記アプリケーション名82は、対応するアプリケーションプログラムに与えられる名称もしくは固有データである。上記第1〜第4パラメータ83〜86は、対応するアプリケーションプログラムの設定状況を示す情報群である。図5に示す例では、第1〜第4パラメータ83〜86は、それぞれ2〜4ビット程度で表される情報である。
【0054】
第1パラメータ83および第2パラメータ84は、各アプリケーションがどのインターフェースからのアクセスに対して開示可能かを示す情報が格納される。言い換えると、第1パラメータ83および第2パラメータ84に設定される情報により各アプリケーションがどのインターフェースから参照可能となるかが設定される。なお、ここでは、接触インターフェース55からのアクセスに対しては、全てのアプリケーションプログラム(非接触ICカードアプリ)が開示(参照)可能であるとする。つまり、接触インターフェース55からのアクセスに対しては、全てのアプリケーションプログラム(非接触ICカードアプリ)を示すアプリケーションリスト64全体が開示される。
【0055】
上記第1パラメータ83は、上記非接触インターフェース56からのアクセスに対して開示可能か否かを示す情報が格納される。たとえば、図5に示す例では、各アプリケーションプログラムは、第1パラメータ83が「1」である場合には非接触インターフェース56からのアクセス要求に対して開示(参照)可能とし、第1パラメータ83が「0」である場合には非接触インターフェース56からのアクセス要求に対して開示しない(参照不可)とする。
【0056】
また、上記第2パラメータ84は、上記接触I/F55及び上記非接触I/F56以外の第3のインターフェースからのアクセスに対して開示可能か否かを示す情報が格納される。たとえば、図5に示すように、第3のインターフェースの例としてはUSBインターフェースなどが考えられる。この場合、各アプリケーションプログラムは、第2パラメータ84が「1」である場合にはUSBインターフェースからのアクセス要求に対して開示(参照)可能とし、第2パラメータが「0」である場合にはUSBインターフェースからのアクセス要求に対して開示しない(参照不可)とする。
【0057】
第3パラメータ85および第4パラメータ86は、各アプリケーションがどの通信プロトコルでのアクセスに対して開示可能かを示す情報が格納される。言い換えると、第3パラメータ85および第4パラメータ86に設定される情報により各アプリケーションがどの通信プロトコルでの通信によって参照可能となるかが設定される。
【0058】
たとえば、上記第3パラメータ85は、各アプリケーションプログラムが、上記非接触インターフェース56による近距離無線通信において、どのような通信プロトコルでのアクセスに対して開示可能か否かを示す情報が格納される。ただし、上記第3パラメータ85は、第1パラメータ83での設定が「1」(つまり、非接触I/F56で開示可能)となっている場合にのみ実質的に有効となる。言い換えると、第1パラメータ83での設定が「0」である場合、非接触I/F56での開示が不可となるため、第3パラメータ85の設定内容は実質的に無効となる。
【0059】
たとえば、図5に示す例では、各アプリケーションプログラムは、第3パラメータ85が「0」である場合には全ての通信プロトコルでの通信によって開示(参照)可能とし、第3パラメータ85が「1」である場合にはタイプA(ISO/IEC14443で規定されているtypeA)の通信プロトコルでの通信によって開示(参照)可能とし、第3パラメータ85が「2」である場合にはタイプB(ISO/IEC14443で規定されているtypeB)の通信プロトコルでの通信によって開示(参照)可能とし、第3パラメータ85が「3」である場合には独自仕様の通信プロトコルでの通信によって開示(参照)可能とする。
【0060】
また、上記第4パラメータ86は、各アプリケーションプログラムが、上記第3のインターフェース(USB)による通信において、どのような通信プロトコルでのアクセスに対して開示可能か否かを示す情報が格納される。ただし、上記第4パラメータ86は、第2パラメータ84での設定が「1」(つまり、USBI/Fで開示可能)となっている場合にのみ実質的に有効となる。
【0061】
上記のような第1〜第4パラメータ83〜86によれば、各アプリケーションプログラムは、各種のインターフェースあるいは各種の通信プロトコルに応じて開示(参照)可能か否かを設定することができる。たとえば、図5に示す構成例において、第1パラメータ83が「1」、第2パラメータ84が「0」、第3パラメータ85が「2」、第4パラメータ86が「0」に設定されているアプリケーションプログラムは、接触I/F55での通信の他、非接触I/F56によるタイプBの通信プロトコルでの通信によってのみ参照可能となる。
【0062】
次に、ICカード10にインストールされているアプリケーションプログラムの選択機能について説明する。
図6は、ICカード10にインストールされている非接触ICカードアプリを携帯電話端末11側で選択する例を説明するための図である。
携帯電話端末ベースバンド(制御ユニット)20では、制御部31がICカード10から非接触ICアプリの一覧を示すアプリケーションリストを取得する。制御部31は、さらに、取得したアプリケーションリスト64における各アプリケーションIDに対応するアイコンデータをICカード10から取得する。各アプリケーションに対応するアイコンデータを取得すると、制御部31は、図6に示すように、取得したアイコンデータに基づいて各アプリケーションに対応するアイコン91、92、93を表示部40により表示する。
【0063】
たとえば、図6に示す例では、アイコン92は、アプリケーション63bに対応している。この場合、図6に示すように、アプリケーション63bに対応するアイコン92は、アイコンデータベース65内のアイコンデータ65bおよびアプリケーションリスト64内のデータ列72に対応している。また、図6に示す例では、アイコン91は、アプリケーション63aに対応し、アイコン93は、アプリケーション63cに対応する。
【0064】
また、図6に示す例において、アプリケーション63aは、サービスXを提供するアプリケーションであり、そのサービス内容を示す図柄が対応するアイコン91として表示されている。また、アプリケーション63bは、サービスYを提供するアプリケーションであり、そのサービス内容を示す図柄が対応するアイコン92として表示され、アプリケーション63aは、サービスZを提供するアプリケーションであり、そのサービス内容を示す図柄が対応するアイコン93として表示される。このようなアイコン91、92、93は、たとえば、携帯電話端末11に設けられているキーボード(図示しない)によりユーザが選択できるようにしても良い。たとえば、キーボードにおける複数のキー(たとえば、「*」、「0」、「#」)に各サービスX、Y、Zを割り当て、対応するキーをユーザが押すことにより、非接触ICカードアプリが選択可能となる。この場合、ユーザが選択した非接触ICカードアプリに応じた上記各パラメータの設定が可能となる。
【0065】
なお、上記アイコンデータベース65は、セキュアなICカード10内に実装されている。このため、アイコンにおいて表示するサービス内容を示す図柄(ロゴ)自体にセキュリティ性が必要な場合であっても、アイコンデータ自体のセキュリティも確保できる。また、アイコンデータベース65内の各アイコンデータ65a、65b、65cは、携帯電話端末11からメンテナンスすることも可能である。たとえば、携帯電話端末11は、オペレータのシステムからの供給に応じて適宜アイコンデータをアップデートすることも可能である。
【0066】
次に、上記アプリケーションリスト64の設定方法について説明する。
図7は、上記アプリケーションリスト64の設定方法を説明するための図である。
図7では、上記アプリケーションリスト64の設定方法の一例として、アイコン92により選択可能なアプリケーション63bに関する設定を更新する手順を模式的に示している。
すなわち、ユーザが携帯電話端末11の表示部40により表示された各サービスに対応する複数のアイコンから希望のサービスとしてアイコン92を選択したものとする。すると、携帯電話端末11の制御部31は、ユーザが選択したアイコン92(あるいはアイコン92に対応するアプリケーション63b)を示す情報とともに、アプリケーションリスト64の更新をICカード10へ要求する。
【0067】
すると、ICカード10の制御部51は、更新が要求されたアイコン92に対応するアプリケーションIDをアイコンデータベース65により特定する。更新が要求されたアプリケーションIDを特定すると、ICカード10の制御部51は、アプリケーションリスト64から当該アプリケーションIDに対応するデータ列72を選択する。ここでは、希望のサービスとしてユーザがアイコン92を選択したことを想定している。このため、上記制御部51は、アイコン92およびアプリケーション63bに対応するアプリケーションリスト64内のデータ列72における設定を更新する。パラメータ83〜86は携帯電話11のキーボードにより更新することも可能である。
【0068】
すなわち、上記制御部51は、アプリケーションリスト64内のデータ列72において、アプリケーション63bが非接触インターフェース56からアクセスできるような設定内容に更新する。たとえば、図5に示す構成例では、データ列72の第1パラメータ83を「1」に更新することにより、アプリケーション63bが非接触インターフェース56で開示可能となる。
【0069】
なお、上記のように、ユーザが選択したアプリケーションを非接触I/F56でアクセス可能とするため、アプリケーションリスト64内の各データ列72の初期値では、各アプリケーション63bが非接触インターフェース56で開示されないような設定とする。つまり、各アプリケーションに対する初期設定として非接触インターフェース56での開示を不可としておくことにより、ユーザが選択したアプリケーションのみを非接触インターフェース56での開示が可能となるような設定に更新する処理が可能となる。
【0070】
また、図8は、アプリケーションリスト64において各種の条件で開示可能とする情報の範囲(領域)の設定例を示す図である。
図8に示す例では、第1条件で開示可能な情報群を領域R1とし、第2条件で開示可能な情報群を領域R2とし、第3条件で開示可能な情報群を領域R3として模式的に示している。たとえば、アプリケーションリスト64が図5に示すような構成例である場合、第1〜第3条件としては、インターフェースと通信プロトコルとの組合せが考えらえる。具体例としては、第1条件が非接触インターフェースかつ全通信プロトコルで、第2条件が非接触インターフェースかつ通信プロトコルがタイプAで、第3条件が非接触インターフェース、かつ、通信プロトコルがタイプBであるとする。この場合、図8に示すように、上述した第1、第2、第3条件に対応して開示(参照)可能となるアプリケーションプログラムを示す情報が格納される範囲(領域)R1、R2、R3が設定される。
【0071】
次に、本ICカード10にインストールされているアプリケーションプログラム(非接触ICカードアプリ)による処理の流れについて説明する。
図9は、非接触ICカードアプリによる処理の流れを説明するためのフローチャートである。
まず、携帯電話端末ベースバンド(制御ユニット)20において、制御部31は、ICカード10に対してアプリケーションリスト64を要求する(ステップS11)。
当該携帯電話端末11に装着されているICカード10では、接触インターフェース55を介して携帯電話端末ベースバンド(制御ユニット)20からのアプリケーションリスト64の要求を受信する。ここでは、接触インターフェース55からのアクセスに対しては、全てのアプリケーションプログラムが参照可能となっているものとしている。このため、ICカード10は、インストールされている全てのアプリケーションを示すアプリケーションリスト64を接触インターフェース55を介して携帯電話端末ベースバンド20へ送信する(ステップS12)。
【0072】
上記ICカード10からアプリケーションリスト64を受信すると、携帯電話端末ベースバンドにおいて制御部31は、当該アプリケーションリスト64に含まれる各アプリケーションID(AID)に対応するアイコンデータをICカード10に要求する(ステップS13)。
上記ICカード10では、上記接触インターフェース55を介して携帯電話端末ベースバンド(制御ユニット)20からのアイコンデータの要求を受信する。この要求を受信すると、ICカードの制御部51は、アイコンデータベース65から各AIDに対応するアイコンデータを抽出し、抽出した各AIDのアイコンデータを接触インターフェース55を介して携帯電話端末ベースバンド20へ送信する(ステップS14)。
【0073】
上記ICカード10から各AIDのアイコンデータを受信すると、携帯電話端末ベースバンド20の制御部31は、アイコンにより所望のアプリケーションプログラムをユーザに選択させる処理を行う(ステップS15)。すなわち、制御部31は、取得したアイコンデータに基づくアイコンを表示部40により表示する。たとえば、制御部31は、図6あるいは図7に示すような表示画面を上記表示部40により表示する。上記表示部40により表示画面上に各アプリケーションに対応する各アイコンを表示した状態において、制御部31は、操作部41によりユーザが特定のアイコンを選択するのを待つ。
【0074】
このような状態においてユーザが操作部41により特定のアイコンを選択すると、制御部31は、ユーザが選択したアイコンに対応する非接触ICカードアプリを近距離無線通信(非接触通信)で利用可能な状態にする設定を行う。すなわち、携帯電話端末11の制御部31は、ユーザが選択したアイコンに対応する非接触ICカードアプリを非接触インターフェース56で開示可能となるようなアプリケーションリスト64の設定変更をICカード10に要求する(ステップS16)。
【0075】
上記ICカード10では、上記接触インターフェース55を介して携帯電話端末ベースバンド20から特定のアイコンに対応する非接触ICカードアプリに対する設定変更要求を受信する。この要求を受信すると、ICカード10の制御部51は、アプリケーションリストの更新処理を行う(ステップS17)。この更新処理は、非接触インターフェース56で開示可能となる範囲(アプリケーション)の設定でもある。
【0076】
すなわち、ICカード10の制御部51は、アプリケーションリスト64において、ユーザが選択したアイコンに対応する非接触ICカードアプリのデータ列を特定する。ユーザが選択した非接触ICカードアプリのデータ列を特定すると、ICカード10の制御部51は、特定したデータ列におけるパラメータを非接触インターフェース56で開示可能となるような設定に更新する。たとえば、図5に示すような構成例のアプリケーションリスト64に対しては、選択された非接触ICカードアプリのデータ列における第1パラメータ83の値を「1」に更新する。
【0077】
これにより、ユーザが選択した非接触ICカードアプリは、非接触インターフェース56からのアクセスに対して開示される。このような設定が完了すると、ICカードの制御部51は、アプリケーションリスト64の更新完了を示す応答を接触インターフェース55を介して携帯電話端末ベースバンド20へ送信する(ステップS18)。
上記ステップS11〜S18の処理により、ユーザの選択に応じて特定の非接触ICカードアプリを使用可能とする設定が完了する。
【0078】
上記のような設定か完了した状態において、上記携帯電話端末11に装着されているICカード10は、非接触インターフェース56により携帯電話端末11内の非接触通信チップ21およびアンテナ22を介した近距離無線通信(非接触通信)が可能な状態となっている。このような状態において、非接触リーダライタ13が送信したアプリケーションリストの要求は、携帯電話端末11内の非接触通信チップ21およびアンテナ22により受信される。非接触通信チップ21およびアンテナ22が受信したアプリケーションリスト要求は、非接触インターフェース56によりICカード10が受信する。
【0079】
すなわち、上記ICカード10では、アンテナ22、非接触通信チップ21および非接触インターフェース56を介してリーダライタ13からのアプリケーションリスト要求を受信する。このような要求を受信すると、ICカード10の制御部51は、アプリケーションリスト64から非接触インターフェース56で開示可能なアプリケーションプログラムを抽出する。なお、ここでは、通信プロトコルについては特に指定されていないものとする。従って、図5に示す構成のアプリケーションリストでは、非接触インターフェース56で開示可能なアプリケーションプログラムとして、上記第1パラメータ83が「1」に設定されたデータ列が抽出される。
【0080】
非接触インターフェース56で開示可能なアプリケーションプログラムを抽出すると、ICカード10の制御部51は、抽出したアプリケーションプログラムをリストアップしたアプリケーションリストを生成する。開示可能なアプリケーションプログラムを抽出したリストを生成すると、ICカード10の制御部51は、生成したリストを接触インターフェース55を介して、携帯電話端末11内の非接触通信チップ21およびアンテナ22によりリーダライタ13へ送信する(ステップS22)。
【0081】
上記ICカード10からアプリケーションリストを受信したリーダライタ13は、受信したリストに含まれるアプリケーションプログラムから使用すべき1つのアプリケーションプログラムを決定する。非接触リーダライタ13において使用するアプリケーションプログラムを決定する助けとなるよう、各データ列71〜73に優先順位を示すパラメータを付加してもよい。また優先順位の高いアプリケーションプログラムのデータ列がアプリケーションリスト64の上位に記述することをしてもよい。使用すべきアプリケーションプログラムを決定すると、非接触リーダライタ13は、当該アプリケーションプログラムの選択要求を当該ICカード10へ送信する(ステップS23)。
【0082】
上記ICカード10では、アンテナ22、非接触通信チップ21および非接触インターフェース56を介して非接触リーダライタ13からのアプリケーションプログラムの選択要求を受信する。このような要求を受信すると、ICカード10の制御部51は、選択されたアプリケーションプログラムの選択処理を行う。アプリケーションプログラムの選択処理において、ICカード10の制御部51は、選択されたアプリケーションプログラムを起動させて、当該アプリケーションプログラムによる非接触ICカードとしてのサービスが実行可能な状態とする。このようなアプリケーションの選択処理が完了すると、上記ICカード10の制御部51は、アプリケーションプログラムの選択完了を示すレスポンスを接触インターフェース55を介して、携帯電話端末11内の非接触通信チップ21およびアンテナ22によりリーダライタ13へ送信する(ステップS24)。
【0083】
上記ステップS21〜S24の処理により、非接触リーダライタ13が選択したアプリケーションプログラム(非接触ICカードアプリ)による処理が実行可能となる。この状態において、ICカード10と非接触リーダライタ13とは、アンテナ22、非接触通信チップ21および非接触インターフェース56を介して近距離無線通信を行うことにより、アプリケーションプログラム(非接触ICカードアプリ)により提供される処理(サービス)を実行する(ステップS25)。
【0084】
なお、非接触インターフェース56で開示可能なアプリケーションプログラムが1つである場合、リーダライタ13からのアプリケーションリストの要求に対して、ICカード10は、当該アプリケーションプログラム(非接触インターフェース56で開示可能な唯一のアプリケーションプログラム)を選択し、その選択結果をリーダライタ13へ返信するようにしても良い。この場合、リスト要求に続く、アプリケーションの選択要求などの処理が省略される。
【0085】
上記のような形態によれば、USIMなどのICカードを挿入した状態で使用される携帯電話端末では、携帯電話端末側でICカードにインストールされている複数の非接触ICカードアプリのうちユーザが選択した非接触ICカードアプリのみを実際の非接触通信(近距離無線通信)に対して応答可能となるように設定する。このような設定がなされた状態で非接触通信(近距離無線通信)のリーダライタ13からアクセス要求を受けた場合、ICカード10は、ユーザが選択した非接触ICカードアプリのみを使用可能な非接触ICカードアプリとして非接触リーダライタ13へ通知する。
【0086】
これにより、非接触リーダライタ13では、ユーザが選択していない非接触ICカードアプリをリストとして受信することがないため、ユーザが携帯電話端末で予め選択した非接触ICカードアプリの中から使用する非接触ICカードアプリが選択できる。つまり、ユーザが予め選択した非接触ICカードアプリの中から非接触リーダライタ13が実際に使用する非接触ICカードアプリを選択するプロセスが簡略化でき、ユーザの要求に適合した非接触ICカードアプリによるサービスを迅速かつ効率的に実現できる。
【符号の説明】
【0087】
10…ICカード、11…携帯電話端末、13…非接触リーダライタ、20…携帯電話端末ベースバンド(制御ユニット)、21…非接触通信チップ、22…アンテナ、31…主制御部、32…RAM、33…ROM、34…不揮発性メモリ、35…ICカードインターフェース、38…通信部、40…表示部、41…操作部、51…制御部、52…ROM、53…RAM、54…不揮発性メモリ、55…接触インターフェース、56…非接触インターフェース、61…プラットフォーム、62…アプリケーション管理部、63a.63b、63c…アプリケーションプログラム、64…アプリケーションリスト、65…アイコンデータベース、65a.65b、65c…アイコンデータ、71、72、73…データ列、81…アプリケーションID、82…アプリケーション名、83〜86…パラメータ、91、92、93…アイコン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触通信チップを具備した携帯端末機器に装着される携帯可能電子装置において、
前記携帯端末機器と通信を行うための接触インターフェースと、
前記非接触通信チップを用いて近距離無線通信を行うための非接触インターフェースと、
前記非接触インターフェースを介して前記非接触通信チップによる近距離無線通信での処理を行う複数のアプリケーションプログラムを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている複数のアプリケーションプログラムのうち前記近距離無線通信でのアクセス要求に対して応答可能なアプリケーションプログラムを設定する設定部と、
前記非接触インターフェースを介して前記近距離無線通信でアクセス要求を受けた場合、前記設定部により前記近距離無線通信でのアクセス要求に対して応答可能と設定されているアプリケーションプログラムのみが応答する処理部と、
を有することを特徴とする携帯可能電子装置。
【請求項2】
さらに、前記記憶部に記憶されている各アプリケーションプログラムが前記非接触インターフェースによるアクセス要求に対して応答可能か否かを示す設定情報を含むアプリケーションリストを保持する保持部を有し、
前記設定部は、所望のアプリケーションプログラムに対する前記設定情報を前記非接触インターフェースによるアクセス要求に対して応答可能な状態に設定する、
ことを特徴とする前記請求項1に記載の携帯可能電子装置。
【請求項3】
前記アプリケーションリストは、各アプリケーションプログラムに対応する前記設定情報の初期値として、前記非接触インターフェースによるアクセス要求に対して応答不可とする、
ことを特徴とする前記請求項2に記載の携帯可能電子装置。
【請求項4】
さらに、前記記憶部に記憶されている各アプリケーションプログラムに対応するアイコンデータを格納するアイコンデータベースと、
前記携帯端末機器からの要求に応じて前記アイコンデータベースに記憶している各アプリケーションプログラムに対応するアイコンデータを前記携帯端末機器へ提供する提供部とを有し、
前記設定部は、前記提供部により前記携帯端末機器に提供したアイコンデータで選択されたアプリケーションプログラムに対する前記設定情報を前記非接触インターフェースによるアクセス要求に対して応答可能な状態に設定する、
ことを特徴とする前記請求項1に記載の携帯可能電子装置。
【請求項5】
さらに、前記記憶部に記憶されているアプリケーションプログラムに対して応答可能な通信プロトコルを設定する第2の設定部を有し、
前記処理部は、さらに、前記第2の設定部により応答可能と設定されている通信プロトコルでのアクセス要求に対してのみアプリケーションプログラムが応答する、
ことを特徴とする前記請求項1に記載の携帯可能電子装置。
【請求項6】
携帯端末機器と携帯可能電子装置とを有する携帯端末システムにおいて、
前記携帯端末機器は、
携帯可能電子装置が装着されるインターフェースと、
前記インターフェースを介して携帯可能電子装置とのデータ通信を行う制御ユニットと、
前記インターフェースを介して携帯可能電子装置に接続され、近距離無線通信を行う非接触通信チップと、を具備し、
前記携帯可能電子装置は、
前記携帯端末機器の制御ユニットと通信を行うための接触インターフェースと、
前記非接触通信チップと接続するための非接触インターフェースと、
前記非接触インターフェースを介して前記非接触通信チップによる近距離無線通信での処理を行う複数のアプリケーションプログラムを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている複数のアプリケーションプログラムのうち前記近距離無線通信でのアクセス要求に対して応答可能なアプリケーションプログラムを設定する設定部と、
前記非接触インターフェースを介して前記近距離無線通信でアクセス要求を受けた場合、前記設定部により前記近距離無線通信でのアクセス要求に対して応答可能と設定されているアプリケーションプログラムのみが応答する処理部と、
を有することを特徴とする携帯端末システム。
【請求項7】
前記携帯端末機器は、さらに、前記携帯可能電子装置が前記記憶部に記憶しているアプリケーションプログラムのうち前記非接触インターフェースによるアクセス要求に対して応答可能とするアプリケーションプログラムをユーザが選択する選択部を有し、
前記携帯端末機器の前記制御ユニットは、前記選択部により選択されたアプリケーションプログラムを前記近距離無線通信でのアクセス要求に対して応答可能として設定する要求を前記携帯可能電子装置へと送信し、
前記携帯可能電子装置の前記設定部は、前記携帯端末機器から設定が要求されたアプリケーションプログラムを前記非接触インターフェースによるアクセス要求に対して応答可能な状態に設定する、
ことを特徴とする前記請求項6に記載の携帯端末システム。
【請求項8】
前記携帯端末機器は、さらに、前記携帯可能電子装置が前記記憶部に記憶している各アプリケーションプログラムに対応するアイコンを表示する表示部を有し、
前記携帯可能電子装置は、さらに、前記記憶部に記憶している各アプリケーションプログラムに対応するアイコンデータを格納するアイコンデータベースと、を有し、
前記携帯端末機器の制御ユニットは、前記携帯可能電子装置の前記アイコンデータベースに記憶している各アプリケーションプログラムに対応するアイコンデータを前記携帯可能電子装置から取得し、
前記携帯端末機器の表示部は、前記携帯可能電子装置から取得したアイコンデータに基づいて各アプリケーションプログラムに対応するアイコンを表示し、
前記携帯端末機器の選択部は、前記表示部により表示されているアイコンから前記近距離無線通信でのアクセス要求に対して応答可能とするアプリケーションプログラムに対応するアイコンをユーザが選択し、
前記携帯可能電子装置の前記設定部は、前記携帯端末機器の前記選択部で選択されたアイコンに対応するアプリケーションプログラムの前記設定情報を前記非接触インターフェースによるアクセス要求に対して応答可能な状態に設定する、
ことを特徴とする前記請求項7に記載の携帯端末システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−218450(P2010−218450A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67006(P2009−67006)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】