説明

携帯型プリンタ

【課題】携帯型プリンタ1の用紙排出口8から雨滴や埃が本体ケース3内部に侵入することを防止し、また、使用しないときには必ず電源が切れた状態となる携帯プリンタの提供。
【解決手段】本体ケース3と収納部カバー4とでプリンタケース2を構成し、排出口カバー5を本体ケース3又は収納部カバー4に取付け、プリンタケース2の前面において排出口カバー5を摺動可能に取り付け、用紙排出口8を開閉可能とする。
排出口カバー5の開閉操作に携帯型プリンタ1の電源のON/OFFを連動させ、用紙排出口8が閉じられたとき、携帯型プリンタ1の電源をOFFとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型プリンタの用紙排出口カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気・ガス料金の検針では集金人がメーターを読み取り、その場でデータを携帯プリンタに入力すると同時にレシートを発行することがある。その際、入力したデータと発行したレシートデータを携帯プリンタに保存する。保存されたデータはパソコンなどで読み出されてホスト機器で処理される。このような機能を備えた携帯プリンタは、その他、宅配便の集配人や営業マンなどによって屋外で使用されることが多い。また、この種の機器はレシートなどを発行する関係から機器に印字済みの用紙を送り出す排出口を備える。この排出口は、常時開口した状態となっているのが普通である。そのため、携帯中に雨に会ったり、埃っぽい中を通過したりすると、用紙排出口から雨滴や埃が機器内部に侵入して、内部の電子精密部品に悪影響を与えたり、可動部分の動きを不調にしたり、あるいは用紙が濡れて印字不良になってしまうことがある。
【0003】
また、この種の携帯プリンタは電源をバッテリーとしているため、電源のON/OFFをこまめに行う必要がある。しかし、忙しさに取り紛れ、電源スイッチのOFF操作を忘れてしまうことも多い。
【0004】
特許文献1の携帯型電子機器は、長尺に排出されてくる印字済みの記録用紙を防滴カバー内部に収容して印字済みの記録用紙が雨に濡れてしまうのを防止しようとするものであり、用紙排出口が設けられた部分の本体ケース1の上面から用紙ホルダ13の後方を経て本体ケース1の下面に亘って覆う防滴カバーを設け、その内部に印字済みの記録用紙を収容する構造のものである。この機器ではその構造から、多少の雨にさらされても、用紙排出口から雨水が浸入するのを防止することができるが、防滴カバーを開けないと印字済みの記録用紙を直接見ることができない不便さがある。なお、特許文献1中に引用されている特開2001−130057号公報も同様な収容カバーを持つ携帯型電子機器を開示するものであるが、収容カバーを開閉する際の軸位置を手首側に近くすることにより、収容カバーを開いた際の操作性を向上させようとするものである。
【0005】
特許文献2の小型携帯プリンタは、プリンタケースの内部を防滴壁12により直下領域8と防滴領域9に区分けし、プリンタケースの表面側に設けられた紙出口6から直下領域8に入った液体が防滴領域9に入ることなく、プリンタケースの底面側に設けた排液口から外部へ排出されるようにしたことを特徴としたものである。
【0006】
このプリンタの技術的思想は、防滴壁12を設けて内部の重要部分を雨滴の侵入から隔離すると共に紙出口から侵入する雨滴をプリンタケースの内部を通して底面側から排出しようとするものであり、雨滴の侵入を防止しようとするものではない。
【0007】
特許文献3のプリンタは、プリント用紙の排出口を開閉する開閉蓋12とプリンタ操作釦とを関連付け、開閉蓋12を開いてプリントの準備が整った後でないとプリントのための操作ができない構造とし、プリントに際しての誤操作を防止することを特徴としたものである。
【0008】
特許文献4のプリンタは、ボディ本体13に設けたスライドカバーのスライド操作とプリントボタンの操作とを関連付け、スライドカバーをプリント位置へスライド操作しないとプリントボタン18を操作できないようにして、プリントに際しての誤操作を防止しよ
うとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−288992号公報
【特許文献2】特開2005−88350号公報
【特許文献3】特開2001−199122号公報
【特許文献4】特開2002−23255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、携帯型プリンタを腰にぶら下げるなど露出状態で携帯したまま雨に会ったり、埃っぽい箇所を通過する際に、雨滴や埃がプリンタの用紙排出口から本体ケース内部に侵入することを防止し、また、使用しないときには必ず電源を切った状態となる携帯型プリンタの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の携帯型プリンタは、用紙ロールを収納する用紙収納部を有する本体ケースと前記用紙収納部を開閉するための収納部カバーとでプリンタケースが構成された携帯型プリンタであって、前記収納部カバーは前記本体ケースに回動自在に取り付けられ、前記収納部カバーを閉じたとき、前記本体ケースの表面と前記収納部カバーの表面はほぼ同一の面を形成して前記プリンタケースの前面の一部を構成し、この前面の一部に前記本体ケースと前記収納部カバーとの間で用紙排出口が形成されるものであって、前記前面の一部に前記用紙排出口を開閉できる排出口カバーを前記前面の一部に沿って摺動可能に取り付け、かつ、携帯型プリンタの電源のON/OFFを前記排出口カバーの開閉操作に連動させてあり、前記用紙排出口が閉じられたとき前記携帯型プリンタの電源がOFFとされる構成となっている。
【0012】
また、本発明の携帯型プリンタは、前記排出口カバーが前記収納部カバー側に取り付けられている構成となっている。
【0013】
また、本発明の携帯型プリンタは、前記排出口カバーが前記本体ケース側に取り付けられている構成となっている。
【0014】
また、本発明の携帯型プリンタは、前記用紙排出口の上縁を形成する前記本体ケースの縁および前記用紙排出口の下縁を形成する前記排出カバーの縁の少なくとも一方に用紙を手切りにて切断するための手切りカッター刃が取り付けられている構成となっている。
【0015】
また、本発明の携帯型プリンタは、前記排出口カバーが用紙排出口を開いた状態のとき、設定した所定時間ごとに警報を発する制御部を備えている構成となっている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、携帯型プリンタを腰にぶら下げるなど露出状態での携帯中に雨に遭遇したり埃っぽい箇所を移動しても、用紙排出口が閉じられているので、雨滴などがプリンタケース内部に侵入することがなく、携帯型プリンタとしての機能を維持する上で安全である。また、携帯中は用紙排出口が閉じられることにより必ず電源が切れているので、1回の充電によるバッテリーの寿命を延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】前面側から見た全体の斜視図。
【図2】後面側から見たバッテリーをはずした状態の全体の斜視図。
【図3】内部構造を透視して示す概略の右側面図。
【図4】排出口カバーを外して示す、内部構造を省略した全体の斜視図。
【図5】収納部カバーの開閉状態を示した概略の右側面図。
【図6】要部を拡大して示す右側面図。
【図7】収納部カバーの移動状態を示した右側面図。
【図8】第2の実施例の収納部カバーの移動状態を示した右側面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜7は、この発明に係る携帯型プリンタ1の実施例1を示す。
図1は、携帯型プリンタ1を前面側から見て全体を示すもので、プリンタケース2は用紙ロールを収納する用紙収納部を有する本体ケース3と収納部カバー4及び排出口カバー5とからなる。
【0019】
本体ケース3の前面には上方から操作パネル6、磁気カード挿入スリット7、用紙排出口8が形成されており、右側面にはホスト機器との接続用にシリアルI/Fコネクタ10とUSB I/Fコネクタ11が配置されている。収納部カバー4には透明部材で形成されたカバーウィンドウ9が備えられている。排出口カバー5はプリンタケース2の前面中央部に見えている。符号12は、背面側に取り付けられたベルトクリップであり、符号13は、印字済みの用紙である。
【0020】
図2は、携帯型プリンタ1を背面側から見て全体を示したものであり、バッテリー14は取り外してある。バッテリー14をプリンタケース2背面のバッテリー収容部18に押し込んで、下端のフック16をプリンタケース2背面の係合部17に係止することでバッテリー14を簡単に取り付けることができる。符号12は携帯型プリンタ1をズボンのベルトなどに取り付けるためのベルトクリップで、取り付け軸15を中心に回動が可能であり、バッテリー14をプリンタケース2背面のバッテリー収容部18に取り付けた後に下方へ回動させて使用する。符号19は肩掛けストラップなどを取り付けるためのストラップフックである。
【0021】
プリンタケース2の内部には、図3のように、プリントユニット20、カッターユニット21、プラテン22、制御基板23及び用紙ロール24が納められている。本体ケース3の下方は用紙ロール24の収納部であり、その前面を収納部カバー4が開閉可能に閉鎖する構造である。プリントユニット20に於けるヘッド25はこの実施例においてサーマルヘッドである。その他、携帯型プリンタ1としての機能を発揮するために必要な各種の部品が配置されているが図示を省略している。前記のプリントユニット20、カッターユニット21はそれぞれユニットとして確立している流通品である。また、制御基板23には前記シリアルI/Fコネクタ10とUSB I/Fコネクタ11につながるこの種のプリンタとしての一般制御関係の部品の他に、この実施例において、近距離無線通信(ブルートゥース)のための部品26、マグネチックカードリーダーのための部品27を備える。
【0022】
プリンタケース2は、前記のように、本体ケース3と収納部カバー4及び排出口カバー5からなる(図4)。収納部カバー4は本体ケース3に対してプリンタケース2の前面側で、図5のように、下端の縁を軸28として上下に回動して開閉可能であり、閉じたとき、その表面は本体ケース3の前面と同一の面となり本体ケース3の前面と共にプリンタケース2における前面部の一部を構成する。このプリンタケース2はクラムシェルタイプであり、カッターユニット21とプラテン22が収納部カバー4側の内面に取り付けられていて、収納部カバー4を開くとこれらがプリントユニット20から分かれて収納部カバー4と共に開き位置へ移動する。収納部カバー4を閉じるとプラテン22は用紙ロール24から引き出した用紙をヘッドに押し付ける位置となり、用紙に印字が可能な状態となる。
【0023】
収納部カバー4を閉じたとき、本体ケース3との間で用紙排出口8が形成される(図4)。すなわち、この実施例において用紙排出口8は収納部カバー4の上縁中央部を矩形に下方へ切り込んだ矩形凹部29が本体ケース3側の排出口縁30と組み合わさることにより、用紙排出口8が画定される。なお、実際の用紙排出口8は前記の本体ケース3側の排出口縁30(用紙排出口の上縁を形成する前記本体ケースの縁)と排出口カバー5の上縁31(用紙排出口の下縁を形成する前記排出カバーの縁)とにより画定される(図1)。
【0024】
収納部カバー4の前面には排出口カバー5が装着される(図1、図4)。排出口カバー5は、プリンタケース2の前面と略等しい幅を有すると共に前記の用紙排出口8を覆うのに充分な上下寸法を備えた板状部材であり、内面の両側端部にローラー32を備える。ローラー32は2個ずつで、収納部カバー5の前記矩形凹部29の幅寸法に等しい間隔で立設された支持板33へ回転可能に取り付けられている。ローラー32は支持板33の外側に取り付けられていて、排出口カバー5を収納部カバー4に取り付けると、前記矩形凹部29の両側の壁部分34を挟んで上下に移動が可能である。
【0025】
図6は排出口カバー5を収納部カバー4の矩形凹部29の箇所に取り付けた状態を示したもので、排出口カバー5が用紙排出口8を開いた位置にある。印字済みの用紙13が開放された排出口8から外に送り出されている。排出口カバー5の板状部材とローラー32とで収納部カバー4の前記壁部分34をはさみつける格好で取り付けられている。この状態から排出口カバー5を押し上げると、排出口カバー5は前記両側の壁部分34を伝って上方に移動し、用紙排出口8を閉鎖する。
【0026】
排出口カバー5の上方位置、下方位置は、前記両側の壁部分34の内面に形成してある凸部35によって位置決めされる(図7)。そして、排出口カバーが下方にあるとき、マイクロスイッチ36がONとされ、上方位置にあるときマイクロスイッチ36はOFFとなる。マイクロスイッチ36のOFF状態は携帯型プリンタ1の電源がOFFの状態である。すなわち、用紙排出口8が排出口カバー5によって閉鎖されている携帯型プリンタ1の不使用時には携帯型プリンタ1の電源が常に遮断されている。
【0027】
なお、この実施例では制御基板23に携帯型プリンタを使用しているときには所定時間ごとに赤ランプを点滅する警報を発する制御部を設け、排出口カバー5の閉じ忘れを防止するようにしている。
【0028】
図8は、第2の実施例を示すものであり、用紙排出口8の下縁となる排出口カバー5の上縁に用紙を手切りにて切断するための手切りカッター刃37を取り付けたものである。この場合、本体ケース3側に防護縁39を張り出させて排出口カバー5の上縁が入り込む間隙40を形成する。排出口カバー5を閉鎖位置としたとき、手切りカッター刃37が露出しない。また、排出口カバー5の上縁部が防護縁39に入り込んで位置固定されることで、本体ケース3に対して収納部カバー5が妄りに開いて来ないようにロックすることができる。
【0029】
さらに、手切りカッター刃37は本体ケース3側に形成することもある(符号38、図8に破線で示している)。このとき、カッター刃38はプリンタを使用する人の手指と接触しないように防護縁39の縁よりも内側となるように配置される。
【0030】
上記説明した実施例では、排出口カバー5を収納部カバー4側に取り付けたが、矩形凹部29に相当する構成を本体ケース3側に設けて、排出口カバー5を本体ケース3側に取り付けることもできる。この場合、本体ケース3は収納部カバー4のように可動ではないので、排出口カバー5の作動が安定する。
【0031】
そして、排出口カバー5を本体ケース3側に取り付けたときは、用紙排出口8を閉鎖している位置及び開放している位置において、排出口カバーの下部が収納カバー4に係合(重合)した配置にすれば、排出口カバー5に収納部カバー4が妄りに開かないようにするロック部材を兼用させることができる。
【0032】
なお、収納部カバー4あるいは本体ケース3への排出口カバー5の取り付け構造は、摺動が可能であれば、どのような構造であってもよい。例えば、本体ケース3に形成した溝に排出口カバー5の両側縁部がはまり込んで摺動する構造であっても良い。
【0033】
また、排出口カバー5の開閉移動と携帯型プリンタ1の電源をON/OFFするための機構はマイクロスイッチに限らず、磁気スイッチなど他のON/OFFスイッチを利用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
検針員や宅配の集配人などによって屋外で使用されることが多い携帯型プリンタの使用勝手を改善し、また、携帯型プリンタの耐久性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 携帯型プリンタ
2 プリンタケース
3 本体ケース
4 収納部カバー
5 操作パネル
6 操作パネル
7 磁気カード挿入スリット
8 用紙排出口
9 カバーウィンドウ
10 シリアルI/Fコネクタ
11 USBI/Fコネクタ
12 ベルトクリップ
13 印字済みの用紙
14 バッテリー
15 取付け軸
16 フック
17 係合部
18 バッテリー収容部
19 ストラップフック
20 プリントユニット
21 カッターユニット
22 プラテン
23 制御基板
24 用紙ロール
25 ヘッド
26 近距離通信用部品
27 マグネチックカードリーダー
28 軸
29 凹部
30 本体ケース側の排出口縁
31 排出口カバーの上縁
32 ローラー
33 支持板
34 壁部分
35 凸部
36 マイクロスイッチ
37 カッター刃
38 カッター刃
39 防護縁
40 間隙



【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙ロールを収納する用紙収納部を有する本体ケースと前記用紙収納部を開閉するための収納部カバーとでプリンタケースが構成された携帯型プリンタであって、前記収納部カバーは前記本体ケースに回動自在に取り付けられ、前記収納部カバーを閉じたとき、前記本体ケースの表面と前記収納部カバーの表面はほぼ同一の面を形成して前記プリンタケースの前面の一部を構成し、この前面の一部に前記本体ケースと前記収納部カバーとの間で用紙排出口が形成されるものであって、前記前面の一部に前記用紙排出口を開閉できる排出口カバーを前記前面の一部に沿って摺動可能に取り付け、かつ、携帯型プリンタの電源のON/OFFを前記排出口カバーの開閉操作に連動させてあり、前記用紙排出口が閉じられたとき前記携帯型プリンタの電源がOFFとされることを特徴とした携帯型プリンタ。
【請求項2】
前記排出口カバーが前記収納部カバー側に取り付けられていることを特徴とした請求項1に記載の携帯型プリンタ。
【請求項3】
前記排出口カバーが前記本体ケース側に取り付けられていることを特徴とした請求項1に記載の携帯型プリンタ。
【請求項4】
前記用紙排出口の上縁を形成する前記本体ケースの縁および前記用紙排出口の下縁を形成する前記排出カバーの縁の少なくとも一方に用紙を手切りにて切断するための手切りカッター刃が取り付けられていることを特徴とした請求項1〜3のいずれか一つに記載の携帯型プリンタ。
【請求項5】
前記排出口カバーが前記用紙排出口を開いた状態のとき、設定した所定時間ごとに警報を発する制御部を備えていることを特徴とした請求項1〜4のいずれか一つに記載の携帯型プリンタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−45808(P2012−45808A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189507(P2010−189507)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(507351883)シチズン・システムズ株式会社 (82)
【Fターム(参考)】