説明

携帯型電子機器

【課題】 筐体の内面に設けられたスピーカの振動に伴って筐体が振動しても、スピーカの実質的な音響特性が劣化しにくいようにする
【解決手段】 筐体1の一の平板部2の内面に設けられたスピーカ3が振動して発音すると、このスピーカ3の振動に起因して、一の平板部2が振動し、この一の平板部2の振動により、スピーカ3からの音波に対して逆相の音波が発生する。そして、一の平板部2の振動は、一の平板部2の内面に設けられた振動検知センサ4によって検知され、この検知信号に基づいて、一の平板部2の内面に設けられた圧電フィルム5が、一の平板部2の振動を相殺する方向に振動し、これにより一の平板部2の振動が抑制され、スピーカ3の実質的な音響特性が劣化しにくいようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は携帯電話等の携帯型電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、従来の携帯電話には、着信音等を発生させるためのスピーカを筐体の内部に設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。ところで、筐体の内面に圧電素子からなるスピーカを設けることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−32686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、筐体の内面に圧電素子からなるスピーカを設けた場合には、携帯電話の薄型化に伴い、筐体の厚さが薄くなり、筐体の剛性が低下すると、スピーカの振動に伴って筐体が振動し、この筐体の振動により音波が発生すると、この音波とスピーカからの音波とが干渉し、スピーカの実質的な音響特性が劣化するという問題がある。
【0005】
そこで、この発明は、スピーカの振動に伴う筐体の振動を抑制して、スピーカの実質的な音響特性が劣化しにくいようにすることができる携帯型電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る携帯型電子機器は、筐体と、前記筐体の一の平板部の内面に設けられたスピーカと、前記筐体の一の平板部の内面に設けられ、前記スピーカの振動に伴う前記筐体の一の平板部の振動を検知する振動検知センサと、前記筐体の一の平板部の内面に設けられ、前記振動検知センサの検知信号に基づいて、前記筐体の一の平板部の振動を相殺する方向に振動して前記筐体の一の平板部の振動を抑制する振動抑制部材とを備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、スピーカの振動に伴う筐体の振動を抑制して、スピーカの実質的な音響特性が劣化しにくいようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の一実施形態としての携帯電話の要部の斜視図。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図。
【図3】音圧レベル周波数特性を説明するために示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1はこの発明の一実施形態としての携帯電話の要部の斜視図を示し、図2は図1のII−II線に沿う断面図を示す。この携帯電話は筐体1を備えている。筐体1の一の平板部2の内面の一方側にはスピーカ3が設けられている。スピーカ3は、携帯電話の小型化、薄型化を図るため、圧電素子によって形成するのが望ましい。筐体1の一の平板部2の内面の他方側には、筐体1の一の平板部2の振動を検知するための加速度センサ等からなる振動検知センサ4が設けられている。
【0010】
筐体1の一の平板部2の内面においてスピーカ3と振動検知センサ4との間にはPVDF(ポリフッ化ビニリデン)等からなる圧電フィルム(振動抑制部材)5が設けられている。この場合、圧電フィルム5は、方形状であって、複数枚例えば12枚、3×4のマトリクス状に設けられている。圧電フィルム5を複数枚マトリクス状に設ける理由については後で説明する。
【0011】
さて、この携帯電話では、スピーカ3が振動して発音すると、このスピーカ3の振動に起因して、筐体1のスピーカ取り付け部分つまり一の平板部2が振動し、この一の平板部2の振動により、スピーカ3からの音波に対して逆相の音波が発生する。そして、筐体1の一の平板部2の振動は振動検知センサ4によって検知され、この検知信号に基づいて、圧電フィルム5が、筐体1の一の平板部2の振動を相殺する方向に振動し、これにより筐体1の一の平板部2の振動が抑制され、スピーカ3の実質的な音響特性が劣化しにくいようにすることができる。
【0012】
ところで、例えばPVDFからなる圧電フィルム5の基本共振周波数は比較的低いため、筐体1の一の平板部2の内面に方形状の圧電フィルム5を複数枚例えば12枚、3×4のマトリクス状に設け、これらの圧電フィルム5の駆動を制御することにより、全体としての共振周波数を容易に制御することができる。
【0013】
ここで、図3に示すように、スピーカ3単体の音圧レベル周波数特性は点線で示すようになるのに対し、圧電フィルム5による振動抑制がない場合には、スピーカ3と筐体1の一の平板部2とによる合計音圧レベル周波数特性は一点鎖線で示すようになり、点線で示すスピーカ3単体の音圧レベル周波数特性と比較的大きくずれる部分が生じ、スピーカ3の実質的な音響特性が劣化してしまう。
【0014】
これに対し、圧電フィルム5による振動抑制がある場合には、スピーカ3と筐体1の一の平板部2とによる合計音圧レベル周波数特性は実線で示すようになり、点線で示すスピーカ3単体の音圧レベル周波数特性に比較的沿う特性となり、筐体1の一の平板部2の振動が抑制され、スピーカ3の実質的な音響特性が劣化しにくいようにすることができる。
【0015】
ここで、圧電フィルム5は、上記のような振動抑制機能の他に、筐体1の一の平板部2の振動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収する機能を有している。したがって、筐体1の一の平板部2の振動エネルギーを圧電フィルム5で電気エネルギーに変換して回収することにより、省電力化を図ることができる。
【0016】
なお、この発明は、携帯電話に限らず、PHS(Personal Handyphone System)、PDA(Personal Data Assistance, Personal Digital Assistance:個人向け携帯型情報通信機器)等の携帯端末機器等の電子機器にも適用することができる。
【0017】
以下、この発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0018】
(付記1)
付記1の発明は、筐体と、前記筐体の一の平板部の内面に設けられたスピーカと、前記筐体の一の平板部の内面に設けられ、前記スピーカの振動に伴う前記筐体の一の平板部の振動を検知する振動検知センサと、前記筐体の一の平板部の内面に設けられ、前記振動検知センサの検知信号に基づいて、前記筐体の一の平板部の振動を相殺する方向に振動して前記筐体の一の平板部の振動を抑制する振動抑制部材とを備えていることを特徴とする携帯型電子機器である。
【0019】
(付記2)
付記2の発明は、付記1に記載の発明において、前記スピーカは圧電素子からなり、前記振動抑制部材は圧電フィルムからなることを特徴とする携帯型電子機器である。
【0020】
(付記3)
付記3の発明は、付記2に記載の発明において、前記圧電フィルムは複数枚であって前記筐体の一の平板部の内面にマトリクス状に設けられていることを特徴とする携帯型電子機器である。
【0021】
(付記4)
付記4の発明は、付記2または3に記載の発明において、前記圧電フィルムは、前記筐体の一の平板部の振動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収する機能を有することを特徴とする携帯型電子機器である。
【符号の説明】
【0022】
1 筐体
2 一の平板部
3 スピーカ
4 振動検知センサ
5 圧電フィルム(振動抑制部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体の一の平板部の内面に設けられたスピーカと、前記筐体の一の平板部の内面に設けられ、前記スピーカの振動に伴う前記筐体の一の平板部の振動を検知する振動検知センサと、前記筐体の一の平板部の内面に設けられ、前記振動検知センサの検知信号に基づいて、前記筐体の一の平板部の振動を相殺する方向に振動して前記筐体の一の平板部の振動を抑制する振動抑制部材とを備えていることを特徴とする携帯型電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、前記スピーカは圧電素子からなり、前記振動抑制部材は圧電フィルムからなることを特徴とする携帯型電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の発明において、前記圧電フィルムは複数枚であって前記筐体の一の平板部の内面にマトリクス状に設けられていることを特徴とする携帯型電子機器。
【請求項4】
請求項2または3に記載の発明において、前記圧電フィルムは、前記筐体の一の平板部の振動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収する機能を有することを特徴とする携帯型電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−62708(P2013−62708A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200280(P2011−200280)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】