説明

携帯情報端末

【課題】金属製のホルダを利用してRFID用アンテナの通信距離の長距離化を図りながら、横寸法を抑制することができる携帯情報端末を提供する。
【解決手段】金属製のホルダ8を、RFID用アンテナ12の給電点12cとの間の水平方向への距離が15〜45mm、RFID用アンテナ12の後方に配置すると共に、内側に空洞8aを有する環状に形成した。これにより、ホルダ8を反射器として有効に機能させながら、ホルダ8の横寸法を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID用タグと通信する950MHz帯のRFID用アンテナと、電子装置を保持するための金属製のホルダとを備えた携帯情報端末に関する。
【背景技術】
【0002】
950MHz帯を使用する携帯型RFIDリーダライタにおいては、RFID用アンテナが電子装置(光学情報読取モジュール、LCDなど)を保持するための金属製のホルダの影響を受けて、RFID用タグとの通信距離が短くなるという課題がある。
このような課題を回避するためにアンテナとホルダとの間の距離を長くすると、携帯型RFIDリーダライタが大形化してしまう。
一方、金属体の配置を工夫してアンテナの反射器として機能させることにより、通信距離を向上させるというRFID用アンテナが提案されている(特許文献1参照)。従って、金属製のホルダをRFID用アンテナの反射器として機能させることが可能である。
【特許文献1】特開2000−77928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1では、アンテナと金属体間の距離としては、略同一平面の結果しか開示されておらず、携帯型RFIDリーダライタのようにアンテナとホルダとの位置関係が制約されるような場合は、特許文献1の構成をそのまま適用しても、反射器としての効果が得られるとは限らない。
【0004】
また、金属体をアンテナの反射器として機能させる場合は、少なくともλ×0.6(λ/2以上であるが余裕を見込んでλ×0.6)の長さは必要となる。このため、通信周波数が950MHz帯の場合は、通信波長λが約316mmであることから、金属製のホルダの長さ(RFID用アンテナと平行となる部位の長さ)は約190mm以上必要となり、携帯型RFIDリーダライタにおいてはその長さを横方向に直線状に確保できるスペースがない。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、金属製のホルダを利用してRFID用アンテナの通信距離の長距離化を図りながら、横寸法を抑制することができる携帯情報端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
金属製のホルダがRFID用アンテナに近接して配置されている場合、RFID用アンテナが金属製のホルダの影響を受け、RFID用アンテナによる通信距離が変動する。この変動は、通信距離が短くなる場合と、長くなる場合があると共に、RFID用アンテナの形状などによって異なることから、実験により最適な条件を求めるようにした。
【0007】
実験結果から、金属製のホルダがRFID用アンテナに近接して設けられているという条件において、ホルダがない場合に比較して通信距離が長くなる条件は、RFID用アンテナの給電点との間の前後方向距離が15〜45mm、RFID用アンテナの略前方に配置され、さらに、ホルダの形状が環状であると共に内側に中空を有する形状であることが判明した。
【0008】
また、通信周波数が950MHz帯の場合にホルダをRFID用アンテナの反射器として機能させるには、ホルダの横寸法として約190mm以上必要となるものの、ホルダを環状とすることにより、ホルダの横寸法を抑制しながら、ホルダを反射器として有効に機能させることができる。
従って、請求項1の発明によれば、金属製のホルダを、上述の条件を満足するように構成したので、通信距離の長距離化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明をRFIDタグのデータの読取り及び書込みと、バーコードや二次元コード等の光学情報の読取りとの双方が可能な携帯型RFIDリーダライタに適用した一実施形態について図面を参照して説明する。
図2は、携帯型RFIDリーダライタの概略構成を示す縦断側面図、図3は、その分解図、図4は、内部構成を示す下面図であり、本発明に関連した構成のみを示した。携帯型RFIDリーダライタ(以下、リーダライタと略す)1は、上ケース2と下ケース3とからなる本体4内に制御ユニット5を位置決め状態で収納して構成されている。
【0010】
本体4(下ケース3)の先端面部には、光学情報読取用の読取口6が形成されている。本体4(上ケース2)の基端部(グリップ部)の上面部には、電源スイッチ、報知用LED、スピーカ、数字キーや機能キー等の複数個の操作キー(何れも図示せず)を有するキー操作部7が設けられている。また、本体4には、図示しない読取指示用のトリガスイッチが設けられている。
【0011】
制御ユニット5は、マグネシウムからなる金属製のホルダ8の下面に、メイン制御基板9、RFID用制御基板10、光学情報読取部11をネジ止めして構成されている。RFID用制御基板10にはRFID用アンテナ12が同軸ケーブル13により接続されている。ホルダ8は容器状に形成されており、その上面には図示しない液晶表示部(電子装置に相当)が収納されてメイン制御基板9と接続されている。
【0012】
メイン制御基板9はマイコンを主体として構成されており、トリガスイッチやキー操作部7等からの操作信号の入力に応じて報知用LED、スピーカ、液晶表示部などを制御する。本体4内には、電源となるバッテリ及び電源部、外部(ホスト装置)との間でのデータ通信を行うための外部インターフェース等も設けられている。
RFID用制御基板10は、メイン制御基板9からの指令に応じてRFID用アンテナ12に送信信号を出力し、RFタグ(図示せず)との間で電磁波による通信を行うことによりデータの読取り及び書込みを行う。
【0013】
光学情報読取部11は、図示はしないCCDエリアセンサ、結像レンズ、複数個のLEDやレンズ等から構成される照明部などを備えて構成されている。照明部は、読取口6を通じて前方に配置された読取対象であるラベルに照明光を照射する。ラベルに印刷された光学情報(バーコードや二次元コード)からの反射光が読取口6を通じて入射し、結像レンズを介してCCDエリアセンサ上に結像されることにより光学情報の画像データを取込んでデータの読取り(デコード)を行う。
【0014】
尚、RFタグは、例えば商品などの物品に付されるものであり、RFID用アンテナとの間での通信を行うためのタグ側アンテナを備えると共に、データの保持及び応答信号を発生するRFIDチップを備えて構成されている。RFIDチップは、送信信号から動作電源を得るための整流・平滑回路、通信等の制御を行うCPU、送受信信号の変調,復調を行う変復調回路、動作プログラム等を記憶するROM、データを記憶する読書き可能なEEPROM等をワンチップIC化して構成されている。
【0015】
以上のようにリーダライタ1は、光学情報読取部11による光学情報の光学的な読取りと、RFID用制御基板10によるRFタグとの間の通信(データの読取り及び書込み)とが可能となっている。
【0016】
RFID用アンテナ12は、フレキシブル基板からなるダイポールアンテナであり、図1(b)に示すように左右対称形状の折り返しダイポール12aと、この折り返しダイポール12aの中央に形成された折り返し部12bとから構成され、その折り返し部12bに設けられた給電点12cが図4に示す同軸ケーブル13を介してRFID用制御基板10と接続されている。図1(a)に示すように、給電点12cは本体4の中央部に構成される。RFID用アンテナ12は、上ケース2の前端内面に沿って収納されており、RFID用制御基板10から送信信号が与えられることにより前方に向けて950MHz帯の電磁波を放射する。
【0017】
図1は、上記構成におけるRFID用アンテナ12とホルダ8との位置関係を概略的に示している。この図1に示すように、金属性のホルダ8がRFID用アンテナ12の後方に近接して配置されている場合は、RFID用アンテナ12が金属製のホルダ8の影響を受け、RFID用アンテナ12の通信距離が変動する。この変動は、通信距離が短くなる場合と、長くなる場合がある。つまり、金属製のホルダ8はRFID用アンテナ12の反射器として機能し、その反射器としての効果が、RFID用アンテナ12とホルダ8との間の距離、或いはホルダ8の形状によって大きく異なるのである。
【0018】
そこで、RFID用アンテナ12とホルダ8との間の距離、或いはホルダ8の形状がRFID用アンテナ12からの放射電力に与える影響を実験により調べた。
図5は、実験構成を概略的に示している。RFID用アンテナ12として横寸法が113mmの実施品のものを用い、RFID用アンテナ12からの放射信号を受信する受信用アンテナ14として横寸法が150mmのものを用い、RFID用アンテナ12とホルダ8との間の距離Dによって、受信用アンテナ14が受信する放射電力の強度の変化を調べた。この場合、RFID用アンテナ12、受信用アンテナ14、ホルダ8は、それらの中心が一致するように設定した。
【0019】
ここで、RFID用アンテナ12とホルダ8との間の距離Dとは、RFID用アンテナ12の給電点とホルダ8の前端位置との間の前後方向距離のことである。また、ホルダ8を、RFID用アンテナ12に対して実際の製品と同一の位置関係となるように高さ方向にずらした。つまり、ホルダ8を、RFID用アンテナ12の略高さ寸法分だけ高さ方向にずらして実験した。
【0020】
ホルダとしては、図6に示すように製品として実際に使用する実施品ホルダ8と、図7(a)、(b)に示すように比較用ホルダ15,16を用いた。何れのホルダ8,15,16も、横寸法が70mm、前後寸法が100mmの矩形形状であり、ホルダ8,15は本発明でいう環状に形成されている。この場合の環状とは、外周経路が一周するような形状であることを意味している。実施品ホルダ8は、内側に複数の矩形状、或いは三角形状の空洞8aが形成されている。比較用ホルダ15は、内側に一つの大きな矩形状の空洞15aが形成されている。一方、ホルダ16は、内側に空洞の無いホルダである。
【0021】
図8は実験結果を示しており、ホルダ−アンテナ間距離Dと放射電力との関係を示している。この実験結果から、ホルダ8,15をRFID用アンテナ12に徐々に接近させた場合、何れのホルダ8,15の場合も、50mmぐらいから放射電力が増大し始め、20〜40mmでピークとなり、15〜45mmで十分に高い放射電力を得られることが判明した。また、実施品ホルダ8の方が、比較用ホルダ15、16よりも放射電力が全域にわたって高いことも判明した。また、空洞のあるホルダ8,15は、空洞のないホルダ16と比較すると、空洞のないホルダ16は、RFID用アンテナ12と30mm以内に近接すると効果が若干ではあるが低下してしまうのに対し、空洞のあるホルダ8,15は、15〜45mmで高い放射電力得られている。従って、高い放射電力が得られるが、空洞を設けることによって、さらに、携帯情報端末の軽量化を図ることもできる。
【0022】
また、ホルダ8の長さ(RFID用アンテナ12と平行となる部位の長さ)は、950MHz帯の場合は通信波長λが約316mmであることから、約190mm以上必要となるものの、実験結果では、ホルダ8,15の横寸法が70mmでも反射器として十分に機能させることができた。これは、反射器としてはRFID用アンテナ12と平行となるホルダ8,15の前端部位が有効に機能するものの、ホルダ8,15が環状であることから、ホルダ8,15の側端部位も反射器の電気経路長として有効に機能するからである。
【0023】
要するに、金属製のホルダ8を、RFID用アンテナ12との間の前後方向距離が15〜45mmとなるように本体4に組込むことにより、ホルダ8を反射器として十分に機能させて通信距離の長距離化を図ることができる。また、ホルダとしては、実施品ホルダ8のように複数の空洞8aを有した形状の方が放射電力の増大には有効であるものの、比較用ホルダ15のように1個の大きな空洞15aを有した環状であっても放射電力の増大を図ることができることから、空洞を複数設ける必要はない。
【0024】
また、図9に示すように、ホルダ8とRFID用アンテナ12の位置関係を変化させた場合についても実験した。ホルダ8をRFID用アンテナ12の略高さ寸法分だけずらした場合と、ホルダ8端面から20mmずらした場合とで実験を行った。尚、ホルダ8とRFIDアンテナ12の高さ方向以外の位置関係は図8と同様である。
【0025】
図10に示すように、図9(c)の配置関係の場合は、40mmまでは同様の高い効果が得られているが、40mmより近接すると、効果が低下してしまう。それに対し、図9(a),(b)の配置関係においては、15〜45mmにおいても十分な効果が得られている。従って、アンテナの高さ方向の位置関係としては、ホルダ8よりRFID用アンテナ12の高さ寸法分だけずれて配置しても十分に効果がある。
【0026】
このような位置関係により、RFID用アンテナ12の高さ寸法分のずれの分だけホルダ8側(携帯情報端末の中央部分)に厚みを持たせることができ、相対的に先端部分を薄くすることで、先端部分に横方向から見て傾斜部を設け、丸みを持たせることで、対落下衝撃を緩和することができる。
【0027】
このような実施形態によれば、金属製のホルダ8を、RFID用アンテナ12の給電点12cとの間の前後方向距離が15〜45mm、RFID用アンテナ12の略後方にずらして配置すると共に、内側に複数の空洞8aを有する環状に構成したので、金属製のホルダ8を利用してRFID用アンテナ12の通信距離の長距離化を図りながら、ホルダ8の横寸法を通信波長の1/2の長さよりも十分に抑制することができる。
【0028】
(他の実施形態)
ホルダ8の材料はマグネシウムに限らず、反射器として機能すれば、種々の金属を用いることができる。
ホルダ8は、横寸法が70mm、前後寸法が100mmに限定されることはない。
光学情報の読取方向は前方に限らず斜め方向であってもよいし、光学情報読取機能を省略するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態におけるRFID用アンテナ及びホルダの平面図
【図2】リーダライタの縦断側面図
【図3】リーダライタの分解側面図
【図4】制御ユニットの下面図
【図5】実験構成を示す図
【図6】実施品ホルダを示す平面図
【図7】比較用ホルダを示す平面図
【図8】ホルダ−アンテナ間距離Dと放射電力との関係を示す図
【図9】異なる配置関係を示す図5相当図
【図10】図8相当図
【符号の説明】
【0030】
図面中、1は携帯型RFIDリーダライタ、4は本体、5は制御ユニット、8はホルダ、9はメイン制御基板、10はRFID用制御基板、11は光学情報読取部、12はRFID用アンテナである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の横方向に配置された950MHz帯のRFID用アンテナと、
電子装置を保持するための金属製のホルダとを備えた携帯情報端末において、
前記RFID用アンテナは、前記ホルダの略前方に配置され、送信用電力が給電される給電点が前記本体の横方向の中央に設けられ、
前記ホルダは、前記給電点との間の前後方向距離が15〜45mmであり、内側に中空を有する環状に形成されていることを特徴とする携帯情報端末。
【請求項2】
前記ホルダは、横寸法が通信波長の1/2以下であることを特徴とする請求項1記載の携帯情報端末。
【請求項3】
前記ホルダは、横寸法が70mmであることを特徴とする請求項2記載の携帯情報端末。
【請求項4】
前記ホルダは、前記RFID用アンテナの略高さ寸法分だけ高さ方向にずれて配置されていることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の携帯情報端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−290300(P2009−290300A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138212(P2008−138212)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】