携帯機
【課題】電子部品にデータの読み書きを行うためのテストポイントが形成された回路基板を備えた携帯機において、コスト増加や大型化になるのを抑制しつつ、テストポイントを介して回路基板に入り込む静電気から保護する。
【解決手段】電子部品としてのIC45を実装した回路基板40には、IC45に接続された複数のテストポイント31が形成されている。また回路基板40にはボタン形の電池23が設置される電池スペース12が設けられている。電池23は負極側の面が回路基板40に向くようにして、電池スペース12に設置される。電池23が設置されたときにその電池23の負極側の面の一部が、回路基板40の一部の領域52と接触する。その領域52には、各テストポイント31と接続したランド61が形成されている。電池23の設置有りで、テストポイント31をグランドにショートする。
【解決手段】電子部品としてのIC45を実装した回路基板40には、IC45に接続された複数のテストポイント31が形成されている。また回路基板40にはボタン形の電池23が設置される電池スペース12が設けられている。電池23は負極側の面が回路基板40に向くようにして、電池スペース12に設置される。電池23が設置されたときにその電池23の負極側の面の一部が、回路基板40の一部の領域52と接触する。その領域52には、各テストポイント31と接続したランド61が形成されている。電池23の設置有りで、テストポイント31をグランドにショートする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のユーザに携帯されて車載機器との間で無線通信を行う携帯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザに携帯所持される携帯機(電子キー)と車載機器との間で無線通信を行い、その通信結果に基づいて車両のドアのロック又はアンロックを許可したり、エンジン始動を許可したりするシステムが知られている。この種のシステムに用いられる携帯機では、車載機器との間で無線通信を行うIC(電子部品)を実装した回路基板に、製造工程内でそのICにデータ書き込みや読み出しを行うための入出力端子として機能するテストポイントが形成されることがある。そのテストポイントは、ICと外部機器との間で有線通信を行う場合のテストインターフェースとして機能する。
【0003】
テストポイントは、製造工程内でのみ使用され、市場で使用されることはない。それにもかかわらず、市場に出た後もテストポイントが回路基板に配置されていると、市場において回路基板を収容した筐体の隙間から静電気が回路基板に入り込む場合がある。その場合、テストポイントは静電気をICにまで伝達する通り道となり、ICの静電破壊を引き起こす場合がある。そこで、図5に示すように、テストポイント901とIC902の間に、抵抗、コンデンサ、ダイオード等から構成された静電気保護回路903を設けるという対策が考えられる。
【0004】
また、テストポイント等の端子から入り込む静電気の対策に関し、特許文献1には、端子に、加圧状態では加圧方向に導通性を有し、非加圧状態では絶縁性を有する加圧導電層を延着形成することが記載されている。これによれば、回路基板の端子(テストポイント)に、外部接続端子が接続されていない状態では、加圧導電層が非加圧状態となって絶縁性を有するので、その加圧導電層によって静電気が遮断できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭64−87298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図5のように静電気保護回路を設けると、その静電気保護回路の追加によってコストが増加したり、実装面積が増加したりするという問題点がある。実装面積が増加すると携帯機が大型化してしまう。図5では、テストポイントが1つの場合を示しているが、複数のテストポイントがある場合には、そのテストポイントの数だけ静電気保護回路が必要となるので、さらにコストの増加や大型化を招く。また、特許文献1の方法では、テストポイント不使用時では、テストポイントの上に単に絶縁体(非加圧状態の加圧導電層)を被せているだけなので、絶縁体とその周囲の部材の隙間から入り込んだ静電気で静電破壊を引き起こすという問題を依然として有している。つまり、特許文献1の方法では、静電気からの保護という点では不十分である。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされ、コスト増加や大型化になるのを抑制しつつ、テストポイントに入り込んだ静電気から電子部品を十分に保護できる携帯機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の携帯機は、車載機器との間で無線通信を行う電子部品を実装するとともに、前記電子部品に接続されて前記電子部品に対してデータの入出力を行う端子であるテストポイントが形成された回路基板と、
前記電子部品に電力を供給する電池が設置される設置部とを備えた携帯機であって、
前記設置部に電池が設置されたときにその電池の負極と前記テストポイントとが直接又は間接に接触することを特徴とする。
【0009】
これによれば、設置部に電池が設置される市場においては、その電池の負極とテストポイントとが直接又は間接に接触するので、仮にテストポイントに静電気が入り込んだとしても、その静電気を、低電位の電池の負極側に逃がすことができる。よって、テストポイントからの静電気を電子部品に流れないようにすることができる。また、静電気保護回路を不要にできるので、コスト増加や大型化になるのを抑制できる。一方、設置部に電池が設置されないときには、テストポイントから電子部品にデータの入出力を行うことができる。よって、製造工程内では、設置部に電池を設置しないようにすることで、テストポイントを、電子機器と外部機器とのテストインターフェースとして機能させることができる。
【0010】
また、本発明において、前記電池は、ボタン形電池であり、前記ボタン形電池の負極側の面が前記回路基板に接触するように前記設置部に設置され、
前記回路基板には、前記負極側の面が接触する位置に設けられた接触端子と、その接触端子と前記テストポイントとを接続する配線パターンとが形成されたことを特徴とする。
【0011】
これによって、テストポイントが電池から離れた位置に形成されていたとしても、接触端子及び配線パターンを介して、ボタン形電池の負極とテストポイントとを間接に接触させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】カードキー1の斜視図である。
【図2】電池カバー21やオーナメント22を分解したときのカードキー1の斜視図である。
【図3】電池23を設置したときと設置していないときのそれぞれにおける回路基板40の平面図である。
【図4】回路基板40の回路を模式的に示した図である。
【図5】従来の携帯機の回路構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る携帯機の実施形態を説明する。図1は、本実施形態の携帯機としてのカードキー1の斜視図を示している。また、図2は、図1のカードキー1から、電池カバー21やオーナメント22を分解したときの斜視図である。カードキー1は、車両に搭載された車載機器との間で無線通信を行い、その無線通信結果に基づいて車両のドアのロック又はアンロックを許可したり、エンジン始動を許可したりするスマートエントリーシステムに使用される電子キーである。カードキー1は、車両のユーザに携帯所持される。
【0014】
カードキー1は、平面視で長方形状の平板、つまりカード形状とされている。カードキー1は、カードキー1の本体を構成するカードキー本体10を備えている。そのカードキー本体10がカードキー1の外観の大部分(電池カバー21やオーナメント22を除いた外観)を構成している。カードキー本体10の表面101の中央付近には、車両メーカや車種のシンボルが表面221に記されたオーナメント22が設けられている。そのオーナメント22は、例えばエポキシ樹脂などの樹脂で形成されている。またオーナメント22は他と別部材となっており、本実施形態では平面視で略長方形状の平板となっている。そのため、図2に示すように、カードキー本体10の表面101の中央付近は、オーナメント22の形状に合わせて凹部11が形成されている。凹部11の底には後述するテストポイント31が露出している。カードキー1が市場に出る段階では、オーナメント22は凹部11に接着剤等で固定される。そのオーナメント22はテストポイント31を隠す役割も担っている。
【0015】
カードキー本体10の一方の短辺側には、短辺方向の中間位置にて電池カバー21が設けられている。その電池カバー21は、電池23が設置される電池スペース12(図2参照)を閉塞する部材である。電池カバー21は、断面視略コの字状(図2のA−A断面視で略コの字状)で、カードキー本体10の短辺方向に一定幅を有した形状とされている。電池カバー21の平面視は略長方形状となっている。電池カバー21がカードキー本体10に装着された状態では、コの字における上辺に対応する電池カバー21の上部211はカードキー本体10の表面101の面位置と一致しており、コの字における下辺に対応する電池カバー21の下部212はカードキー本体10の裏面(図示外)の面位置と一致している。
【0016】
図2に示すように、カードキー本体10から電池カバー21を取り外すと、その電池カバー21の形状に対応したスペース12が現れるようになっている。別の言い方をすると、カードキー本体10は、電池カバー21が設けられる位置に、電池カバー21の外形に合わせて切り欠けられた切欠部141が形成されている。その切欠部141で囲まれた部分が電池23を設置する電池スペース12とされる。その電池スペース12には、後述する電池ターミナル41、42が配置されている(電池ターミナル41、42は電池スペース12に露出している)。
【0017】
カードキー本体10は、回路基板40(図3参照)及びその回路基板40を覆った樹脂成形部13で構成されている。樹脂成形部13が、カードキー本体10の外形を構成している。樹脂成形部13は、エポキシ樹脂などの樹脂で形成されている。また樹脂成形部13は、インサート成形によって回路基板40と一体になっている。なお、樹脂成形部13、オーナメント22及び電池カバー21は、互いに同じ樹脂で形成されている。
【0018】
図3は、樹脂成形部13の内部に設けられる回路基板40の平面図を示しており、詳細には、図3(A)は、電池23を設置していないときの回路基板40の平面図、図3(B)は、電池23を設置したときの回路基板40の平面図を示している。回路基板40は、絶縁材料で形成されたいわゆるプリント基板である。その回路基板40の表面401には、スマートエントリーシステムに関する処理を行うIC45や、データを無線通信する際にデータの変調復調等を行う送受信回路(図示外)、データの送受信を行うアンテナ(図示外)等の電子部品が実装されている。
【0019】
回路基板40には複数のテストポイント31(図3では4つのテストポイント31)が形成されている。テストポイント31は、回路基板40の表面401に露出している。なお、図3では、4つのテストポイント31が、回路基板40の中央付近の位置にて、短辺方向に一列に等間隔に形成されている。各テストポイント31は、例えば円状となっており、銅箔等の金属(導電体)で形成されている。また、各テストポイント31とIC45の間には、テストポイント31の個数の分(図3では4つ)だけ配線パターン32が形成されている。つまり、各テストポイント31は、配線パターン32によってIC45と電気的に接続されている。各テストポイント31及びそれに接続された配線パターン32から構成される信号線は、互いに異なる信号線とされ、具体的には例えばIC45にクロック信号を入力する信号線であったり、データの信号線であったりする。そのため、各配線パターン32(各テストポイント31)は、互いに異なるIC45の端子(クロック信号を入力する端子やデータを入出力する端子など)に接続されている。
【0020】
テストポイント31は、製造工程内で、IC45に各種データの書き込みを行ったり、IC45からのデータの読み込みを行ったりするための端子である。テストポイント31には、外部設備に接続された外部端子が接続されて、その外部設備とIC45の有線通信を実現するインターフェースとして機能する。なお、樹脂成形部13の成形後の段階(図2)でも、テストポイント31を使用してIC45にデータの読み書きを行う場合がある。図3では、4つのテストポイント31を1組として、それらテストポイント31を同時又は個別に使用して、IC45に対してデータの読み書きが行われる。
【0021】
回路基板40の形状は、上述したカードキー本体10の形状と対応している。すなわち、回路基板40は、平面視で略長方形状の平板において一方の短辺側の中間部分を切り欠いた形状となっている。回路基板40の切り欠けられた部分である切欠部431は、上記のカードキー本体10(樹脂成形部13)の切欠部141(図2参照)と同じ位置、同様の形状(平面視で略コの字形状)に形成されている。その切欠部431で囲まれたスペースが、電池23が設置される電池スペース12とされる。
【0022】
切欠部431を間に挟んだ位置関係にある2つの隅部432、433が、回路基板40の長手方向に延びる中心線Lと平行に突出した形状に形成されている。それら隅部432、433には、中心線Lと直交する方向に平面視にて平行に延び出すように直線状の電池ターミナル41、42が架設されている。それら電池ターミナル41、42は、互いに平行となるように、かつ、ボタン形の電池23の厚みよりも極僅かだけ間隔が狭くなるように各中間部が段違いとなるように配置されている。より具体的には、電池ターミナル41の中間部が回路基板40の表面401より極僅かだけ高い位置に配置されており、電池ターミナル42の中間部がその表面401と同等の高さ位置に配置されている(つまり、電池ターミナル42は、電池ターミナル41よりも下側に配置されている)。
【0023】
電池ターミナル41は電池23の正極(正極側の面231)に接触する正極側ターミナルとされている。電池ターミナル41の端部は、回路基板40上に形成された配線パターン441に半田等で接続されている。その配線パターン441は、IC45等の電子部品の電源入力端子に接続されている。電池ターミナル42は電池23の負極(負極側の面232(図2参照)、正極側の面231と反対側の面)に接触する負極側ターミナルとされている。電池ターミナル42の端部は、回路基板40上に形成された配線パターン442(グランド線)に半田等で接続されている。その配線パターン442は、IC45等の電子部品のグランド端子に接続されている。よって、図4の模式図に示すように、電池23が設置された場合には、その電池23、配線パターン441、442及びIC45で回路が構成されて、電池23からIC45に電力が供給されるようになっている。
【0024】
電池23は、ボタン形(平面視で円状又は楕円状で平板)とされている。その電池23は、負極側の面232が下を向くように(回路基板40の表面401に向くように)、正極側の面231が上を向くようにして、電池スペース12に設置される。その際、電池23は、段違いに配置された電池ターミナル41、42の間に挟み込まれる形で設置される。これによって、電池23の正極が電池ターミナル41(厳密には電池ターミナル41の下面)に接触し、電池23の負極が電池ターミナル42(厳密には電池ターミナル42の上面)に接触する。
【0025】
また、電池23が電池スペース12に設置されたときに、その電池23の一部が切欠部431からはみ出て、回路基板40の一部領域52(図3(A)の破線51で囲まれた領域)に接触するようになっている。その一部領域52には、テストポイント31の個数(図3では4つ)の分だけランド61が形成されている。各ランド61は銅箔等の金属で形成されている。本実施形態では、4つのランド61が、切欠部431の底辺431aに隣接する領域52内の位置にて、その底辺431aに沿って等間隔に形成されている。また、各ランド61と各テストポイント31の間には、それら61、31を接続する配線パターン62が形成されている。詳細には、図3の紙面にて上から順に4つのランド61間及び4つのテストポイント31間に番号(第1、第2、第3、第4)を割り当てたとき、第1のランド61と第1のテストポイント31とを接続する第一の配線パターン62、第2のランド61と第2のテストポイント31とを接続する第3の配線パターン62、第3のランド61と第3のテストポイント31とを接続する第3の配線パターン62及び第4のランド61と第4のテストポイント31とを接続する第4の配線パターン62が形成されている。
【0026】
これによって、図3(B)に示すように、電池23が電池スペース12に設置されたときに、電池23の負極側の面232の一部がランド61に接触することになるので、そのランド61を介してテストポイント31をグランドにショートできる。よって、テストポイント31から静電気が侵入したとしてもその静電気を電池23の負極側(グランド)に逃がすことができる。このことは、図4に示すように、テストポイント31とグランド72(電池23の負極側の面232、その面に接続された配線パターン442)の間に設けられたライン71(ランド61及び配線パターン62)が、電池23の有無で自動的(半導体スイッチを設けなくても)に導通、切断が切り替わることを意味している。また、テストポイント31とIC45の間に、静電気保護回路を設ける必要がない。よって、簡素な構造で、IC45等の電子部品を静電気から保護できる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態では、カードキー1が市場に出るときには、電池23が電池スペース12に設置されることになるので、テストポイント31をグランドにショートさせることができ、IC45等の電子部品を静電気から保護できる。これに対して、電池23が電池スペース12に設置されないことが多い製造工程内では、テストポイント31はグランドにショートされないので、そのテストポイント31をIC45と外部設備とのテストインターフェースとして機能させることができる。なおこの場合には、外部電源によってIC45に電力を供給することになる。
【0028】
また、本実施形態では、ランド61及びそれに接続された配線パターン62を介して間接にテストポイント31と電池23の負極側の面232とを接触させているので、カードキー1が厚くなるのを防止できる。つまり、テストポイント31とその上に設けられるオーナメント22の間に電池23を介在させるスペースを設けなくても良いので、そのスペースの分だけカードキー1が厚くなるのを防止できる。また、ランド61、配線パターン62を介することで、テストポイント31が回路基板40のどこに配置されていたとしてもそのテストポイント31をグランドにショートさせることができる。
【0029】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限度で種々に変更することができる。例えば、電池を電池スペースに設置したときに、テストポイントがその電池の負極に直接接触するようにしても良い。この場合、電池の負極が接触する回路基板の領域にテストポイントを配置すれば良い。また、カードキー以外の形状の電子キーにも本発明を適用しても良い。また、スマートエントリーシステム以外のシステムに使用される携帯機(例えばワイヤレスキーシステムに使用されるワイヤレスキー)に本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0030】
1 カードキー(携帯機)
10 カードキー本体
12 電池スペース(設置部)
22 オーナメント
23 電池
232 電池の負極側の面
31 テストポイント
40 回路基板
41 正極側の電池ターミナル
42 負極側の電池ターミナル
431 切欠部
45 IC
61 ランド(接触端子)
62 配線パターン
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のユーザに携帯されて車載機器との間で無線通信を行う携帯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザに携帯所持される携帯機(電子キー)と車載機器との間で無線通信を行い、その通信結果に基づいて車両のドアのロック又はアンロックを許可したり、エンジン始動を許可したりするシステムが知られている。この種のシステムに用いられる携帯機では、車載機器との間で無線通信を行うIC(電子部品)を実装した回路基板に、製造工程内でそのICにデータ書き込みや読み出しを行うための入出力端子として機能するテストポイントが形成されることがある。そのテストポイントは、ICと外部機器との間で有線通信を行う場合のテストインターフェースとして機能する。
【0003】
テストポイントは、製造工程内でのみ使用され、市場で使用されることはない。それにもかかわらず、市場に出た後もテストポイントが回路基板に配置されていると、市場において回路基板を収容した筐体の隙間から静電気が回路基板に入り込む場合がある。その場合、テストポイントは静電気をICにまで伝達する通り道となり、ICの静電破壊を引き起こす場合がある。そこで、図5に示すように、テストポイント901とIC902の間に、抵抗、コンデンサ、ダイオード等から構成された静電気保護回路903を設けるという対策が考えられる。
【0004】
また、テストポイント等の端子から入り込む静電気の対策に関し、特許文献1には、端子に、加圧状態では加圧方向に導通性を有し、非加圧状態では絶縁性を有する加圧導電層を延着形成することが記載されている。これによれば、回路基板の端子(テストポイント)に、外部接続端子が接続されていない状態では、加圧導電層が非加圧状態となって絶縁性を有するので、その加圧導電層によって静電気が遮断できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭64−87298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図5のように静電気保護回路を設けると、その静電気保護回路の追加によってコストが増加したり、実装面積が増加したりするという問題点がある。実装面積が増加すると携帯機が大型化してしまう。図5では、テストポイントが1つの場合を示しているが、複数のテストポイントがある場合には、そのテストポイントの数だけ静電気保護回路が必要となるので、さらにコストの増加や大型化を招く。また、特許文献1の方法では、テストポイント不使用時では、テストポイントの上に単に絶縁体(非加圧状態の加圧導電層)を被せているだけなので、絶縁体とその周囲の部材の隙間から入り込んだ静電気で静電破壊を引き起こすという問題を依然として有している。つまり、特許文献1の方法では、静電気からの保護という点では不十分である。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされ、コスト増加や大型化になるのを抑制しつつ、テストポイントに入り込んだ静電気から電子部品を十分に保護できる携帯機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の携帯機は、車載機器との間で無線通信を行う電子部品を実装するとともに、前記電子部品に接続されて前記電子部品に対してデータの入出力を行う端子であるテストポイントが形成された回路基板と、
前記電子部品に電力を供給する電池が設置される設置部とを備えた携帯機であって、
前記設置部に電池が設置されたときにその電池の負極と前記テストポイントとが直接又は間接に接触することを特徴とする。
【0009】
これによれば、設置部に電池が設置される市場においては、その電池の負極とテストポイントとが直接又は間接に接触するので、仮にテストポイントに静電気が入り込んだとしても、その静電気を、低電位の電池の負極側に逃がすことができる。よって、テストポイントからの静電気を電子部品に流れないようにすることができる。また、静電気保護回路を不要にできるので、コスト増加や大型化になるのを抑制できる。一方、設置部に電池が設置されないときには、テストポイントから電子部品にデータの入出力を行うことができる。よって、製造工程内では、設置部に電池を設置しないようにすることで、テストポイントを、電子機器と外部機器とのテストインターフェースとして機能させることができる。
【0010】
また、本発明において、前記電池は、ボタン形電池であり、前記ボタン形電池の負極側の面が前記回路基板に接触するように前記設置部に設置され、
前記回路基板には、前記負極側の面が接触する位置に設けられた接触端子と、その接触端子と前記テストポイントとを接続する配線パターンとが形成されたことを特徴とする。
【0011】
これによって、テストポイントが電池から離れた位置に形成されていたとしても、接触端子及び配線パターンを介して、ボタン形電池の負極とテストポイントとを間接に接触させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】カードキー1の斜視図である。
【図2】電池カバー21やオーナメント22を分解したときのカードキー1の斜視図である。
【図3】電池23を設置したときと設置していないときのそれぞれにおける回路基板40の平面図である。
【図4】回路基板40の回路を模式的に示した図である。
【図5】従来の携帯機の回路構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る携帯機の実施形態を説明する。図1は、本実施形態の携帯機としてのカードキー1の斜視図を示している。また、図2は、図1のカードキー1から、電池カバー21やオーナメント22を分解したときの斜視図である。カードキー1は、車両に搭載された車載機器との間で無線通信を行い、その無線通信結果に基づいて車両のドアのロック又はアンロックを許可したり、エンジン始動を許可したりするスマートエントリーシステムに使用される電子キーである。カードキー1は、車両のユーザに携帯所持される。
【0014】
カードキー1は、平面視で長方形状の平板、つまりカード形状とされている。カードキー1は、カードキー1の本体を構成するカードキー本体10を備えている。そのカードキー本体10がカードキー1の外観の大部分(電池カバー21やオーナメント22を除いた外観)を構成している。カードキー本体10の表面101の中央付近には、車両メーカや車種のシンボルが表面221に記されたオーナメント22が設けられている。そのオーナメント22は、例えばエポキシ樹脂などの樹脂で形成されている。またオーナメント22は他と別部材となっており、本実施形態では平面視で略長方形状の平板となっている。そのため、図2に示すように、カードキー本体10の表面101の中央付近は、オーナメント22の形状に合わせて凹部11が形成されている。凹部11の底には後述するテストポイント31が露出している。カードキー1が市場に出る段階では、オーナメント22は凹部11に接着剤等で固定される。そのオーナメント22はテストポイント31を隠す役割も担っている。
【0015】
カードキー本体10の一方の短辺側には、短辺方向の中間位置にて電池カバー21が設けられている。その電池カバー21は、電池23が設置される電池スペース12(図2参照)を閉塞する部材である。電池カバー21は、断面視略コの字状(図2のA−A断面視で略コの字状)で、カードキー本体10の短辺方向に一定幅を有した形状とされている。電池カバー21の平面視は略長方形状となっている。電池カバー21がカードキー本体10に装着された状態では、コの字における上辺に対応する電池カバー21の上部211はカードキー本体10の表面101の面位置と一致しており、コの字における下辺に対応する電池カバー21の下部212はカードキー本体10の裏面(図示外)の面位置と一致している。
【0016】
図2に示すように、カードキー本体10から電池カバー21を取り外すと、その電池カバー21の形状に対応したスペース12が現れるようになっている。別の言い方をすると、カードキー本体10は、電池カバー21が設けられる位置に、電池カバー21の外形に合わせて切り欠けられた切欠部141が形成されている。その切欠部141で囲まれた部分が電池23を設置する電池スペース12とされる。その電池スペース12には、後述する電池ターミナル41、42が配置されている(電池ターミナル41、42は電池スペース12に露出している)。
【0017】
カードキー本体10は、回路基板40(図3参照)及びその回路基板40を覆った樹脂成形部13で構成されている。樹脂成形部13が、カードキー本体10の外形を構成している。樹脂成形部13は、エポキシ樹脂などの樹脂で形成されている。また樹脂成形部13は、インサート成形によって回路基板40と一体になっている。なお、樹脂成形部13、オーナメント22及び電池カバー21は、互いに同じ樹脂で形成されている。
【0018】
図3は、樹脂成形部13の内部に設けられる回路基板40の平面図を示しており、詳細には、図3(A)は、電池23を設置していないときの回路基板40の平面図、図3(B)は、電池23を設置したときの回路基板40の平面図を示している。回路基板40は、絶縁材料で形成されたいわゆるプリント基板である。その回路基板40の表面401には、スマートエントリーシステムに関する処理を行うIC45や、データを無線通信する際にデータの変調復調等を行う送受信回路(図示外)、データの送受信を行うアンテナ(図示外)等の電子部品が実装されている。
【0019】
回路基板40には複数のテストポイント31(図3では4つのテストポイント31)が形成されている。テストポイント31は、回路基板40の表面401に露出している。なお、図3では、4つのテストポイント31が、回路基板40の中央付近の位置にて、短辺方向に一列に等間隔に形成されている。各テストポイント31は、例えば円状となっており、銅箔等の金属(導電体)で形成されている。また、各テストポイント31とIC45の間には、テストポイント31の個数の分(図3では4つ)だけ配線パターン32が形成されている。つまり、各テストポイント31は、配線パターン32によってIC45と電気的に接続されている。各テストポイント31及びそれに接続された配線パターン32から構成される信号線は、互いに異なる信号線とされ、具体的には例えばIC45にクロック信号を入力する信号線であったり、データの信号線であったりする。そのため、各配線パターン32(各テストポイント31)は、互いに異なるIC45の端子(クロック信号を入力する端子やデータを入出力する端子など)に接続されている。
【0020】
テストポイント31は、製造工程内で、IC45に各種データの書き込みを行ったり、IC45からのデータの読み込みを行ったりするための端子である。テストポイント31には、外部設備に接続された外部端子が接続されて、その外部設備とIC45の有線通信を実現するインターフェースとして機能する。なお、樹脂成形部13の成形後の段階(図2)でも、テストポイント31を使用してIC45にデータの読み書きを行う場合がある。図3では、4つのテストポイント31を1組として、それらテストポイント31を同時又は個別に使用して、IC45に対してデータの読み書きが行われる。
【0021】
回路基板40の形状は、上述したカードキー本体10の形状と対応している。すなわち、回路基板40は、平面視で略長方形状の平板において一方の短辺側の中間部分を切り欠いた形状となっている。回路基板40の切り欠けられた部分である切欠部431は、上記のカードキー本体10(樹脂成形部13)の切欠部141(図2参照)と同じ位置、同様の形状(平面視で略コの字形状)に形成されている。その切欠部431で囲まれたスペースが、電池23が設置される電池スペース12とされる。
【0022】
切欠部431を間に挟んだ位置関係にある2つの隅部432、433が、回路基板40の長手方向に延びる中心線Lと平行に突出した形状に形成されている。それら隅部432、433には、中心線Lと直交する方向に平面視にて平行に延び出すように直線状の電池ターミナル41、42が架設されている。それら電池ターミナル41、42は、互いに平行となるように、かつ、ボタン形の電池23の厚みよりも極僅かだけ間隔が狭くなるように各中間部が段違いとなるように配置されている。より具体的には、電池ターミナル41の中間部が回路基板40の表面401より極僅かだけ高い位置に配置されており、電池ターミナル42の中間部がその表面401と同等の高さ位置に配置されている(つまり、電池ターミナル42は、電池ターミナル41よりも下側に配置されている)。
【0023】
電池ターミナル41は電池23の正極(正極側の面231)に接触する正極側ターミナルとされている。電池ターミナル41の端部は、回路基板40上に形成された配線パターン441に半田等で接続されている。その配線パターン441は、IC45等の電子部品の電源入力端子に接続されている。電池ターミナル42は電池23の負極(負極側の面232(図2参照)、正極側の面231と反対側の面)に接触する負極側ターミナルとされている。電池ターミナル42の端部は、回路基板40上に形成された配線パターン442(グランド線)に半田等で接続されている。その配線パターン442は、IC45等の電子部品のグランド端子に接続されている。よって、図4の模式図に示すように、電池23が設置された場合には、その電池23、配線パターン441、442及びIC45で回路が構成されて、電池23からIC45に電力が供給されるようになっている。
【0024】
電池23は、ボタン形(平面視で円状又は楕円状で平板)とされている。その電池23は、負極側の面232が下を向くように(回路基板40の表面401に向くように)、正極側の面231が上を向くようにして、電池スペース12に設置される。その際、電池23は、段違いに配置された電池ターミナル41、42の間に挟み込まれる形で設置される。これによって、電池23の正極が電池ターミナル41(厳密には電池ターミナル41の下面)に接触し、電池23の負極が電池ターミナル42(厳密には電池ターミナル42の上面)に接触する。
【0025】
また、電池23が電池スペース12に設置されたときに、その電池23の一部が切欠部431からはみ出て、回路基板40の一部領域52(図3(A)の破線51で囲まれた領域)に接触するようになっている。その一部領域52には、テストポイント31の個数(図3では4つ)の分だけランド61が形成されている。各ランド61は銅箔等の金属で形成されている。本実施形態では、4つのランド61が、切欠部431の底辺431aに隣接する領域52内の位置にて、その底辺431aに沿って等間隔に形成されている。また、各ランド61と各テストポイント31の間には、それら61、31を接続する配線パターン62が形成されている。詳細には、図3の紙面にて上から順に4つのランド61間及び4つのテストポイント31間に番号(第1、第2、第3、第4)を割り当てたとき、第1のランド61と第1のテストポイント31とを接続する第一の配線パターン62、第2のランド61と第2のテストポイント31とを接続する第3の配線パターン62、第3のランド61と第3のテストポイント31とを接続する第3の配線パターン62及び第4のランド61と第4のテストポイント31とを接続する第4の配線パターン62が形成されている。
【0026】
これによって、図3(B)に示すように、電池23が電池スペース12に設置されたときに、電池23の負極側の面232の一部がランド61に接触することになるので、そのランド61を介してテストポイント31をグランドにショートできる。よって、テストポイント31から静電気が侵入したとしてもその静電気を電池23の負極側(グランド)に逃がすことができる。このことは、図4に示すように、テストポイント31とグランド72(電池23の負極側の面232、その面に接続された配線パターン442)の間に設けられたライン71(ランド61及び配線パターン62)が、電池23の有無で自動的(半導体スイッチを設けなくても)に導通、切断が切り替わることを意味している。また、テストポイント31とIC45の間に、静電気保護回路を設ける必要がない。よって、簡素な構造で、IC45等の電子部品を静電気から保護できる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態では、カードキー1が市場に出るときには、電池23が電池スペース12に設置されることになるので、テストポイント31をグランドにショートさせることができ、IC45等の電子部品を静電気から保護できる。これに対して、電池23が電池スペース12に設置されないことが多い製造工程内では、テストポイント31はグランドにショートされないので、そのテストポイント31をIC45と外部設備とのテストインターフェースとして機能させることができる。なおこの場合には、外部電源によってIC45に電力を供給することになる。
【0028】
また、本実施形態では、ランド61及びそれに接続された配線パターン62を介して間接にテストポイント31と電池23の負極側の面232とを接触させているので、カードキー1が厚くなるのを防止できる。つまり、テストポイント31とその上に設けられるオーナメント22の間に電池23を介在させるスペースを設けなくても良いので、そのスペースの分だけカードキー1が厚くなるのを防止できる。また、ランド61、配線パターン62を介することで、テストポイント31が回路基板40のどこに配置されていたとしてもそのテストポイント31をグランドにショートさせることができる。
【0029】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限度で種々に変更することができる。例えば、電池を電池スペースに設置したときに、テストポイントがその電池の負極に直接接触するようにしても良い。この場合、電池の負極が接触する回路基板の領域にテストポイントを配置すれば良い。また、カードキー以外の形状の電子キーにも本発明を適用しても良い。また、スマートエントリーシステム以外のシステムに使用される携帯機(例えばワイヤレスキーシステムに使用されるワイヤレスキー)に本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0030】
1 カードキー(携帯機)
10 カードキー本体
12 電池スペース(設置部)
22 オーナメント
23 電池
232 電池の負極側の面
31 テストポイント
40 回路基板
41 正極側の電池ターミナル
42 負極側の電池ターミナル
431 切欠部
45 IC
61 ランド(接触端子)
62 配線パターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載機器との間で無線通信を行う電子部品を実装するとともに、前記電子部品に接続されて前記電子部品に対してデータの入出力を行う端子であるテストポイントが形成された回路基板と、
前記電子部品に電力を供給する電池が設置される設置部とを備えた携帯機であって、
前記設置部に電池が設置されたときにその電池の負極と前記テストポイントとが直接又は間接に接触することを特徴とする携帯機。
【請求項2】
前記電池は、ボタン形電池であり、前記ボタン形電池の負極側の面が前記回路基板に接触するように前記設置部に設置され、
前記回路基板には、前記負極側の面が接触する位置に設けられた接触端子と、その接触端子と前記テストポイントとを接続する配線パターンとが形成されたことを特徴とする請求項1に記載の携帯機。
【請求項1】
車載機器との間で無線通信を行う電子部品を実装するとともに、前記電子部品に接続されて前記電子部品に対してデータの入出力を行う端子であるテストポイントが形成された回路基板と、
前記電子部品に電力を供給する電池が設置される設置部とを備えた携帯機であって、
前記設置部に電池が設置されたときにその電池の負極と前記テストポイントとが直接又は間接に接触することを特徴とする携帯機。
【請求項2】
前記電池は、ボタン形電池であり、前記ボタン形電池の負極側の面が前記回路基板に接触するように前記設置部に設置され、
前記回路基板には、前記負極側の面が接触する位置に設けられた接触端子と、その接触端子と前記テストポイントとを接続する配線パターンとが形成されたことを特徴とする請求項1に記載の携帯機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2013−100657(P2013−100657A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244201(P2011−244201)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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