説明

携帯無線機のアンテナ固定方法及びその装置

【課題】 製造及び保守作業の容易化を図る。
【解決手段】 固定金具用スリット形成部24のスリット24b内に固定金具14を挿入する。アンテナ12のテーパ部13をリアケース16及び固定金具14のアンテナ挿通孔16b、14h内へ差し込み、アンテナ保持部14aを環状凹部15に嵌入させてアンテナ12を係止する。フロントケース26のねじ止め部28と、回路基板18の金属製環状端子18aと、固定金具14の環状端子14cと、案内筒20とを位置合わせし、これらの各部にねじ22を通してねじ止め部28に螺入させ、これらを共締めする。これにより、固定金具14は固定されてアンテナ12をリアケース16に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯無線機のアンテナ固定方法及びその装置に関し、詳しくは製造及び保守作業の容易な携帯無線機のアンテナ固定方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯無線機には、一体型、携帯型等各種形式の電話機が提案実用化されている。
また、携帯無線機で送受信に用いられるアンテナについても、伸張収納可能なアンテナが用いられているし、固定式アンテナも用いられている。
伸張収納可能なアンテナは、図9の(A)及び(B)に示すように、伸張用エレメント52と、収納用エレメント54と、伸張用エレメント52及び収納用エレメント54のそれぞれを保持するサポート部56とから構成されている。サポート部56には、図9の(C)に示すように、金属製の雄ねじ部58があり、この雄ねじ部58をリアケース57内部に設けられ、ナット59内に螺入させ締め付けることにより、サポート部56をリアケース60に固定する。なお、図9の(A)及び(C)は、アンテナを伸張させた状態を示し、図9の(B)は、アンテナを収納させた状態を示す。
【0003】
この方法により、この形式のアンテナ50はリアケース60に固定される。
なお、回路基板62から給電部材64が延設されており、その給電部材64が金属製ねじ部58に弾接されてアンテナ50への給電が行われるように構成されている。
【0004】
従来用いられている固定式アンテナは、アンテナをリアケースにねじ止めしたり、図10に示すように、アンテナ70の固定部71をリアケース60のアンテナ挿通孔61に挿通し、固定部71とリアケース60とを固定用ねじ(図10には図示せず)を案内筒63を経て矢印65方向に挿通してそのねじの先端をリアケース60に被せてあるフロントケース(図10には図示せず)の対応位置にモールド形式で鋳込まれたナット又はねじ孔に螺入させて共締めする。この方法により、この例のアンテナ70はリアケース60に固定される。
【0005】
また、固定式アンテナの他の例は、図11に示すように、リアケース60のアンテナ挿通孔61を経てアンテナ70のテーパ部73を挿通して行き、リアケース60の外面とアンテナ70の当接面75とが密着した状態において、リアケース60の内側に位置している円形溝77にリング63を嵌着させる。この方法により、この例のアンテナ70はリアケース60に固定される。
【0006】
また、特許文献1には、次のような技術、すなわち、アンテナの軸部を携帯型無線送受信機の筐体の軸受部に挿通し、軸受部の中心に向けて出没可能に設けられている金属球をばね板部材により上記中心に向けて推進させてその金属球をアンテナの軸部のクリック部に嵌合係止させ、アンテナをワンタッチで携帯型無線送受信機の筐体に取着させる技術が記載される。
【0007】
また、特許文献2には、次のような技術が記載されている。アンテナの長方形部の長軸及び短軸とアンテナ取り付けブロックの長方形状の中空孔の対応する長軸及び短軸とを位置合わせした後、長方形部を上記中空孔内へ挿通する。そして、長方形部を反時計式方向に回動させて長方形部の長軸と中空孔の短軸とを一致させる。このとき、回転防止爪が爪係合孔に嵌入係合し、かつ、嵌合体の大径部の端部が円形中空孔内の突起に当接する。長方形部の長軸と中空孔の短軸との一致により、アンテナの抜け防止が達成され、回転防止爪と爪係合孔との係合により時計式方向の回動が阻止され、嵌合体の大径部の端部の円形中空孔内の突起への当接により反時計式方向の回動が阻止される。
【0008】
【特許文献1】実開平6−15353号公報
【特許文献2】特開2001−119218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した伸張収納可能な形式のアンテナ50の固定方法でアンテナ50をリアケース60に固定した場合において、携帯無線機をアンテナ50を下に向けて落下させてしまい、ストレスがアンテナに架かったとしても、アンテナが収納されて落下衝撃を和らげることができる。また、アンテナの破損が生じても、筐体を開けることなく、アンテナのみを交換することができる。
しかしながら、アンテナ収納部を筐体内に設ける必要があるため、筐体が大きくなるという欠点がある。
【0010】
これに対して、固定式アンテナの場合には、ねじで固定されている部分がリアケース60にアンテナ70が挿入されている位置が離れているので、アンテナ70から落下した場合の衝撃がアンテナ70とねじとの間に発生してしまい、アンテナ70が破損し易いという問題がある。リアケース内部でねじにより固定されている場合には、アンテナを交換するためには、リアケースを開けなければならいないという問題がある。
【0011】
また、リング63を用いてアンテナ70を固定する上記他の例の方法においては、リアケース60とアンテナ70との間のガタが小さくなるから、アンテナ70とリアケース60とが一体となり、携帯無線機を落下させてしまったときの衝撃がアンテナ70とリアケース60の両方に架かり、アンテナ70が破損し難くすることができるという有利な効果はあるが、リング63が小さく硬いため、アンテナ70をリアケース60に組み込むときに専用の治具を必要となるほか、アンテナの交換の際の嵌め込んであるリングを外す作業が面倒であるという問題がある。
【0012】
また、特許文献1でも、また、特許文献2でも、アンテナの軸を筐体又はアンテナ取り付けブロックのアンテナ挿入孔に挿入すること及びアンテナの軸を回動させるか又はその位置合わせをする必要とする。つまり、これら2つの動作が必須であり、そのための構成が必要不可欠である。構成の複雑化乃至アンテナの固定作業に煩雑さが生ずるという問題がある。
【0013】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、構成と取着性の簡易化により製造及び保守作業に容易性を齎し、かつ、強度の高い携帯無線機のアンテナ固定方法及びその装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、アンテナをリアケースのアンテナ挿通孔から挿入して上記アンテナを無線情報端末装置のケースに固定する無線情報端末装置のアンテナ固定方法に係り、固定金具のアンテナ挿通孔を上記リアケースのアンテナ挿通孔に位置合わせして上記固定金具を配置し、上記アンテナの挿入部を上記リアケース及び上記固定金具の上記アンテナ挿通孔内に差し込み、上記固定金具の背面を上記アンテナの上記挿通部の後部に形成された凹部の係止面で係止させ、上記固定金具を上記無線情報端末装置のケースに固定することを特徴としている。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の無線情報端末装置のアンテナ固定方法に係り、上記固定金具の配置は、上記リアケースの内壁面との間に固定金具用スリットを形成し、上記固定金具を上記固定金具用スリット内に移動可能に挿入して行うことを特徴としている。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の無線情報端末装置のアンテナ固定方法に係り、上記固定金具の配置は、上記固定金具をばね機構上に保持し、該ばね機構を上記リアケースに取着して支持するようにして行うことを特徴としている。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1、2又は3記載の無線情報端末装置のアンテナ固定方法に係り、上記固定金具の上記固定金具用スリット内への挿入部は平板に形成され、上記固定金具用スリットの上記挿入部の幅は、上記固定金具を移動可能に収容させるのに必要な幅であることを特徴としている。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の無線情報端末装置のアンテナ固定方法に係り、上記固定金具は、上記スリット内に収容されたとき、上記固定金具の上記アンテナ挿通孔の中心軸が上記リアケースの上記アンテナ挿通孔の中心軸から所定の間隔だけ変位されていることを特徴としている。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項4又は5記載の無線情報端末装置のアンテナ固定方法に係り、上記固定金具は、上記アンテナの挿入部の軸に向けて弾発力を与えられていることを特徴としている。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか一に記載の無線情報端末装置のアンテナ固定方法に係り、上記アンテナの挿入部は、テーパ部と該テーパ部に続く凹部とから成り、該凹部の後面が上記固定金具の後面と当接するとき上記挿入部を係止することを特徴としている。
【0021】
請求項8記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか一に記載の無線情報端末装置のアンテナ固定方法に係り、上記固定金具の上記無線情報端末装置のケースへの固定は、上記固定金具のねじ挿通孔と上記リアケースのねじ挿通孔にねじを通し、該ねじを上記無線情報端末装置のフロントケースのねじ部に螺入させて行うことを特徴としている。
【0022】
請求項9記載の発明は、アンテナ挿通孔を有するリアケースの該アンテナ挿通孔からアンテナを挿入して上記アンテナを無線情報端末装置のケースに固定する無線情報端末装置のアンテナ固定装置に係り、アンテナ挿通孔を有する固定金具と、該固定金具の上記アンテナ挿通孔と上記リアケースの上記アンテナ挿通孔とを位置合わせして上記固定金具を配置する配置手段と、上記アンテナの上記挿通部の後部に形成された凹部と、上記リアケース及び固定金具の上記アンテナ挿通孔内に差し込まれた上記アンテナの上記挿通部の上記凹部に上記固定金具を嵌入係止させた状態で上記固定金具を上記無線情報端末装置のケースに固定する固定手段とを備えたことを特徴としている。
【0023】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の無線情報端末装置のアンテナ固定装置に係り、上記配置手段は、上記リアケースの内壁面との間に形成された固定金具用スリットとを有し、上記固定金具を上記固定金具用スリット内に移動可能に挿入して構成されることを特徴としている。
【0024】
請求項11記載の発明は、請求項9記載の無線情報端末装置のアンテナ固定方法に係り、上記配置手段は、上記固定金具を保持するばね機構と、該ばね機構を上記リアケースに取着して支持する機構とを有して構成されることを特徴している。
【0025】
請求項12記載の発明は、請求項9、10又は11記載の無線情報端末装置のアンテナ固定装置に係り、上記固定金具の上記固定金具用スリット内への挿入部は平板に形成され、上記固定金具用スリットの上記挿入部の幅は、上記固定金具を移動可能に収容させるのに必要な幅であることを特徴としている。
【0026】
請求項13記載の発明は、請求項12記載の無線情報端末装置のアンテナ固定装置に係り、上記固定金具は、上記スリット内に収容されたとき、上記固定金具の上記アンテナ挿通孔の中心軸が上記リアケースの上記アンテナ挿通孔の中心軸から所定の間隔だけ変位されていることを特徴としている。
【0027】
請求項14記載の発明は、請求項12又は13記載の無線情報端末装置のアンテナ固定装置に係り、上記固定金具は、上記アンテナの挿入部の軸に向けて弾発力を与えられていることを特徴としている。
【0028】
請求項15記載の発明は、請求項9乃至14のいずれか一に記載の無線情報端末装置のアンテナ固定装置に係り、上記アンテナの挿入部は、テーパ部と該テーパ部に続く凹部とから成り、該凹部の後面が上記固定金具の後面と当接するとき上記挿入部を係止することを特徴としている。
【0029】
請求項16記載の発明は、請求項9乃至15のいずれか一に記載の無線情報端末装置のアンテナ固定装置に係り、上記固定手段は、上記固定金具のねじ挿通孔と上記リアケースのねじ挿通孔にねじを通し、該ねじを上記無線情報端末装置のフロントケースのねじ部に螺入させて固定するように構成されていることを特徴としている。
【0030】
請求項17記載の発明は、請求項16記載の無線情報端末装置のアンテナ固定装置に係り、上記固定手段は、回路基板の金属製ねじ挿通孔と、上記固定金具のねじ挿通孔と上記リアケースのねじ挿通孔にねじを通し、該ねじを上記無線情報端末装置のフロントケースのねじ部に螺入させて固定するように構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0031】
固定金具のアンテナ挿通孔をリアケースのアンテナ挿通孔に位置合わせして固定金具を配置し、アンテナの挿入部をリアケース及び固定金具のアンテナ挿通孔内に差し込み、固定金具の背面をアンテナの挿通部の後部に形成された凹部の係止面で係止させ、固定金具を無線情報端末装置のケースに固定するようにしているから、携帯無線機の落下時の衝撃によるアンテナの破損を防ぐことができる。携帯無線機の製造が容易になると共に、アンテナの交換等の保守作業が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
固定金具のアンテナ挿通孔をリアケースのアンテナ挿通孔に位置合わせして配置し、そのリアケース及び固定金具のアンテナ挿通孔内にアンテナの挿入部を差し込み、固定金具の背面をアンテナの挿通部の後部に形成された凹部の係止面で係止させ、その状態において固定金具を無線情報端末装置のケースに固定するようにして構成される。
【実施例1】
【0033】
図1は、この発明の実施例1である携帯無線機のアンテナ固定装置を構成するリアケース側の要部構成の斜視図、図2は、同携帯無線機のアンテナ固定装置を構成するフロントケース側の要部構成の斜視図、図3は、アンテナの側面図、図4の(A)は、同携帯無線機のアンテナ固定装置を構成する固定金具の斜視図、図4の(B)は、同携帯無線機のアンテナ固定装置を構成する固定金具の上面図、図5は、固定金具をリアケース内に収納させた状態を示す図、図6の(A)は、アンテナの挿通過程の初期段階を図解する横断面図、また、図6の(B)は、アンテナの挿通過程の最終段階を図解する横断面図である。
【0034】
この実施例の携帯無線機のアンテナ固定装置10は、アンテナの挿入部をリアケース及び固定金具のアンテナ挿通孔からリアケース内へ差し込んで行きアンテナの挿入部を固定金具に沿って摺動変位させ、固定金具を挿入部の凹部に嵌入係止させ、固定金具をフロントケースとリアケースとの間に共締めしてアンテナを固定する装置に係り、このアンテナ固定装置10は、図1に示すように、アンテナ12と、固定金具14と、リアケース16と、回路基板18と、リアケース16の側面壁16aに形成されたアンテナ挿通孔16bと、リアケース16の平面壁16cから直立して形成された案内筒20と、案内筒20に挿通されるねじ22(図5参照)と、リアケース16の平面壁16cに直立し、かつ、側面壁16aを囲むように形成された固定金具用スリット形成部24と、図2に示すように、リアケース16の案内筒20と対向して形成されるフロントケース26のねじ止め部28とにより構成されている。
【0035】
アンテナ12は、図3に示すように、キャップ部12aと挿入部12bとから成る。挿入部12bには、テーパ部13と、環状凹部15とが形成されている。挿入部12bの断面は円形に形成され、その径はアンテナ挿通孔16bより僅かに小さい。環状凹部15の幅は、固定金具14の幅よりも僅かに広い。
固定金具14は、図4に示すように、アンテナ12の挿入部12aを挿通するアンテナ挿通孔24hを有するアンテナ保持部14aと、アンテナ保持部14aの外周上から外方に突出する腕部14bと、腕部14bに固設された環状端子14cとを有して構成されている。
アンテナ保持部14aのアンテナ挿通孔24hの内径は、テーパ部13の最大径より僅かに大きい。
【0036】
回路基板18の金属製環状端子18aは、回路基板18に搭載されている整合回路及び無線回路19に接続されている。整合回路及び無線回路19は、先ず整合回路が上記金属製環状端子18aに接続され、続いて整合回路が無線回路に接続されている。
そして、固定金具用スリット形成部24は、モールド成形形式でリアケース16と一体に形成される。その固定金具用スリット形成部24には、ほぼ円形の切り欠き部24a及び固定金具14の腕部14bを上下動可能に受け入れるスリット24bが形成されている。
【0037】
次に、図1乃至図6を参照して、この実施例においてアンテナの固定について説明する。
リアケース16の平面壁16cを下側に位置させた状態で、携帯無線機10の固定金具用スリット形成部24のスリット24b内に、固定金具14を挿入する(図1の矢印13)。このとき、固定金具14は、固定金具用スリット形成部24のスリット24b内で上下方向、すなわち、リアケース16の開放方向に変位可能である。
【0038】
その後に、アンテナ12のテーパ部13をアンテナ挿通孔16bを通してリアケース16内へ差し込んで行く(図1の矢印17)。
その初期状態が、図6の(A)に示されている。すなわち、アンテナ12のテーパ部13の比較的径の小さい部位上に固定金具14のアンテナ挿通孔14hの上側内周面が位置している。図6の(A)及び(B)は、リアケース16及び固定金具用スリット形成部24を横断面で示す図である。
【0039】
そして、さらにアンテナ12のテーパ部13をリアケース16内へ差し込んで行く。それに伴って、固定金具14のアンテナ保持部14aは、テーパ部13のより径の大きい部位の方へ競り上がって行く。
遂には、アンテナ保持部14aのアンテナ差し込み方向後端が、テーパ部13の最大径の部位を通過したとき、そのアンテナ保持部14aは、環状凹部15に嵌入し、それ以上のテーパ部13、すなわち、アンテナ12の前進を止める、すなわち、アンテナ12を係止する(図6の(B))。
【0040】
この状態において、フロントケース26のねじ止め部28(図2)と、回路基板18の金属製環状端子18a(図5)と、固定金具14の環状端子14cと、案内筒20とを位置合わせし、ねじ22(図5)を案内筒20、固定金具14の環状端子14c、そして回路基板18の金属製環状端子18aを経てねじ止め部28に螺入させて(図1の矢印21)これらを共締めする。このようにして、固定金具14は固定される。したがって、アンテナ12は、リアケース16に固定される。
【0041】
このようにして、固定金具14の環状端子14cと電気的に接続される回路基板18の金属製環状端子18aは、整合回路及び無線回路19に接続される。この給電系統を介して、回路からの送信電力はアンテナ12に給電される一方、アンテナ12で受信した受信信号は無線回路に供給される。
【0042】
アンテナ12を交換する場合には、ねじ22を緩め、フロントケース24とリアケース14との間に隙間を与えることにより、固定金具14がスライドして固定金具14のアンテナ保持部14aがアンテナ12の環状凹部15から外れ、アンテナ12を引き出すことが可能になる。
【0043】
このように、この実施例の構成によれば、固定金具をアンテナの挿入部の環状凹部に嵌入係止させてその固定金具をフロントケース、回路基板の給電部及びリアケースと共締めして固定しているので、携帯無線機の落下時の衝撃によるアンテナの破損を防ぐことができる。
このようなアンテナの固定を簡易な構成で達成し、専用の工具を要せず取着性を向上させているため、携帯無線機の製造が容易になると共に、アンテナの交換等の保守作業が容易になる。
【実施例2】
【0044】
図7は、この発明の実施例2である携帯無線機のアンテナ固定装置を構成するリアケース側の要部構成の斜視図である。
この実施例の構成が、実施例1のそれと大きく異なる点は、実施例1のアンテナ固定装置を継受しつつ、アンテナ固定装置と回路基板とを給電金具で接続するようにした点である。
【0045】
すなわち、この実施例の携帯無線機のアンテナ固定装置10Aは、図7に示すように、実施例1における案内筒20と回路基板18との間の電気的接続を給電金具18bで行うように構成したことにその特徴部分がある。給電金具18bは、回路基板18に固定され、給電金具18bのパッド18cは、回路基板18に搭載されている整合回路及び無線回路19に接続されている。整合回路及び無線回路19は、先ず整合回路が上記パッド8cに接続され、続いて整合回路が無線回路に接続されている。
この構成を採用する理由は、回路基板18の位置と、環状端子14c、案内筒20との間の段差(高さの違い)がある場合に、これらを直接共締めし得ないのを回避するためである。
この構成以外のこの実施例の構成は、実施例1と同じであるので、同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その逐一の説明は省略する。
【0046】
次に、図7を参照して、この実施例のアンテナの固定について説明する。
この実施例においても、アンテナ12の挿入部12bのテーパ部13をリアケース16のアンテナ挿通孔16bに挿通して行き、固定金具14が環状凹部15に嵌入し、固定金具の後面が環状凹部15の後面に当接してアンテナ12を係止させることについては、実施例1と同じである。
【0047】
この状態において、フロントケース26のねじ止め部28(図2)と、給電金具18bのねじ挿通孔18h(図7)と、固定金具14の環状端子14cと、案内筒20とを位置合わせし、ねじ22(図5)を案内筒20、固定金具14の環状端子14c、そして給電金具18bのねじ挿通孔18hを経てねじ止め部28に螺入させてこれらを共締めする。このようにして、固定金具14は固定される。したがって、アンテナ12は、リアケース16及びフロントケース26に固定される。
【0048】
このようにして、固定金具14の環状端子14cと電気的に接続される給電金具18bは、整合回路及び無線回路19に接続される。この給電系統を介して、回路からの送信電力はアンテナ12に給電される一方、アンテナ12で受信した受信信号は無線回路に供給される。
【0049】
アンテナ12を交換する場合には、ねじ22を緩め、フロントケース24とリアケース14との間に隙間を与えることにより、固定金具14がスライドして固定金具14のアンテナ保持部14aがアンテナ12の環状凹部15から外れ、アンテナ12を引き出すことが可能になる。
【0050】
このように、この実施例の構成によれば、実施例1と同効が得られるほか、アンテナの固定における固定金具とアンテナとの間に段差(高さの違い)があるときこれを吸収して給電系の構成に自由度を与えることができる。
【実施例3】
【0051】
図8は、この発明の実施例3である無線携帯無線機のアンテナ固定装置の要部構成図である。
この実施例の構成が、実施例1のそれと大きく異なる点は、実施例1のアンテナ固定装置を継受しつつ、アンテナの挿入部と回路基板とを給電金具で接続するようにした点である。
すなわち、この実施例の携帯無線機のアンテナ固定装置10Bは、図8に示すように、実施例1におけるアンテナの挿入部12bと回路基板18との間の電気的接続を給電金具18dで直接行うように構成したことにその特徴部分がある。
その理由は、ねじボスと回路基板の段差や回路基板の大きさの制限により、回路基板の金属製環状端子18aが固定金具の環状端子14cと共締めされ得ないのを回避するためである。
【0052】
給電金具18dの一端18eは回路基板18に固定され、その一端18eは、回路基板18に搭載されている整合回路及び無線回路19に接続されている。整合回路及び無線回路19は、先ず整合回路が上記一端18eに接続され、続いて整合回路が無線回路に接続されている。
この構成以外のこの実施例の構成は、実施例1と同じであるので、同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その逐一の説明は省略する。
【0053】
次に、図8を参照して、この実施例のアンテナの固定について説明する。
この実施例においても、アンテナ12の挿入部12bをリアケース16のアンテナ挿通孔16bに挿通して行き、固定金具14が環状凹部15に嵌入し、固定金具の後面が環状凹部15の後面に当接してアンテナ12を係止させることについては、実施例1と同じである。
【0054】
そして、この状態において、フロントケース26のねじ止め部28(図2)と、固定金具14の環状端子14cと、案内筒20とを位置合わせし、ねじ22(図5)を案内筒20、そして固定金具14の環状端子14cを経てねじ止め部28に螺入させてこれらを共締めする。このようにして、固定金具14は固定される。したがって、アンテナ12は、リアケース16及びフロントケース26に固定される。
この固定が為されるとき、給電金具18dの他端18fは、上記係止によりアンテナ12のテーパ部13上に軽く弾接していたのが、強く弾接する。
【0055】
このようにして、アンテナ12のテーパ部13との間に電気的接続が確立される給電金具18dは、アンテナ整合回路及び無線回路に接続される。この給電系を介して、回路からの送信電力はアンテナ12に給電される一方、アンテナ12で受信した受信信号は無線回路に供給される。
【0056】
アンテナ12を交換する場合には、ねじ22を緩め、フロントケース24とリアケース14との間に隙間を与えることにより、固定金具14がスライドして固定金具14のアンテナ保持部14aがアンテナ12の環状凹部15から外れ、アンテナ12を引き出すことが可能になる。
【0057】
このように、この実施例の構成によれば、実施例1と同効が得られるほか、アンテナの固定における共締めに支障を来たすのを回避して給電系を確立することができる。
【0058】
以上、この発明の実施例を、図面を参照して詳述してきたが、この発明の具体的な構成は、これらの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもそれらはこの発明に含まれる。
例えば、固定金具用スリット形成部24は、リアケース16と別体に形成されてもよい。
スリット24b内に挿入されている平板の固定金具14のアンテナ挿通孔にアンテナ12のテーパ部13が差し込まれて行くとき、固定金具14がテーパ部13を競り上がって行き、そして環状凹部15に嵌入する例について説明したが、スリット24b内に挿入されたときの固定金具14のテーパ部13の差し込み方向における断面を差し込み方向の軸線に向けて鋭角な断面とし、かつ、テーパ部13の後部も同様の断面形状の溝にして実施することもできる。
【0059】
その断面形状の固定金具及び溝において、さらに、差し込み方向に対して垂直な面内で、かつ、所定の角度範囲内でばね力を固定金具14に与えるように構成し、固定金具14の溝への嵌入をより確実にするようにして実施することもできる。
上記所定の角度範囲は、例えば、固定金具14がスリット24b内に挿入された状態にあるときばね力が固定金具14に架からず、テーパ部13が挿入されてテーパ部13が競り上がって行く間は勿論、環状凹部15に固定金具14が嵌入している状態にあるときばね力が固定金具14に架かる角度である。
そして、固定金具14が環状凹部15に嵌入している状態において固定金具14に架かるばね力は、アンテナ12を引き抜くとき、固定金具14が環状凹部15から抜け出し得る大きさである。
【0060】
固定金具と回路基板との電気的な接続を上述した機械的な接続でなく、固定金具と回路基板とを柔らかい撚り線で予め接続して置き、その固定金具を上述した固定方法で固定してもよい。
実施例3において、給電金具18dの他端18fを固定金具14に弾接させるようにしてもよい。
【0061】
これらのいずれにおいても、スリット24bを形成することなしに、固定金具14の保持を上述したところと同効を奏し得る構成で実施できる。
例えば、固定金具14をばね機構上に保持し、そのばね機構をリアケース16に取着して支持する。そして、固定金具14の環状端子14cを、ねじ止め部28と金属製環状端子14aと案内筒20との間に位置させて共締めして固定する。
この固定前におけるばね力の与え方は、テーパ部13が挿入されない状態においてはばね力が固定金具14にほぼ架からず、テーパ部13が挿入されてテーパ部13が競り上がって行く間は勿論、環状凹部15に固定金具14が嵌入している状態にあるときばね力が固定金具14に架かる態様である。
そして、固定金具14が環状凹部15に嵌入している状態において固定金具14に架かるばね力は、アンテナ12を引き抜くとき、固定金具14が環状凹部15から抜け出し得る大きさである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
ここに開示している携帯無線機のアンテナ固定方法及びその装置は、各種の可搬型の無線機器、例えば、ワイヤレスの可搬型情報端末装置、ビデオカメラ、テレビ等においても利用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】この発明の実施例1である携帯無線機のアンテナ固定装置を構成するリアケース側の要部構成の斜視図である。
【図2】この発明の実施例1である携帯無線機のアンテナ固定装置を構成するフロントケース側の要部構成の斜視図である。
【図3】アンテナの側面図である。
【図4】同携帯無線機のアンテナ固定装置を構成する固定金具の斜視図及び上面図である。
【図5】固定金具をリアケース内に収納させた状態を示す図である。
【図6】アンテナの挿通過程の初期段階及び最終段階を図解する横断面図である。
【図7】この発明の実施例2である携帯無線機のアンテナ固定装置を構成するリアケース側の要部構成の斜視図である。
【図8】この発明の実施例3である無線携帯無線機のアンテナ固定装置の要部構成図である。
【図9】従来の伸張収納式アンテナの伸張状態、収納状態及び固定の説明図である。
【図10】従来の固定式アンテナの固定方法の1つの例を図解す斜視図である。
【図11】従来の固定式アンテナの固定方法の他の例を図解す斜視図である。
【符号の説明】
【0064】
10、10A、10B 携帯無線機
12 アンテナ
13 テーパ部(配置手段の一部)
14 固定金具(固定手段の一部)
15 環状凹部(凹部)
16 リアケース(配置手段の一部)
18 回路基板(固定手段の一部)
20 案内筒(固定手段の一部)
22 ねじ(固定手段の一部)
24 固定金具用スリット形成部(配置手段の残部)
26 フロントケース(固定手段の残部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナをリアケースのアンテナ挿通孔から挿入して前記アンテナを無線情報端末装置のケースに固定する無線情報端末装置のアンテナ固定方法であって、
固定金具のアンテナ挿通孔を前記リアケースのアンテナ挿通孔に位置合わせして前記固定金具を配置し、
前記アンテナの挿入部を前記リアケース及び前記固定金具の前記アンテナ挿通孔内に差し込み、
前記固定金具の背面を前記アンテナの前記挿通部の後部に形成された凹部の係止面で係止させ、
前記固定金具を前記無線情報端末装置のケースに固定することを特徴とする無線情報端末装置のアンテナ固定方法。
【請求項2】
前記固定金具の配置は、前記リアケースの内壁面との間に固定金具用スリットを形成し、前記固定金具を前記固定金具用スリット内に移動可能に挿入して行うことを特徴とする請求項1記載の無線情報端末装置のアンテナ固定方法。
【請求項3】
前記固定金具の配置は、前記固定金具をばね機構上に保持し、該ばね機構を前記リアケースに取着して支持するようにして行うことを特徴とする請求項1記載の無線情報端末装置のアンテナ固定方法。
【請求項4】
前記固定金具の前記固定金具用スリット内への挿入部は平板に形成され、前記固定金具用スリットの前記挿入部の幅は、前記固定金具を移動可能に収容させるのに必要な幅であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の無線情報端末装置のアンテナ固定方法。
【請求項5】
前記固定金具は、前記スリット内に収容されたとき、前記固定金具の前記アンテナ挿通孔の中心軸が前記リアケースの前記アンテナ挿通孔の中心軸から所定の間隔だけ変位されていることを特徴とする請求項4記載の無線情報端末装置のアンテナ固定方法。
【請求項6】
前記固定金具は、前記アンテナの挿入部の軸に向けて弾発力を与えられていることを特徴とする請求項4又は5記載の無線情報端末装置のアンテナ固定方法。
【請求項7】
前記アンテナの挿入部は、テーパ部と該テーパ部に続く凹部とから成り、該凹部の後面が前記固定金具の後面と当接するとき前記挿入部を係止することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一に記載の無線情報端末装置のアンテナ固定方法。
【請求項8】
前記固定金具の前記無線情報端末装置のケースへの固定は、前記固定金具のねじ挿通孔と前記リアケースのねじ挿通孔にねじを通し、該ねじを前記無線情報端末装置のフロントケースのねじ部に螺入させて行うことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一に記載の無線情報端末装置のアンテナ固定方法。
【請求項9】
アンテナ挿通孔を有するリアケースの該アンテナ挿通孔からアンテナを挿入して前記アンテナを無線情報端末装置のケースに固定する無線情報端末装置のアンテナ固定装置であって、
アンテナ挿通孔を有する固定金具と、
該固定金具の前記アンテナ挿通孔と前記リアケースの前記アンテナ挿通孔とを位置合わせして前記固定金具を配置する配置手段と、
前記アンテナの前記挿通部の後部に形成された凹部と、
前記リアケース及び固定金具の前記アンテナ挿通孔内に差し込まれた前記アンテナの前記挿通部の前記凹部に前記固定金具を嵌入係止させた状態で前記固定金具を前記無線情報端末装置のケースに固定する固定手段とを備えたことを特徴とする無線情報端末装置のアンテナ固定装置。
【請求項10】
前記配置手段は、前記リアケースの内壁面との間に形成された固定金具用スリットとを有し、前記固定金具を前記固定金具用スリット内に移動可能に挿入して構成されることを特徴とする請求項9記載の無線情報端末装置のアンテナ固定装置。
【請求項11】
前記配置手段は、前記固定金具を保持するばね機構と、該ばね機構を前記リアケースに取着して支持する機構とを有して構成されることを特徴とする請求項9記載の無線情報端末装置のアンテナ固定方法。
【請求項12】
前記固定金具の前記固定金具用スリット内への挿入部は平板に形成され、前記固定金具用スリットの前記挿入部の幅は、前記固定金具を移動可能に収容させるのに必要な幅であることを特徴とする請求項9、10又は11記載の無線情報端末装置のアンテナ固定装置。
【請求項13】
前記固定金具は、前記スリット内に収容されたとき、前記固定金具の前記アンテナ挿通孔の中心軸が前記リアケースの前記アンテナ挿通孔の中心軸から所定の間隔だけ変位されていることを特徴とする請求項12記載の無線情報端末装置のアンテナ固定装置。
【請求項14】
前記固定金具は、前記アンテナの挿入部の軸に向けて弾発力を与えられていることを特徴とする請求項12又は13記載の無線情報端末装置のアンテナ固定装置。
【請求項15】
前記アンテナの挿入部は、テーパ部と該テーパ部に続く凹部とから成り、該凹部の後面が前記固定金具の後面と当接するとき前記挿入部を係止することを特徴とする請求項9乃至14のいずれか一に記載の無線情報端末装置のアンテナ固定装置。
【請求項16】
前記固定手段は、前記固定金具のねじ挿通孔と前記リアケースのねじ挿通孔にねじを通し、該ねじを前記無線情報端末装置のフロントケースのねじ部に螺入させて固定するように構成されていることを特徴とする請求項9乃至15のいずれか一に記載の無線情報端末装置のアンテナ固定装置。
【請求項17】
前記固定手段は、回路基板の金属製ねじ挿通孔と、前記固定金具のねじ挿通孔と前記リアケースのねじ挿通孔にねじを通し、該ねじを前記無線情報端末装置のフロントケースのねじ部に螺入させて固定するように構成されていることを特徴とする請求項16記載の無線情報端末装置のアンテナ固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−33408(P2006−33408A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209132(P2004−209132)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】