説明

携帯無線機

【課題】筐体構造として回転2軸構造を持ち、この回転2軸構造特有の通常閉じ状態とビューワ状態の双方の状態において高いアンテナ性能が得られる携帯無線機を提供する。
【解決手段】表示部41が露出しない状態で閉じられた場合は、表示部41が露出した状態で閉じられた場合よりも第1、第2アンテナ素子23、43の間の距離を確保する。これにより、アンテナ相互の影響を低減でき、第1、第2アンテナ素子23、43の夫々において高いアンテナ性能を確保できる。表示部41が露出した状態で閉じられた場合は、表示部41が露出しない状態で閉じられた場合よりも第1、第2アンテナ素子23、43が近接するように配置する。これにより、第1、第2アンテナ素子23、43が結合し、第2アンテナ素子43を給電素子、第1アンテナ素子23を反射素子として用いることができ、表示部41側に強い指向性を持ったアンテナを実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転2軸構造を持つ折畳み式の携帯無線機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話機には、セルラ通信を行うための無線システム以外に複数の無線システム(GPS(Global Positioning System、全地球測位システム)、ブルートゥース(登録商標)、ワンセグなど)が搭載されるようになってきている。また、折畳み式などに代表されるように、用途に応じてユーザが筐体状態を選択できるものもある。例えば、特許文献1で開示された折畳み式携帯無線機は、上筐体に内蔵アンテナ、下筐体に導体素子をそれぞれ備え、閉じ状態を選択したときに、下筐体の導体素子が上筐体の内蔵アンテナと結合して指向性を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−037415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、筐体状態を選択できる携帯無線機には、回転2軸構造(“スィーベル構造”とも呼ばれる)を持つものがあり、この回転2軸構造を持つ携帯無線機では、待ち受けでは閉じ状態(“通常閉じ状態”と呼ばれる)、通話時では開き状態、ワンセグ視聴時では画面が見える状態で閉じるビューワ状態を選択することができる。しかしながら、この回転2軸構造を持つ携帯無線機にあっては、閉じ状態とビューワ状態の双方の状態において満足できるアンテナ性能が得られてないという課題がある。
【0005】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、筐体構造として回転2軸構造を持ち、この回転2軸構造特有の通常閉じ状態とビューワ状態の双方の状態において高いアンテナ性能が得られる携帯無線機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の携帯無線機は、第1筐体と、第2筐体と、第3筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体とを第1の方向に回転自在に接続する第1ヒンジ部と、前記第2筐体と前記第3筐体とを第2の方向に回転自在に接続する第2ヒンジ部と、前記第3筐体に配置された表示部と、前記第1筐体内に配置され、第1無線システム用の第1アンテナ素子と、前記第3筐体内に配置され、第2無線システム用の第2アンテナ素子と、前記第1アンテナ素子と前記第1筐体内の回路基板のグランドパターンとの間に設けられ、前記第2無線システムの動作周波数において特定のインピーダンスで終端する終端部と、を備え、前記第1無線システムと前記第2無線システムとで動作周波数が異なり、前記表示部が露出した状態で前記第1筐体と前記第2筐体とが閉じられた状態において、前記第1アンテナ素子と前記第2アンテナ素子とが近接し、前記第1アンテナ素子と前記第2アンテナ素子とは、前記表示部が露出しない状態で閉じられた場合よりも前記表示部が露出した状態で閉じられた場合の方が近接するように配置されており、前記表示部が露出した状態で閉じられた場合において、前記第1アンテナ素子が前記第2アンテナ素子の反射素子として動作することを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子は、表示部が露出しない状態で閉じられた場合(即ち“通常閉じ状態”で閉じられた場合)よりも表示部が露出した状態で閉じられた場合(即ち“ビューワ状態”で閉じられた場合)の方が近接するように配置されるので、通常閉じ状態では第1アンテナ素子と第2アンテナ素子の間(アンテナ間)の距離を確保することができ、アンテナ相互の影響を低減できる。これにより、第1アンテナ素子及び第2アンテナ素子のそれぞれにおいて高いアンテナ性能を確保することができる。一方、ビューワ状態では、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子とが結合し、第2アンテナ素子を給電素子、第1アンテナ素子を反射素子として用いることができるので、表示部側に強い指向性を得ることができる。
【0008】
上記構成において、前記第2無線システムはGPSであることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、第2無線システムをGPSとした場合、ビューワ状態において表示部側に強い指向性が得られるので好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、筐体構造として回転2軸構造を持ち、この回転2軸構造特有の通常閉じ状態とビューワ状態の双方の状態において高いアンテナ性能が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係る携帯無線機の概観を示す斜視図
【図2】図1の携帯無線機を通常閉じ状態で閉じた状態とビューワ状態で閉じた状態を示す概略図
【図3】図1の携帯無線機の終端部の概略構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係る携帯無線機の概観を示す斜視図であり、同図の(a)は縦開き状態を示し、(b)は縦開き状態、且つ第3筐体4を略90度回転させた状態を示している。同図において、本実施の形態に係る携帯無線機1は、回転2軸構造を持つ折畳み式の携帯無線機であり、第1ヒンジ部10が、第1筐体2と第2筐体3を回動自在に連結して第2筐体3の縦開き方向A(図1の(a)参照、第1方向)の回動を可能にし、第2ヒンジ部11が、第2筐体3と第3筐体4を回動自在に連結して第3筐体4の左右方向B(図1の(b)参照、第2方向)の回動を可能にしている。第1筐体2の正面側にはキー操作部21が設けられている。第3筐体4の正面側には表示部41が設けられている。
【0014】
図2の(a)は図1の携帯無線機1を通常閉じ状態で閉じた状態を示す概略図、図2の(b)は図1の携帯無線機1をビューワ状態で閉じた状態を示す概略図である。同図において、携帯無線機1は、第1筐体2側に、第1無線システムを実装した回路基板22と、第1アンテナ素子23と、終端部24とを備え、また第3筐体4側に、第2無線システムを実装した回路基板42と、第2アンテナ素子43とを備えている。
【0015】
回路基板22に実装された第1無線システムと回路基板42に実装された第2無線システムとで動作周波数が異なっている。例えば、第1無線システムがブルートゥースで、第2無線システムがGPSの場合、第1無線システムの動作周波数は2.45GHz帯となり、第2無線システムの動作周波数は1.5GHz帯となる。終端部24は、第1アンテナ素子23と回路基板22のグランドパターンとの間に介挿されており、第2無線システムの動作周波数において特定のインピーダンスで終端する。図3は、終端部24の概略構成を示すブロック図である。同図において、終端部24は、第2無線システムの動作周波数を遮断する遮断回路241と、第1アンテナ素子23の位相を調整する位相調整回路242とを備える。
【0016】
表示部41が露出しない状態で閉じられた場合(“通常閉じ状態”で閉じられた場合)は、表示部41が露出した状態で閉じられた場合(“ビューワ状態”で閉じられた場合)よりも第1アンテナ素子23と第2アンテナ素子43の間の距離を確保することができ、相互の影響を低減できる。これにより、第1アンテナ素子23及び第2アンテナ素子43のそれぞれにおいて高いアンテナ性能を確保することができる。
【0017】
一方、表示部41が露出した状態で閉じられた場合(“ビューワ状態”で閉じられた場合)は、表示部41が露出しない状態で閉じられた場合よりも第1アンテナ素子23と第2アンテナ素子43とが近接するように配置されるので、第1アンテナ素子23と第2アンテナ素子43とが結合し、第2アンテナ素子43を給電素子、第1アンテナ素子23を反射素子として用いることができ、表示部41側に強い指向性を持ったアンテナを実現できる。終端部24の遮断回路241が第2無線システムの動作周波数を遮断するので、第1アンテナ素子23は第2無線システムの動作周波数では動作しない。また、終端部24の位相調整回路242で指向性の調整ができる。これにより、第2無線システムにGPS等の無線システムを好適に用いることができる。なお、指向特性は図2の(b)に示すように矢印C方向となる。
【0018】
このように、表示部41が露出しない状態で閉じられた場合は、第1アンテナ素子23と第2アンテナ素子43の間の距離を確保することができ、第1アンテナ素子23及び第2アンテナ素子43のそれぞれにおいて高いアンテナ性能を確保することができる。また、表示部41が露出した状態で閉じられた場合は、第2アンテナ素子43を給電素子、第1アンテナ素子23を反射素子として用いることができ、表示部41側に強い指向性を持ったアンテナを実現できる。
【0019】
このように本実施の形態に係る携帯無線機1によれば、第1筐体2と、第2筐体3と、第3筐体4と、第1筐体2と第2筐体3とを縦開き方向A(第1方向)に回転自在に接続する第1ヒンジ部10と、第2筐体3と第3筐体4とを左右方向B(第2方向)に回転自在に接続する第2ヒンジ部11と、第3筐体4に配置された表示部41と、第1筐体2内に配置され、第1無線システム用の第1アンテナ素子23と、第3筐体4内に配置され、第2無線システム用の第2アンテナ素子43と、第1アンテナ素子23と第1筐体2内の回路基板22のグランドパターンとの間に設けられ、第2無線システムの動作周波数において特定のインピーダンスで終端する終端部24とを備え、第1無線システムと第2無線システムとで動作周波数が異なり、表示部41が露出した状態で第1筐体2と第2筐体3とが閉じられた状態(ビューワ状態)において、第1アンテナ素子23と第2アンテナ素子43とが近接し、第1アンテナ素子23と第2アンテナ素子43とは、表示部41が露出しない状態で閉じられた場合(通常閉じ状態の場合)よりも表示部41が露出した状態で閉じられた場合の方が近接するように配置されており、表示部41が露出した状態で閉じられた場合(ビューワ状態の場合)において、第1アンテナ素子23が第2アンテナ素子43の反射素子として動作するので、通常閉じ状態とビューワ状態の双方の状態において高いアンテナ性能を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、筐体構造として回転2軸構造を持ち、この回転2軸構造特有の通常閉じ状態とビューワ状態の双方の状態において高いアンテナ性能が得られるといった効果を有し、回転2軸構造を持つ携帯電話機やPHS(Personal Handy-Phone System)等の携帯無線機への適用が可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 携帯無線機
2 第1筐体
3 第2筐体
4 第3筐体
10 第1ヒンジ部
11 第2ヒンジ部
21 キー操作部
22、42 回路基板
23 第1アンテナ素子
24 終端部
41 表示部
43 第2アンテナ素子
241 遮断回路
242 位相調整回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と、
第2筐体と、
第3筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体とを第1の方向に回転自在に接続する第1ヒンジ部と、
前記第2筐体と前記第3筐体とを第2の方向に回転自在に接続する第2ヒンジ部と、
前記第3筐体に配置された表示部と、
前記第1筐体内に配置され、第1無線システム用の第1アンテナ素子と、
前記第3筐体内に配置され、第2無線システム用の第2アンテナ素子と、
前記第1アンテナ素子と前記第1筐体内の回路基板のグランドパターンとの間に設けられ、前記第2無線システムの動作周波数において特定のインピーダンスで終端する終端部と、を備え、
前記第1無線システムと前記第2無線システムとで動作周波数が異なり、
前記表示部が露出した状態で前記第1筐体と前記第2筐体とが閉じられた状態において、前記第1アンテナ素子と前記第2アンテナ素子とが近接し、
前記第1アンテナ素子と前記第2アンテナ素子とは、前記表示部が露出しない状態で閉じられた場合よりも前記表示部が露出した状態で閉じられた場合の方が近接するように配置されており、
前記表示部が露出した状態で閉じられた場合において、前記第1アンテナ素子が前記第2アンテナ素子の反射素子として動作することを特徴とする携帯無線機。
【請求項2】
前記第2無線システムはGPSであることを特徴とする請求項1に記載の携帯無線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−244071(P2011−244071A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112141(P2010−112141)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】