携帯用切断機
【課題】被加工部材を切断する際に開閉カバーを自動的に開くようにし、これにより使用者への負担を軽減しつつ切断作業の効率向上を図る。
【解決手段】ハウジング11の鋸刃13よりも木材Wの導入側に、木材Wの非接触状態においてベース16の他側に突出し、木材Wの接触によりベース16の一側に移動する可動部材21を設け、開閉カバー18と可動部材21との間に、可動部材21の移動により開閉カバー18を開く方向に回動させる紐状部材23を設けた。木材Wの接触により可動部材21が移動し、紐状部材23を介して開閉カバー18を開く方向に回動する。使用者の操作に依らず木材Wの接触により自動的に開閉カバー18を開く方向に回動でき、使用者への負担を軽減しつつ切断作業の効率向上を図ることが可能となる。
【解決手段】ハウジング11の鋸刃13よりも木材Wの導入側に、木材Wの非接触状態においてベース16の他側に突出し、木材Wの接触によりベース16の一側に移動する可動部材21を設け、開閉カバー18と可動部材21との間に、可動部材21の移動により開閉カバー18を開く方向に回動させる紐状部材23を設けた。木材Wの接触により可動部材21が移動し、紐状部材23を介して開閉カバー18を開く方向に回動する。使用者の操作に依らず木材Wの接触により自動的に開閉カバー18を開く方向に回動でき、使用者への負担を軽減しつつ切断作業の効率向上を図ることが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機により回転駆動される鋸刃と、ハウジングに回動自在に設けられ、不使用時に鋸刃を覆い使用時に鋸刃を露出させる開閉カバーと、を備えた携帯用切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被加工部材としての木材等を切断する携帯用切断機としては、例えば、電動機により回転駆動される鋸刃(チップソー)を備えた携帯用切断機が知られている。このような鋸刃を備えた携帯用切断機は、使用者により把持されるハンドル部を備えたハウジングを有している。ハウジングの内部には、電動機(電動モータ)が収容され、ハウジングの下部には木材等の平面に沿って摺接するベースが設けられている。ハウジングには、鋸刃のベースよりも一側(上方側)を覆う鋸カバーが一体に設けられている。また、ハウジングには、鋸刃のベースよりも他側(下方側)を覆う開閉カバーが回動自在に設けられている。
【0003】
ベースはハウジングに対して回動自在に設けられ、ベースを回動させることで当該ベースと鋸刃とのなす角度を調整し、これにより鋸刃の切断角度、つまり木材等の切断角度を調整するようにしている。このようにベースと鋸刃とのなす角度を調整することで、木材等の角部、つまり切断部分を所定角度(例えば45°等)で切り落とせるようにしている。
【0004】
開閉カバーは、携帯用切断機の不使用時に鋸刃を覆うようになっており、これにより携帯時等において使用者等が誤って鋸刃に触れるのを抑制している。この開閉カバーには、木材等を切断する際に木材等の端部が接触するようになっており、これにより木材等の切断作業が進むに連れて開閉カバーは徐々に大きく開くようになる。このように、開閉カバーは木材等の接触によりハウジングに対して回動して徐々に鋸カバー側に移動し、これにより鋸刃のベースよりも他側が徐々に露出されるようになっている。
【0005】
このような携帯用切断機(丸のこ)としては、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1に記載された技術は、ギヤカバー(ハウジング)に対して回動自在に安全カバー(開閉カバー)を設け、さらに使用者により押圧操作可能な開閉レバーを設けている。そして、使用者によりスイッチを操作することで丸鋸刃(鋸刃)が回転駆動され、その状態のもとで開閉レバーを押圧操作することで、安全カバーが少し開かれるようになっている。その後、木材等の切断作業が進むに連れて、安全カバーはさらに徐々に開かれるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−087004号公報(第2図,第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された技術によれば、使用者は、携帯用切断機のハンドル部を把持してスイッチを手前に押圧操作しつつ、開閉レバーをその逆側に押圧操作する必要があった。すなわち、使用者が手動で開閉レバーを操作するため操作性が悪かった。また、スイッチと開閉レバーとの操作方向が逆向きであるため、使用者のハンドル部を把持する把持力が不安定になる虞があった。把持力が不安定になると、携帯用切断機の鋸刃を木材等の切断箇所に精度良く誘導できなくなる等の不具合を生じ、よって、高精度が要求される切断作業が困難となり、ひいては切断作業の効率低下を招くといった問題を生じ得る。
【0008】
本発明の目的は、被加工部材を切断する際に開閉カバーを自動的に開くようにし、これにより使用者への負担を軽減しつつ切断作業の効率向上を図ることができる携帯用切断機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の携帯用切断機は、ハウジングと、該ハウジングに収容される電動機と、該電動機により回転駆動されて被加工部材を切断する鋸刃と、前記ハウジングに設けられて前記被加工部材に摺接するベースと、前記ハウジングに一体に設けられて前記鋸刃の前記ベースよりも一側を覆う鋸カバーと、前記ハウジングに回動自在に設けられて前記鋸刃の前記ベースよりも他側を覆う開閉カバーとを備えた携帯用切断機において、前記ハウジングの前記鋸刃よりも前記被加工部材の導入側において前記被加工部材との接触により作動し、前記開閉カバーを回動させる開閉カバー回動手段を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の携帯用切断機は、前記開閉カバー回動手段は、前記ハウジングの前記鋸刃よりも前記被加工部材の導入側に設けられ、前記被加工部材の非接触状態において前記ベースの他側に突出し、前記被加工部材の接触により前記ベースの一側に移動する可動部材と、前記開閉カバーと前記可動部材との間に設けられ、前記可動部材の移動により前記開閉カバーを開く方向に回動させるカバー操作部材と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の携帯用切断機は、前記カバー操作部材を紐状部材とし、該紐状部材は、前記可動部材の移動により前記開閉カバーを引っ張って開く方向に回動させることを特徴とする。
【0012】
本発明の携帯用切断機は、前記カバー操作部材を棒状部材とし、該棒状部材は、前記可動部材の移動により前記開閉カバーを押し付けて開く方向に回動させることを特徴とする。
【0013】
本発明の携帯用切断機は、前記可動部材に一対の対向壁部を設け、前記可動部材が前記ベースの一側に移動した際に、前記各対向壁部により前記鋸刃の側面を覆うことを特徴とする。
【0014】
本発明の携帯用切断機は、前記可動部材を透明な材料で形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の携帯用切断機によれば、ハウジングの鋸刃よりも被加工部材の導入側において被加工部材との接触により作動し、開閉カバーを回動させる開閉カバー回動手段を設ける。これにより、被加工部材との接触により自動的に開閉カバーを開く方向に回動できる。したがって、使用者が手動で開閉カバーを回動させる必要が無いため操作性を向上することができる。
【0016】
本発明の携帯用切断機によれば、開閉カバー回動手段は、ハウジングの前記鋸刃よりも被加工部材の導入側に設けられ、被加工部材の非接触状態においてベースの他側に突出し、被加工部材の接触によりベースの一側に移動する可動部材と、開閉カバーと可動部材との間に設けられ、可動部材の移動により開閉カバーを開く方向に回動させるカバー操作部材と、を有する。これにより、被加工部材の接触により可動部材が移動し、カバー操作部材を介して開閉カバーを開く方向に回動できる。したがって、使用者の操作に依らず被加工部材の接触により自動的に開閉カバーを開く方向に回動でき、使用者によるハンドル部の把持力が不安定になるのを防止して、ひいては鋸刃を被加工部材の切断箇所に精度良く誘導できるようになる。よって、使用者への負担を軽減しつつ切断作業の効率向上を図ることが可能となる。
【0017】
本発明の携帯用切断機によれば、カバー操作部材を紐状部材とし、該紐状部材は、可動部材の移動により開閉カバーを引っ張って開く方向に回動させるので、携帯用切断機の重量を増加させることなく、比較的安価にカバー操作部材を形成することができる。
【0018】
本発明の携帯用切断機によれば、カバー操作部材を棒状部材とし、該棒状部材は、可動部材の移動により開閉カバーを押し付けて開く方向に回動させるので、棒状部材の剛性によって開閉カバーの開度を高精度で設定することができる。
【0019】
本発明の携帯用切断機によれば、可動部材に一対の対向壁部を設け、可動部材がベースの一側に移動した際に、各対向壁部により鋸刃の側面を覆うので、各対向壁部により被加工部材の切断作業時に発生する切粉の飛散を防止することができる。
【0020】
本発明の携帯用切断機によれば、可動部材を透明な材料で形成するので、可動部材が鋸刃の側面を覆っても、鋸刃による被加工部材の切断位置を容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る丸のこの側面を示す平面図である。
【図2】図1の丸のこを上方から見た平面図である。
【図3】木材導入工程を説明する図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】開閉カバーの自動開き工程を説明する説明図である。
【図5】開閉カバーの木材による開き工程を説明する説明図である。
【図6】開閉カバーの自動閉じ工程を説明する説明図である。
【図7】第2実施の形態に係る丸のこの図3(木材導入工程)に対応する説明図である。
【図8】第2実施の形態に係る丸のこの図4(自動開き工程)に対応する説明図である。
【図9】第2実施の形態に係る丸のこの図5(木材による開き工程)に対応する説明図である。
【図10】第3実施の形態に係る丸のこの図3(木材導入工程)に対応する説明図である。
【図11】第3実施の形態に係る丸のこの図4(自動開き工程)に対応する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の第1実施の形態に係る丸のこの側面を示す平面図を、図2は図1の丸のこを上方から見た平面図を、図3は木材導入工程を説明する図2のA−A線に沿う断面図を、図4は開閉カバーの自動開き工程を説明する説明図を、図5は開閉カバーの木材による開き工程を説明する説明図を、図6は開閉カバーの自動閉じ工程を説明する説明図をそれぞれ表している。
【0024】
図1〜3に示すように、携帯用切断機としての丸のこ10は、被加工部材としての木材Wを切断するための動力工具であって、丸のこ10は、その外郭をなすハウジング11を備えている。ハウジング11はプラスチック等の樹脂材料により所定形状に形成され、当該ハウジング11は、モータ収容部11a,ハンドル部11bおよび鋸カバー11cを備えている。そして、これらのモータ収容部11a,ハンドル部11bおよび鋸カバー11cは、それぞれ締結ネジ等(図示せず)により一体化されている。
【0025】
モータ収容部11aの内部には、図2に示すように、電動機としての電動モータ12が収容されている。電動モータ12はブラシ付きの電動モータであって、電源コードPCからブラシを介してアーマチュアに巻き付けたコイル(何れも図示せず)に駆動電流を供給することで、回転軸12a(図1参照)が所定の回転数/回転トルクで回転するようになっている。回転軸12aには、木材Wを切断するための鋸刃(チップソー)13が一体回転可能に固定されており、これにより鋸刃13は回転軸12aとともに回転するようになっている。なお、鋸刃13は、図1に示すように反時計方向(図中矢印R1方向)に回転するようになっている。
【0026】
図1,3に示すように、ハンドル部11bには、使用者により操作されるスイッチ14が設けられ、当該スイッチ14を引き込むよう操作することで、電動モータ12に駆動電流が供給されるようになっている。また、ハンドル部11bのスイッチ14よりも前方側(図中右側)には、ライトスイッチ15が設けられ、当該ライトスイッチ15を操作することで、丸のこ10の前方側を照らすための照明(図示せず)が点灯するようになっている。これにより、建設中の薄暗い家屋内等であっても、木材Wの切断作業を確実に行えるようになっている。
【0027】
図1,3に示すように、ハウジング11の下方側、つまり木材W側には、木材Wの平面に摺接して丸のこ10の切断方向への移動を案内するベース16が設けられている。ベース16はハウジング11に対して回動自在に設けられ、ベース16をハウジング11に対して回動させることで、ベース16と鋸刃13とのなす角度を調整できるようにしている。具体的には、ベース16とハウジング11との間に設けられた傾斜調整部材17を調整することで、ベース16と鋸刃13とのなす角度を任意(例えば45°)に調整することができる。これにより、木材Wの角部を任意の角度で切り落とせるようになっている。
【0028】
また、傾斜調整部材17は、ベース16の底面からの鋸刃13の突出量を調整する切込深さ調整機構も兼ねている。すなわち、鋸カバー11cの前端側(図中右側)が、傾斜調整部材17とピン(詳細図示せず)により連結されており、当該ピンを中心に鋸カバー11cの後方部分(図中左側)をベース16に対して回転(図1で時計回り)することにより、ベース16の底面からの鋸刃13の突出量を変更することができる。これにより、木材Wを切断するだけでなく、木材Wに溝を形成することもできるようになっている。
【0029】
図1に示すように、鋸カバー11cは略円弧形状に形成され、かつ断面が略U字形状に形成されており、これにより鋸カバー11cは、鋸刃13のベース16よりも一側(図中上側)の周囲を覆うようになっている。また、鋸カバー11cには、鋸刃13の回転方向の目印となる矢印表示Dが設けられており、これにより、鋸刃13を交換したりする場合等において、鋸刃13の回転方向を容易に把握することができ、ひいては作業効率の向上を図れるようにしている。
【0030】
図1,3に示すように、ハウジング11の下方側、つまり木材W側には、鋸刃13のベース16よりも他側(図中下側)の周囲を覆う開閉カバー18が設けられている。開閉カバー18は、鋸カバー11cと同様に略円弧形状に形成され、かつ断面が略U字形状に形成されている。開閉カバー18は、プラスチック等の樹脂材料によって形成され、ハウジング11に対して回転軸12aを中心に回動自在に設けられている。開閉カバー18は、鋸カバー11cよりも若干小径に形成されており、これにより開閉カバー18は、開く方向に回動した際に、鋸カバー11cの内側に入り込めるようになっている(図5参照)。
【0031】
開閉カバー18の図中右側、つまり木材Wの導入側には、木材Wの端部が接触する接触円弧部18aが形成されており、これにより、木材Wの接触による開閉カバー18の開く方向(図1中矢印R2方向)への回動を引っ掛かり無くスムーズに行えるようにしている。ここで、丸のこ10の不使用時における開閉カバー18の開度、つまり図1に示す状態のもとで、開閉カバー18の接触円弧部18a側とベース16とによって形成される角度α°(不使用時)は、略40°に設定されている。これにより、丸のこ10の不使用時において、使用者等が誤って鋸刃13に触れたりするのを抑制している。
【0032】
図3に示すように、ハウジング11には、木材Wの接触により開閉カバー18を自動的に開くカバー操作機構(開閉カバー回動手段)20が設けられ、当該カバー操作機構20は、ハウジング11の鋸刃13よりも木材Wの導入側において、木材Wとの接触により作動して開閉カバー18を回動させるようになっている。
【0033】
カバー操作機構20は、ハウジング11の鋸刃13よりも木材Wの導入側に設けられた可動部材21と、開閉カバー18の回転中心C(回転軸12a)の近傍に一体に設けられたフック部22とを備えている。また、可動部材21とフック部22との間には、木材Wから可動部材21に伝達される操作力をフック部22に伝達するカバー操作部材としての紐状部材23が設けられ、フック部22とハウジング11との間には、開いた開閉カバー18を閉じる方向に引っ張る引張バネ24が設けられている。このように、カバー操作機構20は、可動部材21,フック部22,紐状部材23および引張バネ24とから構成されている。
【0034】
可動部材21は、プラスチック等の樹脂材料により略L字形状に形成され、当該L字形状の中央部分が回動ピンPを介してハウジング11に回動自在に連結されている。可動部材21の回動ピンPよりも図中下方側には、略扇形形状に形成されて木材Wが接触する接触部21aが設けられ、可動部材21の回動ピンPよりも図中上方側には、紐状部材23の一端側が取り付けられて当該紐状部材23を引っ張る略棒状の引張部21bが設けられている。
【0035】
そして、可動部材21を構成する接触部21aは、木材Wの非接触状態(図1,3,6の状態)においてはベース16の他側(図中下側)に突出し、木材Wの接触(図4,5の状態)によりベース16の一側(図中上側)に移動するようになっている。これにより、木材Wが接触部21aに接触することで引張部21bが紐状部材23を引っ張り、ひいては開閉カバー18が開かれる。ここで、カバー操作機構20による開閉カバー18の開度は、図1に示すように実線位置から二点鎖線位置の間の角度β°に設定されている(β°<α°)。具体的には、角度β°は略20°に設定されており、したがって、木材Wによりカバー操作機構20が操作されると、木材Wと開閉カバー18との接触前において、開閉カバー18は合計α°+β°(略60°)の開度で開くことになる。
【0036】
フック部22には紐状部材23の他端側が取り付けられ、当該フック部22は、図3に示すように開閉カバー18が閉じた状態のもとで、回転軸12aの図中上側、つまり回転軸12aよりもハンドル部11b側に配置されている。そして、フック部22が紐状部材23によって引っ張られて図中右側に回動すると、これに伴い開閉カバー18が開く方向(時計方向)に回動する。一方、フック部22が引張バネ24によって引っ張られて図中左側に回動すると、これに伴い開閉カバー18が閉じる方向(反時計方向)に回動する。
【0037】
ここで、紐状部材23としては、柔軟性および強度を備えつつ耐久性に優れた合成繊維を撚ったもの、例えば、ポリエチレン製の撚紐等を用いるようにする。これにより、紐状部材23を軽量かつ安価に形成でき、丸のこ10の重量増加等を抑制することができる。また、引張バネ24の弾性力は、開閉カバー18を閉じるのに必要最小限の弾性力に設定し、これにより可動部材21が移動し難くなるのを抑制し、ひいては木材Wを傷付けないようにする。
【0038】
次に、以上のように構成した丸のこ10の動作、特にカバー操作機構20の動作について、図面を用いて詳細に説明する。
【0039】
[丸のこ不使用時]
丸のこ10を使用していない不使用時においては、スイッチ14はオフ状態にあり、よって電動モータ12は停止されて鋸刃13も停止状態にある。このとき、開閉カバー18には木材Wは接触しておらず、かつカバー操作機構20を構成する可動部材21の接触部21aにも木材Wは接触していない。したがって、フック部22が引張バネ24によって引っ張られて、開閉カバー18は閉じられた状態、つまり図1,3に示す開度α°の状態となっている。これにより、開閉カバー18は、鋸刃13のベース16よりも他側の周囲を覆い、使用者等が誤って鋸刃13に触れたりするのを抑制する。
【0040】
[木材導入工程]
丸のこ10により木材Wを切断する場合には、まず、木材Wの切断角度や切込深さを調整すべく、傾斜調整部材17を調整する。これにより、例えば、ベース16と鋸刃13とのなす角度を20°に調整し、木材Wの角部を20°で切り落とせるようにする。次に、図3に示すように、ベース16の前方側(図中右側)を木材Wに載置し、その状態のもとで鋸刃13と木材Wの切断すべき場所との位置合わせを行う。そして、使用者によりスイッチ14を操作して丸のこ10をオン状態とし、これにより電動モータ12が回転駆動されて鋸刃13も回転駆動される。その後、使用者により丸のこ10を矢印M方向(切断方向)に移動させていくことで、木材Wの端部が可動部材21に接触するようになる。
【0041】
[自動開き工程]
さらに丸のこ10を切断方向に移動させていくと、木材Wの端部が可動部材21の接触部21aに接触する。すると、矢印R3方向に可動部材21が回動ピンPを中心に回動し、図4に示すように接触部21aがベース16の一側(図中上側)に移動する。これにより、紐状部材23が引っ張られてフック部22が図中右側に回動し、ひいては矢印R4に示すように、開閉カバー18が破線位置から実線位置に向けて開く方向に回動する。このとき、使用者はハンドル部11bを把持してスイッチ14を操作するだけなので、従前のように把持力が不安定になることは無い。
【0042】
ここで、図1に示すように、木材Wを切断する前段階において、開閉カバー18の開度を合計α°+β°(略60°)の開度で大きく開いておくので、傾斜調整部材17を調整してベース16と鋸刃13とのなす角度を、例えば図中手前側に45°等の大きな角度に調整したとしても、木材Wの形状(厚み等)に殆ど関係無く、開閉カバー18を容易に開けるようになっている。
【0043】
[木材による開き工程]
さらに丸のこ10を切断方向に移動させていくと、鋸刃13により徐々に木材Wが切断されていき、切断された木材Wの端部が開閉カバー18の接触円弧部18aに接触するようになる。これにより、今度は、木材Wが開閉カバー18を直接開く方向に徐々に回動させていく。その後、図5の矢印R5に示すように、開閉カバー18が鋸カバー11c内に入り込むよう回動して全開状態となり、ひいては鋸刃13のベース16よりも他側(図中下側)が露出される。これにより、丸のこ10を矢印Mの方向に移動させていくことで、木材Wの切断作業が継続して行われる。
【0044】
ここで、紐状部材23は柔軟性を有するため、図示のように弛むようになっている。これにより、開閉カバー18には引張バネ24の弾性力のみが回転抵抗力として作用することになり、必要以上に回転抵抗力が大きくなるのを抑制している。
【0045】
[自動閉じ工程]
丸のこ10によって木材Wが切断されると、図6に示すように、木材Wの端部がベース16の後方側(図中左側)に位置するようになる。すると、木材Wと開閉カバー18との接触が解かれて、開閉カバー18は引張バネ24により引っ張られるようになる。すると、引張バネ24の弾性力によりフック部22が図中左側に回動し、ひいては開閉カバー18が矢印R6に示すように閉じる方向に回動される。これにより、鋸刃13のベース16よりも他側が開閉カバー18によって覆われて、丸のこ10が不使用時の状態に戻る。その後、使用者によりスイッチ14を操作して丸のこ10をオフ状態とし、電動モータ12を停止して鋸刃13を停止状態にする。
【0046】
以上詳述したように、第1実施の形態に係る丸のこ10によれば、ハウジング11の鋸刃13よりも木材Wの導入側に、木材Wの非接触状態においてベース16の他側に突出し、木材Wの接触によりベース16の一側に移動する可動部材21を設け、開閉カバー18と可動部材21との間に、可動部材21の移動により開閉カバー18を開く方向に回動させる紐状部材23を設けた。
【0047】
これにより、木材Wとの接触により可動部材21が移動し、紐状部材23を介して自動的に開閉カバー18を開く方向に回動できる。したがって、使用者が手動で開閉カバー18を回動させる必要が無いため操作性を向上することができる。また、使用者の操作に依らず木材Wの接触により自動的に開閉カバー18を開く方向に回動できるので、使用者によるハンドル部11bの把持力が不安定になるのを防止して、ひいては鋸刃13を木材Wの切断箇所に精度良く誘導できるようになる。よって、使用者への負担を軽減しつつ切断作業の効率向上を図ることが可能となる。
【0048】
また、第1実施の形態に係る丸のこ10によれば、紐状部材23を用い、可動部材21の移動により開閉カバー18を引っ張って開く方向に回動させるようにしたので、丸のこ10の重量を増加させることなく、比較的安価にカバー操作機構20を形成することができる。
【0049】
次に、本発明の第2実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0050】
図7は第2実施の形態に係る丸のこの図3(木材導入工程)に対応する説明図を、図8は第2実施の形態に係る丸のこの図4(自動開き工程)に対応する説明図を、図9は第2実施の形態に係る丸のこの図5(木材による開き工程)に対応する説明図をそれぞれ表している。
【0051】
図7〜9に示すように、第2実施の形態に係る丸のこ30は、第1実施の形態に比して、カバー操作機構20の可動部材21に替えて、略平行四辺形形状に形成した可動部材31を採用した点、およびカバー操作機構20の紐状部材23に替えて、鋼材よりなる剛性を有する棒状部材32を採用した点が異なっている。
【0052】
図7に示すように、可動部材31は略平行四辺形形状に形成されており、その第1角部31aは、回動ピンPを介してハウジング11に回動自在に連結されている。可動部材31の回動ピンPよりも図中右側かつ上方側には、カバー操作部材としての棒状部材32の一端側が回動自在に連結されている。また、可動部材31の回動ピンPよりも図中右側かつ下方側には、第2角部31bが形成されており、この第2角部31bには木材Wが接触するようになっている。そして、第2角部31bに木材Wの端部が接触すると、回動ピンPを中心として可動部材31が矢印R7方向(反時計方向)に回動する。これにより、棒状部材32が丸のこ30の後方側(図中左側)に移動するようになっている。
【0053】
開閉カバー18の回転中心C(回転軸12a)の近傍には、凹溝33が一体に設けられている。この凹溝33は、回転軸12aの図中下側、つまり回転軸12aを挟むフック部22の対向箇所に配置され、凹溝33には棒状部材32の他端側が入り込めるようになっている。つまり、棒状部材32の他端側が凹溝33に入り込んだ状態のもとで、棒状部材32が丸のこ30の後方側に移動することで、開閉カバー18が開く方向に回動するようになっている。また、開閉カバー18が木材Wにより開く方向に徐々に回動されていくと、棒状部材32の他端側は凹溝33から離れるようになっている。
【0054】
次に、以上のように構成した丸のこ30の動作、特にカバー操作機構20の動作について、図面を用いて詳細に説明する。
【0055】
[自動開き工程]
図7の矢印Mに示すように、丸のこ30を切断方向に移動させていくと、木材Wの端部が可動部材31の第2角部31bに接触するようになる。ここで、可動部材31をより移動させ易くするには、丸のこ30を少し浮かせるようにして、図中縦方向から第2角部31bと木材Wとを接触させるようにすれば良い。木材Wが第2角部31bに接触すると、矢印R7方向に可動部材31が回動ピンPを中心に回動し、図8に示すように可動部材31がベース16の一側(図中上側)に移動する。これにより、棒状部材32の他端側が凹溝33に入り込んだ状態のもとで、棒状部材32が丸のこ30の後方側に移動し、棒状部材32は、開閉カバー18を押し付けて開く方向に回動させる。これにより、矢印R8に示すように、開閉カバー18が破線位置から実線位置に向けて開く方向に回動する。
【0056】
[木材による開き工程]
さらに丸のこ30を切断方向に移動させていくと、鋸刃13により徐々に木材Wが切断されていき、切断された木材Wの端部が開閉カバー18の接触円弧部18aに接触するようになる。これにより、今度は、木材Wが開閉カバー18を直接開く方向に徐々に回動させていく。その後、図9の矢印R9に示すように、開閉カバー18が鋸カバー11c内に入り込むよう回動して全開状態となり、ひいては鋸刃13のベース16よりも他側(図中下側)が露出される。これにより、丸のこ30を矢印Mの方向に移動させていくことで、木材Wの切断作業が継続して行われる。
【0057】
ここで、開閉カバー18の開く方向への回動に伴い、図9に示すように、棒状部材32の他端側は凹溝33から離れるようになっている。これにより、開閉カバー18には引張バネ24の弾性力のみが回転抵抗力として作用することになり、必要以上に回転抵抗力が大きくなることを抑制している。その後、木材Wの切断が終了すると、第1実施の形態と同様に、開閉カバー18は引張バネ24により引っ張られて、閉じる方向に回動される。これにより、棒状部材32の他端側が凹溝33に入り込んで、カバー操作機構20および開閉カバー18が、丸のこ30の不使用時の状態(図7の状態)に戻る。
【0058】
以上詳述したように、第2実施の形態に係る丸のこ30においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果(紐状部材23による作用効果を除く)を奏することができる。これに加えて、第2実施の形態においては、棒状部材32を用い、可動部材31の移動により開閉カバー18を押し付けて開く方向に回動させるようにしたので、棒状部材32の剛性によって開閉カバー18の開度を高精度で設定することができる。
【0059】
次に、本発明の第3実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0060】
図10は第3実施の形態に係る丸のこの図3(木材導入工程)に対応する説明図を、図11は第3実施の形態に係る丸のこの図4(自動開き工程)に対応する説明図をそれぞれ表している。
【0061】
図10,11に示すように、第3実施の形態に係る丸のこ40は、第1実施の形態に比して、カバー操作機構20を構成する可動部材21の形状のみが異なっており、第3実施の形態における可動部材41の接触部21aには、鋸刃13を挟むようにして一対の対向壁部41a(図示では一方のみを示す)が一体に設けられている。
【0062】
可動部材41は、透明のプラスチック等の樹脂材料により断面が略U字形状に形成され、各対向壁部41aの内部を外部から覗き込めるようになっている。これにより、図11に示す状態、つまり丸のこ40により木材Wを切断している最中に、使用者は鋸刃13による切断状態を観察することができ、さらには切断作業に伴う木材Wの切粉の飛散を抑制できるようになっている。ここで、可動部材41を透明のプラスチック等の樹脂材料により形成したが、本発明はこれに限らず、切断状態の観察が不要であれば、より安価な不透明な材料により形成することもできる。
【0063】
丸のこ40のカバー操作機構20の動作については、第1実施の形態に係る丸のこ10の動作と同じである。つまり、図10の矢印Mに示すように、丸のこ40を切断方向に移動させていくと、木材Wの端部が可動部材41の接触部21aに接触する。すると、矢印R10の方向に可動部材41が回動ピンPを中心に回動し、図11に示すように接触部21aがベース16の一側(図中上側)に移動する。これにより、図11の矢印R11に示すように開閉カバー18が破線位置から実線位置に向けて開く方向に回動し、ひいては各対向壁部41aが鋸刃13の両側の側面を覆って木材Wの切粉の飛散を抑制する。
【0064】
以上詳述したように、第3実施の形態に係る丸のこ40においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、第3実施の形態においては、可動部材41に一対の対向壁部41aを設け、可動部材41がベース16の一側に移動した際に、各対向壁部41aにより鋸刃13の側面を覆うようにしたので、木材Wの切断作業時に発生する切粉の飛散を防止することができる。また、可動部材41を透明なプラスチック等の樹脂材料で形成したので、可動部材41の各対向壁部41aが鋸刃13の側面を覆っても、鋸刃13による木材Wの切断位置(切断状態)を容易に確認することができる。
【0065】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0066】
10…丸のこ(携帯用切断機)、11…ハウジング、11a…モータ収容部、11b…ハンドル部、11c…鋸カバー、12…電動モータ(電動機)、12a…回転軸、13…鋸刃、
14…スイッチ、15…ライトスイッチ、16…ベース、17…傾斜調整部材、18…開閉カバー、18a…接触円弧部、20…カバー操作機構(開閉カバー回動手段)、21…可動部材、21a…接触部、21b…引張部、22…フック部、23…紐状部材(カバー操作部材)、24…引張バネ、30…丸のこ(携帯用切断機)、31…可動部材、31a…第1角部、31b…第2角部、32…棒状部材(カバー操作部材)、33…凹溝、40…丸のこ(携帯用切断機)、41…可動部材、41a…対向壁部、C…回転中心、D…矢印表示、P…回動ピン、W…木材(被加工部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機により回転駆動される鋸刃と、ハウジングに回動自在に設けられ、不使用時に鋸刃を覆い使用時に鋸刃を露出させる開閉カバーと、を備えた携帯用切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被加工部材としての木材等を切断する携帯用切断機としては、例えば、電動機により回転駆動される鋸刃(チップソー)を備えた携帯用切断機が知られている。このような鋸刃を備えた携帯用切断機は、使用者により把持されるハンドル部を備えたハウジングを有している。ハウジングの内部には、電動機(電動モータ)が収容され、ハウジングの下部には木材等の平面に沿って摺接するベースが設けられている。ハウジングには、鋸刃のベースよりも一側(上方側)を覆う鋸カバーが一体に設けられている。また、ハウジングには、鋸刃のベースよりも他側(下方側)を覆う開閉カバーが回動自在に設けられている。
【0003】
ベースはハウジングに対して回動自在に設けられ、ベースを回動させることで当該ベースと鋸刃とのなす角度を調整し、これにより鋸刃の切断角度、つまり木材等の切断角度を調整するようにしている。このようにベースと鋸刃とのなす角度を調整することで、木材等の角部、つまり切断部分を所定角度(例えば45°等)で切り落とせるようにしている。
【0004】
開閉カバーは、携帯用切断機の不使用時に鋸刃を覆うようになっており、これにより携帯時等において使用者等が誤って鋸刃に触れるのを抑制している。この開閉カバーには、木材等を切断する際に木材等の端部が接触するようになっており、これにより木材等の切断作業が進むに連れて開閉カバーは徐々に大きく開くようになる。このように、開閉カバーは木材等の接触によりハウジングに対して回動して徐々に鋸カバー側に移動し、これにより鋸刃のベースよりも他側が徐々に露出されるようになっている。
【0005】
このような携帯用切断機(丸のこ)としては、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1に記載された技術は、ギヤカバー(ハウジング)に対して回動自在に安全カバー(開閉カバー)を設け、さらに使用者により押圧操作可能な開閉レバーを設けている。そして、使用者によりスイッチを操作することで丸鋸刃(鋸刃)が回転駆動され、その状態のもとで開閉レバーを押圧操作することで、安全カバーが少し開かれるようになっている。その後、木材等の切断作業が進むに連れて、安全カバーはさらに徐々に開かれるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−087004号公報(第2図,第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された技術によれば、使用者は、携帯用切断機のハンドル部を把持してスイッチを手前に押圧操作しつつ、開閉レバーをその逆側に押圧操作する必要があった。すなわち、使用者が手動で開閉レバーを操作するため操作性が悪かった。また、スイッチと開閉レバーとの操作方向が逆向きであるため、使用者のハンドル部を把持する把持力が不安定になる虞があった。把持力が不安定になると、携帯用切断機の鋸刃を木材等の切断箇所に精度良く誘導できなくなる等の不具合を生じ、よって、高精度が要求される切断作業が困難となり、ひいては切断作業の効率低下を招くといった問題を生じ得る。
【0008】
本発明の目的は、被加工部材を切断する際に開閉カバーを自動的に開くようにし、これにより使用者への負担を軽減しつつ切断作業の効率向上を図ることができる携帯用切断機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の携帯用切断機は、ハウジングと、該ハウジングに収容される電動機と、該電動機により回転駆動されて被加工部材を切断する鋸刃と、前記ハウジングに設けられて前記被加工部材に摺接するベースと、前記ハウジングに一体に設けられて前記鋸刃の前記ベースよりも一側を覆う鋸カバーと、前記ハウジングに回動自在に設けられて前記鋸刃の前記ベースよりも他側を覆う開閉カバーとを備えた携帯用切断機において、前記ハウジングの前記鋸刃よりも前記被加工部材の導入側において前記被加工部材との接触により作動し、前記開閉カバーを回動させる開閉カバー回動手段を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の携帯用切断機は、前記開閉カバー回動手段は、前記ハウジングの前記鋸刃よりも前記被加工部材の導入側に設けられ、前記被加工部材の非接触状態において前記ベースの他側に突出し、前記被加工部材の接触により前記ベースの一側に移動する可動部材と、前記開閉カバーと前記可動部材との間に設けられ、前記可動部材の移動により前記開閉カバーを開く方向に回動させるカバー操作部材と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の携帯用切断機は、前記カバー操作部材を紐状部材とし、該紐状部材は、前記可動部材の移動により前記開閉カバーを引っ張って開く方向に回動させることを特徴とする。
【0012】
本発明の携帯用切断機は、前記カバー操作部材を棒状部材とし、該棒状部材は、前記可動部材の移動により前記開閉カバーを押し付けて開く方向に回動させることを特徴とする。
【0013】
本発明の携帯用切断機は、前記可動部材に一対の対向壁部を設け、前記可動部材が前記ベースの一側に移動した際に、前記各対向壁部により前記鋸刃の側面を覆うことを特徴とする。
【0014】
本発明の携帯用切断機は、前記可動部材を透明な材料で形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の携帯用切断機によれば、ハウジングの鋸刃よりも被加工部材の導入側において被加工部材との接触により作動し、開閉カバーを回動させる開閉カバー回動手段を設ける。これにより、被加工部材との接触により自動的に開閉カバーを開く方向に回動できる。したがって、使用者が手動で開閉カバーを回動させる必要が無いため操作性を向上することができる。
【0016】
本発明の携帯用切断機によれば、開閉カバー回動手段は、ハウジングの前記鋸刃よりも被加工部材の導入側に設けられ、被加工部材の非接触状態においてベースの他側に突出し、被加工部材の接触によりベースの一側に移動する可動部材と、開閉カバーと可動部材との間に設けられ、可動部材の移動により開閉カバーを開く方向に回動させるカバー操作部材と、を有する。これにより、被加工部材の接触により可動部材が移動し、カバー操作部材を介して開閉カバーを開く方向に回動できる。したがって、使用者の操作に依らず被加工部材の接触により自動的に開閉カバーを開く方向に回動でき、使用者によるハンドル部の把持力が不安定になるのを防止して、ひいては鋸刃を被加工部材の切断箇所に精度良く誘導できるようになる。よって、使用者への負担を軽減しつつ切断作業の効率向上を図ることが可能となる。
【0017】
本発明の携帯用切断機によれば、カバー操作部材を紐状部材とし、該紐状部材は、可動部材の移動により開閉カバーを引っ張って開く方向に回動させるので、携帯用切断機の重量を増加させることなく、比較的安価にカバー操作部材を形成することができる。
【0018】
本発明の携帯用切断機によれば、カバー操作部材を棒状部材とし、該棒状部材は、可動部材の移動により開閉カバーを押し付けて開く方向に回動させるので、棒状部材の剛性によって開閉カバーの開度を高精度で設定することができる。
【0019】
本発明の携帯用切断機によれば、可動部材に一対の対向壁部を設け、可動部材がベースの一側に移動した際に、各対向壁部により鋸刃の側面を覆うので、各対向壁部により被加工部材の切断作業時に発生する切粉の飛散を防止することができる。
【0020】
本発明の携帯用切断機によれば、可動部材を透明な材料で形成するので、可動部材が鋸刃の側面を覆っても、鋸刃による被加工部材の切断位置を容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る丸のこの側面を示す平面図である。
【図2】図1の丸のこを上方から見た平面図である。
【図3】木材導入工程を説明する図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】開閉カバーの自動開き工程を説明する説明図である。
【図5】開閉カバーの木材による開き工程を説明する説明図である。
【図6】開閉カバーの自動閉じ工程を説明する説明図である。
【図7】第2実施の形態に係る丸のこの図3(木材導入工程)に対応する説明図である。
【図8】第2実施の形態に係る丸のこの図4(自動開き工程)に対応する説明図である。
【図9】第2実施の形態に係る丸のこの図5(木材による開き工程)に対応する説明図である。
【図10】第3実施の形態に係る丸のこの図3(木材導入工程)に対応する説明図である。
【図11】第3実施の形態に係る丸のこの図4(自動開き工程)に対応する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の第1実施の形態に係る丸のこの側面を示す平面図を、図2は図1の丸のこを上方から見た平面図を、図3は木材導入工程を説明する図2のA−A線に沿う断面図を、図4は開閉カバーの自動開き工程を説明する説明図を、図5は開閉カバーの木材による開き工程を説明する説明図を、図6は開閉カバーの自動閉じ工程を説明する説明図をそれぞれ表している。
【0024】
図1〜3に示すように、携帯用切断機としての丸のこ10は、被加工部材としての木材Wを切断するための動力工具であって、丸のこ10は、その外郭をなすハウジング11を備えている。ハウジング11はプラスチック等の樹脂材料により所定形状に形成され、当該ハウジング11は、モータ収容部11a,ハンドル部11bおよび鋸カバー11cを備えている。そして、これらのモータ収容部11a,ハンドル部11bおよび鋸カバー11cは、それぞれ締結ネジ等(図示せず)により一体化されている。
【0025】
モータ収容部11aの内部には、図2に示すように、電動機としての電動モータ12が収容されている。電動モータ12はブラシ付きの電動モータであって、電源コードPCからブラシを介してアーマチュアに巻き付けたコイル(何れも図示せず)に駆動電流を供給することで、回転軸12a(図1参照)が所定の回転数/回転トルクで回転するようになっている。回転軸12aには、木材Wを切断するための鋸刃(チップソー)13が一体回転可能に固定されており、これにより鋸刃13は回転軸12aとともに回転するようになっている。なお、鋸刃13は、図1に示すように反時計方向(図中矢印R1方向)に回転するようになっている。
【0026】
図1,3に示すように、ハンドル部11bには、使用者により操作されるスイッチ14が設けられ、当該スイッチ14を引き込むよう操作することで、電動モータ12に駆動電流が供給されるようになっている。また、ハンドル部11bのスイッチ14よりも前方側(図中右側)には、ライトスイッチ15が設けられ、当該ライトスイッチ15を操作することで、丸のこ10の前方側を照らすための照明(図示せず)が点灯するようになっている。これにより、建設中の薄暗い家屋内等であっても、木材Wの切断作業を確実に行えるようになっている。
【0027】
図1,3に示すように、ハウジング11の下方側、つまり木材W側には、木材Wの平面に摺接して丸のこ10の切断方向への移動を案内するベース16が設けられている。ベース16はハウジング11に対して回動自在に設けられ、ベース16をハウジング11に対して回動させることで、ベース16と鋸刃13とのなす角度を調整できるようにしている。具体的には、ベース16とハウジング11との間に設けられた傾斜調整部材17を調整することで、ベース16と鋸刃13とのなす角度を任意(例えば45°)に調整することができる。これにより、木材Wの角部を任意の角度で切り落とせるようになっている。
【0028】
また、傾斜調整部材17は、ベース16の底面からの鋸刃13の突出量を調整する切込深さ調整機構も兼ねている。すなわち、鋸カバー11cの前端側(図中右側)が、傾斜調整部材17とピン(詳細図示せず)により連結されており、当該ピンを中心に鋸カバー11cの後方部分(図中左側)をベース16に対して回転(図1で時計回り)することにより、ベース16の底面からの鋸刃13の突出量を変更することができる。これにより、木材Wを切断するだけでなく、木材Wに溝を形成することもできるようになっている。
【0029】
図1に示すように、鋸カバー11cは略円弧形状に形成され、かつ断面が略U字形状に形成されており、これにより鋸カバー11cは、鋸刃13のベース16よりも一側(図中上側)の周囲を覆うようになっている。また、鋸カバー11cには、鋸刃13の回転方向の目印となる矢印表示Dが設けられており、これにより、鋸刃13を交換したりする場合等において、鋸刃13の回転方向を容易に把握することができ、ひいては作業効率の向上を図れるようにしている。
【0030】
図1,3に示すように、ハウジング11の下方側、つまり木材W側には、鋸刃13のベース16よりも他側(図中下側)の周囲を覆う開閉カバー18が設けられている。開閉カバー18は、鋸カバー11cと同様に略円弧形状に形成され、かつ断面が略U字形状に形成されている。開閉カバー18は、プラスチック等の樹脂材料によって形成され、ハウジング11に対して回転軸12aを中心に回動自在に設けられている。開閉カバー18は、鋸カバー11cよりも若干小径に形成されており、これにより開閉カバー18は、開く方向に回動した際に、鋸カバー11cの内側に入り込めるようになっている(図5参照)。
【0031】
開閉カバー18の図中右側、つまり木材Wの導入側には、木材Wの端部が接触する接触円弧部18aが形成されており、これにより、木材Wの接触による開閉カバー18の開く方向(図1中矢印R2方向)への回動を引っ掛かり無くスムーズに行えるようにしている。ここで、丸のこ10の不使用時における開閉カバー18の開度、つまり図1に示す状態のもとで、開閉カバー18の接触円弧部18a側とベース16とによって形成される角度α°(不使用時)は、略40°に設定されている。これにより、丸のこ10の不使用時において、使用者等が誤って鋸刃13に触れたりするのを抑制している。
【0032】
図3に示すように、ハウジング11には、木材Wの接触により開閉カバー18を自動的に開くカバー操作機構(開閉カバー回動手段)20が設けられ、当該カバー操作機構20は、ハウジング11の鋸刃13よりも木材Wの導入側において、木材Wとの接触により作動して開閉カバー18を回動させるようになっている。
【0033】
カバー操作機構20は、ハウジング11の鋸刃13よりも木材Wの導入側に設けられた可動部材21と、開閉カバー18の回転中心C(回転軸12a)の近傍に一体に設けられたフック部22とを備えている。また、可動部材21とフック部22との間には、木材Wから可動部材21に伝達される操作力をフック部22に伝達するカバー操作部材としての紐状部材23が設けられ、フック部22とハウジング11との間には、開いた開閉カバー18を閉じる方向に引っ張る引張バネ24が設けられている。このように、カバー操作機構20は、可動部材21,フック部22,紐状部材23および引張バネ24とから構成されている。
【0034】
可動部材21は、プラスチック等の樹脂材料により略L字形状に形成され、当該L字形状の中央部分が回動ピンPを介してハウジング11に回動自在に連結されている。可動部材21の回動ピンPよりも図中下方側には、略扇形形状に形成されて木材Wが接触する接触部21aが設けられ、可動部材21の回動ピンPよりも図中上方側には、紐状部材23の一端側が取り付けられて当該紐状部材23を引っ張る略棒状の引張部21bが設けられている。
【0035】
そして、可動部材21を構成する接触部21aは、木材Wの非接触状態(図1,3,6の状態)においてはベース16の他側(図中下側)に突出し、木材Wの接触(図4,5の状態)によりベース16の一側(図中上側)に移動するようになっている。これにより、木材Wが接触部21aに接触することで引張部21bが紐状部材23を引っ張り、ひいては開閉カバー18が開かれる。ここで、カバー操作機構20による開閉カバー18の開度は、図1に示すように実線位置から二点鎖線位置の間の角度β°に設定されている(β°<α°)。具体的には、角度β°は略20°に設定されており、したがって、木材Wによりカバー操作機構20が操作されると、木材Wと開閉カバー18との接触前において、開閉カバー18は合計α°+β°(略60°)の開度で開くことになる。
【0036】
フック部22には紐状部材23の他端側が取り付けられ、当該フック部22は、図3に示すように開閉カバー18が閉じた状態のもとで、回転軸12aの図中上側、つまり回転軸12aよりもハンドル部11b側に配置されている。そして、フック部22が紐状部材23によって引っ張られて図中右側に回動すると、これに伴い開閉カバー18が開く方向(時計方向)に回動する。一方、フック部22が引張バネ24によって引っ張られて図中左側に回動すると、これに伴い開閉カバー18が閉じる方向(反時計方向)に回動する。
【0037】
ここで、紐状部材23としては、柔軟性および強度を備えつつ耐久性に優れた合成繊維を撚ったもの、例えば、ポリエチレン製の撚紐等を用いるようにする。これにより、紐状部材23を軽量かつ安価に形成でき、丸のこ10の重量増加等を抑制することができる。また、引張バネ24の弾性力は、開閉カバー18を閉じるのに必要最小限の弾性力に設定し、これにより可動部材21が移動し難くなるのを抑制し、ひいては木材Wを傷付けないようにする。
【0038】
次に、以上のように構成した丸のこ10の動作、特にカバー操作機構20の動作について、図面を用いて詳細に説明する。
【0039】
[丸のこ不使用時]
丸のこ10を使用していない不使用時においては、スイッチ14はオフ状態にあり、よって電動モータ12は停止されて鋸刃13も停止状態にある。このとき、開閉カバー18には木材Wは接触しておらず、かつカバー操作機構20を構成する可動部材21の接触部21aにも木材Wは接触していない。したがって、フック部22が引張バネ24によって引っ張られて、開閉カバー18は閉じられた状態、つまり図1,3に示す開度α°の状態となっている。これにより、開閉カバー18は、鋸刃13のベース16よりも他側の周囲を覆い、使用者等が誤って鋸刃13に触れたりするのを抑制する。
【0040】
[木材導入工程]
丸のこ10により木材Wを切断する場合には、まず、木材Wの切断角度や切込深さを調整すべく、傾斜調整部材17を調整する。これにより、例えば、ベース16と鋸刃13とのなす角度を20°に調整し、木材Wの角部を20°で切り落とせるようにする。次に、図3に示すように、ベース16の前方側(図中右側)を木材Wに載置し、その状態のもとで鋸刃13と木材Wの切断すべき場所との位置合わせを行う。そして、使用者によりスイッチ14を操作して丸のこ10をオン状態とし、これにより電動モータ12が回転駆動されて鋸刃13も回転駆動される。その後、使用者により丸のこ10を矢印M方向(切断方向)に移動させていくことで、木材Wの端部が可動部材21に接触するようになる。
【0041】
[自動開き工程]
さらに丸のこ10を切断方向に移動させていくと、木材Wの端部が可動部材21の接触部21aに接触する。すると、矢印R3方向に可動部材21が回動ピンPを中心に回動し、図4に示すように接触部21aがベース16の一側(図中上側)に移動する。これにより、紐状部材23が引っ張られてフック部22が図中右側に回動し、ひいては矢印R4に示すように、開閉カバー18が破線位置から実線位置に向けて開く方向に回動する。このとき、使用者はハンドル部11bを把持してスイッチ14を操作するだけなので、従前のように把持力が不安定になることは無い。
【0042】
ここで、図1に示すように、木材Wを切断する前段階において、開閉カバー18の開度を合計α°+β°(略60°)の開度で大きく開いておくので、傾斜調整部材17を調整してベース16と鋸刃13とのなす角度を、例えば図中手前側に45°等の大きな角度に調整したとしても、木材Wの形状(厚み等)に殆ど関係無く、開閉カバー18を容易に開けるようになっている。
【0043】
[木材による開き工程]
さらに丸のこ10を切断方向に移動させていくと、鋸刃13により徐々に木材Wが切断されていき、切断された木材Wの端部が開閉カバー18の接触円弧部18aに接触するようになる。これにより、今度は、木材Wが開閉カバー18を直接開く方向に徐々に回動させていく。その後、図5の矢印R5に示すように、開閉カバー18が鋸カバー11c内に入り込むよう回動して全開状態となり、ひいては鋸刃13のベース16よりも他側(図中下側)が露出される。これにより、丸のこ10を矢印Mの方向に移動させていくことで、木材Wの切断作業が継続して行われる。
【0044】
ここで、紐状部材23は柔軟性を有するため、図示のように弛むようになっている。これにより、開閉カバー18には引張バネ24の弾性力のみが回転抵抗力として作用することになり、必要以上に回転抵抗力が大きくなるのを抑制している。
【0045】
[自動閉じ工程]
丸のこ10によって木材Wが切断されると、図6に示すように、木材Wの端部がベース16の後方側(図中左側)に位置するようになる。すると、木材Wと開閉カバー18との接触が解かれて、開閉カバー18は引張バネ24により引っ張られるようになる。すると、引張バネ24の弾性力によりフック部22が図中左側に回動し、ひいては開閉カバー18が矢印R6に示すように閉じる方向に回動される。これにより、鋸刃13のベース16よりも他側が開閉カバー18によって覆われて、丸のこ10が不使用時の状態に戻る。その後、使用者によりスイッチ14を操作して丸のこ10をオフ状態とし、電動モータ12を停止して鋸刃13を停止状態にする。
【0046】
以上詳述したように、第1実施の形態に係る丸のこ10によれば、ハウジング11の鋸刃13よりも木材Wの導入側に、木材Wの非接触状態においてベース16の他側に突出し、木材Wの接触によりベース16の一側に移動する可動部材21を設け、開閉カバー18と可動部材21との間に、可動部材21の移動により開閉カバー18を開く方向に回動させる紐状部材23を設けた。
【0047】
これにより、木材Wとの接触により可動部材21が移動し、紐状部材23を介して自動的に開閉カバー18を開く方向に回動できる。したがって、使用者が手動で開閉カバー18を回動させる必要が無いため操作性を向上することができる。また、使用者の操作に依らず木材Wの接触により自動的に開閉カバー18を開く方向に回動できるので、使用者によるハンドル部11bの把持力が不安定になるのを防止して、ひいては鋸刃13を木材Wの切断箇所に精度良く誘導できるようになる。よって、使用者への負担を軽減しつつ切断作業の効率向上を図ることが可能となる。
【0048】
また、第1実施の形態に係る丸のこ10によれば、紐状部材23を用い、可動部材21の移動により開閉カバー18を引っ張って開く方向に回動させるようにしたので、丸のこ10の重量を増加させることなく、比較的安価にカバー操作機構20を形成することができる。
【0049】
次に、本発明の第2実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0050】
図7は第2実施の形態に係る丸のこの図3(木材導入工程)に対応する説明図を、図8は第2実施の形態に係る丸のこの図4(自動開き工程)に対応する説明図を、図9は第2実施の形態に係る丸のこの図5(木材による開き工程)に対応する説明図をそれぞれ表している。
【0051】
図7〜9に示すように、第2実施の形態に係る丸のこ30は、第1実施の形態に比して、カバー操作機構20の可動部材21に替えて、略平行四辺形形状に形成した可動部材31を採用した点、およびカバー操作機構20の紐状部材23に替えて、鋼材よりなる剛性を有する棒状部材32を採用した点が異なっている。
【0052】
図7に示すように、可動部材31は略平行四辺形形状に形成されており、その第1角部31aは、回動ピンPを介してハウジング11に回動自在に連結されている。可動部材31の回動ピンPよりも図中右側かつ上方側には、カバー操作部材としての棒状部材32の一端側が回動自在に連結されている。また、可動部材31の回動ピンPよりも図中右側かつ下方側には、第2角部31bが形成されており、この第2角部31bには木材Wが接触するようになっている。そして、第2角部31bに木材Wの端部が接触すると、回動ピンPを中心として可動部材31が矢印R7方向(反時計方向)に回動する。これにより、棒状部材32が丸のこ30の後方側(図中左側)に移動するようになっている。
【0053】
開閉カバー18の回転中心C(回転軸12a)の近傍には、凹溝33が一体に設けられている。この凹溝33は、回転軸12aの図中下側、つまり回転軸12aを挟むフック部22の対向箇所に配置され、凹溝33には棒状部材32の他端側が入り込めるようになっている。つまり、棒状部材32の他端側が凹溝33に入り込んだ状態のもとで、棒状部材32が丸のこ30の後方側に移動することで、開閉カバー18が開く方向に回動するようになっている。また、開閉カバー18が木材Wにより開く方向に徐々に回動されていくと、棒状部材32の他端側は凹溝33から離れるようになっている。
【0054】
次に、以上のように構成した丸のこ30の動作、特にカバー操作機構20の動作について、図面を用いて詳細に説明する。
【0055】
[自動開き工程]
図7の矢印Mに示すように、丸のこ30を切断方向に移動させていくと、木材Wの端部が可動部材31の第2角部31bに接触するようになる。ここで、可動部材31をより移動させ易くするには、丸のこ30を少し浮かせるようにして、図中縦方向から第2角部31bと木材Wとを接触させるようにすれば良い。木材Wが第2角部31bに接触すると、矢印R7方向に可動部材31が回動ピンPを中心に回動し、図8に示すように可動部材31がベース16の一側(図中上側)に移動する。これにより、棒状部材32の他端側が凹溝33に入り込んだ状態のもとで、棒状部材32が丸のこ30の後方側に移動し、棒状部材32は、開閉カバー18を押し付けて開く方向に回動させる。これにより、矢印R8に示すように、開閉カバー18が破線位置から実線位置に向けて開く方向に回動する。
【0056】
[木材による開き工程]
さらに丸のこ30を切断方向に移動させていくと、鋸刃13により徐々に木材Wが切断されていき、切断された木材Wの端部が開閉カバー18の接触円弧部18aに接触するようになる。これにより、今度は、木材Wが開閉カバー18を直接開く方向に徐々に回動させていく。その後、図9の矢印R9に示すように、開閉カバー18が鋸カバー11c内に入り込むよう回動して全開状態となり、ひいては鋸刃13のベース16よりも他側(図中下側)が露出される。これにより、丸のこ30を矢印Mの方向に移動させていくことで、木材Wの切断作業が継続して行われる。
【0057】
ここで、開閉カバー18の開く方向への回動に伴い、図9に示すように、棒状部材32の他端側は凹溝33から離れるようになっている。これにより、開閉カバー18には引張バネ24の弾性力のみが回転抵抗力として作用することになり、必要以上に回転抵抗力が大きくなることを抑制している。その後、木材Wの切断が終了すると、第1実施の形態と同様に、開閉カバー18は引張バネ24により引っ張られて、閉じる方向に回動される。これにより、棒状部材32の他端側が凹溝33に入り込んで、カバー操作機構20および開閉カバー18が、丸のこ30の不使用時の状態(図7の状態)に戻る。
【0058】
以上詳述したように、第2実施の形態に係る丸のこ30においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果(紐状部材23による作用効果を除く)を奏することができる。これに加えて、第2実施の形態においては、棒状部材32を用い、可動部材31の移動により開閉カバー18を押し付けて開く方向に回動させるようにしたので、棒状部材32の剛性によって開閉カバー18の開度を高精度で設定することができる。
【0059】
次に、本発明の第3実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0060】
図10は第3実施の形態に係る丸のこの図3(木材導入工程)に対応する説明図を、図11は第3実施の形態に係る丸のこの図4(自動開き工程)に対応する説明図をそれぞれ表している。
【0061】
図10,11に示すように、第3実施の形態に係る丸のこ40は、第1実施の形態に比して、カバー操作機構20を構成する可動部材21の形状のみが異なっており、第3実施の形態における可動部材41の接触部21aには、鋸刃13を挟むようにして一対の対向壁部41a(図示では一方のみを示す)が一体に設けられている。
【0062】
可動部材41は、透明のプラスチック等の樹脂材料により断面が略U字形状に形成され、各対向壁部41aの内部を外部から覗き込めるようになっている。これにより、図11に示す状態、つまり丸のこ40により木材Wを切断している最中に、使用者は鋸刃13による切断状態を観察することができ、さらには切断作業に伴う木材Wの切粉の飛散を抑制できるようになっている。ここで、可動部材41を透明のプラスチック等の樹脂材料により形成したが、本発明はこれに限らず、切断状態の観察が不要であれば、より安価な不透明な材料により形成することもできる。
【0063】
丸のこ40のカバー操作機構20の動作については、第1実施の形態に係る丸のこ10の動作と同じである。つまり、図10の矢印Mに示すように、丸のこ40を切断方向に移動させていくと、木材Wの端部が可動部材41の接触部21aに接触する。すると、矢印R10の方向に可動部材41が回動ピンPを中心に回動し、図11に示すように接触部21aがベース16の一側(図中上側)に移動する。これにより、図11の矢印R11に示すように開閉カバー18が破線位置から実線位置に向けて開く方向に回動し、ひいては各対向壁部41aが鋸刃13の両側の側面を覆って木材Wの切粉の飛散を抑制する。
【0064】
以上詳述したように、第3実施の形態に係る丸のこ40においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、第3実施の形態においては、可動部材41に一対の対向壁部41aを設け、可動部材41がベース16の一側に移動した際に、各対向壁部41aにより鋸刃13の側面を覆うようにしたので、木材Wの切断作業時に発生する切粉の飛散を防止することができる。また、可動部材41を透明なプラスチック等の樹脂材料で形成したので、可動部材41の各対向壁部41aが鋸刃13の側面を覆っても、鋸刃13による木材Wの切断位置(切断状態)を容易に確認することができる。
【0065】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0066】
10…丸のこ(携帯用切断機)、11…ハウジング、11a…モータ収容部、11b…ハンドル部、11c…鋸カバー、12…電動モータ(電動機)、12a…回転軸、13…鋸刃、
14…スイッチ、15…ライトスイッチ、16…ベース、17…傾斜調整部材、18…開閉カバー、18a…接触円弧部、20…カバー操作機構(開閉カバー回動手段)、21…可動部材、21a…接触部、21b…引張部、22…フック部、23…紐状部材(カバー操作部材)、24…引張バネ、30…丸のこ(携帯用切断機)、31…可動部材、31a…第1角部、31b…第2角部、32…棒状部材(カバー操作部材)、33…凹溝、40…丸のこ(携帯用切断機)、41…可動部材、41a…対向壁部、C…回転中心、D…矢印表示、P…回動ピン、W…木材(被加工部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、該ハウジングに収容される電動機と、該電動機により回転駆動されて被加工部材を切断する鋸刃と、前記ハウジングに設けられて前記被加工部材に摺接するベースと、前記ハウジングに一体に設けられて前記鋸刃の前記ベースよりも一側を覆う鋸カバーと、前記ハウジングに回動自在に設けられて前記鋸刃の前記ベースよりも他側を覆う開閉カバーとを備えた携帯用切断機において、
前記ハウジングの前記鋸刃よりも前記被加工部材の導入側において前記被加工部材との接触により作動し、前記開閉カバーを回動させる開閉カバー回動手段を有することを特徴とする携帯用切断機。
【請求項2】
前記開閉カバー回動手段は、
前記ハウジングの前記鋸刃よりも前記被加工部材の導入側に設けられ、前記被加工部材の非接触状態において前記ベースの他側に突出し、前記被加工部材の接触により前記ベースの一側に移動する可動部材と、
前記開閉カバーと前記可動部材との間に設けられ、前記可動部材の移動により前記開閉カバーを開く方向に回動させるカバー操作部材と、
を有することを特徴とする請求項1記載の携帯用切断機。
【請求項3】
前記カバー操作部材を紐状部材とし、該紐状部材は、前記可動部材の移動により前記開閉カバーを引っ張って開く方向に回動させることを特徴とする請求項2記載の携帯用切断機。
【請求項4】
前記カバー操作部材を棒状部材とし、該棒状部材は、前記可動部材の移動により前記開閉カバーを押し付けて開く方向に回動させることを特徴とする請求項2記載の携帯用切断機。
【請求項5】
前記可動部材に一対の対向壁部を設け、前記可動部材が前記ベースの一側に移動した際に、前記各対向壁部により前記鋸刃の側面を覆うことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の携帯用切断機。
【請求項6】
前記可動部材を透明な材料で形成することを特徴とする請求項5記載の携帯用切断機。
【請求項1】
ハウジングと、該ハウジングに収容される電動機と、該電動機により回転駆動されて被加工部材を切断する鋸刃と、前記ハウジングに設けられて前記被加工部材に摺接するベースと、前記ハウジングに一体に設けられて前記鋸刃の前記ベースよりも一側を覆う鋸カバーと、前記ハウジングに回動自在に設けられて前記鋸刃の前記ベースよりも他側を覆う開閉カバーとを備えた携帯用切断機において、
前記ハウジングの前記鋸刃よりも前記被加工部材の導入側において前記被加工部材との接触により作動し、前記開閉カバーを回動させる開閉カバー回動手段を有することを特徴とする携帯用切断機。
【請求項2】
前記開閉カバー回動手段は、
前記ハウジングの前記鋸刃よりも前記被加工部材の導入側に設けられ、前記被加工部材の非接触状態において前記ベースの他側に突出し、前記被加工部材の接触により前記ベースの一側に移動する可動部材と、
前記開閉カバーと前記可動部材との間に設けられ、前記可動部材の移動により前記開閉カバーを開く方向に回動させるカバー操作部材と、
を有することを特徴とする請求項1記載の携帯用切断機。
【請求項3】
前記カバー操作部材を紐状部材とし、該紐状部材は、前記可動部材の移動により前記開閉カバーを引っ張って開く方向に回動させることを特徴とする請求項2記載の携帯用切断機。
【請求項4】
前記カバー操作部材を棒状部材とし、該棒状部材は、前記可動部材の移動により前記開閉カバーを押し付けて開く方向に回動させることを特徴とする請求項2記載の携帯用切断機。
【請求項5】
前記可動部材に一対の対向壁部を設け、前記可動部材が前記ベースの一側に移動した際に、前記各対向壁部により前記鋸刃の側面を覆うことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の携帯用切断機。
【請求項6】
前記可動部材を透明な材料で形成することを特徴とする請求項5記載の携帯用切断機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−71218(P2013−71218A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213184(P2011−213184)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】
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