説明

携帯用電動切断機

【課題】ファン風を利用して被削材上の切粉を飛散させることによって、鋸刃の刃先を確認し易くして作業性向上を図ることができる携帯用電動切断機を提供すること。
【解決手段】電動機2を収納するハウジング3と、前記電動機によって駆動される鋸刃1の一部を収納するソーカバー4と、切断材上を摺動可能な底面から前記鋸刃を下方に突出させる開口部が形成されたベース5と、前記ハウジング3内に設けられ、前記電動機により回転駆動されてファン風を発生するファン7と、を備えた携帯用電動切断機において、前記ベースの切断方向前方側に設けられ前記鋸刃の刃先位置を指し示すガイド部10と、前記ソーカバーに取り付けられた排出路形成部材11とを備え、前記ファン風を、前記ソーカバー内に排出すると共に、前記排出路形成部材を介して前記ソーカバーの外側を通し前記ベースの切断方向前方側の被切断材上及び前記ガイド部上に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機冷却用のファンを有する携帯用丸鋸やジグソー等の携帯用電動切断機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の携帯用電動切断機の一例として携帯用丸鋸の構成を図12及び図13に示す。
【0003】
即ち、図12は従来の携帯用丸鋸の破断平面図、図13は同携帯用丸鋸の背面側底面斜視図であり、図示の携帯用丸鋸は、鋸刃1と、該鋸刃1を回転駆動する電動機2と、該電動機2を収納するモータハウジング3と、鋸刃1を回転可能に保持するソーカバー4と、モータハウジング3及びソーカバー4の下方に設けられ、鋸刃1を下面より突出させる開口部5aを有するベース5とを備えて構成され、ソーカバー4はモータハウジング3に取り付けられ、ベース5はソーカバー4に連結されている。尚、ソーカバー4には、鋸刃1の略半円部分の外周部を覆う形状を有するセーフティカバー6が鋸刃1と同心で回動し得るよう保持されている。
【0004】
而して、電動機2の動力は不図示の歯車等を介して鋸刃1に伝達され、該鋸刃1が所定の速度で回転駆動される。ここで、電動機2には、これを冷却するためのファン7が取り付けられており、電動機2が回転駆動されるとファン7が回転し、モータハウジング3の反ソーカバー4側端部に設けられた吸入口8よりモータハウジング3の内部に流入したファン風9は、モータハウジング3の内部を流れて電動機2を冷却する。
【0005】
ところで、ソーカバー4の鋸刃収納部4aとモータハウジング3の間に配置された壁面には、ファン風排出口を形成する複数の隔壁4bが設けられているが、これらの隔壁4bには、鋸刃1の側端面に向かうに従って切断方向前方側に傾斜する形状の傾斜部4cが設けられている。
【0006】
而して、モータハウジング3の内部を流れるファン風9は、傾斜部4cが設けられた隔壁4bを通って鋸刃収納部4a内に排出され、鋸刃1の側面或はセーフティーカバー6の側面に斜めに吹き付けられ、切断方向前方への排出方向を殆ど変えることなく、鋸刃収納部4aの開口部5aの切断方向前方側に向って排出される。
【0007】
図13に示すように、ベース5の底面であって、且つ、開口部5aの切断方向前方の部分には、開口部5aと連通する溝部5bが開口部5aからベース5の端部にかけて設けられている。図示のように、ベース5の切断方向前方端部には鋸刃1の刃先を指し示すガイド部10aを有するガイドピース10が設けられている。ここで、ガイドピース10は、その底面がベース5の底面よりも上方に位置するように設けられている。
【0008】
前記溝部5bは、鋸刃1の長手方向延長線上に設けられており、その幅方向寸法は鋸刃1の幅寸法よりも大きく設定されている。
【0009】
ところで、ソーカバー4の傾斜部4cによって開口部5aの範囲内に排出されたファン風9は、切断作業時に開口部5aの範囲内に位置する被切断材の上面に吹き当たって拡散するが、前述のようにベース5の底面に溝部5bを設けることによって、拡散したファン風9の一部が溝部5bと被切断材上面との間の空間を通り、被切断材上面に沿って排出されるように排出方向が決定され、ベース5の端部よりも切断方向前方側に排出されるようになる。そして、溝部5bに流れ出たファン風9は、ガイドピース10の下方を通ってベース5の端部よりも切断方向前方側に排出される。このファン風9によってベース5の端部よりも切断方向前方側のケガキ線上に溜まった切粉を取り除くことが可能になるため、ガイドピース10のガイド部10aとケガキ線との相対関係が確認し易くなる。
【0010】
斯かる携帯用丸鋸を用いた切断作業においては、切断精度を向上させるために被切断材上面にケガキ線を描き、このケガキ線にガイド部10aを合わせながら切断作業を行うことが多いため、ケガキ線とガイド部10aの相対関係が確認し易くなるということは作業性の向上に繋がるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特願2002−307696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の携帯用丸鋸の構成では、ベース5の底面に溝部5bを設ける必要があるため、ベース5の強度が若干ではあるが低下してしまうという問題があった。
【0013】
尚、実開昭55−154101号公報に開示された携帯用丸鋸のように、筒状の案内パイプをソーカバーに設けられたファン排出口と連通するように取り付け、ファン風を案内パイプによって被切断材上付近に案内して被切断材上に切粉が溜まるのを防止する構成が考えられるが、このような構成とした場合には、案内パイプがケガキ線と鋸刃の刃先との位置関係を確認する際に邪魔となるために作業性が低下してしまう。
【0014】
ところで、近年、被切断材の切断部分を明示するためのケガキ線に代えてレーザ光やLED光を被切断材上に照射する方式が採用されているが、レーザ光を出射するレーザ発振器に切粉が付着すると、被切断材上に照射されるレーザ光の強度が低下して切断部分の視認性が悪化する。又、レーザ発振器が発熱すると、レーザ光の輝度が低下して同様に切断部分の視認性が悪化する。
【0015】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、ベースの強度低下を招くことなく、ファン風を利用して被削材上の切粉を飛散させることによって鋸刃の刃先を確認し易くするとともに、発光部への切粉の付着や発熱に伴う光の輝度の低下を防いで切断部分の視認性を高めることによって、作業性向上を図ることができる携帯用電動切断機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明は、
電動機を収納するハウジングと、
前記電動機によって駆動される鋸刃の一部を収納するソーカバーと、
被切断材上を摺動可能な底面から前記鋸刃を下方に突出させる開口部が形成されたベースと、
前記ハウジング内に設けられ、前記電動機により回転駆動されてファン風を発生するファンと、
を備えた携帯用電動切断機において、
前記ベースの切断方向前方側に設けられ前記鋸刃の刃先位置を指し示すガイド部と、
前記ソーカバーに取り付けられた排出路形成部材と、を備え、
前記ファン風を、前記ソーカバー内に排出すると共に、前記排出路形成部材を介して前記ソーカバーの外側を通し前記ガイド部上及び前記ガイド部よりも切断方向前方側の被切断材上に排出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ファンの回転駆動により発生するファン風を排出路形成部材を介してガイド部及びガイド部よりも切断方向前方側に向けて排出させるようにしたため、ベース底面に溝を形成する等してベースの強度低下を招くことなく、ベースの切断方向前方側の被切断材上の切粉をファン風によって吹き飛ばすことができ、ケガキ線にガイド部を合わせながら切断作業を行う際のケガキ線とガイド部の相対関係が確認し易くなり、作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1に係る携帯用丸鋸の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る携帯用丸鋸のカバー部材を取り外した状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る携帯用丸鋸のカバー部材の上面斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る携帯用丸鋸のカバー部材の底面斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る携帯用丸鋸の破断側面図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る携帯用丸鋸のカバー部材の一部を破断して示す正面側斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る携帯用丸鋸の底面側斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る携帯用丸鋸のカバー部材の一部を破断して示す側面図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る携帯用丸鋸の破断側面図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る携帯用丸鋸の底面図である。
【図11】本発明の実施の形態3に係るジグソーの側断面図である。
【図12】従来の携帯用丸鋸の破断平面図である。
【図13】従来の携帯用丸鋸の背面側底面斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
<実施の形態1>
図1は本発明の実施の形態1に係る携帯用丸鋸の斜視図、図2は同携帯用丸鋸のカバー部材を取り外した状態を示す斜視図、図3はカバー部材の上面斜視図、図4は同カバー部材の底面斜視図、図5は携帯用丸鋸の破断側面図、図6は同携帯用丸鋸のカバー部材の一部を破断して示す正面側斜視図、図7は同携帯用丸鋸の底面側斜視図である。
【0021】
本実施の形態に係る携帯用丸鋸は、鋸刃1と、該鋸刃1を回転駆動する電動機2と、該電動機2を収納するモータハウジング3と、該モータハウジング3から突出するハンドル15と、鋸刃1を回転可能に保持するソーカバー4と、モータハウジング3及びソーカバー4の下方に設けられ、鋸刃1を下面から突出可能とする開口部5aを有するベース5とを備えて構成され、ソーカバー4はモータハウジング3に取り付けられ、ベース5はソーカバー4に連結されている。尚、鋸刃1の外周の略上側半分を覆う形状を有し、鋸刃1の一部を収納するソーカバー4の鋸刃収納部4a内には、鋸刃1の略半円部分の外周部を覆う形状を有するセーフティカバー6が鋸刃1と同心で回動可能に保持されている。
【0022】
而して、電動機2の動力は不図示の歯車等を介して鋸刃1に伝達され、該鋸刃1が所定の速度で回転駆動されて所要の切断作業がなされる。
【0023】
ここで、前記ソーカバー4は、鋸刃1を回動可能に保持して鋸刃1の外周の一部を覆う鋸刃収納部4aと、端面がモータハウジング3と接続されて内部に不図示の歯車等を収納する略筒形の筒状部分とを有している。そして、このソーカバー4の筒状部分の外周には、図2及び図5に示すように、内部と連通する排出口12が形成されている。
【0024】
他方、電動機2には、該電動機2を冷却するためのファン7が取り付けられており、電動機2が駆動されると遠心ファンであるファン7が回転し、モータハウジング3の反ソーカバー4側端部に設けられた吸入口8よりモータハウジング3内部に流入したファン風9は、モータハウジング3の内部を流れて電動機2を冷却する。そして、電動機2の冷却に供されたファン風9は、ソーカバー4の鋸刃収納部4a内及び排出口12からソーカバー4外へと排出される。
【0025】
而して、本実施の形態においては、図1に示すように、ソーカバー4には図3及び図4に示す排出路形成部材であるカバー部材11がねじ16によって取り付けられており、図5に示すように、このカバー部材11内に前記排出口12が開口している。
【0026】
上記カバー部材11は、ソーカバー4の外壁に沿う形状に成形され、図3及び図4に示すように、コ字状(チャンネル状)の断面形状を有しており、ソーカバー4に取り付けられた状態では、ソーカバー4の外壁とで内部に所定の排出路14を形成する(図5及び図6参照)。
【0027】
又、カバー部材11の一端(図3の右側端部、図4の下側端部)は閉塞されており、この一端付近は、当該カバー部材11がソーカバー4に取り付けられた状態で図5に示すようにソーカバー4の前記排出口12を覆う形状を有している。
【0028】
他方、カバー部材11の他端(図3の下側端部、図4の右側端部)は開放されて開放端部17を形成しており、この開放端部17は、カバー部材11がソーカバー4に取り付けられた状態で図1及び図6に示すようにソーカバー4の切断方向前方側上方に開口している。
【0029】
そして、カバー部材11の一部は、図1及び図6に示すように、ソーカバー4の鋸刃収納部4aの上方で鋸刃1の長手方向延長線上に位置し、鋸刃1の長手方向上に延びるように配置されている。
【0030】
カバー部材11のソーカバー4への固定は、図3及び図4に示すように該カバー部材11の固定部11aに穴11bを設け、図2に示すようにソーカバー4にネジ穴13を設け、図1に示すようにネジ16を固定部11aの穴11bに通してソーカバー4に設けたネジ穴13に螺着することによってなされる。
【0031】
而して、ソーカバー4の排出口12からソーカバー4外へと排出されたファン風9は、カバー部材11内部の排出路14を通り、カバー部材11の開放端部17から排出される。そして、カバー部材11の開放端部17からのファン風9は、ベース5の切断方向前方側に向かって排出され、ベース5の上部及び該ベース5前方の被切断材上に堆積した切粉を吹き飛ばす。
【0032】
尚、ベース5の切断方向前方端部には、鋸刃1の刃先位置を指し示すガイド部10aを有するガイドピース10が設置されており、ガイド部10aを含む範囲にファン風9が排出されるようになっている。
【0033】
以上説明したように、本発明に係る携帯用丸鋸によれば、ファン7の回転により発生したファン風9の排出路14をソーカバー4の外周面に沿って形成し、ファン風9を排出路14を経てベース5の切断方向前方側に向けて排出するようにしたため、ベース5の底面に溝を形成する等して該ベース5の強度低下を招くことなく、ベース5の切断方向前方側の被切断材上の切粉を吹き飛ばすことができ、被切断材上のケガキ線の視認性を高めて作業性の向上を図ることができる。
【0034】
又、ソーカバー4に排出路形成部材であるカバー部材11を取り付けるのみの簡単な構成で作業性の向上を実現することができ、既存の製品に殆ど加工を要することなく排出路14を形成して前記効果を得ることができる。
【0035】
更に、排出路形成部材であるカバー部材11がソーカバー4に沿った形状に成形されているため、これが邪魔となって鋸刃1の刃先の視認性を低下させてしまうという不具合が発生することがない。
【0036】
尚、本実施の形態では、図5に示すように、ファン風9を、鋸刃収納部4a内へ排出するとともに、その一部を排出口12を経て排出路14内へ排出する構成とし、鋸刃収納部4a内にも冷却風9を排出するようにしたため、ファン風9による騒音の発生を抑制することができるが、鋸刃収納部4a内には排出しないでカバー部材11内の排出路14のみに排出する構成としても良い。
【0037】
又、排出口12の開口面積を調整する風量調整手段や、排出路14内の一部の断面面積を調整する風量調整手段を設けることにより、ベース5の切断方向前方端部に向かって排出されるファン風9の風量を作業状況等に応じて調整することもでき、これによって作業性を更に向上させることができる。この場合、風量調整手段を例えば排出口12の開口面積や排出路14内の一部の断面面積を閉塞することができるように構成することによって、切粉を吹き飛ばしたくない環境での作業においては排出路14からのファン風9の排出を規制することができ、作業状況等に応じた作業性の良い携帯用丸鋸を提供することができる。
【0038】
更に、通常、携帯用丸鋸は、ソーカバー4或はモータハウジング3に対してベース5を傾斜させ、ベース5の底面に対する鋸刃1の側面の角度を傾斜可能に調整可能とする構成、即ち傾斜切断が可能な構成となっているが、上記実施の形態のように排出路14をソーカバー4に沿って鋸刃1の長手方向延長線上に配置する構成としたため、傾斜切断時であってもファン風9が切断方向前方側に排出され、被切断材のケガキ線の上の切粉を吹き飛ばすことができる。
【0039】
又、ソーカバー4の鋸刃収納部4aとハンドル15の付け根間にソーカバー4の排出口12を形成しているため、カバー部材11の排出口12を覆う部分はハンドル15の付け根の影となり、ハンドル15を掴むのに邪魔にならない。
【0040】
又、ソーカバー4の鋸刃収納部4aが鋸刃1の刃先を円弧形状の外壁で覆っているように、カバー部材11の刃収納部4aを覆う部分も円弧形状にすることで製品が無駄に大きくなることがない。
【0041】
尚、上記実施の形態では、排出路形成部材を断面コ字状の部材でソーカバー4の外壁とで区画された排出路14を形成するようにしたカバー部材11で構成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、排出路形成部材のみで内部に区画された排出路を有する形状を有するものとしても良い。
【0042】
又、ソーカバー4自身が排出路の一部或は全部を形成する構成であっても良く、この場合にはソーカバー4を分割タイプとすることが望ましい。
【0043】
更に、切断方向前方部或は切断方向前方における鋸刃1の刃先部を照射するライトと該ライトを保持するライトホルダを有するライト付き携帯用丸鋸である場合、ライトホルダに排出路を形成する機能を兼ねさせれば、部品点数を増やすことなく作業性をより向上させることができる。
【0044】
又、上記実施の形態では、排出路形成部材であるカバー部材11をネジ16によってソーカバー4に固定する構成を採用したが、接着剤でカバー部材11を製品へ固定する構成や、ソーカバー4に嵌め込み部を設けてカバー部材11を嵌め込むことによってこれを固定する構成のように、ネジを用いることなくカバー部材11を固定する構成を採用しても良い。
【0045】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2を図8〜図10に基づいて説明する。
【0046】
図9は本発明の実施の形態2に係る携帯用丸鋸のカバー部材の一部を破断して示す側面図、図9は同携帯用丸鋸の破断側面図、図10は同携帯用丸鋸の底面図であり、これらの図においては図1〜図7に示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての説明は省略する。
【0047】
本実施の形態に係る携帯用丸鋸は、図8及び図10に示すように、切断をガイドするレーザ光Lを被切断材の切断方向前方側に向けて発振するレーザ発振器18をカバー部材11内の排出路14に配置したことを特徴とし、他の構成は前記実施の形態1に係る携帯用丸鋸のそれと同じである。
【0048】
上記レーザ発振器18から発振されるレーザ光Lは高い直進性を示すため、該レーザ発振器18は、レーザ光Lが被切断材の切断延長線上に照射される位置、具体的には鋸刃1と重なる位置(鋸刃1の端面に平行な面上の位置)に配置されるが、その排出路14での幅方向位置は調整可能である。即ち、図10に示すように、レーザ発振器18は、スプリング19によって幅方向(図10の左方)に付勢され、その端面は、カバー部材11の側部に螺合する調整ボルト20によって受けられている。従って、調整ボルト20を回してこれを排出路14内で進退させることによって、レーザ発振器18の排出路14での幅方向位置を調整することができる。尚、レーザ発振器18に電流を供給するリード線21は、図9に示すように、ソーカバー4に形成された排出口12を通ってカバー部材11内の排出路14へと延び、その端部がレーザ発振器18に接続されている。
【0049】
而して、本実施の形態に係る形態用丸鋸においても、前記実施の形態1と同様の効果が得られるが、本実施の形態では、前述のようにレーザ発振器18を排出路14に配置したため、該レーザ発振器18は、排出路14を流れるファン風9に晒されてこれに切粉が付着しにくく、この結果、被切断材上の切断部分を視認性の良い状態に保つことができる。
【0050】
又、レーザ発振器18がファン風9によって冷却されるためにその発熱が抑えられ、輝度の低下が防がれる。そして、レーザ発振器18の輝度の低下が防がれる結果、該レーザ発振器18に要求される輝度が低く抑えられ、これによって消費電力を低く抑えて省電力を図り、又、レーザ発振器18として耐熱温度の低い安価なものを使用してコスト低減を図ることができる。尚、レーザ発振器18の電源として電池を使用する場合には、省電力によって電池寿命が延びるという効果が得られる。
【0051】
ところで、本実施の形態では、切断をガイドする光を被切断材の切断方向前方側に向けて照射する発光部としてレーザ発振器を用いたが、これに代えてLED発光部を用いても良い。尚、LED光の直進性はレーザ光ほどではなく、その照射範囲は或る程度の幅を有しているため、LED発光部の取付位置はレーザ発振器ほどは厳密でなくても良く、鋸刃と重なる位置から幅方向に若干ずれていても許容される。
【0052】
又、本実施の形態では、レーザ発振器18を排出路14に配置したが、排出路14外のファン風9の排出経路に配置しても前記同様の効果が得られる。
【0053】
<実施の形態3>
次に、本発明の実施の形態3を図11に基づいて説明する。尚、図11は本発明の実施の形態3に係るジグソーの側断面図である。
【0054】
本実施の形態は、本発明をジグソーに適用したものであって、先ず、ジグソーの基本構成と作用を以下に説明する。
【0055】
図示のジグソーのハウジング31内には、駆動源としての電動機32が横置きで収納されており、該電動機32の出力軸(モータ軸)33の一端にはピニオン34が一体に刻設され、該ピニオン34の内側の出力軸上にはファン35が取り付けられている。
【0056】
又、ハウジング31内の電動機32の出力軸33の上方にはこれと平行に軸36が配置されており、この軸36にはギヤ37が回転自在に支承され、このギヤ37は出力軸33の端部に形成された前記ピニオン34に噛合している。そして、このギヤ37には、軸36に対して偏心したピン38が取り付けられており、このピン38はスリーブガイド39に係合している。
【0057】
上記スリーブガイド39は、ハウジング31内に上下に往復動可能に保持されてプランジャ40に取り付けられており、このプランジャ40には、縦方向に長いブレード41の上端が着脱可能に取り付けられている。そして、このブレード41は、ハウジング31の下部に水平に取り付けられたベース42に形成された不図示の開口部を通ってベース42の下面から下方へと延出している。
【0058】
而して、電動機32が駆動されると、その出力軸33の回転はピニオン34を経て減速されてギヤ37に伝達され、該ギヤ37が軸36を中心として所定の速度で回転するが、このギヤ37の回転はピン38の偏心運動によってプランジャ40とこれに連結されたブレード41の上下の往復直線運動に変換される。従って、ベース42を不図示の被切断材上に載置した状態で当該ジグソーを移動させれば、上下に往復直線運動するブレード41によって被切断材が切断される。又、このとき、電動機32の出力軸33に取り付けられた前記ファン35が回転駆動され、このファン35によって誘起されるファン風43はハウジング31内を図示矢印方向に流れて電動機32を冷却する。
【0059】
ところで、本実施の形態に係るジグソーにおいても、ハウジング31内と該ハウジング31とこれに取り付けられたカバー部材44との間には、ファン風43の一部をベース42の切断方向前方側に向けて排出させる排出路45が形成されており、この排出路45の内部であって、且つ、開口部の付近には、切断をガイドするレーザ光Lを被切断材の切断方向前方側に向けて照射するレーザ発振器46が配置されている。
【0060】
従って、本実施の形態に係るジグソーにおいても、電動機32の冷却に供されたファン風43の一部は、排出路45を図示矢印方向に流れてベース42の切断方向前方側に向けて排出されるため、ベース42の底面に溝を形成する等して該ベース42の強度低下を招くことなく、ベース42の切断方向前方側の被切断材上の切粉を吹き飛ばすことができ、被切断材上のケガキ線の視認性を高めて作業性の向上を図ることができる。
【0061】
又、前記実施の形態2と同様に、レーザ発振器46を排出路45に配置したため、該レーザ発振器46に切粉が付着しにくく、被切断材上の切断部分を視認性の良い状態に保つことができる。更に、レーザ発振器46がファン風43によって冷却されるためにその発熱が抑えられ、輝度の低下が防がれるとともに、消費電力を低く抑えて省電力を図り、レーザ発振器46として耐熱温度の低い安価なものを使用してコスト低減を図ることができる。
【0062】
尚、本実施の形態においても、切断をガイドする光を被切断材の切断方向前方側に向けて照射する発光部としてレーザ発振器を用いたが、これに代えてLED発光部を用いても良い。
【0063】
又、本実施の形態においても、レーザ発振器46を排出路45に配置したが、排出路45外のファン風43の排出経路に配置しても前記同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、ハウジング内に収納された電動機をファンの回転によって発生するファン風によって冷却する方式を採用する携帯用丸鋸、ジグソー等の任意の携帯用電動切断機に対して適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 鋸刃
2 電動機
3 モータハウジング(ハウジング)
4 ソーカバー
4a ソーカバーの鋸刃収納部
5 ベース
5a ベースの開口部
6 セーフティカバー
7 ファン
8 吸入口
9 ファン風
10 ガイドピース
10a ガイドピースのガイド部
11 カバー部材(排出路形成部材)
12 ソーカバーのファン風排出口
13 ネジ穴
14 排出路
15 ハンドル
16 ネジ
17 開放端部
18 レーザ発振器(発光部)
19 スプリング
20 調整ボルト
21 リード線
31 ハウジング
32 電動機
33 出力軸(モータ軸)
34 ピニオン
35 ファン
36 軸
37 ギヤ
38 ピン
39 スリーブガイド
40 プランジャ
41 ブレード(鋸歯)
42 ベース
43 ファン風
44 カバー部材(排出路形成部材)
45 排出路
46 レーザ発振器(発光部)
L レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機を収納するハウジングと、
前記電動機によって駆動される鋸刃の一部を収納するソーカバーと、
被切断材上を摺動可能な底面から前記鋸刃を下方に突出させる開口部が形成されたベースと、
前記ハウジング内に設けられ、前記電動機により回転駆動されてファン風を発生するファンと、
を備えた携帯用電動切断機において、
前記ベースの切断方向前方側に設けられ前記鋸刃の刃先位置を指し示すガイド部と、
前記ソーカバーに取り付けられた排出路形成部材と、を備え、
前記ファン風を、前記ソーカバー内に排出すると共に、前記排出路形成部材を介して前記ソーカバーの外側を通し前記ガイド部上及び前記ガイド部よりも切断方向前方側の被切断材上に排出することを特徴とする携帯用電動切断機。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記ベースに対して着脱可能なガイドピースであることを特徴とする請求項1記載の携帯用電動切断機。
【請求項3】
前記ガイド部は、切断方向に延びた凹部が形成されることで形成された面であることを特徴とする請求項1又は2記載の携帯用電動切断機。
【請求項4】
前記ソーカバーにはその内部と外部とを連通する排出口が形成されており、
前記排出路形成部材は、その一端側が前記排出口を覆うと共に、他端側が前記切断方向前方に開口するように構成され、
前記ファン風の一部は、前記排出口から前記排出路形成部材を通り前記開口から前記切断方向前方側に排出されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の携帯用電動切断機。
【請求項5】
前記ファン風の一部は、前記排出口から前記排出路形成部材を通り前記開口から前記切断方向前方側に設けられた前記ガイド部上に排出されることを特徴とする請求項4記載の携帯用電動切断機。
【請求項6】
前記排出路形成部材は、前記ソーカバーに対して着脱可能に取り付けられていることを特徴とする請求項4又は5記載の携帯用電動切断機。
【請求項7】
前記排出路形成部材は、ネジによって前記ソーカバーに取り付けられることを特徴とする請求項6記載の携帯用電動切断機。
【請求項8】
前記被切断材上の切断箇所に光を照射する発光部を備えたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の携帯用電動切断機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−17849(P2010−17849A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247895(P2009−247895)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【分割の表示】特願2005−184498(P2005−184498)の分割
【原出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】