説明

携帯端末装置

【課題】ヒンジアームの軸孔の端部の応力集中を緩和し、ヒンジアームが破損し難い携帯端末装置を得ること。
【解決手段】軸方向の突条41bを有する第1軸孔41aが形成された第1ヒンジアーム41を基部に設けた第1筐体と、第2軸孔が形成された第2ヒンジアームを基部に設けた第2筐体と、前記突条41bに係合する軸方向の溝を有し前記第1軸孔41a及び第2軸孔に嵌合されて前記第1筐体と第2筐体とを開閉可能に連結するヒンジ軸と、を備える携帯端末装置において、前記突条41bの前記第2ヒンジアーム側の端部41cが前記第1軸孔41aの端部41iよりも該第1軸孔41aの内方に位置するように前記突条41bを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折りたたみ式携帯電話機等の携帯端末装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、送話部(第1筐体)の取付部(第1ヒンジアーム)には取付孔(第1軸孔)が設けられ、この取付孔の内側には軸方向全長に亘る一対の係止突条が180°間隔で設けられており、内部に、ヒンジを構成する軸状のケース(ヒンジ軸)がその外周軸方向に設けた凹溝を前記係止突条と係合させつつ嵌入され、前記ヒンジ(ケース:ヒンジ軸)を介して受話部(第2筐体)を折りたたみ可能に送話部(第1筐体)に取付けた携帯電話機(携帯端末装置)がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−84805号公報(第3−4頁、第2−7図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の携帯端末装置は、取付孔(第1軸孔)の係止突条が取付部(第1ヒンジアーム)の端面まで形成されているので、送話部(第1筐体)と受話部(第2筐体)との間に捻じり力等の強い力が作用すると、取付部(第1ヒンジアーム)の端面の係止突条の付け根に応力集中が起こり、付け根にクラックが入って取付部(第1ヒンジアーム)が破損し易い、という問題があった。特に、TV画像を鑑賞するために液晶表示部(第2筐体)を横向きに回転させる構造の携帯電話機等、取付部(第1ヒンジアーム)に大きな力がかかる装置においては、この問題が顕著であった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、取付部(第1ヒンジアーム)の端面の応力集中を緩和し、取付部(第1ヒンジアーム)が破損し難い携帯端末装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、軸方向の突条を有する第1軸孔が形成された第1ヒンジアームを基部に設けた第1筐体と、第2軸孔が形成された第2ヒンジアームを基部に設けた第2筐体と、前記突条に係合する軸方向の溝を有し前記第1軸孔及び第2軸孔に嵌合されて前記第1筐体と第2筐体とを開閉可能に連結するヒンジ軸と、を備える携帯端末装置において、前記突条の前記第2ヒンジアーム側の端部が前記第1軸孔の端部よりも該第1軸孔の内方に位置するように前記突条を形成したことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、上記発明において、前記第1軸孔の端部に面取り部を形成したことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、上記発明において、前記第1軸孔の端部を曲線的に拡径するように形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、第1ヒンジアームの端面の応力集中が緩和され、第1ヒンジアームが破損し難いという効果を奏する。
【0010】
また、請求項2の発明によれば、第1ヒンジアームの端面の応力集中が、さらに緩和される。
【0011】
また、請求項3の発明によれば、第1ヒンジアームの端面の応力集中が、さらに緩和される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる携帯端末装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明にかかる携帯端末装置の外観を模式的に示す斜視図であり、図2は、本発明にかかる携帯端末装置の実施例1の第1筐体を示す斜視図であり、図3は、図2のA部拡大図であって第1ヒンジアームの斜視図であり、図4は、滑りリング装着前の第1ヒンジアームを示す斜視図であり、図5は、滑りリング装着後の第1ヒンジアームを示す斜視図であり、図6は、ヒンジ軸の斜視図であり、図7は、ヒンジ軸嵌合前のヒンジ部の断面図であり、図8は、ヒンジ軸嵌合後のヒンジ部の断面図である。
【0014】
図1に示すように、携帯端末装置としての携帯電話機100は、掌サイズの直方体状の第1筐体20及び第2筐体30と、第1筐体20と第2筐体30とを開閉可能に連結するヒンジ部40とを備える。
【0015】
第1筐体20は、送話部21、ダイヤルキー、機能キー等の操作キー22、アンテナ23等を備えている。第2筐体30は、受話部31、液晶表示部32等を備えている。図1は、第2筐体30が開かれた状態を示している。第1筐体20の基部の両側部には、第1ヒンジアーム41、41が設けられている。第2筐体30の基部の中央部には、第2ヒンジアーム43が設けられている。
【0016】
図2及び図3に示すように、第1ヒンジアーム41、41には、夫々第1軸孔41aが形成され、第1軸孔41a内には、上下各一対の突条41b、41bが所定の間隔で軸方向に延設されている。突条41bの内側端部(第2ヒンジアーム43側の端部)41cが、第1軸孔41aの端部(内側端面41g)よりも、約1mm程度、第1軸孔41aの内方に位置するように突条41bが形成されている。同様に、突条41bの外側端部41dは、第1ヒンジアーム41の外側端面41hよりも、約1mm程度、第1軸孔41aの内方に形成されている。
【0017】
図4に示すように、第1ヒンジアーム41の内側端面41gには、環状凹部41iが形成されている(図3では、環状凹部41iの図示を省略している。)。図4及び図5に示すように、環状凹部41iには、環状の滑りリング45が装着される。滑りリング45の厚さは、環状凹部41iの深さよりも厚く形成されていて、滑りリング45の内側面45aは、第1ヒンジアーム41の内側端面41gよりも内側に出ている。
【0018】
図6〜図8に示すように、第1ヒンジアーム41、41と第2ヒンジアーム43とを回動可能に連結するヒンジ軸47は、全体として略短円柱状に形成されている。ヒンジ軸47は、鍔部47a及び切欠き部47bを有し第2ヒンジアーム43の第2軸孔43b内に形成された内フランジ43aに挿入係止されてヒンジ軸47を抜け止めする小径の係止部47cと、上下各一対の軸方向の溝47f、47fが形成された大径の軸部47hとから成っている。
【0019】
第1ヒンジアーム41、41と第2ヒンジアーム43とを連結するときは、第2ヒンジアーム43を第1ヒンジアーム41、41間に挿入し、第1軸孔41aの軸心と第2軸孔43bの軸心とを一致させ、ヒンジ軸47を、第1ヒンジアーム41の外側方から係止部47cを先頭にして、第1軸孔41a及び第2軸孔43bに嵌入させる。
【0020】
このとき、ヒンジ軸47の夫々一対の軸方向の溝47f、47fに第1軸孔41aの夫々一対の突条41b、41bを係合させてヒンジ軸47を回り止めし、ヒンジ軸47の先端の係止部47cを第2軸孔43bの内フランジ43aに挿入係止させてヒンジ軸47を抜け止めする。最後に第1ヒンジアーム41の外側にキャップ49を装着すれば携帯電話機100の組立が完了する。
【0021】
第2ヒンジアーム43の第2軸孔43bには回り止め用の突条が形成されておらず、また、第2ヒンジアーム43と第1ヒンジアーム41、41との間には、滑りリング45が介在するので、第2ヒンジアーム43は、第1ヒンジアーム41、41に対して滑らかに回動可能である。
【0022】
図4に示すように、突条41bの内側端部(第2ヒンジアーム43側の端部)41cが、第1軸孔41aの端部(環状凹部41i)よりも、約1mm程度、第1軸孔41aの内方に位置するように突条41bが形成されているので、第1軸孔41aの端部は完全な円形となっている。それ故、第1筐体20と第2筐体30との間に強い捩じり力又は曲げ力が作用し、突条41bに強い力が作用しても、第1軸孔41aの端部に応力集中は発生せず、応力集中により第1軸孔41aの端部にクラックが入って第1ヒンジアーム41が破損することはない。
【実施例2】
【0023】
図9は、本発明にかかる携帯端末装置の実施例2を示す第1ヒンジアームの斜視図である。実施例2の携帯端末装置は、図9に示す第1ヒンジアーム41の一部形状のみが、実施例1と異なっているので、異なる部分について説明し、他の部分の説明は省略する。
【0024】
図9に示すように、突条41bの内側端部(第2ヒンジアーム43側の端部)41cは、第1ヒンジアーム41の環状凹部41iよりも、約1mm程度、第1軸孔41aの内方に形成され、かつ、第1軸孔41aの端部には、完全な円形の面取り部41mが形成されている。
【0025】
それ故、第1筐体20と第2筐体30との間に強い捩じり力又は曲げ力が作用し、突条41bに強い力が作用しても、第1軸孔41aの端部に高い応力は発生せず、さらに、端部には、完全な円形の面取り部41mが形成されて端部のエッジ部が無くなっているので、ヒンジ軸47のエッジ部への当りによる応力も緩和され、さらにクラックが発生し難くなっている。なお、この面取り部41mを、曲線的に拡径するように形成(いわゆるR部を形成する。)してもよい。
【0026】
なお、実施例1、2では、第1筐体20の基部の両側部に第1ヒンジアーム41、41を設け、第2筐体30の基部の中央部に第2ヒンジアーム43を設けたが、第1筐体20の基部の中央部に第1ヒンジアーム41を設け、第2筐体30の基部の両側部に第2ヒンジアーム43、43を設けるようにしてもよい。
【0027】
また、実施例1、2では、携帯端末装置として、携帯電話機への適用例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、PDA(PersonalDigitalAssistants)のような小型情報処理端末、小型音楽再生装置、携帯テレビ、携帯型ゲーム機等の他の各種携帯端末装置にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明にかかる携帯端末装置は、TV画像を鑑賞するために液晶表示部を横向きに回転させる構造の携帯電話機等、ヒンジ部に大きな力がかかる装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明にかかる携帯端末装置の外観を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明にかかる携帯端末装置の実施例1の第1筐体を示す斜視図である。
【図3】図2のA部拡大図であって第1ヒンジアームの斜視図である。
【図4】滑りリング装着前の第1ヒンジアームを示す斜視図である。
【図5】滑りリング装着後の第1ヒンジアームを示す斜視図である。
【図6】ヒンジ軸の斜視図である。
【図7】ヒンジ軸嵌合前のヒンジ部の断面図である。
【図8】ヒンジ軸嵌合後のヒンジ部の断面図である。
【図9】本発明にかかる携帯端末装置の実施例2を示す第1ヒンジアームの斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
20 第1筐体
21 送話部
22 操作キー
23 アンテナ
30 第2筐体
31 受話部
32 液晶表示部
40 ヒンジ部
41 第1ヒンジアーム
41a 第1軸孔
41b 突条
41c 内側端部(第2ヒンジアーム側の端部)
41d 外側端部
41g 内側端面
41h 外側端面
41i 環状凹部
41m 面取り部
43 第2ヒンジアーム
43a 内フランジ
43b 第2軸孔
45 滑りリング
45a 内側面
47 ヒンジ軸
47a 鍔部
47b 切欠き部
47c 係止部
47f 溝
47h 軸部
49 キャップ
100 携帯電話機(携帯端末装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の突条を有する第1軸孔が形成された第1ヒンジアームを基部に設けた第1筐体と、
第2軸孔が形成された第2ヒンジアームを基部に設けた第2筐体と、
前記突条に係合する軸方向の溝を有し前記第1軸孔及び第2軸孔に嵌合されて前記第1筐体と第2筐体とを開閉可能に連結するヒンジ軸と、
を備える携帯端末装置において、
前記突条の前記第2ヒンジアーム側の端部が前記第1軸孔の端部よりも該第1軸孔の内方に位置するように前記突条を形成したことを特徴とする携帯端末装置。
【請求項2】
前記第1軸孔の端部に面取り部を形成したことを特徴とする請求項1記載の携帯端末装置。
【請求項3】
前記第1軸孔の端部を曲線的に拡径するように形成したことを特徴とする請求項1記載の携帯端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−74665(P2009−74665A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246606(P2007−246606)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】