説明

携帯通信装置、リーダ/ライタ装置及び共振周波数調整方法

【課題】ICカード機能及びR/W機能の両方を備える携帯通信装置及びその装置の共振周波数調整方法において、受信アンテナの共振周波数のずれを容易に調整可能にして安定した通信特性を得る。
【解決手段】携帯通信端末は、受信アンテナを有する受信部と、送信部2と、調整信号生成部3と、調整信号検出回路部と、制御回路部7とを備える構成する。送信部2は、受信アンテナに受信共振周波数を調整するための調整信号S3を送信し、調整信号検出回路部は、受信アンテナで受信した調整信号の電圧、電流、並びに、電圧及び電流間の位相差の少なくとも一つのパラメータを検出する。そして、制御回路部7は、調整信号検出回路部の検出結果に基づいて、受信アンテナの受信共振周波数のずれを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導作用により外部機器と非接触で通信を行う機能を備える携帯通信装置、リーダ/ライタ装置及びそれらの装置における共振周波数の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば交通乗車券や電子マネー等の非接触IC(Integrated Circuit)カードを利用した非接触通信システムの普及が著しい。このような非接触通信システムでは、システム専用のリーダ/ライタ(以下、R/Wと記す)装置の送信アンテナ(共振回路)から放射された送信信号(電磁波)を、非接触ICカード内に設けられた受信アンテナで電磁誘導作用により受信する。
【0003】
上述のような非接触通信システムでは、例えば、温度、湿度、風辺機器等の周囲の環境により、非接触ICカードの受信アンテナまたはR/W装置の送信アンテナの共振周波数が変化する。この場合、非接触ICカード及びR/W装置間で安定して情報を送受信することが困難となる。
【0004】
そこで、従来、上述のような非接触通信システムにおける共振周波数のずれを調整するための様々な技術が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0005】
特許文献1では、非接触ICカードの共振周波数(受信共振周波数)のずれを調整する手法が提案されている。具体的には、R/W装置が送信周波数を掃引(時間変化)させながら、非接触ICカードに信号を送信することにより、非接触ICカードの共振周波数のずれをR/W装置で検出する。そして、非接触ICカードは、その検出結果をR/W装置から取得し、その結果に基づいて自身の共振周波数を調整する。
【0006】
また、特許文献2では、主にR/W装置(無線通信装置)の共振周波数(送信共振周波数)のずれを調整する手法が提案されている。具体的には、共振周波数調整用の電磁波をアンテナから送信して、その際の送信回路における送信電力を検出する。そして、検出した送信電力と、所定の閾値とを比較して共振周波数を調整する。
【0007】
また、従来、上述した非接触ICカードと同様の機能(以下、ICカード機能という)及びR/W装置と同様の機能(以下、R/W機能という)の両方を備えた例えば移動通信端末等の携帯通信装置も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−111483号公報
【特許文献2】特開2008−160312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したICカード機能及びR/W機能の両方を備えた携帯通信装置おいても、様々な要因でICカード機能(受信アンテナ)の共振周波数が変化する。具体的には、例えば次のような要因(1)〜(5)等で共振周波数が変化する。
(1)各機能部の構成部品の製造上のばらつきの影響
(2)出荷後の構成部品の経時変化や部品交換の影響
(3)例えば、温度、湿度等の周囲環境の変化による特性劣化
(4)携帯通信装置に取り付けられる例えばシール等の装飾物の影響
(5)外部のR/W装置の影響
【0010】
それゆえ、近年、ICカード機能及びR/W機能の両方を備えた携帯通信装置においても、上述のような様々な要因により生ずる受信アンテナの共振周波数のずれに対処するための技術の開発が要望されている。
【0011】
なお、上記要因(1)に対しては、装置の出荷工程において共振回路を構成するキャパシタンス(コンデンサ)やインダクタンス(コイル)を調整することにより対処可能である。しかしながら、この場合、装置毎にキャパシタンスやインダクタンスを調整しなければならないという問題が生じる。また、上記要因(1)に対しては、特性ばらつきの少ない部品を用いることにより対処することも可能である。しかしながら、この場合には、部品が高価になりコストが高くなるという問題がある。なお、上記要因(4)及び(5)は、電磁結合により非接触通信を行う携帯通信装置に特有の問題である。
【0012】
また、ICカード機能及びR/W機能の両方を備えた携帯通信装置に限らず、R/W装置においても、例えば、上記要因(1)〜(3)により、送信アンテナの共振周波数が変化する。それゆえ、R/W装置においても、共振周波数のずれを容易に調整可能にする技術の開発が望まれている。
【0013】
本発明は、上記状況に鑑みなされたものである。本発明の目的は、ICカード機能及びR/W機能の両方を備える携帯通信装置、R/W装置及びそれらの装置の共振周波数調整方法において、受信アンテナ及び/又は送信アンテナの共振周波数のずれを容易に調整可能にして、安定した通信特性を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の携帯通信装置は、受信部と、送信部と、調整信号生成部と、調整信号検出部と、制御回路部とを備える構成とし、各部の機能は次の通りとする。受信部は、外部のリーダ/ライタ装置と電磁結合により通信を行う受信アンテナを有し、該受信アンテナの受信共振周波数が可変である。送信部は、外部の非接触データキャリアと電磁結合により通信を行う送信アンテナを有し、受信共振周波数を調整するための調整信号を受信部に送信する。調整信号生成部は、調整信号を生成して、調整信号を送信部に出力する。調整信号検出部は、受信部で受信した調整信号の電圧、電流、並びに、電圧及び電流間の位相差の少なくとも一つのパラメータを検出する。そして、制御回路部は、調整信号検出部の検出結果に基づいて、受信共振周波数のずれを補正する。
【0015】
また、本発明のリーダ/ライタ装置は、送信部と、調整信号生成部と、調整信号検出部と、制御回路部とを備える構成とし、各部の機能は次の通りとする。送信部は、外部の非接触データキャリアと電磁結合により通信を行う送信アンテナを有し、該送信アンテナの送信共振周波数が可変である。調整信号生成部は、送信共振周波数を調整するための調整信号を生成して、調整信号を送信部に出力する。調整信号検出部は、送信部に出力された調整信号の電圧、電流、並びに、電圧及び電流間の位相差の少なくとも一つのパラメータを検出する。そして、制御回路部は、調整信号検出部の検出結果に基づいて、送信共振周波数のずれを補正する。
【0016】
さらに、本発明の共振周波数調整方法は、上記本発明の携帯通信装置における受信共振周波数の調整方法であり、次の手順で行う。まず、送信部から受信部に受信共振周波数を調整するための調整信号を送信する。次いで、受信部で受信した調整信号の電圧、電流、並びに、電圧及び電流間の位相差の少なくとも一つのパラメータを検出する。そして、検出された調整信号のパラメータに基づいて、受信共振周波数のずれを補正する。
【発明の効果】
【0017】
上述のように、本発明の携帯通信装置及び共振周波数調整方法では、携帯通信装置内の送信部から受信共振周波数を調整するための調整信号に送信し、その調整信号を同じ携帯通信装置内の受信部で受信し、その受信信号に基づいて、受信共振周波数の調整を行う。
【0018】
また、本発明のリーダ/ライタ装置では、送信部に出力された調整信号の電圧、電流、並びに、電圧及び電流間の位相差の少なくとも一つのパラメータを検出し、その検出結果に基づいて、送信共振周波数の調整を行う。
【0019】
すなわち、本発明によれば、様々な要因により受信共振周波数及び/又は送信共振周波数がずれても、その共振周波数のずれを自身の装置内で容易に調整することができ、安定した通信特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る携帯通信装置における非接触通信部のブロック構成図である。
【図2】図2は、第1の実施形態の非接触通信部における受信回路及び送信回路の概略構成図である。
【図3】図3は、第1の実施形態における受信共振周波数の調整モードの原理を説明するための図である。
【図4】図4(a)は、第1の実施形態の調整モード時に共振コンデンサに印加する制御電圧の時間変化特性であり、図4(b)は、調整モード時の共振コンデンサの容量の時間変化特性である。また、図4(c)は、調整モード時の受信回路の共振周波数の時間変化特性であり、図4(d)は、調整モード時に調整信号を受信回路で受信した際の受信信号の検出電圧の時間変化特性である。
【図5】図5は、第1の実施形態における調整モード全体の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】図6は、図5中のステップS14で行う処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】図7は、図5中のステップS15で行う処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】図8(a)は、変形例1の調整モード時に共振コンデンサに印加する制御電圧の時間変化特性であり、図8(b)は、調整モード時に調整信号を受信回路で受信した際の受信信号の検出電圧の時間変化特性である。
【図9】図9は、第2の実施形態における受信共振周波数の調整モードの原理を説明するための図である。
【図10】図10(a)は、第2の実施形態の調整モード時に共振コンデンサに印加する制御電圧の時間変化特性であり、図10(b)は、調整モード時の受信回路の共振周波数の時間変化特性である。また、図10(c)は、調整モード時に調整信号を受信回路で受信した際の受信信号の検出電圧の時間変化特性である。
【図11】図11は、変形例4における最適制御電圧の算出処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】図12(a)は、変形例5の調整モード時に共振コンデンサに印加する制御電圧の時間変化特性であり、図12(b)は、調整モード時に調整信号を受信回路で受信した際の受信信号の検出電圧の時間変化特性である。
【図13】図13(a)は、第3の実施形態の調整モード時に送信する調整信号のキャリア周波数の時間変化の時間変化特性である。図13(b)は、調整モード時に調整信号を受信回路で受信した際の受信信号の検出電圧の時間変化特性であり、共振コンデンサに印加する制御電圧を調整しない場合の特性である。そして、図13(c)は、調整モード時に調整信号を受信回路で受信した際の受信信号の検出電圧の時間変化特性であり、共振コンデンサに印加する制御電圧を調整した場合の特性である。
【図14】図14は、ICカード機能及びR/W機能の両方を備える移動通信端末間における使用可能な周波数帯域のばらつきを説明するための図である。
【図15】図15は、第4の実施形態の非接触通信部における送受信共用回路の概略構成図である。
【図16】図16は、第5の実施形態の非接触通信部における送信回路及び受信回路の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態に係る携帯通信装置及び共振周波数の調整方法の一例を、図面を参照しながら、以下の順で説明する。なお、以下に示す例では、携帯通信装置として、移動通信端末を用いた例を説明する。なお、ここでいう移動通信端末は、いわゆる携帯電話端末と称されるものであり、無線電話用の基地局と無線通信を行う端末装置である。
1.第1の実施形態:移動通信端末及び共振周波数の調整方法の基本例
2.第2の実施形態:調整信号の中心周波数が通常動作時の搬送波の中心周波数と異なる場合の共振周波数の調整例
3.第3の実施形態:調整信号の周波数を掃引して共振周波数を調整する例
4.第4の実施形態:送受信共用アンテナを用いる構成例
5.第5の実施形態:R/W装置における共振周波数の調整例
【0022】
<1.第1の実施形態>
[移動通信端末の構成]
図1に、本発明の第1の実施形態に係る移動通信端末の概略構成を示す。なお、図1には、説明を簡略化するため、ICカード機能及びR/W機能の両機能に必要な構成(以下、非接触通信部という)のみを示す。ただし、非接触通信部以外の構成は、従来の移動通信端末と同様に構成することができる。また、本実施形態では、非接触通信部内の受信回路系(ICカード機能)の共振周波数(受信共振周波数)を調整する例を説明する。
【0023】
非接触通信部100は、受信回路1と、送信回路2(送信部)と、周波数調整回路3(調整信号生成部)と、送受信特性調整回路4(調整回路部)と、起動信号出力部5と、記憶部6と、制御回路7(制御回路部)とを備える。各部の機能は次の通りである。
【0024】
受信回路1は、主に、ICカード機能を果たす回路部である。受信回路1は、後述するように内部に受信アンテナを備え、外部のR/W装置から送信される信号S1を受信アンテナで受信して、該受信信号を復調して受信情報を検出する。また、本実施形態では、受信回路1内の受信アンテナは、送信回路2内の後述する送信アンテナと電磁結合して送信アンテナから送信される受信共振周波数を調整するための調整信号S3を受信する。そして、受信回路1は、受信した調整信号S3の電圧、電流、並びに、電圧及び電圧間の位相差のうち少なくとも一つのパラメータを検出する。なお、受信回路1の具体的な内部構成については、後で図面を参照しながら説明する。
【0025】
送信回路2は、主に、R/W機能を果たす回路部である。送信回路2は、後述するように内部に送信アンテナを備え、その送信アンテナにより、外部の例えば非接触ICカードやICカード機能を有する外部の移動通信端末等の非接触データキャリアに所定の情報を含む信号S2を送信する。なお、送信回路2の具体的な内部構成については、後で図面を参照しながら説明する。
【0026】
また、送信回路2は、周波数調整回路3に接続されており、周波数調整回路3から入力される調整信号S3のレベルを可変する機能を備える。そして、送信回路2は、周波数調整回路3から入力される調整信号S3を所定の出力レベルに調整し、該レベル調整された調整信号S3を受信回路1に送信する。
【0027】
周波数調整回路3は、調整信号S3を生成し、その調整信号S3を送信回路2に出力する。このような機能を果たすため、周波数調整回路3は、図示しないが、基準信号から安定して所定周波数の調整信号S3を生成する高周波信号生成部と、生成した調整信号S3を送信回路2に出力する高周波信号出力部とを備える。
【0028】
なお、後述する第2の実施形態のように周波数が互いに異なる複数の調整信号(副調整信号)を用いる場合や、後述する第3の実施形態のように調整信号の周波数を掃引する場合には、周波数調整回路3は、基準信号から複数種の調整信号を生成する。この場合、周波数調整回路3は、さらに、共振周波数調整時に、制御回路7からの制御信号に基づいて複数種の調整信号から所定の調整信号を選択する選択部を備える。
【0029】
送受信特性調整回路4は、共振周波数調整時における受信回路1の受信特性及び送信回路2の送信特性が最適になるように、受信回路1の受信特性及び送信回路2の送信特性をそれぞれ調整する。具体的には、共振周波数調整時の動作が、外部の機器(例えば非接触ICカード、ICカード機能付き移動通信端末等)に影響を及ぼさないように受信回路1の受信特性及び送信回路2の送信特性を調整する。
【0030】
例えば、送受信特性調整回路4の出力端子は送信回路2に接続されており、送受信特性調整回路4は、共振周波数調整時の調整信号S3の信号レベル、変調手法、符号化手法等を通常動作時とは変える。また、送受信特性調整回路4の出力端子は受信回路1に接続されており、送受信特性調整回路4は、例えば、共振周波数調整時の受信回路1の感度を示すQ値(Quality factor)を低下させる。
【0031】
起動信号出力部5は、所定の条件になれば、動作モードを、ICカード機能またはR/W機能の通常動作のモード(以下、ノーマルモードという)から、受信共振周波数を調整するモード(以下、調整モードという)に移行する旨の起動信号を制御回路7に出力する。なお、調整モードに移行する際に用いられる条件としては、例えば次に示す条件等を用いることができる。
(1)日付及び/又は曜日
(2)時間
(3)周囲環境(例えば、温度、湿度等)
(4)移動通信端末への電源投入時
(5)通信エラーの発生時
(6)搬送波を検出した時
(7)搬送波を一定期間検出し、その後、搬送波が検出されなくなった時
【0032】
なお、上記起動条件(1)〜(7)のうち、起動条件(1)〜(4)に関する情報は、移動通信端末内の例えばメイン制御部(不図示)等から起動信号出力部5に入力される。一方、起動条件(5)〜(7)に関する情報は、非接触通信部100内の制御回路7から入力される。
【0033】
上記起動条件(1)及び(2)等については、ユーザにより設定できるようにしてもよい。例えば、調整モードの実施時間として、ICカード機能及び/又はR/W機能の使用頻度の比較的高い通勤時間を避けて深夜に設定すれば、通勤時に通信動作と調整モードとが重ならなくなり、使い勝手がよくなる。また、例えば、調整モードの所定期間毎に行うように設定すれば、上述した経時変化による共振周波数のずれを抑制することができる。
【0034】
また、上記起動条件(5)で調整モードを起動する場合、起動信号出力部5は、例えば通信エラーフラグを検出して通信エラーを認識する。この場合、通信(ノーマルモード)を強制的に終了して調整モードに移行するようにしてもよい。なお、後述するように本実施形態の調整モードでは、受信アンテナのQ値を低下させて外部R/W装置の送信信号の影響を低減する。しかしながら、通信エラー発生時に強制的に調整モードに移行する場合には、外部R/W装置の送信信号の影響をより小さくするために、受信アンテナのQ値をより一層小さくすることが好ましい。これにより、より安定した調整が可能になる。
【0035】
さらに、上記起動条件(7)で、調整モードが起動するように設定されている場合には、例えば、移動通信端末のICカード機能を使用して、例えば駅の改札等を通った後に次の通信に備えて受信共振周波数の調整が行われる。
【0036】
なお、上記起動条件(7)において、搬送波が検出されなくなったことを検知するための手法としては、例えば、通信終了時に通信終了のフラグが立つような構成にしておき、そのフラグを検出して通信終了を検出する手法を用いることができる。また、別の手法として、例えば搬送波が一定期間検出されれば、通信が行われていると判断し、伝送波が検出されなくなった時間を通信終了時と判断して調整モードに移行するようにしてもよい。なお、この手法では、例えば、現在、駅の改札等で利用されているICカード機能では、0.1秒程度で通信が終了するので、例えば0.1秒×0.5=0.05秒以上の間、搬送波が検出されたならば、通信実行中と判断すればよい。
【0037】
記憶部6は、共振周波数の調整モードで得られた結果(例えば制御電圧等の最適条件)を記憶する。また、記憶部6は、記憶された最適条件を、制御回路7を介して送受信特性調整回路4に出力する。そして、送受信特性調整回路4は、この最適条件に基づいて、受信回路1及び/又は送信回路2の共振特性を設定する。
【0038】
なお、記憶部6はさらに、有線通信/無線通信(例えばウエブ等)により、記憶した最適条件を外部の記憶装置に出力する機能を備えていてもよい。この場合、記憶部6は、外部記憶装置に記憶された最適条件を読み出して送受信特性調整回路4に出力することも可能になる。
【0039】
制御回路7は、例えばCPU(Central Processing Unit)等により構成され、受信回路1の出力信号を内部で演算処理し、その結果を送信回路2及び周波数調整回路3に出力する。具体的には、制御回路7は、受信回路1の出力信号の信号レベルが所定の閾値以下となるように出力信号に対して所定の演算処理及び制御を行う。
【0040】
また、制御回路7は、起動信号出力部5から出力される命令信号(起動信号)に基づいて、非接触通信部100の動作モードをノーマルモード及び調整モード間で切り替える。そして、制御回路7は、非接触通信部100を構成する各部に対して、調整モード時の動作の実施を指示する旨の命令信号に出力する。
【0041】
また、制御回路7は、調整モード動作時に、次のような動作も行う。後述するように、調整モードで受信回路1の共振周波数のずれ量を検出する際、本実施形態では、受信回路1内の受信アンテナの共振周波数を変えながら調整信号S3を受信して、その応答(例えば電圧等)を検出する。この際、制御回路7は、送受信特性調整回路4を介して受信回路1に、受信アンテナの共振周波数を調整するための制御信号(例えば直流信号、交流信号、PWM(Pulse Width Modulation)信号等)を出力する。
【0042】
より具体的には、受信アンテナ(受信回路1)内の可変共振コンデンサに印加する制御電圧を変化させることにより、受信アンテナの共振周波数を変化させる場合には、制御回路7は、送受信特性調整回路4を介して受信回路1に制御電圧を出力する。また、受信回路1内の受信アンテナの共振周波数を、互いに容量の異なる複数のコンデンサを切り替えて調整する場合には、制御回路7は、送受信特性調整回路4を介して受信回路1に複数のコンデンサの切替信号を出力する。
【0043】
さらに、制御回路7は、調整モード時に取得した検出データ及び最適な設定条件データを記憶部6または外部の記憶装置に出力する。
【0044】
[受信回路及び送信回路の構成]
次に、本実施形態の受信回路1及び送信回路2の内部構成を、図2を参照しながら説明する。図2は、本実施形態の受信回路1及び送信回路2の概略構成図である。なお、図2には、受信回路1及び送信回路2と、送受信特性調整回路4及び制御回路7との接続関係も示す。
【0045】
まず、受信回路1の内部構成について説明する。受信回路1は、受信部10と、整流回路11と、ノーマルモード回路部12と、調整モード回路部13(調整信号検出部)とを備える。
【0046】
受信部10は、共振コイル31と、2つの可変容量コンデンサ33及び34(第1及び第2可変容量コンデンサ)と、2つの定容量コンデンサ32及び35(第1及び第2定容量コンデンサ)とを備える。さらに、受信部10は、3つの電流制限抵抗37〜39(第1電流制限抵抗〜第3電流制限抵抗)を備える。
【0047】
第1可変容量コンデンサ33及び第2可変容量コンデンサ34は、制御回路7から送受信特性調整回路4を介して印加される制御電圧Vに応じて、その容量が変化する静電容量素子である。なお、本実施形態では、第1可変容量コンデンサ33及び第2可変容量コンデンサ34として、制御電圧Vが増大すると、容量が減少する可変容量コンデンサを用いる。
【0048】
一方、第1定容量コンデンサ32及び第2定容量コンデンサ35は、入力信号の種類(交流または直流)及びその信号レベルに関係なく、その容量はほとんど変化しない静電容量素子である。なお、第1定容量コンデンサ32及び第2定容量コンデンサ35は、制御回路7側から入力される制御電流と、受信信号電流との干渉による影響を抑制するためのバイアス除去用コンデンサとして作用する。
【0049】
また、本実施形態では、第1定容量コンデンサ32、第1可変容量コンデンサ33、第2可変容量コンデンサ34及び第2定容量コンデンサ35を、この順で直列接続し、一つの共振コンデンサ36を構成する。そして、この直列接続されたコンデンサ群からなる共振コンデンサ36と共振コイル31とを並列接続して共振回路、すなわち、受信アンテナ30を構成する。本実施形態では、この共振回路の電磁誘導作用により、外部のR/W装置からの送信信号S1、または、送信回路2からの共振周波数調整用の調整信号S3を受信する。
【0050】
第1電流制限抵抗37〜第3電流制限抵抗39は、制御回路7側から入力される制御電流と、受信信号電流との干渉による影響を抑制するための抵抗である。第1電流制限抵抗37の一方の端子は、第1可変容量コンデンサ33及び第2可変容量コンデンサ34間の接続部に接続され、他方の端子は、送受信特性調整回路4の出力端子に接続される。すなわち、本実施形態では、第1可変容量コンデンサ33及び第2可変容量コンデンサの容量制御用の制御電圧Vは、制御回路7から送受信特性調整回路4及び第1電流制限抵抗37を介して印加される。また、第2電流制限抵抗38の一方の端子は、第1定容量コンデンサ32及び第1可変容量コンデンサ33間の接続部にそれぞれ接続され、他方の端子は接地される。さらに、第3電流制限抵抗39の一方の端子は、第2可変容量コンデンサ34及び第2定容量コンデンサ35間の接続部に接続され、他方の端子は接地される。
【0051】
また、本実施形態では、受信アンテナ30の共振周波数を変化させるために、制御電圧Vにより容量が変化する可変容量コンデンサを用いる例を説明するが、本発明はこれに限定されない。共振コンデンサ36を容量が互いに異なる複数の定容量コンデンサで構成し、共振コイル31に接続する定容量コンデンサを制御回路7により切替制御することにより、受信アンテナ30の共振周波数を調整してもよい。
【0052】
整流回路11は、図示しないが、例えば整流用ダイオードと整流用コンデンサとからなる半波整流回路等で構成され、受信アンテナ30で受信した交流電圧を直流電圧に整流して出力する。
【0053】
ノーマルモード回路部12は、ICカード機能の通常動作を行う際に機能する回路部である。ノーマルモード回路部12は、ローパスフィルタ回路41と、2値化処理部42と、信号処理部43と、電源レギュレータ44とを備える。
【0054】
ローパスフィルタ回路41、2値化処理部42及び信号処理部43は、整流回路11の出力端子からこの順で接続される。ローパスフィルタ回路41、2値化処理部42及び信号処理部43からなる回路群は、復調回路を構成しており、受信アンテナ30で受信した外部機器からの送信信号をこの回路群で復調する。また、電源レギュレータ44は、受信回路1の駆動電力を蓄えて安定化させ、電力を所定の各部に供給する。
【0055】
調整モード回路部13は、受信アンテナ30の共振周波数の調整(調整モード)時に機能する回路部である。後述するように、本実施形態の調整モードにおいては、受信信号の搬送波(以下、キャリアという)の電圧振幅を検出して、共振周波数のずれを調整する。それゆえ、調整モード回路部13は、主に、ハイパスフィルタ回路51と、振幅検出回路52(調整信号検出回路部)とで構成される。
【0056】
ハイパスフィルタ回路51は、整流回路11の出力端子に接続され、整流された直流電圧から受信アンテナ30で受信した調整信号S3のキャリア成分に対応する電圧信号を抽出する。そして、ハイパスフィルタ回路51の出力端子は、振幅検出回路52に接続されており、抽出されたキャリア成分の電圧信号を振幅検出回路52に出力する。
【0057】
振幅検出回路52は、ハイパスフィルタ回路51で抽出された電圧信号の振幅を検出する。そして、振幅検出回路52の出力端子は、制御回路7に接続されており、振幅検出回路52は、検出した振幅データを制御回路7に出力する。なお、本実施形態では、共振周波数のずれを検出するために、受信した調整信号S3の電圧を検出するが、本発明はこれに限定されず、調整信号S3の電流を検出してもよい。また、調整信号S3の電圧と電流との位相差を検出し、その位相差データに基づいて共振周波数のずれを調整してもよい。この場合、振幅検出回路52の代わりに、調整信号S3の電圧と電流との位相差を検出する位相差検出回路が設けられる。
【0058】
次に、送信回路2の内部構成について簡単に説明する。送信回路2は、送信アンテナ20と、送信アンテナ20に所定の送信信号を出力するドライバ23とを備える。本実施形態では、受信回路1の共振周波数のみを調整するので、送信アンテナ20を、共振コイル21と、定容量の共振コンデンサ22とで構成し、両者を並列接続する。
【0059】
[共振周波数の調整原理]
次に、本実施形態の移動通信端末における非接触通信部100の受信回路1の共振周波数の調整原理を、図3及び図4(a)〜(d)を用いて説明する。
【0060】
なお、図3は、受信共振周波数の調整モード時に、送信回路2から送信される調整信号S3の周波数特性と、受信回路1の受信アンテナ30の周波数特性との関係を示す図である。また、図4(a)は、受信回路1内の制御回路7から送受信特性調整回路4を介して受信アンテナ30の共振コンデンサ36に印加される制御電圧Vの時間変化特性である。図4(b)は、共振コンデンサ36に印加される制御電圧Vの変化に伴う共振コンデンサ36の容量Cの時間変化特性である。また、図4(c)は、共振コンデンサ36に印加される制御電圧Vの変化に伴う受信アンテナ30の共振周波数fの時間変化特性である。そして、図4(d)は、調整モード回路部13内の振幅検出回路52で検出される検出電圧Vdの時間変化特性である。
【0061】
本実施形態の受信共振周波数の調整モードでは、送信回路2から共振周波数調整用の調整信号S3を放射する。なお、本実施形態では、調整信号S3として、図3中の周波数特性60(点線)に示すように、中心周波数(キャリア周波数)がICカード機能で用いるキャリアの規格周波数fc(外部R/W装置からの送信信号の中心周波数)である高周波信号を用いる。また、本実施形態では、調整信号S3は、無変調の高周波信号とする。
【0062】
そして、送信回路2から放射された調整信号S3を、電磁誘導(電磁結合)により、受信回路1の受信アンテナ30で受信し、その信号の電圧振幅を検出する。この際、受信アンテナ30の共振コンデンサ36に印加する制御電圧VをV=0[V]〜Vxの範囲内で所定周期T(msecオーダの時間)で変化させる。この制御電圧Vの時間変化の様子を示したのが、図4(a)である。本実施形態では、時間t=0〜T/2の間で制御電圧Vを0[V]からVxまで直線的に増加させ、その後、t=T/2〜Tの間で制御電圧VをVxから0[V]まで直線的に減少させる。本実施形態の調整モードでは、この制御電圧Vの掃引(増減)サイクルを繰り返す。
【0063】
制御電圧Vを図4(a)に示す増減サイクルで変化させると、その制御電圧Vの変動により、受信アンテナ30の共振コンデンサ36の容量Cも変動する。その様子を示したのが、図4(b)である。制御電圧Vが直線的に増加する時間帯(t=0〜T/2)では、共振コンデンサ36の容量Cは、C0からCVx(<C0)に直線的に減少し、制御電圧Vが直線的に減少する時間帯(t=T/2〜T)では、容量Cは、CVxからC0に直線的に増大する。なお、容量C0は、共振コンデンサ36に印加する制御電圧Vを0[V](最小値)としたときの共振コンデンサ36の容量Cであり、容量CVxは、制御電圧VをVx(最大値)としたときの共振コンデンサ36の容量Cである。
【0064】
制御電圧Vの変化に応じて、共振コンデンサ36の容量Cが図4(b)に示すように変化すると、受信アンテナ30の共振周波数fもまた、容量Cの増減サイクルに合わせて変化する。その様子を示したのが、図4(c)である。共振コンデンサ36の容量Cが直線的に減少する時間帯(t=0〜T/2)では、受信アンテナ30の共振周波数fは、f0からfVx(>f0)に直線的に上昇する。一方、共振コンデンサ36の容量Cが直線的に増大する時間帯(t=T/2〜T)では、受信アンテナ30の共振周波数fは、fVxからf0に直線的に低下する。
【0065】
なお、共振周波数f0は、共振コンデンサ36に印加する制御電圧Vを0[V](最小値)としたときの受信アンテナ30の共振周波数fであり、そのときの受信アンテナ30の周波数特性が図3中の実線で示す特性61である。一方、共振周波数fVxは、共振コンデンサ36に印加する制御電圧VをVx(最大値)としたときの受信アンテナ30の共振周波数fであり、そのときの受信アンテナ30の周波数特性が図3中の破線で示す特性62である。すなわち、本実施形態の調整モードでは、共振コンデンサ36に印加する制御電圧Vの増減サイクルに応じて、受信アンテナ30の周波数特性は、図3中の特性61と特性62との間を往復する。
【0066】
そして、本実施形態の調整モードでは、図4(c)に示す増減サイクルで受信アンテナ30の共振周波数fを時間変化させながら、中心周波数fcの調整信号S3を受信アンテナ30で受信する。この際、振幅検出回路52で検出される電圧Vdの時間変化を示したのが、図4(d)である。
【0067】
調整モード開始時(t=0付近)には、受信アンテナ30の共振周波数fは、調整信号S3の中心周波数fcより低いので、振幅検出回路52で検出される電圧Vdも小さい。その後、時間経過と共に、受信アンテナ30の共振周波数fが上昇して調整信号S3の中心周波数fcに近づく。それに伴い、振幅検出回路52での検出電圧Vdも直線的に増大する。そして、時刻t=T/4で、受信アンテナ30の共振周波数fと調整信号S3の中心周波数fcとが一致し、振幅検出回路52で得られる検出電圧Vdはピーク値Vd1(第1ピーク値Vd1)となる。
【0068】
その後、時間の経過と共に、受信アンテナ30の共振周波数fがさらに上昇し、調整信号S3の中心周波数fcと受信アンテナ30の共振周波数fとの差も大きくなり、検出電圧Vdは減少する。そして、時刻t=T/2になるまで、すなわち、制御電圧Vが最大値Vxとなるまで、検出電圧Vdは直線的に減少する。
【0069】
時刻t=T/2以降、制御電圧Vは最大値Vxより低下するので、受信アンテナ30の共振周波数fは低下し、調整信号S3の中心周波数fcに近づく。それに伴い、振幅検出回路52での検出電圧Vdも直線的に増大する。そして、時刻t=3T/4で、受信アンテナ30の共振周波数fが調整信号S3の中心周波数fcと一致し、振幅検出回路52で得られる検出電圧Vdはピーク値Vd2(第2ピーク値Vd2)となる。
【0070】
さらに時間が経過すると、制御電圧Vはさらに減少し、受信アンテナ30の共振周波数fが調整信号S3の中心周波数fcから遠ざかるので、検出電圧Vdも減少する。そして、時刻t=Tになるまで、すなわち、制御電圧Vの最小値0[V]となるまで、検出電圧Vdは直線的に減少する。
【0071】
本実施形態では、振幅検出回路52で得られる検出電圧Vdは、周期Tの間、上述のように変動する。なお、例えばノイズ等の影響のない理想状態では、検出電圧Vdの第1ピーク値Vd1と第2ピーク値Vd2とは同じ値となる。
【0072】
上述のように調整モード時に制御電圧Vを周期的に変動させると、振幅検出回路52から出力される検出電圧Vdは、受信アンテナ30の共振周波数fと調整信号S3の中心周波数fcとが一致する時にピーク値となる。すなわち、検出電圧Vdがピーク値になったときの制御電圧Vを共振コンデンサ36に印加すると、受信アンテナ30の共振周波数fを調整信号S3の中心周波数fcと一致させることができ、受信アンテナ30の受信状態を最適な状態にすることができる。本実施形態では、上記原理を用いて、受信アンテナ30の共振周波数fを最適な状態に調整する。
【0073】
なお、上記原理説明から明らかなように、制御電圧Vの変化範囲は、その変化範囲内に受信アンテナ30の共振周波数fを調整信号S3の中心周波数fcと一致させることのできる制御電圧Vs(以下、最適制御電圧Vsという)を含むように設定される。また、このような条件を満たす変化範囲であれば、制御電圧Vの変化範囲を任意に設定することができる。
【0074】
[調整モードの動作]
次に、本実施形態の移動通信端末における受信回路1の共振周波数の調整手法(調整モード)の手順を、図面を参照しながら説明する。まず、調整モードの処理動作の全体的な流れを、図5を参照しながら説明する。なお、図5は、調整モードの動作の全体的な流れを示すフローチャートである。なお、以下に説明する制御回路7以外の各部の動作は、制御回路7から出力される所定の制御信号及び/又は命令信号に基づいて行われる。
【0075】
まず、起動信号出力部5から制御回路7にノーマルモードから調整モードに移行する旨の起動信号(開始信号)が入力されると、制御回路7は、非接触通信部100の動作を調整モードに切り替え、外部との通信を停止する(ステップS11)。
【0076】
次いで、送受信特性調整回路4は、受信アンテナ30の受信特性のQ値を下げる(ステップS12)。この動作は、例えば、受信アンテナ30の共振コイル31に、ダンピング抵抗(不図示)を並列接続することにより実現される。なお、受信アンテナ30のQ値を下げることにより、調整モード時における例えば外部R/W装置等からのノイズ等の影響を低減することができる。
【0077】
次いで、送信回路2は、周波数調整回路3から入力された調整信号S3のレベルを調整して、そのレベル調整された調整信号S3を送信アンテナ20から放射する(ステップS13)。なお、この際、調整モード時の動作が外部機器(例えば非接触ICカード、ICカード機能付き移動通信端末等)に影響を及ぼさないようにするために、送受信特性調整回路4は、調整信号S3の信号レベルをノーマルモード時のそれより小さくする。ただし、周囲の機器への影響を一層低減するためには、調整信号S3の放射レベルをできる限り小さくすることが好ましい。それゆえ、本実施形態では、ステップS13において調整信号S3の放射レベルを最小にする。
【0078】
なお、調整信号S3の構成は、上述した本実施形態の例に限定されず、例えば用途、周囲環境等に応じて調整信号S3の構成は適宜変更できる。例えば、調整モード時の周囲の外部機器への影響を低減するために、調整信号S3として、所定の変調を施した信号を用いてもよいし、ICカード機能で使用するキャリアの規格周波数fc以外の周波数を中心周波数とするキャリアを用いてもよい。
【0079】
次いで、受信回路1は、受信アンテナ30の共振コンデンサ36に印加する制御電圧Vを時間変化(掃引)させながら、受信信号の電圧を検出し、その検出電圧Vdの時間変化特性を検出する(ステップS14)。なお、このステップS14の詳細な処理手順は、後で図面を参照しながら説明する。
【0080】
そして、制御回路7は、ステップS14で求めた受信信号の検出電圧Vdの時間変化特性に基づいて、受信アンテナ30の共振周波数fが調整信号S3の中心周波数fcと同じになる最適制御電圧Vsを検出する(ステップS15)。具体的には、本実施形態では、上記調整原理(図4(a)〜(d))で説明したように、受信信号の検出電圧Vdの時間変化特性におけるピーク値を検出し、そのピーク値が得られる時刻の制御電圧Vを最適制御電圧Vsとする。なお、このステップS15の詳細な処理手順は、後で図面を参照しながら説明する。
【0081】
上述のようにして、最適制御電圧Vsが検出できれば、送信回路2は、調整信号S3の放射を停止する(ステップS16)。次いで、制御回路7は、ステップS15で検出した最適制御電圧Vsを受信アンテナ30の共振コンデンサ36の制御電圧に設定する(受信共振周波数の補正を行う)とともに、最適制御電圧Vsを記憶部6に出力する。そして、記憶部6は入力された最適制御電圧Vsを記憶する(ステップS17)。
【0082】
なお、この際、制御回路7は、移動通信端末内の無線及び/又は有線通信機能(不図示)を用いて、例えば、特定のURL(Uniform Resource Locator)を有する外部機器に検出した最適制御電圧Vsを送信して記憶してもよい。この場合、移動通信端末は、最適制御電圧Vsを記憶した例えば特定のURL等にアクセスすることにより、記憶された最適制御電圧Vsを取得することができる。また、検出した最適制御電圧Vs(調整データ)を特殊な電話番号として記憶部6に記憶し、その電話番号に電話をかけることにより最適制御電圧Vs(調整データ)が自動的に取得できる構成にしてもよい。
【0083】
次いで、送受信特性調整回路4は、受信アンテナ30のQ値をノーマルモード時の値に戻す。そして、制御回路7は、非接触通信部100の動作をノーマルモードに切り替え、外部との通信を開始する(ステップS18)。本実施形態では、このようにして受信アンテナ30の共振周波数を調整する。
【0084】
[受信信号の検出処理]
ここで、上記ステップS14(受信信号の検出処理)のより詳細な処理手順を、図6を参照しながら説明する。なお、図6は、上記ステップS14で行う受信信号の検出処理の手順を示すフローチャートである。
【0085】
まず、ステップS14が開始されると、制御回路7は、受信アンテナ30の共振コンデンサ36に印加する制御電圧Vをその可変範囲内の最小値に設定する(ステップS21)。本実施形態では、制御電圧Vの可変範囲内の最小値を0[V]とする。ただし、本発明はこれに限定されず、制御電圧Vの可変範囲内の最小値は、例えば調整時間の制約、前回調整時からの経過時間、移動通信端末の処理能力等に応じて適宜変更できる。
【0086】
次いで、調整モード回路部13内の振幅検出回路52は、受信信号の電圧Vdを検出する(ステップS22)。そして、振幅検出回路52は、検出電圧Vdを制御回路7に出力する。
【0087】
次いで、制御回路7は、振幅検出回路52から入力された検出電圧Vdと、その時の制御電圧Vとを記憶部6に出力する。そして、記憶部6は、入力された検出電圧Vd及び制御電圧Vを対応付けして(テーブルにして)記憶する(ステップS23)。
【0088】
次いで、制御回路7は、送受信特性調整回路4を介して共振コンデンサ36に印加する制御電圧Vを所定電圧ΔVだけ増大する(V=V+ΔV:ステップS24)。なお、電圧の増分ΔVは、例えば調整時間の制約、前回調整時からの経過時間、移動通信端末の処理能力等に応じて適宜変更できる。
【0089】
次いで、制御回路7は、制御電圧Vが、その可変範囲内の最大値Vxより大きいか否か判定する(ステップS25)。なお、制御電圧Vの最大値Vxは、例えば調整時間の制約、前回調整時からの経過時間、移動通信端末の処理能力等に応じて適宜変更できる。
【0090】
ステップS25で、制御電圧Vが最大値Vx以下である場合、ステップS25はNo判定となる。この場合、ステップS22に戻る。その後は、ステップS25がYes判定となるまで上述したステップS22〜S25の動作を繰り返す。
【0091】
そして、制御電圧Vが最大値Vxより大きくなると、ステップS25はYes判定となる。この場合、制御回路7は、送受信特性調整回路4を介して共振コンデンサ36に印加する制御電圧Vを所定電圧ΔVだけ減少する(V=V−ΔV:ステップS26)。
【0092】
次いで、調整モード回路部13内の振幅検出回路52は、受信信号の検出電圧Vdを検出する(ステップS27)。そして、振幅検出回路52は、検出電圧Vdを制御回路7に出力する。
【0093】
次いで、制御回路7は、振幅検出回路52から入力された検出電圧Vdと、その時の制御電圧Vとを記憶部6に出力する。そして、記憶部6は、入力された検出電圧Vd及び制御電圧Vを対応付けして(テーブルにして)記憶する(ステップS28)。
【0094】
次いで、制御回路7は、制御電圧Vが、その可変範囲内の最小値(本実施形態では0[V])以下であるか否か判定する(ステップS29)。
【0095】
ステップS29で、制御電圧Vがその最小値より大きい場合、ステップS29はNo判定となる。この場合、ステップS26に戻る。その後は、ステップS29がYes判定となるまで上述したステップS26〜S29の動作を繰り返す。
【0096】
そして、制御電圧Vがその最小値以下になると、ステップS29はYes判定となり、図5中のステップS14の処理を終了する。この時点で、記憶部6には、制御電圧VをΔV間隔で周期T掃引した時の制御電圧Vの時間変化特性、及び、その時間変化特性に対応する受信信号の検出電圧Vdの時間変化特性が記憶される。本実施形態では、このようにして図5中のステップS14の処理を行う。
【0097】
なお、図6に示す動作例では、検出電圧Vdの検出期間を周期T(1サイクル)としたが、本発明はこれに限定されない。図6に示す動作を、複数回繰り返して行ってもよい。
【0098】
[最適制御電圧の算出動作]
次に、図5中のステップS15(最適制御電圧Vsの算出処理)のより詳細な処理手順を、図7を参照しながら説明する。なお、図7は、上記ステップS15で行う最適制御電圧Vsの算出動作の手順を示すフローチャートである。
【0099】
まず、ステップS15が開始されると、制御回路7は、記憶部6に記憶された制御電圧Vと受信信号の検出電圧Vdとの対応データ(テーブル)を読み出す(ステップS31)。すなわち、制御回路7は、制御電圧Vの時間変化特性(図4(a))、及び、それに対応する受信信号の検出電圧Vdの時間変化特性(図4(d))を読み出す。なお、ここでは、ステップS31で、時刻t=0〜T/2の範囲のデータ読み出す場合を考える。
【0100】
次いで、制御回路7は、検出電圧Vdの時間変化特性に第1ピーク値Vd1が存在するか否か判定する(ステップS32)。
【0101】
ステップS32で、第1ピーク値Vd1が検出されない場合、ステップS32はNo判定となる。この場合、制御回路7は、エラーフラグを立て(ステップS33)、予め設定された標準制御電圧を最適制御電圧Vsとして記憶部6に出力する。そして、記憶部6は、標準制御電圧を最適制御電圧Vsとして記憶し(ステップS34)、制御回路7は、ステップS15の処理を終了する。
【0102】
一方、ステップS32で、第1ピーク値Vd1が検出された場合、ステップS32はYes判定となる。この場合、制御回路7は、その第1ピーク値Vd1が得られた時刻(T/4)の制御電圧Vを求め、その制御電圧Vを最適制御電圧Vsとして記憶部6に出力する。
【0103】
上述のようにして、最適制御電圧Vsが決定すれば、記憶部6は、その最適制御電圧Vsを記憶し(ステップS35)、制御回路7は、ステップS15の処理を終了する。本実施形態では、このようにして図5中のステップS15の処理を行う。
【0104】
なお、上述した調整モードの処理中に、例えば外部のR/W装置等からの信号を受信した場合には、調整モードを中止し、外部機器からの信号の受信処理を行う。すなわち、本実施形態の移動通信端末では、調整モードより、ノーマルモードを優先して行う。
【0105】
上述のように、本実施形態の移動通信端末では、ICカード機能及びR/W機能の両方を有する非接触通信部100の受信回路1の共振周波数のずれを、非接触通信部100内の送信回路2から送信される所定の調整信号S3を用いて調整する。すなわち、本実施形態では、例えば環境変化、部品の経時変化等の様々な要因により非接触通信部100の受信アンテナ30の共振周波数がずれても、自身の端末内で容易に受信共振周波数を調整することができる。それゆえ、本実施形態によれば、例えば環境変化、部品の経時変化等の様々な要因に対する耐性に優れ、常に安定した通信特性を得ることができる。
【0106】
[変形例1]
上記第1の実施形態における最適制御電圧Vsの算出処理(図7)中のステップS31では、制御電圧Vの時間変化特性及び受信信号の検出電圧Vdの時間変化特性を読み出す際、時刻t=0〜T/2の範囲のデータを読み出す例を説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、例えば、時刻t=0〜Tの範囲のデータを読み出してもよい。この場合には、図4(d)に示すように、検出電圧Vdのピーク値として、第1ピーク値Vd1及び第2ピーク値Vd2が検出される。
【0107】
この場合、検出電圧Vdの第1ピーク値Vd1における制御電圧Vの値と、第2ピーク値Vd2における制御電圧Vの値との平均値を最適制御電圧Vsとする。なお、両ピーク値が同じである場合には、いずれか一方の制御電圧Vを最適制御電圧Vsとしてもよい。
【0108】
さらに、時刻t=0〜Tの制御電圧Vの増減サイクル(掃引サイクル)を複数回繰り返して得られる受信信号の検出電圧Vdの時間変化特性に基づいて、最適制御電圧Vsを算出してもよい。この場合、検出電圧Vdの時間変化特性から4つ以上のピーク値が検出され、それらに対応した数の制御電圧Vが得られる。この場合には、得られた複数の制御電圧Vの平均値を最適制御電圧Vsとする。
【0109】
この例の手法においても、上記第1の実施形態と同様に、最適制御電圧Vsを求めることができるので、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、この場合、複数の検出電圧Vdのピーク値を用いるので、例えばノイズ等の影響を低減することができ、より精度良く最適制御電圧Vsを求めることができる。
【0110】
[変形例2]
上記第1の実施形態において最適制御電圧Vsを求める際、検出電圧Vdのピーク値を検出する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、検出電圧Vdのピーク値を挟んで得られる同一値の2つの検出電圧Vdに対応する2つの制御電圧Vを求め、それらの平均値を最適制御電圧Vsとしてもよい。
【0111】
変形例2では、そのような最適制御電圧Vsの算出手法の一例を図8(a)及び(b)を参照しながら説明する。図8(a)は、上記第1の実施形態と同様に、受信回路1内の制御回路7から送受信特性調整回路4を介して受信アンテナ30の共振コンデンサ36に印加する制御電圧Vの時間変化特性である。また、図8(b)は、振幅検出回路52で検出される検出電圧Vdの時間変化特性であり、図8(a)に示す制御電圧Vの変化に対応する検出電圧Vdの時間変化特性である。なお、図8(a)及び(b)に示す特性は、上記第1の実施形態で説明した図4(a)及び(d)にそれぞれ対応する。
【0112】
この例の最適制御電圧Vsの算出手法では、まず、検出電圧Vdのピーク値の時刻(T/4)を挟んで検出電圧Vdが同一となる時刻tm1及びtm2を求める。次いで、時刻tm1における制御電圧Vm1、及び、時刻tm2における制御電圧Vm2をそれぞれ求める。そして、求めた2つの制御電圧Vm1及びVm2の平均値を最適制御電圧Vsとする。
【0113】
この例の手法においても、上記第1の実施形態と同様に、最適制御電圧Vsを求めることができるので、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、この例の手法では、例えばノイズ等により検出電圧Vdの時間変化特性に例えばひずみ等が生じ、検出電圧Vdのピーク値を正確に検出できない場合であっても、より正確に最適制御電圧Vsを求めることができる。
【0114】
<2.第2の実施形態>
上記第1の実施形態では、調整モード時に、外部機器に影響を与えないようにするため調整信号S3の信号レベルを小さくする例を説明したが、本発明はこれに限定されない。ICカード機能に用いるキャリアの規格周波数fcと異なる周波数の調整信号S3を用いてもよい。第2の実施形態では、その一例を説明する。
【0115】
なお、本実施形態の移動通信端末(非接触通信部)の構成は、上記第1の実施形態(図1及び2)と同様であるので、ここでは構成の説明は省略する。また、以下に説明する原理及び動作の説明で用いる各部の符号は図1及び2中に示す各部の符号である。
【0116】
[共振周波数の調整原理及び調整モード時の動作]
まず、本実施形態の非接触通信部100における受信回路1の共振周波数の調整原理を、図9及び図10(a)〜(c)を用いて説明する。
【0117】
なお、図9は、本実施形態における共振周波数の調整モード時に、送信回路2から送信される調整信号S3の周波数と、受信回路1の受信アンテナ30の周波数特性との関係を示す図である。また、図10(a)は、受信回路1内の制御回路7から送受信特性調整回路4を介して受信アンテナ30の共振コンデンサ36に印加する制御電圧Vの時間変化特性である。また、図10(b)は、制御電圧Vの変化に伴う受信アンテナ30の共振周波数fの時間変化特性である。そして、図10(c)は、調整モード回路部13内の振幅検出回路52で検出される検出電圧Vdの時間変化特性である。なお、図9及び図10(a)〜(c)において、上記第1の実施形態と同様の特性及びパラメータ(図3及び図4(a)〜(d))には、同じ符号を付して示す。
【0118】
また、図10(a)及び(b)に示す特性と、上記第1の実施形態で説明した図4(a)及び(c)の特性との比較から明らかなように、両者の特性は、同じ特性である。すなわち、ここでは、調整モード時の共振コンデンサ36に印加する制御電圧Vの掃引サイクルは、上記第1の実施形態と同様とする。
【0119】
本実施形態の共振周波数の調整モードでは、調整信号S3の周波数として、図9に示すように、ICカード機能に用いるキャリアの規格周波数fcのサブキャリア周波数fc1及びfc2(fc1<fc2)を用いる。すなわち、本実施形態としては、調整信号S3として、サブキャリア周波数fc1及びサブキャリア周波数fc2(以下、それぞれ第1サブキャリア周波数fc1及び第2サブキャリア周波数fc2という)の2種類の調整信号(副調整信号)を用いる。また、各副調整信号は、第1の実施形態と同様に無変調とする。
【0120】
さらに、本実施形態では、図9に示すように、制御電圧V=0時の受信アンテナ30の共振周波数f0が第1サブキャリア周波数fc1より小さくなるように設定する。また、制御電圧V=Vx時の受信アンテナ30の共振周波数fVxが第2サブキャリア周波数fc2より大きくなるように設定する。なお、第1サブキャリア周波数fc1の副調整信号及び第2サブキャリア周波数fc2の副調整信号の生成及び合成は、非接触通信部100の周波数調整回路3(図1参照)で行われる。
【0121】
また、ここでは、第1サブキャリア周波数fc1の副調整信号及び第2サブキャリア周波数fc2の副調整信号は同時に送信する場合を説明する。ただし、本発明はこれに限定されない。例えば、第1サブキャリア周波数fc1の副調整信号及び第2サブキャリア周波数fc2の副調整信号を時分割して送信してもよい。この場合、まず、第1サブキャリア周波数fc1の副調整信号を送信し、その副調整信号に対して検出電圧Vdのピーク値が検出されれば、副調整信号を第2サブキャリア周波数fc2の副調整信号に切り替える。そして、第2サブキャリア周波数fc2の副調整信号に対して検出電圧Vdのピーク値を検出する。また、別の手法として、第1サブキャリア周波数fc1の副調整信号及び第2サブキャリア周波数fc2の副調整信号を、例えばT/4周期等の所定期間毎に切り替えてもよい。
【0122】
本実施形態では、図10(a)に示すように、時間t=0〜T/2の間で制御電圧Vを0[V]からVxまで直線的に増加させ、その後、t=T/2〜Tの間で制御電圧VをVxから0[V]まで直線的に減少させる。本実施形態の調整モードでは、この制御電圧Vの増減サイクルを繰り返す。この際、受信アンテナ30の共振周波数fも、第1の実施形態と同様に、制御電圧Vの増減サイクルに合わせて変化する。具体的には、図10(b)に示すように、制御電圧Vが直線的に増大する時間帯(t=0〜T/2)では、受信アンテナ30の共振周波数fはf0〜fVxに直線的に上昇する。そして、制御電圧Vが直線的に減少する時間帯(t=T/2〜T)では、共振周波数fはfVx〜f0に直線的に低下する。
【0123】
そして、図10(b)に示す増減サイクルで受信アンテナ30の共振周波数fを時間変化させながら、第1サブキャリア周波数fc1の信号及び第2サブキャリア周波数fc2の副調整信号を含む調整信号S3を受信アンテナ30で受信する。この際の振幅検出回路52で検出される電圧Vdの時間変化を示したのが、図10(c)である。
【0124】
調整モード開始時(t=0付近)には、受信アンテナ30の共振周波数f(=f0付近)は、第1サブキャリア周波数fc1より低いので、振幅検出回路52で検出される電圧Vdも小さい。その後、時間と共に、受信アンテナ30の共振周波数fが増大して第1サブキャリア周波数fc1に近づく。それに伴い、振幅検出回路52での検出電圧Vdも直線的に増大する。そして、時刻t=tc1で、受信アンテナ30の共振周波数fが第1サブキャリア周波数fc1と一致すると、振幅検出回路52で得られる検出電圧Vdはピーク値Vds1(第1ピーク値Vds1)となる。
【0125】
その後、時間経過と共に、受信アンテナ30の共振周波数fが増大して第1サブキャリア周波数fc1から遠ざかる。それに伴い、検出電圧Vdも直線的に減少する。そして、時刻t=T/4で、受信アンテナ30の共振周波数fがICカード機能に用いるキャリアの規格周波数fcと一致すると、振幅検出回路52で得られる検出電圧Vdはボトム値Vb1(第1ボトム値Vb1)となる。
【0126】
その後、さらに時間が経過すると、受信アンテナ30の共振周波数fが増大して第2サブキャリア周波数fc2に近づく。それに伴い、振幅検出回路52での検出電圧Vdも直線的に増大する。そして、時刻t=tc2で、受信アンテナ30の共振周波数fが第2サブキャリア周波数fc2と一致すると、振幅検出回路52で得られる検出電圧Vdはピーク値Vds2(第2ピーク値Vds2)となる。
【0127】
さらに時間が経過すると、受信アンテナ30の共振周波数fが増大して第2サブキャリア周波数fc2から遠ざかる。そして、時刻t=T/2になるまで、すなわち、制御電圧Vがその可変範囲内の最大値Vxとなるまで、検出電圧Vdは直線的に減少する。
【0128】
時刻t=T/2以降、制御電圧Vは最大値Vxより低下させるので、受信アンテナ30の共振周波数fは減少して第2サブキャリア周波数fc2に近づく。それゆえ、振幅検出回路52での検出電圧Vdも直線的に増大する。そして、時刻t=tc3で、受信アンテナ30の共振周波数fが第2サブキャリア周波数fc2と一致すると、振幅検出回路52で得られる検出電圧Vdはピーク値Vds3(第3ピーク値Vds3)となる。
【0129】
その後、さらに時間が経過すると、制御電圧Vはさらに減少し、それに伴い、受信アンテナ30の共振周波数fも減少して第2サブキャリア周波数fc2から遠ざかる。そして、時刻t=3T/4になるまで、すなわち、受信アンテナ30の共振周波数fがICカード機能に用いるキャリアの規格周波数fcと一致するまで、検出電圧Vdは直線的に減少する。時刻t=3T/4では、受信アンテナ30の共振周波数fが規格周波数fcと一致すると、振幅検出回路52で得られる検出電圧Vdはボトム値Vb2(第2ボトム値Vb2)となる。
【0130】
時刻t=3T/4以降は、受信アンテナ30の共振周波数fがさらに減少して第1サブキャリア周波数fc1に近づく。それに伴い、振幅検出回路52での検出電圧Vdも直線的に増大する。そして、時刻t=tc4で、受信アンテナ30の共振周波数fが第1サブキャリア周波数fc1と一致すると、振幅検出回路52で得られる検出電圧Vdはピーク値Vds4(第4ピーク値Vds4)となる。
【0131】
時刻t=tc4以降は、受信アンテナ30の共振周波数fがさらに減少して第1サブキャリア周波数fc1から遠ざかる。その結果、時刻t=Tになるまで、すなわち、制御電圧Vがその可変範囲の最小値0[V]となるまで、検出電圧Vdは直線的に減少する。
【0132】
本実施形態では、振幅検出回路52で得られる検出電圧Vdは、周期Tの間、上述のように変動する。なお、例えばノイズ等の影響のない理想状態では、検出電圧Vdの第1ピーク値Vds1〜第4ピーク値Vds4は全て同じ値となる。また、理想状態では、第1ボトム値Vb1及びVb2も同じ値となる。
【0133】
上述のように、本実施形態の調整手法では、受信アンテナ30の共振周波数fとICカード機能に用いるキャリアの規格周波数fcとが一致する時に、振幅検出回路52での検出電圧Vdがボトム値(第1ボトム値Vb1または第2ボトム値Vb2)となる。それゆえ、本実施形態の調整手法では、検出電圧Vdが第1ボトム値になる時刻の制御電圧Vを共振コンデンサ36に印加することにより、受信アンテナ30の共振周波数fをICカード機能に用いるキャリアの規格周波数fcと一致させることができる。本実施形態では、このようにして受信アンテナ30の共振周波数fを最適な状態に調整する。
【0134】
次に、上記本実施形態の調整原理に基づく、受信回路1の共振周波数の調整手法(調整モード)の手順を、簡単に説明する。
【0135】
上記第1の実施形態の最適制御電圧Vsの算出処理(図5中のステップS15及び図7)では、振幅検出回路52での検出電圧Vdがピーク値となるときの制御電圧Vを最適制御電圧Vsとした。それに対して、本実施形態では、上記調整原理で説明したように、検出電圧Vdがボトム値になったときの制御電圧Vを共振コンデンサ36に印加すると、受信アンテナ30の共振周波数fをICカード機能に用いるキャリアの規格周波数fcと一致する。
【0136】
それゆえ、本実施形態では、上記第1の実施形態の調整モード時の最適制御電圧Vsの算出処理(図7)において、例えば時刻t=0〜T/2の範囲の制御電圧Vの時間変化特性及び受信信号の検出電圧Vdの時間変化特性を読み出す。次いで、検出電圧Vdが第1ボトム値Vb1となる時刻(T/4)び制御電圧Vを検出し、その制御電圧Vを最適制御電圧Vsとする。なお、これ以外の処理は第1の実施形態と同様に行う。本実施形態では、このようにして調整モード時に最適制御電圧Vsを算出する。
【0137】
上述のように、本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、ICカード機能及びR/W機能を有する非接触通信部100の受信回路1の共振周波数のずれを、非接触通信部100内の送信回路2から送信される調整信号S3を用いて調整することができる。それゆえ、本実施形態においても、記第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0138】
[変形例3]
上記第2の実施形態における最適制御電圧Vsの算出処理では、時刻t=0〜T/2の範囲の制御電圧Vの時間変化特性及び受信信号の検出電圧Vdの時間変化特性を記憶部6から読み出して、最適制御電圧Vsを算出する例を説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、最適制御電圧Vsの算出処理で、例えば、時刻t=0〜Tの範囲のデータを記憶部6から読み出してもよい。この場合には、図10(c)に示すように、検出電圧Vdのボトム値として、第1ボトム値Vb1及び第2ボトム値Vb2が検出される。
【0139】
この場合、検出電圧Vdの第1ボトム値Vb1における制御電圧Vの値と、第2ボトム値Vb2における制御電圧Vの値との平均値を最適制御電圧Vsとする。なお、両ボトム値が同じである場合には、いずれか一方の制御電圧Vを最適制御電圧Vsとしてもよい。
【0140】
さらに、時刻t=0〜Tの制御電圧Vの増減サイクル(掃引サイクル)を複数回繰り返して得られる受信信号の検出電圧Vdの時間変化特性に基づいて、最適制御電圧Vsを算出してもよい。この場合、検出電圧Vdの時間変化特性から4つ以上のボトム値が検出され、それらに対応した数の制御電圧Vが得られる。この場合には、得られた複数の制御電圧Vの平均値を最適制御電圧Vsとする。
【0141】
この例の手法においても、上記第2の実施形態と同様に、最適制御電圧Vsを求めることができるので、上記第2の実施形態と同様の効果が得られる。また、この場合、複数の検出電圧Vdのボトム値を用いるので、例えばノイズ等の影響を低減することができ、より精度良く最適制御電圧Vsを求めることができる。
【0142】
[変形例4]
上記第2の実施形態において最適制御電圧Vsを求める際、検出電圧Vdのボトム値を検出する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。この例では、上記第2の実施形態の最適制御電圧Vsの算出手法とは、別の算出手法の一例を説明する。
【0143】
図10(c)に示すように、検出電圧Vdの時間変化特性の例えば時刻t=0〜T/2の範囲では、時刻tc1及びtc2でそれぞれ検出電圧Vdがピーク値Vds1及びVds2となる。そして、検出電圧Vdがピーク値Vds1及びVds2となるとき(時刻tc1及びtc2)の制御電圧Vは、図10(a)に示すように、それぞれVs1及びVs2となり、両者の中間値(平均値)が最適制御電圧Vsとなる。
【0144】
それゆえ、例えば、まず、検出電圧Vdの時間変化特性の例えば時刻t=0〜T/2の範囲において、検出電圧Vdがピーク値Vds1及びVds2となる時刻tc1及びtc2をそれぞれ求める。そして、時刻tc1及びtc2における制御電圧Vs1及びVs2をそれぞれ求め、両者の平均値(中間値)を算出すれば、最適制御電圧Vsを得ることができる。
【0145】
ここで、変形例4における最適制御電圧Vsの算出処理を、図11を参照しながら具体的に説明する。なお、図11は、この例における最適制御電圧Vsの算出処理(図5中のステップS15)の手順を示すフローチャートである。
【0146】
ただし、この例における調整モードの処理手順の全体的な流れは、上記第2の実施形態の調整モードの処理手順(図5)と同様であるが、最適制御電圧Vsの算出処理(図5中のステップS15)が、この例と上記第2の実施形態とで異なる。それ以外の処理は第2の実施形態と同様である。
【0147】
この例では、まず、図5中のステップS15が開始されると、制御回路7は、記憶部6に記憶された制御電圧Vと受信信号の検出電圧Vdとの対応データ(テーブル)を読み出す(ステップS41)。すなわち、制御回路7は、制御電圧Vの時間変化特性(図10(a))、及び、それに対応する受信信号の検出電圧Vdの時間変化特性(図10(c))を読み出す。なお、ここでは、時刻t=0〜T/2のデータを読み出す場合を考える。
【0148】
次いで、制御回路7は、検出電圧Vdの時間変化特性において、第1ピーク値Vds1が存在するか否か判定する(ステップS42)。
【0149】
ステップS42で、検出電圧Vdの第1ピーク値Vds1が検出されない場合、ステップS42はNo判定となる。この場合、制御回路7は、エラーフラグを立て(ステップS43)、予め設定された標準制御電圧を最適制御電圧Vsとして記憶部6に出力する。そして、記憶部6は、標準制御電圧を最適制御電圧Vsとして記憶し(ステップS44)、制御回路7は、ステップS15の処理を終了する。
【0150】
一方、ステップS42で、第1ピーク値Vds1が検出された場合、ステップS42はYes判定となる。この場合、制御回路7は、第1ピーク値Vds1が得られた時刻tc1の制御電圧Vs1を求め、その制御電圧Vs1を記憶部6に出力する。そして、記憶部6は制御電圧Vs1を記憶する(ステップS45)。
【0151】
次いで、制御回路7は、検出電圧Vdの時間変化特性において、第2ピーク値Vds2が存在するか否か判定する(ステップS46)。
【0152】
ステップS46で、検出電圧Vdの第2ピーク値Vds2が検出されない場合、ステップS46はNo判定となる。この場合、制御回路7は、エラーフラグを立て(ステップS43)、予め設定された標準制御電圧を最適制御電圧Vsとして記憶部6に出力する。そして、記憶部6は、標準制御電圧を最適制御電圧Vsとして記憶し(ステップS44)、制御回路7は、ステップS15の処理を終了する。
【0153】
一方、ステップS46で、第2ピーク値Vds2が検出された場合、ステップS46はYes判定となる。この場合、制御回路7は、第2ピーク値Vds2が得られた時刻tc2の制御電圧Vs2を求め、その制御電圧Vs2を記憶部6に出力する。そして、記憶部6は制御電圧Vs2を記憶する(ステップS47)。
【0154】
次いで、制御回路7は、記憶部6に記憶された制御電圧Vs1及びVs2を読み出し、両者の平均値(中間値)を算出する(ステップS48)。次いで、制御回路7は、ステップS48で算出した制御電圧Vs1及びVs2の平均値を記憶部6に出力する。そして、記憶部6は、制御電圧Vs1及びVs2の平均値を最適制御電圧Vsとして記憶する。この例では、このようにして、受信回路1の最適制御電圧Vsを求める。
【0155】
この例の手法においても、上記第2の実施形態と同様に、最適制御電圧Vsを求めることができるので、上記第2の実施形態と同様の効果が得られる。また、この場合、複数の検出電圧Vdのピーク値を用いるので、例えばノイズ等の影響を低減することができ、より精度良く最適制御電圧Vsを求めることができる。
【0156】
なお、この例では、ステップS41では、時刻t=0〜T/2の範囲の制御電圧Vの変化特性及び受信信号の検出電圧Vdの変化特性を読み出して、最適制御電圧Vsを算出する例を説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、ステップS41で、例えば、時刻t=0〜Tの範囲のデータを読み出してもよい。この場合には、図10(c)に示すように、検出電圧Vdの4つのピーク値、すなわち、第1ピーク値Vds1〜第4ピーク値Vds4が検出される。
【0157】
この場合、第1ピーク値Vds1〜第4ピーク値Vds4が得られるとき(時刻t=tc1〜tc4)の4つの制御電圧Vs1〜Vs4の平均値を最適制御電圧Vsとする。なお、4つの制御電圧Vs1〜Vs4が同じである場合には、いずれか一つの制御電圧Vを最適制御電圧Vsとしてもよい。
【0158】
[変形例5]
上記第2の実施形態並びに変形例3及び4では、検出電圧Vdの時間変化特性において、検出電圧Vdがピーク値またはボトム値となるときの制御電圧Vを用いて、最適制御電圧Vsを算出する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、検出電圧Vdのボトム値を挟んで得られる同一値の2つの検出電圧Vdの時刻における2つの制御電圧Vの平均値を最適制御電圧Vsとしてもよい。変形例5では、そのような最適制御電圧Vsの算出手法の一例を、図12(a)及び(b)を参照しながら説明する。
【0159】
図12(a)は、上記第2の実施形態と同様に、受信回路1内の制御回路7から送受信特性調整回路4を介して受信アンテナ30の共振コンデンサ36に印加する制御電圧Vの時間変化特性である。また、図12(b)は、振幅検出回路52で検出される検出電圧Vdの時間変化特性であり、図12(a)に示す制御電圧Vの変化に対応する検出電圧Vdの時間変化特性である。なお、図12(a)及び(b)に示す特性は、上記第2の実施形態で説明した図10(a)及び(c)にそれぞれ対応する。なお、ここでは、説明を簡略化するため、時刻t=0〜T/2の範囲の検出電圧Vdの時間変化特性から最適制御電圧Vsを求める例を説明する。
【0160】
この例では、まず、検出電圧Vdの第1ボトム値Vb1の時刻(T/4)を挟んで検出電圧Vdが同一となる時刻tm1及びtm2を求める。次いで、時刻tm1における制御電圧Vms1、及び、時刻tm2における制御電圧Vms2をそれぞれ求める。そして、求めた2つの制御電圧Vms1及びVms2の平均値を求め、その値を最適制御電圧Vsとする。
【0161】
この例の手法においても、上記第2の実施形態と同様に、最適制御電圧Vsを求めることができる。それゆえ、この例においても、上記第2の実施形態と同様の効果が得られる。また、この例の手法では、例えばノイズ等により検出電圧Vdの時間変化特性に例えばひずみ等が生じ、検出電圧Vdのピーク値を正確に検出できない場合であっても、より正確に最適制御電圧Vsを求めることができる。
【0162】
なお、この例では、時刻t=0〜T/2の範囲の制御電圧Vの変化特性及び受信信号の検出電圧Vdの変化特性を読み出して、最適制御電圧Vsを算出する例を説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、例えば、時刻t=0〜Tの範囲のデータを読み出して、そのデータを用いて最適制御電圧Vsを求めてもよい。
【0163】
この場合、検出電圧Vdの第1ボトム値Vb1の時刻(T/4)を挟んで検出電圧Vdが同一となる時刻tm1及びtm2、並びに、第2ボトム値Vb2の時刻(3T/4)を挟んで検出電圧Vdが同一となる時刻tm3及びtm4を求める。次いで、時刻tm1〜tm4における制御電圧Vms1〜Vms4をそれぞれ求める。そして、求めた4つの制御電圧Vms1〜Vms4の平均値を求め、その値を最適制御電圧Vsとする。
【0164】
<3.第3の実施形態>
上記第1及び第2の実施形態では、調整モード時に送信回路2から送信する調整信号S3の中心周波数を時間に対して一定とし、受信回路1の共振周波数を時間変化させて最適制御電圧Vsを求める例を説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。送信回路2から送信する調整信号S3の中心周波数及び受信回路1の共振周波数をともに時間変化させて最適制御電圧Vsを求めてもよい。第3の実施形態では、その一例を説明する。
【0165】
本実施形態では、上記第1及び第2の実施形態と同様に、移動通信端末の非接触通信部における受信回路の共振周波数を調整する例を説明する。なお、本実施形態の移動通信端末(非接触通信部)の構成は、上記第1の実施形態(図1及び2)と同様であるので、ここでは構成の説明は省略する。なお、以下の原理及び動作の説明で用いる各部の符号は図1及び2中に示す各部の符号である。
【0166】
[共振周波数の調整原理及び調整モード時の動作]
本実施形態の非接触通信部100における受信回路1の共振周波数の調整原理を、図13(a)〜(c)を用いて説明する。なお、図13(a)は、送信回路2から送信する調整信号S3のキャリア周波数(中心周波数)の時間変化特性である。また、図13(b)は、受信回路1内の共振コンデンサ36に印加する制御電圧Vを時間変化させない時の振幅検出回路52で検出される検出電圧Vdの時間変化特性である。さらに、図13(c)は、受信回路1内の共振コンデンサ36に印加する制御電圧Vを時間変化させた時(本実施形態)の振幅検出回路52で検出される検出電圧Vdの時間変化特性である。
【0167】
本実施形態における受信回路1の共振周波数の調整モードでは、周期Tの間に、送信回路2から送信する調整信号S3のキャリア周波数を「fc−Δf」→「fc+Δf」→「fc−Δf」の順で時間に対して直線的に変化させる。そして、この周波数の増減サイクルを周期T毎に繰り返す(図13(a)参照)。なお、この調整信号S3のキャリア周波数の時間変化は、非接触通信部100の周波数調整回路3(図1参照)で制御される。
【0168】
一方、受信回路1では、共振コンデンサ36に印加する制御電圧Vを周期T毎に段階的に増加または減少させる。図13(c)に示す例では、制御電圧Vを段階的に増加させる例(V1<V2<V3)を示す。
【0169】
ここで、いま、受信回路1の共振コンデンサ36に制御電圧V1を印加した際の受信回路1の共振周波数が、ICカード機能で用いるキャリアの規格周波数fcより低い場合を考える。このような状態の受信回路1で、図13(a)に示す増減サイクルでキャリア周波数が時間変化する調整信号S3を受信すると、検出電圧Vdは、キャリア周波数がfcとなる時刻付近で検出電圧Vdがピーク値となる(図13(b)参照)。しかしながら、受信回路1の共振周波数は、キャリア周波数fcとずれているので、十分に大きな検出電圧Vdのピーク値が得られず、図13(b)に示すように所定の閾値を超えるような値にならない。なお、この所定の閾値は、例えば用途、周囲環境、必要とする調整精度等に応じて適宜設定される。
【0170】
それに対して、本実施形態のように受信回路1の共振コンデンサ36に制御電圧Vを周期T毎に段階的に増加させると、周期T毎に受信回路1の共振周波数がキャリア周波数fcに近づくので、検出電圧Vdのピーク値も段階的に増大する(図13(c)参照)。また、この際、検出電圧Vdのピーク値が得られる時刻も、キャリア周波数fcが送信される時刻に近づく。そして、図13(c)に示す例では、受信回路1の共振コンデンサ36に制御電圧V3を印加した際に、検出電圧Vdのピーク値が所定の閾値を超える。
【0171】
この場合、検出電圧Vdがピーク値となる時刻は、キャリア周波数fcが送信される時刻と一致する。すなわち、図13(c)に示す例では、共振コンデンサ36に制御電圧V3を印加した際に、受信回路1の共振周波数がICカード機能で用いるキャリアの規格周波数fcと一致する。それゆえ、本実施形態では、検出電圧Vdのピーク値が所定の閾値を超えた際の制御電圧Vを最適制御電圧Vsとする。
【0172】
なお、本実施形態における調整モードの処理手順の全体的な流れは、上記第1の実施形態の調整モードの処理手順(図5)と同様である。ただし、本実施形態では、図5中のステップS13において、送信回路2から送信する調整信号S3のキャリア周波数を時間変化させる。また、本実施形態では、図5中のステップS15の最適制御電圧の算出処理を上記算出原理に基づいて行う。これらの処理以外は、第1の実施形態と同様である。
【0173】
上述のように、本実施形態の手法においても、上記第1及び第2の実施形態と同様に、最適制御電圧Vsを求めることができる。それゆえ、本実施形態においても、上記第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0174】
また、本実施形態の受信回路1の共振周波数の調整手法では、所定期間、共振コンデンサ36に印加する制御電圧Vを一定するので、受信回路1ではその所定期間内では同じ状態で検出電圧Vdを検出することができる。それゆえ、より安定した検出電圧Vdの時間変化特性を得ることができ、より精度よく受信共振周波数を調整することができる。なお、本実施形態では、調整信号S3のキャリア周波数を短時間で掃引するので、外部機器(非接触ICカード、ICカード機能を備える移動通信端末等)への影響も抑制することができる。
【0175】
なお、本実施形態では、最適制御電圧Vsを求める際、検出電圧Vdのピーク値が所定の閾値を超えるように、制御電圧Vを段階的に調整する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0176】
図13(c)に示すように、受信回路1の共振周波数がキャリア周波数fcからずれている場合には、検出電圧Vdのピーク値の前後の時間変化特性が、ピーク値の時刻に対して非対称になる。一方、受信回路1の共振周波数がキャリア周波数fcと一致すると、検出電圧Vdのピーク値の前後の時間変化特性が、ピーク値の時刻に対して対称になる。それゆえ、検出電圧Vdのピーク値の時刻tに対して±Δtだけ離れた時刻の検出電圧Vdを検出し、両者が互いに等しくなるように制御電圧Vを調整することにより、制御電圧Vを最適値Vsに調整することができる。
【0177】
また、受信回路1の共振周波数がキャリア周波数fcと一致すると、検出電圧Vdのピーク値の前後の時間変化特性がピーク値の時刻に対して対称になるので、検出電圧Vdのボトム値も一定となる。それゆえ、検出電圧Vdの時間変化特性における複数のボトム値を検出してそれらが一定になるように、制御電圧Vを調整することにより、制御電圧Vを最適値Vsに調整することもできる。
【0178】
[変形例6]
上記第1〜3の実施形態及び種々の変形例では、受信回路1の共振周波数をICカード機能で用いる際のキャリアの規格周波数fcに調整する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。ICカード機能を動作させる際の最適な受信回路1の共振周波数が移動通信端末毎に異なる(ばらつく)場合においても、本発明は適用可能であり、同様の効果が得られる。
【0179】
一般に、ICカード機能及びR/W機能を有する移動通信端末では、そのモデルまたは製造メーカによって、受信アンテナの最適な共振周波数及び使用可能な周波数範囲が移動通信端末毎に若干異なる。図14に、移動通信端末間の最適な受信共振周波数の関係を示す。なお、図14中のfcは、ICカード機能で用いるキャリアの規格周波数、すなわち、R/W装置から送信されるキャリアの中心周波数である。
【0180】
一般に、ICカード機能を有する移動通信端末を、外部のR/W装置に近づけると、送受信間で電磁結合するので移動通信端末の結合係数が変化し、受信アンテナの共振周波数が変化する。それゆえ、このような結合係数の変化を考慮して、移動通信端末の受信アンテナの共振周波数は、外部R/W装置の影響を受けない状態で、外部R/W装置のキャリアの中心周波数fcから若干ずれた値に設定される。そして、移動通信端末を外部のR/W装置に近づけた際に、移動通信端末の受信アンテナの共振周波数が、外部R/W装置のキャリアの中心周波数fcに一致するように調整される。
【0181】
しかしながら、移動通信端末の例えばモデルや製造メーカ等が異なると、受信アンテナを構成する共振回路の構成も若干異なる。さらに、R/W装置の送信アンテナの共振回路の構成もR/W装置毎に異なる。それゆえ、移動通信端末の受信アンテナの構成の違い、及び、外部R/W装置の送信アンテナの構成の違いにより、移動通信端末と外部R/W装置との間の結合係数の変化量も、移動通信端末と外部R/W装置との組み合わせによって異なる。それゆえ、従来、これらの送受信間の結合係数の変化量の変化を考慮して、移動通信端末毎に、最適な受信共振周波数の値及び使用可能な周波数帯域が別個設定される。
【0182】
例えば、図14に示す移動通信端末A及び移動通信端末Bの例えばモデルや製造メーカ等が互いに異なる場合、移動通信端末Aの使用可能な周波数帯域の中心周波数fc_Aは、移動通信端末Bの使用可能な周波数帯域の中心周波数fc_Bと異なる。また、図14に示す例では、中心周波数fc_A及びfc_Bは、ICカード機能で用いるキャリアの規格周波数fcとも異なる。
【0183】
上述のように、移動通信端末毎に受信アンテナの共振周波数がばらつく場合に対して、例えば、上記第1〜第3の実施形態及び種々の変形例で説明した調整手法のいずれかを適用する場合には、調整信号S3の中心周波数を移動通信端末毎に適宜設定すればよい。
【0184】
具体的には、例えば図14に示す移動通信端末Aに、上記第1の実施形態の共振周波数の調整手法を適用する場合には、調整信号S3の中心周波数を周波数fc_Aに設定すればよい。
【0185】
また、例えば図14に示す移動通信端末Aに、上記第2の実施形態の共振周波数の調整手法を適用する場合には、周波数fc_Aの2つのサブキャリア周波数を副調整信号の中心周波数にすればよい。
【0186】
さらに、例えば図14に示す移動通信端末Aに、上記第3の実施形態の共振周波数の調整手法を適用する場合には、調整信号S3の中心周波数の掃引範囲(可変範囲)の中央の周波数を周波数fc_Aに設定すればよい。
【0187】
上述のように、この例の移動通信端末では、移動通信端末毎に受信アンテナの共振周波数がばらついても、調整信号S3の周波数を適宜設定するだけで、受信アンテナの共振周波数をより容易に且つ正確に調整することができる。
【0188】
<4.第4の実施形態>
上記第1〜第3の実施形態では、受信回路1の共振周波数を調整する手法を説明したが、本発明はこれに限定されず、上記調整原理と同様の手法で、送信回路2の共振周波数(送信共振周波数)のずれを調整することもできる。第4の実施形態では、その一構成例について説明する。なお、本実施形態では、非接触通信部内において、受信アンテナと送信アンテナとを一つのアンテナで共用する場合の構成例を説明する。
【0189】
[送受信回路の構成]
図15に、本実施形態の送受信共用回路の概略構成を示す。なお、本実施形態の送受信共用回路80は、上記第1の実施形態の受信回路1及び送信回路2を一体化した構成になる。それゆえ、図15において、上記第1の実施形態(図2)と同様の構成には同じ符号を付して示す。
【0190】
送受信共用回路80は、送受信共用アンテナ81と、整流回路11と、ノーマルモード回路部12と、調整モード回路部13と、所定の送信信号を出力するドライバ23とを備える。送受信共用アンテナ81以外の構成は、第1の実施形態と同様の構成である。それゆえ、ここでは、送受信共用アンテナ81の構成のみを説明する。
【0191】
送受信共用アンテナ81は、主に、共振コイル82と、2つの定容量コンデンサ83及び85(第1及び第2定容量コンデンサ)と、可変容量コンデンサ84とで構成される。
【0192】
可変容量コンデンサ84は、制御回路7から送受信特性調整回路4を介して印加される制御電圧Vに応じて、その容量が変化する静電容量素子である。なお、本実施形態では、制御電圧Vが増大すると、容量が減少する可変容量コンデンサを用いる。
【0193】
一方、第1定容量コンデンサ83及び第2定容量コンデンサ85は、入力信号の種類(交流または直流)及びその信号レベルに関係なく、その容量はほとんど変化しない静電容量素子である。なお、第1定容量コンデンサ83及び第2定容量コンデンサ85は、制御回路7側から入力される制御電流と、受信信号電流との干渉による影響を抑制するためのバイアス除去用コンデンサとして作用する。
【0194】
また、本実施形態では、第1定容量コンデンサ83、可変容量コンデンサ84及び第2定容量コンデンサ85を、この順で直列接続し、一つの共振コンデンサ86を構成する。そして、この直列接続されたコンデンサ群からなる共振コンデンサ86と共振コイル82とを並列接続して共振回路、すなわち、送受信共用アンテナ81を構成する。
【0195】
共振コンデンサ86及び共振コイル82間の両接続部はそれぞれ、対応するドライバ23に接続され、共振コンデンサ86及び共振コイル82間の一方の接続部は、整流回路11に接続される。
【0196】
また、第1定容量コンデンサ83及び可変容量コンデンサ84間の接続部、並びに、可変容量コンデンサ84及び第2定容量コンデンサ85間の接続部は、それぞれ、第1電流制限抵抗87並びに第2電流制限抵抗88を介して送受信特性調整回路4に接続される。なお、第1電流制限抵抗87並びに第2電流制限抵抗88は、制御回路7側から入力される制御電流と、受信信号電流との干渉による影響を抑制するために設けられる。
【0197】
また、本実施形態では、送受信共用アンテナ81内の共振コンデンサ86として、印加される制御電圧Vに応じて容量が変化する可変容量コンデンサを用いる例を説明するが、本発明はこれに限定されない。共振コンデンサ86を容量が互いに異なる複数の定容量コンデンサで構成し、共振コイル82に接続する定容量コンデンサを制御回路7により切替制御することにより、共振コンデンサ86の容量を調整してもよい。
【0198】
本実施形態では、送信信号はドライバ23を介して共振コイル82の両端に印加される。また、調整モードでは、ドライバ23を介して共振コイル82の両端に印加された調整信号S3は、整流回路11に直接送られる。すなわち、本実施形態では、受信共振周波数の調整モードでは、調整信号S3は、電磁結合を介さず直接受信回路側に送信される。それゆえ、本実施形態では、受信共振周波数の調整モード時に安定した受信特性が得られる。
【0199】
上述のように、本実施形態の移動通信端末では、送信アンテナと受信アンテナとが共用になっただけあり、その他の構成は、例えば上記第1の実施形態と同様である。それゆえ、調整モード時の送受信共用回路80(送受信共用アンテナ81)の共振周波数の調整は、上記種々の実施形態及び種々の変形例と同様に行うことができる。それゆえ、本実施形態においても、上記種々の実施形態及び種々の変形例と同様の効果が得られる。
【0200】
なお、本実施形態では、送受信共用アンテナ81を受信アンテナとして用いる際の共振周波数(受信共振周波数)と、送信アンテナとして用いる際の共振周波数(送信共振周波数)とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0201】
送受信共用アンテナ81の受信共振周波数と送信共振周波数とが同じである場合には、上記種々の実施形態及び種々の変形例と同様にして、受信共振周波数を調整することにより、同時に、送信共振周波数を調整することができる。
【0202】
一方、送受信共用アンテナ81の受信共振周波数と送信共振周波数とが異なる場合には、上述した本発明の種々の調整手法を用いて、受信共振周波数を最適にするための制御電圧V、及び、送信共振周波数を最適にするための制御電圧Vを別個に算出すればよい。この場合には、受信共振周波数用の最適制御電圧Vs、及び、送信共振周波数用の最適制御電圧Vsが記憶部6に別個に記憶される。
【0203】
また、送受信共用アンテナ81の受信共振周波数と送信共振周波数とが異なる場合、次のような手法を用いてもよい。
【0204】
まず、上記第2の実施形態の調整手法と同様に、送信共振周波数fcの2つのサブキャリア周波数を用いて調整信号S3を生成する。この調整信号S3を用いて上記第2の実施形態の調整手法と同様にして調整を行うと、図10(c)に示す検出電圧Vdの時間変化特性が得られる。
【0205】
この際、検出電圧Vdの時間変化特性において、検出電圧Vdのボトム値(例えばVb1等)が得られる時刻の共振周波数fが送信共振周波数fcとなる。また、上記第2の実施形態の共振周波数の調整手法では、共振周波数fの時間変化特性は、時間に対して直線的(変化率一定)に変化する。
【0206】
それゆれ、共振周波数fの時間変化率が分かっていれば、簡単な比例計算で、検出電圧Vdのボトム値の時刻から、受信共振周波数に対応する時刻を算出することができる。そして、その算出した時刻の制御電圧Vが受信回路系の最適制御電圧Vsとなる。本実施形態では、送受信共用アンテナ81の受信共振周波数と送信共振周波数とが異なる場合には、このようにして、受信回路系及び送信回路系の各最適制御電圧を算出してもよい。
【0207】
また、本実施形態のように、送受信共用アンテナ81で送信アンテナと受信アンテナとを兼用することにより、アンテナを1つ減らすことができ、部品コストを低下させることができる。また、本実施形態では、アンテナを1つ減らすことができるので、アンテナの実装スペースをより小さくすることができる。
【0208】
なお、上記第4の実施形態では、一つのアンテナで送信アンテナと受信アンテナとを兼用する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。送信アンテナと受信アンテナとを別個に設け、送信アンテナの構成を上記第1の実施形態の受信アンテナ30と同様の構成(図2)にしてもよい。また、この場合、制御回路7から送受信特性調整回路4を介して制御電圧が送信アンテナの共振コンデンサに印加される構成にする。このような構成においても、送信アンテナ及び受信アンテナの両方の共周波数を調整することができる。
【0209】
なお、上記種々の実施形態及び上記種々の変形例では、本発明を移動通信端末に適用する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。ICカード機能及びR/W機能の両機能を備える携帯通信装置であれば、任意の装置に適用可能であり、同様の効果が得られる。
【0210】
<5.第5の実施形態>
上記種々の実施形態及び上記種々の変形例では、本発明の共振周波数の調整手法を、ICカード機能及びR/W機能の両機能を備える移動通信端末に適用する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。R/W装置の送信アンテナの共振周波数も、例えば構成部品の経時変化や周囲環境の変化等により送信アンテナの共振周波数がずれる。本実施形態では、R/W装置に本発明の共振周波数の調整手法を適用し、送信アンテナの共振周波数(送信共振周波数)を調整する例を説明する。
【0211】
本実施形態のR/W装置内の外部の非接触ICカードと通信を行う非接触通信部の構成は、上記第1の実施形態の非接触通信部(図1)と実質、同じ構成である。ただし、R/W装置はICカード機能を持たないので、R/W装置内の受信回路1では、外部R/W装置と通信を行わない。すなわち、R/W装置内の受信回路1は、図1中の外部R/W装置からの送信信号S1を受信する機能は備えていない。
【0212】
図16に、本実施形態のR/W装置における受信回路1及び送信回路2の概略構成を示す。図16と、図15との比較から明らかなように、本実施形態のR/W装置における受信回路1及び送信回路2の構成は、第4の実施形態の送受信共用回路80の構成とほぼ同じ構成となる。それゆえ、図16において、第4の実施形態の送受信共用回路80(図15)と同じ構成には、同じ符号を付して示す。
【0213】
受信回路1は、整流回路11と、ノーマルモード回路部91と、調整モード回路部13(調整信号検出部)とを備える。ノーマルモード回路部91は、R/W装置が外部の非接触ICカードと通信を行った際に、非接触ICカードの応答を読み取る回路部である。なお、整流回路11及び調整モード回路部13は、上記第1の実施形態(図2)のそれらと同様の構成である。
【0214】
送信回路2(送信部)は、送信アンテナ90と、送信アンテナ90に所定の送信信号を出力するドライバ23とを備える。なお、ドライバ23は、上記第1の実施形態(図2)のドライバと同様の構成である。
【0215】
送信アンテナ90は、主に、共振コイル82と、2つの定容量コンデンサ83及び85(第1及び第2定容量コンデンサ)と、可変容量コンデンサ84とで構成される。また、本実施形態では、第1定容量コンデンサ83、可変容量コンデンサ84及び第2定容量コンデンサ85を、この順で直列接続し、一つの共振コンデンサ86を構成する。そして、この直列接続されたコンデンサ群からなる共振コンデンサ86と共振コイル82とを並列接続して共振回路、すなわち、送信アンテナ90を構成する。
【0216】
なお、本実施形態の共振コイル82及び各コンデンサの構成は、上記第4の実施形態(図15)のそれらと同様の構成である。すなわち、可変容量コンデンサ84は、制御回路7(制御回路部)から送信特性調整回路4を介して印加される制御電圧Vに応じて、その容量が変化する静電容量素子で構成する。また、第1定容量コンデンサ83及び第2定容量コンデンサ85は、入力信号の種類(交流または直流)及びその信号レベルに関係なく、その容量はほとんど変化しない静電容量素子で構成する。
【0217】
また、上記第4の実施形態と同様に、共振コンデンサ86及び共振コイル82間の両接続部はそれぞれ、対応するドライバ23に接続され、共振コンデンサ86及び共振コイル82間の一方の接続部は、整流回路11に接続される。さらに、第1定容量コンデンサ83及び可変容量コンデンサ84間の接続部、並びに、可変容量コンデンサ84及び第2定容量コンデンサ85間の接続部は、それぞれ、第1電流制限抵抗87並びに第2電流制限抵抗88を介して送信特性調整回路4に接続される。
【0218】
また、本実施形態では、送信アンテナ90内の共振コンデンサ86として、印加される制御電圧Vに応じて容量が変化する可変容量コンデンサを用いる例を説明するが、本発明はこれに限定されない。共振コンデンサ86を容量が互いに異なる複数の定容量コンデンサで構成し、共振コイル82に接続する定容量コンデンサを制御回路7により切替制御することにより、共振コンデンサ86の容量を調整してもよい。
【0219】
本実施形態では、送信信号はドライバ23を介して共振コイル82の両端に印加される。また、送信共振周波数の調整モードでは、周波数調整回路3(調整信号生成部)からドライバ23を介して共振コイル82の両端に印加された調整信号S3は、整流回路11を介して調整モード回路部13に直接送られる。すなわち、本実施形態の調整モードでは、調整信号S3は、電磁結合を介さず直接受信回路1側に送信される。
【0220】
上述のようにして調整信号S3が直接受信回路側に送信された後は、上記種々の実施形態及び種々の変形例で説明した共振周波数の調整手法を用いて、送信共振周波数のずれを補正することができる。
【0221】
上述のように、本実施形態のR/W装置においても、上記種々の実施形態と同様に、自身の装置内で生成した調整信号S3を受信回路1側に送信し且つその調整信号S3を受信回路1で受信して、送信共振周波数のずれを補正する。それゆえ、本実施形態においても、様々な要因により送信共振周波数がずれても、その送信共振周波数のずれを自身の装置内で容易に調整することができ、安定した通信特性を得ることができる。
【0222】
以上、説明したように、上記種々の実施形態及び上記種々の変形例では、受信回路1で受信した調整信号S3の電圧を検出し、その検出結果に基づいて受信アンテナの共振周波数及び/又は送信アンテナの共振周波数を調整する例を説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されない。
【0223】
例えば、受信回路1で受信した調整信号S3の電圧の電流を検出し、その検出電流に基づいて受信アンテナの共振周波数及び/又は送信アンテナの共振周波数を調整してもよい。また、別の手法として、受信回路1で受信した調整信号S3の電圧及び電流の位相差を検出し、その検出位相差に基づいて受信アンテナの共振周波数及び/又は送信アンテナの共振周波数を調整してもよい。これらの手法では、検出電圧Vdの代わりに検出電流または検出位相差を用いること以外は、上記種々の実施形態及び上記種々の変形例で説明した調整モードと同様にして共振周波数を調整することができる。さらに、受信回路1で受信した調整信号S3の電圧、電流及び位相差のうち少なくとも2つのパラメータを用いて受信アンテナの共振周波数及び/又は送信アンテナの共振周波数を調整してもよい。
【0224】
また、上記種々の実施形態では、検出電圧Vdの時間変化特性から得られる検出電圧Vdのピーク値またはボトム値を用いて、共振周波数を調整する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。検出電圧Vdのピーク値及びボトム値の両方を用いて、共振周波数を調整してもよい。この場合には、例えばノイズ等の影響をより一層低減することができ、より高精度に共振周波数を調整することができる。
【0225】
さらに、上記種々の実施形態及び上記種々の変形例では、受信アンテナの及び/又は送信アンテナの共振コンデンサの容量を調整して共振周波数を調整したが、本発明はこれに限定されない。共振コイルのインダクタンスを調整して共振周波数を調整してもよい。この場合、共振コイルとして可変コイルを用いてもよいし、インダクタンスが互いに異なる複数のコイルを用い、共振周波数のずれ量に応じて共振コンデンサに接続するコイルを切り替える構成にしてもよい。さらに、共振コイルのインダクタンス及び共振コンデンサの容量の両方を調整して共振周波数を調整してもよい。
【0226】
なお、上記種々の実施形態及び上記種々の変形例では、本発明を移動通信端末に適用する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。ICカード機能及びR/W機能の両機能を備える携帯通信装置であれば、任意の装置に適用可能であり、同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0227】
1…受信回路、2…送信回路、3…周波数調整回路、4…送受信特性調整回路(送信特性調整回路)、5…起動信号出力部、6…記憶部、7…制御回路、10…受信部、11…整流回路、12…ノーマルモード回路部、13…調整モード回路部、20…送信アンテナ、21,31…共振コイル、22,36…共振コンデンサ、30…受信アンテナ、33,34…可変容量コンデンサ、51…ハイパスフィルタ回路、52…振幅検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部のリーダ/ライタ装置と電磁結合により通信を行う受信アンテナを有し、該受信アンテナの受信共振周波数が可変である受信部と、
外部の非接触データキャリアと電磁結合により通信を行う送信アンテナを有し、前記受信共振周波数を調整するための調整信号を前記受信部に送信する送信部と、
前記調整信号を生成して、前記調整信号を前記送信部に出力する調整信号生成部と、
前記受信部で受信した前記調整信号の電圧、電流、並びに、電圧及び電流間の位相差の少なくとも一つのパラメータを検出する調整信号検出部と、
前記調整信号検出部の検出結果に基づいて、前記受信共振周波数のずれを補正する制御回路部と
を備える携帯通信装置。
【請求項2】
前記制御回路部が、所定周期で、前記受信共振周波数を所定範囲内で変化させ、
前記調整信号検出部が、前記所定周期の間、前記調整信号の前記パラメータを検出して、前記パラメータの時間変化特性を求める
請求項1に記載の携帯通信装置。
【請求項3】
前記受信アンテナが、制御電圧により容量が変化する可変容量素子を有し、
前記制御回路部は、前記所定周期で、前記可変容量素子に印加する前記制御電圧を所定範囲で変化させることにより、前記受信共振周波数を変化させる
請求項2に記載の携帯通信装置。
【請求項4】
前記制御回路部は、前記パラメータの時間変化特性中の前記パラメータのピーク値及び/又はボトム値に基づいて、前記受信共振周波数のずれを補正する
請求項3に記載の携帯通信装置。
【請求項5】
前記受信アンテナ及び前記送信アンテナが、一つのアンテナで共用されており、前記受信アンテナの受信共振周波数及び前記送信アンテナの送信共振周波数の両方が可変であり、
前記制御回路部が、さらに、前記調整信号検出部の検出結果に基づいて、前記送信共振周波数のずれを補正する
請求項1に記載の携帯通信装置。
【請求項6】
さらに、前記受信共振周波数のずれを補正する際に、前記受信アンテナのQ値を低下させる調整回路部を備える
請求項1に記載の携帯通信装置。
【請求項7】
さらに、所定の条件情報に基づいて、前記受信共振周波数の補正処理の開始信号を前記制御回路部に出力する起動信号出力部を備える
請求項1に記載の携帯通信装置。
【請求項8】
前記調整信号が、互いに中心周波数の異なる複数の副調整信号で構成され、各副調整信号の前記中心周波数が、前記受信アンテナと前記外部のリーダ/ライタ装置との間で通信を行う際の搬送波の中心周波数と異なる
請求項1に記載の携帯通信装置。
【請求項9】
前記副調整信号の前記中心周波数が、前記搬送波の中心周波数のサブキャリア周波数である
請求項8に記載の携帯通信装置。
【請求項10】
前記調整信号生成部が、所定周期で、前記調整信号の中心周波数を所定範囲内で変化させる
請求項1に記載の携帯通信装置。
【請求項11】
前記調整信号の電力及び変調状態の少なくとも一方が、前記受信アンテナと前記外部のリーダ/ライタ装置との間で通信を行う際の信号の電力及び変調状態の少なくとも一方と異なる
請求項1に記載の携帯通信装置。
【請求項12】
前記制御回路部が、前記受信共振周波数のずれを補正する際に、外部との通信を停止する
請求項1に記載の携帯通信装置。
【請求項13】
外部の非接触データキャリアと電磁結合により通信を行う送信アンテナを有し、該送信アンテナの送信共振周波数が可変である送信部と、
前記送信共振周波数を調整するための調整信号を生成して、前記調整信号を前記送信部に出力する調整信号生成部と、
前記送信部に出力された前記調整信号の電圧、電流、並びに、電圧及び電流間の位相差の少なくとも一つのパラメータを検出する調整信号検出部と、
前記調整信号検出部の検出結果に基づいて、前記送信共振周波数のずれを補正する制御回路部と
を備えるリーダ/ライタ装置。
【請求項14】
外部のリーダ/ライタ装置と電磁結合により通信を行う受信アンテナを有し且つ該受信アンテナの受信共振周波数が可変である受信部と、外部の非接触データキャリアと電磁結合により通信を行う送信アンテナを有する送信部とを備える携帯通信装置の該送信部から該受信部に前記受信共振周波数を調整するための調整信号を送信するステップと、
前記受信部で受信した前記調整信号の電圧、電流、並びに、電圧及び電流間の位相差の少なくとも一つのパラメータを検出するステップと、
前記検出された前記調整信号の前記パラメータに基づいて、前記受信共振周波数のずれを補正するステップと
を含む共振周波数調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−78040(P2011−78040A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230093(P2009−230093)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】