説明

携帯鎮痛装置

【課題】本発明は、患者の体外に取り付けて、定期的に薬液を長時間持続して患者の体内に注入するとともに、必要に応じて薬液を体内に不規則に注入することができる鎮痛装置を得ることにある。
【解決手段】携帯鎮痛装置は、所定量の薬液を一旦貯留し、その後自力で薬液を排出する薬液供給器1と、薬液供給器1の流出口11に接続された第1三方コネクタ2と、第1三方コネクタ2の一方の出口21に接続された薬液断続注入ライン3と、第1三方コネクタ2の他方の出口22に接続された薬液持続注入ライン4と、前記両ライン3,4の流出口31,41を運通する第2三方コネクタ5とからなる。さらに、薬液断続注入ライン3に中空で可撓性のリザーバ35を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の体外に取り付けて携帯できる鎮痛装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、患者の疼痛を鎮痛・緩和するために、定期的に鎮痛剤等を患者に投与していた。そのために患者は定期的に通院をするか、または長期間入院をしなければならない。
鎮痛剤等の薬液を患者に定期的に注射することは、患者にとっても施術者にとっても肉体的負担が大きい。そこで、入院患者に対して、定期的に自動的に薬液を注射する自動注射装置も開発されてきたが、装置が大型で高価であること、患者の行動を相当に拘束することなどの問題があった。
【0003】
従来から、患者の行動を拘束せず、入院・通院・在宅患者のいずれに対しても適用できる簡便な自動注射装置が長く要請されてきた。
そこで、本出願人はこの要請に応えるために、先に携帯鎮痛装置を提案した(国際公開第95/27521号(国際出願番号PCT/JP94/00608))。この携帯鎮痛装置は、上記目的を達成するために、薬液を所定の時間持続して流出する薬液持続注入器と、該注入器の出口に連結されていて薬液の流出を遮断する開閉弁と、該開閉弁の出口に連結されていて三方向の流路を有する三方コネクタと、該三方コネクタの一端に連結されていて薬液を貯留する可撓性のリザーバと、前記三方コネクタの他端に連結されていて薬液が所定の圧力を超えたときにのみ開く圧力一方弁とからなる。
【0004】
この携帯鎮痛装置においては、予め所定の容量および持続時間の薬液持続注入器を準備し、患者の症状に応じて所定の薬液を所定量注入器に注入する。その後、開閉弁を開いて所定の長時間にわたってリザーバ内に薬液を移し替える。この移替えの時間、患者は装置を身体に装着したまま自由に行動できる。
【0005】
注入器からリザーバへの薬液の移替え時間は、薬液の効果が持続する時間とほぼ一致する。患者が疼痛を感じたとき、リザーバを患者自身が圧縮してリザーバ内の薬液を圧力一方弁を介して身体内に注入する。次の疼痛に備えて、患者は病院にてまたは自宅にて有資格者によって注入器に薬液の補給を受けることができる。
【0006】
この装置は、患者の病状によっては非常に効果を発揮する。しかし、病状の悪化、患部の種類等によっては、定期的な長時間の薬液持続注入と並行して、不規則な疼痛時に所定量の薬液を体内に注入する必要な場合もある。
【0007】
このような場合には、上述の携帯鎮痛装置と併用して、薬液持続注入器が使用される。このような薬液持続注入器としては、本出願人が開発した薬液持続注入器(特公昭51−51901公報(日本国特許第1384289号))がある。この注入器は、薬液の注入部と流出部とをバルーンによって接続し、バルーン内に薬液を注入し、流出部から薬液を長時間にわたって流出する機能を有している。
【0008】
しかし、携帯鎮痛装置と薬液持続注入器とを併用する場合には、ほぼ同様な2つの薬液持続注入器を患者の身体外部に取り付けることになる。これは施術者にとっては繁雑であり、また、患者にとっては嵩張って煩しい。
【0009】
【特許文献1】国際公開第95/27521号パンフレット
【特許文献2】特公昭51−51901公報
【特許文献3】特開平5−15590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、患者の体外に取り付けて、定期的に薬液を長時間持続して患者の体内に注入するとともに、患者の判断で必要に応じて薬液を体内に不規則に注入することができる簡便で携帯自在な鎮痛装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の携帯鎮痛装置は、所定量の薬液を一旦貯留し、その後自力で薬液を排出する薬液供給器と、該薬液供給器の流出口に接続された第1三方コネクタと、該第1三方コネクタの一方の出口に接続された薬液断続注入ラインと、該第1三方コネクタの他方の出口に接続された薬液持続注入ラインと、前記両ラインの流出口を連通する第2三方コネクタとからなる。
【0012】
薬液供給器は、弾性材料からなるバルーンの一端に薬液の注入部を設け、他端に薬液の流出部を設け、前記バルーンを保護カバーで覆った構造になっている。
薬液断続注入ラインは、薬液の流量を制御する第1流量制御器と、該第1流量制御器に連結されていて薬液の流出を遮断する開閉弁と、該開閉弁の出口に連結されていて三方向の流路を有する第3三方コネクタと、該第3三方コネクタの一端に連結されていて薬液を貯留する中空で可撓性のリザーバと、前記第3三方コネクタの他端に連結されていて薬液が所定の圧力を超えたときにのみ開く圧力一方弁からなる。薬液持続注入ラインは薬液の流量を制御する第2流量制御器からなる。
【0013】
本発明の携帯鎮痛装置においては、予め所定の容量の薬液供給器と、所定の流量制御機能(流出持続時間制御機能)をそれぞれ備えた第1および第2流量制御器を準備し、患者の症状に応じて所定の薬液を所定量供給器に注入する。その後、薬液持続注入ラインを介して、薬液は長時間持続して患者の体内に注入される。その間、薬液断続注入ラインにおいては、開閉弁を開いて所定の長時間にわたってリザーバ内に薬液を移し替える。この移替えおよび持続注入の時間、患者は装置を身体に装着したまま自由に行動できる。
【0014】
供給器からリザーバへの薬液の移替え時間は、原則として薬液の効果が持続する時間とほぼ一致する。しかし、患者が突発的に疼痛を感じたとき、リザーバを患者自身が圧縮してリザーバ内の薬液を圧力一方弁を介して身体内に注入する。これにより、一時的疼痛が緩和される。
【0015】
次の持続的鎮痛および突発的激痛の緩和に備えて、患者は病院にてまたは自宅にて有資格者によって供給器に薬液の補給を受けることができる。
さらに、第1の発明に係る携帯鎮痛装置は、所定量の薬液を一旦貯留し、その後自力で薬液を排出する薬液供給器と、該薬液供給器の流出口に接続された第1三方コネクタと、該第1三方コネクタの一方の出口に接続された薬液断続注入ラインと、該第1三方コネクタの他方の出口に接続された薬液持続注入ラインと、前記両ラインの流出口を連通する第2三方コネクタとからなる。第1の発明に係る携帯鎮痛装置は、第1の発明において、前記薬液供給器が、弾性材料からなるバルーンの一端に薬液の注入部を設け、他端に薬液の流出部を設け、前記バルーンを保護カバーで覆った構造になっていることを特徴とする。第3の発明に係る携帯鎮痛装置は、第1の発明において、前記薬液断続注入ラインが、薬液の流量を制御する第1流量制御器と、該第1流量制御器に連結されていて薬液の流出を遮断する開閉弁と、該開閉弁の出口に連結されていて三方向の流路を有する第3三方コネクタと、該第3三方コネクタの一端に連結されていて薬液を貯留する可撓性のリザーバと、前記第3三方コネクタの他端に連結されていて薬液が所定の圧力を超えたときにのみ開く圧力一方弁とからなることを特徴とする。第4の発明に係る携帯鎮痛装置は、第1の発明において、前記薬液持続注入ラインが薬液の流量を制御する第2流入制御器からなることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1から図6までを参照して、本発明の携帯鎮痛装置の実施形態について説明する。
図1および図2に示すように、本発明の携帯鎮痛装置は、主として所定量の薬液を一旦貯留し、その後自力で薬液を排出する薬液供給器1と、薬液供給器1の流出口11に接続された第1三方コネクタ2と、第1三方コネクタ2の一方の出口21に接続された薬液断続注入ライン3と、第1三方コネクタ2の他方の出口22に接続された薬液持続注入ライン4と、両ライン3、4の流出口31、41を連通する第2三方コネクタ5とからなる。
薬液供給器1は、図2に示すように、弾性材料からなるバルーン14の一端に薬液の注入部12を設け、他端に薬液を流出部13を設け、バルーン14を保護カバー16で覆った構造になっている。さらに詳しく言えば、薬液供給器1は、円筒本体17の両端に薬液注入部12と薬液流出部13とを取り付け、円筒本体17の外周にバルーン14を取り付け、バルーン14の内部と円筒本体11の内部とを連通孔15によって連通した構成になっている。円筒本体17を省略し、注入部12と流出部13とをバルーン14によって直接に連結してもよい。
【0017】
注入部12は逆止弁121が設けられていて、注入薬液の逆流を防止する。バルーン14は弾性材料から作られ、所定量の薬液を収容することができる。バルーン14の膨張時、外部からの作用を防止するために安全カバー16が装着されている。
【0018】
薬液断続注入ライン3は、図2に示すように、薬液の流量を制御する第1流量制御器32と、第1流量制御器32に連結されていて薬液の流出を遮断する開閉弁33と、開閉弁33の出口に連結されていて三方向の流路を有する第3三方コネクタ34と、第3三方コネクタ34の一端に連結されていて薬液を貯留する可撓性のリザーバ35と、第3三方コネクタ34の他端に連結されていて薬液が所定の圧力を超えたときにのみ開く圧力一方弁36とからなる。
【0019】
開閉弁33と三方コネクタ34とはメスルア・コネクタ37によって連結され、圧力一方弁5の出口31には第2三方コネクタ5を介してオスルア・コネクタ6が連結されることが好ましい。メスルア・コネクタ37は開閉弁33の操作を容易にするためのスペースを確保し、また、オスルア・コネクタはカテーテル等の接続を容易にする。各部品間は必要に応じてビニール・チューブ等で運結されてもよい。
【0020】
第1流量制御器32には微細の孔径の制御通路321が設けられていて、薬液の流出時間を制御する。
開閉弁33、メスルア・コネクタ37、第1、2、3三方コネクタ2、5、34、オスルア・コネクタ6については慣用の市販品を使用する。
【0021】
リザーバ35は耐久力のある可撓性材料(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)から中空に作られ、球形、円筒形、蛇腹形状等に成形されている。リザーバ35は、破損、汚染等の場合に備えて、第3三方コネクタ34に着脱自在に取り付けられる。
【0022】
圧力一方弁36は、例えば市販のアンブレラ弁が好ましい。このアンブレラ弁は常態では閉じていて、内圧が例えば約250mmHgを超えたときに開くように設定されている。この設定圧力は、供給器1からリザーバ35への薬液の注入圧力(約100−200mmHg)では作動しないが、リザーバ35内に薬液が充満しているときにリザーバ35を圧縮したときの圧力(約350−400mmHg)よりは低い。薬液持続注入ライン4は、図2に示すように、薬液の流量を制御する第2流入制御器42からなる。
【0023】
第2流量制御器42には微細の孔径の制御通路421が設けられていて、薬液の流出時間を制御する。ライン4は、ライン3との流路長さをほぼ一致させるために適当なビニール・チューブ43等で連結してもよい。
【0024】
次に、図3から図6までを参照して、本発明の携帯鎮痛装置の動作について説明する。まず、図3に示すように、開閉弁33を閉じ、リザーバ35を最大限に圧縮し、薬液供給器1の注入部12から注射器等(図示せず)によって薬液(例えば、生理食塩水、ブドウ糖液、抗生物質液、鎮静剤、鎮痛剤、ヘバリン、ニトログリセリン溶液等)を所定量注入する。薬液はバルーン14内に一旦貯留される。供給器1の容量および注入持続時間等は、患者の症状に合せて、予め選定してある。
【0025】
上述のように準備した後に、本装置の患者の身体に固定し、カテーテル等(図示せず)を介してオスルア・コネクタ6と、体内とを連結する。本装置を患者の身体に固定した後に上述の薬液注入を行ってもよい。
【0026】
次に、図4に示すように、開閉弁33を開く。薬液は、バルーン14の収縮力によって流出部13を通り、ライン3の第1三方弁2、第1流量制御器32の制御通路321、開閉弁33、メスルア・コネクタ37、第2三方コネクタ34を介して、リザーバ35内に長時間(例えば、0.5−10時間)徐々に貯留される。
【0027】
一方、供給器1からの薬液は第1三方コネクタ2を通ってライン4にも供給される。このライン4では第2流量制御器42の制御通路421を通り、第2三方コネクタ5、オスルア・コネクタ6、カテーテル(図示せず)を介して患者の体内に持続注入される。
【0028】
最後に、図5に示すように、バルーン14内の薬液の一部がリザーバ35内に移り替る。リザーバ35が薬液で満杯になる前に、開閉弁33を操作することによって、リザーバ35内の薬液貯留量を調節することもできる。しかし、薬液移替え途中での開閉弁操作は、医師の厳重な指導の下で行われなければならない場合もあるので、開閉弁33を途中での操作不能にするためのロック機構(図示せず)を設けてもよい。
【0029】
その後、患者が突然疼痛を感じ始めたとき、図6に示すように、患者が指等でリザーバ35を圧縮すれば、薬液は第3三方コネクタ34、圧力一方弁36、オスルア・コネクタ6を介して外部(患者体内)に流出する。前述した動作を繰り返すことによって、本装置は再使用できる。もちろん、1回の使用ごとの使捨にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の携帯鎮痛装置の平面図である。
【図2】図1のII−II線から見た縦断面図である。
【図3】薬液器に薬液を注入しているときの動作説明図である。
【図4】注入器から薬液断続注入ラインのリザーバへの薬液を移し換えると同時に薬液持続注入ラインへの薬液供給の動作説明図である。
【図5】薬液持続注入ラインへの薬液供給中に薬液断続注入ラインのリザーバへの薬液移換え完了時の動作説明図である。
【図6】薬液持続注入ラインへの薬液供給中に薬液断続注入ラインのリザーバを圧縮したときに薬液が装置外部に注出する際の動作説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1 薬液供給器
2 第1三方コネクタ
3 薬液断続注入ライン
4 薬液持続注入ライン
5 第2三方コネクタ
6 オスルア・コネクタ
14 バルーン
12 薬液注入部
13 薬液流出部
16 保護カバー
17 円筒本体
21 一方の出口
22 他方の出口
31 流出口
32 第1流量制御器
321 制御通路
33 開閉弁
34 第3三方コネクタ
35 リザーバ
36 圧力一方弁
37 メスルア・コネクタ
41 流出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の薬液を一旦貯留し、その後自力で薬液を排出する薬液供給器と、該薬液供給器の流出口に接続された第1三方コネクタと、該第1三方コネクタの一方の出口に接続された薬液断続注入ラインと、該第1三方コネクタの他方の出口に接続された薬液持続注入ラインと、前記両ラインの流出口を連通する第2三方コネクタとからなる携帯鎮痛装置であって、
前記薬液断続注入ラインは、薬液を貯留する中空で可撓性のリザーバを含むことを特徴とする携帯鎮痛装置。
【請求項2】
前記薬液断続注入ラインは、前記薬液が所定の圧力を超えたときにのみ開く圧力一方弁を含むことを特徴とする請求項1に記載の携帯鎮痛装置。
【請求項3】
前記圧力一方弁は、アンブレラ弁であることを特徴とする請求項2に記載の携帯鎮痛装置。
【請求項4】
前記リザーバは、球形、円筒形、蛇腹形状の何れかの形状に成形されたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の携帯鎮痛装置。
【請求項5】
前記薬液供給器は、弾性材料からなるバルーンの一端に薬液の注入部を設け、他端に薬液の流出部を設け、前記バルーンを保護カバーで覆った構造になっていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の携帯鎮痛装置。
【請求項6】
前記薬液断続注入ラインは、薬液の流量を制御する第1流量制御器と、該第1流量制御器に連結されていて薬液の流出を遮断する開閉弁と、該開閉弁の出口に連結されていて三方向の流路を有する第3三方コネクタとを備えており、
前記リザーバは前記第3三方コネクタの一端に連結されており、前記圧力一方弁は前記第3三方コネクタの他端に連結されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の携帯鎮痛装置。
【請求項7】
前記薬液持続注入ラインは、薬液の流量を制御する第2流入制御器を含むことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の携帯鎮痛装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−223876(P2006−223876A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73772(P2006−73772)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【分割の表示】特願平7−528845の分割
【原出願日】平成7年6月6日(1995.6.6)
【出願人】(591129025)株式会社塚田メディカル・リサーチ (8)
【Fターム(参考)】