説明

携帯電話機を利用した遠隔監視システム

【課題】従来の遠隔監視システムでは、サーバ・コンピュータ、モデム、管理・保守用コンピュータといった装置が必要となり、結果として構築されたシステムはいずれも高価で大掛かりなものであった。
【解決手段】電子メールの送受信部および作成部を有する携帯電話機Aと、それにシリアル接続された監視制御装置(マイコン)13とで構成される。監視制御装置13が、電子メールの送受信を監視制御するメール監視制御手段29と、メールに含まれる指令を解析する指令解析手段31と、電子メールの指令や予め設定された指令に従って監視等対象物を監視制御する対象物監視制御手段33と、受信した電子メールの指令等に従って監視等対象物の監視や制御状態の情報の電子メールを作成する監視等情報メール作成手段35とを備えており、携帯電話機Aをシリアル制御することでメールを介して遠隔監視制御を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔地にある対象物(以下、「監視等対象物」と記載する)の監視や制御を行う遠隔監視システムに係り、特に、市販の携帯電話機を利用して簡易に構成した遠隔監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の遠隔監視システムは、図8に示すように、監視制御用マイコンがサーバ・コンピュータやモデムを介して携帯電話機と接続されており、サーバ・コンピュータやモデムを介して情報や指令の送受信を行うことで遠隔監視制御を実現していた。
【0003】
【特許文献1】特開2005−94076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の遠隔監視システムでは、上記したように、サーバ・コンピュータ等を介して監視制御用マイコンに情報や指令の送受信を行っていたので、サーバ・コンピュータ、モデム、管理・保守用コンピュータといった装置が必要となり、結果として構築されたシステムはいずれも高価で大掛かりなものであった。
それ故、本発明は、簡易で安価な、新規構成の遠隔監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、通信回線ネットワークに接続され、電子メール送受信部および電子メール作成部を有する携帯電話機と、前記携帯電話機とシリアル接続された監視制御装置とで構成される携帯電話機を利用した遠隔監視システムであって、前記監視制御装置が、電子メールの送受信を監視制御するメール監視制御手段と、メールに含まれる指令を解析する指令解析手段と、受信した電子メールの指令や予め設定された指令に従って監視等対象物を監視制御する対象物監視制御手段と、受信した電子メールの指令や予め設定された指令に従って監視等対象物の監視や制御状態の情報の電子メールを作成する監視等情報メール作成手段とを備えており、前記監視制御装置が前記携帯電話機の各部の機能をシリアル制御することで遠隔監視制御を実現したことを特徴とする遠隔監視システムである。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載した携帯電話機を利用した遠隔監視システムにおいて、さらに、携帯電話機はカメラ部を有することを特徴とする遠隔監視システムである。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した携帯電話機を利用した遠隔監視システムにおいて、さらに、監視制御装置はタイマを備えることを特徴とする遠隔監視システムである。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかに記載した携帯電話機を利用した遠隔監視システムにおいて、携帯電話機による電子メールの送受信により遠隔監視制御を受けることを特徴とする遠隔監視システムである。
【0009】
請求項5の発明は、請求項4に記載した携帯電話機を利用した遠隔監視システムにおいて、電子メールの本文及び/または題名に文字形式の指令が記載されていることを特徴とする遠隔監視システムである。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれかに記載した携帯電話機を利用した遠隔監視システムの監視制御装置における各手段の機能をマイコンにより実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の遠隔監視システムによれば、監視制御装置が携帯電話機のメール送受信機能を利用して監視制御指令の受取り及び必要な情報の提供を行っているので、市販の携帯電話機と、シリアル入出力インターフェイスを付加した安価なマイコンと、それらを繋ぐシリアル通信ケーブルを準備するだけでシステムを構築できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る遠隔監視システム1のイメージ構成を図1、図2に示す。
携帯電話機Aは、機能として、電子メール送受信部5と、電子メール作成部7と、カメラ部9と、シリアルデータの送受信用のシリアル入出力インターフェイス11とを備えており、無線通信網を介してインターネット2と接続されており、同様の機能を有する携帯電話機Bとの間で電子メールの送受信が可能となっている。
監視制御装置としての監視制御用マイコン13は、マイコンで構成されており、CPU15と、ワークエリアとしてのRAM(内部メモリ)17と、遠隔監視制御プログラム(専用のアプリケーションプログラム)および制御データを記憶しているROM等の外部メモリ19と、タイマ21と、シリアルデータの送受信用のシリアル入出力インターフェイス23と、監視等対象物やセンサなどに接続する入出力インターフェイス25を備えている。入出力インターフェイス25には、アナログ情報、ポート入出力情報、リレー出力用のポートが複数設けられている。
【0013】
CPU15は、専用の遠隔監視制御プログラム(アプリケーションプログラム)とOSの手順に従って各部を制御したり、演算処理を行うことで、後述の各手段を機能として実現させている。
携帯電話機Aのシリアル入出力インターフェイス11と監視制御用マイコン13のシリアル入出力インターフェイス23は、RS232C、RS422,RS485等の汎用シリアル通信ケーブル27で接続されている。
【0014】
監視制御用マイコン13のROM19に記憶されている遠隔監視制御プログラムは、上記したハード構成を利用して以下の各手段を機能として実行するものである。
図2に示す遠隔監視制御プログラムに従って、各手段毎に説明すると、先ず、メール監視制御手段29は電子メールの送受信を監視制御するものである。メール監視制御手段29は、電子メールの受信監視のために、タイマ21で定まる周期毎に、監視制御用マイコン13側から携帯電話機Aにシリアル信号を送信して携帯電話機Aの電子メール送受信部5を制御する。具体的には、監視制御用マイコン13側からのシリアル信号の送信により、携帯電話機Aを手動で操作した場合と同様に、センターに問合せをして受信メールを取得する。そして、メールが有った場合にはユーザ要求(指令内容)をシリアル信号として転送して、指令解析手段31に渡す。
また、後述する監視等情報メール作成手段35により電子メールが作成されたときにも、監視制御用マイコン13側から携帯電話機Aにシリアル信号を送信して携帯電話機Aの電子メール送受信部5を制御してそのメールを送信する。
【0015】
指令解析手段31は、メールに含まれる指令(コマンド)を予め登録された指令データファイル32を参照しながら解析する。
対象物監視制御手段33は、予め遠隔監視制御プログラムで設定された指令や指令解析手段31から提供された指令に従って監視等対象物を監視・制御するものである。制御・監視信号は入出力インターフェイス25の各ポートに接続された信号線を介して監視等対象物の制御回路に送信されて制御を行う。また、対象物監視制御手段33は、信号線を介して監視や制御状態の情報を受取る。
一例としては、化学工場における廃水液濃度(アナログ信号)、廃水液濃度異常(デジタル信号)、廃水タンクの液面の上限(接点信号)などの状態監視信号や、廃水ポンプの駆動や電磁弁の開閉(リレー出力)の制御信号があげられる。
なお、監視画像の取得・送信指令を受取ったときには、後述するように携帯電話機Aにシリアル信号を送信してカメラ部9を制御して画像を取得する。
【0016】
監視等情報メール作成手段35は、受信した電子メールの指令や予め設定された指令に従って監視等対象物の監視や制御状態の情報の電子メールを作成するものであり、監視制御用マイコン13から携帯電話機Aにシリアル信号を送信して携帯電話機Aの電子メール作成部7を制御してメールを作成する。具体的には、監視制御用マイコン13側からのシリアル信号の送信により、携帯電話機Aを手動で操作した場合と同様に電子メールを作成する。
画像を添付するか否かに対応していずれかのメール作成画面が表示され、先ず、メールアドレスが入力される。監視制御用マイコン13が自発的に監視等を行ったときには、予め登録されたアドレス帳から電子メールの内容毎に指定された1つまたは複数のメールアドレスを選択・入力してメールの宛先とする。ユーザからの監視等の要求で監視制御用マイコン13が監視等を行ったときには、そのユーザのメールアドレスを返信先とする。なお、ユーザが本文にメールアドレスを記載しておけば、その本文に記載されたメールアドレスを返信先とする。例えば、別のユーザの携帯電話機C(図示省略)のメールアドレスを記載しておけば、返信先は携帯電話Bではなく、携帯電話機Cとなる。
【0017】
次に、題名と本文が入力される。監視制御用マイコン13側は予め作成されている文字形式変換データを含むメール作成データファイル36を参照しながら監視情報等に対応したシリアル信号を生成・送信すると、この例では、題名には異常内容が記載され、本文には対象の監視情報や制御状態が記載される。
また、監視画像の取得・送信指令を受取ったときには、この段階で、携帯電話機Aにシリアル信号を送信してカメラ部9を動作させて画像を取得して、メールに添付する。
メールの作成を終了すると、処理を終了する。
【0018】
以下、処理手順をフローチャートに従って説明する。
(自発処理)(図3)
処理がスタートすると、対象物監視制御手段33が、予め遠隔監視制御プログラムで設定された指令に従ってタイマ21で定まる周期毎に(ステップS1)、監視等対象物を監視制御する(ステップS2)。
そして、監視等の情報を報告する必要があるか否かを判断基準データファイル(図示省略)に照らして判断して報告要を判断した場合には、即ち異常報告処理時には(ステップS3)、監視等情報メール作成手段35が携帯電話機Aの電子メール作成部7を制御してメールを作成する(ステップS4)。
【0019】
監視画像を添付する必要が無い場合には、一例の図5に示すように、メール作成画面が先ず表示され、携帯電話機Aのメール作成メニューからメールグループが選択されてメールアドレスが入力された後にメール作成画面が表示される(A−1〜A−4)。そして、題名には異常内容が記載され、本文には対象の監視情報や制御状態が記載されてメール作成が終了する(A−5〜A−6)。この例では、廃水処理設備の遠隔監視制御を目的としており、廃水タンク液面の上限異常が記載されている。
メール作成が終了すると、メール監視制御手段29が携帯電話機Aの電子メール送受信部5を制御して、作成したメールが送信される(ステップS5)。
メールが送信されると(A−7)、ユーザは携帯電話機Bを手で操作することによりそのメールを受信して、メールを読むことで異常内容を認識できる(B−1〜B−2)。
【0020】
監視画像を添付することが必要な場合には、一例の図6に示すように、画像送信可能なメール作成画面が表示されて作成モードに入ったところで、対象物監視制御手段33がカメラ部9を制御してカメラ画像が取得・添付された後に(A−1〜A−3)、図5と同様にメールアドレス、題名が入力されてメールが作成される(A−4〜A−7)。この例では、飼主の留守中のペットの監視を目的としており、題名にシステムの名称が記載されている。
図5と同様にメール送信されると(A−8)、飼主であるユーザは携帯電話機Bを手で操作することによりそのメールを受信して、メールの本文に添付された監視画像のURLにアクセスして監視画像を閲覧できる(B−1〜B−4)。
【0021】
(ユーザ要求による処理)(図4)
処理がスタートすると、上記した自発処理と並行してユーザ要求による処理が行われる。
ユーザが携帯電話機Bを操作して制御要求および制御状態の情報の要求を題名に入力したメールを一例の図7に示すように作成して送信する(B−1)と、メール監視制御手段29が、予め遠隔監視制御プログラムで設定された指令に従ってタイマ21で定まる周期毎に携帯電話機Aの電子メール送受信部5を制御して、センター問い合わせを行い(A−1)、ユーザ要求のメールを取得する(ステップS11)。メールが届いていたら読み出して(A−2)、指令を解析する(ステップS12)。
【0022】
この例では、題名:I0T0O8、(I(0:画像の要求有り、1:無し)、T(0:監視や制御状態の情報の要求有り、1:無し)、O(1でCH0、2でCH1、4でCH2、8でCH3のリレー出力ON))と記載されて、制御要求「廃水処理設備のポンプを駆動(CH3)するリレー出力をONにする」と、制御状態情報の要求が表示されている。
そして、解析した指令の内容に従って、対象物監視制御手段33が監視等対象物を監視・制御する(ステップS13)。
【0023】
ユーザ要求が報告を求めている場合、或いは監視や制御状態の情報を報告する必要があるか否かを判断基準データファイル(図示省略)に照らして判断して報告要を判断した場合には(ステップS14)、即ち異常報告処理時には、監視等情報メール作成手段35が電子メール作成部7を制御して、図5や図6と同様に、メール作成がなされて(ステップS15)、そのユーザ宛に返信される(ステップS16)。なお、上記した場合と同様に、ユーザが本文にメールアドレスを記載しておけば、その本文に記載されたメールアドレスを返信先とする。例えば、別のユーザの携帯電話機C(図示省略)のメールアドレスを記載しておけば、返信先は携帯電話Bではなく、携帯電話機Cとなる。
従って、ユーザは携帯電話機Bを手で操作することによりそのメールを受信して、メールを読むことで監視や制御状態等を認識できる(B−2〜B−3)。
【0024】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、携帯電話機A,Bは、インターネット対応のものに限定されず、PHSのような簡易電話機も含まれる。
また、ユーザ側の通信端末は携帯電話機Bに限定されず、パーソナルコンピュータ(PC)等でもよい。
さらに、実施の形態のシステムは、株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモのiモード及びiショット機能付きの携帯電話機を利用して構成されているが、上記特定の会社のものに限定されず、各会社のものを利用できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の遠隔制御システムによれば、市販の携帯電話機と、シリアル入出力インターフェイスを付加した安価なマイコンと、それらを繋ぐシリアル通信ケーブルを準備するだけでシステムを構築できるので、安価で経済的である。さらに、小型化も図れる。従って、ユーザの負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る携帯電話機を利用した遠隔監視システムのイメージ構成図である。
【図2】遠隔監視制御プログラムの論理的構成図である。
【図3】自発処理のフローチャートである。
【図4】ユーザ要求による処理のフローチャートである。
【図5】異常等報告時(監視画像無し)の携帯電話機A、Bの画面である。
【図6】異常等報告時(監視画像有り)の携帯電話機A、Bの画面である。
【図7】ユーザの要求時の携帯電話機A、Bの画面である。
【図8】従来の遠隔監視システムのイメージ構成図である。
【符号の説明】
【0027】
1‥‥携帯電話機を利用した遠隔監視システム 2‥‥インターネット
A‥‥携帯電話機
5‥‥電子メール送受信部 7‥‥電子メール作成部
9‥‥カメラ部 11‥‥シリアル入出力インターフェイス
B‥‥携帯電話機
13‥‥監視制御用マイコン 15‥‥CPU
17‥‥RAM 19‥‥ROM
21‥‥タイマ 23‥‥シリアル入出力インターフェイス
25‥‥入出力インターフェイス
27‥‥シリアル通信ケーブル
29‥‥メール監視制御手段 31‥‥指令解析手段
32‥‥指令データファイル 33‥‥対象物監視制御手段
35‥‥監視等情報メール作成手段 36‥‥メール作成データファイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信回線ネットワークに接続され、電子メール送受信部および電子メール作成部を有する携帯電話機と、前記携帯電話機とシリアル接続された監視制御装置とで構成される携帯電話機を利用した遠隔監視システムであって、
前記監視制御装置が、電子メールの送受信を監視制御するメール監視制御手段と、メールに含まれる指令を解析する指令解析手段と、受信した電子メールの指令や予め設定された指令に従って監視等対象物を監視制御する対象物監視制御手段と、受信した電子メールの指令や予め設定された指令に従って監視等対象物の監視や制御状態の情報の電子メールを作成する監視等情報メール作成手段とを備えており、前記監視制御装置が前記携帯電話機の各部の機能をシリアル制御することで遠隔監視制御を実現したことを特徴とする遠隔監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載した携帯電話機を利用した遠隔監視システムにおいて、さらに、携帯電話機はカメラ部を有することを特徴とする遠隔監視システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載した携帯電話機を利用した遠隔監視システムにおいて、さらに、監視制御装置はタイマを備えることを特徴とする遠隔監視システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載した携帯電話機を利用した遠隔監視システムにおいて、携帯電話機による電子メールの送受信により遠隔監視制御を受けることを特徴とする遠隔監視システム。
【請求項5】
請求項4に記載した携帯電話機を利用した遠隔監視システムにおいて、電子メールの本文及び/または題名に文字形式の指令が記載されていることを特徴とする遠隔監視システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載した携帯電話機を利用した遠隔監視システムの監視制御装置における各手段の機能をマイコンにより実行させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−303934(P2006−303934A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123200(P2005−123200)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(590002389)静岡県 (173)
【Fターム(参考)】