説明

携帯電話機

【課題】 燃料等の補充を必要とせず、利用者の必要に応じて温度を変化させることが可能であり、電池を必要以上に消費せず、結露や火災の発生の危険性が低い携帯電話機を提供すること。
【解決手段】 本体筐体に設けられ、充電電流が外部から供給されることにより電気エネルギーを蓄積することが可能な充電式電池と、上記充電式電池に蓄積された電気エネルギーを消費して、少なくとも上記本体筐体の所定部位の温度を変化させる温度変化手段と、上記本体筐体の特定部位が人体による接触を受けたことを感知する接触感知手段と、上記接触感知手段が人体の接触を感知したときに上記温度変化手段の温度変化を制御する温度変化制御手段とを備えることを特徴とする携帯電話機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外出中等の暖房器具が無い状況下で身体を温めるための道具として、使い捨てカイロやオイル充填式カイロ等が存在する。使い捨てカイロは鉄粉、塩及び水等が不織布又は紙の袋に入れられたものであり、袋の外から圧力をかけられることで鉄粉が酸化することにより発熱する。また、オイル充填式カイロは、ベンジン等の燃料がプラチナ等の触媒作用によって二酸化炭素と水とに酸化分解し、その過程で反応熱が生じる。
【0003】
また、電力を用いて人体の一部を暖めたり冷却したりする技術が提案されている。例えば、バッテリ電源の電力を用いて人体と接触した冷却又は加熱手段の温度を変化させ、人体の一部を暖めたり冷却したりすることが可能な温度調節装置が存在する(特許文献1参照)。また、燃料電池を電源として用い、人体に接触させた発熱面又は冷却面の温度を変化させ、人体の一部を暖めたり冷却したりすることが可能な携帯体温調整素子が存在する(特許文献2参照)。さらに、発熱機構を備え、気温が低いときに素手で操作しても冷たくない携帯端末が提案されている(特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−187473号公報
【特許文献2】特開2001−238903号公報
【特許文献3】特開2004−180120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した使い捨てカイロには、一度発熱を開始したら途中で発熱を中断することができないという問題点があった。また、上述したオイル充填式カイロや特許文献2に記載の携帯体温調整素子には、燃料の補充等に手間がかかるという問題点があった。
【0006】
また、外出時等に予想外の急激な温度変化が起きたときや暖房器具の故障等が起きたとき等、臨時に人体を暖める必要性が発生する場合があるが、特許文献1に記載の温度調節装置や特許文献2に記載の携帯体温調整素子は常時携帯されるものではなく、利用する予定がある場合にのみ携帯されるのが一般的である。そのため、緊急に必要となった場合に利用者の手元に無く、利用することができない場合があるという問題点があった。さらに、これらの器具を携帯することによって利用者の所持品が増えてしまい不便であるという問題点があった。
【0007】
また、特許文献3に記載の携帯端末は、スイッチを入れたまま放置してしまうと電池を不必要に消費してしまうという問題点があった。また、長時間冷却や加熱を続けることにより、携帯端末に結露が起こったり、火災が発生したりするおそれがあった。
【0008】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料等の補充を必要とせず、利用者の必要に応じて温度を変化させることが可能であり、電池を必要以上に消費せず、結露や火災の発生の危険性が低い携帯電話機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上のような目的を達成するために、本発明は、以下のようなものを提供する。
(1) 本体筐体に設けられ、充電電流が外部から供給されることにより電気エネルギーを蓄積することが可能な充電式電池と、
上記充電式電池に蓄積された電気エネルギーを消費して、少なくとも上記本体筐体の所定部位の温度を変化させる温度変化手段と、
上記本体筐体の特定部位が人体による接触を受けたことを感知する接触感知手段と、
上記接触感知手段が人体の接触を感知したときに上記温度変化手段の温度変化を制御する温度変化制御手段と
を備えることを特徴とする携帯電話機。
【0010】
(1)の発明によれば、携帯電話機に本体筐体の所定部位の温度を変化させる機能を持たせることにより、利用者が欲する時にいつでも身体の一部を温めたり冷やしたりすることが可能となる。また、携帯電話機を所有する人であれば、携帯電話機の充電式電池を定期的に充電する習慣を有しているので、充電の手間が煩わしいと思われ難い利点がある。また、充電式電池の電気エネルギーを用いるので、燃料を補充する手間をかけずに利用することが可能である。
さらに、携帯電話機は常時利用者の身に付けられている場合が多いため、利用者が改めて所持品を増やすことなく、いつでも身体の一部を温めたり冷やしたりすることが可能となる。また、臨時に利用する必要が生じた時に利用者の手元に無いという可能性が低く、緊急の場合等にもいつでも利用することが可能である。
また、人体の接触を感知したときに温度変化を行うため、スイッチを入れたまま放置してしまい電池を不必要に消費してしまったり、長時間冷却や加熱を続けることにより、携帯端末に結露が起こったり火災が発生したりする可能性を低減することが可能となる。
【0011】
さらに、本発明は、以下のようなものを提供する。
(2) 上記(1)の携帯電話機であって、
使用者の操作に応じて、温度設定に係る入力信号を入力する設定温度入力手段を備え、
上記温度変化制御手段は、上記設定温度入力手段より入力された入力信号に基づき、上記温度変化手段の温度変化を制御することを特徴とする。
【0012】
(2)の発明によれば、利用者が最も快適な温度を設定し、携帯電話機の温度をその温度に近づけることが可能となる。これにより、利用者がより快適な状態を保つことが可能となる。
【0013】
さらに、本発明は、以下のようなものを提供する。
(3) 上記(1)又は(2)の携帯電話機であって、
上記温度変化手段は、上記本体筐体の上記所定部位と上記充電式電池とのいずれにも接する位置に配置されることを特徴とする。
【0014】
(3)の発明によれば、本体筐体の所定部位の温度を変化させるとともに、充電式電池の温度を変化させることが可能となる。これにより、温度の低下により充電式電池の容量が低下する可能性を低減させることが可能となる。
【0015】
さらに、本発明は、以下のようなものを提供する。
(4) 上記(1)〜(3)のいずれか1の携帯電話機であって、
筐体内部の温度を測定する内部感温手段と、
筐体外部の温度を測定する外部感温手段とを備え、
上記温度変化制御手段は、上記内部感温手段が測定した筐体内部の温度と上記外部感温手段が測定した筐体外部の温度との差が一定の条件を満たしたときに上記温度変化手段を機能させることを特徴とする。
【0016】
(4)の発明によれば、携帯電話機の内部と外部との温度差が一定条件を満たしたときに温度変化を行う。これにより、過度の冷却や発熱によって電池を不必要に消費する可能性を低減することができる。
【0017】
さらに、本発明は、以下のようなものを提供する。
(5) 上記(1)〜(4)のいずれか1の携帯電話機であって、
上記本体筐体の表面の所定領域に水滴が存在することを検知する水滴検知手段を備え、
上記温度変化制御手段は、上記水滴検知手段が前記所定領域に水滴の存在を検知したときに上記温度変化手段を機能させないことを特徴とする。
【0018】
(5)の発明によれば、携帯電話機が冷却されることによって結露が発生した場合に温度変化を停止することが可能となる。
【0019】
さらに、本発明は、以下のようなものを提供する。
(6) 上記(1)〜(5)のいずれか1の携帯電話機であって、
上記温度変化制御手段は、通話動作中であるときには上記温度変化手段の温度変化を行わないことを特徴とする。
【0020】
(6)の発明によれば、通話動作と上記温度変化手段の温度変化とを同時に行わないようにすることにより、携帯電話機内部に備えられたマイクロコンピュータに過度の負担を掛けることを防ぐことが可能となる。また、電池の消費量が多い通話中に上記温度変化手段の温度変化を行わないようにすることによって、電池消費量を急増させることを防ぐことが可能となる。
【0021】
さらに、本発明は、以下のようなものを提供する。
(7) 上記(1)〜(6)のいずれか1の携帯電話機であって、
上記温度変化制御手段は、着信通知が行われている時に上記温度変化手段の温度変化を行うことを特徴とする。
【0022】
携帯電話機には、着信等があった場合にも音を発さず、機体を振動させることによって利用者に着信等を伝える所謂マナーモードを設定することが可能なものが多く存在する。しかし、機体を振動させることによっても音が生じるため、完全な静寂を保てないという問題点があった。
しかしながら、(7)の発明によれば、携帯電話機を音の出ない状態(所謂マナーモード)に設定した場合に、温度変化手段の温度変化を行うことによって利用者に着信等を伝えることが可能となる。これにより、機体の振動を利用する場合と比較して、より静かに利用者に着信等を伝えることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、燃料等の補充を必要とせず、利用者の必要に応じて温度を変化させることが可能であり、電池を必要以上に消費せず、結露や火災の発生の危険性が低い携帯電話機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
以下においては、本発明の好適な実施形態として、電熱式ヒータを用いた暖房機能を有する携帯電話機について説明することとする。
【0025】
図1は、本発明に係る携帯電話機を模式的に示す斜視図である。
携帯電話機300は、所謂折り畳み式携帯電話機であり、図中では、携帯電話機300が開かれた状態を示している。携帯電話機300は、二次電池324より放出される電気エネルギーを動力源として作動する。二次電池324は、充電電流が外部から供給されることにより電気エネルギーを蓄積することが可能であり、本発明における充電式電池に相当するものである。二次電池324は、二次電池出入口336より携帯電話機300内部から取り出すことが可能である。
【0026】
携帯電話機300は、筐体351の内部及び外部に各種機器が配置されて構成されている。筐体351は、合成樹脂製の樹脂ケース340と熱伝導部341とによって構成されている。熱伝導部341は、樹脂ケース340よりも高い熱伝導性を有する高熱伝導樹脂によって構成されている。樹脂ケース340は筐体351の裏面352に凹部(図示せず)を有しており、熱伝導部341が当該凹部の上面を覆うように配置されている。当該凹部と熱伝導部341との間に出来た空間に、二次電池324が収納される。
【0027】
上述した各種機器の具体例としては、感圧センサ331(図示せず)、内部温度センサ332(図示せず)、外部温度センサ333、水滴センサ334、電熱ヒータ335等が挙げられる。熱伝導部341の外面に、感圧センサ331が配置されている。そして、感圧センサ331の外面に水滴センサ334が配置されている。また、熱伝導部341には、筐体351内部側に電熱ヒータ335が取り付けられている。
【0028】
温度変化手段としての電熱ヒータ335が発熱することにより、電熱ヒータ335と接する熱伝導部341が加熱される。熱伝導部341は高い熱伝導性を有する高熱伝導樹脂によって構成されているため、携帯電話機300の裏面352の熱伝導部341が配置されている所定領域の温度が上昇する。これにより、携帯電話機300を手に持っている利用者は手を温めることが可能となる。また、電熱ヒータ335が発熱することにより、電熱ヒータ335と接する二次電池324が加熱される。これにより、温度の低下により充電式電池の容量が低下する可能性を低減させることが可能となる。
【0029】
接触感知手段としての感圧センサ331は、表面に圧力を受けたときに検知信号を発する。電熱ヒータ335は、感圧センサ331が外部から圧力を受けていることを感知しているときのみ発熱を行う。これは、誤って放置されてしまったときに、電池を不必要に消費してしまったり、結露が起こったり火災が発生したりする可能性を低減するためである。
【0030】
本実施形態において、感圧センサ331は裏面352に配置されているが、本発明はこれに限定されない。感圧センサ331の配置される位置は、携帯電話機300が利用者の手にとられていることを検知することが出来る位置に配置されていればよい。また、本発明における温度変化が行われる所定位置と人体による接触を検知する特定位置とは必ずしも同一である必要は無い。即ち、本実施形態においては、感圧センサ331が熱伝導部341及び電熱ヒータ335を覆う位置に配置されていることにより、温度変化が行われる所定位置と人体による接触を検知する特定位置とがほぼ同位置であるが、例えば人体による接触を検知する特定位置が携帯電話機300の裏面に位置し、温度変化が行われる所定位置が携帯電話機300の表面に位置していても構わない。
【0031】
また、本実施形態においては、本発明の接触感知手段として感圧センサを用いているが、本発明はこれに限定されない。本発明における接触検知手段は、人体による接触を受けたことを感知することが可能であればよく、例えば人体に帯電している静電気を感知するタッチセンサ等であってもよい。
【0032】
水滴検知手段としての水滴センサ334は、表面に水滴が存在することを検知したときに検知信号を発する。電熱ヒータ335は、水滴センサ334が表面に水滴が存在することを検知しているときのみ発熱を行う。これは、携帯電話機300の内部と外部の温度差によって結露が発生したときに発熱を行わないことにより、結露の進行を防ぐためである。なお、水滴センサの内部構造等については特開2005−274701等によって周知であるので、ここでは説明を省略する。
【0033】
内部温度センサ332は、筐体351内部の二次電池324近傍の温度を測定する。また、外部温度センサ333は、外気の温度を測定する。内部温度センサ332が測定した内部温度が予め利用者によって設定された設定温度以上である場合には、電熱ヒータ335は発熱を行わない。これは、電熱ヒータ335が設定温度付近で発熱の実行と停止とを交互に繰り返すことにより、利用者にとって最も快適である温度を筐体351が保つためである。また、内部温度センサ332が測定した内部温度と外部温度センサ333が測定した外部温度との差が予め定められた設定値以上である場合には、電熱ヒータ335は発熱を行わない。これは、内部温度が充分上昇したと判断された場合、二次電池324が温度の低下により容量が低下するおそれがなくなるためである。
【0034】
本実施形態においては、携帯電話機300は筐体351をヒンジ接続箇所(図示せず)で折り畳むことが可能な所謂折り畳み型となっているが、本発明はこれに限定されない。本発明における携帯電話機は、例えば所謂非折り畳み型の物であっても構わない。この場合も、電熱ヒータ335及び感圧センサ331の配置される場所については特に限定されるものではない。
【0035】
図2は、携帯電話機300を模式的に示す断面図である。
なお、図2の断面図は図1に示した携帯電話機300の裏面352が上部に位置するように示した物であり、下部については記載を省略している。また、図2の断面図において、配線等の記載は省略している。また、筐体351の内部には以下に述べる各機器以外にも様々な機器が配置されているが、これらについても記載せず、説明を省略する。
【0036】
携帯電話機300の筐体351は、樹脂ケース340と熱伝導部341とによって構成されている。樹脂ケース340は、携帯電話機300の裏面352中央部に凹部353を有しており、凹部353の上面を覆うように熱伝導部341が取り付けられている。これにより、筐体351は略直方体形状を有している。そして、熱伝導部341の携帯電話機300内部側には、電熱ヒータ335が取り付けられている。また、熱伝導部341の携帯電話機300外部側には、感圧センサ331が配置されている。そして、感圧センサ331の携帯電話機300外部側には、水滴センサ334が配置されている。
【0037】
樹脂ケース340と電熱ヒータ335との間に二次電池324が収納されている。上述したように、二次電池324は携帯電話機300より取り出すことが可能である。
樹脂ケース340の二次電池324と接する箇所に、内部温度センサ332が配置されている。また、樹脂ケース340の携帯電話機300外面に位置する箇所に、外部温度センサ333が配置されている。
【0038】
接触感知手段としての感圧センサ331は、外部からの圧力を検知する機能を有する。これにより、携帯電話機300が人間の手による接触を受けていることを検知することが可能となる。内部感温手段としての内部温度センサ332は、二次電池324の温度を測定する機能を有する。外部感温手段としての外部温度センサ333は、携帯電話機300外部の温度を測定する機能を有する。水滴検知手段としての水滴センサ334は、携帯電話機300の表面に水滴が接触したことを検知する機能を有する。温度変化手段としての電熱ヒータ335は、二次電池324より電気の供給を受けることにより、発熱する機能を有する。
【0039】
電熱ヒータ335が二次電池324と接して配置されているため、電熱ヒータ335が発熱することによって二次電池324が加熱される。これにより、温度の低下により二次電池324の容量が低下する可能性を低減させることが可能となる。また、電熱ヒータ335が熱伝導部341と接して配置されているため、電熱ヒータ335が発熱することによって熱伝導部341が加熱される。熱伝導部341は高い熱伝導性を有する高熱伝導樹脂によって構成されているため、携帯電話機300の裏面352の熱伝導部341が配置されている所定領域の温度が上昇する。これにより、携帯電話機300を手に持っている利用者は手を温めることが可能となる。
【0040】
図3は、携帯電話機300の内部構成を示すブロック図である。
携帯電話機300は、操作部304、液晶パネル306、無線部310、音声回路312、スピーカ314、マイク316、送受信アンテナ318、不揮発性メモリ320、マイクロコンピュータ322、二次電池324、感圧センサ331、内部温度センサ332、外部温度センサ333、水滴センサ334及び電熱ヒータ335を備えている。
【0041】
無線部310は、マイクロコンピュータ322により制御されて、送受信アンテナ318を通じて電波を媒体として基地局に対して送受信する。音声回路312は、無線部310からマイクロコンピュータ322を通じて出力された受信信号をスピーカ314に出力するとともに、マイク316から出力された音声信号を送信信号としてマイクロコンピュータ322を通じて無線部310に出力する。
【0042】
スピーカ314は、音声回路312から出力された受信信号を受信音声に変換して出力し、マイク316は、操作者から発せられた送信音声を音声信号に変換して音声回路312に出力する。
【0043】
不揮発性メモリ320は、後述する暖房モードのON/OFFの状態や設定温度等の各種情報を不揮発的に記憶する。
二次電池324は、各回路に電力を供給する。マイクロコンピュータ322は、CPU、ROM及びRAMから構成されたもので、例えば、電話の発着信処理、電子メールの作成送受信処理、インターネット処理等を行う。なお、電子メールの送受信及びインターネットによるデータの送受信は、マイクロコンピュータ322が無線部310及び送受信アンテナ318を介して行う。
【0044】
また、温度変化制御手段としてのマイクロコンピュータ322は、操作部304から受信した入力信号や、感圧センサ331、内部温度センサ332、外部温度センサ333及び水滴センサ334から各種検知信号を受信する。そして受信した情報に基づき、電熱ヒータ335を発熱させる制御を行う。また、受信した情報を不揮発性メモリ320に記憶する処理を行う。受信した検知信号と発熱の実行との関係については、後で図4を用いて詳述することにする。
【0045】
図4は、電熱ヒータ335を発熱させる暖房機能実行処理の手順を示すフローチャートである。暖房機能実行処理は、暖房モードがONに設定されているときに所定のタイミングで繰り返し実行される。暖房モードとは、所定の条件を満たす場合に電熱ヒータ335を発熱させるか否かを示す設定状態であり、利用者の操作に基づく操作部304からの入力信号により設定される。暖房モードの設定状態を示す情報は、不揮発性メモリ320に記憶される。
【0046】
まず、携帯電話機300が備えるマイクロコンピュータ322は、感圧センサ331が携帯電話機300外部からの接触を検知しているか否かを判断する(ステップS102)。携帯電話機300外部からの接触を検知している場合(ステップS102:YES)、処理をステップS103に移す。携帯電話機300外部からの接触を検知していない場合(ステップS102:NO)、処理をステップS111に移す。
この処理により、携帯電話機300が利用者の手による接触を受けていない場合には電熱ヒータ335の発熱を停止させることとなる。それによって、不必要な電熱ヒータ335の発熱による二次電池324の消費を防ぐことが可能となる。また、長時間発熱を続けることにより携帯電話機300に結露が起こったり火災が発生したりする可能性を低減することが可能となる。
【0047】
ステップS103においてマイクロコンピュータ322は、水滴センサ334が携帯電話機300の表面に水滴が存在することを検知したか否かを判断する。携帯電話機300の表面に水滴が存在することを検知した場合(ステップS103:YES)、処理をステップS111に移す。携帯電話機300の表面に水滴が接触したことを検知していない場合(ステップS103:NO)、処理をステップS104に移す。
この処理により、携帯電話機300に結露が発生している場合に電熱ヒータ335の発熱を停止させ、結露の進行を防ぐことが可能となる。
【0048】
ステップS104においてマイクロコンピュータ322は、内部温度センサ332が測定した内部温度と外部温度センサ333が測定した外部温度とを比較し、内部温度と外部温度との温度差が予め設定された設定値未満であるか否かを判断する。内部温度と外部温度との温度差が設定値未満である場合(ステップS104:YES)、処理をステップS105に移す。内部温度と外部温度との温度差が設定値以上である場合(ステップS104:NO)、処理をステップS111に移す。
この処理により、二次電池324の温度が充分に上昇し、低温に起因する容量低下の恐れがなくなったと判断されるときに電熱ヒータ335の発熱を停止させることが可能となる。それによって、不必要な電熱ヒータ335の発熱により無駄な二次電池324の消費を防ぐことが可能となる。
【0049】
ステップS105においてマイクロコンピュータ322は、内部温度センサ332が測定した内部温度が設定温度未満であるか否かを判断する。設定温度は、利用者が任意に定めることができる温度であり、設定温度入力手段としての操作部304からの入力信号により設定される。設定温度の情報は、不揮発性メモリ320内に記憶される。内部温度が設定温度未満である場合(ステップS105:YES)、処理をステップS106に移す。内部温度が設定温度以上である場合(ステップS105:NO)、処理をステップS111に移す。
この処理により、携帯電話機300内部の温度が設定温度以上であるときには電熱ヒータ335の発熱を停止し、携帯電話機300の温度を設定温度近辺に保つことが可能となる。それによって、利用者にとって最も快適な温度を保つことが可能となる。
【0050】
ステップS106においてマイクロコンピュータ322は、現在電熱ヒータ335を発熱中であるか否かを判断する。電熱ヒータ335を発熱中である場合(ステップS106:YES)、本サブルーチンを終了する。電熱ヒータ335を発熱中ではない場合(ステップS106:NO)、温度変化制御手段としてのマイクロコンピュータ322は、温度変化手段としての電熱ヒータ335による発熱を実行させる(ステップS107)。ステップS107の処理を終えた後、本サブルーチンを終了する。
【0051】
ステップS111においてマイクロコンピュータ322は、現在電熱ヒータ335を発熱中であるか否かを判断する。電熱ヒータ335を発熱中である場合(ステップS111:YES)、マイクロコンピュータ322は、温度変化手段としての電熱ヒータ335による発熱を中止させる(ステップS112)。電熱ヒータ335を発熱中である場合(ステップS111:NO)及びステップS112の処理を終えた後、本サブルーチンを終了する。
【0052】
図5は、携帯電話機300において通話が開始されるときの暖房機能についての処理手順を示すフローチャートである。この処理は、通話が開始されたときに実行される。
初めにマイクロコンピュータ322は、暖房モードがONに設定されているか否かを判断する(ステップS202)。暖房モードがONに設定されている場合(ステップS202:YES)、マイクロコンピュータ322は、暖房機能の実行を中止する(ステップS204)。暖房モードがOFFに設定されている場合(ステップS202:NO)及びステップS204の処理を終えた後、本サブルーチンを終了する。
【0053】
図6は、携帯電話機300において通話が終了されるときの暖房機能についての処理手順を示すフローチャートである。この処理は、通話が終了したときに実行される。
初めにマイクロコンピュータ322は、暖房モードがONに設定されているか否かを判断する(ステップS212)。暖房モードがONに設定されている場合(ステップS212:YES)、マイクロコンピュータ322は、図4に示した暖房機能実行処理を実行する(ステップS213)。暖房モードがOFFに設定されている場合(ステップS212:NO)には、本サブルーチンを終了する。
【0054】
図5及び図6のサブルーチンにより、携帯電話機300において通話が行われているときは、暖房モードの設定状態に係らず暖房機能を実行しないこととなる。これにより、通話動作と上記温度変化手段の温度変化とを同時に行わないようにすることとなり、携帯電話機300内部に備えられたマイクロコンピュータ322に過度の負担を掛けることを防ぐことが可能となる。また、電池の消費量が多い通話中に上記温度変化手段の温度変化を行わないようにすることによって、二次電池324の電池消費量を急増させることを防ぐことが可能となる。
【0055】
図7は、携帯電話機300において着信が発生したときの暖房機能の処理手順を示すフローチャートである。これは、通話や電子メールの着信が発生したときに、従来の携帯電話機が行っていた音の再生や機器の振動による通知の代わりに、携帯電話機を発熱させることによって利用者に着信を通知するものである。勿論、発熱による着信通知と、音や振動による通知とが併用されても構わない。この処理は、発熱による着信通知を行うように予め設定されており、着信が発生したときに実行される。
【0056】
初めにマイクロコンピュータ322は、電熱ヒータ335の発熱を行う(ステップS304)。このとき実行する発熱は、暖房モードの設定状態やその時点での暖房機能の実行状況に係らず行われる。また、設定温度や着信発生時の内部温度等に係らず、予め着信通知用に設定された強さで発熱は行われる。ステップS304の処理を終えた後、処理をステップS305に移す。
【0057】
ステップS305においてマイクロコンピュータ322は、着信を実行中であるか否かを判断する。着信を実行中である場合(ステップS305:YES)、処理をステップS305に戻す。一方、通話開始や切断等によって着信状態でなくなった場合には(ステップS305:NO)、マイクロコンピュータ322は、着信通知のための電熱ヒータ335の発熱を終了させる(ステップS306)。その後、暖房モードがONに設定されているか否かを判断する(ステップS307)。暖房モードがONに設定されている場合(ステップS307:YES)、マイクロコンピュータ322は、図4に示した暖房機能実行処理を実行する(ステップS308)。暖房モードがOFFであった場合(ステップS307:NO)及びステップS308の処理を終えた後、本サブルーチンを終了する。
【0058】
本サブルーチンの処理により、携帯電話機300を音の出ない状態(所謂マナーモード)に設定した場合に、温度変化手段の温度変化を行うことによって利用者に着信等を伝えることが可能となる。これにより、機体の振動を利用する場合と比較して、より静かに利用者に着信等を伝えることが可能となる。
【0059】
以上、本発明に係る実施形態について述べたが、本発明の実施形態はこれに限定されない。本実施形態においては、筐体351の温度を上昇させる手段として電熱ヒータ335を発熱させていたが、本発明はこれに限定されない。携帯電話機表面の温度を上昇させる手段は特に限定されるものではないが、例えばペルチェ効果等を利用する方法等が挙げられる。ペルチェ効果については特許文献1、2等により周知であるので、ここでは説明を省略する。
【0060】
また、本実施形態においては、携帯電話機300は電熱ヒータ335を発熱させることにより筐体351の温度を上昇させる暖房機能を有していたが、本発明においては、携帯電話機は筐体の温度を低下させる冷却機能を有していてもよい。筐体の温度を低下させる手段は特に限定されるものではないが、例えば上述したペルチェ効果等を利用する方法等が挙げられる。
勿論、携帯電話機は暖房機能を有せず、冷却機能のみを有していてもよい。
【0061】
また、本発明は携帯電話機に温度変化を行う機能を持たせるものとして説明したが、本発明は携帯電話機に限らず、パーソナル・ディジタル・アシスタンツ(PDA)や携帯型ゲーム機等の他の携帯型電子機器に応用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る携帯電話機の一例を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1に示した携帯電話機の断面図である。
【図3】図1に示した携帯電話機の内部構成を示すブロック図である。
【図4】暖房機能実行処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図5】通話開始時の処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図6】通話終了時の処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図7】着信発生時の処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
300 携帯電話機
304 操作部
320 不揮発性メモリ
322 マイクロコンピュータ
324 二次電池
331 感圧センサ
332 内部温度センサ
333 外部温度センサ
334 水滴センサ
335 電熱ヒータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体筐体に設けられ、充電電流が外部から供給されることにより電気エネルギーを蓄積することが可能な充電式電池と、
前記充電式電池に蓄積された電気エネルギーを消費して、少なくとも前記本体筐体の所定部位の温度を変化させる温度変化手段と、
前記本体筐体の特定部位が人体による接触を受けたことを感知する接触感知手段と、
前記接触感知手段が人体の接触を感知したときに前記温度変化手段の温度変化を制御する温度変化制御手段と
を備えることを特徴とする携帯電話機。
【請求項2】
使用者の操作に応じて、温度設定に係る入力信号を入力する設定温度入力手段を備え、
前記温度変化制御手段は、前記設定温度入力手段より入力された入力信号に基づき、前記温度変化手段の温度変化を制御することを特徴とする請求項1に記載の携帯電話機。
【請求項3】
前記温度変化手段は、前記本体筐体の前記所定部位と前記充電式電池とのいずれにも接する位置に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯電話機。
【請求項4】
筐体内部の温度を測定する内部感温手段と、
筐体外部の温度を測定する外部感温手段とを備え、
前記温度変化制御手段は、前記内部感温手段が測定した筐体内部の温度と前記外部感温手段が測定した筐体外部の温度との差が一定の条件を満たしたときに前記温度変化手段を機能させないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の携帯電話機。
【請求項5】
前記本体筐体の表面の所定領域に水滴が存在することを検知する水滴検知手段を備え、
前記温度変化制御手段は、前記水滴検知手段が前記所定領域に水滴の存在を検知したときに前記温度変化手段を機能させないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の携帯電話機。
【請求項6】
前記温度変化制御手段は、通話動作中であるときには前記温度変化手段の温度変化を行わないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の携帯電話機。
【請求項7】
前記温度変化制御手段は、着信通知が行われている時に前記温度変化手段の温度変化を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の携帯電話機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−259141(P2007−259141A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81612(P2006−81612)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(598098526)アルゼ株式会社 (7,628)
【Fターム(参考)】