摩擦攪拌接合で使用するための拡張式マンドレル
摩擦攪拌接合工具によって管(90)または他の弧状の表面の外側にかけられた圧力に対抗する力を提供するマンドレル(72)であって、マンドレル(72)はくさび(82)を使用することによって拡張可能であり、また、マンドレル(72)は、複数の摩擦攪拌接合ヘッドが弧状の表面上で同時に溶接を実施できるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、摩擦攪拌接合に関する。より詳細には、本発明は、溶接される弧状の表面の内部に対抗する力をもたらし、それによって弧状の表面の外部と接触する摩擦攪拌接合工具が溶接中の加工物に損傷を与えないようにするためにマンドレルが必要とされる、管または他の弧状の物体の摩擦攪拌接合を実施する能力の改善を対象とする。
【背景技術】
【0002】
摩擦攪拌接合(以下では「FSW」)は、金属および金属合金を溶接するために開発されてきた技術である。FSW法は、しばしば、回転する攪拌ピンまたは主軸によって、2つの隣接する加工物の材料を接合部の一方に係合させることを伴う。この主軸と加工物を互いに押し付けるように力がかけられ、主軸と加工物の間の相互作用によって生じる摩擦熱によって、接合部の一方の材料が可塑化される。この主軸は、接合部に沿って横方向に移動され、これが前進するときに材料を可塑化し、前進する主軸の後に残された可塑化された材料が冷えて、溶接部が形成される。
【0003】
図1は、ショルダ12およびショルダから外側に延びるピン14を有するほぼ円筒状の工具10を特徴とする、摩擦攪拌接合に使用されている工具の斜視図である。ピン14は、十分な熱が発生されるまで、加工物16に対して回転され、熱が発生した時点で、工具のピンは可塑化された加工物の材料中に押し込まれる。加工物16は、しばしば、接合線18で突き合わせられる材料の2枚のシートまたはプレートである。ピン14は、接合線18の所で加工物16に押し込まれる。
【0004】
加工物材料16に対するピン14の回転運動によって生じた摩擦熱が、加工物材料を、融点に達することなく軟化させる。工具10が、接合線18に沿って横方向に動かされ、その結果、可塑化された材料がピンの周りを前縁から後縁まで流れるときに溶接部が作り出される。その結果、接合線18での固相接着20が得られ、この接着は、他の溶接に比べて、一般的に、加工物材料16自体と見分けがつかないことがある。
【0005】
ショルダ12が、加工物の表面に接触するとき、その回転が追加の摩擦熱を生み出し、その熱が、挿入されたピン14の周りでより大きな材料の円柱を可塑化することが観察されている。ショルダ12は、工具ピン14によって引き起こされた上向きの金属流を抑制するアップセット力(forging force)をもたらす。
【0006】
FSW中、溶接される領域と工具は、工具が溶接部の所望の長さを横方向に移動するように互いに相対的に移動される。回転するFSW工具が、連続的な熱間加工作用をもたらし、この工具が母材に沿って横方向に動くとき、狭いゾーン内の金属を可塑化しながら、金属をピンの前面からその後縁へと運ぶ。工具が通過するときに液体が生じないので、溶接ゾーンが冷えるとき、通常、流体の凝固は生じない。この結果得られる溶接部は、必ずしもそうとは限らないが、溶接領域内に形成された、欠陥の無い、再結晶した微粒子微細構造であることが多い。
【0007】
以前の特許文書では、それまで機能的に溶接不能であると考えられていた材料で摩擦攪拌接合を実施できることの有益性を教示していた。これらの材料の中には、融接不能な、あるいはそもそも溶接自体が難しいものがある。これらの材料としては、例えば、金属マトリクス複合材料、鋼やステンレス鋼などの鉄合金、および非鉄材料があげられる。やはり摩擦攪拌接合を利用することができるであろう別のクラスの材料は、超合金である。超合金は、より高い融点の青銅またはアルミニウムを含む材料でよく、別の元素が混在していてもよい。超合金のいくつかの例は、一般に537.8℃(1000F)を上回る温度で使用される、ニッケル、鉄−ニッケルおよびコバルト基合金である。超合金中に通常見られる追加の元素としては、それだけに限定されないが、クロム、モリブデン、タングステン、アルミニウム、チタン、ニオブ、タンタル、およびレニウムがあげられる。
【0008】
チタンはまた、摩擦攪拌接合にとって望ましい材料であることにも留意されたい。チタンは、非鉄材料であるが、他の非鉄材料よりも高い融点を有する。
【0009】
以前の特許は、摩擦攪拌接合される材料よりも高い融点を有する材料を用いて形成される、工具が必要であると教示している。いくつかの実施形態では、超砥粒が工具に使用されていた。
【0010】
本発明の諸実施形態は、一般に、これらの機能的に溶接不能な材料、ならびに超合金に関するものであり、これ以後、本明細書全体を通してこれらは「高融点」材料と称される。
【0011】
摩擦攪拌接合(FSW)技術の近年の進歩により、摩擦攪拌接合の固体状態での接合プロセス中に鋼やステンレス鋼などの高融点材料を互いに接合するのに使用することができる工具が得られた。
【0012】
前に説明したように、この技術は、特別な摩擦攪拌接合工具を使用することを要する。図2は、移動を防ぐための多結晶性立方晶窒化ホウ素(PCBN)先端部30、ロッキングカラー32、熱電対止めねじ34ならびにシャンク36を示す。本発明者の従来技術では、この工具の他の設計も示されており、それにはモノリシック工具および他の設計が含まれる。
【0013】
この特別な摩擦攪拌接合工具が使用されるとき、これは様々な材料の摩擦攪拌接合において有効である。この工具設計はまた、PCBNやPCD(多結晶ダイヤモンド)以外の様々な工具の先端材料を使用するときにも効果的である。これらの材料としては、タングステン、レニウム、イリジウム、チタン、モリブデンなどの耐火性物質があげられる。
【0014】
本発明者らは、鋼、ステンレス鋼、ニッケル合金、および他の多くの合金などの高融点の合金と共に使用するための摩擦攪拌接合技術の開発において、先導者であり続けている。この技術は、しばしば、多結晶性立方晶窒化ホウ素工具、液冷式工具ホルダ、温度取得システム、および制御された摩擦攪拌接合プロセスをもたらすための適切な装置を使用することを必要とする。
【0015】
この技術がこれらの材料を接合する優れた方法として確立された後(既存の文献は、この技術の現況を示している)、メガダイアモンド社およびアドバンスト・メタルプロダクツ社(MegaStir Technologiesとして互いに協力関係にある)は、この技術から多大な利益を得るはずである用途について調査を始めた。摩擦攪拌接合(FSW)の最も大きな用途の1つは、配管の接合である。配管の接合は、必要な構成要素を溶接し移動するのに人員および装置が必要になるので、非常にコストがかかる。図3は、典型的な配管の融接に必要とされる人員および装置を示している。管40が、管のセグメント間に融接された接合部を作り出すために次々に溶接ワイヤ層を敷設するのに必要とされる複数の溶接ステーション42(それぞれ白枠)と共に示されている。
【0016】
材料が少なくてすみ、より高い強度特性が得られ、また総配管コストがより安くなり得るという理由で、最新の高強度鋼(AHSS)が、配管に使用されている。AHSSに関する問題は、従来の融接法が使用されていることにある。どの配管接合部も欠陥または割れを含むことが当業界で認められている。これらの欠陥は、高機能の自動融接システムであっても解消することができないので、受け入れられている。AHSSの溶接は、その材料組成が本来的により多くの融接欠陥を引き起こすので、既存の配管の鋼よりもはるかに難しくなる。
【0017】
現在では、FSWは、管セグメントを接合するための実行可能な技術として確立されている。図4に示すような、管セグメントを接合するための摩擦攪拌接合機50が開発された。回転する工具は、摩擦熱を生成するときに接合部にもぐり込む。この工具が加工物の断面にもぐり込むと、工具は管の周りを周方向に移動させられ、その間に接合部が一緒に「攪拌」される。次いで、FSW工具が引っ込められ、機械50が、管に沿って次に摩擦攪拌接合される管接合部まで移動される。
【0018】
図4に示される摩擦攪拌接合機50は、溶接される管の外側に作用する機械を示している。いずれの形式のFSWにも要求される条件の1つは、接合される加工物の後側(工具の反対側)に対抗する力をかけることである。この必要性は、加工物に対抗して工具によって大きな力が加えられることから生じる。摩擦攪拌接合の性質上、加工物が曲がり、あるいは別の形で損傷されるのを防ぐために、なんらかの支持が設けられることが必要となる。図5は、回転するマンドレル60または管を摩擦攪拌接合する際に現在使用されている「管ピッグ」の従来の設計を示している。
【0019】
マンドレル60は、工具が外側の管接合部の周りを周方向にたどるときその管の内側の工具通路をたどるように液圧的に作動される。パイプ接合が完了すると、マンドレル60は、次の管接合部へと移動できるように形状が変更される。このマンドレル60は、工具の反対側に支持をもたらす有効な手段であるが、液圧応用機械および制御機構は高価であり、したがって配管工事もコストがかかる。また、本設計を用いる30.48cm(12インチ)の管径のFSW用のマンドレル60の重量は362.9kg(800lb)である。これは、マンドレルを移動させるのに、追加の装置および支持物が必要であることを意味する。さらなる欠点は、このマンドレルの構成では、2つの管セグメントを整列させるために追加の液圧応用機械およびラムも追加されなければならず、これがマンドレル60の重量にさらに加わることである。この設計は、当分野で有効であるが、配管のFSWの速度をあげ、かつコストを下げることができる、より軽量の、より安価なマンドレル設計があれば、好ましいはずである。
【0020】
したがって、現場でより簡単に配備できる、より安価で、より複雑でない、軽量の管ピッグが必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の1つの目的は、従来技術で使用されるものほど複雑でない拡張式マンドレルを提供することである。
【0022】
別の目的は、従来技術で使用されるものよりもより軽量の、したがって使用しやすい、拡張式マンドレルを提供することである。
【0023】
別の目的は、現場で次の摩擦攪拌接合作業に使用するために再配置されるように、管の長さに沿って容易に移動することができる拡張式マンドレルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、摩擦攪拌接合工具によって管または他の弧状の表面の外側にかかる圧力に対抗する力をもたらすマンドレルであって、くさびを使用することによって拡張可能であり、複数の摩擦攪拌接合ヘッドが弧状の表面上で同時に溶接を実施できるようにするマンドレルである。
【0025】
本発明の上記および他の目的、特徴、利点、および代替の態様は、以下の詳細な説明を添付図面と併せて考慮することにより、当業者には明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、当業者が本発明を実施し使用できるように本発明の様々な要素が説明され論じられている本発明の詳細を参照する。以下の説明は、本発明の原理を例示するものにすぎず、添付の特許請求の範囲を狭めるものと考えるべきではないことを理解されたい。
【0027】
本発明の現時点で好ましい実施形態は、管など弧状の表面での摩擦攪拌接合作業に使用するための拡張式マンドレルである。簡単、軽量、および安価であることが立証されている拡張式マンドレルの概念が開発された。マンドレルの構築は、以下のステップで示される。
【0028】
図6は、本発明のマンドレル、または「管ピッグ」70の外部シェルを形成するマンドレルシェル72の第1の実施形態を示す。マンドレルシェル72は、その長さに沿って開口部または隙間74を有する中空の円筒形状部である。マンドレルシェル72の直径は、マンドレルシェルが、溶接される管セグメント(図示せず)の内側に滑りこみ、このとき隙間74が閉じられるように選択される。
【0029】
図6はまた、マンドレルシェルがリリーフカット部76の位置で反り及び曲がることができるように、マンドレルシェル72の内径78に作られたリリーフカット部76も図示する。マンドレルシェル72が機械加工された後、リップ部80が、図7に示すように、マンドレルシェル72の内径78の隙間74のすぐ隣りの所定の位置に溶接される。
【0030】
リップ部80が所定の位置に溶接された後、マンドレルシェル72は、外部の力がマンドレルシェルにかけられていないときには隙間74が自然に閉位置にくるようにさらに改変される。隙間74のこの閉鎖は、当業者に知られているように、融接ビードをリリーフカット部76の長さに平行に、かつ互いに等角の位置で走らせることによって行われる。言い換えると、隙間74が、凝固する溶接ビードによって生じた残留応力の結果閉じられるようにマンドレルシェルをゆがませるのに十分な溶接ビードがマンドレルシェル72の内部で均等な位置に配設される。したがって、このとき、隙間74が強制的に開かれた場合、マンドレルシェル72は閉位置に跳ね返る。
【0031】
図8において、管ピッグ70の次の構成要素は、必要なときにマンドレルシェル72が拡張させられて、隙間74を開くことができる機構を提供するためのものである。したがって、拡張くさび82が、マンドレルシェル72のリップ部80間に挿入できるように設けられる。拡張くさびが隙間74内に上向きに容易に移動することができ、それによって、拡張くさびがリップ部80に押し付けられることができる限り隙間が広がり続けるように、リップ部80に接触する拡張くさび82の角度が構成されることに留意されたい。
【0032】
拡張くさび82が管の内側に接触したとき、あるいはマンドレルシェル72の外径が管の内径に接してもはや外側に拡張できなくなったとき、マンドレルシェル72の拡張が止まる。
【0033】
図8はまた、プラットフォームまたはプレート84、およびプレート上に配設された複数の液圧シリンダ86を示す。液圧シリンダ86は、プレート84および拡張可能なくさび82を押し付けて、拡張可能なくさびを隙間74内へと上向きに移動させる。液圧シリンダ86の底部もまた、マンドレルシェル72の内側に嵌まるように改変できることが想定される。しかし、マンドレルシェルは拡張および収縮するように設計されているので、その場合は、液圧シリンダ86の底部が形状の変化を補償できることが必要になるはずである。
【0034】
単一の液圧シリンダ86が、図に示す複数の液圧シリンダの代わりに使用されてよいことを留意されたい。さらに、マンドレルシェル72、リップ部80、拡張可能なくさび82、およびプレート84の長さは全て、所要の用途に応じて改変されてよい。したがって、管の内部の水平部分の空間または長さが制限される用途では、長さがより小さいシステムが有用になり得る。
【0035】
同様に、管を単一の管ピッグ70によって支持しながら複数の工具を同時に使用して管上で摩擦攪拌接合を実施することができるように、上記で列挙された構成要素の長さが拡張されてよい。
【0036】
図9および10は、隙間が最大の広さであるときにその隙間74が拡張くさびを収容するのに十分な大きさである場合、どのように、拡張くさび82が、マンドレルシェル72のリップ部80から外側へ滑るように配置されるかを示す。図9は、液圧シリンダ86の断面も示す本発明の断面図である。図10は、図9に示した全ての要素を示す断面図であるが、管90が追加されている。この図はまた、摩擦攪拌接合された管の間のシームである接合部96も示す。
【0037】
図10は、リップ部80間に完全に挿入された拡張くさび82を示す。液圧シリンダ86から液圧が解除され、マンドレルシェル72が引っ込み、マンドレルシェルがはねて閉じる。このときマンドレルシェル72は、管90内の異なる位置へと移動することができる。マンドレルシェル72は、次の管接合部に移動され、そこで拡張される。液圧シリンダ86に至る液圧ホースおよび取付具は図示されていない。しかし、これらのホースおよび取付具は、液圧シリンダ86に結合されるようにマンドレルシェル72の端部に配設される。
【0038】
管ピッグ70は、管90の摩擦攪拌接合に必要な対抗力をもたらすだけでなく、管90のセグメントをさらに整列させるように働くこともできることに留意されたい。
【0039】
液圧シリンダ86を支持するプレート84がマンドレルシェル72に結合され、したがって、プレートを持ち上げる代わりに、拡張くさび82を、隙間74から引っ込めることができることにも留意されたい。
【0040】
以下は、上記のマンドレルシェル72設計に加えることができ、管ピッグ70の動作を向上させることができる変形例である。例えば、穴を、マンドレルシェル72を貫通して機械切削することができ、その結果、マンドレルシェルが凹んだときにこの穴を通って空気が流れることができるようになる。これによって、マンドレルシェル72の底部に「空気軸受け」を作り出すことができ、その結果、一人の作業者で、摩擦攪拌接合される次の管接合部へと管ピッグ70を容易に滑らすことができるようになる。
【0041】
本発明の別の態様は、液圧シリンダ86に結合された液圧ホースに対してすばやい取外しが使用でき、その結果、管ピッグ70が次の管接合部に再配置されたとき、このホースがすばやく取り外され再結合されることができるようになることにある。
【0042】
本発明の別の態様は、様々な材料が、マンドレルシェル72を構築するために使用できることにある。ばね鋼は、常にマンドレルシェル72を緩和された閉位置に維持するために使用することができる。材料は、必ず弾性域内にあらねばならず、容易に応力が緩和されてはならない。このようにすると、マンドレルシェル72は、常にその形状を保つことになる。マンドレルシェルが緩和状態にあるときにその形状が崩れ、外側にはね始め、そのため隙間74が見えるようになる場合、マンドレルシェル72を閉じさせる残留応力を復活させるために、より多くの溶接ビードを内径の長さに沿って走らせることができる。
【0043】
本発明の別の態様は、管セグメントの様々な公差を補償するために、拡張くさびを様々なサイズで作ることができることである。
【0044】
本発明の別の態様は、被覆(TiN、TiCNなど)が、マンドレルシェル72の外面に使用され、それによって摩擦攪拌接合中に管接合部がマンドレルシェルに拡散溶接されることを防ぐことができることである。
【0045】
本発明の別の態様は、本発明がどのような直径の管にも使用できることである。
【0046】
液圧ホースを管の次の部分に通すロッドが取り付けられる(図示せず)ことに留意されたい。
【0047】
本発明の別の態様では、緩和位置にあるときにマンドレルシェル72を引っ張って閉じる手段を得る必要がある。図11に示すように、拡張くさび82は、ポストまたはピン92、およびそれらの間に配設されたケーブル94を含むことができる。ケーブル94は、マンドレルシェル72の両方のリップ部80上でピン92の周りを走っている。拡張くさび82が引っ込められるとき、ケーブル94が2つのリップ部80を引っ張り、それによってこれらが互いにくっついて、隙間74を閉じるようにする働きをする。ピン92とケーブル94のこのシステムは、必要ならマンドレルシェル72の両端に配設できることが予想される。
【0048】
上述した構成は、本発明の原理の応用例を例示するものにすぎないことを理解されよう。多数の改変および代替構成が、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって考案することができる。添付の特許請求の範囲は、このような改変および構成を含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】従来技術で教示された、摩擦攪拌接合用の工具の斜視図である。
【図2】取外し可能な多結晶性立方晶窒化ホウ素(PCBN)先端部、ロッキングカラーおよびシャンクの斜視図である。
【図3】従来技術において管のセグメント間に融接された接合部を作り出すために次々に溶接ワイヤ層を敷設するのに必要とされる複数の溶接ステーションの斜視図である。
【図4】管セグメントを接合することができる摩擦攪拌接合機の斜視図である。
【図5】管を摩擦攪拌接合する際に現在使用されている回転式マンドレル「管ピッグ」の従来設計の斜視図である。
【図6】マンドレルシェルの斜視図である。
【図7】隙間を拡張するためのリップ部が取り付けられたマンドレルシェルの斜視図である。
【図8】マンドレルシェル内の隙間を拡張する手段を示すマンドレルシェルの斜視図である。
【図9】マンドレルシェルおよびマンドレルシェル内の隙間を拡張する手段の断面の斜視図である。
【図10】マンドレルシェルおよび管内に配設されたマンドレルシェル内の隙間を拡張するための手段の断面の斜視図である。
【図11】拡張くさびが引っ込められたときに隙間を閉じるためのケーブルとピンのシステムを示す、マンドレルシェルの端面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、摩擦攪拌接合に関する。より詳細には、本発明は、溶接される弧状の表面の内部に対抗する力をもたらし、それによって弧状の表面の外部と接触する摩擦攪拌接合工具が溶接中の加工物に損傷を与えないようにするためにマンドレルが必要とされる、管または他の弧状の物体の摩擦攪拌接合を実施する能力の改善を対象とする。
【背景技術】
【0002】
摩擦攪拌接合(以下では「FSW」)は、金属および金属合金を溶接するために開発されてきた技術である。FSW法は、しばしば、回転する攪拌ピンまたは主軸によって、2つの隣接する加工物の材料を接合部の一方に係合させることを伴う。この主軸と加工物を互いに押し付けるように力がかけられ、主軸と加工物の間の相互作用によって生じる摩擦熱によって、接合部の一方の材料が可塑化される。この主軸は、接合部に沿って横方向に移動され、これが前進するときに材料を可塑化し、前進する主軸の後に残された可塑化された材料が冷えて、溶接部が形成される。
【0003】
図1は、ショルダ12およびショルダから外側に延びるピン14を有するほぼ円筒状の工具10を特徴とする、摩擦攪拌接合に使用されている工具の斜視図である。ピン14は、十分な熱が発生されるまで、加工物16に対して回転され、熱が発生した時点で、工具のピンは可塑化された加工物の材料中に押し込まれる。加工物16は、しばしば、接合線18で突き合わせられる材料の2枚のシートまたはプレートである。ピン14は、接合線18の所で加工物16に押し込まれる。
【0004】
加工物材料16に対するピン14の回転運動によって生じた摩擦熱が、加工物材料を、融点に達することなく軟化させる。工具10が、接合線18に沿って横方向に動かされ、その結果、可塑化された材料がピンの周りを前縁から後縁まで流れるときに溶接部が作り出される。その結果、接合線18での固相接着20が得られ、この接着は、他の溶接に比べて、一般的に、加工物材料16自体と見分けがつかないことがある。
【0005】
ショルダ12が、加工物の表面に接触するとき、その回転が追加の摩擦熱を生み出し、その熱が、挿入されたピン14の周りでより大きな材料の円柱を可塑化することが観察されている。ショルダ12は、工具ピン14によって引き起こされた上向きの金属流を抑制するアップセット力(forging force)をもたらす。
【0006】
FSW中、溶接される領域と工具は、工具が溶接部の所望の長さを横方向に移動するように互いに相対的に移動される。回転するFSW工具が、連続的な熱間加工作用をもたらし、この工具が母材に沿って横方向に動くとき、狭いゾーン内の金属を可塑化しながら、金属をピンの前面からその後縁へと運ぶ。工具が通過するときに液体が生じないので、溶接ゾーンが冷えるとき、通常、流体の凝固は生じない。この結果得られる溶接部は、必ずしもそうとは限らないが、溶接領域内に形成された、欠陥の無い、再結晶した微粒子微細構造であることが多い。
【0007】
以前の特許文書では、それまで機能的に溶接不能であると考えられていた材料で摩擦攪拌接合を実施できることの有益性を教示していた。これらの材料の中には、融接不能な、あるいはそもそも溶接自体が難しいものがある。これらの材料としては、例えば、金属マトリクス複合材料、鋼やステンレス鋼などの鉄合金、および非鉄材料があげられる。やはり摩擦攪拌接合を利用することができるであろう別のクラスの材料は、超合金である。超合金は、より高い融点の青銅またはアルミニウムを含む材料でよく、別の元素が混在していてもよい。超合金のいくつかの例は、一般に537.8℃(1000F)を上回る温度で使用される、ニッケル、鉄−ニッケルおよびコバルト基合金である。超合金中に通常見られる追加の元素としては、それだけに限定されないが、クロム、モリブデン、タングステン、アルミニウム、チタン、ニオブ、タンタル、およびレニウムがあげられる。
【0008】
チタンはまた、摩擦攪拌接合にとって望ましい材料であることにも留意されたい。チタンは、非鉄材料であるが、他の非鉄材料よりも高い融点を有する。
【0009】
以前の特許は、摩擦攪拌接合される材料よりも高い融点を有する材料を用いて形成される、工具が必要であると教示している。いくつかの実施形態では、超砥粒が工具に使用されていた。
【0010】
本発明の諸実施形態は、一般に、これらの機能的に溶接不能な材料、ならびに超合金に関するものであり、これ以後、本明細書全体を通してこれらは「高融点」材料と称される。
【0011】
摩擦攪拌接合(FSW)技術の近年の進歩により、摩擦攪拌接合の固体状態での接合プロセス中に鋼やステンレス鋼などの高融点材料を互いに接合するのに使用することができる工具が得られた。
【0012】
前に説明したように、この技術は、特別な摩擦攪拌接合工具を使用することを要する。図2は、移動を防ぐための多結晶性立方晶窒化ホウ素(PCBN)先端部30、ロッキングカラー32、熱電対止めねじ34ならびにシャンク36を示す。本発明者の従来技術では、この工具の他の設計も示されており、それにはモノリシック工具および他の設計が含まれる。
【0013】
この特別な摩擦攪拌接合工具が使用されるとき、これは様々な材料の摩擦攪拌接合において有効である。この工具設計はまた、PCBNやPCD(多結晶ダイヤモンド)以外の様々な工具の先端材料を使用するときにも効果的である。これらの材料としては、タングステン、レニウム、イリジウム、チタン、モリブデンなどの耐火性物質があげられる。
【0014】
本発明者らは、鋼、ステンレス鋼、ニッケル合金、および他の多くの合金などの高融点の合金と共に使用するための摩擦攪拌接合技術の開発において、先導者であり続けている。この技術は、しばしば、多結晶性立方晶窒化ホウ素工具、液冷式工具ホルダ、温度取得システム、および制御された摩擦攪拌接合プロセスをもたらすための適切な装置を使用することを必要とする。
【0015】
この技術がこれらの材料を接合する優れた方法として確立された後(既存の文献は、この技術の現況を示している)、メガダイアモンド社およびアドバンスト・メタルプロダクツ社(MegaStir Technologiesとして互いに協力関係にある)は、この技術から多大な利益を得るはずである用途について調査を始めた。摩擦攪拌接合(FSW)の最も大きな用途の1つは、配管の接合である。配管の接合は、必要な構成要素を溶接し移動するのに人員および装置が必要になるので、非常にコストがかかる。図3は、典型的な配管の融接に必要とされる人員および装置を示している。管40が、管のセグメント間に融接された接合部を作り出すために次々に溶接ワイヤ層を敷設するのに必要とされる複数の溶接ステーション42(それぞれ白枠)と共に示されている。
【0016】
材料が少なくてすみ、より高い強度特性が得られ、また総配管コストがより安くなり得るという理由で、最新の高強度鋼(AHSS)が、配管に使用されている。AHSSに関する問題は、従来の融接法が使用されていることにある。どの配管接合部も欠陥または割れを含むことが当業界で認められている。これらの欠陥は、高機能の自動融接システムであっても解消することができないので、受け入れられている。AHSSの溶接は、その材料組成が本来的により多くの融接欠陥を引き起こすので、既存の配管の鋼よりもはるかに難しくなる。
【0017】
現在では、FSWは、管セグメントを接合するための実行可能な技術として確立されている。図4に示すような、管セグメントを接合するための摩擦攪拌接合機50が開発された。回転する工具は、摩擦熱を生成するときに接合部にもぐり込む。この工具が加工物の断面にもぐり込むと、工具は管の周りを周方向に移動させられ、その間に接合部が一緒に「攪拌」される。次いで、FSW工具が引っ込められ、機械50が、管に沿って次に摩擦攪拌接合される管接合部まで移動される。
【0018】
図4に示される摩擦攪拌接合機50は、溶接される管の外側に作用する機械を示している。いずれの形式のFSWにも要求される条件の1つは、接合される加工物の後側(工具の反対側)に対抗する力をかけることである。この必要性は、加工物に対抗して工具によって大きな力が加えられることから生じる。摩擦攪拌接合の性質上、加工物が曲がり、あるいは別の形で損傷されるのを防ぐために、なんらかの支持が設けられることが必要となる。図5は、回転するマンドレル60または管を摩擦攪拌接合する際に現在使用されている「管ピッグ」の従来の設計を示している。
【0019】
マンドレル60は、工具が外側の管接合部の周りを周方向にたどるときその管の内側の工具通路をたどるように液圧的に作動される。パイプ接合が完了すると、マンドレル60は、次の管接合部へと移動できるように形状が変更される。このマンドレル60は、工具の反対側に支持をもたらす有効な手段であるが、液圧応用機械および制御機構は高価であり、したがって配管工事もコストがかかる。また、本設計を用いる30.48cm(12インチ)の管径のFSW用のマンドレル60の重量は362.9kg(800lb)である。これは、マンドレルを移動させるのに、追加の装置および支持物が必要であることを意味する。さらなる欠点は、このマンドレルの構成では、2つの管セグメントを整列させるために追加の液圧応用機械およびラムも追加されなければならず、これがマンドレル60の重量にさらに加わることである。この設計は、当分野で有効であるが、配管のFSWの速度をあげ、かつコストを下げることができる、より軽量の、より安価なマンドレル設計があれば、好ましいはずである。
【0020】
したがって、現場でより簡単に配備できる、より安価で、より複雑でない、軽量の管ピッグが必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の1つの目的は、従来技術で使用されるものほど複雑でない拡張式マンドレルを提供することである。
【0022】
別の目的は、従来技術で使用されるものよりもより軽量の、したがって使用しやすい、拡張式マンドレルを提供することである。
【0023】
別の目的は、現場で次の摩擦攪拌接合作業に使用するために再配置されるように、管の長さに沿って容易に移動することができる拡張式マンドレルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、摩擦攪拌接合工具によって管または他の弧状の表面の外側にかかる圧力に対抗する力をもたらすマンドレルであって、くさびを使用することによって拡張可能であり、複数の摩擦攪拌接合ヘッドが弧状の表面上で同時に溶接を実施できるようにするマンドレルである。
【0025】
本発明の上記および他の目的、特徴、利点、および代替の態様は、以下の詳細な説明を添付図面と併せて考慮することにより、当業者には明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、当業者が本発明を実施し使用できるように本発明の様々な要素が説明され論じられている本発明の詳細を参照する。以下の説明は、本発明の原理を例示するものにすぎず、添付の特許請求の範囲を狭めるものと考えるべきではないことを理解されたい。
【0027】
本発明の現時点で好ましい実施形態は、管など弧状の表面での摩擦攪拌接合作業に使用するための拡張式マンドレルである。簡単、軽量、および安価であることが立証されている拡張式マンドレルの概念が開発された。マンドレルの構築は、以下のステップで示される。
【0028】
図6は、本発明のマンドレル、または「管ピッグ」70の外部シェルを形成するマンドレルシェル72の第1の実施形態を示す。マンドレルシェル72は、その長さに沿って開口部または隙間74を有する中空の円筒形状部である。マンドレルシェル72の直径は、マンドレルシェルが、溶接される管セグメント(図示せず)の内側に滑りこみ、このとき隙間74が閉じられるように選択される。
【0029】
図6はまた、マンドレルシェルがリリーフカット部76の位置で反り及び曲がることができるように、マンドレルシェル72の内径78に作られたリリーフカット部76も図示する。マンドレルシェル72が機械加工された後、リップ部80が、図7に示すように、マンドレルシェル72の内径78の隙間74のすぐ隣りの所定の位置に溶接される。
【0030】
リップ部80が所定の位置に溶接された後、マンドレルシェル72は、外部の力がマンドレルシェルにかけられていないときには隙間74が自然に閉位置にくるようにさらに改変される。隙間74のこの閉鎖は、当業者に知られているように、融接ビードをリリーフカット部76の長さに平行に、かつ互いに等角の位置で走らせることによって行われる。言い換えると、隙間74が、凝固する溶接ビードによって生じた残留応力の結果閉じられるようにマンドレルシェルをゆがませるのに十分な溶接ビードがマンドレルシェル72の内部で均等な位置に配設される。したがって、このとき、隙間74が強制的に開かれた場合、マンドレルシェル72は閉位置に跳ね返る。
【0031】
図8において、管ピッグ70の次の構成要素は、必要なときにマンドレルシェル72が拡張させられて、隙間74を開くことができる機構を提供するためのものである。したがって、拡張くさび82が、マンドレルシェル72のリップ部80間に挿入できるように設けられる。拡張くさびが隙間74内に上向きに容易に移動することができ、それによって、拡張くさびがリップ部80に押し付けられることができる限り隙間が広がり続けるように、リップ部80に接触する拡張くさび82の角度が構成されることに留意されたい。
【0032】
拡張くさび82が管の内側に接触したとき、あるいはマンドレルシェル72の外径が管の内径に接してもはや外側に拡張できなくなったとき、マンドレルシェル72の拡張が止まる。
【0033】
図8はまた、プラットフォームまたはプレート84、およびプレート上に配設された複数の液圧シリンダ86を示す。液圧シリンダ86は、プレート84および拡張可能なくさび82を押し付けて、拡張可能なくさびを隙間74内へと上向きに移動させる。液圧シリンダ86の底部もまた、マンドレルシェル72の内側に嵌まるように改変できることが想定される。しかし、マンドレルシェルは拡張および収縮するように設計されているので、その場合は、液圧シリンダ86の底部が形状の変化を補償できることが必要になるはずである。
【0034】
単一の液圧シリンダ86が、図に示す複数の液圧シリンダの代わりに使用されてよいことを留意されたい。さらに、マンドレルシェル72、リップ部80、拡張可能なくさび82、およびプレート84の長さは全て、所要の用途に応じて改変されてよい。したがって、管の内部の水平部分の空間または長さが制限される用途では、長さがより小さいシステムが有用になり得る。
【0035】
同様に、管を単一の管ピッグ70によって支持しながら複数の工具を同時に使用して管上で摩擦攪拌接合を実施することができるように、上記で列挙された構成要素の長さが拡張されてよい。
【0036】
図9および10は、隙間が最大の広さであるときにその隙間74が拡張くさびを収容するのに十分な大きさである場合、どのように、拡張くさび82が、マンドレルシェル72のリップ部80から外側へ滑るように配置されるかを示す。図9は、液圧シリンダ86の断面も示す本発明の断面図である。図10は、図9に示した全ての要素を示す断面図であるが、管90が追加されている。この図はまた、摩擦攪拌接合された管の間のシームである接合部96も示す。
【0037】
図10は、リップ部80間に完全に挿入された拡張くさび82を示す。液圧シリンダ86から液圧が解除され、マンドレルシェル72が引っ込み、マンドレルシェルがはねて閉じる。このときマンドレルシェル72は、管90内の異なる位置へと移動することができる。マンドレルシェル72は、次の管接合部に移動され、そこで拡張される。液圧シリンダ86に至る液圧ホースおよび取付具は図示されていない。しかし、これらのホースおよび取付具は、液圧シリンダ86に結合されるようにマンドレルシェル72の端部に配設される。
【0038】
管ピッグ70は、管90の摩擦攪拌接合に必要な対抗力をもたらすだけでなく、管90のセグメントをさらに整列させるように働くこともできることに留意されたい。
【0039】
液圧シリンダ86を支持するプレート84がマンドレルシェル72に結合され、したがって、プレートを持ち上げる代わりに、拡張くさび82を、隙間74から引っ込めることができることにも留意されたい。
【0040】
以下は、上記のマンドレルシェル72設計に加えることができ、管ピッグ70の動作を向上させることができる変形例である。例えば、穴を、マンドレルシェル72を貫通して機械切削することができ、その結果、マンドレルシェルが凹んだときにこの穴を通って空気が流れることができるようになる。これによって、マンドレルシェル72の底部に「空気軸受け」を作り出すことができ、その結果、一人の作業者で、摩擦攪拌接合される次の管接合部へと管ピッグ70を容易に滑らすことができるようになる。
【0041】
本発明の別の態様は、液圧シリンダ86に結合された液圧ホースに対してすばやい取外しが使用でき、その結果、管ピッグ70が次の管接合部に再配置されたとき、このホースがすばやく取り外され再結合されることができるようになることにある。
【0042】
本発明の別の態様は、様々な材料が、マンドレルシェル72を構築するために使用できることにある。ばね鋼は、常にマンドレルシェル72を緩和された閉位置に維持するために使用することができる。材料は、必ず弾性域内にあらねばならず、容易に応力が緩和されてはならない。このようにすると、マンドレルシェル72は、常にその形状を保つことになる。マンドレルシェルが緩和状態にあるときにその形状が崩れ、外側にはね始め、そのため隙間74が見えるようになる場合、マンドレルシェル72を閉じさせる残留応力を復活させるために、より多くの溶接ビードを内径の長さに沿って走らせることができる。
【0043】
本発明の別の態様は、管セグメントの様々な公差を補償するために、拡張くさびを様々なサイズで作ることができることである。
【0044】
本発明の別の態様は、被覆(TiN、TiCNなど)が、マンドレルシェル72の外面に使用され、それによって摩擦攪拌接合中に管接合部がマンドレルシェルに拡散溶接されることを防ぐことができることである。
【0045】
本発明の別の態様は、本発明がどのような直径の管にも使用できることである。
【0046】
液圧ホースを管の次の部分に通すロッドが取り付けられる(図示せず)ことに留意されたい。
【0047】
本発明の別の態様では、緩和位置にあるときにマンドレルシェル72を引っ張って閉じる手段を得る必要がある。図11に示すように、拡張くさび82は、ポストまたはピン92、およびそれらの間に配設されたケーブル94を含むことができる。ケーブル94は、マンドレルシェル72の両方のリップ部80上でピン92の周りを走っている。拡張くさび82が引っ込められるとき、ケーブル94が2つのリップ部80を引っ張り、それによってこれらが互いにくっついて、隙間74を閉じるようにする働きをする。ピン92とケーブル94のこのシステムは、必要ならマンドレルシェル72の両端に配設できることが予想される。
【0048】
上述した構成は、本発明の原理の応用例を例示するものにすぎないことを理解されよう。多数の改変および代替構成が、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって考案することができる。添付の特許請求の範囲は、このような改変および構成を含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】従来技術で教示された、摩擦攪拌接合用の工具の斜視図である。
【図2】取外し可能な多結晶性立方晶窒化ホウ素(PCBN)先端部、ロッキングカラーおよびシャンクの斜視図である。
【図3】従来技術において管のセグメント間に融接された接合部を作り出すために次々に溶接ワイヤ層を敷設するのに必要とされる複数の溶接ステーションの斜視図である。
【図4】管セグメントを接合することができる摩擦攪拌接合機の斜視図である。
【図5】管を摩擦攪拌接合する際に現在使用されている回転式マンドレル「管ピッグ」の従来設計の斜視図である。
【図6】マンドレルシェルの斜視図である。
【図7】隙間を拡張するためのリップ部が取り付けられたマンドレルシェルの斜視図である。
【図8】マンドレルシェル内の隙間を拡張する手段を示すマンドレルシェルの斜視図である。
【図9】マンドレルシェルおよびマンドレルシェル内の隙間を拡張する手段の断面の斜視図である。
【図10】マンドレルシェルおよび管内に配設されたマンドレルシェル内の隙間を拡張するための手段の断面の斜視図である。
【図11】拡張くさびが引っ込められたときに隙間を閉じるためのケーブルとピンのシステムを示す、マンドレルシェルの端面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の摩擦攪拌接合に使用するためのマンドレルであって、
前記管の内径よりも小さい外径を有する中空の円筒形状部として形成され、前記円筒形状部が頂端部および底端部に垂直な隙間をその中に有するマンドレルシェルと、
前記隙間が所望の幅に広がるように前記マンドレルシェルを拡張する手段と
を備えるマンドレル。
【請求項2】
前記マンドレルシェルを拡張する前記手段が、
少なくとも1つの液圧作動装置と、
前記少なくとも1つの液圧作動装置に結合され、前記少なくとも1つの液圧作動装置が作動されるとき前記隙間を広げるように配設された拡張くさびと
をさらに備える、請求項1に記載のマンドレル。
【請求項3】
前記少なくとも1つの液圧作動装置が液圧シリンダである、請求項2に記載のマンドレル。
【請求項4】
前記少なくとも1つの液圧作動装置がさらに、前記少なくとも1つの液圧作動装置が載ることができるプラットフォームを備える、請求項2に記載のマンドレル。
【請求項5】
前記プラットフォームがさらに、そこを貫通して配設された複数の穴を有する請求項4に記載のマンドレル。
【請求項6】
前記マンドレルがさらに、前記マンドレルの前記内径にある複数のリリーフカット部を有し、前記リリーフカット部が、前記マンドレルの前記頂端部および底端部に垂直である、請求項2に記載のマンドレル。
【請求項7】
前記マンドレルがさらに2つのリップ部を有し、該リップ部はそれぞれ、前記隙間に隣接して該隙間のいずれかの側に配設されている、請求項2に記載のマンドレル。
【請求項8】
前記リップ部のそれぞれが、互いにおよび前記隙間から離れるように先細になっていく、請求項7に記載のマンドレル。
【請求項9】
前記マンドレルシェル内の前記隙間が、前記マンドレルシェルが静止しているときは閉じられている、請求項2に記載のマンドレル。
【請求項10】
前記マンドレルシェルが、前記マンドレルシェルを前記隙間で閉じさせる残留応力を有する、請求項9に記載のマンドレル。
【請求項11】
前記残留応力が、前記隙間と平行で、前記マンドレルシェル内で互いに等角に離間された複数の融接ビードを配設することによって生み出される、請求項10に記載のマンドレル。
【請求項12】
前記拡張くさびのサイズは、より大きい拡張くさびが使用されるときは前記マンドレルシェルをより大きく拡張させ、より小さい拡張くさびが使用されるときは前記マンドレルシェルをより小さい度合いで拡張させ、それによって同じマンドレルシェルを用いて異なる直径の管に対応できるように、改変可能である、請求項2に記載のマンドレル。
【請求項13】
前記マンドレルシェルの外径が、摩擦攪拌接合中に管が前記マンドレルシェルに拡散溶接されるのを防ぐための材料で被覆される、請求項2に記載のマンドレル。
【請求項14】
前記マンドレルがさらに、前記隙間の端部を前記拡張可能なくさびに結合させる手段を有し、前記拡張可能なくさびを前記隙間から引っ込めることによって、前記隙間の両端部が互いに近づく、請求項7に記載のマンドレル。
【請求項15】
前記マンドレルがさらに、
前記リップ部の第1の端部内に配設された第1および第2のポストと、
前記拡張可能なくさびの第1の端部内に配設された第3および第4のポストと、
前記第3および第4のポストに結合され、前記第1および第2のポストの周りに配設されたケーブルと
を有し、前記拡張可能なくさびを前記隙間から引っ込めることによって前記ケーブルが前記隙間を閉じる、請求項7に記載のマンドレル。
【請求項16】
摩擦攪拌接合される管の内部にマンドレルを提供するための方法であって、
(1)前記管の内径よりも小さい外径を有する中空の円筒形状部として形成されるマンドレルシェルであって前記円筒形状部が頂端部および底端部に垂直な隙間をその中に有するマンドレルシェルを提供するとともに、前記隙間が所望の幅に広げられるように前記マンドレルシェルを拡張する手段を提供するステップと、
(2)前記マンドレルシェルの外径が前記管の内径に接触するように前記マンドレルシェルを拡張するステップと
を含む方法。
【請求項17】
前記方法がさらに、
(1)少なくとも1つの液圧作動装置を提供するとともに、前記少なくとも1つの液圧作動装置に結合された拡張くさびを提供するステップと、
(2)前記少なくとも1つの液圧作動装置が作動されるとき前記隙間を広げるステップとを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記方法がさらに、前記マンドレルシェルに力がかけられていないとき、前記マンドレルシェルを前記隙間で閉じさせる残留応力をマンドレルシェル内に生じさせるステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法がさらに、前記拡張可能なくさびを前記隙間から引っ込め、それによって前記隙間の両端を互いに近づけるステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法がさらに、前記マンドレルシェルを拡張および収縮させることができるように前記マンドレルシェル内に複数のカット部を作り出すステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項1】
管の摩擦攪拌接合に使用するためのマンドレルであって、
前記管の内径よりも小さい外径を有する中空の円筒形状部として形成され、前記円筒形状部が頂端部および底端部に垂直な隙間をその中に有するマンドレルシェルと、
前記隙間が所望の幅に広がるように前記マンドレルシェルを拡張する手段と
を備えるマンドレル。
【請求項2】
前記マンドレルシェルを拡張する前記手段が、
少なくとも1つの液圧作動装置と、
前記少なくとも1つの液圧作動装置に結合され、前記少なくとも1つの液圧作動装置が作動されるとき前記隙間を広げるように配設された拡張くさびと
をさらに備える、請求項1に記載のマンドレル。
【請求項3】
前記少なくとも1つの液圧作動装置が液圧シリンダである、請求項2に記載のマンドレル。
【請求項4】
前記少なくとも1つの液圧作動装置がさらに、前記少なくとも1つの液圧作動装置が載ることができるプラットフォームを備える、請求項2に記載のマンドレル。
【請求項5】
前記プラットフォームがさらに、そこを貫通して配設された複数の穴を有する請求項4に記載のマンドレル。
【請求項6】
前記マンドレルがさらに、前記マンドレルの前記内径にある複数のリリーフカット部を有し、前記リリーフカット部が、前記マンドレルの前記頂端部および底端部に垂直である、請求項2に記載のマンドレル。
【請求項7】
前記マンドレルがさらに2つのリップ部を有し、該リップ部はそれぞれ、前記隙間に隣接して該隙間のいずれかの側に配設されている、請求項2に記載のマンドレル。
【請求項8】
前記リップ部のそれぞれが、互いにおよび前記隙間から離れるように先細になっていく、請求項7に記載のマンドレル。
【請求項9】
前記マンドレルシェル内の前記隙間が、前記マンドレルシェルが静止しているときは閉じられている、請求項2に記載のマンドレル。
【請求項10】
前記マンドレルシェルが、前記マンドレルシェルを前記隙間で閉じさせる残留応力を有する、請求項9に記載のマンドレル。
【請求項11】
前記残留応力が、前記隙間と平行で、前記マンドレルシェル内で互いに等角に離間された複数の融接ビードを配設することによって生み出される、請求項10に記載のマンドレル。
【請求項12】
前記拡張くさびのサイズは、より大きい拡張くさびが使用されるときは前記マンドレルシェルをより大きく拡張させ、より小さい拡張くさびが使用されるときは前記マンドレルシェルをより小さい度合いで拡張させ、それによって同じマンドレルシェルを用いて異なる直径の管に対応できるように、改変可能である、請求項2に記載のマンドレル。
【請求項13】
前記マンドレルシェルの外径が、摩擦攪拌接合中に管が前記マンドレルシェルに拡散溶接されるのを防ぐための材料で被覆される、請求項2に記載のマンドレル。
【請求項14】
前記マンドレルがさらに、前記隙間の端部を前記拡張可能なくさびに結合させる手段を有し、前記拡張可能なくさびを前記隙間から引っ込めることによって、前記隙間の両端部が互いに近づく、請求項7に記載のマンドレル。
【請求項15】
前記マンドレルがさらに、
前記リップ部の第1の端部内に配設された第1および第2のポストと、
前記拡張可能なくさびの第1の端部内に配設された第3および第4のポストと、
前記第3および第4のポストに結合され、前記第1および第2のポストの周りに配設されたケーブルと
を有し、前記拡張可能なくさびを前記隙間から引っ込めることによって前記ケーブルが前記隙間を閉じる、請求項7に記載のマンドレル。
【請求項16】
摩擦攪拌接合される管の内部にマンドレルを提供するための方法であって、
(1)前記管の内径よりも小さい外径を有する中空の円筒形状部として形成されるマンドレルシェルであって前記円筒形状部が頂端部および底端部に垂直な隙間をその中に有するマンドレルシェルを提供するとともに、前記隙間が所望の幅に広げられるように前記マンドレルシェルを拡張する手段を提供するステップと、
(2)前記マンドレルシェルの外径が前記管の内径に接触するように前記マンドレルシェルを拡張するステップと
を含む方法。
【請求項17】
前記方法がさらに、
(1)少なくとも1つの液圧作動装置を提供するとともに、前記少なくとも1つの液圧作動装置に結合された拡張くさびを提供するステップと、
(2)前記少なくとも1つの液圧作動装置が作動されるとき前記隙間を広げるステップとを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記方法がさらに、前記マンドレルシェルに力がかけられていないとき、前記マンドレルシェルを前記隙間で閉じさせる残留応力をマンドレルシェル内に生じさせるステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法がさらに、前記拡張可能なくさびを前記隙間から引っ込め、それによって前記隙間の両端を互いに近づけるステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法がさらに、前記マンドレルシェルを拡張および収縮させることができるように前記マンドレルシェル内に複数のカット部を作り出すステップを含む、請求項16に記載の方法。
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【公表番号】特表2008−515644(P2008−515644A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535788(P2007−535788)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2005/035901
【国際公開番号】WO2006/044215
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(506039715)エスアイアイ・メガダイアモンド・インコーポレーテッド (6)
【出願人】(505289650)アドバンスト・メタル・プロダクツ・インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2005/035901
【国際公開番号】WO2006/044215
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(506039715)エスアイアイ・メガダイアモンド・インコーポレーテッド (6)
【出願人】(505289650)アドバンスト・メタル・プロダクツ・インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]