説明

撚線機

【課題】4度撚りを行う撚線機のコンパクト化を図る。
【解決手段】第1乃至第4のターンローラB1〜B4に近接して第1乃至第4の撚線ガイドD1〜D4が設けられ、各撚線ガイドD1〜D4は各ターンローラB1〜B4と一体となって中心線Mの周りに回転する。第1,第2のターンローラB1,B2及び第1,第2の撚線ガイドD1,D2は同一方向に回転し、第3,第4のターンローラB3,B4及び第3,第4の撚線ガイドD3,D4は第1のターンローラB1等とは逆方向に回転する。撚り口ダイスAと撚線巻取部Cを結ぶ中心線M上に4個のターンローラB1〜B4を上記の位置関係で配置することで撚線を引き回す経路を短くした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、複数本の素線を撚るための撚線機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数本の素線を撚りながら巻き取る撚線機が知られている。この撚線機は、複数本の素線が供給される供給端から撚線を巻き取る巻取装置までの経路(以下、「撚線経路」という。)上に、複数本の素線をガイドするとともに、撚りをかけるためのガイドローラが複数個設けられ、これらのガイドローラを撚線経路の回りに回転させることによって各ガイドローラで撚線経路上を移動する複数の素線に撚りかける構成を基本としている。そして、従来、撚線経路上に4個のガイドローラを設け、複数の素線が供給端から巻取装置に巻き取られるまでの間に各ガイドローラで4回撚りをかけることができる4度撚線機が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−266736号公報
【0004】
図14は、上記特許文献1に記載の撚線機を示す概略構成図で、撚線機を上から見た図である。この撚線機100は、複数本の素線を供給する素線供給装置(クレードル107参照)から撚線を巻き取る撚線巻取装置(クレードル111参照)までの撚線経路に4個のガイドローラR1,R2,R3,R4が設けられている。素線供給装置(クレードル107)と撚線巻取装置(クレードル111)は、図14における上下方向に並べて配置されており、この配置により、撚線経路が素線供給装置(クレードル107)から第1ガイドローラR1を経由して第2ガイドローラR2に至る部分(前側部分)と第3ガイドローラR3から第4ガイドローラR4を経由して撚線巻取装置(クレードル111)に至る部分(後側部分)とに分けられている。
【0005】
図14において、撚線経路のうち前側部分は下側に配置される一方、後側部分は上側に配置され、撚線経路の前側部分の終端に配置される第2ガイドローラR2から繰り出される撚線は図14の左側に迂回して上側に案内され、撚線経路の後側部分の先端に配置される第3ガイドローラR3に導かれている。そして、撚線経路のうち前側部分(下側に配置された経路部分)で第1,第2ガイドローラR1,R2により複数の素線が2回撚られ、撚線経路のうち後側部分(上側に配置された経路部分)で第3,第4ガイドローラR3,R4により更に撚線が2回撚られ、合計4回撚られる構成となっている。
【0006】
撚線機100は、基本構成として撚線経路の前側部分で撚りを2回行う第1二度撚りバンチャー101と、撚線経路の後側部分で撚りを2回行う第2二度撚りバンチャー102と、駆動源であるモータ105、このモータ105の駆動力を第1,第2二度撚りバンチャー101,102に伝達する伝達機構106とを備え、第1二度撚りバンチャー101と第2二度撚りバンチャー102が図14における上下方向に並設された構成となっている。
【0007】
そして、第1二度撚りバンチャー101には、撚り線をガイドし、撚り線経路を形成するための浮枠103が回転自在に設けられ、浮枠103の両端を支持する回転軸に第1ガイドローラR1と第2ガイドローラR2が設けられている。同様に、第2二度撚りバンチャー102にも浮枠104が回転自在に設けられ、浮枠104の両端を支持する回転軸に第3ガイドローラR3と第4ガイドローラR4が設けられている。浮枠103,104の回転軸には、それぞれモータ105の回転力が複数のラインシャフトやベルト等からなる伝達機構106によって伝達され、これにより浮枠103及び第1,第2ガイドローラR1,R2と浮枠104及び第3,第4ガイドローラR3,R4とが同期をして回転駆動される。
【0008】
第1二度撚りバンチャー101のクレードル107の内部には、素線群Sが巻回されたサプライリール108が設けられ、このサプライリール108から供給される素線は、第1ガイドローラR1、浮枠103及び第2ガイドローラR2によって案内され、浮枠103及び第1,第2ガイドローラR1,R2が回転軸の周りを回転することにより、第1二度撚りバンチャー101において二度撚りされる。二度撚りされた撚線は、第1圧縮ダイス109によって圧縮され、第1キャプスタン110によって引き取られながら、第2二度撚りバンチャー102に供給される。
【0009】
第1二度撚りバンチャー101によって二度撚りされた撚線は、第2二度撚りバンチャー102の第3ガイドローラR3、浮枠104及び第4ガイドローラR4によって案内され、浮枠104及び第3,第4ガイドローラR3,R4が回転軸の周りを回転することにより、第2二度撚りバンチャー102において更に二度撚りされる。そして、四度撚りされた撚線は、クレードル111の内部に設けられた第2キャプスタン112によって引き取られながら、第2圧縮ダイス113によって圧縮されて、ティクアップリール114に巻き取られる。
【0010】
図14に示す撚線機100では、ほぼ同様の構成の二度撚りバンチャーが2台設けられているため、機器の製造コストが増大するとともに、撚線機100の設置に広大なスペースを要するといった問題点がある。
【0011】
また、第1二度撚りバンチャー101内のサプライリール108から第2二度撚りバンチャー102内のティクアップリール114に至る撚線経路は、第1二度撚りバンチャー101ではサプライリール108から素線を右方向に繰り出し、第1ガイドローラR1及び浮枠103で反転させてサプライリール108よりも左側に配置された第2ガイドローラR2に導いた後に第1二度撚りバンチャー101から外部に引き出す経路を有し、第2二度撚りバンチャー102では第1二度撚りバンチャー101から引き出された撚線が第1圧縮ダイス109及び第1キャプスタン110を経由して入力されると、その撚線を第3ガイドローラR3及び浮枠104でティクアップリール114よりも右側に配置された第4ガイドローラR4に導いた後、当該第4ガイドローラR4で反転させてティクアップリール114に巻き取らせる経路を有しているので、第1,第2二度撚りバンチャー101,102内の経路が長く、更に第1二度撚りバンチャー101から引き出された撚線を第2二度撚りバンチャー102に導く経路も必要になるので、撚線経路が全体的に長い。
【0012】
このため、撚線製造時の第1,第2二度撚りバンチャー101,102の各内部や第1二度撚りバンチャー101から第2二度撚りバンチャーに至る経路上での撚線に対する張力の調整が困難になるという問題がある。また、経路の途中の2箇所に圧縮率を高めるための圧縮ダイス109,113が設けられたために、経路の途中に撚線を引き取るための第1キャプスタン110や第2キャプスタン112を設けなればならず、これらのキャプスタン間の引取り速度の同期をとることが困難になるという問題もある。
【0013】
さらに、素線が、例えば鋼線等の比較的硬い材質の場合、素線供給装置側に撚り抜き処理を行う機構が設けられるが、図14に示す撚線機100では、素線を供給するためのサプライリール108が第1二度撚りバンチャー101の内部に設けられているため、撚り抜き処理を行う機構を設けるスペースがなく、鋼線などの素線に適用する場合は撚り抜き処理ができず、実質的に鋼線などの素線には適用をすることが困難であるといった不都合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本願発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、軟線と鋼線のいずれにも適用でき、しかも、撚線を引き回す経路が短くコンパクトで配置スペースの少ない小型の四度撚りの撚線機を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0016】
本願発明によって提供される撚線機は、撚り口ダイスから取り込まれる複数の素線を巻取手段まで案内する経路上で撚りを加え、前記複数の素線を撚線にして前記巻取手段で巻き取る撚線機において、前記撚り口ダイスと前記巻取手段との間に、前記撚り口ダイスと前記巻取手段を結ぶ中心線に軸心を合わせて配置されるとともに当該軸心を回転軸として回転自在に配設される棒部材からなり、前記撚り口ダイスから取り込まれた複数の素線を前記軸心に沿って前記巻取手段側に案内する第1の空間が形成された第1の回転軸と、前記第1の回転軸に設けられ、前記第1の空間を案内された前記複数の素線が掛架されるロール部材からなり、前記第1の回転軸の回転により当該第1の回転軸の軸心の周りに回転して前記複数の素線に第1の撚りを加える第1の撚り手段と、前記巻取手段に対して前記撚り口ダイスとは反対側に、前記中心線に軸心を合わせて配置されるとともに当該軸心を回転軸として回転自在に配設される棒部材からなり、前記第1の撚り手段で前記複数の素線に撚りが加えられた撚線を前記軸心に沿って前記巻取手段側に案内する第2の空間が形成された第2の回転軸と、前記第1の撚り手段で前記第1の撚りが加えられた撚線を前記第2の回転軸に案内する第1のガイド手段と、前記第2の回転軸に設けられ、前記第1のガイド手段で案内された前記撚線を掛架して前記第2の空間に案内するロール部材からなり、前記第2の回転軸の回転により当該第2の回転軸の軸心の周りに回転して前記撚線に第2の撚りを加える第2の撚り手段と、前記第2の回転軸と前記巻取手段との間に、前記中心線に軸心を合わせて配置されるとともに当該軸心を回転軸として回転自在に配設される棒部材からなり、前記第2の回転軸の第2の空間を案内された前記撚線を前記巻取手段側に案内する第3の空間が形成された第3の回転軸と、前記第3の回転軸に設けられ、前記第3の空間を案内された前記撚線が掛架されるロール部材からなり、前記第3の回転軸の回転により当該第3の回転軸の軸心の周りに回転して前記撚線に第3の撚りを加える第3の撚り手段と、前記第1の回転軸と前記巻取手段との間に、前記中心線に軸心を合わせて配置されるとともに当該軸心を回転軸として回転自在に配設される棒部材からなり、前記第3の撚り手段で前記第3の撚りが加えられた撚線を前記軸心に沿って前記巻取手段側に案内する第4の空間が形成された第4の回転軸と、前記第3の撚り手段で前記第3の撚りが加えられた撚線を前記第4の回転軸に案内する第2のガイド手段と、前記第4の回転軸に設けられ、前記第2のガイド手段で案内された前記撚線を掛架して前記第4の空間に案内するロール部材からなり、前記第4の回転軸の回転により当該第4の回転軸の軸心の周りに回転して前記撚線に第4の撚りを加える第4の撚り手段と、前記第1の回転軸と前記第2の回転軸を同一の回転方向に回転させ、前記第3の回転軸と前記第4の回転軸を前記第1,第2の回転軸とは逆方向に回転させる駆動手段と、を備えることを特徴としている(請求項1)。
【0017】
請求項1に記載の発明の撚線機において、前記撚り口ダイスは、前記第1の回転軸の第1の空間が開口する一方端に取り付けられ、前記第4の回転軸は、前記第1の回転軸の他方端に形成された支持部に回転自在に支持され、前記第3の回転軸は、前記第2の回転軸の前記巻取手段側の一端に形成された支持部に回転自在に支持され、前記駆動手段は、前記第1の回転軸と前記第2の回転軸に対する回転力を発生させる第1の駆動源と、前記巻取手段内に配設され、前記第3の回転軸と前記第4の回転軸に対する回転力を発生させる第2の駆動源と、前記第1の駆動源で発生した回転力を前記第1の回転軸と前記第2の回転軸とに伝達し、同一方向に同一の回転数で回転させる第1の伝達手段と、前記巻取手段内に配設され、前記第2の駆動源で発生した回転力を前記第3の回転軸と前記第4の回転軸に伝達し、前記第1,第2の回転軸とは逆方向に同一の回転数で回転させる第2の伝達手段と、で構成するとよい(請求項2)。
【0018】
また、請求項1に記載の発明の撚線機において、前記撚り口ダイスは、前記第1の回転軸の第1の空間が開口する一方端に取り付けられ、前記第4の回転軸は、前記第1の回転軸の他方端に第1の差動装置によって連結され、前記第3の回転軸は、前記第2の回転軸の前記巻取手段側の一端に前記第1の差動装置と同一構成の第2の差動装置によって連結され、前記駆動手段は、回転力を発生させる1の駆動源と、前記駆動源で発生した回転力を前記第1の回転軸と前記第2の回転軸とに伝達し、同一方向に同一の回転数で回転させる第1の伝達手段と、前記駆動源で発生した回転力を前記第1の差動装置と前記第2の差動装置とに伝達し、前記第1,第2の回転軸と同一方向に前記第1,第2の回転軸とは異なる回転数で前記第1の差動装置と前記第2の差動装置を回転させる第2の伝達手段とからなり、前記第1の差動装置は、前記第2の伝達手段で伝達された回転力により前記第3の回転軸を前記第1,第2の回転軸とは逆方向に同一の回転数で回転させ、前記第2の差動装置は、前記第2の伝達手段で伝達された回転力により前記第4の回転軸を前記第1,第2の回転軸とは逆方向に同一の回転数で回転させるとよい(請求項3)。
【0019】
また、請求項3に記載の撚線機において、前記第1の差動装置は、前記第4の回転軸に固着された第1の太陽ギヤと、前記第1の回転軸に回転可能に設けられ、前記第2の伝達手段により回転力が伝達される第2の太陽ギヤと、前記第1の回転軸に設けられた腕に回転可能に支持された軸の両端に固着され、それぞれ前記第1の太陽ギヤと前記第2の太陽ギヤに歯合した一対の第1の遊星ギヤとで構成され、前記第2の差動装置は、前記第3の回転軸に固着された第3の太陽ギヤと、前記第2の回転軸に回転可能に設けられ、前記第2の伝達手段により回転力が伝達される第4の太陽ギヤと、前記第2の回転軸に設けられた腕に回転可能に支持された軸の両端に固着され、それぞれ前記第3の太陽ギヤと前記第4の太陽ギヤに歯合した一対の第2の遊星ギヤとで構成するとよい(請求項4)。
【0020】
また、請求項1乃至4のいずれかに記載の撚線機において、前記第1のガイド手段は、一端が前記第1の回転軸の前記第1の撚り手段に隣接した位置に固定されるとともに、他端が前記第2の回転軸の前記第2の撚り手段に隣接した位置に固定され、前記第1の撚り手段から前記第2の撚り手段までの経路全体を案内する弓形状の部材からなり、前記第2のガイド手段は、一端が前記第3の回転軸の前記第3の撚り手段に隣接した位置に固定されるとともに、他端が前記第4の回転軸の前記第4の撚り手段に隣接した位置に固定され、前記第3の撚り手段から前記第4の撚り手段までの経路全体を案内する弓形状の部材からなるとよい(請求項5)。
【0021】
また、請求項1乃至4のいずれかに記載の撚線機において、前記第1のガイド手段は、前記第1の回転軸の前記第1の撚り手段に隣接した位置に固定され、前記第1の撚り手段から前記第2の撚り手段までの経路の前側の一部を案内する第1の部材と、前記第2の回転軸の前記第2の撚り手段に隣接した位置に固定され、前記第1の撚り手段から前記第2の撚り手段までの経路の後側の一部を案内する第2の部材とからなり、前記第2のガイド手段は、前記第3の回転軸の前記第3の撚り手段に隣接した位置に固定され、前記第3の撚り手段から前記第4の撚り手段までの経路の前側の一部を案内する第3の部材と、前記第4の回転軸の前記第4の撚り手段に隣接した位置に固定され、前記第3の撚り手段から前記第4の撚り手段までの経路の後側の一部を案内する第4の部材とからなるとよい(請求項6)。
【0022】
また、請求項6に記載の撚線機において、前記第1ないし第4の部材は、外周面または内周面に中央から外周縁に向かって前記撚り線を案内する複数個のガイドダイスが設けられた椀状の部材からなるとよい(請求項7)。
【0023】
また、請求項6に記載の撚線機において、前記第1ないし第4の部材は、支持部材の先端に回転自在に支持され、前記撚線が掛架されるガイドロールからなるとよい(請求項8)。
【発明の効果】
【0024】
本願発明によれば、複数の素線を取り込む撚り口ダイスと撚線を巻き取る巻取手段とを結ぶ中心線上に、撚りを加える4個の撚り手段を当該中心線の周りに回転自在に配置する構成とし、1番目の撚りを加える第1の撚り手段と4番目の撚りを加える第4の撚り手段を、撚り口ダイスと巻取手段との間に撚り口ダイスから第1の撚り手段、第4の撚り手段の順に配置する一方、3番目の撚りを加える第3の撚り手段と2番目の撚りを加える第2の撚り手段を、巻取手段に対して撚り口ダイスとは反対側に巻取手段から第3の撚り手段、第2の撚り手段の順に配置し、第1の撚り手段で撚りが加えられた撚線を第1のガイド手段で第2の撚り手段に案内し、第3の撚り手段で撚りが加えられた撚線を第2のガイド手段で第4の撚り手段に案内するように、撚線の経路を構成しているので、撚り口ダイスから巻取手段までの撚線を引きまわす経路がコンパクトになり、これにより撚線機の全体構成がコンパクトになり、撚線機の設置スペースを狭小化することができる。
【0025】
本願発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本願発明の好ましい実施の形態を、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0027】
まず、本願発明に係る撚線機における4度撚り動作の基本構成について、図1を用いて説明する。
【0028】
本願発明に係る撚線機は、撚り口ダイスAの中心を通る中心線Mを回転軸としてその周りに回転する4個のターンローラB1〜B4を備えている。4個のターンローラB1〜B4は線材の搬送をガイドするとともに、その搬送中に線材を撚る機能を果たす部材である。4個のターンローラB1〜B4は中心線M(以下、「回転軸線M」という。)に沿って撚り口ダイスAからB1,B4,B3,B2の順に一列に配列され、4度目の撚りを行うターンローラB4と3度目の撚りを行うターンローラB3との間には4度撚りされた撚線S’を巻き取る撚線巻取部Cが配置される。また、各ターンローラB1〜B4の近傍には、撚り口ダイスAから供給された複数の素線Sを撚りながら撚線巻取部Cに導く撚線経路を形成するための撚線ガイドD1〜D4がそれぞれ設けられている。これらの撚線ガイドD1〜D4も回転軸線Mの周りに回転する。
【0029】
従って、本願発明に係る撚線機の撚線経路は、図1に示すように、撚り口ダイスAから回転軸線Mに沿って第1のターンローラB1に至り、第1の撚線ガイドD1によって一端外側に迂回した後、第2の撚線ガイドD2によって第2のターンローラB2に至り、再度回転軸線Mに沿って内側の第3のターンローラB3に戻り、第3の撚線ガイドD3によって再度外側に迂回した後、更に第4の撚線ガイドD4によって第4のターンローラB4まで戻った後、回転軸線Mに沿って撚線巻取部Cに至る経路となっている。
【0030】
そして、本願発明に係る撚線機では、第1のターンローラB1及び第2のターンローラB2と、第3のターンローラB3及び第4のターンローラB4とは回転軸線Mの周りに互いに逆方向に同一の回転速度で回転する。
【0031】
なお、第1の撚線ガイドD1と第2の撚線ガイドD2はそれぞれ第1のガイドローラB1と第2のガイドローラB2の回転軸に固定されるので、第1のターンローラB1と第2のターンローラB2と共に回転することになる。すなわち、第1の撚線ガイドD1と第2の撚線ガイドD2は互いに同一の方向に同一の回転速度で回転する。また、第3の撚線ガイドD3と第4の撚線ガイドD4はそれぞれ第3のターンローラB3と第4のターンローラB4の回転軸に固定されているので、第3のターンローラB3と第4のターンローラB4と共に回転ことになる。すなわち、第3の撚線ガイドD3と第4の撚線ガイドD4も互いに同一の方向に同一の回転速度で回転する。
【0032】
なお、図1において、第1のターンローラB1〜第4のターンローラB4に対する矢印は各ターンローラB1〜B4の回転方向を示し、撚線S’に対する矢印は、撚線S’の撚りの方向を示している。また、白抜きの矢印は撚線S’の搬送方向を示している。
【0033】
上記の構成により、本願発明に係る撚線機では、第1のターンローラB1〜第4のターンローラB4の各ターンローラが回転軸線Mの周りに回転することにより各ターンローラの部分で複数の素線Sに対して撚り動作が行われ、撚線巻取部Cに至るまでに4度の撚りが行われることになる。なお、第1のターンローラB1及び第2のターンローラB2と、第3のターンローラB3及び第4のターンローラB4の回転方向を互いに逆にするのは、図1の矢印で示すように、第2のターンローラB2と第3のターンローラB3との間における撚線S’の撚り方向が撚り口ダイスAと第1のターンローラB1との間における撚線S’の撚り方向に対して逆方向になるため、第3のターンローラB3及び第4のターンローラB4の回転方向を第1のターンローラB1及び第2のターンローラB2に対して逆方向にしなければ、撚りが戻って4度撚りにならないからである。
【0034】
次に、本願発明に係る撚線機の具体的な構成について説明する。
【0035】
図2は、本願発明の第1実施形態に係る撚線機の側面図であり、一部を断面で表している。図3は、撚線機の上面図である。図4は、撚線機の第2本体フレームの部分を右側から見た図である。また、図5は、図2のAの部分を抽出した図であり、図6は、図2のBの部分を抽出した図である。
【0036】
第1実施形態に係る撚線機1は、例えば、素線Sを供給するための複数の供給ドラム(図略)が装置の外部に設けられ、これらの供給ドラムから複数本の素線が供給されるようになっている。本実施形態に係る撚線機1の素線としては、銅線、アルミ線及び合金線等といった軟線だけでなく鉄線(ワイヤロープ)、鋼線及びステンレス等といった硬線にも適用することができる。
【0037】
素線が鋼線の場合は、いわゆる撚り抜き処理が必要になるが、本実施形態に係る撚線機1では素線を給する装置が外部に配置されるので、その素線供給装置に撚り抜き機構を設けることで、容易に撚り抜き処理を行うことができる。従って、撚り抜き機構を備えた素線供給装置で素線を供給するようにすれば、軟線と硬線のいずれも撚線を製造することができる。
【0038】
撚線機1は、横長の台座2と、台座2の両端に設けられた一対の支持部材3a,3bとを備えている。各支持部材3a,3bは、側面視で略A字状に形成されており(図4参照)、図2における左側の支持部材3aには、略円筒状の第1本体フレーム4が設けられ、右側の支持部材3bには、略円筒状の第2本体フレーム5がそれぞれ設けられている。
【0039】
第1本体フレーム4の円筒内部には、略円柱状の第1回転軸6が回転自在に支持される一方、第2本体フレーム5の円筒内部には、略円柱状の第2回転軸7が回転自在に支持されている。第1回転軸6の先端部(図2,図5では右側の端部)には第1差動装置10を介して第4回転軸9が回転自在に支持され、第2回転軸7の先端部(図2では左側の端部)には第2差動装置11を介して第3回転軸8が回転自在に支持されている。第1回転軸6、第2回転軸7、第3回転軸8及び第4回転軸9の軸心は一致しており、これらの軸心は図1における回転軸線Mに相当している。
【0040】
第3回転軸8と第4回転軸9との間には、揺り籠状のクレードル12が揺動自在に支持され、クレードル12の内部には、後述する後ろオーバツイスタ13、引取キャプスタン14、強制ローラ群15、ターンローラ16、トラバース装置17及び巻取りボビン18等(図3参照)が設けられている。
【0041】
台座2には、適所に角柱状の複数の支持片19(図2及び図3参照)が取り付けられており、第2本体フレーム5が隣接する端部(図2、図3では右端部)には、駆動源であるモータ20が配設されている。また、支持片19には、長手方向に沿って棒状のラインシャフト21が回転自在に支持されている。このラインシャフト21はモータ20の出力を第1回転軸6、第2回転軸7、第1差動装置10及び第2差動装置11に伝達する機能を果たすものである。
【0042】
第1回転軸6、第1差動装置10及び第4回転軸9の部分(図2のAの部分)と第2回転軸7、第2差動装置11及び第3回転軸8の部分(図2のBの部分)とは基本的な構成が同じであるので、以下では、第1回転軸6、第1差動装置10及び第4回転軸9の部分の構成について詳細に説明し、第2回転軸7、第2差動装置11及び第3回転軸8の部分については簡単に説明する。
【0043】
第1回転軸6は、図1における撚り口ダイスAから第1のターンローラB1までの撚線経路を構成するとともに、第1のターンローラB1及び第1の撚線ガイドD1の回転軸として機能を果たすものである。第1回転軸6の左方先端部には、目板22からの複数本の素線Sを収束して取り込むための撚り口ダイス23(図1における撚り口ダイスAに相当)が設けられており、第1回転軸6には、その側面の適所に第1ターンローラ24が回転自在に配設されるとともに、撚り口ダイス23によって取り込まれる素線Sを案内するための空間6aが左端から軸心に沿って第1ターンローラ24の配設位置まで設けられている。
【0044】
第1ターンローラ24は、図1における第1のターンローラB1に相当するもので、ローラ側面の略半分は第1回転軸6から露出し、残りの半分は第1ターンローラ24の周縁を空間6aに臨ませて第1回転軸6に回転自在に支持されている。より詳細には、図7に示すように、第1回転軸6の表面には、空間6aと連通する略半円状の溝6bが形成されており、第1ターンローラ24は、その溝6bに下半分が隠れるように、また、その円周の一部が第1回転軸6の軸心と一致するように、一対の支持部材601によって回転自在に支持されている。第1ターンローラ24は、第1回転軸6が一回転すると、第1回転軸6の軸心周りに一回転し、この回転動作により、第1回転軸6の空間6a内を案内された複数本の素線に一度目の撚りを加える(以下、一度目の撚りが加えられた撚線を「一度撚線」という。)。なお、第1回転軸6の駆動機構については、後述する。
【0045】
第1回転軸6には、第1ターンローラ24の右方近傍にお椀状の第1椀状回転体28が取り付けられている。この第1椀状回転体28は、図1における第1の撚線ガイドD1に相当するものである。第1椀状回転体28の外側表面には、第1ターンローラ24によって一度撚りが加えられた一度撚線S’を案内するためのガイドダイス281が複数個取り付けられている。複数個のガイドダイス281は、図8に示すように、第1椀状回転体28の外側表面に中央開口28aから外周縁28bに向かって所定の間隔を隔てて略直線状になるよう取り付けられている。なお、言うまでもなく、複数個のガイドダイス281の配列位置は、第1回転軸6の第1ターンローラ24が設けられた位置に一致しており、第1ターンローラ24によって案内される一度撚線S’が屈曲することなく直線的に第1椀状回転体28のガイドダイス281に案内される。第1椀状回転体28には、上記ガイドダイス281の取付位置と対向する外側表面に回転時のバランスを維持するための複数のダミーダイス282が配置されている。第1椀状回転体28は、第1回転軸6が一回転すると、第1回転軸6とともに一回転する。
【0046】
図1に戻り、第2回転軸7は、図1における第2のターンローラB2及び第2の撚線ガイドD2の回転軸として機能を果たすとともに、第2のターンローラB2から第3のターンローラB3までの撚線経路を構成するものである。第2回転軸7にも第1回転軸6と同様に、その側面の適所に図1における第2のターンローラB2に相当する第2ターンローラ25が回転自在に配設され、その第2ターンローラ25の周縁が臨む位置から軸心に沿って左端まで空間7aが設けられている。この空間7aは、第2のターンローラB2から第3のターンローラB3まで撚線S’を案内する機能を果たすものである。
【0047】
また、第2ターンローラ25は、図1における第2のターンローラB2に相当するもので、第1回転軸6における第1ターンローラ24の取付構造と同様の構造で第2回転軸7に取り付けられている。すなわち、第2回転軸7の表面には、空間7aと連通する略半円状の溝7bが形成されており、第2ターンローラ25は、その溝7bに下半分が隠れるように、また、その円周の一部が第2回転軸7の軸心と一致するように、一対の支持部材701(図3参照)によって回転自在に支持されている。第2ターンローラ25は、第2回転軸7が一回転すると、第2回転軸7の軸心周りに一回転し、この回転動作により、後述する第2椀状回転体29によって案内された一度撚線S’に二度目の撚りを加える(以下、二度目の撚りが加えられた撚線を「二度撚線」という。)。
【0048】
第2回転軸7には、第2ターンローラ25の左方近傍に略お椀状の第2椀状回転体29が取り付けられている。この第2椀状回転体29は、図1における第2の撚線ガイドD2に相当するものである。第2椀状回転体29は、その大きさが第1椀状回転体28の大きさと略同等で、第1椀状回転体28と同様に、その外側表面に第1ターンローラ24によって一度目の撚りが加えられた一度撚線S’を案内するためのガイドダイス291が複数個取り付けられている。なお、第2椀状回転体29にも、回転時のバランスを維持するための複数のダミーダイス292が配置されている。第2椀状回転体29は、第2回転軸7が一回転すると、第2回転軸7とともに一回転する。
【0049】
ここで、第1回転軸6及び第2回転軸7の駆動機構について説明する。
【0050】
第1実施形態に係る撚線機1は、駆動源を1台のモータで構成し、そのモータの出力を分配する構成としている。第1回転軸6と第2回転軸7は、図2に示されるように、水平方向の回転軸線M上でそれぞれ左端と右端に配置されるが、両者は回転方向及び回転速度が同一に制御されるので、モータの出力を伝達するための伝達機構として同一構成の伝達機構がそれぞれに設けられている。
【0051】
第1回転軸6に対する伝達機構は、モータ20のロータ20aに固着された第1プーリ32と、ラインシャフト21における第1プーリ32に対向する位置に固着された第2プーリ33と、両プーリ32,33の間に架け渡された第1ベルト34と、ラインシャフト21の先端(図2,図3では左端)に固着された第3プーリ35と、第1回転軸6の基端部(図2、図3では左側の端部)に固着された第4プーリ36と、両プーリ35,36の間に架け渡された第2ベルト37とによって構成されている。
【0052】
一方、第2回転軸7に対する伝達機構は、上記の第1プーリ32、第2プーリ33及び第1ベルト34と、ラインシャフト21の基端(図2,図3では右端)に固着された第5プーリ38と、第2回転軸7の基端部(図2、図3では右側の端部)に固着された第6プーリ39と、両プーリ38,39の間に架け渡された第3ベルト40とによって構成されている。
【0053】
この構成により、モータ20が回転駆動されると、その回転力は、第1ベルト34を介してラインシャフト21に伝達され、さらに第2ベルト37を介して第1回転軸6に伝達されるとともに、第3ベルト40を介して第2回転軸7に伝達される。ラインシャフト21はモータ20と同一の方向に回転し、第1回転軸6及び第2回転軸7はラインシャフト21と同一の方向に回転するので、第1回転軸6及び第2回転軸7はモータ20と同一の方向に回転する。また、第3プーリ35と第5プーリ38は同一サイズであり、第4プーリ36と第6プーリ39も同一サイズであるので、第1回転軸6及び第2回転軸7は同一の回転速度で回転する。
【0054】
次に、第1差動装置10及び第2差動装置11について説明する。なお、第2差動装置11は、その基本構造が第1差動装置10と同一であるので、以下では、第1差動装置10について説明する。
【0055】
本発明に係る撚線機では、同軸上に一列に配列した2つの回転軸(例えば、図1における第1のターンローラB1の回転軸と第4のターンローラB4の回転軸を参照)を互いに逆方向に回転させる必要があるが、2つの回転軸の駆動源を共通にし、一方の回転軸に駆動源の回転力を同一の回転方向で伝達すると、他方の回転軸には駆動源の回転力を逆の回転方向で伝達する必要がある。上記のように、第1実施形態に係る撚線機1では、第1回転軸6及び第2回転軸7にはモータ20の回転力を同一の回転方向で伝達する構成としているので、第3回転軸8及び第4回転軸9には差動装置を用いてモータ20の回転力を逆方向にして伝達する構成としている。
【0056】
図9は、第1実施形態に係る撚線機1に採用している差動装置の基本構成を示す斜視図である。
【0057】
同図に示す差動装置は、第2の回転軸U2がその回転軸を第1の回転軸U1の回転軸と一致させて当該第1の回転軸U1の先端部に軸受けを介して回転自在に取り付けられている。第1の回転軸U1には腕Eが突設され、この腕Eの先端に第1の回転軸U1の回転軸と平行に、かつ回転自在に軸が取り付けられ、その軸の両端に一対の歯車G3a,G3bが固着されている。一方、第2の回転軸U2の基端には歯車G1が形成され、この歯車G1と歯車G3aが歯合している。また、第1の回転軸U1には内側に歯が形成された凹形状の歯車G2が回転自在に取り付けられ、この歯車G2に歯車G3bが歯合している。
【0058】
歯車G1及び歯車G2は第1の回転軸U1及び第2の回転軸U2の中心軸Xの周りに自転する太陽ギヤであり、一対の歯車G3a,G3bは中心軸Xの周りを公転する遊星ギヤであり、太陽ギヤG1,G2及び遊星ギヤG3a,G3bによって差動歯車列が構成されている。
【0059】
図9の構成において、中心軸Xの方向を見て反時計周りの回転方向(例えば、矢印aの回転方向)を+方向の回転とし、第1の回転軸U1が矢印aで示すように反時計回りに自転すると、遊星ギヤG3a,G3bも矢印b,cで示すように反時計回りに公転及び自転をするから、第1の太陽ギヤG1は矢印dで示すように時計回りに自転し、第2の太陽ギヤG2は矢印eで示すように反時計回りに自転する。すなわち、第2の回転軸U2は、第1の回転軸U1と逆方向に回転する。
【0060】
従って、第1の回転軸U1を第1回転軸6に対応させ、第2の回転軸U2を第4回転軸9に対応させるように、図9に示す差動装置を適用すれば、第4回転軸9を第1回転軸6と同軸に一列に配置して第1回転軸6とは逆方向に回転させることができる。同様に、第1の回転軸U1を第2回転軸7に対応させ、第2の回転軸U2を第3回転軸8に対応させるように、図9に示す差動装置を適用すれば、第3回転軸8を第2回転軸7と同軸に一列に配置して第2回転軸7とは逆方向に回転させることができる。
【0061】
また、図9に示す差動装置においては、第1の太陽ギヤG1、遊星ギヤG3a,G3b及び第2の太陽ギヤG2の各歯車の歯数をZ1,Z2,Z2,Z3とし、第1の太陽ギヤG1及び第2の太陽ギヤG2の各回転数をN1,N3、遊星ギヤG3a,G3bの回転数をN2とし、第1の回転軸U1の回転数、すなわち、遊星ギヤG3a,G3bの公転回転数をNaとすると、N3=(1+Z1/Z3)Na−(Z1/Z3)N1=Na+k(Na−N1)(但し、Z1/Z3=k)の関係式が成立する。
【0062】
図9に示す差動装置を本発明に係る撚線機1に適用する場合には、第1の回転軸U1の回転数Naと第2の回転軸U2の回転数N1を同一にする必要があるから、上式にNa=−N1の条件を入れると、N3=Na+2k・Naとなり、N3=(2k+1)Naの関係式が成立する。従って、第2の太陽ギヤG2に相当するギヤを(2k+1)Naの回転数で第1回転軸6と同一の方向に回転させれば、第4回転軸9を第1回転軸6の逆方向に同一の回転数で回転させることができる。
【0063】
次に、図5を用いて、第1差動装置10と第4回転軸9の部分の構成について説明する。なお、図5は、図2におけるAの部分を抽出した図である。
【0064】
図9の差動装置の基本構成と図5に示す第1差動装置10を対比すれば、明らかなように、第1回転軸6は第1の回転軸U1に相当し、第4回転軸9は第2の回転軸U2に相当している。従って、第1回転軸6の第1椀状回転体28の固定位置よりも先端側には支持部602が形成される一方、第4回転軸9の基端部(図5では左側の端部)には第1回転軸6の支持部602の外径と略同一の内径を有する凹形状の被支持部902が設けられ、その被支持部902を軸受けを介して第1回転軸6の支持部602に被せるように装着して、第4回転軸9が第1回転軸6の先端部に回転自在に支持されている。
【0065】
第4回転軸9は、図1における第4のターンローラB4及び第4の撚線ガイドD4の回転軸として機能を果たすとともに、第4のターンローラB4から撚線巻取部Cに撚線S’を案内する機能を果たすものである。第4回転軸9の被支持部902に近接した側面には、図1における第4のターンローラB4に相当する第4ターンローラ27が回転自在に配設され、第4ターンローラ27で案内された撚線S’をクレードル12側に案内する空間9aが第4ターンローラ27の配設位置から軸心に沿って先端(図5では右端)まで設けられている。
【0066】
第4ターンローラ27の第4回転軸9における取付構造は、第1ターンローラ24の第1回転軸6における取付構造と同様に、第4回転軸9の表面に形成され、空間9aと連通する略半円状の溝部9bに下半分が隠されるように、また、その円周の一部が第4回転軸9の軸心と一致するように、一対の支持片901(図3参照)によって回転自在に支持されている。第4ターンローラ27は、第4回転軸9が一回転すると、第4回転軸9の軸心周りに一回転し、この回転動作により、後述する第4椀状回転体31によって案内された三度撚線に四度目の撚りを加える(以下、四度目の撚りが加えられた撚線を「四度撚線」という。)。
【0067】
第4回転軸9には、第4ターンローラ27の左方近傍に、図1における第4の撚線ガイドD4に相当する、略お椀状の第4椀状回転体31が取り付けられている。第4椀状回転体31の大きさは、第1椀状回転体28よりも僅かに小さくなっている。第4椀状回転体31の内側表面には、第1椀状回転体28と同様に、後述する第3ターンローラ26によって三度撚りが加えられた三度撚線を案内するためのガイドダイス311が複数個取り付けられている。なお、第4椀状回転体31にも、上記ガイドダイス311の取付位置と対向する内側表面に回転時のバランスを維持するための複数のダミーダイス312が配置されている。第4椀状回転体31は、第4回転軸9が一回転すると、第4回転軸9とともに一回転する。
【0068】
第4回転軸9の被支持部902の先端(図5の左側の先端)に、図9の第1の太陽ギヤG1に相当する歯車50が設けられている。
【0069】
一方、第1回転軸6の第1ターンローラ24の近傍位置(図5では、第1ターンローラ24の左側)に、内側に歯が形成された凹形状の歯車51が回転自在に取り付けられている。この歯車51は、図9の第2の太陽ギヤG2に相当するものである。そして、第1回転軸6の歯車51と第4回転軸9の歯車50との間の部分に、図9の腕Eに相当する支持部材603が突設され、その支持部材603に、両端に一対の歯車52,53が固着された軸が回転自在に支持されている。歯車52と歯車53は、それぞれ図9の遊星ギヤG3aと遊星ギヤG3bに相当し、歯車52は歯車50に歯合し、歯車53は歯車51に歯合している。
【0070】
上述したように、第1回転軸6の回転数をNaとすると、第4回転軸9を第1回転軸6と同一の回転数で逆方向に回転させるには、第1差動装置10の第2の太陽ギヤG2に相当する歯車51を(2k+1)Naの回転数で第1回転軸6と同一の回転方向で回転させる必要がある。このため、歯車51の外側面には第8プーリ42が設けられ、第4ベルト43を介してラインシャフト21の回転力が歯車51に伝達されるようになっている。
【0071】
すなわち、ラインシャフト21における歯車51に対向する位置に第7プーリ41を固着し、この第7プーリ41と歯車51の第8プーリ42との間に第4ベルト43を架け渡してモータ20の出力を第1差動装置10に伝達する伝達機構を構成し、この伝達機構により歯車51を(2k+1)Naの回転数で第1回転軸6と同一の方向に回転させるようにしている。
【0072】
この構成により、例えば、第1回転軸6が回転数Naで時計回りに回転すると、第1差動装置10の歯車51が(2k+1)Naの回転数で第1回転軸6と同一の方向に回転する。そして、第1差動装置10の歯車50には、歯車51及び歯車50の歯数の関係に基づき回転数Naの反時計回りの回転が伝達され、第4回転軸9は、第1回転軸6及び第2回転軸7とは逆方向に第1回転軸6及び第2回転軸7と同一の回転数で回転する。
【0073】
第3回転軸8についても同様で、図9の差動装置の基本構成と図6に示す第2差動装置11を対比すれば、明らかなように、第2回転軸7は第1の回転軸U1に相当し、第3回転軸8は第2の回転軸U2に相当している。従って、第2回転軸7の第2椀状回転体29の固定位置よりも先端側には支持部702が形成される一方、第3回転軸8の基端部(図6では右側の端部)には第2回転軸7の支持部702の外径と略同一の内径を有する凹形状の被支持部802が設けられ、その被支持部802を軸受けを介して第2回転軸7の支持部702に被せるように装着して、第3回転軸8が第2回転軸7の先端部に回転自在に支持されている。
【0074】
第3回転軸8は、図1における第3のターンローラB3及び第3の撚線ガイドD3の回転軸として機能を果たすとともに、第2のターンローラB2から案内された撚線S’を第3の撚線ガイドD3に案内する機能を果たすものである。第3回転軸8の被支持部802に近接した側面には、図1における第3のターンローラB3に相当する第3ターンローラ26が回転自在に配設され、第2回転軸7で案内された撚線S’を第3ターンローラ26側に案内する空間8aが基端(図5では右端)から第3ターンローラ26の配設位置まで設けられている。
【0075】
第3ターンローラ26の第3回転軸8における取付構造は、第1ターンローラ24の第1回転軸6における取付構造と同様に、第3回転軸8の表面に形成され、空間8aと連通する略半円状の溝部8bに下半分が隠されるように、また、その円周の一部が第3回転軸8の軸心と一致するように、一対の支持片801(図3参照)によって回転自在に支持されている。第3ターンローラ26は、第3回転軸8が一回転すると、第3回転軸8の軸心周りに一回転し、この回転動作により、第2回転軸7から案内された二度撚線に三度目の撚りを加える(以下、三度目の撚りが加えられた撚線を「三度撚線」という。)。
【0076】
第3回転軸8には、第3ターンローラ26の右方近傍に、図1における第3の撚線ガイドD3に相当する、略お椀状の第3椀状回転体30が取り付けられている。第3椀状回転体30の大きさは、第4椀状回転体31と同一であり、第4椀状回転体31と同様に複数個のガイドダイス301とダミーダイス302が取り付けられている。第3椀状回転体30は、第3回転軸8が一回転すると、第3回転軸8とともに一回転する。
【0077】
第2差動装置11は、図5に示す第1差動装置10の構成と図6に示す第2差動装置11とを対比すれば、明らかなように基本的な構成は同一である。従って、第2差動装置11の構成については説明を省力する。
【0078】
また、第2差動装置11に対する伝達機構も、第1差動装置10に対する伝達機構と同一である。すなわち、ラインシャフト21における第2差動装置11の歯車55(図9の第2の太陽ギヤG2に相当)に対向する位置に第9プーリ44を固着し、この第9プーリ44と歯車55の第10プーリ45との間に第5ベルト46を架け渡してモータ20の出力を第2差動装置11に伝達する伝達機構を構成し、この伝達機構により歯車55を(2k+1)Naの回転数で第2回転軸7と同一の方向に回転させるようにしている。従って、第3回転軸8は、第4回転軸9と同一方向で第1回転軸6及び第2回転軸7とは逆方向に、第1回転軸6及び第2回転軸7と同一の回転数で回転する。
【0079】
次に、クレードル12の内部構成について、説明する。
【0080】
クレードル12は、図1の撚線巻取部Cに相当する部分である。クレードル12には、第4回転軸9の右方近傍に後ろオーバツイスタ13が設けられている。後ろオーバツイスタ13は、第4回転軸9の回転によって、第4ターンローラ27によって四度撚りされた四度撚線S’に対していわゆる型付けを行うものである。なお、後ろオーバツイスタ13は、例えば素線が鋼線等の硬い材質の場合等に必要に応じて設けられる。
【0081】
後ろオーバツイスタ13の後段には、引取キャプスタン14が設けられている。引取キャプスタン14は、第4回転軸9に対し所定の比率をもって駆動され、後ろオーバツイスタ13からの四度撚線S’を巻取りボビン18側に引き込むためのものである。引取キャプスタン14には、詳細説明は省略するが、第4回転軸9に設けられた伝達機構60が連結され、引取キャプスタン14は当該第4回転軸9の回転力によって回転駆動される。
【0082】
引取キャプスタン14の近傍には、強制ローラ群15が設けられている。強制ローラ群15は、千鳥状に配された複数個のローラの間に四度撚線S’を通すことにより、うねり、キンク等を取り除くために、四度撚線S’に対していわゆるしごきを与えるためのものである。なお、強制ローラ群15は、素線が鋼線等の硬い材質の場合等に必要に応じて設けられる。
【0083】
引取キャプスタン14の近傍には、トラバース装置17が設けられている。トラバース装置17は、図3における上下方向にローラ17aを繰り返し移動させることにより、引取キャプスタン14からターンローラ16を介して送られる四度撚線S’を巻取りボビン18に整然と巻き取らせるためのものである。トラバース装置17は、詳細説明は省略するが、伝達機構61により第4回転軸9の回転力を伝達して回転駆動される。
【0084】
巻取りボビン18は、四度撚線S’を巻き取るものである。巻取りボビン18は、詳細説明は省略するが、伝達機構62により回転駆動される。
【0085】
次に、この撚線機1における撚線の進行経路について説明する。
【0086】
最終的に四度撚りされる複数本の素線Sは、外部に設置された図示しない複数の供給ドラムから目板22を介して撚り口ダイス23に取り込まれ、第1回転軸6の空間6a内を通り、第1ターンローラ24に掛架される。第1ターンローラ24に掛架された撚線(または素線)は、第1椀状回転体28のガイドダイス281によって案内された後、第2椀状回転体29のガイドダイス291によって案内され、第2ターンローラ25に掛架される。
【0087】
第2ターンローラ25に掛架された撚線S’は、第2回転軸7の空間7a内及び第3回転軸8の空間8a内を通り、第3ターンローラ26に掛架される。第3ターンローラ26に掛架された撚線S’は、第3椀状回転体30のガイドダイス301によって案内された後、第4椀状回転体31のガイドダイス311によって案内され、第4ターンローラ27に掛架される。第4ターンローラ27に掛架された撚線S’は、第4回転軸9の空間9a内を通り、後ろオーバツイスタ13、引取キャプスタン14、強制ローラ群15、ターンローラ16及びトラバース装置17を経由して巻取りボビン18に至る。
【0088】
次に、この撚線機1における撚り動作を説明する。
【0089】
上記のように、撚線機1内を引き回された複数本の素線Sは、モータ20が回転駆動されることにより、第1ないし第4ターンローラ24,25,26,27によって合計で四度の撚りが加えられる。すなわち、複数本の素線Sは、第1ターンローラ24の回転軸線M周りの回転によって一度撚りされ、第2ターンローラ25の回転軸線M周りの回転によって二度撚りされ、第3ターンローラ26の回転軸線M周りの回転によって三度撚りされ、第4ターンローラ27の回転軸線M周りの回転によって四度撚りされる。
【0090】
より具体的には、モータ20が回転駆動されると、上述したように、モータ20の回転力は、ラインシャフト21を介して第1回転軸6、第2回転軸7、第1差動装置10及び第2差動装置11に伝達される。
【0091】
第1回転軸6が回転すると、それにともなって第1ターンローラ24及び第1椀状回転体28が第1回転軸6の軸心周りに回転する。これにより、第1ターンローラ24に掛架されていた素線Sに一度目の撚りが加えられる。
【0092】
また、第2回転軸7が回転すると、それにともなって第2ターンローラ25及び第2椀状回転体29が第2回転軸7の軸心周りに回転する。これにより、第2ターンローラ25に掛架されていた一度撚線S’に二度目の撚りが加えられる。
【0093】
また、第2差動装置11が回転すると、それにともなって第3ターンローラ26及び第3椀状回転体30が第3回転軸8の軸心周りに、第1回転軸6及び第2回転軸7とは逆方向に回転する。第3ターンローラ26及び第3椀状回転体30が第3回転軸8の軸心周りに回転することにより、第3ターンローラ26に掛架されていた二度撚線S’に三度目の撚りが加えられる。
【0094】
さらに、第1差動装置10が回転すると、それにともなって第4ターンローラ27及び第4椀状回転体31が第4回転軸9の軸心周りに、第1回転軸6及び第2回転軸7とは逆方向に回転する。第4ターンローラ27及び第4椀状回転体31が第4回転軸9の軸心周りに回転することにより、第4ターンローラ27に掛架されていた三度撚線S’に四度目の撚りが加えられる。
【0095】
第4ターンローラ27によって四度目の撚りが加えられた四度撚線S’は、後ろオーバツイスタ13によって型付けが行われ、引取キャプスタン14によって引き取られる。また、四度撚線S’は、強制ローラ群15によってしごきが加えられ、ターンローラ16及びトラバース装置17を経由して巻取りボビン18によって巻き取られる。
【0096】
上記のように、本実施形態に係る撚線機1によれば、一度目の撚りをかける第1ターンローラ24、二度目の撚りをかける第2ターンローラ25、三度目の撚りをかける第3ターンローラ26及び四度目の撚りをかける第4ターンローラ27を、撚り口ダイス23から当該撚り口ダイス23の中心を通る回転軸線Mに沿って、第1ターンローラ24、第4ターンローラ27、第3ターンローラ26及び第2ターンローラ25の順に配置するとともに、第4ターンローラ27と第3ターンローラ26の間に四度撚りされた撚線S’を巻き取るためのクレードル12を配置し、撚り口ダイス23→第1ターンローラ24→第2ターンローラ25→第3ターンローラ26→第4ターンローラ27→クレードル12の撚線経路で四度撚りを行う構成としているので、背景技術の欄で説明した、二度撚りバンチャーが2台並設された従来の四度撚り撚線機(図14参照)に比べ、機器の設備コストを低減するとともに、撚線機1のコンパクト化と設置スペースの狭小化をすることができる。
【0097】
また、本実施形態の撚線機1は、撚線経路をコンパクトにしたので、撚線S’を引き回す長さを極力短くすることができるので、従来の四度撚り撚線機に比べ、撚線S’に対する張力の調整が容易であり、撚線S’に張力を与えるための装置において負担を軽減することができる。
【0098】
なお、第1実施形態に係る撚線機1に適用される差動装置として、図9に示す差動装置に代えて図10に示す差動装置を用いてもよい。
【0099】
図10に示す差動装置は、図9に示す差動装置に対して第1の太陽ギヤに相当する歯車G1’も第2の太陽ギヤに相当する歯車G2と同様の内側に歯が形成された凹形状の歯車とし、この歯車G1’に歯合する遊星ギヤG3a’の大きさを歯車G2に歯合する遊星ギヤG3bよりも大きくしたものである。
【0100】
図10に示す差動装置の各歯車G1’,G2,G3a’,G3bの回転動作の関係は、図9に示す差動装置と同じである。従って、第2の回転軸U2は、第1の回転軸U1と逆方向に回転する。
【0101】
また、図10に示す差動装置においては、第1の太陽ギヤG1’、遊星ギヤG3a’、遊星ギヤG3b及び第2の太陽ギヤG2の各歯車の歯数をZ1,Z2,Z3,Z4とし、第1の太陽ギヤG1’及び第2の太陽ギヤG2の各回転数をN1,N4、遊星ギヤG3a’,G3bの回転数をN2,N3とし、第1の回転軸U1の回転数、すなわち、遊星ギヤG3a’,G3bの公転回転数をNaとすると、N4=(1−k’)Na+k’・N1(但し、k’=(Z1・Z3)/(Z2・Z4))の関係式が成立する。
【0102】
そして、上式でN4=0とすると、Na−k’・(Na−N1)=0となるから、この式にNa=−N1の条件を入れると、Na=k’・2Naとなる。従って、k’=0.5となるように、第1の太陽ギヤG1’、遊星ギヤG3a’、遊星ギヤG3b及び第2の太陽ギヤG2の各歯車の歯数Z1,Z2,Z3,Z4を適当に選定すると、第2の太陽ギヤG2を回転させることなく、第2の回転軸U2を第1の回転軸U1と同一の回転数で、互いに逆方向に回転させることができる。
【0103】
図1,図5,図6において、第1差動装置10及び第2差動装置11を図10に示す差動装置の構成とした場合、第2の太陽ギヤG2に相当する歯車51,55は回転させる必要がないので、歯車51,55に対してモータ20の回転力を伝達する伝達機構(第7プーリ41、第8プーリ42、第4ベルト43、第9プーリ44、第10プーリ45、第5ベルト46の構成)は不要となり、撚線機1の構成を更に簡単にすることができる。
【0104】
図11は、本願発明の第2実施形態に係る撚線機を示す側面図である。この撚線機1Aは、第1ないし第4椀状回転体28,29,30,31に代えて、略弓状の回転体が用いられる点で第1実施形態の撚線機1と異なる。すなわち、第1実施形態では、第1ターンローラ24で撚りが加えられた撚線S’を回転軸線Mから外側に迂回させて第2ターンローラ25に案内する迂回経路と、第3ターンローラ26で撚りが加えられた撚線S’を回転軸線Mから外側に迂回させて第4ターンローラ27に案内する迂回経路をそれぞれ迂回経路の両端部だけ部分的にガイドしていたが、第2実施形態は両迂回経路の全体をガイドする点で第1実施形態と異なる。
【0105】
第2実施形態に係る撚線機1Aでは、第1ターンローラ24と第2ターンローラ25とを結ぶように配設された第1の弓状回転体70と、第3ターンローラ26と第4ターンローラ27とを結ぶように配設された第2の弓状回転体71と、ダミー回転体として機能する第3の弓状回転体72とを備えている。
【0106】
各弓状回転体70,71,72の内側には、撚線を案内するための複数個のガイドダイス701,711,721が所定の間隔を隔てて配されている。なお、この撚線機1Aでは、第3の弓状回転体72を省略してもよいし、あるいは第1及び第2の弓状回転体70,71に対応してダミー用の2つの弓状回転体が設けられていてもよい。その他の構成については、上記実施形態の撚線機の構成と略同様である。
【0107】
この第2実施形態に係る撚線機1Aによれば、第1実施形態に係る撚線機1と同様の作用効果を奏する。また、この撚線機1Aによれば、第1実施形態の第1ないし第4椀状回転体28,29,30,31に代えて、第1及び第2の弓状回転体70,71を採用しているので、迂回経路における撚線S’自身の遠心力を弓状回転体70,71の案内により軽減することができ、また、撚線S’に受ける空気抵抗も弓状回転体70,71に取り付けられたガイドダイス701,711により撚線S’に加わる力を分散することができ、すなわち軟線の撚線に適用することができる。
【0108】
図12は、本願発明の第3実施形態に係る撚線機を示す側面図である。この撚線機1Bは、第1ないし第4椀状回転体28,29,30,31に代えて、複数個のガイドローラを用いる点で第1実施形態の撚線機1と異なる。すなわち、第3実施形態に係る撚線機1Bでは、第1ないし第4椀状回転体28,29,30,31に代えてそれぞれ第1ないし第4の板状部材80,81,82,83が設けられ、それらの先端にガイド部材としてガイドローラ80a,81a,82a,83aが回転自在に支持されている。なお、第1ないし第4の板部材80,81,82,83には、ガイドローラ80a,81a,82a,83aの取付位置と対向する位置に回転時のバランスを維持するためのダミーローラ80b,81b,82b,83bが回転自在に支持されている。その他の構成については、上記実施形態の撚線機の構成と略同様である。
【0109】
撚線S’は、第1ないし第4のガイドローラ80a,81a,82a,83aにそれぞれ掛架されるが、第1のガイドローラ80aには第1ターンローラ24から引き出された撚線S’が第1ターンローラ24とは逆方向に掛架されている(図12では右回り)。また、第2のガイドローラ81aには第1のガイドローラ80aから引き出された撚線S’が第1のガイドローラ80aと同方向に掛架され、第3のガイドローラ82aには第3ターンローラ26から引き出された撚線S’が第3ターンローラ26とは逆方向に掛架されている(図12では左回り)。さらに、第4のガイドローラ83aには第3のガイドローラ82aから引き出された撚線S’が第3のガイドローラ82aと同方向に掛架されている。
【0110】
第1ないし第4のガイドローラ80a,81a,82a,83aは、第1ないし第4回転軸6,7,8,9及び第1ないし第4の板状部材80,81,82,83の回転に伴って回転軸線Mの周りにそれぞれ回転する。
【0111】
第3実施形態に係る撚線機1Bは、迂回経路の両端部だけを部分的にガイドする点では第1実施形態と共通であるが、第1実施形態に係る撚線機1に比べてガイド部材の構成が簡単であるので、撚線機1Bの構成が簡単になる。また、迂回経路を撚線S’が通過する際の抵抗を少なくできる。
【0112】
図13は、本願発明の第4実施形態に係る撚線機を示す側面図である。
【0113】
第4実施形態に係る撚線機1Cは、第1実施形態に係る撚線機1に対して、第1回転軸6及び第2回転軸7に対する駆動源と第3回転軸8及び第4回転軸9に対する駆動源とを別にした点が異なる。第1実施形態に係る撚線機1では、第1回転軸6ないし第4回転軸9の駆動源を共通にし、その駆動源として1台のモータ20を設けていたが、第3回転軸8及び第4回転軸9の回転方向を第1回転軸6及び第2回転軸7の回転方向と逆にしなければならないので、第3回転軸8と第4回転軸9にはそれぞれ第1差動装置10と第2差動装置11を設ける必要があった。
【0114】
第4実施形態に係る撚線機1Cは、第1回転軸6及び第2回転軸7に対する駆動源と第3回転軸8及び第4回転軸9に対する駆動源とを別にすることによって、第1差動装置10と第2差動装置11を不要とし、第1回転軸6と第4回転軸9との連結構造と、第2回転軸7と第3回転軸8との連結構造との簡単化を図るようにしたものである。以下、相違する構成について簡単に説明する。
【0115】
撚線機1Cは、第3回転軸8及び第4回転軸9の駆動源としてクレードル12内にモータ90が設けられ、このモータ90の回転力が伝達機構91によって第3回転軸8と第4回転軸9とに伝達される構成となっている。
【0116】
伝達機構91は、詳細な構成は省略するが、モータ90の回転力をベルト912によって一旦シャフト911に伝達し、シャフト911からベルト913とベルト914によってそれぞれ第3回転軸8の先端部(図13では左側の端部)と第4回転軸9の先端部(図13では右側の端部)とに伝達する構成である。なお、シャフト911は、第3回転軸8及び第4回転軸9の各先端部に回転自在に支持された一対の支持部材92a,92b(クレードル)の先端に回転自在に支持されている。
【0117】
また、モータ90には、第2回転軸7及び第3回転軸8に設けられた配線によって外部から電源が供給されている。具体的には、第2回転軸7の右方先端と第2椀状回転体29の左隣の近傍位置にそれぞれスリップリング93とスリップリング94が設けられ、両スリップリング93,94は、第2回転軸7の内部を通るケーブル96によって接続されている。さらに、第3回転軸8の先端部にもスリップリング95が設けられ、スリップリング94は第3回転軸8の内部を通るケーブル97によってスリップリング95に接続されている。そして、スリップリング93に外部から三相交流が供給され、その三相交流はスリップリング95からクレードル12に沿って配設されたケーブルによってモータ90に供給される。
【0118】
第4実施形態に係る撚線機1Cの伝達機構91の構成は、第1実施形態に係る撚線機1のモータ20の回転力を第1回転軸6及び第2回転軸7に伝達する伝達機構の構成と同じである。従って、モータ90は、モータ20とは逆方向に回転され、これにより第3回転軸8及び第4回転軸9は、第1回転軸6及び第2回転軸7と逆方向に回転する。
【0119】
上記のように、第4実施形態では、第3回転軸8を第2回転軸7の支持部702に直接回転自在に支持させるとともに、第3回転軸8の先端部をベルト913によって伝達機構91のシャフト911に連結し、第4回転軸9を第1回転軸6の支持部602に直接回転自在に支持させるとともに、第4回転軸9の先端部をベルト914によって伝達機構91のシャフト911に連結するだけの構成となるので、第1実施形態に比べて装置構成を簡略化することができる。
【0120】
なお、第4実施形態に係る第3回転軸8及び第4回転軸9の駆動源の構成を第2実施形態及び第3実施形態に適用できることは言うまでもない。
【0121】
もちろん、この発明の範囲は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、第1実施形態の撚線機1における撚線の経路は、第1ターンローラ24から第1回転体28及び第2回転体29を介して第2ターンローラ25に至り、内側に設置された第3ターンローラ26から第3回転体30及び第4回転体31を介して第4ターンローラ27から巻取りボビン18に至るものであるが、例えば撚線の供給リールをクレードル12内に設け、上記とは逆の経路を辿って外部に配置された巻取りボビンに至るものであってもよい。
【0122】
また、例えば、上記第1及び第4実施形態では、迂回経路を形成するための4つの回転体を略お椀状としたが、4つの回転体を板部材とし、各板部材にガイドダイスが所定間隔を隔てて設けられる構成であってもよい。また、上記実施形態では、差動装置にはギアが用いられていたが、ベルトを用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本願発明に係る撚線機における4度撚り動作の基本構成を示す図である。
【図2】本願発明の第1実施形態に係る撚線機の側面図である。
【図3】図2に示す撚線機の上面図である。
【図4】図2に示す撚線機の第2本体フレームの部分を右側から見た図である。
【図5】図2のAの部分を抽出した図である。
【図6】図2のBの部分を抽出した図である。
【図7】第1ターンローラの第1回転軸に対する取り付け構造を示す斜視図である。
【図8】第1回転体の斜視図である。
【図9】第1実施形態に係る撚線機に適用された差動装置の基本構成を示す斜視図である。
【図10】第1実施形態に係る撚線機に適用される差動装置の変形例を示す斜視図である。
【図11】第2実施形態に係る撚線機の側面図である。
【図12】第3実施形態に係る撚線機の側面図である。
【図13】第4実施形態に係る撚線機の側面図である。
【図14】従来の撚線機の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0124】
1 撚線機
2 台座
3a,3b 支持部材
4 第1本体フレーム
5 第2本体フレーム
6 第1回転軸
6a 空間
601,603 支持部材
602 支持部
7 第2回転軸
7a 空間
701,703 支持部材
702 支持部
8 第3回転軸
9 第4回転軸
901 支持部材
902 被支持部
10 第1差動装置
11 第2差動装置
12 クレードル
13 後ろオーバツイスタ
14 引取キャプスタン
15 強制ローラ群
17 トラバース装置
18 巻取りボビン
19 支持板
20 モータ
21 ラインシャフト
22 目板
23 撚り口ダイス
24 第1ターンローラ
25 第2ターンローラ
26 第3ターンローラ
27 第4ターンローラ
28 第1椀状回転体
281 ガイドダイス
282 ダミーダイス
29 第2椀状回転体
291 ガイドダイス
292 ダミーダイス
30 第3椀状回転体
301 ガイドダイス
302 ダミーダイス
31 第4椀状回転体
311 ガイドダイス
312 ダミーダイス
32 第1プーリ
33 第2プーリ
34 第1ベルト
35 第3プーリ
36 第4プーリ
37 第2ベルト
38 第5プーリ
39 第6プーリ
40 第3ベルト
41 第7プーリ
42 第8プーリ
43 第4ベルト
44 第9プーリ
45 第10プーリ
46 第5ベルト
50 歯車(第1差動装置10の第1の太陽ギヤ)
51 歯車(第1差動装置10の第2の太陽ギヤ)
52,53 歯車(第1差動装置10の遊星ギヤ)
54 歯車(第2差動装置11の第1の太陽ギヤ)
55 歯車(第2差動装置11の第2の太陽ギヤ)
56,57 歯車(第2差動装置11の遊星ギヤ)
60 伝達機構
61 伝達機構
62 伝達機構
70 第1の弓状回転体
71 第2の弓状回転体
72 第3の弓状回転体
80,81,82,83 板状部材
80a 第1のガイドローラ
81a 第2のガイドローラ
83a 第3のガイドローラ
84a 第4のガイドローラ
90 モータ
91 伝達機構
911 シャフト
912〜914 ベルト
93〜95 スリップリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撚り口ダイスから取り込まれる複数の素線を巻取手段まで案内する経路上で撚りを加え、前記複数の素線を撚線にして前記巻取手段で巻き取る撚線機において、
前記撚り口ダイスと前記巻取手段との間に、前記撚り口ダイスと前記巻取手段を結ぶ中心線に軸心を合わせて配置されるとともに当該軸心を回転軸として回転自在に配設される棒部材からなり、前記撚り口ダイスから取り込まれた複数の素線を前記軸心に沿って前記巻取手段側に案内する第1の空間が形成された第1の回転軸と、
前記第1の回転軸に設けられ、前記第1の空間を案内された前記複数の素線が掛架されるロール部材からなり、前記第1の回転軸の回転により当該第1の回転軸の軸心の周りに回転して前記複数の素線に第1の撚りを加える第1の撚り手段と、
前記巻取手段に対して前記撚り口ダイスとは反対側に、前記中心線に軸心を合わせて配置されるとともに当該軸心を回転軸として回転自在に配設される棒部材からなり、前記第1の撚り手段で前記複数の素線に撚りが加えられた撚線を前記軸心に沿って前記巻取手段側に案内する第2の空間が形成された第2の回転軸と、
前記第1の撚り手段で前記第1の撚りが加えられた撚線を前記第2の回転軸に案内する第1のガイド手段と、
前記第2の回転軸に設けられ、前記第1のガイド手段で案内された前記撚線を掛架して前記第2の空間に案内するロール部材からなり、前記第2の回転軸の回転により当該第2の回転軸の軸心の周りに回転して前記撚線に第2の撚りを加える第2の撚り手段と、
前記第2の回転軸と前記巻取手段との間に、前記中心線に軸心を合わせて配置されるとともに当該軸心を回転軸として回転自在に配設される棒部材からなり、前記第2の回転軸の第2の空間を案内された前記撚線を前記巻取手段側に案内する第3の空間が形成された第3の回転軸と、
前記第3の回転軸に設けられ、前記第3の空間を案内された前記撚線が掛架されるロール部材からなり、前記第3の回転軸の回転により当該第3の回転軸の軸心の周りに回転して前記撚線に第3の撚りを加える第3の撚り手段と、
前記第1の回転軸と前記巻取手段との間に、前記中心線に軸心を合わせて配置されるとともに当該軸心を回転軸として回転自在に配設される棒部材からなり、前記第3の撚り手段で前記第3の撚りが加えられた撚線を前記軸心に沿って前記巻取手段側に案内する第4の空間が形成された第4の回転軸と、
前記第3の撚り手段で前記第3の撚りが加えられた撚線を前記第4の回転軸に案内する第2のガイド手段と、
前記第4の回転軸に設けられ、前記第2のガイド手段で案内された前記撚線を掛架して前記第4の空間に案内するロール部材からなり、前記第4の回転軸の回転により当該第4の回転軸の軸心の周りに回転して前記撚線に第4の撚りを加える第4の撚り手段と、
前記第1の回転軸と前記第2の回転軸を同一の回転方向に回転させ、前記第3の回転軸と前記第4の回転軸を前記第1,第2の回転軸とは逆方向に回転させる駆動手段と、
を備えることを特徴とする、撚線機。
【請求項2】
前記撚り口ダイスは、前記第1の回転軸の第1の空間が開口する一方端に取り付けられ、
前記第4の回転軸は、前記第1の回転軸の他方端に形成された支持部に回転自在に支持され、前記第3の回転軸は、前記第2の回転軸の前記巻取手段側の一端に形成された支持部に回転自在に支持され、
前記駆動手段は、
前記第1の回転軸と前記第2の回転軸に対する回転力を発生させる第1の駆動源と、
前記巻取手段内に配設され、前記第3の回転軸と前記第4の回転軸に対する回転力を発生させる第2の駆動源と、
前記第1の駆動源で発生した回転力を前記第1の回転軸と前記第2の回転軸とに伝達し、同一方向に同一の回転数で回転させる第1の伝達手段と、
前記巻取手段内に配設され、前記第2の駆動源で発生した回転力を前記第3の回転軸と前記第4の回転軸に伝達し、前記第1,第2の回転軸とは逆方向に同一の回転数で回転させる第2の伝達手段と、
からなる、請求項1に記載の撚線機。
【請求項3】
前記撚り口ダイスは、前記第1の回転軸の第1の空間が開口する一方端に取り付けられ、
前記第4の回転軸は、前記第1の回転軸の他方端に第1の差動装置によって連結され、
前記第3の回転軸は、前記第2の回転軸の前記巻取手段側の一端に前記第1の差動装置と同一構成の第2の差動装置によって連結され、
前記駆動手段は、
回転力を発生させる1の駆動源と、
前記駆動源で発生した回転力を前記第1の回転軸と前記第2の回転軸とに伝達し、同一方向に同一の回転数で回転させる第1の伝達手段と、
前記駆動源で発生した回転力を前記第1の差動装置と前記第2の差動装置とに伝達し、前記第1,第2の回転軸と同一方向に前記第1,第2の回転軸とは異なる回転数で前記第1の差動装置と前記第2の差動装置を回転させる第2の伝達手段と、
からなり、
前記第1の差動装置は、前記第2の伝達手段で伝達された回転力により前記第4の回転軸を前記第1,第2の回転軸とは逆方向に同一の回転数で回転させ、前記第2の差動装置は、前記第2の伝達手段で伝達された回転力により前記第3の回転軸を前記第1,第2の回転軸とは逆方向に同一の回転数で回転させる、請求項1に記載の撚線機。
【請求項4】
前記第1の差動装置は、前記第4の回転軸に固着された第1の太陽ギヤと、前記第1の回転軸に回転可能に設けられ、前記第2の伝達手段により回転力が伝達される第2の太陽ギヤと、前記第1の回転軸に設けられた腕に回転可能に支持された軸の両端に固着され、それぞれ前記第1の太陽ギヤと前記第2の太陽ギヤに歯合した一対の第1の遊星ギヤとで構成され、
前記第2の差動装置は、前記第3の回転軸に固着された第3の太陽ギヤと、前記第2の回転軸に回転可能に設けられ、前記第2の伝達手段により回転力が伝達される第4の太陽ギヤと、前記第2の回転軸に設けられた腕に回転可能に支持された軸の両端に固着され、それぞれ前記第3の太陽ギヤと前記第4の太陽ギヤに歯合した一対の第2の遊星ギヤとで構成される、請求項3に記載の撚線機。
【請求項5】
前記第1のガイド手段は、一端が前記第1の回転軸の前記第1の撚り手段に隣接した位置に固定されるとともに、他端が前記第2の回転軸の前記第2の撚り手段に隣接した位置に固定され、前記第1の撚り手段から前記第2の撚り手段までの経路全体を案内する弓形状の部材からなり、
前記第2のガイド手段は、一端が前記第3の回転軸の前記第3の撚り手段に隣接した位置に固定されるとともに、他端が前記第4の回転軸の前記第4の撚り手段に隣接した位置に固定され、前記第3の撚り手段から前記第4の撚り手段までの経路全体を案内する弓形状の部材からなる、請求項1乃至4のいずれかに記載の撚線機。
【請求項6】
前記第1のガイド手段は、前記第1の回転軸の前記第1の撚り手段に隣接した位置に固定され、前記第1の撚り手段から前記第2の撚り手段までの経路の前側の一部を案内する第1の部材と、前記第2の回転軸の前記第2の撚り手段に隣接した位置に固定され、前記第1の撚り手段から前記第2の撚り手段までの経路の後側の一部を案内する第2の部材とからなり、
前記第2のガイド手段は、前記第3の回転軸の前記第3の撚り手段に隣接した位置に固定され、前記第3の撚り手段から前記第4の撚り手段までの経路の前側の一部を案内する第3の部材と、前記第4の回転軸の前記第4の撚り手段に隣接した位置に固定され、前記第3の撚り手段から前記第4の撚り手段までの経路の後側の一部を案内する第4の部材とからなる、請求項1乃至4のいずれかに記載の撚線機。
【請求項7】
前記第1ないし第4の部材は、外周面または内周面に中央から外周縁に向かって前記撚り線を案内する複数個のガイドダイスが設けられた椀状の部材からなる、請求項6に記載の撚線機。
【請求項8】
前記第1ないし第4の部材は、支持部材の先端に回転自在に支持され、前記撚線が掛架されるガイドロールからなる、請求項6に記載の撚線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−29904(P2010−29904A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194688(P2008−194688)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(508229828)
【Fターム(参考)】