説明

撥水パターン構造物及びその製造方法

【課題】 新規かつ簡便な撥水パターン構造物の製造方法、及び該撥水パターン構造物の製造方法により製造された高い撥水性を有する撥水パターン構造物の提供。
【解決手段】 撥水性化合物を含む液中で、光の照射により突起を形成可能な突起形成性層を有する突起形成材料の該突起形成性層に対しパターン状に光照射を行い、少なくとも露光領域に前記撥水性化合物が直接化学的に結合した突起形状物を形成する突起形成工程を含む撥水パターン構造物の製造方法、及び、該撥水パターン構造物の製造方法により製造された撥水パターン構造物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規かつ簡便な撥水パターン構造物の製造方法及び該撥水パターン構造物の製造方法により製造された高い撥水性を有する撥水パターン構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
撥水性とは、水をはじく性質のことであり、近年、水との接触角が極めて高い撥水性(超撥水性)を示す表面が知られるようになり注目されている。この高い撥水性(超撥水性)とは、一般に、水との接触角が120度以上、特に150度以上の表面、材料、状態等を意味する。
このような高い撥水性は、低エネルギー表面に表面粗さを付与することにより実現できることが、蓮の葉における撥水性の解析によって明らかになり、高い撥水性を付与するための技術について種々の検討がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、表面の少なくとも一部に、大きい周期の凹凸構造が形成され、その凹凸構造が前記周期より小さい周期の凹凸構造を有し、その表面積倍増因子が5以上である撥水表面を形成する方法が提案されている。この凹凸の形成方法としては。機械加工、電機めっき等が開示されている。
また、特許文献2には、表面に微細な凹凸が形成された撥水膜が、部材本体の表面に形成され、前記撥水膜の前記凹凸の表面に沿ってダイヤモンド状炭素薄膜が形成されている撥水性部材が提案されている。この凹凸の形成方法としては、研削、エッチング、プラズマCVD法などが開示されている。
【0004】
しかし、これらの提案は、研削装置、エッチングやリソグラフィーなどの特殊な装置を用いて凹凸を形成しており、汎用性に欠け、大量生産には不向きなものである。
【0005】
また、特許文献3には、透明材の表面に、背面からの光の輝度を高める第1の凹凸形状が形成され、該第1の凹凸形状が形成された表面上に、撥水性を有する低表面エネルギー物質からなる薄層が積層され、該薄層の表面に、前記第1の凹凸形状よりも小さい表面粗さの第2の凹凸形状が形成されている超撥水性材料が提案されている。しかし、前記提案の凹凸は薄膜内に含有された微粒子によって形成されているので、十分な強度や耐久性を有しないものである。
【0006】
したがって高い撥水性を有する撥水パターン構造物を簡便に、効率よく、大量生産できる方法は、未だ得られておらず、その速やかな提供が望まれているのが現状である。
【0007】
【特許文献1】特公平7−197017号公報
【特許文献2】特開2001−79484号公報
【特許文献3】特開2003−1735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、新規かつ簡便な撥水パターン構造物の製造方法、及び該撥水パターン構造物の製造方法により製造された高い撥水性を有する撥水パターン構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。即ち、高い撥水性を付与するため、(1)低表面張力材料の塗設、(2)表面積の拡大を同時に達成できる撥水パターン構造物の製造方法について鋭意研究を重ねた結果、少なくとも突起形成性層を設けた突起形成材料を、レーザー光のような高照度の光源により露光すると、その露光量に応じて突起形状物が形成されることを知見した。このように突起形状物を生成させる方法は、従来全く行われておらず、かつ露光量に応じて突起形状物の大きさが任意に変えられることについては、全く知られていなかった。そして、突起形成性層のガス透過性と光照射エネルギー量によって、突起形状物を生成するか、しないか、あるいは突起形成性層そのものがアブレーションされてなくなってしまうか否かを制御できることを知見した。また、この現象を利用して突起の表面に撥水性化合物を結合させて撥水層を形成すると、凹凸構造と相俟って、高い撥水性を有する撥水パターン構造物が得られることを知見した。
【0010】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 撥水性化合物を含む液中で、光の照射により突起を形成可能な突起形成性層を有する突起形成材料の該突起形成性層に対しパターン状に光照射を行い、少なくとも露光領域に前記撥水性化合物が直接化学的に結合した突起形状物を形成する突起形成工程を含むことを特徴とする撥水パターン構造物の製造方法である。
<2> 露光後の突起形成性層に対し突起形成不可能なエネルギーの光を照射して突起形成性層を定着する定着工程を含む前記<1>に記載の撥水パターン構造物の製造方法である。
<3> 撥水性化合物が、フッ素モノマーを含む前記<1>から<2>のいずれかに記載の撥水パターン構造物の製造方法である。
<4> 光照射の光源が、レーザー光及び発光ダイオードのいずれかである前記<1>から<3>のいずれかに記載の撥水パターン構造物の製造方法である。
<5> 光照射のエネルギー強度が、1〜100J/cmである前記<1>から<4>のいずれかに記載の撥水パターン構造物の製造方法である。
<6> 突起形成性層の酸素透過係数が、10ml・25μm/m・24h・atm以下である前記<1>から<5>のいずれかに記載の撥水パターン構造物の製造方法である。
<7> 突起形成材料が、支持体を有する前記<1>から<6>のいずれかに記載の撥水パターン構造物の製造方法である。
<8> 突起形成性層の上層及び突起形成性層の下層の少なくともいずれかにガスバリア層を有する前記<1>から<7>のいずれかに記載の撥水パターン構造物の製造方法である。
<9> ガスバリア層の酸素透過係数が、5ml・25μm/m・24h・atm以下である前記<8>に記載の撥水パターン構造物の製造方法である。
<10> 突起形成性層が光熱変換物質を含有し、該光熱変換物質の極大吸収波長が330〜1300nmである前記<1>から<9>のいずれかに記載の撥水パターン構造物の製造方法である。
<11> 突起形成性層が発泡材料を含有し、該発泡材料の極大吸収波長が330nm〜1300nmである前記<1>から<10>のいずれかに記載の撥水パターン構造物の製造方法である。
<12> 発泡材料が、感光性発泡材料である前記<11>に記載の撥水パターン構造物の製造方法である。
<13> 感光性発泡材料が、ジアゾニウム塩化合物、キノンジアジド化合物及びアジド化合物から選択される少なくとも1種である前記<12>に記載の撥水パターン構造物の製造方法である。
<14> 感光性発泡材料が、マイクロカプセルに内包されている前記<12>から<13>のいずれかに記載の撥水パターン構造物の製造方法である。
<15> 突起形成性層及び突起形成性層の上層のガスバリア層の少なくともいずれかが、重合開始剤を含有する前記<1>から<14>のいずれかに記載の撥水パターン構造物の製造方法である。
<16> 前記<1>から<15>のいずれかに記載の撥水パターン構造物の製造方法により製造されたことを特徴とする撥水パターン構造物である。
<17> 平坦部からの突起の高さが0.01〜20μmである前記<16>に記載の撥水パターン構造物である。
<18> 水との接触角が120度以上である前記<16>から<17>のいずれかに記載の撥水パターン構造物である。
【0011】
本発明の撥水パターン構造物の製造方法は、撥水性化合物を含む液中で、光の照射により突起を形成可能な突起形成性層を有する突起形成材料の該突起形成性層に対しパターン状に光照射を行い、少なくとも露光領域に前記撥水性化合物が直接化学的に結合した突起形状物を形成する突起形成工程を含む。その結果、簡単な方法により、突起パターンを効率よく形成できると同時に、突起の表面に撥水層を形成することで、これらの相乗効果により、極めて高い撥水性を有する撥水パターン構造物が提供できる。
【0012】
本発明の撥水パターン構造物は、本発明の前記撥水パターン構造物の製造方法により製造される。該撥水パターン構造物は、極めて高い撥水性を有しているので、各種用途に幅広く適用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、新規かつ簡便な撥水パターン構造物の製造方法、及び該撥水パターン構造物の製造方法により製造された高い撥水性を有する撥水パターン構造物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(撥水パターン構造物及び撥水パターン構造物の製造方法)
本発明の撥水パターン構造物の製造方法は、少なくとも突起形成工程を含んでなり、定着工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
本発明の撥水パターン構造物は、本発明の前記撥水パターン構造物の製造方法により製造される。
以下、本発明の撥水パターン構造物の製造方法の説明を通じて、本発明の撥水パターン構造物の詳細についても説明する。
【0015】
<突起形成工程>
前記突起形成工程は、撥水性化合物を含む液中で、少なくとも光の照射により突起を形成可能な突起形成性層を有する突起形成材料の該突起形成性層に対しパターン状に光照射を行い、少なくとも露光領域に前記撥水性化合物が直接化学的に結合した突起形状物を形成する工程である。
【0016】
〔突起形成材料〕
前記突起形成材料は、少なくとも突起形成性層を有してなり、支持体、ガスバリア層、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0017】
−突起形成性層−
前記突起形成性層は、光熱変換物質、発泡材料を含有してなり、バインダー樹脂、光重合開始剤、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
【0018】
−−光熱変換物質−−
前記突起形成性層は、光熱変換物質を含むことが好ましい。該光熱変換物質としては、紫外線、可視光線、赤外線、白色光線等の光を吸収して熱に変換し得る物質であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、カーボングラファイト、有機顔料、鉄粉、黒鉛粉末、酸化鉄粉、酸化鉛、酸化銀、酸化クロム、硫化鉄、硫化クロム等が挙げられる。これらの中でも、330nm〜1300nmの範囲に極大吸収波長を有する染料、顔料、又は金属微粒子が特に好ましい。
【0019】
前記染料としては、市販の染料及び文献(例えば、「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、例えば、特開昭58−125246号公報、特開昭59−84356号公報、特開昭59−202829号公報、特開昭60−78787号公報等に記載されているシアニン染料;特開昭58−173696号公報、特開昭58−181690号公報、特開昭58−194595号公報等に記載されているメチン染料;特開昭58−112793号公報、特開昭58−224793号公報、特開昭59−48187号公報、特開昭59−73996号公報、特開昭60−52940号公報、特開昭60−63744号公報等に記載されているナフトキノン染料;特開昭58−112792号公報等に記載されているスクワリリウム色素;英国特許第434,875号明細書に記載されているシアニン染料、等が好適に挙げられる。
【0020】
更に、米国特許第5,156,938号明細書に記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書に記載の置換アリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩;特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)記載のトリメチンチアピリリウム塩;特開昭58−181051号公報、同58−220143号公報、同59−41363号、同59−84248号公報、同59−84249号公報、同59−146063号公報、同59−146061号公報に記載されているピリリウム系化合物;特開昭59−216146号公報に記載されているシアニン色素;米国特許第4,283,475号明細書に記載されているペンタメチンチオピリリウム塩;特公平5−13514号公報、特公平5−19702号公報に記載されているピリリウム化合物、なども好適に挙げられる。また、別の染料の例として、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。これらの染料のうち、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体が特に好適に挙げられる。
【0021】
前記顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック、等が好適に使用できる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記光熱変換物質としての染料又は顔料の突起形成性層における含有量は、0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。染料の場合には、0.5〜10質量%が特に好ましい。また、顔料の場合には、3.1〜10質量%が特に好ましい。前記顔料又は染料の含有量が0.01質量%未満であると、感度が低くなってしまうことがあり、50質量%を超えると、突起形成性層の膜強度が弱くなってしまうことがある。
【0023】
また、前記光熱変換物質としては、赤外線を吸収して熱に変換し得る赤外線吸収物質が特に好適に用いられる。
前記赤外線吸収物質としては、赤外線を吸収して発熱するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機化合物、有機化合物などが挙げられる。該無機化合物としては、カーボンブラックが好適に挙げられる。
前記有機化合物としては、例えば、赤外線吸収色素(染顔料)が好ましい。該赤外線吸収色素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カチオン性色素、錯塩形成色素、キノン系中性色素、などが挙げられる。
【0024】
前記カチオン性色素としては、下記構造式(i)で表される色素が好適である。
[X-1/m ・・・構造式(i)
ただし、前記構造式(i)中、Dはカチオン性色素母核を表す。Xは対アニオンを表す。mは1〜4の整数を表す。
【0025】
前記構造式(i)におけるカチオン性色素母核であるDとしては、例えば、ポリメチン(シアニンを含む)、アズレニウム、ピリリウム、チオピリリウム、スクワリリウム、トリアリールメタン、インモニウム、ジインモニウム、等が好ましい。
−1/mは、対アニオンを形成可能なものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ClO、BF、I、Cl、などが挙げられる。
【0026】
前記カチオン性色素としては、下記構造式で表される具体的色素が挙げられる。
【化1】

【0027】
【化2】

【0028】
【化3】

【0029】
【化4】

【0030】
前記錯塩形成色素としては、例えば、チオールニッケル錯塩系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素が好ましく、以下のようは具体的色素を挙げることができる。
【0031】
【化5】

【0032】
前記キノン系中性色素としては、ナフトキノン系色素及びアントラキノン系色素が好ましく、以下のような具体的色素を挙げることができる。
【0033】
【化6】

【0034】
また、前記赤外線吸収色素のうち、マイクロカプセル形成時に該マイクロカプセル壁材と反応する活性基を有しているものも有効である。
前記活性基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート基、ヒドロキシ基が特に好ましく、以下のような、活性基を有するカチオン性色素、錯塩形成色素、及びキノン系中性色素が特に好ましい。
【0035】
前記活性基を有するカチオン性色素は、下記構造式(i)で表される色素が好適である。
[X-1/m ・・・構造式(i)
ただし、前記構造式(i)中、Dはカチオン性色素母核を表す。Xは対アニオンを表す。mは1〜4の整数を表す。
【0036】
前記構造式(i)におけるカチオン性色素母核であるDとしては、例えば、ポリメチン(シアニンを含む)、アズレニウム、ピリリウム、チオピリリウム、スクワリリウム、トリアリールメタン、インモニウム、ジインモニウム、等が好ましい。
−1/mは、対アニオンを形成可能なものであれば特に限定されない。
なお、上記マイクロカセル壁と反応する活性基は、D若しくはX−1/mの何れにあってもよい。
【0037】
前記活性基を有するカチオン性色素としては、以下のような具体的色素が好適に挙げられる。
【化7】

【0038】
【化8】

【0039】
【化9】

【0040】
【化10】

【0041】
前記活性基を有する錯塩形成色素としては、チオールニッケル錯塩系、フタロシアニン系色素、又はナフタロシアニン系色素が好ましく、以下のような具体的色素を挙げることができる。
【0042】
【化11】

【0043】
前記活性基を有するキノン系中性色素としては、例えば、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素が好ましく、以下のような具体的色素を好適に挙げることができる。
【0044】
【化12】

【0045】
前記赤外線吸収色素は、高分子材料中、マイクロカプセルオイル中、マイクロカプセル壁中のいずれに添加してもよく、前記高分子材料中に添加する場合は、水溶性のものが、それ以外に添加する場合には油溶性のものを用いることが好ましい。
【0046】
前記赤外線吸収色素の含有量は、作製した突起形成材料において、赤外領域で最も吸光度が高い波長の吸光度で決定され、該吸光度としては、0.1〜4.0が好ましく、0.2〜2.5がより好ましい。
【0047】
また、前記突起形成性層には、光熱変換効果を向上させる目的で、ニトロセルロースを突起形成性層中に更に含有させることが好ましい。前記ニトロセルロースは、近赤外レーザー光を光吸収剤が吸収し発生した熱により分解し、効率よくジアゾニウム塩を分解したり、ニトロセルロース自身からのガス発生により突起成分形成に役立てることもできる。
【0048】
前記ニトロセルロースは、常法により精製した天然のセルロースを混酸で硝酸エステル化し、セルロースの構成単位であるグルコピラノース環に存在する3個の水酸基の部分にニトロ基を一部又は全部導入することによって得ることができる。前記ニトロセルロースの硝化度としては、2〜13が好ましく、10〜12.5がより好ましく、11〜12.5が更に好ましい。ここで、硝化度とは、ニトロセルロース中の窒素原子の質量%を表す。前記硝化度が著しく高いと、アブレーションの促進効果が高められるが、室温安定性が低下する傾向にある。また、ニトロセルロースが爆発性となり、パターン形成材料を作製する際のニトロセルロースの取り扱いに危険が伴うことがある。一方、硝化度が著しく低いと、アブレーションの促進効果が充分得られないことがある。
【0049】
前記ニトロセルロースの重合度は20〜200が好ましく、25〜150がより好ましい。前記重合度が高すぎると、突起形成性層の除去が不完全となることがあり、重合度が低すぎると、突起形成性層の塗膜性が不良になることがある。
前記ニトロセルロースの含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記突起形成性層全量に対し0〜80質量%が好ましく、5〜70質量%がより好ましく、30〜70質量%が更に好ましい。
【0050】
−−発泡材料−−
前記突起形成性層は、発泡材料を含有することが好ましい。該発泡材料としては、定着可能な点から感光性発泡材料を用いることが好ましい。該感光性発泡材料を使用することによりパターン形成後に発泡する懸念がなくなり、その分、撥水パターン構造物の安定性を保持しやすくなる。
【0051】
前記感光性発泡材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジアゾニウム塩化合物、キノンジアジド化合物、アジド化合物などが好適に挙げられる。これらの中でも、安定性が高い点からジアゾニウム塩化合物が特に好ましい。
【0052】
前記ジアゾニウム塩化合物としては、下記構造式(I)で表される化合物が好ましい。
【化13】

【0053】
前記構造式(I)中、Arは置換可能な芳香環を表す。Xは対アニオンを表す。
Arは、置換基Yを有していてもよく、該Yとしては、各種電子供与性基や電子吸引性基が好ましい。また、Arは置換基Yを複数個有していてもよく、この場合の置換基Yは、同一であっても異なっていてもよい。
【0054】
Arが有する置換基Yとしては、例えば、置換アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、が好ましい。
前記Yが、置換アミノ基を表す場合、該置換アミノ基としては、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数6〜10のアリールアミノ基、炭素数7〜20のN−アルキル−N−アリールアミノ基、炭素数2〜20のアシルアミノ基が好ましく、これらの基は更に1又は2以上の置換基を有していてもよい。また、前記アルキル基等の置換基同士が結合して環状アミノ基を形成してもよい。
前記Yがアルキルチオ基を表す場合、炭素数1〜18のアルキルチオ基が好ましく、アリールチオ基を表す場合、炭素数6〜10のアリールチオ基が好ましく、アルコキシ基を表す場合、炭素数1〜18のアルコキシ基が好ましく、アリールオキシ基を表す場合、炭素数6〜10のアリールオキシ基が好ましく、これらの基は更に1又は2以上の置換基を有していてもよい。
【0055】
前記Yが表す置換アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基におけるアルキル基、アリール基としては、以下のようなものが挙げられる。
【0056】
【化14】

【0057】
更に、前記Yとしては、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、塩素原子、フッ素原子、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、炭素数6〜18のアリールスルホニル基、炭素数1〜18のアシル基、炭素数1〜18のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜12のスルホンアミド基、炭素数2〜13のカルボンアミド基、ニトロ基、及びシアノ基が好ましい。
アルキル基、アルキルスルホニル基は、分岐していてもよく、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、フェニル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、又はカルバモイル基で置換されていてもよい。
アリールスルホニル基は、ハロゲン原子、アルキル基、又はアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0058】
前記Yとしては、例えば、以下に示すものが好適に挙げられる。
【化15】

【0059】
前記Yが置換アミノ基を示す場合、置換基同士が結合して形成される環状アミノ基としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0060】
【化16】

【0061】
構造式(I)中、X-で表される対アニオンとしては、例えば、炭素数1〜20のパーフルオロアルキルカルボン酸(例えば、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロデカン酸、パーフルオロドデカン酸)、炭素数1〜20のパーフルオロアルキルスルホン酸(例えば、パーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロデカンスルホン酸、パーフルオロヘキサデカンスルホン酸)、炭素数7〜50の芳香族カルボン酸(例えば、4,4−ジ−t−ブチルサリチル酸、4−t−オクチルオキシ安息香酸、2−n−オクチルオキシ安息香酸、4−t−ヘキサデシル安息香酸、2,4−ビス−n−オクタデシルオキシ安息香酸、4−n−デシルナフトエ酸)、炭素数6〜50の芳香族スルホン酸(例えば、1,5−ナフタレンジスルホン酸、4−t−オクチルオキシベンゼンスルホン酸、4−n−ドデシルベンゼンスルホン酸)、4,5−ジ−t−ブチル−2−ナフトエ酸、テトラフッ化ホウ酸、テトラフェニルホウ酸、ヘキサフルオロリン酸等が挙げられる。これらの中でも、炭素数6〜16のパーフルオロアルキルカルボン酸、炭素数10〜40の芳香族カルボン酸、炭素数10〜40の芳香族スルホン酸、テトラフッ化ホウ酸、テトラフェニルホウ酸、ヘキサフルオロリン酸などが好ましい。
【0062】
以下に、前記ジアゾニウム塩化合物の具体例として、下記(1)〜(34)で表される化合物を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
【化17】

【0064】
【化18】

【0065】
【化19】

【0066】
【化20】

【0067】
【化21】

【0068】
前記感光性発泡材料としてのジアゾニウム塩化合物の前記突起形成性層における含有量は、0.05〜10mmol/mが好ましく、0.1〜3mmol/mがより好ましい。
また、前記ジアゾニウム塩化合物は、前記突起形成性層が前記光熱変換物質を含有しない場合には、極大吸収波長が330〜1300nmの範囲にあることが好ましい。
【0069】
−−マイクロカプセル化−−
本発明においては、感光性発泡材料の使用前の生保存性を良化する目的で、感光性発泡材料をマイクロカプセルに内包させることが好ましい。該マイクロカプセルの形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から目的に応じて適宜選択することができる。
前記マイクロカプセルのカプセル壁を形成する高分子物質としては、常温では非透過性であり、加熱時に透過性となる性質を有することが必要である点から、ガラス転移温度が60〜200℃のものが好ましく、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−メタクリレート共重合体、スチレン−アクリレート共重合体、又はこれらの混合系を挙げることができる。
【0070】
前記マイクロカプセル形成方法としては、例えば、界面重合法や内部重合法が好適である。該カプセル形成方法の詳細及びリアクタントの具体例等については、米国特許第3,726,804号明細書、米国特許第3,796,669号明細書などに記載がある。例えば、カプセル壁材として、ポリウレア、又はポリウレタンを用いる場合には、ポリイソシアネート及びそれと反応してカプセル壁を形成する第2物質(例えば、ポリオールやポリアミン)を水性媒体又はカプセル化すべき油性媒体中に混合し、水中でこれらを乳化分散し次に加温することにより油滴界面で高分子形成反応を起こしマイクロカプセル壁を形成する。なお、上記第2物質の添加を省略した場合もポリウレアを生成することができる。
【0071】
前記マイクロカプセルのカプセル壁を形成する高分子物質としては、ポリウレタン及びポリウレアの少なくともいずれかを成分として含有することが、製造適性と熱応答感度に優れる点から好ましい。
【0072】
次に、感光性発泡材料内包マイクロカプセル(ポリウレア壁及びポリウレタン壁の少なくともいずれか)の製造方法について述べる。
まず、感光性発泡材料は、カプセルの芯となる疎水性の有機溶媒に溶解又は分散させ、マイクロカプセルの芯となる油相を調製する。このとき、更に壁材として多価イソシアネートが添加される。
【0073】
前記油相の調製に際し、感光性発泡材料を溶解、分散してマイクロカプセルの芯の形成に用いる疎水性の有機溶媒としては、沸点100〜300℃の有機溶媒が好ましく、例えば、アルキルナフタレン、アルキルジフェニルエタン、アルキルジフェニルメタン、アルキルビフェニル、アルキルターフェニル、塩素化パラフィン、リン酸エステル類、マレイン酸エステル類、アジピン酸エステル類、フタル酸エステル類、安息香酸エステル類、炭酸エステル類、エーテル類、硫酸エステル類、スルホン酸エステル類等が挙げられる。これらは2種以上混合して用いてもよい。
【0074】
カプセル化しようとする感光性発泡材料の前記有機溶媒に対する溶解性が劣る場合には、用いるジアゾニウム塩化合物の溶解性の高い低沸点溶媒を補助的に併用することもでき、該低沸点溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、メチレンクロライド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
このため、感光性発泡材料は、高沸点疎水性有機溶媒、低沸点溶媒に対する適当な溶解度を有していることが好ましい。具体的には、該溶媒に対し5%以上の溶解度を有していることが好ましい。なお、水に対する溶解度は1%以下が好ましい。
【0075】
一方、用いる水相には水溶性高分子を溶解した水溶液を使用し、これに前記油相を投入後、ホモジナイザー等の手段により乳化分散を行うが、該水溶性高分子は、分散を均一かつ容易にするとともに、乳化分散した水溶液を安定化させる分散媒として作用する。ここで、更に均一に乳化分散し安定化させるためには、油相あるいは水相の少なくとも一方に界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤は公知の乳化用界面活性剤が使用可能である。
前記界面活性剤の添加量としては、油相質量に対し0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。
【0076】
調製された油相を分散する水溶性高分子水溶液に用いる水溶性高分子は、乳化しようとする温度における、水に対する溶解度が5%以上の水溶性高分子が好ましく、例えば、ポリビニルアルコール又はその変性物、ポリアクリル酸アミド又はその誘導体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エチレン−アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。なお、酸素透過係数の点からはポリビニルアルコール及びその変性物を使用することが好ましい。
【0077】
前記水溶性高分子は、イソシアネート化合物との反応性がないか、若しくは低いことが好ましく、例えば、ゼラチンのように分子鎖中に反応性のアミノ基を有するものは、予め変性する等して反応性をなくしておくことが好ましい。
【0078】
前記多価イソシアネート化合物としては、3官能以上のイソシアネート基を有する化合物が好ましいが、2官能のイソシアネート化合物であってもよい。具体的には、キシレンジイソシアネート又はその水添物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート又はその水添物、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネートを主原料とし、これらの2量体あるいは3量体(ビューレットあるいはイソシアヌレート)の他、トリメチロールプロパン等のポリオールとキシリレンジイソシアネート等の2官能イソシアネートとのアダクト体として多官能としたもの、トリメチロールプロパン等のポリオールとキシリレンジイソシアネート等の2官能イソシアネートとのアダクト体にポリエチレンオキシド等の活性水素を有するポリエーテル等の高分子量化合物を導入した化合物、ベンゼンイソシアネートのホルマリン縮合物等が挙げられる。
特開昭62−212190号公報、特開平4−26189号公報、特開平5−317694号公報、特開平10−114153号公報等に記載の化合物が好ましい。
【0079】
前記多価イソシアネートの使用量としては、マイクロカプセルの平均粒径が0.3〜12μmであり、壁厚みが0.01〜0.3μmとなるように決定される。また、その分散粒子径としては、0.2〜10μm程度が一般的である。
水相中に油相を加えた乳化分散液中では、油相と水相の界面において多価イソシアネートの重合反応が生じてポリウレア壁が形成される。
【0080】
水相中又は油相の疎水性溶媒中に、更にポリオール及びポリアミンの少なくともいずれかを添加しておけば、多価イソシアネートと反応してマイクロカプセル壁の構成成分の一つとして用いることもできる。上記反応において、反応温度を高く保ち、或いは、適当な重合触媒を添加することが反応速度を速める点で好ましい。
これらのポリオール又はポリアミンの具体例としては、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ソルビトール、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。前記ポリオールを添加した場合には、ポリウレタン壁が形成される。
前記多価イソシアネート、前記ポリオール、前記反応触媒、あるいは、前記壁剤の一部を形成させるためのポリアミン等については成書に詳しい(岩田敬治編 ポリウレタンハンドブック 日刊工業新聞社(1987))。
【0081】
前記乳化は、ホモジナイザー、マントンゴーリー、超音波分散機、ディゾルバー、ケディーミル等の公知の乳化装置の中から適宜選択して行うことができる。乳化後は、カプセル壁形成反応を促進させるために乳化物を30〜70℃に加温することが行われる。また、反応中はカプセル同士の凝集を防止するために、加水してカプセル同士の衝突確率を下げたり、十分な攪拌を行う等の必要がある。
【0082】
また、反応中に改めて凝集防止用の分散物を添加してもよい。重合反応の進行に伴って炭酸ガスの発生が観測され、その終息をもっておよそのカプセル壁形成反応の終点とみなすことができる。通常、数時間反応させることにより、目的のジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセルを得ることができる。
【0083】
−−バインダー樹脂−−
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、塗設可能なバインダー樹脂が好ましく、ガス透過性が低いものがより好ましい。このガス透過性を代表する物性値としては酸素透過係数がある。前記バインダー樹脂の酸素透過係数としては、10ml・25μm/m・24h・atm以下のものが好ましい。
ここで、前記酸素透過係数の測定方法としては、各種知られているが、高真空圧力差法、酸素電極法などが挙げられる。
前記酸素透過係数が10ml・25μm/m・24h・atm以下を満たすバインダー樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン樹脂、などが挙げられる。
【0084】
−−重合開始剤−−
本発明においては、光照射時における突起形成性層(又はガスバリア層)表面に発生するラジカル種の発生を促進する目的で重合開始剤を及び突起形成性層の上層のガスバリア層の少なくともいずれか中に含有させることができる。
前記重合開始剤としては、所定のエネルギー、例えば、活性光線の照射、加熱、電子線の照射などにより、重合開始能を発現し得る公知の熱重合開始剤、光重合開始剤などを目的に応じて、適宜選択して用いることができる。これらの中でも、熱重合よりも反応速度(重合速度)が高い光重合を利用することが製造適性の観点から好適であり、このため、光重合開始剤を用いることが好ましい。
前記光重合開始剤としては、照射される活性光線に対して活性であり、突起形成性層に含まれる重合性化合物と、フッ素化モノマーとを重合させることが可能なものであれば、特に制限はなく、例えば、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤などを用いることができる。
【0085】
前記光重合開始剤としては、例えば、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2′−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のアセトフェノン類;ベンゾフェノン(4,4′−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のケトン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のベンジルケタール類、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0086】
前記重合開始剤の前記突起形成性層における含有量は、0.1〜70質量%が好ましく、1〜40質量%がより好ましい。
【0087】
前記突起形成性層には、上述した光熱変換物質、発泡材料、重合開始剤の他、必要に応じてその他の成分を含有することができる。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、増感剤、溶媒、界面活性剤、紫外線吸収剤、ゲル化剤、などが挙げられる。
【0088】
前記突起形成性層は、例えば、光熱変換物質、発泡材料、重合開始剤、必要に応じて添加されるその他の成分を含有する塗布液を調製し、該塗布液を紙や合成樹脂フィルム等の支持体上に塗布、乾燥することにより塗設することができる。
【0089】
前記塗布方法としては、公知の塗布方法の中から適宜選択することができ、例えば、バー塗布、ブレード塗布、エアナイフ塗布、グラビア塗布、ロールコーティング塗布、スプレー塗布、ディップ塗布、カーテン塗布等が挙げられる。
塗布、乾燥後の突起形成性層の乾燥塗布量としては、2.5〜30g/mが好ましい。
前記突起形成性層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.5〜10μmが好ましく、1〜5μmがより好ましい。
【0090】
前記突起形成性層は、突起形状物の形成性の観点から、ガスバリア性を有していることが好ましい。
前記突起形成性層におけるガスバリア性とは、例えば、発泡材料としてのジアゾニウム塩化合物が分解したときに発生する窒素ガスの透過を抑制する性質のことである。したがって、ガスバリア性は窒素ガスの透過係数で表されるものであるが、分子サイズがほぼ同じであることから、ここでは酸素透過係数で表すこととする。
前記突起形成性層の酸素透過係数は、10ml・25μm/m・24h・atm以下が好ましく、5ml・25μm/m・24h・atm以下がより好ましく、2.5ml・25μm/m・24h・atm以下が更に好ましい。
ここで、前記酸素透過係数の測定方法としては、各種知られているが、高真空圧力差法、酸素電極法などが挙げられる。
【0091】
<ガスバリア層>
前記突起形成性層の上層及び下層の少なくともいずれかにはガスバリア層を有することが好ましい。
前記ガスバリア層の酸素透過係数としては、5ml・25μm/m2・24h・atm以下が好ましく、2.5ml・25μm/m2・24h・atm以下がより好ましく、1.0ml・25μm/m2・24h・atm以下が更に好ましい。なお、前記ガスバリア層の酸素透過係数の下限については特に制限はないが、2.5×10―6ml・25μm/m2・24h・atm程度である。
前記酸素透過係数が5ml・25μm/m2・24h・atmを超えると、突起が変形してしまうことがある。
前記ガスバリア層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.2〜5μmが好ましく、0.5〜3μmがより好ましい。
【0092】
前記ガスバリア層は、上述のような酸素透過係数の条件を満たすため、ポリビニルアルコール(変性品含む)、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、雲母含有ゼラチンなどを含むことが好ましい。これらの中でも、取り扱い性の点から、ポリビニルアルコールが特に好ましい。
前記カスバリア層には、上記に加えてバインダー、顔料などを適宜添加することができる。
【0093】
前記バインダーとしては、特に制限はなく、公知の水溶性高分子化合物、ラテックス類等の中から適宜選択して用いることができる。
前記水溶性高分子化合物としては、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン誘導体、カゼイン、アラビアゴム、ゼラチン、エチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、エピクロルヒドリン変性ポリアミド、イソブチレン−無水マレインサリチル酸共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アミド、又はこれらの変性物等が挙げられる。
前記ラテックス類としては、例えば、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリル酸メチル−ブタジエンゴムラテックス、酢酸ビニルエマルジョン等が挙げられる。
これらの中でも、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン誘導体、ゼラチン、ポリアクリル酸アミド誘導体等が好ましい。
【0094】
前記顔料としては、特に制限はなく、有機化合物、無機化合物を問わず公知のものが挙げられ、例えば、カオリン、焼成カオリン、タルク、ロウ石、ケイソウ土、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、リトポン、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、焼成石コウ、シリカ、炭酸マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、炭酸バリウム、硫酸バリウム、マイカ、マイクロバルーン、尿素−ホルマリンフィラー、ポリエステルパーティクル、セルロースフィラー、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、突起形成性層の上層のガスバリア層には、上述したように、重合開始剤を含むことが好ましい。
【0095】
前記ガスバリア層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記突起形成性層の場合と同様の方法が適用できる。
前記ガスバリア層の厚みとしては、0.2〜5μmが好ましく、0.5〜3μmがより好ましい。
【0096】
<支持体>
前記支持体としては、その形状、構造、大きさ、材料等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば平板状、シート状だけでなく陶器のような曲面状の基板、電線のような線状基板など形状を問わない。前記構造としては、単層構造であってもいし、積層構造であってもよい。
前記支持体の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸性紙、中性紙、コート紙、プラスチックフィルムラミネート紙、合成紙、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルム等、ガラス基板、アルミニウム等の金属基板、木製基板、シリコンウエハー等のセラミック基板などを使用することができる。
【0097】
前記支持体は、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm〜1000mm(=1m)が好ましく、0.1μm〜500mm(=50cm)がより好ましい。
【0098】
前記支持体が平面状の基板の場合、柔らかいものはカールバランスを補正する目的で、或いは、裏面からの耐薬品性を向上させる目的で、バックコート層を設けてもよい。なお、硬いものでも、裏面からの耐薬品性を向上させる目的で、バックコート層を設けてもよい。
【0099】
<撥水性化合物を含む液>
前記撥水性化合物を含む液に使用する撥水性化合物としては、末端にエチレン不飽和結合を有する部分構造を分子内に有するモノマーあるいは高分子化合物が好ましく、特にはモノマーが好ましい。
前記モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、フッ素モノマーが、突起形状物を形成時の光照射により突起形成性層表面に発生したラジカル種により直接化学的に結合し、撥水性を付与することができる点から特に好ましい。
前記フッ素モノマーとしては、フッ素原子が一分子中に2個以上含まれるモノマーであり、一般的にパーフルオロ基と呼ばれるものが特に好ましい。
【0100】
前記フッ素モノマーのうち、下記構造式(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)で表される化合物から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0101】
CH=CRCOORRf ・・・構造式(1)
ただし、前記構造式(1)中、Rは、水素原子、又はメチル基を表す。
は、−C2p−、−C(C2p+1)H−、−CHC(C2p+1)H−、又は−CHCHO−を表す。
Rfは、−C2n+1、−(CFH、−C2n+1−CF、−(CFOC2n2i+1、−(CFOC2m2iH、−N(C2p+1)COC2n+1、−N(C2p+1)SO2n+1を表す。ただし、Rf中、pは1〜10、nは1〜16、mは0〜10、iは0〜16の整数をそれぞれ表す。
【0102】
CF=CFORg ・・・構造式(2)
ただし、前記構造式(2)中、Rgは、炭素数1〜20のフルオロアルキル基を表す。
【0103】
CH=CHRg ・・・構造式(3)
ただし、前記構造式(3)中、Rgは、炭素数1〜20のフルオロアルキル基を表す。
【0104】
CH=CRCOOROCOCR=CH ・・・構造式(4)
ただし、前記構造式(4)中、R及びRは、水素原子、又はメチル基を表す。R、及びRは、−C2q−、−C(C2q+1)H−、−CHC(C2q+1)H−又は−CHCHO−、Rは−C2tを表す。qは1〜10、tは1〜16の整数である。
【0105】
CH=CHRCOOCH(CH)CHOCOCR=CH ・・・構造式(5)
ただし、前記構造式(5)中、R及びRは、水素原子、又はメチル基を表す。Rは−C2y+1である。yは1〜16の整数である。
【0106】
前記構造式(1)で表される単量体としては、例えば、CF(CFCHCHOCOCH=CH、CFCHOCOCH=CH、CF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、C15CON(C)CHOCOC(CH)=CH、CF(CFSON(CH)CHCHOCOCH=CH、CF(CFSON(C)CHCHOCOCH=CH、CSON(C)CHCHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CF(CHOCOCH=CH、(CFCF(CF10(CHOCOC(CH)=CH、CF(CFCH(CH)OCOC(CH)=CH、CFCHOCHCHOCOCH=CH、C(CHCHO)CHOCOCH=CH、(CFCFO(CHOCOCH=CH、CF(CFOCHCHOCOC(CH)=CH、CCON(C)CHOCOCH=CH、CF(CFCON(CH)CH(CH)CHOCOCH=CH、H(CFC(C)OCOC(CH)=CH、H(CFCHOCOCH=CH、H(CFCHOCOCH=CH、H(CF)CHOCOC(CH)=CH、CF(CFSON(CH)CHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFSON(CH)(CH10OCOCH=CH、CSON(C)CHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFSON(CH)(CHOCOCH=CH、CSON(C)C(C)HCHOCOCH=CH、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0107】
前記構造式(2)又は(3)で表されるフルオロアルキル化オレフィンとしては、例えば、CCH=CH、CCH=CH、C1021CH=CH、COCF=CF、C15OCF=CF、C17OCF=CF、などが挙げられる。
【0108】
前記構造式(4)又は(5)で表される単量体としては、例えば、CH=CHCOOCH(CFCHOCOCH=CH、CH=CHCOOCHCH(CH17)OCOCH=CH、などが挙げられる。
【0109】
前記フッ素モノマーの前記撥水性化合物を含む液における添加量は、特に制限はなく、
目的に応じて適宜選択することができるが、1×10−4〜10mol/Lが好ましい。
【0110】
前記撥水性化合物を含む液には、上記フッ素モノマーに加えて、重合性モノマーを混合して用いてもよい。
前記重合性モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ビニルモノマーが好ましい。該ビニルモノマーとしては、例えば、硬化速度等の点から、液状又は固形状のアクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーの少なくともいずれか(以下、これらを「(メタ)アクリレート」と称することがある)が好適である。
前記重合性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、各種のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、上記に加えて、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンN−ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン、炭素数が6以上のオレフィン系炭化水素等を混合してもよい。
【0111】
前記撥水性化合物を含む液における溶媒としては、上記フッ素モノマーを溶解し、かつ、前記突起形成性層を溶解しにくいものが好ましい。更に、重合反応を停止しないものが好ましい。
例えば、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒、水、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0112】
〔撥水パターン構造物の形成〕
前記撥水パターン構造物の製造方法による撥水パターン構造の形成について説明する。本発明においては、上述した撥水性化合物を含む液中で、突起形成性層を有する突起形成材料を、パターン状に光照射を行うことにより、露光領域(突起)に撥水膜が表面に結合した突起形状物を形成させることにより、高い撥水性を有する三次元撥水パターン構造物が形成される。
【0113】
ここで、前記突起形成性層中に感光性発泡材料と光熱変換物質とを含有する突起形成材料を用い、フッ素モノマーを含む液中でレーザー光を照射した場合のパターン形成の機構について詳細に説明する。
まず、発泡性化合物と光熱変換物質とを含有する突起形成性層におけるパターン形成は、光熱変換物質を励起するレーザー光等によりパターン状に照射することにより行われる。光熱変換物質はレーザー光を吸収し、その光エネルギーは熱エネルギーに変換される。
この熱エネルギーにより、発泡性化合物と発泡性化合物が存在する場が急激に熱せられる。熱せられた発泡性化合物は、通常の熱分解を起こし、ガスを放出する。それと同時に、熱せられた膜が柔らかくなり、発生したガスにより膨張する。
その結果、突起状の気泡パターン(突起形状物)が形成される。突起状の気泡パターンを形成する機構は明確ではないが、突起形成性層の上側と下側の膜(ガスバリア層、等)や、支持体の硬さ(粘弾性)が関与し、柔らかい(粘弾性の大きい)方へ窒素ガスが逃れることにより、突起状の気泡パターン構造を形成する。
そして、突起形状物を形成時の光照射により突起形成性層表面に発生したラジカル種により撥水性化合物としてのフッ素モノマーが直接化学的に結合し、撥水層を突起表面に形成し、突起による凹凸形状と相俟って、極めて高い撥水性を付与することができる。
なお、突起形成性層に、光熱変換物質を含有しない場合は、感光性発泡材料を直接光照射して感光性発泡材料に光熱変換を起こさせることも可能である。
【0114】
前記光照射に使用する光源としては、光熱変換物質の吸収特性に対応した可視光レーザー、UVレーザー、発光ダイオードが使用できる。光熱変換物質を使用しない時はジアゾニウム塩の波長に対応したレーザー、発光ダイオードが使用できる。
レーザーもしくは発光ダイオードの発振波長としては300〜1300nmの領域のものが好ましく、400〜1100nmの領域のものが特に好ましい。具体的には、ヘリウム−ネオンレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー及びこれらをSHGで半波長に変換したもの等が挙げられる。
【0115】
前記光照射の際のエネルギー強度は、パターン形成性の観点から、1〜100J/cmが好ましく、1〜30J/cmがより好ましい。
【0116】
<定着工程>
前記定着工程は、露光後の突起形成性層に対し突起形成不可能なエネルギーの光を照射して突起形成性層を定着する工程である。
ここで、前記定着とは、露光後の突起形成性層における感光性発泡材料を光分解し、もはやその窒素ガス発生能力を失わせるものであるが、定着により感光性発泡材料から発生した窒素ガスが突起形状物を生成しないように単位面積あたりの露光エネルギーを抑制して光照射を行うことが必要である。
前記光照射は、少なくとも突起形成性層の未露光領域に対して行えば十分であるが、作業効率の点から、突起形成性層全面に照射して行うことが好ましい。
前記定着に用いる光源としては、例えば、蛍光灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、発光ダイオードが好ましい。これらの光照射時のエネルギー強度としては、突起形成不可能なものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1J/cm未満であることが好ましく、300mJ/cm未満であることがより好ましい。
【0117】
(撥水パターン構造物)
本発明において形成される突起形状物の高さ(大きさ)や形状は、照射される光のエネルギー強度、照射時のビーム径、等を調節することにより、任意に制御することが可能である。該突起の高さは、平坦部から0.01〜20μmが好ましく、0.1〜10μmがより好ましい。また、突起形状物の形態についても、点状、線状(畝状、等)、面状、等、目的に応じた任意のものにすることができる。
ここで、前記突起形状物の大きさ及び形状は、突起形成材料の表面あるいは断面を顕微鏡観察することにより容易に確認することができる。
また、前記撥水パターン構造物は、水との接触角は120度以上が好ましく、150度以上がより好ましい。
ここで、前記水との接触角は、例えば、(1)液滴法、(2)傾板法、(3)垂直板法、(4)粉末法、などが挙げられ、市販されている接触角計を用いて測定することができる。(1)〜(4)の接触角の測定の原理については、「新実験化学講座18、界面とコロイド」(日本化学会編、1977年、丸善)に詳細に記載されている。
なお、前記撥水性の簡便な評価方法としては、撥水パターン構造物を傾けたところに水滴を滴下し、該水滴が滑る速さを測定したり、水滴の挙動を観察することにより判断する方法が実用的であり、好適に採用できる。
【0118】
本発明の撥水パターン構造物は、高い撥水性を有し、例えば、自動車、バス、電車、新幹線等の乗り物の外装、船底塗料、外灯、台所、台所用品、浴室、洗面所、浴室用品、洗面所用品、漁業用網、ブイ、歯科用品、住宅の床や外装、玄関ドアやノブ、屋根、プールやプールサイド、橋脚、門扉、ポスト、ベンチ、鉄塔、アンテナ、電線、ガレージ、テント、傘、レインコート、スポーツ用品、ヘルメット、クツ、鞄、カメラ、ビデオ、カーテン、絨毯、被服素材、光学部品、船舶部材、着雪防止剤、氷結防止剤、医療用機材、精密機械部品、電子部品、センサ、通信機材、輸送用配管材、パッケージ部材、衣料などに幅広く適用できる。
【実施例】
【0119】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0120】
(実施例1)
(1)突起形成性層用塗布液の調製
酢酸エチル16.1質量部に、下記構造式で表されるジアゾニウム塩化合物(例示化合物(17))4.4質量部、及びモノイソプロピルビフェニル9.1質量部を添加し、40℃に加熱して均一に溶解した。得られた混合液にカプセル壁材としてのキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物(商品名:タケネートD110N(50質量%酢酸エチル溶液)、武田薬品工業株式会社製)8.1質量部を添加し、均一に撹拌して混合液(I)を得た。
別途、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−105、株式会社クラレ製、ケン化度98〜99%)10質量%水溶液85質量部に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの10質量%水溶液3.5質量部を加え、攪拌して混合物(II)を得た。
【化22】

【0121】
次に、得られた混合液(II)に上記混合液(I)を添加し、ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製)を用いて40℃下で乳化分散した。得られた乳化液に水20質量部を加え均一化した後、40℃下で撹拌し、酢酸エチルを除去しながら3時間カプセル化反応を行った。その後、加水し、カプセル液の固形分濃度が20.0質量%になるように濃度調節し、ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液(a)を得た。
得られたマイクロカプセルの粒径は、粒径測定(LA−700、株式会社堀場製作所製で測定)した結果、メジアン径で0.33μmであった。
得られたマイクロカプセル液(a)にポリビニルアルコール(商品名:PVA−102、株式会社クラレ製、ケン化度98〜99%)10質量%水溶液165質量部、水105質量部、及び光熱変換物質としての下記構造式で表される赤外線吸収色素3.5質量部を混合し、突起形成性層用の塗布液を調製した。
【化23】

【0122】
(2)ガスバリア層用塗布液の調製
シリカ変性ポリビニルアルコール(商品名:R−1130、株式会社クラレ製、ケン化度98%)の10質量%水溶液1000質量部、(4−ノニルフェノキシトリオキシエチレン)ブチルスルホン酸ナトリウム(三協化学株式会社製、2.0質量%水溶液)50質量部を混合し、突起形成性層の上層として設けるガスバリア層用の塗布液を得た。
【0123】
(3)撥水性化合物を含む液の調製
フッ素モノマー(CF(CFCHCHOCOCH=CH、Aldrich社製)10gを1−メトキシ−2−プロパノール200gに溶解して、撥水性化合物を含む液を調製した。
【0124】
(4)突起状形成材料の作製
ガラス基板(松浪ガラス社製、厚み1mm、幅5cm×5cm)の上に、基板側から、突起形成性層用塗布液、ガスバリア層用塗布液の順に塗布、乾燥し、突起状パターン形成可能な材料を作製した。
この際、突起形成性層の塗布量は、上記構造式で表されるジアゾニウム塩化合物(例示化合物(17))が固形分塗布量で0.16g/mとなるように、ガスバリア層については厚みが2.3μmになるように塗布を行った。
得られた突起形成材料における突起形成性層の酸素透過係数は、4.1ml・25μm/m・24h・atmであった。また、ガスバリア層の酸素透過係数は0.039ml・25μm/m・24h・atmであった。
ここで、各層の酸素透過係数は高真空圧力差法により測定した。
【0125】
<撥水パターン構造物の形成>
得られた突起形成材料を前記撥水性化合物を含む液中に浸漬した状態で、発振波長830nmの半導体レーザー(三洋電機株式会社製、DL−8032−001)を用いて150mW、線速0.25m/secでパターン状に露光した。なお、レーザー光のビーム径は5.5μmとした。
次に、レーザー光照射後、突起形成性層全面に対して蛍光灯ランプ(365nm)を照射し、ジアゾニウム塩を完全に光分解し、定着を行った。
以上により、撥水パターン構造物を形成した。
【0126】
露光部にはレーザー光のビーム中心に対して半径16.5μm、高さ4.02μmの突起形状物が形成されたことを、電子顕微鏡及び表面粗さ計により確認した。
また、突起の表面には、X線光電子分光法(XPS)による観察で、フッ素原子を含有する撥水層が形成されていることが確認できた。
【0127】
次に、下記表1に示すように、単位長さ当たりのエネルギーを変えてレーザー露光を行い、得られた突起パターン(突起形状物)の高さを測定した。結果を表1に示す。
【0128】
【表1】

表1の結果から、単位長さ当たりの照射エネルギーにほぼ比例して突起パターン(突起形状物)の高さを制御できることがわかった。
【0129】
(比較例1)
実施例1において、ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液の調製時に、ジアゾニウム塩化合物(例示化合物(17))を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、突起形成材料を作製した。
得られた突起形成材料を用いて、実施例1と同様にして、パターン形成を行ったところ、突起形状物は殆ど観察されなかった。
【0130】
(比較例2)
実施例1で作製した突起形成材料を用いて、半導体レーザー光照射を行わずに蛍光灯ランプ(365nm)で全面定着を行ったところ、突起形状物は殆ど観察されなかった。
【0131】
<撥水性の評価>
次に、得られた各突起パターン構造物の撥水性について、以下のようにして、評価した。
各突起パターン構造物を0度〜90度まで傾斜角を6点変化させて静置する。該突起パターン構造物を置いた平面に対し90度になるようにマイクロシリンジにて100μlの水を滴下した(図1参照)。滴下した水滴の挙動を観察し、下記基準により評価した。結果を表2に示す。
〔評価基準〕
A:水滴がころがりながら突起パターン構造物から落ちていく、滴下後10秒以内に水滴が落下する。
B:水滴がころがりながら突起パターン構造物から落ちていく、滴下後100秒以内に水滴が落下する。
C:水滴が突起パターン構造物上を少し動くが突起パターン構造物から落ちない。
D:水滴が突起パターン構造物上で動かない。
【0132】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の撥水パターン構造物の製造方法、及び該撥水パターン構造物の製造方法により製造された撥水パターン構造物は、高い撥水性を有するので、例えば、自動車、バス、電車、新幹線等の乗り物の外装、船底塗料、外灯、台所、台所用品、浴室、洗面所、浴室用品、洗面所用品、漁業用網、ブイ、歯科用品、住宅の床や外装、玄関ドアやノブ、屋根、プールやプールサイド、橋脚、門扉、ポスト、ベンチ、鉄塔、アンテナ、電線、ガレージ、テント、傘、レインコート、スポーツ用品、ヘルメット、クツ、鞄、カメラ、ビデオ、カーテン、絨毯、被服素材、光学部品、船舶部材、着雪防止剤、氷結防止剤、医療用機材、精密機械部品、電子部品、センサ、通信機材、輸送用配管材、パッケージ部材、衣料などに幅広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】図1は、実施例における突起パターン構造物の撥水性の評価方法を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水性化合物を含む液中で、光の照射により突起を形成可能な突起形成性層を有する突起形成材料の該突起形成性層に対しパターン状に光照射を行い、少なくとも露光領域に前記撥水性化合物が直接化学的に結合した突起形状物を形成する突起形成工程を含むことを特徴とする撥水パターン構造物の製造方法。
【請求項2】
露光後の突起形成性層に対し突起形成不可能なエネルギーの光を照射して突起形成性層を定着する定着工程を含む請求項1に記載の撥水パターン構造物の製造方法。
【請求項3】
撥水性化合物が、フッ素モノマーを含む請求項1から2のいずれかに記載の撥水パターン構造物の製造方法。
【請求項4】
光照射の光源が、レーザー光及び発光ダイオードのいずれかである請求項1から3のいずれかに記載の撥水パターン構造物の製造方法。
【請求項5】
光照射のエネルギー強度が、1〜100J/cmである請求項1から4のいずれかに記載の撥水パターン構造物の製造方法。
【請求項6】
突起形成性層の酸素透過係数が、10ml・25μm/m・24h・atm以下である請求項1から5のいずれかに記載の撥水パターン構造物の製造方法。
【請求項7】
突起形成材料が、支持体を有する請求項1から6のいずれかに記載の撥水パターン構造物の製造方法。
【請求項8】
突起形成性層の上層及び突起形成性層の下層の少なくともいずれかにガスバリア層を有する請求項1から7のいずれかに記載の撥水パターン構造物の製造方法。
【請求項9】
ガスバリア層の酸素透過係数が、5ml・25μm/m・24h・atm以下である請求項8に記載の撥水パターン構造物の製造方法。
【請求項10】
突起形成性層が光熱変換物質を含有し、該光熱変換物質の極大吸収波長が330〜1300nmである請求項1から9のいずれかに記載の撥水パターン構造物の製造方法。
【請求項11】
突起形成性層が発泡材料を含有し、該発泡材料の極大吸収波長が330nm〜1300nmである請求項1から10のいずれかに記載の撥水パターン構造物の製造方法。
【請求項12】
発泡材料が、感光性発泡材料である請求項11に記載の撥水パターン構造物の製造方法。
【請求項13】
感光性発泡材料が、ジアゾニウム塩化合物、キノンジアジド化合物及びアジド化合物から選択される少なくとも1種である請求項12に記載の撥水パターン構造物の製造方法。
【請求項14】
感光性発泡材料が、マイクロカプセルに内包されている請求項12から13のいずれかに記載の撥水パターン構造物の製造方法。
【請求項15】
突起形成性層及び突起形成性層の上層のガスバリア層の少なくともいずれかが、重合開始剤を含有する請求項1から14のいずれかに記載の撥水パターン構造物の製造方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載の撥水パターン構造物の製造方法により製造されたことを特徴とする撥水パターン構造物。
【請求項17】
平坦部からの突起の高さが0.01〜20μmである請求項16に記載の撥水パターン構造物。
【請求項18】
水との接触角が120度以上である請求項16から17のいずれかに記載の撥水パターン構造物。

【図1】
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【公開番号】特開2006−341162(P2006−341162A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−167559(P2005−167559)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】