説明

撥水性ガラス板とその製造方法及びそれを用いた乗り物またはガラス窓

【課題】
従来の撥水性化学吸着膜は吸着剤と基材表面との化学結合のみを用いているため、耐摩耗性や撥水性に乏しかった。
【解決手段】
表面に共有結合した撥水性透明微粒子の大部分の表面が撥水性の被膜で被われており、且つ一部分が一端に反応能性官能基を含み他端でSiを介して透明微粒子表面に共有結合している有機膜と一端に反応性官能基を含み他端でSiを介して基材ガラス板に共有結合している有機膜とを介して基材ガラス板表面と共有結合していることを特徴とする表面に共有結合した撥水性透明微粒子で覆われていることを特徴とする撥水性ガラス板

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐久性で且つ撥水性の被膜が表面に形成されたガラス板に関するものである。詳しくは、撥水撥油防汚機能が要求される自動車等の乗り物や建物の窓用ガラス板に関するものである。さらに、それを用いた乗り物及びガラス窓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にフッ化炭素基含有クロロシラン系の吸着剤と非水系の有機溶媒よりなる化学吸着液を用い、液相で化学吸着して単分子膜状の撥水性化学吸着膜を形成できることはすでによく知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような溶液中での化学吸着単分子膜の製造原理は、基材表面の水酸基などの活性水素とクロロシラン系の吸着剤のクロロシリル基との脱塩酸反応を用いて単分子膜を形成することにある。
【特許文献1】特開平02−258032号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の化学吸着膜は吸着剤と基材表面との化学結合のみを用いているため、耐摩耗性や撥水性に乏しいという課題があった。
【0005】
本発明は、撥水撥油防汚機能が要求される自動車など乗り物や建物の窓用ガラス板において、耐摩耗性や耐候性等の耐久性、水滴離水性(滑水性ともいう)、防汚性の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段として提供される第一の発明は、表面に共有結合した撥水性透明微粒子で覆われていることを特徴とする撥水性ガラス板である。
【0007】
第二の発明は、第一の発明において、表面に共有結合した撥水性透明微粒子の大部分の表面が撥水性の被膜で被われており、且つ一部分が一端に反応能性官能基を含み他端でSiを介して透明微粒子表面に共有結合している有機膜と一端に反応性官能基を含み他端でSiを介して基材ガラス板に共有結合している有機膜とを介して基材ガラス板表面と共有結合していることを特徴とする撥水性ガラス板である。
【0008】
第三の発明は、第二の発明において、少なくとも撥水性の被膜が透明微粒子表面に共有結合していることを特徴とする撥水性ガラス板である。
【0009】
第四の発明は、第三の発明において、透明微粒子表面の撥水性の被膜が−CF基を含むことを特徴とする撥水性ガラス板である。
【0010】
第五の発明は、第二の発明において、一端に反応能性官能基を含み他端でSiを介して透明微粒子表面に共有結合している有機膜が少なくともNを含み一端に反応性官能基を含み他端でSiを介して基材ガラス板に共有結合している有機膜が少なくともOを含み、あるいは一端に反応能性官能基を含み他端でSiを介して透明微粒子表面に共有結合している有機膜が少なくともOを含み一端に反応性官能基を含み他端でSiを介して基材ガラス板に共有結合している有機膜が少なくともNを含み互いに共有結合していることを特徴とする撥水性ガラス板である。
【0011】
第六の発明は、第二の発明において、撥水性の被膜、および一端に反応能性官能基を含み他端でSiを介して透明微粒子表面に共有結合している有機膜および/あるいは一端に反応性官能基を含み他端でSiを介して基材ガラス板に共有結合している有機膜が単分子膜であることを特徴とする撥水性ガラス板である。
【0012】
第七の発明は、第一から第七の発明において透明微粒子が透光性のシリカ、アルミナ、あるいはジルコニアであることを特徴とする撥水性ガラス板である。
【0013】
第八の発明は、第一の発明から第七の発明において、透明微粒子の大きさが少なくとも可視光の波長より小さいことを特徴とする撥水性ガラス板である。
【0014】
第九の発明は、第一の発明乃至第八の発明において、水に対する接触角が150度以上に制御されていることを特徴とする撥水性ガラス板である。
【0015】
第十の発明は、第一の発明乃至第九の発明において、撥水性ガラスを装着したことを特徴とする乗り物である。
【0016】
第十一の発明は、第一の発明乃至第九の発明において、撥水性ガラスを装着したことを特徴とする建物のガラス窓である。
【0017】
第十二の発明は、少なくともエポキシ基、または、イミノ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液にガラス板を接触させエポキシ基またはイミノ基を含むアルコキシシラン化合物とガラス板表面を反応させる工程を含むことを特徴とする反応性ガラス板の製造方法である。
【0018】
第十三の発明は、少なくともイミノ基、または、エポキシ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に透明微粒子を分散しイミノ基、または、エポキシ基を含むアルコキシシラン化合物と透明微粒子表面を反応させる工程を含むことを特徴とする反応性透明微粒子の製造方法である。
【0019】
第十四の発明は、少なくともエポキシ基、または、イミノ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液にガラス板を接触させエポキシ基、または、イミノ基を含むアルコキシシラン化合物とガラス板表面を反応させてエポキシ基、または、イミノ基を含む反応性ガラス板を製造する工程と、イミノ基、または、エポキシ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に透明微粒子を分散してイミノ基、または、エポキシ基を含むアルコキシシラン化合物と透明微粒子表面を反応させてイミノ基、または、エポキシ基を含む反応性透明微粒子を製造する工程と、前記エポキシ基を含む反応性ガラス板と前記イミノ基を含む反応性透明微粒子、または、イミノ基を含む反応性ガラス板と前記エポキシ基を含む反応性透明微粒子を接触させ、加熱して前記反応性ガラス板と前記反応性透明微粒子を結合させる工程と、フッ化炭素基とトリクロロシリルキを含むクロロシラン化合物と非水系の有機溶媒を混合するかあるいはフッ化炭素基とアルコキシシリルキを含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液と表面に透明微粒子を結合させたガラス板を接触させて撥水性被膜を形成する工程とを含むことを特徴とする撥水性ガラス板の製造方法である。
【0020】
第十五の発明は、第十四の発明において、少なくともエポキシ基、または、イミノ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液にガラス板を接触させエポキシ基、または、イミノ基を含むアルコキシシラン化合物とガラス板表面を反応させてエポキシ基、または、イミノ基を含む反応性ガラス板を製造する工程と、イミノ基、または、エポキシ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に透明微粒子を分散してイミノ基、または、エポキシ基を含むアルコキシシラン化合物と透明微粒子表面を反応させてイミノ基、または、エポキシ基を含む反応性透明微粒子を製造する工程と、前記エポキシ基を含む反応性ガラス板と前記イミノ基を含む反応性透明微粒子、またはイミノ基を含む反応性ガラス板と前記エポキシ基を含む反応性透明微粒子を接触させ、加熱して前記反応性ガラス板と前記反応性透明微粒子を結合させる工程と、フッ化炭素基とトリクロロシリルキを含むクロロシラン化合物と非水系の有機溶媒を混合するか、あるいは、フッ化炭素基とアルコキシシリルキを含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液と表面に透明微粒子を結合させたガラス板を接触させて撥水性被膜を形成する工程において、余分な化学吸着液を洗浄除去することを特徴とする撥水性ガラス板の製造方法である。
【0021】
第十六の発明は、第十二乃至第十五の発明において、シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いることを特徴とする請求項9〜12に記載の撥水性ガラス板の製造方法である。
【0022】
以下、上記発明の要旨を記載すれば、本発明は、少なくともエポキシ基、または、イミノ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液にガラス板を接触させエポキシ基、または、イミノ基を含むアルコキシシラン化合物とガラス板表面を反応させてエポキシ基またはイミノ基を含む反応性ガラス板を製造する工程と、イミノ基、または、エポキシ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に透明微粒子を分散してイミノ基またはエポキシ基を含むアルコキシシラン化合物と透明微粒子表面を反応させてイミノ基、または、エポキシ基を含む反応性透明微粒子を製造する工程と、前記エポキシ基を含む反応性ガラス板と前記イミノ基を含む反応性透明微粒子、またはイミノ基を含む反応性ガラス板と前記エポキシ基を含む反応性透明微粒子を接触させ、加熱して前記反応性ガラス板と前記反応性透明微粒子を結合させる工程と、フッ化炭素基とトリクロロシリルキを含むクロロシラン化合物と非水系の有機溶媒を混合するか、あるいは、フッ化炭素基とアルコキシシリルキを含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液と表面に透明微粒子を結合させたガラス板を接触させて撥水性被膜を形成する工程とにより、表面に共有結合した撥水性透明微粒子で覆われている高耐久性で且つ水滴離水性(滑水性ともいう)に優れた撥水性ガラス板を提供することを要旨とする。
【0023】
また、前記高耐久性で且つ水滴離水性に優れた撥水性ガラス板を窓ガラスとして装着した自動車であって、前記撥水性ガラス板の表面が、ガラス板表面に共有結合した撥水性透明微粒子で被われており、水に対する接触角が150度以上に制御されている自動車などの乗り物、または、建物のガラス窓を提供することを要旨とする。
【0024】
このとき、表面に共有結合した撥水性透明微粒子の大部分の表面が撥水性の被膜で被われており、且つ一部分が一端に反応能性官能基を含み他端でSiを介して透明微粒子表面に共有結合している有機膜と一端に反応性官能基を含み他端でSiを介して基材ガラス板に共有結合している有機膜とを介してガラス板表面と共有結合していると、耐久性を向上させる上で都合がよい。
【0025】
また、少なくとも撥水性の被膜が透明微粒子表面に共有結合していると耐久性と撥水性を向上させる上で都合がよい。
さらに、透明微粒子表面の撥水性の被膜が−CF基を含んでいると撥水性を向上させる上で都合がよい。
【0026】
さらにまた、一端に反応能性官能基を含み他端でSiを介して透明微粒子表面に共有結合している有機膜が少なくともNを含み一端に反応性官能基を含み他端でSiを介して基材ガラス板に共有結合している有機膜が少なくともOを含み、あるいは、一端に反応能性官能基を含み他端でSiを介して透明微粒子表面に共有結合している有機膜が少なくともOを含み一端に反応性官能基を含み他端でSiを介して基材ガラス板に共有結合している有機膜が少なくともNを含み互いに共有結合していると耐久性を向上させる上で都合がよい。
【0027】
また、撥水性の被膜、および、一端に反応能性官能基を含み他端でSiを介して透明微粒子表面に共有結合している有機膜、一端に反応性官能基を含み他端でSiを介して基材ガラス板に共有結合している有機膜の少なくとも1つが単分子膜であると撥水性と耐久性を向上させる上で都合がよい。
【0028】
さらに、透明微粒子として透光性で且つ硬度が高いシリカ、アルミナ、あるいは、ジルコニアを用いると撥水性被膜の耐摩耗性を向上する上で都合がよい。
【0029】
また、透明微粒子の大きさが少なくとも可視光の波長より小さいと透明性を向上させる上で都合がよい。
【0030】
また、製造時、少なくともエポキシ基、または、イミノ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液にガラス板を接触させエポキシ基またはイミノ基を含むアルコキシシラン化合物とガラス板表面を反応させてエポキシ基、または、イミノ基を含む反応性ガラス板を製造する工程と、イミノ基、または、エポキシ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に透明微粒子を分散しイミノ基、または、エポキシ基を含むアルコキシシラン化合物と透明微粒子表面を反応させてイミノ基、または、エポキシ基を含む反応性透明微粒子を製造する工程と、前記エポキシ基を含む反応性ガラス板と前記イミノ基を含む反応性透明微粒子、または、イミノ基を含む反応性ガラス板と前記エポキシ基を含む反応性透明微粒子を接触させ、加熱して前記反応性ガラス板と前記反応性透明微粒子を結合させる工程と、フッ化炭素基とトリクロロシリルキを含むクロロシラン化合物と非水系の有機溶媒を混合するかあるいはフッ化炭素基とアルコキシシリルキを含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液と表面に透明微粒子を結合させたガラス板を接触させて撥水性被膜を形成する工程において、余分な化学吸着液を洗浄除去すると、撥水性と透明性、耐久性を向上させる上で都合がよい。
【0031】
また、シラノール縮合触媒の代わりに、あるいは、助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを単独あるいは混合して用いると、アルコキシシラン化合物を用いる場合にも、反応時間を短縮できて好都合である。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したとおり、本発明によれば、撥水撥油防汚機能が要求される自動車や建物の窓用ガラス板において、耐摩耗性および耐候性等の耐久性、水滴離水性(滑水性ともいう)、防汚性に優れた撥水性ガラス板およびそれを用いた自動車を提供できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明は、少なくともエポキシ基、または、イミノ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液にガラス板を接触させエポキシ基、または、イミノ基を含むアルコキシシラン化合物とガラス板表面を反応させてエポキシ基、または、イミノ基を含む反応性ガラス板を製造する工程と、イミノ基、または、エポキシ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に透明微粒子を分散しイミノ基、または、エポキシ基を含むアルコキシシラン化合物と透明微粒子表面を反応させてイミノ基、または、エポキシ基を含む反応性透明微粒子を製造する工程と、前記エポキシ基を含む反応性ガラス板と前記イミノ基を含む反応性透明微粒子、または、イミノ基を含む反応性ガラス板と前記エポキシ基を含む反応性透明微粒子を接触させ、加熱して前記反応性ガラス板と前記反応性透明微粒子を結合させる工程と、フッ化炭素基とトリクロロシリルキを含むクロロシラン化合物と非水系の有機溶媒を混合するか、あるいは、フッ化炭素基とアルコキシシリルキを含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液と表面に透明微粒子を結合させたガラス板を接触させて撥水性被膜を形成する工程とにより、表面に共有結合した撥水性透明微粒子で覆われている撥水性ガラス板を提供するものである。
【0034】
したがって、本発明には、撥水撥油防汚機能が要求される自動車や建物の窓用ガラス板において、耐摩耗性および耐候性等の耐久性、水滴離水性(滑水性ともいう)、防汚性に優れた撥水性ガラス板や雨天走行時に車外視認性に優れた自動車を提供できる作用がある。また、建築物の窓においても同様な効果が得られる窓を提供することが可能となる。
【0035】
以下、本願発明の詳細を実施例を用いて説明するが、本願発明は、これら実施例によって何ら制限されるものではない。
【0036】
なお、本発明に関するガラスには、自動車等の乗り物や建物の窓用ガラス板があるが、代表例として以下自動車の窓ガラスを取り上げて説明する。
【実施例1】
【0037】
まず、自動車用窓ガラスに用いるガラス板1を用意し、よく洗浄して乾燥した。次に、化学吸着剤として機能部位に反応性の官能基、例えば、一端にエポキシ基を含み他端にアルコキシシリル基を含む薬剤、例えば、下記化学式(化1)に示す薬剤が99重量%、シラノール縮合触媒として、例えば、ジブチル錫ジアセチルアセトナートが1重量%となるようそれぞれ秤量し、シリコーン溶媒、例えば、ヘキサメチルジシロキサン溶媒に合計1重量%程度の濃度(好ましくい化学吸着剤の濃度は、0.5〜3%程度)になるように溶かして化学吸着液を調製した。
【0038】
【化1】

【0039】
この吸着液を前記ガラス板1表面に塗布し、普通の空気中で(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。このとき、前記ガラス板1の表面には水酸基2が多数含まれているの(図1(a))で、前記化学吸着剤の−Si(OCH)基と前記水酸基2がシラノール縮合触媒の存在下で脱アルコール(この場合は、脱CHOH)反応し、下記化学式(化2)に示したような結合を形成し、ガラス表面全面に亘り表面と化学結合したエポキシ基を含む化学吸着単分子膜3が約1ナノメートル程度の膜厚で形成される。
【0040】
その後、クロロホルム等の塩素系溶媒で洗浄すると、表面に反応性のエポキシ基を表面に有する化学吸着単分子膜で被われたガラス板を製造できた(図1(b))。
【0041】
【化2】

【0042】
洗浄せずに空気中に取り出し放置すると、溶媒が蒸発しガラス板表面に残った化学吸着剤がガラス板表面で空気中の水分と反応して、粒子表面に前記化学吸着剤よりなる極薄のポリマー膜が形成された。なお、この被膜でも、反応性はほとんど変わらなかった。
【0043】
一方、可視光の波長より小さな平均粒径が100nm程度のアルミナ微粒子5を用意し、よく乾燥した。次に、化学吸着剤として機能部位にエポキシ基と反応するイミノ基(−NH)を含み他端にアルコキシシリル基を含む薬剤、例えば、末端にアミノ基を含む下記化学式((化3)に示す薬剤が99重量%、シラノール縮合触媒の代わりに有機酸である酢酸を1重量%となるようそれぞれ秤量し、シリコーンとジメチルホルムアミドを同量混合した溶媒、例えば、ヘキサメチルジシロキサン50%とジメチルホルムアミド50%の溶液に合計1重量%程度の濃度(好ましくい化学吸着剤の濃度は、0.5〜3%程度)になるように溶かして化学吸着液を調製した。
【0044】
【化3】

【0045】
この吸着液に前記無水のアルミナ微粒子を混入撹拌して普通の空気中で(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。このとき、アルミナ微粒子5の表面には水酸基6が多数含まれているの(図2(a))で、前記化学吸着剤の−Si(OCH)基と前記水酸基が酢酸の存在下で脱アルコール(この場合は、脱CHOH)反応し、下記化学式(化4)に示したような結合を形成し、微粒子表面全面に亘り表面と化学結合したアミノ基7を含む化学吸着単分子膜8が約1ナノメートル程度の膜厚で形成される。
【0046】
その後、塩素系溶媒であるクロロホルムかn−メチルピロリディノンを添加して撹拌洗浄すると、実施例1と同様に、表面に反応性の官能基、例えばアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたアルミナ微粒子を形成できた(図2(b))。なお、ここで、アミノ基を含む吸着剤を使用する場合には、スズ系の触媒は沈殿が生成するので、酢酸等の有機酸を用いた方がよかった。また、アミノ基はイミノ基を含んでいるが、アミノ基以外にイミノ基を含む物質には、ピロール誘導体や、イミダゾール誘導体等が利用できた。さらに、ケチミン誘導体を用いれば、被膜形成後、加水分解により容易にアミノ基を導入できた。
【0047】
【化4】

【0048】
なお、この処理により形成された単分子膜は、実施例1と同様に、ナノメートルレベルの膜厚で極めて薄いため、アルミナ微粒子の粒子径や表面形状を損なうことはなかった。
なお、洗浄せずに空気中に取り出すと、反応性はほぼ変わらないが、溶媒が蒸発し粒子表面に残った化学吸着剤が粒子表面で空気中の水分と反応して、粒子表面に前記化学吸着剤よりなる極薄のポリマー膜が形成されたアルミナ微粒子が得られた。
【0049】
次ぎに、前記エポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたガラス板表面に、前記アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたアルミナ微粒子をエタノールに分散させて塗布し、エタノールを蒸発させた後、100℃程度で30分程度加熱すると、下記化学化学式(化5)に示したような反応でエポキシ基とアミノ基が付加反応してガラスとアルミナ微粒子が2つの単分子膜を介して結合固定した。
その後さらに、クロロホルム等の有機溶媒で洗浄すると、余分な未反応のアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたアルミナ微粒子が除去され、ガラス板1表面とアルミナ微粒子5が前記2つの単分子膜を介して1層のみ共有結合したガラス板10が得られた(図3(a))。
【0050】
【化5】

【0051】
次に、単分子膜を形成すると臨界表面エネルギー10mN/m以下になるフッ化炭素基(機能部位)及びクロロシリル基(活性部位)を含む化学吸着剤、例えばCF(CF27(CH22SiCl3を1重量%程度の濃度で非水系溶媒(例えば、脱水したノナン)に溶かして化学吸着溶液(以下吸着溶液という)を調製した。この吸着溶液を、乾燥雰囲気中(相対湿度30%以下が好ましかった。)で前記ガラス板表面に塗布し反応させると、ガラス板表面のアルミナ微粒子4は多数のアミノ基7で被われているので(図3(a))、前記化学吸着剤のクロロシリル基(SiCl)基と前記アルミナ微粒子表面のアミノ基(−NH)とで脱塩酸反応が生じ、アルミナ微粒子表面全面に亘り、下記化学式(化6)に示す結合が生成さる。次ぎに、フロン系の溶媒で洗浄すると、前記化学吸着剤よりなる撥水性単分子膜11で被われたガラス板12が得られた。
【0052】
【化6】

【0053】
洗浄せずに空気中に取り出すと、溶媒が蒸発しガラス板表面に残った化学吸着剤がガラス板表面で空気中の水分と反応して、粒子表面に前記化学吸着剤よりなる極薄のポリマー膜が形成された。なお、この被膜でも、撥水性はほとんど変わらなかった。
【0054】
この単分子膜の膜厚は、たかだか1nm程度であるため、アルミナ微粒子により形成されたガラス板表面の50nm程度の凸凹はほとんど損なわれることがなかった。また、この凸凹の効果により、このガラス板の見かけ上の水滴接触角は、160度程度となり、超撥水が実現できた。
【0055】
なお、平坦な基材表面にCF(CF27(CH22SiCl3を用いて作成された単分子膜の臨界表面エネルギーは6mN/m程度になり、最大水滴接触角は115度程度であった。
【0056】
一方、アルミナ微粒子はガラスよりも硬度が高く、しかもガラス板表面とは共有結合で結合されているため、直接ガラス板表面にCF(CF27(CH22SiCl3を用いて作成された単分子膜に比べて耐摩耗性も大幅に向上できた。
また、できた被膜の厚さは、トータルで100nm程度であるため、透明性が損なわれることもなかった。
【実施例2】
【0057】
なお、実施例1同様に、ガラス板表面にアルミナ微粒子が1層のみ共有結合したガラス板を作成後、一端にフッ化炭素基(−CF)を含み他端にアルコキシシリル基を含む薬剤、例えば、CF(CF27(CH22Si(OCH)3で示す薬剤をを99重量%、シラノール縮合触媒として、例えば、ジブチル錫ジアセチルアセトナートを1重量%となるようそれぞれ秤量し、シリコーン溶媒、例えば、ヘキサメチルジシロキサン溶媒に1重量%程度の濃度(好ましくい化学吸着剤の濃度は、0.5〜3%程度)に溶かして化学吸着液を調製し、ガラス板表面にアルミナ微粒子が1層のみ共有結合したガラス板を漬浸し2時間程度反応させた後、余分な吸着剤を洗浄除去すると、アルコキシシリル基は、アミノ基と脱アルコール反応して、実施例1と同様の撥水性ガラスを製造できた。
【実施例3】
【0058】
一方、実施例1とは反対に、同様の方法でガラス板表面にアミノ基を有する化学吸着単分子膜を形成し、アルミナ微粒子表面にエポキシ基を有する化学吸着単分子膜を形成し、同じ反応でガラス板表面にアルミナ微粒子を1層固着させ、最後にCF(CF27(CH22SiCl3を反応させると、SiCl基は、エポキシ基とも反応するので、実施例1と同様の撥水性ガラスを製造できた。
【0059】
なお、上記実施例1〜3では、反応性基を含む化学吸着剤として(化1)と(化3)に示した物質を用いたが、上記のもの以外にも、下記(1)〜(16)に示した物質が利用できた。
(1) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OCH)3
(2) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OCH)3
(3) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(4) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(5) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(6) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OC)3
(7) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OC)3
(8) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(9) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(10) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(11) H2N (CH2)Si(OCH)3
(12) H2N (CH2)Si(OCH)3
(13) H2N (CH2)Si(OCH)3
(14) H2N (CH2)Si(OC)3
(15) H2N (CH2)Si(OC)3
(16) H2N (CH2)Si(OC)3
【0060】
ここで、(CHOCH)−基は、下記式(化7)で表される官能基を表し、(CHCHOCH(CH)CH−基は、下記式(化8)で表される官能基を表す。
【0061】
【化7】

【0062】
【化8】

【0063】
また、上記実施例1、3では、フッ化炭素系化学吸着剤としてCF3(CF27(CH22SiCl3を用いたが、上記のもの以外にも、炭化水素系を含めて下記(21)〜(26)に示した物質が利用できた。
(21) CF3CH2O(CH2)15SiCl3
(22) CF3(CH2)Si(CH3)2(CH2)15SiCl3
(23) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9SiCl3
(24) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9SiCl3
(25) CF3COO(CH2)15SiCl3
(26) CF3(CF2)5(CH2)2SiCl3
さらにまた、上記実施例2では、フッ化炭素系化学吸着剤としてCF3(CF27(CH22Si(OCH)3を用いたが、上記のもの以外にも、下記(31)〜(42)に示した物質が利用できた。
【0064】
(31) CF3CH2O(CH2)15Si(OCH)3
(32) CF3(CH2)Si(CH3)2(CH2)15Si(OCH)3
(33) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OCH)3
(34) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OCH)3
(35) CF3COO(CH2)15Si(OCH)3
(36) CF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH)3
(37) CF3CH2O(CH2)15Si(OC)3
(38) CF3(CH2)Si(CH3)2(CH2)15Si(OC)3
(39) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OC)3
(40) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OC)3
(41) CF3COO(CH2)15Si(OC)3
(42) CF3(CF2)5(CH2)2Si(OC)3
【0065】
なお、実施例1〜3に置いて、シラノール縮合触媒には、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル及びチタン酸エステルキレート類が利用可能である。さらに具体的には、酢酸第1錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクタン酸第1錫、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、2−エチルヘキセン酸鉄、ジオクチル錫ビスオクチリチオグリコール酸エステル塩、ジオクチル錫マレイン酸エステル塩、ジブチル錫マレイン酸塩ポリマー、ジメチル錫メルカプトプロピオン酸塩ポリマー、ジブチル錫ビスアセチルアセテート、ジオクチル錫ビスアセチルラウレート、テトラブチルチタネート、テトラノニルチタネート及びビス(アセチルアセトニル)ジープロピルチタネートを用いることが可能であった。
【0066】
また、膜形成溶液の溶媒としては、化学吸着剤がアルコキシシラン系、クロロシラン系何れの場合も、水を含まない有機塩素系溶媒、炭化水素系溶媒、あるいは、フッ化炭素系溶媒やシリコーン系溶媒、あるいは、それら混合物を用いることが可能であった。なお、洗浄を行わず、溶媒を蒸発させて粒子濃度を上げようとする場合には、溶媒の沸点は50〜250℃程度がよい。
【0067】
具体的に使用可能な溶媒は、クロロシラン系の場合は、非水系の石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、ノナン、デカン、灯油、ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
さらに、吸着剤がアルコキシシラン系の場合で且つ溶媒を蒸発させて有機被膜を形成する場合には、前記溶媒に加え、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、あるいはそれら混合物が使用できた。
【0068】
また、フッ化炭素系溶媒には、フロン系溶媒や、フロリナート(3M社製品)、アフルード(旭ガラス社製品)等がある。なお、これらは1種単独で用いても良いし、良く混ざるものなら2種以上を組み合わせてもよい。さらに、クロロホルム等有機塩素系の溶媒を添加しても良い。
【0069】
一方、上述のシラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いた場合、同じ濃度でも処理時間を半分〜2/3程度まで短縮できた。
【0070】
さらに、シラノール縮合触媒とケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を混合(1:9〜9:1範囲で使用可能だが、通常1:1前後が好ましい。)して用いると、処理時間をさらに数倍早くでき、製膜時間を数分の一まで短縮できる。
【0071】
例えば、シラノール触媒であるジブチル錫オキサイドをケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3に置き換え、その他の条件は同一にしてみたが、反応時間を1時間程度にまで短縮できた他は、ほぼ同様の結果が得られた。
【0072】
さらに、シラノール触媒を、ケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3と、シラノール触媒であるジブチル錫ビスアセチルアセトネートの混合物(混合比は1:1)に置き換え、その他の条件は同一にしてみたが、反応時間を20分程度に短縮できた他は、ほぼ同様の結果が得られた。
【0073】
したがって、以上の結果から、ケチミン化合物や有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物がシラノール縮合触媒より活性が高いことが明らかとなった。
【0074】
さらにまた、ケチミン化合物や有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物の内の1つとシラノール縮合触媒を混合して用いると、さらに活性が高くなることが確認された。
【0075】
なお、ここで、利用できるケチミン化合物は特に限定されるものではないが、例えば、2,5,8−トリアザ−1,8−ノナジエン、3,11−ジメチル−4,7,10−トリアザ−3,10−トリデカジエン、2,10−ジメチル−3,6,9−トリアザ−2,9−ウンデカジエン、2,4,12,14−テトラメチル−5,8,11−トリアザ−4,11−ペンタデカジエン、2,4,15,17−テトラメチル−5,8,11,14−テトラアザ−4,14−オクタデカジエン、2,4,20,22−テトラメチル−5,12,19−トリアザ−4,19−トリエイコサジエン等がある。
【0076】
また、利用できる有機酸としても特に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、あるいは酢酸、プロピオン酸、ラク酸、マロン酸等があり、ほぼ同様の効果があった。
【0077】
また、上記3つの実施例では、アルミナ微粒子を例として説明したが、本発明は、表面に活性水素、すなわち水酸基の水素やアミノ基、あるいは、イミノ基の水素などを含んだ微粒子で有れば、どのような微粒子にでも適用可能であった。
【0078】
具体的には、ガラスより堅い透明微粒子として、アルミナ以外に、シリカやジルコニア等が適用可能であることは言うまでもない。
【実施例4】
【0079】
実施例1で作成したガラス板と同条件で作成した水滴接触角が160度程度(実用上、水滴接触角が150以上であれば同様の効果が得られた。)の撥水性ガラス板を乗用車のフロント窓ガラス(ウインドシールドともいう、傾斜角略45度)、サイド窓ガラス(傾斜角略70度)、リア窓ガラス(傾斜角略30度)として装着し、雨天走行実験を試みた。
【0080】
まず、停車中の雨水滴の付着状況を確認したが、直径5mm程度以上の水滴の付着はどのガラスもほとんど無かった。
【0081】
次に、走行実験を試みたが、まずスピードが、45Km/時の場合、雨水滴の付着状況を確認した。直径2mm程度以上の水滴の付着は、サイド窓ガラス、リア窓ガラスともほとんど無かった。また、フロント窓ガラスでは、走行時、雨水滴が連続して多量に付着したが、直径2mm程度以上の水滴は上後方向にすばやく移動し、その後飛散して視界を妨げるほどには残らなかった。さらに速度を上げて60Km/時になると、直径2mm程度以上の水滴は瞬時に飛散してほぼ完全に除去された。
【0082】
なお、走行実験中ドアミラーを用い、サイド窓ガラス板を透して後方の視界状況を確認したが、雨水滴による視界のゆがみや視認性の劣化はほとんど感じられなかった。
【0083】
また、晴天時、被膜の有無による社外視認性を比較してみたが、被膜の透明度が、波長400〜700nmの光に対して97%以上であったため、被膜なしの自動車に比べ視認性の劣化は全く感じられなかった。また、ワイパーに対する耐摩耗性も、ガラスそのままで撥水性被膜を形成した場合に比べ、アルミナ微粒子は硬度が高いので大幅に改善できた。
【0084】
以上の実験より、本発明の自動車が、雨天時の安全運転に格別の効果を発揮することが確認できた。
【0085】
参考として、各種実験で得た水滴に対する接触角(他の物質を用いて得たデータも含めている。)と転落角の関係を図3に示す。このデータより明らかなように、水滴接触角が150度以上なら、窓ガラス表面に接触したほとんどの水滴は自然に流れ落ちることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施例1において、ガラス表面にエポキシ基を含む単分子膜を形成する工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は反応前のガラス表面の図、(b)は、エポキシ基を含む単分子膜が形成された後の図を示す。
【図2】本発明の実施例1においてアルミナ微粒子表面にアミノ基を含む単分子膜を形成する工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は反応前のガラス表面の図、(b)は、アミノ基を含む単分子膜が形成された後の図を示す。
【図3】本発明の実施例1においてガラス基材表面にアルミナ微粒子を結合し、さらに前記アルミナ微粒子の表面に撥水性の単分子膜を形成する工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)はガラス基材表面とアルミナ微粒子が結合した図、(b)は、アミノ基を介して撥水性の単分子膜が形成された後の図を示す。
【図4】本発明を行うに当たり、予備実験で得たデータをプロットしたものであり、水に対する接触角と転落角の関係を示した図。
【符号の説明】
【0087】
1 ガラス板
2 水酸基
3 エポキシ基を含む単分子膜
エポキシ基を含む化学吸着単分子膜で被われたガラス板
5 アルミナ微粒子
6 水酸基
7 アミノ基
8 アミノ基を含む化学吸着単分子膜
アミノ基を含む化学吸着単分子膜で被われたアルミナ微粒子
10 アルミナ微粒子が2つの単分子膜を介して1層のみ共有結合したガラス板
11 撥水性単分子膜
12 撥水性単分子膜で覆われたガラス板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に共有結合した撥水性透明微粒子で覆われていることを特徴とする撥水性ガラス板。
【請求項2】
表面に共有結合した撥水性透明微粒子の大部分の表面が撥水性の被膜で被われており、且つ一部分が一端に反応能性官能基を含み他端でSiを介して透明微粒子表面に共有結合している有機膜と一端に反応性官能基を含み他端でSiを介して基材ガラス板に共有結合している有機膜とを介して基材ガラス板表面と共有結合していることを特徴とする請求項1記載の撥水性ガラス板。
【請求項3】
少なくとも撥水性の被膜が透明微粒子表面に共有結合していることを特徴とする請求項2記載の撥水性ガラス板。
【請求項4】
透明微粒子表面の撥水性の被膜が−CF基を含むことを特徴とする請求項3記載の撥水性ガラス板。
【請求項5】
一端に反応性官能基を含み、他端でSiを介して透明微粒子表面に共有結合している有機膜が少なくともNを含み、一端に反応性官能基を含み他端でSiを介して基材ガラス板に共有結合している有機膜が少なくともOを含み、あるいは、一端に反応能性官能基を含み、他端でSiを介して透明微粒子表面に共有結合している有機膜が少なくともOを含み、一端に反応性官能基を含み、他端でSiを介して基材ガラス板に共有結合している有機膜が少なくともNを含み、互いに共有結合していることを特徴とする請求項2記載の撥水性ガラス板。
【請求項6】
撥水性の被膜、および、一端に反応能性官能基を含み、他端でSiを介して透明微粒子表面に共有結合している有機膜および/あるいは一端に反応性官能基を含み他端でSiを介して基材ガラス板に共有結合している有機膜が単分子膜であることを特徴とする請求項2記載の撥水性ガラス板。
【請求項7】
透明微粒子が透光性のシリカ、アルミナ、あるいは、ジルコニアであることを特徴とする請求項1〜6記載の撥水性ガラス板。
【請求項8】
透明微粒子の大きさが少なくとも可視光の波長より小さいことを特徴とする請求項1〜7記載の撥水性ガラス板。
【請求項9】
水に対する接触角が150度以上に制御されていることを特徴とする請求項1乃至請求項8の撥水性ガラス板。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9の撥水性ガラスを装着したことを特徴とする乗り物。
【請求項11】
請求項1乃至請求項9の撥水性ガラスを装着したことを特徴とする建物の窓ガラス。
【請求項12】
少なくともエポキシ基またはイミノ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液にガラス板を接触させエポキシ基、または、イミノ基を含むアルコキシシラン化合物とガラス板表面を反応させる工程を含むことを特徴とする反応性ガラス板の製造方法。
【請求項13】
少なくともイミノ基、または、エポキシ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に透明微粒子を分散しイミノ基、または、エポキシ基を含むアルコキシシラン化合物と透明微粒子表面を反応させる工程を含むことを特徴とする反応性透明微粒子の製造方法。
【請求項14】
少なくともエポキシ基、または、イミノ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液にガラス板を接触させエポキシ基、または、イミノ基を含むアルコキシシラン化合物とガラス板表面を反応させてエポキシ基、または、イミノ基を含む反応性ガラス板を製造する工程と、イミノ基またはエポキシ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に透明微粒子を分散してイミノ基、または、エポキシ基を含むアルコキシシラン化合物と透明微粒子表面を反応させてイミノ基またはエポキシ基を含む反応性透明微粒子を製造する工程と、前記エポキシ基を含む反応性ガラス板と前記イミノ基を含む反応性透明微粒子、またはイミノ基を含む反応性ガラス板と前記エポキシ基を含む反応性透明微粒子を接触させ、加熱して前記反応性ガラス板と前記反応性透明微粒子を結合させる工程と、フッ化炭素基とトリクロロシリルキを含むクロロシラン化合物と非水系の有機溶媒を混合するかあるいはフッ化炭素基とアルコキシシリルキを含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液と表面に透明微粒子を結合させたガラス板を接触させて表面に撥水性被膜を形成する工程とを含むことを特徴とする撥水性ガラス板の製造方法。
【請求項15】
少なくともエポキシ基、または、イミノ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液にガラス板を接触させエポキシ基、または、イミノ基を含むアルコキシシラン化合物とガラス板表面を反応させてエポキシ基またはイミノ基を含む反応性ガラス板を製造する工程と、イミノ基、または、エポキシ基を含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に透明微粒子を分散してイミノ基、または、エポキシ基を含むアルコキシシラン化合物と透明微粒子表面を反応させてイミノ基またはエポキシ基を含む反応性透明微粒子を製造する工程と、前記エポキシ基を含む反応性ガラス板と前記イミノ基を含む反応性透明微粒子、またはイミノ基を含む反応性ガラス板と前記エポキシ基を含む反応性透明微粒子を接触させ、加熱して前記反応性ガラス板と前記反応性透明微粒子を結合させる工程と、フッ化炭素基とトリクロロシリルキを含むクロロシラン化合物と非水系の有機溶媒を混合するかあるいはフッ化炭素基とアルコキシシリルキを含むアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液と表面に透明微粒子を結合させたガラス板を接触させて撥水性被膜を形成する工程において、余分な化学吸着液を洗浄除去することを特徴とする請求項14に記載の撥水性ガラス板の製造方法。
【請求項16】
シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いることを特徴とする請求項12〜15に記載の撥水性ガラス板の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−126332(P2007−126332A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320704(P2005−320704)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【Fターム(参考)】