説明

撥水撥油剤を用いる処理

(1)含フッ素重合体及び含フッ素低分子化合物からなる群から選択された少なくとも1種の含フッ素化合物を含んでなる撥水撥油剤を含む処理液を調製する工程、(2)処理液のpHを7以下にする工程、(3)繊維製品に処理液を適用する工程、(4)繊維製品をスチーム処理する工程、および(5)繊維製品を水洗して脱水する工程を有してなる処理繊維製品の製造方法であって、該処理液が、熱ゲル化物質を含んでなる方法によれば、フッ素付着率が高く、撥水性および撥油性に優れた繊維製品が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品に、優れた撥水性および撥油性を付与する処理に関する。本発明の方法はカーペット用として特に有用である。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維製品(例えば、カーペット)に撥水性、撥油性および防汚性を付与するために、種々の処理方法が提案されている。例えば、処理液のpHを低くし、繊維製品に処理液を適用し、繊維製品をスチーム加熱処理し、水洗し、脱水することからなる繊維製品の処理方法(以下、「Exhaust法」と呼ぶことがある。)が、提案されている。
【0003】
Exhaust法を用いた繊維製品処理法は、米国特許第5,073,442号、米国特許第5,520,962号、米国特許第5,516,337号、米国特許第5,851,595号および国際公開WO98/50619号において、提案されている。
【0004】
米国特許第5,073,442号は、フッ素化合物からなる撥水撥油剤と、ホルムアルデヒド縮合体と、アクリルポリマーとを用いて、Exhaust法を行う繊維製品の処理方法を開示している。米国特許第5,520,962号および米国特許第5,851,595号は、フッ素化合物とアクリルポリマーバインダーを用いてExhaust法を行うカーペットの処理方法を開示している。米国特許第5,516,337号は、フッ素系撥水撥油剤と、硫酸アルミニウム等の金属化合物を用いて、Exhaust法を行う繊維製品の処理方法を開示している。さらに、国際公開WO98/50619号は、フッ素系撥水撥油剤と、マグネシウム塩などの塩とを用いて、Exhaust法を行うカーペットの処理方法を開示している。米国特許第3,210,336号はフッ素系撥水撥油剤と、カルボキシメチルセルロース等の水溶性化合物を用いた繊維製品の処理方法を開示している。特開平6−49319号公報(米国特許第5,346,949号に対応)は、含フッ素重合体と、カチオン性水溶性高分子とからなる含フッ素水性撥水撥油組成物を開示している。
【0005】
従来において、これらの方法に従ってExhaust法を行った場合に、十分に高い撥水撥油剤の付着率、および優れた撥水撥油性を得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,073,442号明細書
【特許文献2】米国特許第5,520,962号明細書
【特許文献3】米国特許第5,516,337号明細書
【特許文献4】米国特許第5,851,595号明細書
【特許文献5】国際公開WO98/50619号公報
【特許文献6】米国特許第3,210,336号明細書
【特許文献7】特開平6−49319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、Exhaust法によって繊維製品を撥水撥油剤で処理した場合に、撥水撥油剤の付着率が高く、撥水性および撥油性に優れる繊維製品を与えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
(1)含フッ素重合体及び含フッ素低分子化合物からなる群から選択された少なくとも1種の含フッ素化合物を含んでなる撥水撥油剤を含む処理液を調製する工程、
(2)処理液のpHを7以下にする工程、
(3)繊維製品に処理液を適用する工程、
(4)繊維製品をスチーム処理する工程、および
(5)繊維製品を水洗して脱水する工程
を有してなる処理繊維製品の製造方法であって、
該撥水撥油剤または該処理液が熱ゲル化物質を含んでなるかまたは工程(3)において該処理液に加えて熱ゲル化物質を用い、熱ゲル化物質を該処理液に接触させた状態で繊維製品に適用する方法を提供する。
【0009】
本発明は、
(i)含フッ素重合体及び含フッ素低分子化合物からなる群から選択された少なくとも1種の含フッ素化合物、および
(ii)熱ゲル化物質
を含んでなる撥水撥油剤組成物をも提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において使用する手法は、撥水撥油剤を含む処理液のpHを低くし、繊維製品に処理液を適用し、繊維製品を熱処理(または加熱)し、水洗し、脱水することからなるExhaust法である。
【0011】
本発明の方法の工程(1)において、繊維製品に適用するための、撥水撥油剤を含む処理液を調製する。撥水撥油剤を含む処理液は、溶液またはエマルション、特に水性エマルションの形態であってよい。
【0012】
処理液は、含フッ素重合体及び含フッ素低分子化合物からなる群から選択された少なくとも1種の含フッ素化合物を含んでなる撥水撥油剤に加えて、ステインブロック剤をも含んでいてよい。
【0013】
ステインブロック剤は、フェノール/ホルムアルデヒド縮合体、アクリル系重合体、ならびにフェノール/ホルムアルデヒド縮合体とアクリル系重合体との混合物であることが好ましい。フェノール/ホルムアルデヒド縮合体の例は、スルホン化フェノール樹脂などである。アクリル系重合体の例は、メタクリル酸系ポリマー(例えば、メタクリル酸のホモポリマー、メタクリル酸のコポリマー、例示すれば、メタクリル酸/ブチルメタクリル酸コポリマー、スチレンを含有するメタクリル酸コポリマー)などである。ステインブロック剤の量は、固形分換算で、含フッ素重合体100重量部に対して、例えば0〜1000重量部、特に1〜500重量部であってよい。
【0014】
本発明の方法の工程(2)において、処理液のpHを7以下にする。処理液のpHは、例えば5以下、例示すれば4以下、特に3以下、特別に2以下である。pHを低下させるには、酸、例えば、シトラコン酸水溶液、スルファミン酸水溶液を処理液に添加すればよい。
【0015】
本発明の方法の工程(3)において、繊維製品に処理液を適用する。撥水撥油剤は、従来既知の方法により被処理物(繊維製品)に適用することができる。処理液の適用は、浸漬、噴霧、塗布などにより行える。通常、処理液は、有機溶剤または水で希釈して、布(例えば、カーペット生地)あるいは糸(例えば、カーペット糸)あるいは原繊維に対して浸漬塗布、スプレー塗布、泡塗布などのような既知の方法により、被処理物の表面に付着される。また、必要ならば、適当な架橋剤と共に適用し、キュアリングを行ってもよい。さらに、防虫剤、柔軟剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、塗料定着剤、防シワ剤などを添加して併用することも可能である。被処理物と接触させる処理液における撥水撥油剤有効成分(すなわち、含フッ素重合体及び含フッ素低分子化合物からなる群から選択された少なくとも1種の含フッ素化合物)の濃度は、処理液に対して、0.01〜20重量%、例えば0.05〜10重量%であってよい。
【0016】
本発明の方法の工程(4)において、繊維製品を加熱処理する。加熱処理は、例えば、スチーム(例えば、90〜110℃)を常圧で、例えば10秒〜20分間繊維製品にあてることによって行える。
【0017】
本発明の方法の工程(5)において、繊維製品を水洗して、脱水する。加熱処理した繊維製品を少なくとも1回の水で洗浄する。次いで、過剰の水を除去するために、通常の脱水方法、例えば遠心分離、バキュームなどにより脱水する。
【0018】
工程(5)の後に、繊維製品を乾燥させることができる。
含フッ素重合体は、フルオロアルキル基を有する単量体、例えば、フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート、フルオロアルキル基含有マレエートもしくはフマレートあるいはフルオロアルキル基含有ウレタンから誘導された構成単位を有する重合体であってよい。
【0019】
フルオロアルキル基を有する単量体は、例えば、式:

[式中、Xは、水素原子、メチル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基、
Yは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜10の芳香族基または環状脂肪族基、−CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または−CH2CH(OY1)CH2−基(但し、Y1は水素原子またはアセチル基である。)、
Rfは炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基である。]
で示される。
【0020】
式(I)において、Rf基が、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。Rf基の炭素数は、1〜21、好ましくは1〜20、特に1〜6、特別には1〜5、例えば1〜4である。Rf基の例は、−CF3、−CF2CF3、−CF2CF2CF3、−CF(CF3) 2、−CF2CF2CF2CF3、−CF2CF(CF3)2、−C(CF)3、−(CF2)4CF3、−(CF2)2CF(CF3)2、−CF2C(CF3)3、−CF(CF3)CF2CF2CF3、−(CF2)5CF3、−(CF2)3CF(CF3)2、−(CF2)4CF(CF3)2、−(CF2)7CF3、−(CF2)5CF(CF3)2、−(CF2)6CF(CF3)2、−(CF2)9CF3等である。
【0021】
Yは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜10の芳香族基または環状脂肪族基、−CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)、−CH2CH(OY1)CH2−基(但し、Y1は水素原子またはアセチル基である。)または−(CH2)nSO2-(nは1〜10)である。脂肪族基はアルキレン基(特に炭素数1〜4、例えば、1または2)であることが好ましい。芳香族基および環状脂肪族基は、置換されていてもあるいは置換されていなくてもどちらでもよい。
【0022】
含フッ素単量体の例は、次のとおりである。
Rf-(CH)10OCOCCH=CH
Rf-(CH)10OCOC(CH)=CH
Rf-CHOCOCH=CH
Rf-CHOCOC(CH)=CH
Rf-(CH)OCOCH=CH
Rf-(CH)OCOC(CH)=CH
Rf-SON(CH)(CH)OCOCH=CH
Rf-SON(C)(CH)OCOCH=CH
Rf-CHCH(OCOCH)CHOCOC(CH)=CH
Rf-CHCH(OH)CHOCOCH=CH
Rf-SO(CH)OCOCH=CH
Rf-SO(CH)3OCOCH=CH
【0023】









【0024】


【0025】


【0026】


[式中、Rfは炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基である。]
【0027】
含フッ素重合体を誘導するフルオロアルキル基含有マレエートもしくはフマレートとしては、例えば、
(A)式:

[式中、Rfは、炭素数1〜21のパーフルオロアルキル基である。]
で示される含OH含フッ素マレエート、
式:

[式中、Rfは、炭素数1〜21のパーフルオロアルキル基である。]
で示される含OH含フッ素フマレート、
式:

[式中、Rfは、炭素数1〜21のパーフルオロアルキル基、
Aは、炭素数1〜4のアルキレン基、
または

(但し、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、Rは炭素数1〜4のアルキレン基である。)
である。]
で示される含フッ素マレエート、
ならびに
式:

[式中、Rfは、炭素数1〜21のパーフルオロアルキル基、
Aは、炭素数1〜4のアルキレン基、
または

(但し、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、Rは炭素数1〜4のアルキレン基である。)
である。]
で示される含フッ素フマレートが挙げられる。
【0028】
含フッ素重合体を誘導するフルオロアルキル基含有ウレタンモノマーは、
(a)少なくとも2つのイソシアネート基を有する化合物、
(b)1つの炭素−炭素二重結合および少なくとも1つのヒドロキシル基またはアミノ基を有する化合物、および
(c)1つのヒドロキシル基またはアミノ基を有する含フッ素化合物
を反応させることによって得られる。
【0029】
化合物(a)の例は、以下のとおりである。



【0030】
化合物(a)は好ましくはジイソシアネートである。しかし、トリイソシアネートおよびポリイソシアネートも反応に使用できる。
たとえば、ジイソシアネートの3量体、ポリメリックMDI(ジフェニルメタジイソシアネート)、更には、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン等の多価アルコールとジイソシアネートのアダクト体も反応に使用できる。
【0031】
トリイソシアネートおよびポリイソシアネートの例は、以下のとおりである。



【0032】
化合物(b)は、例えば、式:



で示される化合物であってよい。
【0033】
式中、R1は水素原子またはメチル基である。Xの例は次の通りである。

【0034】


[式中、mおよびnは、1〜300の数である。]
【0035】
化合物(c)は、式:
f−R2−OH または
f−R2−NH2
[式中、Rfは、炭素数1〜21のフルオロアルキル基を表わす。R2は炭素数1〜10のアルキレン基を表わし、ヘテロ原子を含んでいてもよい。]
で示される化合物であってよい。
【0036】
化合物(c)の例は、

であってよい。
【0037】
化合物(a)、(b)および(c)は、(a)がジイソシアネートの時、(a)1モルに対し、(b)、(c)ともに1モル、(a)がトリイソシアネートの時、(a)1モルに対し(b)1モル、(c)2モルで反応させてよい。
【0038】
撥水撥油剤を構成する含フッ素重合体は、
(I)フルオロアルキル基を含有する単量体から誘導された構成単位、および
(II)フッ素を含まない単量体から誘導された構成単位または
(III)架橋性単量体から誘導された構成単位
からなっていてよい。
【0039】
あるいは、撥水撥油剤を構成する含フッ素重合体は、
(I)フルオロアルキル基を含有する単量体から誘導された構成単位、
(II)フッ素を含まない単量体から誘導された構成単位、および
(III)架橋性単量体から誘導された構成単位
からなっていてよい。
【0040】
構成単位(I)を構成するフルオロアルキル基を含有する単量体の例は、上記のフルオロアルキル基を有する単量体、例えばフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートの例と同様のものである。
【0041】
構成単位(II)は、フッ素を含有しないオレフィン性不飽和単量体から誘導されることが好ましい。
【0042】
構成単位(II)を形成する好ましい単量体としては、例えば、エチレン、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニル(例えば、塩化ビニル)、ハロゲン化ビニリデン(例えば、塩化ビニリデン)、アクリロニトリル、スチレン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ビニルアルキルエーテル、イソプレンなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
構成単位(II)を形成する単量体は、アルキル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルであってよい。アルキル基の炭素数は、1〜30、例えば、6〜30、例示すれば、10〜30であってよい。例えば、構成単位(II)を形成する単量体は一般式:
CH2=CA1COOA2
[式中、A1は水素原子またはメチル基、A2はCn2n+1(n=1〜30)で示されるアルキル基である。]
で示されるアクリレート類であってよい。
【0044】
構成単位(II)は、ハロゲン化ビニルまたはハロゲン化ビニリデンを含むことが好ましい。
【0045】
構成単位(II)を存在させることにより、撥水性や防汚性およびこれらの性能の耐クリーニング性、耐洗濯性、耐摩耗性、溶剤への溶解性、硬さ、感触などの種々の性質を必要に応じて改善することができる。
【0046】
構成単位(III)を形成する架橋性単量体は、少なくとも2つの反応性基および/または炭素-炭素二重結合を有するフッ素を含有しない(好ましくはビニル性の)単量体であってよい。架橋性単量体は、少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を有する化合物、あるいは少なくとも1つの炭素−炭素二重結合および少なくとも1つの反応性基を有する化合物であってよい。
【0047】
架橋性単量体としては、例えば、ジアセトンアクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブタジエン、クロロプレン、グリシジル(メタ)アクリレートなどが例示されるが、これらに限定されるものでない。構成単位(III)を存在させることにより、撥水性や防汚性およびこれらの性能の耐クリーニング性、耐洗濯性、溶剤への溶解性、硬さ、感触などの種々の性質を必要に応じて改善することができる。
【0048】
本発明において、含フッ素重合体はオキシアルキレン基を含まないことが好ましい。
含フッ素重合体の重量平均分子量は、例えば2000〜5000000、特に3000〜5000000、特別に10000〜1000000であってよい。
【0049】
含フッ素重合体において、構成単位(I)100重量部に対して、
構成単位(II)の量が0〜200重量部、より好ましくは0.5〜80重量部、特に1〜60重量部、
構成単位(III)の量が0〜30重量部、より好ましくは0.1〜15重量部、特に0.5〜10重量部
であることが好ましい。
【0050】
本発明における含フッ素重合体は通常の重合方法の何れでも製造でき、また重合反応の条件も任意に選択できる。このような重合方法として、溶液重合、乳化重合が挙げられる。特に乳化重合が好ましい。
【0051】
溶液重合では、重合開始剤の存在下で、単量体を有機溶剤に溶解させ、窒素置換後、例えば50〜120℃の範囲で1〜10時間、加熱撹拌する方法が採用される。重合開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどが挙げられる。重合開始剤は単量体100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲で用いてよい。
【0052】
有機溶剤としては、単量体に不活性でこれらを溶解するものであり、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタンなどが挙げられる。有機溶剤は単量体の合計100重量部に対して、50〜1000重量部の範囲で用いてよい。
【0053】
乳化重合では、重合開始剤および乳化剤の存在下で、単量体を水中に乳化させ、窒素置換後、例えば50〜80℃の範囲で1〜10時間、撹拌して共重合させる方法が採用される。重合開始剤は、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t−ブチルパーベンゾエート、1−ヒドロキシシクロヘキシルヒドロ過酸化物、3−カルボキシプロピオニル過酸化物、過酸化アセチル、アゾビスイソブチルアミジン−二塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性のものやアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどの油溶性のものが用いられる。重合開始剤は単量体100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲で用いてよい。
【0054】
放置安定性の優れた共重合体水分散液を得るためには、高圧ホモジナイザーや超音波ホモジナイザーのような強力な破砕エネルギーを付与できる乳化装置を用いて、単量体を水中に微粒子化し、水溶性または油溶性の重合開始剤を用いて重合することが望ましい。また、乳化剤としてはアニオン性、カチオン性あるいはノニオン性の各種乳化剤を用いることができ、単量体100重量部に対して、0.5〜50重量部、例えば0.5〜10重量部の範囲で用いてよい。単量体が完全に相溶しない場合は、これら単量体に充分に相溶させるような相溶化剤、例えば、水溶性有機溶剤や低分子量の単量体を添加することが好ましい。相溶化剤の添加により、乳化性および共重合性を向上させることが可能である。
【0055】
水溶性有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エタノール、N−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられ、水100重量部に対して、1〜50重量部、例えば10〜40重量部の範囲で用いてよい。
【0056】
含フッ素低分子化合物は、分子量2000未満、例えば500〜1500であってよく、フルオロアルキル基含有化合物であってよい。
含フッ素低分子化合物は、例えばフルオロアルキル基含有ウレタン、フルオロアルキル基含有エステルであってよい。
【0057】
フルオロアルキル基含有ウレタンは、
(i)少なくとも2つのイソシアネート基を有する化合物と、
(ii)1つのヒドロキシル基、アミノ基またはエポキシ基を有する含フッ素化合物を反応させることによって得られる。
【0058】
少なくとも2つのイソシアネート基を有する化合物(i)の例は、上記の含フッ素重合体を誘導するフルオロアルキル基含有ウレタンモノマーの少なくとも2つのイソシアネート基を有する化合物(a)の例と同様のものである。
1つのヒドロキシル基、アミノ基またはエポキシ基を有する含フッ素化合物(ii)の具体例は、以下のとおりである。
【0059】


[n=0〜8]
【0060】

[n=0〜8]
【0061】

【0062】

【0063】
フルオロアルキル基含有エステルは、
(iii)多価カルボン酸化合物と、
(ii)1つのヒドロキシル基、アミノ基またはエポキシ基を有する含フッ素化合物を反応させることによって得られる。
【0064】
多価カルボン酸化合物は、2以上、好ましくは2〜4個のカルボン酸基を有する化合物である。
【0065】
多価カルボン酸化合物の具体例は、以下のとおりである。
HOOC(CHCOOH
[n=2、4、6]
【0066】


【0067】





【0068】


【0069】
フルオロアルキル基含有エステルを形成する1つのヒドロキシル基、アミノ基またはエポキシ基を有する含フッ素化合物(ii)の例は、上記のフルオロアルキル基含有ウレタンを形成する1つのヒドロキシル基、アミノ基またはエポキシ基を有する含フッ素化合物(ii)の例と同様のものである。
【0070】
含フッ素化合物は、含フッ素重合体であっても、含フッ素低分子化合物であっても、含フッ素重合体と含フッ素低分子化合物の混合物であってもよい。
撥水撥油剤中の含フッ素化合物の占める割合は、80重量%以下、特に1〜60重量%であってよい。乳化剤の量は、含フッ素化合物100重量部に対して、0.5〜50重量部、例えば0.5〜15重量部であってよい。
【0071】
一つの態様によれば、工程(3)において用いる処理液は、含フッ素化合物に加えて、熱ゲル化物質(すなわち、熱ゲル化性を有する物質)を含んでなる。撥水撥油剤が熱ゲル化物質を含んでもよく、あるいは撥水撥油剤に熱ゲル化物質を添加してもよい。撥水撥油剤が熱ゲル化物質を含む場合には、含フッ素化合物の合成(例えば、含フッ素重合体の重合)を行う前に熱ゲル化物質を添加してもよいし、あるいは含フッ素化合物の合成を行った後に含フッ素化合物に熱ゲル化物質を添加してもよい。
【0072】
他の態様によれば、工程(3)において、処理液に加えて熱ゲル化物質を処理液に接触させた状態で、処理液および熱ゲル化物質を繊維製品に適用する。処理液と熱ゲル化物質とを接触させることによって、処理液が熱ゲル化物質を含む場合と同様の効果が得られる。熱ゲル化物質は、媒体(例えば、水および有機溶媒などの液体)に溶解または分散されていることが好ましい。熱ゲル化物質の溶液または分散液における熱ゲル化物質の濃度は、0.001〜3重量%、例えば0.002〜1重量%、特に0.01〜1重量%であってよい。
【0073】
「熱ゲル化物質」とは、水の存在下で30℃以上、特に60℃以上、特別に80℃以上の温度でゲル化する物質(特に、高分子物質)を意味する。「熱ゲル化物質」は、熱ゲル化物質の水溶液の粘度が温度上昇により増加する物質(例えば、30℃以上、特に60℃または80℃の温度での粘度が20℃での粘度の2倍以上、例えば10倍以上)であってもよい。熱ゲル化物質は、10〜25℃(特に20℃)で水に溶解または分散する物質である。熱ゲル化物質の水への25℃での溶解度は、一般に、水100g当たり、少なくとも1g、好ましくは少なくとも2g、特に好ましくは少なくとも5gである。熱ゲル化物質は、30℃以上、特に60℃以上、特別に80℃以上の温度で水に不溶であることが好ましい。30℃、60℃または80℃における熱ゲル化物質の水への溶解度は、水100g当たり、0.3g以下、特に0.1g以下であってよい。
【0074】
熱ゲル化物質の例は、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリビニルメチルエーテルである。セルロース系化合物が好ましい。特に、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースが好ましい。
【0075】
熱ゲル化物質(例えば、メチルセルロース)の水溶液の粘度は特に限定しないが、扱いやすさの観点から3mPa.s〜4000mPa.s(2%水溶液、20℃、B型粘度計)が好ましい。
【0076】
熱ゲル化物質の量は、含フッ素化合物100重量部に対して、0.1〜100重量部、例えば1〜50重量部、特に2〜30重量部であってよい。
【0077】
本発明において、処理される物品は繊維製品であり、特にカーペットであることが好ましい。繊維製品としては種々の例を挙げることができる。例えば、綿、麻、羊毛、絹などの動植物性天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどの合成繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維などの無機繊維、あるいはこれらの混合繊維が挙げられる。本発明の方法は、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維および/またはポリエステル繊維からなるカーペットに対して好適に使用できる。
【0078】
繊維製品は、繊維、糸、布等の形態のいずれであってもよい。本発明の方法に従ってカーペットを処理する場合に、繊維または糸を処理した後にカーペットを形成してもよいし、あるいは形成されたカーペットを処理してもよい。撥水撥油剤は、含フッ素化合物を0.02〜30重量%、好ましくは0.02〜1重量%に希釈した状態で使用することが可能である。
【0079】
「処理」とは、処理剤を、浸漬、噴霧、塗布などにより基材に適用することを意味する。処理により、処理剤の有効成分である含フッ素重合体が基材の内部に浸透するおよび/または基材の表面に付着する。
【実施例】
【0080】
本発明の実施例について具体的に説明するが、実施例が本発明を限定するものではない。実施例中、特記しない限り、%は重量%である。
フッ素付着率、撥水性および撥油性の測定方法は次のとおりである。
【0081】
フッ素付着率
燃焼フラスコを純水で十分に洗浄後、純水約15mlを入れて、燃焼フラスコを含む重量を測定し、予め測定しておいた燃焼フラスコ重量を除いたものを純水重量とする。白金バスケットは2〜3度加熱して完全に水分を飛ばす。キムワイプ上にカーペットパイル75 mgを測り取り、助燃剤(約30 mg)と一緒に折り畳み、白金バスケットにセットする。燃焼フラスコ内に酸素を吹き込み、パイルを燃焼分解させ、フラスコ内の純水に吸収させる。30分間吸収させた後、プラスチックカップに吸収液10 mlと緩衝液 (50 ml酢酸、50 g塩化ナトリウム、0.5 gクエン酸三ナトリウム二水和物、32 g水酸化ナトリウムを加え全量1lにしたもの) 10 mlを入れ、よく攪拌してFイオンメーターにて測定する。以下の計算式にてカーペットパイルへのフッ素付着量及びフッ素付着率を算出する。
【0082】
フッ素付着量[ppm]=(測定値[ppm]−ブランク測定値[ppm])×(純水重量[g]/パイル重量[mg])×1000
【0083】
フッ素付着率(%)=スチーム処理・水洗・遠心脱水・熱キュア処理後のフッ素付着量[ppm]/WPU(wet pick up)量が400%または300%となるように絞った直後のフッ素付着量[ppm]
【0084】
フッ素付着率を表中においてExhaustabilityとして示す。
【0085】
撥水性
撥水撥油剤処理済カーペットを温度21℃、湿度65%の恒温恒湿機に4時間以上保管する。試験液(イソプロピルアルコール(IPA)、水、及びその混合液、表Iに示す)も温度21℃で保存したものを使用する。試験は温度21℃、湿度65%の恒温恒湿室で行う。試験液をカーペット上にマイクロピペッターで50μl(5滴)静かに滴下し、10秒間放置後、液滴がカーペット上に4滴または5滴残っていれば、その試験液をパスしたものとする。撥水性は、パスした試験液のイソプロピルアルコール(IPA)含量(体積%)の最大なものをその点数とし、撥水性不良なものから良好なレベルまでFail、0、0.2、0.5、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、及び10の16段階で評価する。
【0086】

【0087】
撥油性
撥水撥油剤処理済カーペットを温度21℃、湿度65%の恒温恒湿機に4時間以上保管する。試験液(表IIに示す)も温度21℃で保存したものを使用する。試験は温度21℃、湿度65%の恒温恒湿室で行う。試験液をカーペット上にマイクロピペッターで50μl(5滴)静かに滴下し、30秒間放置後、液滴がカーペット上に4滴または5滴残っていれば、その試験液をパスしたものとする。撥油性は、パスした試験液の最高点数とし、撥油性不良なものから良好なレベルまでFail、1、2、3、4、5、6、7、及び8の9段階で評価する。
【0088】

【0089】
製造例1
CF3CF2(CF2CF2)nCH2CH2COOCH=CH2(n=3,4,5である化合物の混合物、nの平均値3.1) 40g、ステアリルアクリレート 10g、2-エチルヘキシルメタクリレート 10g、グリシジルメタクリレート 2g、N-メチロールアクリルアミド2g、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート 1g、n-ラウリルメルカプタン 0.1g、ソルビタンモノラウレート 2g、(C12-C14)ポリオキシエチレン(20)アルキルエーテル 2g、(C16-C18)アルキルトリメチルアンモニウムクロライド 0.5g、ジアルキル(牛脂)ジメチルアンモニウムクロライド 0.5g、ジポリオキシエチレンベンジルオクタデシルアンモニウム塩 1.5g、トリプロピレングリコール 20g、イオン交換水 95gを混合し、混合液を調製した。この混合液を60℃に加熱後、高圧ホモジナイザーを用いて乳化し、得られた乳化液を300mLフラスコに入れ、窒素置換を行い溶存酸素を除去した。次に2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸 0.5gを仕込んだ。攪拌下、60℃で3時間共重合反応を行わせて、共重合体エマルションを得た。次にイオン交換水で希釈し、固形分含有量30重量%の含フッ素アクリル系撥水撥油剤(すなわち、水性組成物)を調製した。得られた重合体の組成は、仕込みモノマー組成にほぼ一致した。
【0090】
製造例 2
CF3CF2(CF2CF2)nCH2CH2COOCH=CH2(n=3,4,5である化合物の混合物、nの平均値3.1) 40g、ステアリルアクリレート 10g、2-エチルヘキシルメタクリレート 10g、グリシジルメタクリレート 2g、N-メチロールアクリルアミド2g、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート 1g、n-ラウリルメルカプタン 0.1g、ソルビタンモノラウレート 2g、(C12-C14)ポリオキシエチレン(20)アルキルエーテル 2g、(C16-C18)アルキルトリメチルアンモニウムクロライド 0.5g、ジアルキル(牛脂)ジメチルアンモニウムクロライド 0.5g、ジポリオキシエチレンベンジルオクタデシルアンモニウム塩 1.5g、トリプロピレングリコール 20g、イオン交換水 95g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH-03、信越化学製)8gを混合し、混合液を調製した。この混合液を60℃に加熱後、高圧ホモジナイザーを用いて乳化し、得られた乳化液を300mLフラスコに入れ、窒素置換を行い溶存酸素を除去した。次に2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩 1.0gを仕込んだ。攪拌下、50℃で3時間共重合反応を行わせて、共重合体エマルションを得た。次にイオン交換水で希釈し、固形分含有量30重量%の含フッ素アクリル系撥水撥油剤(すなわち、水性組成物)を調製した。得られた重合体の組成は、仕込みモノマー組成にほぼ一致した。
【0091】
製造例3
CF3CF2(CF2CF2)nCH2CH2COOCH=CH2(n=3,4,5である化合物の混合物、nの平均値3.1) 40g、ステアリルアクリレート 10g、2-エチルヘキシルメタクリレート 10g、グリシジルメタクリレート 2g、N-メチロールアクリルアミド2g、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート 1g、n-ラウリルメルカプタン 0.1g、ソルビタンモノラウレート 2g、(C12-C14)ポリオキシエチレン(20)アルキルエーテル 2g、(C16-C18)アルキルトリメチルアンモニウムクロライド 0.5g、ジアルキル(牛脂)ジメチルアンモニウムクロライド 0.5g、ジポリオキシエチレンベンジルオクタデシルアンモニウム塩 1.5g、トリプロピレングリコール 20g、イオン交換水 95gを混合し、混合液を調製した。この混合液を60℃に加熱後、高圧ホモジナイザーを用いて乳化し、得られた乳化液を300mLフラスコに入れ、窒素置換を行い溶存酸素を除去した。次に2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸・二塩酸 0.5gを仕込んだ。攪拌下、60℃で3時間共重合反応を行わせて、共重合体エマルションを得た。次にイオン交換水で希釈し、固形分含有量30重量%の含フッ素アクリル系撥水撥油剤(すなわち、水性組成物)を調製した。得られた重合体にヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH-03、信越化学製)8gを添加した。
【0092】
実施例1
製造例1で調製した含フッ素アクリル系撥水撥油剤0.13g、メチルセルロース(メチルセルロースSM-15、信越化学製)の1重量%水溶液0.5g、水99.73gの混合液を調製し、さらにpHが2以下になるように10重量%スルファミン酸水溶液を加えて処理液を得た。
水洗してWPU 25%(WPU:wet pick up、カーペット100gに対して25gの液がのっている場合にWPU25%となる)に脱水したカーペットを、WPU250%となるように前述の処理液に30秒間浸漬させた。次にカーペットのパイル面を上に向けた状態で常圧スチーム処理(温度100〜107℃)を60秒間行い、2Lの水で軽くリンスした後、遠心脱水を行ってWPU25%にして、110℃で10分間の熱処理を行った。カーペットはポリエステル(15cm×5cm、カットパイル、密度44oz/yd2)、ナイロン6(15cm×5cm、カットパイル、密度32 oz/yd2)、ポリプロピレン(15cm×5cm、カットパイル、密度38oz/yd2)の3種類を用いた。
上記で得られたカーペットについて、フッ素付着率の測定、撥水性試験、撥油性試験を実施した。結果を表1,2,3に示す。
【0093】
実施例2
製造例1で調製した含フッ素アクリル系撥水撥油剤の量を0.13gに、メチルセルロースに代えてヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH-03、信越化学製)の1重量%水溶液0.5gに変更した以外は実施例1と同様の手順でカーペットを処理した。
上記で得られたカーペットについて、フッ素付着率の測定、撥水性試験、撥油性試験を実施した。結果を表1,2,3に示す。
【0094】
実施例3
製造例1で調製した含フッ素アクリル系撥水撥油剤の量を0.13gに、メチルセルロースに代えてヒドロキシエチルメチルセルロース(ヒドロキシエチルメチルセルロースSEB-04T、信越化学製)の1重量%水溶液0.5gに変更した以外は実施例1と同様の手順でカーペットを処理した。
上記で得られたカーペットについて、フッ素付着率の測定、撥水性試験、撥油性試験を実施した。結果を表1,2,3に示す。
【0095】
実施例4
製造例2で調製した含フッ素アクリル系撥水撥油剤0.13g、水99.73gの混合液を調製し、さらにpHが2以下になるように10重量%スルファミン酸水溶液を加えて処理液を得た。
水洗してWPU 25%(WPU:wet pick up、カーペット100gに対して25gの液がのっている場合にWPU25%となる)に脱水したカーペット(15cm×5cm、ナイロン6、カットパイル、密度32 oz/yd2)を、WPU250%となるように前述の処理液に30秒間浸漬させた。次にカーペットのパイル面を上に向けた状態で常圧スチーム処理(温度100〜107℃)を60秒間行い、2Lの水で軽くリンスした後、遠心脱水を行ってWPU25%にして、110℃で10分間の熱処理を行った。
上記で得られたカーペットについて、フッ素付着率の測定、撥水性試験、撥油性試験を実施した。結果を表1,2,3に示す。
【0096】
実施例5
製造例3で調製した含フッ素アクリル系撥水撥油剤を使用する以外は実施例4と同様の手順でカーペットを処理した。
上記で得られたカーペットについて、フッ素付着率の測定、撥水性試験、撥油性試験を実施した。結果を表1,2,3に示す。
【0097】
比較例1
製造例1で調製した含フッ素アクリル系撥水撥油剤0.13gに、メチルセルロースの水溶液を添加しないとする以外は実施例1と同様の手順でカーペットを処理した。
上記で得られたカーペットについて、フッ素付着率の測定、撥水性試験、撥油性試験を実施した。結果を表1,2,3に示す。
【0098】

【0099】

【0100】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)含フッ素重合体及び含フッ素低分子化合物からなる群から選択された少なくとも1種の含フッ素化合物を含んでなる撥水撥油剤を含む処理液を調製する工程、
(2)処理液のpHを7以下にする工程、
(3)繊維製品に処理液を適用する工程、
(4)繊維製品をスチーム処理する工程、および
(5)繊維製品を水洗して脱水する工程
を有してなる処理繊維製品の製造方法であって、
該撥水撥油剤または該処理液が熱ゲル化物質を含んでなるかまたは工程(3)において該処理液に加えて熱ゲル化物質を用い、熱ゲル化物質を該処理液に接触させた状態で繊維製品に適用する方法。
【請求項2】
含フッ素重合体が、
(I)フルオロアルキル基を含有する単量体から誘導された構成単位
を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
含フッ素重合体が、
(I)フルオロアルキル基を含有する単量体から誘導された構成単位、ならびに
(II)フッ素を含まない単量体から誘導された構成単位、および/または
(III)架橋性単量体から誘導された構成単位
を有する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
熱ゲル化物質が、水の存在下で30℃以上でゲル化する物質である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
熱ゲル化物質が、30℃以上の温度で水に不溶である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
熱ゲル化物質が、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドおよびポリビニルメチルエーテルからなる群から選択された少なくとも1種である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
熱ゲル化物質がメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびヒドロキシエチルメチルセルロースからなる群から選択された少なくとも1種である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
撥水撥油剤が熱ゲル化物質を含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程(2)において処理液のpHを7以下にする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法により得られた繊維製品。
【請求項11】
カーペットである請求項10に記載の繊維製品。
【請求項12】
カーペットがナイロン繊維、ポリプロピレン繊維および/またはポリエステル繊維からなる請求項9に記載のカーペット。
【請求項13】
(1)含フッ素重合体及び含フッ素低分子化合物からなる群から選択された少なくとも1種の含フッ素化合物を含んでなる撥水撥油剤を含む処理液を調製する工程、
(2)処理液のpHを7以下にする工程、
(3)繊維製品に処理液を適用する工程、
(4)繊維製品をスチーム処理する工程、および
(5)繊維製品を水洗して脱水する工程
を有してなる繊維製品の処理方法において使用される処理液であって、
熱ゲル化物質を含んでなる処理液。
【請求項14】
含フッ素重合体の重合を行う前に熱ゲル化物質を重合用単量体に添加して、撥水撥油剤を調製する請求項13に記載の処理液の製造方法。
【請求項15】
含フッ素重合体の重合または含フッ素低分子化合物の合成を行った後に含フッ素重合体または含フッ素低分子化合物に熱ゲル化物質を添加して、撥水撥油剤を調製する請求項13に記載の処理液の製造方法。
【請求項16】
撥水撥油剤に熱ゲル化物質を添加して、処理液を調製する請求項13に記載の処理液の製造方法。
【請求項17】
(i)含フッ素重合体及び含フッ素低分子化合物からなる群から選択された少なくとも1種の含フッ素化合物、および
(ii)熱ゲル化物質
を含んでなる撥水撥油剤組成物。

【公表番号】特表2010−507024(P2010−507024A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516767(P2009−516767)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【国際出願番号】PCT/JP2007/070677
【国際公開番号】WO2008/050780
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】