説明

撥水膜被覆物品、建築用窓ガラス及び車両用窓ガラス

【課題】優れた撥水性、滑落性(水滴転落性)、防汚性及び耐候性を有し、且つ長期間に亘ってその性能を維持出来る高耐久性(耐摩耗性、耐傷性)の撥水性皮膜物品の提供。
【解決手段】基材上に少なくとも下地層と、前記下地層の表面を被覆する撥水膜とを有する積層体で被覆した撥水膜被覆物品であって、前記下地層は無機化合物より形成されており、前記撥水膜はフッ素含有化合物より形成されており、前記積層体のナノインデンテーション法により測定した硬度が、2.0GPaから7.0GPaであり、前記撥水膜のフッ素密度が、1.3g/cmから3.0g/cmであり、前記積層体の内部応力が10MPaから100MPaであることを特徴とする撥水膜被覆物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水性、滑水性(水滴滑落性)に優れ、且つ、耐久性(耐傷性及び耐摩耗性)及び耐候性に優れた撥水性物品、それを適用した建築用窓ガラス及び車両用窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建築用窓ガラス、自動車用窓ガラス、車両、航空機、船舶等の風防ガラス、建築用ウィンドー、水槽、船底窓及び防音壁等の道路用パネル、ガラス食器、ガラス装飾品等はその表面に水滴、汚れ等の視界を妨げるものが付着しないことが望まれる。
【0003】
これまでに、ガラス表面に撥水性皮膜を有する撥水膜被覆物品が知られている。例えば、特開2001−139745号公報に、フッ素樹脂(耐候性・撥水性)にシリコーン(滑落性)を添加する技術が開示されている。特開2002−256258号公報には、ガラス板その他の基材の表面に、水滴の転がり性のよい撥水膜を設ける技術が知られている。
【0004】
ガラス物品表面に撥水性を付与することにより、汚染物質を含む水滴がガラス表面に付着、残存しにくくなるために、ガラスの汚染防止、焼け防止効果が得られる。
【0005】
例えば、この様な撥水性ガラスを自動車のフロントガラスやサイドガラス等に使用することにより、雨天走行時に表面に付着した雨水が風圧により吹き飛ばされるために、ドライバーの視野が確保され安全性が向上、雨滴、埃、汚れ等の付着防止、大気中の湿度、温度の影響で水分の凝縮に伴う、透明性、透視性低下の防止には効果がある一方で次の問題点を有している。
【0006】
自動車のフロントガラス表面に付着した水滴はワイパーを用いて除去し、サイドガラス付着した水滴は手で拭き取る等の物理的手段で除去する方法が採られている。
【0007】
しかし、水滴を物理的手段で除去する場合、水滴等に伴う異物粒子等の磨耗によって窓ガラスの表面に微細な傷を付けることがある。更に、ガラス表面の水滴中にガラス成分が溶出し、表面が浸食される、所謂焼けを生じる。焼けが激しく生じたガラスや表面に微細な凹凸を生じたガラスは、本来の機能が低下し、その表面で光の散乱が生じる。従って、これらの建築用窓ガラス、自動車用窓ガラスに用いられるガラスには、優れた撥水性、滑水性(水滴滑落性)、耐摩耗性、耐擦傷性(ワイパー等の摺動に対する耐性)及び耐候性と共にこれらの特性が長期間に亘り持続する耐久性が要求されている。これまでに優れた撥水性、滑水性(水滴滑落性)、耐摩耗性、耐擦傷性(ワイパー等の摺動に対する耐性)及び耐候性と共にこれらの特性が長期間に亘り持続する耐久性の向上に対してこれまでに検討が行われてきた。
【0008】
例えば、シリコンアルコキシド(又はその加水分解物)とフルオロアルキル基含有シラン化合物を溶媒(特にアルコール)に溶解したコーティング液を基材に塗布・乾燥する環境は、酸又はアルカリの雰囲気で行うことで水滴の転がり性が優れ、高い耐擦傷性及び高い耐候性及び寿命の長い撥水性被覆用組成物を得る方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
クロロシリル基含有化合物とフルオロアルキル基含有シラン化合物を、アルコール及び/又は水を含む溶媒に溶解し、前記クロロシリル基含有化合物のクロロ基を、アルコキシル基又は水酸基に置換した溶液を基材表面に塗布した後乾燥し、撥水性被膜を形成することで、水滴の接触角が大きく、更に水滴の転がり性が優れており、加えて高い耐擦傷性、耐候性を有する撥水性物品が得られることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
しかしながら、特許文献1、2の記載に従って得られる撥水性膜では、自動車フロントガラスに要求されるようなワイパーによる摩耗に十分耐えることが出来ず、耐摩耗性、耐久性及び耐候性が不十分であることが判った。
【0011】
又、金属アルコキシドを添加したテトラアルコキシシランを加水分解して得られるゾル溶液と、アルキルトリアルコキシシランを加水分解して得られるゾル溶液との混合物を主成分として得られるコーティング液を基板表面に塗布し、加熱焼成して微細な凹凸状表層を有するゾルゲル膜を形成し、このゾルゲル膜上に撥水膜層を被覆形成することで、耐光性、密着性、耐摩耗性が高く、長期的に性能が維持出来る撥水膜が得られるとしている(例えば、特許文献3参照)。
【0012】
しかしながら、特許文献3の記載に従って得られる撥水性膜も、凹凸によって摩擦が増加する傾向にあるため、自動車フロントガラスに要求されるような長期間の耐久性に耐え得るだけの耐摩耗性、耐傷性及び耐候性が十分でないことが判った。
【0013】
この様な状況から、優れた撥水性、滑落性(水滴転落性)及び耐候性を有し、且つ長期間に亘ってその性能を維持出来る高耐久性の撥水性皮膜物品の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2001−172417号公報
【特許文献2】特開2003−13048号公報
【特許文献3】特開2005−281132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記状況を鑑みなされたものであり、その目的は、優れた撥水性、滑落性(水滴転落性)及び耐候性を有し、且つ長期間に亘ってその性能を維持出来る高耐久性(耐摩耗性、耐傷性)の撥水性皮膜物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0017】
1.基材上に少なくとも下地層と、前記下地層の表面を被覆する撥水膜とを有する積層体で被覆した撥水膜被覆物品であって、前記下地層は無機化合物より形成されており、前記撥水膜はフッ素含有化合物より形成されており、前記積層体のナノインデンテーション法により測定した硬度が、2.0GPaから7.0GPaであり、前記撥水膜の膜密度が、1.3g/cmから3.0g/cmであり、前記積層体の内部応力が0.1MPaから10MPaであることを特徴とする撥水膜被覆物品。
【0018】
2.前記フッ素含有化合物がパーフルオロアルキルエーテル化合物からなることを特徴とする前記1に記載の撥水膜被覆物品。
【0019】
3.前記下地層は大気圧プラズマCVD法によって形成されたことを特徴とする前記1又は2に記載の撥水膜被覆物品。
【0020】
4.前記無機化合物が金属酸化物、金属窒化物もしくは金属酸化窒化物の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記1から3の何れか1項に記載の撥水膜被覆物品。
【0021】
5.前記無機化合物がAl、Si、Tiから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物、金属窒化物もしくは金属酸化窒化物から形成されていることを特徴とする前記1から3の何れか1項に記載の撥水膜被覆物品。
【0022】
6.前記無機化合物が酸化珪素であることを特徴とする前記1から3の何れか1項に記載の撥水膜被覆物品。
【0023】
7.前記基体がガラスであることを特徴とする前記1から6の何れか1項に記載の撥水膜被覆物品。
【0024】
8.前記1から7の何れか1項に記載の撥水膜被覆物品を用いて構成されていることを特徴とする建築用窓ガラス。
【0025】
9.前記1から7の何れか1項に記載の撥水膜被覆物品を用いて構成されていることを特徴とする車両用窓ガラス。
【0026】
本発明者は、ガラス基材の表面に、下地層、撥水層の積層体を有する撥水性皮膜物品を自動車のフロントガラスに使用した場合、何故、撥水性、滑落性(水滴転落性)及び耐候性が長期間に亘ってその性能を維持出来る高耐久性(耐摩耗性、耐傷性)が向上しないかを検討した結果、次のことが判明した。
【0027】
ガラス基材の表面に、下地層、撥水層の積層体を有する撥水性皮膜物品において、撥水層の性能維持には下地層の安定化が支配的であると推定した。即ち下地層が安定することで、上層の撥水層も安定化し、撥水層には本来の撥水性、滑落性(水滴転落性)、防汚性、耐候性を維持する特性を付与することで長期間に亘ってその性能を維持出来る高耐久性(耐摩耗性、耐傷性)を向上することが出来る。
【0028】
ガラス基材の表面に、下地層、撥水層の積層体を有する撥水性皮膜物品を自動車のフロントガラスに使用し、長期間使用することで発生する撥水性、滑落性(水滴転落性)及び耐候性の低下は下地層の歪みに伴う撥水層の剥離によるものであると推定した。
【0029】
下地層の歪みが何故発生するのか更に検討した結果、ワイパー等の往復の動きに伴う押圧による応力が掛けられることに起因していることが判明した。更に検討した結果、下地層は、下地層を形成した時の内部応力が存在した状態でバランスが保ち形成されているが、ワイパーの往復の動きに伴う押圧による応力が掛けられることで、下地層の内部応力のバランスが崩れ部分的に歪みが発生し、歪みに撥水層が追従出来なくて剥離が発生することが判明した。即ち、撥水性、滑落性(水滴転落性)が低下することが判った。
【0030】
下地層に掛かるワイパーの往復運動に伴う応力追従性を向上を付与する対策を更に検討した結果、ワイパーの往復運動の方向に均一に応力を分散させることが効果的であることが判明した。
【0031】
従来より開示されている技術として有機珪素化合物溶液を塗布・乾燥し、その後焼成する方法では、焼成時に発生する膜の内部応力が高すぎ、又真空蒸着やスパッタ法では成膜される膜そのものの内部応力が高いため均一に応力を分散出来ない。
【0032】
一方、耐候性については、撥水層材料の劣化が主な原因と考えられるが、我々は鋭意検討の結果、下地層の硬度を適切な範囲に選択することで、撥水層の劣化を抑制し、かつ表面の撥水層の密度をあげることができることを見出した。推定であるが、下地層の硬度を適切な範囲にすることで下地層と撥水材料との反応サイトが増えるとともに、結合が強固になり撥水材料が劣化し難くなるためと考えている。
【0033】
ワイパーの往復運動の方向に均一に応力を分散させるには下地層の内部応力を減少させることが効果的であり、撥水層にワイパーの往復運動に耐える膜硬度、撥水性を維持するための撥水層の密度を付与することで本願発明の目的効果を達成出来ることを見出し、本発明に至った次第である。
【発明の効果】
【0034】
優れた撥水性、滑落性(水滴転落性)及び耐候性を有し、且つ長期間に亘ってその性能を維持出来る高耐久性の撥水性皮膜物品を提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の撥水膜被覆物品の概略断面図である。
【図2】処理室の圧力と酸化珪素膜の内部応力との関係を示すグラフである。
【図3】撥水膜被覆物品を構成している基材(ガラス板)の表面に下地層を大気圧プラズマCVD法により形成する気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための形態を図1から図3を参照しながら説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
図1は本発明の撥水膜被覆物品の概略断面図である。
【0038】
図中、1は撥水膜被覆物品を示す。撥水膜被覆物品1は、基材101の上に下地層102と、撥水膜103とを有する積層体104を有している。下地層102の表面の全面は撥水膜103により被覆されている。
【0039】
下地層102の構成は特に限定はなく、1層であってもよく、少なくとも2層から構成されていても構わない。本図では1層で構成されている場合を示している。
【0040】
Mは、下地層102の厚さを示す。厚さMは、撥水膜の耐久性、耐候性、クラックの発生等を考慮し10nmから500nmが好ましい。更には10nmから200nmがより好ましい。
【0041】
Nは、撥水膜103の厚さを示す。厚さNは、撥水性、滑落性(水滴転落性)及び耐久性等を考慮し、1nmから10nmが好ましい。
【0042】
下地層102の厚さ及び撥水膜103の膜厚は、「MXP21(マックサイエンス社製)」を用いて測定して得られた値である。具体的な膜厚の測定は、以下の方法で行うことが出来る。X線源のターゲットには銅を用い、42kV、500mAで作動させる。インシデントモノクロメータには多層膜パラボラミラーを用いる。入射スリットは0.05mm×5mm、受光スリットは0.03mm×20mmを用いる。2θ/θスキャン方式で0から5°をステップ幅0.005°、1ステップ10秒のFT法にて測定を行う。得られた反射率曲線に対し、マックサイエンス社製Reflectivity Analysis Program Ver.1を用いてカーブフィッティングを行い、実測値とフィッティングカーブの残差平方和が最小になる様に各パラメータを求める。各パラメータから下地層102の厚さ、撥水膜103の膜厚及び積層体104の膜厚を求めることが出来る。
【0043】
本図に示す様に、撥水膜被覆物品の下地層102の厚さ10nmから500nmに対して撥水膜103の厚さは1nmから10nmと薄いため、積層体104の内部応力及び積層体の硬度は下地層102の内部応力及び硬度が支配的になっている。
【0044】
積層体104の内部応力の測定は、以下の方法により測定する。即ち、測定膜と同じ組成の膜を、幅10mm、長さ50mm、厚み0.1mmの石英基板上に同じ方法により厚み1μmとなるよう製膜し、作製したサンプルに生じるカールをサンプルの凹部を上に向けて、NEC三栄社製、薄膜物性評価装置MH4000にて測定して得ることが出来る。一般に圧縮応力により基材に対し膜側が縮むプラスカールの場合プラスの応力とし、逆に、引っ張り応力によりマイナスカールを生じる場合マイナスの応力と表現する。
【0045】
内部応力は、例えば真空蒸着法により酸化珪素膜を作製する時に、真空度を調整することで調整することが出来る。又プラズマCVDの場合は、印加する電力密度、原料ガス供給量、成膜時の温度などを適宜設定することにより、調整することが出来る。
【0046】
以下に酸化珪素膜を作製する時の処理室の圧力と酸化珪素膜の内部応力の関係を説明する。
【0047】
図2は処理室の圧力と酸化珪素膜の内部応力との関係を示すグラフである。
【0048】
縦軸は内部応力示し、横軸は処理室の圧力を示す。本図は、幅10mm、長さ50mm、厚み0.1mmの石英基板上に、真空蒸着法により酸化珪素膜を1μm形成したときの処理室の真空度と、形成される酸化珪素膜の上述の方法で測定した内部応力との関係を示すグラフである。本図に示す様に処理室の圧力が高くなるに従って内部応力が低くなっていることが判る。即ち、内部応力は、処理室の真空度を調整することで調整することが出来ることを示している。
【0049】
本発明の撥水膜被覆物品に係わる積層体(下地層+撥水層)104(図1参照)の内部応力は0.1MPaから10MPaである。さらに好ましくは0.5MPaから5MPaである。
【0050】
内部応力が0.1MPa未満の場合は、部分的に引っ張り応力になっている場合も有り、膜にヒビや、亀裂が入りやすく、耐久性のない膜となるため好ましくない。
【0051】
内部応力が10MPaを超える場合は、応力を十分に分配させることができず、積層体の耐久性が低くなるため好ましくない。
【0052】
積層体104(図1参照)の硬度は2.0GPaから7.0GPaである。硬度が2.0GPa未満の場合は、機械的な強度面で脆弱なため、耐摩耗性が低くなるため好ましくない。硬度が7.0GPaを超える場合は、撥水膜を付与した後下地層との結合が十分おこなわれないことにより撥水材料の脱離及び耐候性が低くなるため好ましくない。
【0053】
尚、積層体104(図1参照)を構成している下地層102(図1参照)厚さと撥水膜103(図1参照)の厚さとの比から実質的には下地層の硬度となっている。
【0054】
積層体104(図1参照)の硬度は、ナノインデンテーション法により測定した値を示す。
【0055】
ナノインデンテーション法とは、試料に対して超微小な荷重で圧子を連続的に負荷、除荷し、得られた荷重−変位曲線から硬さ(Hardness、以下、Hと略記)を測定する方法である。
【0056】
ナノインデンテーションの硬さ(H)は、試料の直接的な表面の硬さ(H)の値を表している。従って、ナノインデンテーションの硬さ(H)が表面硬度の指標として適している。
【0057】
〈ナノインデンテーション法による硬度(H)の測定〉
積層体104(図1参照)のナノインデンテーション法による硬度(H)の測定は、Hysitron社製TriboscopeをDigital Instruments社製NanoscopeIIIに試料を装着し測定した。測定には、圧子としてベルコビッチ型圧子(先端稜角142.3°)と呼ばれる三角錘型ダイヤモンド製圧子を用いる。
【0058】
三角錘型ダイヤモンド製圧子を試料表面に直角に当て、徐々に荷重を印加し、最大荷重到達後に荷重を0にまで徐々に戻した。この時の最大荷重Pを圧子接触部の投影面積Aで除した値P/Aを硬度(H)として算出した。この時の最大荷重の条件は100μNで行う。尚、ナノインデンテーション法による表面硬度測定の原理に関する詳細は、例えば、Handbook of Micro/Nano Tribology(Bharat Bhushan編 CRC)に記載されている。
【0059】
本発明の撥水膜被覆物品に係わる下地層は、金属酸化物、金属窒化物もしくは金属酸化窒化物の中から選ばれる少なくとも1種の無機化合物から構成されていることが好ましい。更に、無機化合物がIn、Sn、Cd、Zn、Al、Sb、Ge、W、Mo、Si、Zr、Ce、Mg、Tiから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物、金属窒化物もしくは金属酸化窒化物から形成されていることが好ましい。特にAl、Si、Tiが好ましい。具体的には、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化チタン、酸化窒化チタン、窒化チタン、酸化アルミニウム等が挙げられる。本発明での金属酸化物、金属窒化物には、原子数濃度で10%を超えない範囲で炭素を含むことが出来る。
【0060】
本発明の撥水膜被覆物品に係わる下地層は、真空度を調整したスパッタリング法、イオンアシスト法、後述するプラズマCVD法などで形成可能だが、後述する大気圧又は大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法等を適用して形成されたものであることが好ましく、特に大気圧プラズマCVDによる方法は、減圧チャンバー等が不要で、高速製膜が出来生産性の高い製膜方法である。上記下地層をプラズマCVDにより形成することで、均一、且つ表面の平滑性を有し、更に内部応力も非常に少ない(前記0.1MPaから10MPa)膜を比較的容易に形成することが可能となるからである。
【0061】
大気圧プラズマCVD法は、例えば、特開2000−246091号公報や特開2003−238713号公報等に記載されている様に、大気圧もしくはその近傍の圧力下、対向する2つの電極間に薄膜形成ガス及び放電ガスを含有するガスを供給し、該電極間に高周波電界を印加することにより該ガスを励起し、励起したガスに晒すことにより、薄膜を形成する方法である。
【0062】
大気圧もしくはその近傍の圧力とは20から110kPa程度であり、本発明に記載の良好な効果を得るためには、93から104kPaが好ましい。
【0063】
次に、本発明の撥水膜被覆物品に係る下地層を大気圧プラズマCVD法により形成する装置について図3で説明する。
【0064】
図3は撥水膜被覆物品を構成している基材(ガラス板)の表面に下地層を大気圧プラズマCVD法により形成する大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【0065】
図中、2は大気圧プラズマ放電処理装置を示す。大気圧プラズマ放電処理装置2は、プラズマ放電処理室3と、プラズマ放電処理室3の内部に収納された第1電極401aと第2電極401bとを有する電界印加手段4と、ガス供給手段5と、電極温度調節手段6とを有している。402は第1電極401aと第2電極401bとの間(以下、放電空間とも言う)を示す。大気圧プラズマ放電処理装置2は、放電空間402で基材(ガラス板)Sの表面をプラズマ放電処理するものである。
【0066】
ガス供給手段5はガス発生装置501を有しており、ガス発生装置501で発生させた薄膜形成ガスGはガス流量調整手段(不図示)により流量を制御して給気口502よりプラズマ放電処理室3の内に導入される。
【0067】
続いて第1電極401aと第2電極401bとの間に高周波電界を掛け、放電空間402で放電プラズマを発生させる。基材(ガラス板)Fの表面はプラズマ状態のガスにより表面を処理される。放電処理済みの処理排ガスG′は排気口301より排出する。
【0068】
プラズマ処理中、第1電極401a及び第2電極401bを加熱又は冷却するために、電極温度調節手段6で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管601を介して第1電極401aと第2電極401bに送り、電極内側から温度を調節する。尚、本図では第2電極401bのみの温度を調節する場合を図示してある。第1電極401aにも第2電極401bと同様に電極内側から温度を調節することが可能となっている。
【0069】
ここで、高周波電源の周波数としては、1kHz〜2500MHzであり、100kHz〜60MHzが好ましく用いることが出来る。またこの電界波形としては、連続波でもパルス波でもよい。
【0070】
本発明の撥水膜被覆物品に係わる積層体のナノインデンテーション硬度を2.0GPaから7.0GPaにするためには出力としては、対向する電極間に印加する電力は、0.1W/cm以上の電力を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させる。上限値としては、好ましくは50W/cm、より好ましくは20W/cmである。下限値は、好ましくは0.5W/cmである。尚、放電面積(cm)は、電極間において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0071】
大気圧プラズマ放電処理装置2に設置する電源(高周波電源)としては、神鋼電機社製SPG5−4500(5kHz)、ハイデン研究所製PHF−6k(100kHz*)、パール工業製CF−2000−200k(200kHz)、同CF−5000−13M(13.56MHz)等の市販のものを挙げることが出来、何れも使用することが出来る。
【0072】
尚、上記電源の内、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。それ以外は連続サイン波のみ印加可能な高周波電源である。
【0073】
ここで高周波電界の波形としては、特に限定されない。連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モード等があり、そのどちらを採用してもよい。
【0074】
第1電極401aと第2電極401bとは、導電性の金属質母材、及び少なくとも一方の電極の放電空間に対する面にセラミックス誘電体を配したものである。電極の構造(不図示)は、プラズマ放電処理中の電極表面温度を制御出来るジャケット構造を有することが好ましい。本図では電極の形状として板状のものを用いているが、円筒状、柱状など基材により適宜選択することが出来る。
【0075】
セラミックス誘電体は片肉で1mmから5mm程度被覆があればよい。セラミックスを被覆する方法としては特に限定されないが、金属質母材にセラミックス溶射を行う方法が好ましい。セラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、特に好ましく用いられる。又誘電体層が、ライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
【0076】
導電性の金属質母材としては、チタン金属又はチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料又はアルミニウムとセラミックスとの複合材料を挙げることが出来る。
【0077】
対向する第1電極401a及び第2電極401bの電極間距離は、電極の一方に誘電体を設けた場合、誘電体表面ともう一方の電極の導電性の金属質母材表面との最短距離のことを言う。電極間距離は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電界強度の大きさ、処理程度を考慮して決定されるが、何れの場合も均一な放電を行う観点から0.1mmから20mmが好ましく、特に好ましくは0.5mmから5mmである。
【0078】
プラズマ放電処理室3はパイレックス(登録商標)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁が取れれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウム又は、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を貼り付けてもよく、これらのフレームにセラミックス溶射を行い、絶縁性をとってもよい。
【0079】
本図に示される大気圧プラズマ放電処理装置2は、上述のように、放電空間で放電させ、放電空間に導入したガスをプラズマ状態とし、放電空間に静置或いは放電空間を移送される基材(ガラス板)Fを、プラズマ状態のガスに晒すことによって、基材(ガラス板)Fの表面を処理するものである。又他の方式として、放電空間で放電させ放電空間に導入したガスを励起し又はプラズマ状態とし、放電空間の外にジェット状に励起又はプラズマ状態のガスを吹き出し、第1電極401a及び第2電極401bの近傍にある基材(ガラス板)(静置していても移送されていてもよい)を晒すことによって処理する、所謂ジェット方式の装置(不図示)でもよい。
【0080】
大気圧プラズマ放電処理装置2により大気圧プラズマ処理を実施するにあたり、使用するガスは、基本的に、不活性ガスと、反応ガスの混合ガスである。反応ガスは、酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、窒素から選択される成分である。又、反応ガスは、混合ガスに対し、0.001体積%から10体積%含有させることが好ましい。
【0081】
不活性ガスとは、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等の希ガス、又は窒素が挙げられるが、これらの中で、ヘリウム、アルゴン、窒素が好ましく用いられる。不活性ガスは、混合ガス100体積%に対し、90体積%以上含有されることが好ましい。更に好ましくは95体積%以上である。
【0082】
上記反応ガスを選択すると共に、放電ガスの組成比、ガスの供給速度、或いはプラズマ放電処理時の出力条件等を適宜選択することにより所望の処理を行うことが出来る。
【0083】
大気圧プラズマ処理においては、基材(ガラス板)温度として、250℃以下、より好ましくは100℃から200℃の温度で大気圧プラズマ処理を施すことが好ましく、比較的低温において実施出来る特徴がある。
【0084】
又、下地層を形成するための原料ガスとしては、常温で気体又は液体の有機金属化合物、特にアルキル金属化合物や金属アルコキシド化合物、有機金属錯体化合物が用いられる。これら原料における相状態は常温常圧において必ずしも気相である必要はなく、混合ガス供給装置で加熱或いは減圧等により溶融、蒸発、昇華等を経て気化し得るものであれば、液相でも固相でも使用可能である。
【0085】
原料ガスとしては、放電空間でプラズマ状態となり、薄膜を形成する成分を含有するものであり、有機金属化合物、有機化合物、無機化合物等である。
【0086】
例えば、珪素化合物として、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラキスジメチルアミノシラン、テトライソシアナートシラン、テトラメチルジシラザン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、トリエトキシフルオロシラン、アリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ベンジルトリメチルシラン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、1,4−ビストリメチルシリル−1,3−ブタジイン、ジ−t−ブチルシラン、1,3−ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン、フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン、プロパルギルトリメチルシラン、テトラメチルシラン、トリメチルシリルアセチレン、1−(トリメチルシリル)−1−プロピン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ビニルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、Mシリケート51等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0087】
チタン化合物としては、テトラジメチルアミノチタン等の有機金属化合物、モノチタン、ジチタン等の金属水素化合物、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタン等の金属ハロゲン化合物、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等の金属アルコキシド等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0088】
アルミニウム化合物としては、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムs−ブトキシド、アルミニウムt−ブトキシド、アルミニウムジイソプロポキシドエチルアセトアセテート、アルミニウムエトキシド、アルミニウムヘキサフルオロペンタンジオネート、アルミニウムイソプロポキシド、4−ペンタンジオネート、ジメチルアルミニウムクロライド等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0089】
又、これらの原料は、単独で用いてもよいが、2種以上の成分を混合して使用する様にしてもよい。
【0090】
《撥水性材料》
本発明の撥水膜に用いられるフッ素含有化合物としては特に制限はなく、例えば、有機系フッ素化合物、含フッ素有機珪素化合物、含フッ素有機金属化合物などを挙げることが出来る。又、これらの各化合物は溶液状態で直接付与しても、適当な溶媒中に微粒子の状態で分散して付与しても、或いはポリマー化して付与してもよい。
【0091】
本発明に好ましく用いられるフッ素原子を含有する有機基を有する有機金属化合物、パーフルオロエーテル化合物について、詳細に説明する。
【0092】
フッ素原子を含有する有機基を有する有機金属化合物において、フッ素原子を含有する有機基としては、フッ素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アリール基等を有する有機基が挙げられるが、本発明に好ましく用いられるフッ素原子を含有する有機基を有する有機金属化合物としては、これらのフッ素原子を含有する有機基が、金属原子、例えば、珪素、チタン、ゲルマニウム、ジルコニウム、スズ、アルミニウム、インジウム、アンチモン、イットリウム、ランタニウム、鉄、ネオジウム、銅、ガリウム、ハフニウム等の金属に直接結合した有機金属化合物である。これらの金属の内では、珪素、チタン、ゲルマニウム、ジルコニウム、スズ等が更に好ましく、特に好ましいのは珪素、チタンである。これらのフッ素原子を含有する有機基は、金属化合物にいかなる形で結合していてもよく、例えば、シロキサン等複数の金属原子を有する化合物が、これらの有機基を有する場合、少なくとも1つの金属原子がフッ素原子を含有する有機基を有していればよく、又、その位置も問わない。
【0093】
上記のフッ素原子を含有する有機基を有する有機金属化合物を用いた薄膜形成方法によると、フッ素原子を含有する有機基を有する有機金属化合物が、シリカやガラス等の基板と結合を形成し易く、本発明の優れた効果を奏することが出来ると推定している。
【0094】
本発明において用いられるフッ素原子を含有する有機基を有する有機金属化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0095】
【化1】

【0096】
式中、MはSi、Ti、Ge、Zr又はSnを表す。又、RからRは各々水素原子又は一価の基を表し、RからRで表される基の少なくとも1つは、フッ素原子を含有する有機基であり、例えば、フッ素原子を含有するアルキル基、アルケニル基又はアリール基を有する有機基が好ましく、フッ素原子を含有するアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブチル基等の基が、フッ素原子を含有するアルケニル基としては、例えば、3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル基等の基が、又、フッ素原子を含有するアリール基としては、例えば、ペンタフルオロフェニル基等の基が挙げられる。又、これらフッ素原子を含有するアルキル基、アルケニル基、又アリール基から形成されるアルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基等なども用いることが出来る。
【0097】
又、フッ素原子は、前記アルキル基、アルケニル基、アリール基等においては、骨格中の炭素原子のどの位置に任意の数を結合していてもよいが、少なくとも1個以上結合していることが好ましい。又、アルキル基、アルケニル基骨格中の炭素原子は、例えば、酸素、窒素、硫黄等他の原子、又、酸素、窒素、硫黄等を含む2価の基、例えば、カルボニル基、チオカルボニル基等の基で置換されていてもよい。
【0098】
からRで表される基の内、前記フッ素原子を有する有機基以外は、水素原子又は1価の基を表し、1価の基としては、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、イソシアネート基、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基等の基が挙げられるが、これに限定されない。jは0から150の整数を表し、好ましくは0から50、更に好ましいのはjが0から20の範囲である。
【0099】
前記1価の基の内、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。又、前記1価の基である前記アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基の内、好ましいのは、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基である。
【0100】
又、Mで表される金属原子の内、好ましいのは、Si、Tiである。
【0101】
前記1価の基は、更にその他の基で置換されていてもよく、特に限定されないが、好ましい置換基としては、アミノ基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、フェニル基等のアリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルカンアミド基、アリールアミド基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、シリル基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基等の基が挙げられる。
【0102】
又、前記フッ素原子を有する有機基、又はそれ以外のこれらRからRで表される基は、RM−(Mは、前記金属原子を表し、R、R、Rはそれぞれ1価の基を表し、1価の基としては前記フッ素原子を有する有機基又はRからRとして挙げられた前記フッ素原子を有する有機基以外の基を表す。)で表される基によって更に置換された複数の金属原子を有する構造であってもよい。これらの金属原子としては、Si、Ti等が挙げられ、例えば、シリル基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。
【0103】
前記RからRにおいて挙げられたフッ素原子を含有する基であるアルキル基、アルケニル基、又これらから形成されるアルコキシ基、アルケニルオキシ基におけるアルキル基、アルケニル基としては、下記一般式(F)で表される基が好ましい。
【0104】
一般式(F)
Rf−X−(CH
ここにおいてRfは、水素の少なくとも1つがフッ素原子により置換されたアルキル基、アルケニル基を表し、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロオクチル基、ヘプタフルオロプロピル基のようなパーフルオロアルキル基等の基、又、3,3,3−トリフルオロプロピル基、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブチル基等の基、又、1,1,1−トリフルオロ−2−クロルプロペニル基等のようなフッ素原子により置換されたアルケニル基が好ましく、中でも、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロオクチル基、ヘプタフルオロプロピル基等の基、又、3,3,3−トリフルオロプロピル基、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブチル基等の少なくとも2つ以上のフッ素原子を含有するアルキル基が好ましい。
【0105】
又、Xは単なる結合手又は2価の基である、2価の基としては−O−、−S−、−NR−(Rは水素原子又はアルキル基を表す)等の基、−CO−、−CO−O−、−CONH−、−SONH−、−SO−O−、−OCONH−、
【0106】
【化2】

【0107】
等の基を表す。
【0108】
kは0から50、好ましくは0から30の整数を表す。
【0109】
Rf中にはフッ素原子のほか、他の置換基が置換されていてもよく、置換可能な基としては、前記RからRにおいて置換基として挙げられた基と同様の基が挙げられる。又、Rf中の骨格炭素原子が他の原子、例えば、−O−、−S−、−NR−(Rは水素原子、又は置換もしくは非置換のアルキル基を表し、又前記一般式(F)で表される基であってもよい)、カルボニル基、−NHCO−、−CO−O−、−SONH−等の基によって一部置換されていてもよい。
【0110】
前記一般式(1)で表される化合物の内、好ましいのは下記一般式(2)で表される化合物である。
【0111】
一般式(2)
[Rf−X−(CH−M(R10(OR11
一般式(2)において、Mは前記一般式(1)と同様の金属原子を表し、Rf、Xは前記一般式(F)におけるRf、Xと同様の基を表し、kについても同じ整数を表す。R10はアルキル基、アルケニル基を、又R11はアルキル基、アルケニル基、アリール基を表し、それぞれ、前記一般式(1)のRからRの置換基として挙げた基と同様の基により置換されていてもよいが、好ましくは、非置換のアルキル基、アルケニル基を表す。又、q+r+t=4であり、q≧1、又t≧1である。又、r≧2の時2つのR10は連結して環を形成してもよい。
【0112】
一般式(2)の内、更に好ましいものは下記一般式(3)で表される化合物である。
【0113】
一般式(3)
Rf−X−(CH−M(OR12
ここにおいて、Rf、X又kは、前記一般式(2)におけるものと同義である。又、R12も、前記一般式(2)におけるR11と同義である。又、Mも前記一般式(2)におけるMと同様であるが、特に、Si、Tiが好ましく、最も好ましいのはSiである。
【0114】
本発明において、フッ素原子を含有する有機基を有する有機金属化合物の他の好ましい例は、下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0115】
【化3】

【0116】
前記一般式(4)において、RからRは、前記一般式(1)におけるRからRと同義である。ここにおいても、RからRの少なくとも1つは、前記フッ素原子を有する有機基であり、前記一般式(F)で表される基が好ましい。Rは水素原子、又は置換もしくは非置換のアルキル基を表す。又、jは0から100の整数を表し、好ましくは0から50、最も好ましいのはjが0から20の範囲である。
【0117】
本発明において用いられる他の好ましいフッ素原子を有する化合物として、下記一般式(5)で表されるフッ素原子を含有する有機基を有する有機金属化合物がある。
【0118】
一般式(5)
[Rf−X−(CH−Y]−M(R(OR
一般式(5)において、MはIn、Al、Sb、Y又はLaを表す。Rf、Xは前記一般式(F)におけるRf、Xと同様の基を表し、Yは単なる結合手又は酸素を表す。kについても同じく0から50の整数を表し、好ましくは30以下の整数である。Rはアルキル基又はアルケニル基を、又Rはアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、それぞれ、前記一般式(1)のRからRの置換基として挙げた基と同様の基により置換されていてもよい。又、一般式(5)において、m+n+p=3であり、mは少なくとも1であり、nは0から2を、又pも0から2の整数を表す。m+p=3、即ちn=0であることが好ましい。
【0119】
本発明において用いられる他の好ましいフッ素原子を含有する化合物として、下記一般式(6)で表されるフッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物がある。
【0120】
一般式(6)
Rf(OCm1−O−(CFn1−(CHp1−Z−(CHq1−Si−(R
一般式(6)において、Rfは炭素数1から16の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基、Rは加水分解基、Zは−OCONH−又は−O−を表し、m1は1から50の整数、n1は0から3の整数、p1は0から3の整数、q1は1から6の整数を表し、6≧n1+p1>0である。
【0121】
Rfに導入し得る直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基の炭素数は、1から16がより好ましく、1から3が最も好ましい。従って、Rfとしては、−CF、−C、−C等が好ましい。
【0122】
に導入し得る加水分解基としては、−Cl、−Br、−I、−OR11、−OCOR11、−CO(R11)C=C(R12、−ON=C(R11、−ON=CR13、−N(R12、−R12NOCR11などが好ましい。R11はアルキル基などの炭素数1から10の脂肪族炭化水素基を、又はフェニル基などの炭素数6から20の芳香族炭化水素基を表し、R12は水素原子、又はアルキル基などの炭素数1から5の脂肪族炭化水素を表し、R13はアルキリデン基などの炭素数3から6の二価の脂肪族炭化水素基を表す。これらの加水分解基の中でも、−OCH、−OC、−OC、−OCOCH及び−NHが好ましい。
【0123】
上記一般式(6)におけるm1は1から30あることがより好ましく、5から20であることが更に好ましい。n1は1又は2であることがより好ましく、p1は1又は2であることがより好ましい。又、q1は1から3であることがより好ましい。
【0124】
本発明において用いられる他の好ましいフッ素原子を有する化合物として、前記一般式(7)で表されるフッ素原子を含有する有機基を有する有機金属化合物がある。
【0125】
【化4】

【0126】
前記一般式(7)において、Rfは炭素数1から16の直鎖状又は分岐状パーフルオロアルキル基、Xはヨウ素原子又は水素原子、Yは水素原子、又は低級アルキル基、Zはフッ素原子又はトリフルオロメチル基、R21は加水分解可能な基、R22は水素原子、又は不活性な一価の有機基を表し、a、b、c、dはそれぞれ0から200の整数、eは0、又は1、m及びnは0から2の整数、pは1から10の整数を表す。
【0127】
前記一般式(7)において、Rfは、通常、炭素数1から16の直鎖状又は分岐状パーフルオロアルキル基であり、好ましくは、CF基、C基、C基である。Yにおける低級アルキル基としては、通常、炭素数1から5のものが挙げられる。
【0128】
21の加水分解可能な基としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、R23O基、R23COO基、(R24C=C(R23)CO基、(R23C=NO基、R25C=NO基、(R24N基、及びR23CONR24基が好ましい。ここで、R23はアルキル基等の通常は炭素数1から10の脂肪族炭化水素基又はフェニル基等の通常は炭素数6から20の芳香族炭化水素基、R24は水素原子又はアルキル基等の通常は炭素数1から5の低級脂肪族炭化水素基、R25はアルキリデン基等の通常は炭素数3から6の二価の脂肪族炭化水素基である。更に、好ましくは、塩素原子、CHO基、CO基、CO基である。
【0129】
22は水素原子又は不活性な一価の有機基であり、好ましくは、アルキル基等の通常は炭素数1から4の一価の炭化水素基である。a、b、c、dは0から200の整数であり、好ましくは1から50である。m及びnは、0から2の整数であり、好ましくは0である。pは1又は2以上の整数であり、好ましくは1から10の整数であり、更に好ましくは1から5の整数である。又、数平均分子量は5×10から1×10であり、好ましくは1×10から1×10である。
【0130】
又、前記一般式(7)で表されるシラン化合物の好ましい構造のものとして、RfがC基であり、aが1から50の整数であり、b、c及びdが0であり、eが1であり、Zがフッ素原子であり、nが0である化合物である。
【0131】
本発明の撥水膜被覆物品に係わるフッ素含有化合物として好ましく用いられるフッ素を含有する有機基を有する有機金属化合物、及び前記一般式(1)から(7)で表される化合物の代表的化合物例を以下に挙げるが、本発明ではこれらの化合物に限定されるものではない。
【0132】
1:(CFCHCHSi
2:(CFCHCHSi(CH
3:(C17CHCH)Si(OC
4:CH=CHSi(CF
5:(CH=CHCOO)Si(CF
6:(CFCHCHSiCl(CH
7:C17CHCHSi(Cl)
8:(C17CHCHSi(OC
9:CFCHCHSi(OCH
10:CFCHCHSiCl
11:CF(CFCHCHSiCl
12:CF(CFCHCHSiCl
13:CF(CFCHCHSi(OCH
14:CF(CFCHCHSiCl
15:CF(CFCHCHSi(OCH
16:CF(CFCHSi(OC
17:CF(CHSi(OC
18:CF(CHSi(OC
19:CF(CHSi(OC
20:CF(CF(CHSi(OC
21:CF(CF(CHSi(OC
22:CF(CF(CHSi(OC
23:CF(CF(CHSi(OC
24:CF(CF(CHSi(OCH)(OC
25:CF(CF(CHSi(OCHOC
26:CF(CF(CHSiCH(OCH
27:CF(CF(CHSiCH(OC
28:CF(CF(CHSiCH(OC
29:(CFCF(CF(CHSi(OCH
30:C15CONH(CHSi(OC
31:C17SONH(CHSi(OC
32:C17(CHOCONH(CHSi(OCH
33:CF(CF(CHSi(CH)(OCH
34:CF(CF(CHSi(CH)(OC
35:CF(CF(CHSi(CH)(OC
36:CF(CF(CHSi(C)(OCH
37:CF(CF(CHSi(C)(OC
38:CF(CHSi(CH)(OCH
39:CF(CHSi(CH)(OC
40:CF(CHSi(CH)(OC
41:CF(CF(CHSi(CH)(OCH
42:CF(CF(CHSi(CH)(OC
43:CF(CFO(CF(CHSi(OC
44:C15CHO(CHSi(OC
45:C17SOO(CHSi(OC
46:C17(CHOCHO(CHSi(OCH
47:CF(CFCH(C)CHSi(OCH
48:CF(CFCH(C)CHSi(OCH
49:(CF(p−CH−C)COCHCHCHSi(OCH
50:CFCO−O−CHCHCHSi(OCH
51:CF(CFCHCHSi(CH)Cl
52:CFCHCH(CH)Si(OCH
53:CFCO−O−Si(CH
54:CFCHCHSi(CH)Cl
55:(CF(p−CH−C)COCHCHSi(OCH
56:(CF(p−CH−C)COCHCHSi(OC
57:(CF)(CHSi−O−Si(CH
58:(CF)(CHSi−O−Si(CF)(CH
59:CF(OC24−O−(CF−CH−O−CHSi(OCH
60:CFO(CF(CF)CFO)CFCONHCSi(OC (m=11から30)、
61:(CO)SiCNHCOCFO(CFO)(CFCFO)CFCONHCSi(OC (n/p=約0.5、数平均分子量=約3000)
62:C−(OCFCFCF)q−O−(CF−[CHCH{Si−(OCH}]−H (q=約10)
63:F(CF(CF)CFO)15CF(CF)CONHCHCHCHSi(OC
64:F(CF[CHCH(Si(OCH)]2.02OCH
65:(CO)SiCNHCO−[CF(OC10(OCFOCF]−CONHCSi(OC
66:C(OC24O(CFCHOCHSi(OCH
67:CF(CF(C)CSi(OCH
68:(CFCF(CFCHCHSiCH(OCH
69:CF(CF(C)CSiCH(OCH
70:CF(CF(C)CSi(OC
71:CF(CFSi(NCO)
72:CF(CFSi(NCO)
73:C19CONH(CHSi(OC
74:C19CONH(CHSiCl
75:C19CONH(CHSi(OC
76:CO(CF(CF)CFO)−CF(CF)−CONH(CH)Si(OC
77:CFO(CF(CF)CFO)CFCONH(CHSiOSi(OC(CHNHCOCF(OCFCF(CF))OCF
78:CCOOCHSi(CHOSi(CHCHOCOC
79:CF(CFCHCHO(CHSi(CHOSi(CH(CHOCHCH(CFCF
80:CF(CFCHCHO(CHSi(CHOSi(CH(OC
81:CF(CFCHCHO(CHSi(CHOSi(CH)(OC
82:CF(CFCHCHO(CHSi(CHOSi(CHOSi(CH(OC
上記例示した化合物の他には、フッ素置換アルコキシシランとして、
83:(パーフルオロプロピルオキシ)ジメチルシラン
84:トリス(パーフルオロプロピルオキシ)メチルシラン
85:ジメチルビス(ノナフルオロブトキシ)シラン
86:メチルトリス(ノナフルオロブトキシ)シラン
87:ビス(パーフルオロプロピルオキシ)ジフェニルシラン
88:ビス(パーフルオロプロピルオキシ)メチルビニルシラン
89:ビス(1,1,1,3,3,4,4,4−オクタフルオロブトキシ)ジメチルシラン
90:ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロポキシ)ジメチルシラン
91:トリス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロポキシ)メチルシラン
92:テトラキス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロポキシ)シラン
93:ジメチルビス(ノナフルオロ−t−ブトキシ)シラン
94:ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロポキシ)ジフェニルシラン
95:テトラキス(1,1,3,3−テトラフルオロイソプロポキシ)シラン
96:ビス〔1,1−ビス(トリフルオロメチル)エトキシ〕ジメチルシラン
97:ビス(1,1,1,3,3,4,4,4−オクタフルオロ−2−ブトキシ)ジメチルシラン
98:メチルトリス〔2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1,1−ビス(トリフルオロメチル)プロポキシ〕シラン
99:ジフェニルビス〔2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)−1−トリルエトキシ〕シラン
等の化合物や、以下の化合物、
100:(CFCHSi(CH−NH
101:(CFCHSi−N(CH
【0133】
【化5】

【0134】
更に、
【0135】
【化6】

【0136】
等のシラザン類や、
106:CFCH−CHTiCl
107:CF(CFCHCHTiCl
108:CF(CFCHCHTi(OCH
109:CF(CFCHCHTiCl
110:Ti(OC
111:(CFCH−CHO)TiCl
112:(CF)(CHTi−O−Ti(CH
等のフッ素を有する有機チタン化合物、又、以下のようなフッ素含有有機金属化合物を例として挙げることが出来る。
【0137】
113:CF(CFCHCHO(CHGeCl
114:CF(CFCHCHOCHGe(OCH
115:(CO)Ge(OCH
116:[(CFCHO]Ge
117:[(CFCHO]Zr
118:(CCHCHSn(OC
119:(CCHCH)Sn(OC
120:Sn(OC
121:CFCHCHIn(OCH
122:In(OCHCHOC
123:Al(OCHCHOC
124:Al(OC
125:Sb(OC
126:Fe(OC
127:Cu(OCHCHOC
128:C(OC24O(CFCHOCHSi(OCH
撥水膜を形成する方法としては、スピンコート塗布、ディップ塗布、エクストルージョン塗布、ロールコート塗布スプレー塗布、グラビア塗布、ワイヤーバー塗布、エアナイフ塗布等、特に制限されない。又、真空系での蒸着法を用いてコーティングしてもよい。この中でフッ素原子を含有する有機基を有する有機金属化合物を溶剤で希釈し、その中にガラス基材を浸漬して塗布するディップコート法が簡便であり好ましい。
【0138】
本発明においては、撥水層の膜密度が1.30g/cm以上、3.00g/cm以下であることを特徴とし、好ましくは1.40g/cm以上、1.50g/cm以下であることが好ましい態様である。膜密度が1.3g/cm未満の場合は、表面の撥水膜が疎になりすぎるため、撥水性が不足となるため好ましくない。3.0g/cmを超える場合は、表面粗さが大きくなり、滑落性が低下するため好ましくない。
【0139】
本発明において、撥水層の膜密度を上記で規定する範囲とする方法としては、フッ素含有化合物の種類の選択及び有機金属化合物の種類と添加量と、下部に位置する金属酸化物層の硬度を選択することにより達成することができる。
【0140】
本発明に好ましく用いられるフッ素含有化合物であるパーフルオロエーテル化合物としては、例えば、特許第2874715号公報等に記載の方法により製造することが可能であり、特に反応性シリル基を有するパーフルオロエーテルシラン化合物が好ましい。
【0141】
前記反応性シリル基としては、アルコキシ基、クロル基、イソシアネート基、シラザン基、カルボキシル基、水酸基及びエポキシ基から選ばれる反応性シリル基が好ましい。中でもアルコキシ基が好ましい。
【0142】
また下記のような化合物を市販品として入手することができる。
【0143】
例えば、ダイキン工業株式会社製のオプツールAESシリーズ、東レ・ダウコーニング株式会社製のDOW CORNING 2603 COATING等を挙げることができる。
【0144】
本発明に係る撥水膜の膜密度は、前述したX線反射率法により測定することができる。
【0145】
具体的には、測定装置としては、マックサイエンス社製MXP21を用いて行い、X線源のターゲットには銅を用い、42kV、500mAで作動させる。インシデントモノクロメータには多層膜パラボラミラーを用いる。入射スリットは0.05mm×5mm、受光スリットは0.03mm×20mmを用い、2θ/θスキャン方式で0から5°をステップ幅0.005°、1ステップ10秒のFT法にて測定を行う。得られた反射率曲線に対し、マックサイエンス社製Reflectivity Analysis Program Ver.1を用いてカーブフィッティングを行い、実測値とフィッティングカーブの残差平方和が最小になるように各パラメータを求め、各パラメータから膜密度を求めることが出来る。
【0146】
(基材)
基材としては特に限定はなく、例えばガラスとしては、珪酸塩ガラス(珪酸ガラス、珪酸アルカリガラス、鉛アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、バリウムガラス)、硼珪酸ガラス、リン酸塩ガラス等が挙げられ、これらのガラスで出来た板ガラス(例えば、一般板ガラス(普通板ガラス、型板ガラス、磨き板ガラス、フロートガラス)、複合ガラス、合わせガラス、強化ガラス等)が挙げられる。これらは、無色であっても、着色されていても構わない。
【0147】
透明樹脂基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン類、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、あるいはこれらの樹脂とシリカ等との有機無機ハイブリッド樹脂等が挙げられる。
【実施例】
【0148】
以下、実施例を挙げて本発明の具体的な効果を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0149】
実施例1
撥水膜被覆物品を作製するに際し、撥水膜被覆物品を構成している基材の上の下地層と撥水膜とを有する積層体の物性値(内部応力、硬度)は下地層が支配的であることから、積層体の内部応力、硬度の変化は、下地層の内部応力、硬度を変化することで作製した。
【0150】
(基材の準備)
基材として、予めアルコールで脱脂処理した、厚さ3mm、10mm×50mmの大きさの透明ソーダライムガラスを準備した。
【0151】
《下地層の形成》
(下地層形成済みガラス板No.1−1〜1−7の準備)
減圧プラズマ装置としてサムコ社製プラズマCVD装置Model PD−270STPを用いて、準備したソーダライムガラス基材上に、以下に示す条件で表1に示す様に内部応力及び膜硬度が異なる厚さ100nmのSiO層形成し下地層形成済みガラス板No.1−1から1−7とした。
【0152】
製膜条件
酸素圧力:70Paから130Paでガス圧を変化させた
反応ガス:テトラエトキシシラン(TEOS)5sccm(standard cubic centimeter per minute)
電力:13.56MHzで100W
基材保持温度:80℃
(下地層形成済みガラス板No.1−8〜1−22の準備)
図2に示す大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、準備したソーダライムガラス基材上に、以下に示す条件で表1に示す様に内部応力及び膜硬度が異なる厚さ100nmのSiO層形成し下地層形成済みガラス板No.1−8から1−22とした。処理室内圧力は排気口301からの排気速度を制御して調整した。
【0153】
厚さは、MXP21(マックサイエンス社製)を用いて測定して得られた値を示す。
【0154】
内部応力は、厚さ100μmで、幅10mm、長さ50mmの石英ガラス上に同じ条件で下地層を1μm厚みで製膜し、NEC三栄社製薄膜物性評価装置MH4000にて測定した。
【0155】
硬度はHysitron社製TriboscopeをDigital Instruments社製NanoscopeIIIに試料を装着し、圧子としてベルコビッチ型圧子(先端稜角142.3°)と呼ばれる三角錘型ダイヤモンド製圧子を用い、本文中に記載のナノインデンテーション法により測定した。
【0156】
【表1】

【0157】
図2に示す大気圧プラズマ放電処理装置を用いた場合の下地層形成済みガラス板の作製
製膜条件
〈電源条件〉
電源種類 パール工業社製高周波電源
周波数 13.56MHz
出力密度 10W/cm
〈電極条件〉
板状電極2本を用い、電極の間隙を1mmとしてこの間隙で放電を形成させ、プラズマを電極から基材表面に向けて噴出し、基材表面をプラズマ処理する。板状電極の母材はステンレス(SUS304)であるが、表面に厚み1mmでセラミックが溶射されている。電極内部には冷却用の冷媒(水)を温度25℃で通水して放電を行った。
【0158】
〈ガス条件〉
原料ガスとしてTEOS(テトラエトキシシラン)をバブリングにより気化させて放電空間に供給し、プラズマのエネルギーによる分解反応を利用して、基材表面にSiOを主体とした下地層を形成させた。
【0159】
放電ガス:アルゴンガス 2slm/cm
反応ガス:酸素ガス 0.01slm/cm
薄膜形成用ガス:500mlガラス製バブリング容器にTEOS原材料を200ml準備し、25℃に保温する。気化したTEOSを放電空間に供給するためのキャリアガスとして、アルゴンガス0.05slm/cmを供給する。
【0160】
尚、硬度の変化は上記条件で酸素分圧及び出力密度を変化させることで行った。酸素分圧が高く、出力密度が低い方が硬度が低く、酸素分圧が高い方が内部応力がやや高くなる。
【0161】
撥水膜被覆物品の作製
(撥水膜形成用塗布液No.1の調製)
フッ素化合物としてDOW CORNING 2604 COATING(ダウコーニング社製)の1gをノベックHFE7100(住友3M社製)100gで希釈して、フッ素化合物の固形分濃度が0.2%の撥水層形成用塗布液を調製した。
【0162】
(撥水膜形成用塗布液No.2の調製)
フッ素化合物としてDOW CORNING 2604 COATING(ダウコーニング社製)の1g、TEOS(テトラエトキシシラン)の0.08gをノベックHFE7100(住友3M社製)100gで希釈して、固形分濃度が0.2%の塗布液を調製した。
【0163】
(撥水膜形成用塗布液No.3の調製)
TEOSの代わりにTMT(テトラメチルスズ)の0.06gを用いた以外は、撥水膜形成用塗布液No.2と同様の方法で塗布液を調製した。
【0164】
(撥水膜形成用塗布液No.4の調製)
上記TMT(テトラメチルスズ)の添加量を0.08gに変更した以外は撥水膜形成用塗布液No.3と同様の方法で塗布液を調製した。
【0165】
(撥水膜形成用塗布液の塗布)
準備した撥水膜形成用塗布液No.1からNo.3を準備した下地層形成済みガラス板No.1−1〜1−22の上に塗布、乾燥し、表2に示す撥水膜被覆物品を作製し試料No.101から122とした。
【0166】
撥水膜被覆物品101〜117、121、122の作製
準備した下地層形成済みガラス板No.1−1〜1−17、1−21、1−22の上に、ディッピング法により準備した撥水膜形成用塗布液No.1を塗布、乾燥した後、常温常湿環境下で1昼夜保管した後、アルコール洗浄により撥水層の余剰成分を取り除いて、厚さ6nmの撥水膜を形成した撥水被覆物品を作製しNo.101から117、121、122とした。
【0167】
撥水膜被覆物品118の作製
準備した下地層形成済みガラス板No.1−18の上に、ディッピング法により準備した撥水膜形成用塗布液No.2を塗布、乾燥した後、常温常湿環境下で1昼夜保管した後、アルコール洗浄により撥水層の余剰成分を取り除いて、厚さ6nmの撥水膜を形成した撥水被覆物品を作製しNo.118とした。
【0168】
撥水膜被覆物品119の作製
準備した下地層形成済みガラス板No.1−19の上に、ディッピング法により準備した撥水膜形成用塗布液No.3を塗布、乾燥した後、常温常湿環境下で1昼夜保管した後、アルコール洗浄により撥水層の余剰成分を取り除いて、厚さ6nmの撥水膜を形成した撥水被覆物品を作製しNo.119とした。
【0169】
撥水膜被覆物品120の作製
準備した下地層形成済みガラス板No.1−20の上に、ディッピング法により準備した撥水膜形成用塗布液No.4を塗布、乾燥した後、常温常湿環境下で1昼夜保管した後、アルコール洗浄により撥水層の余剰成分を取り除いて、厚さ6nmの撥水膜を形成した撥水被覆物品を作製しNo.120とした。
【0170】
膜密度は、マックサイエンス社製MXP21を用いたX線反射率法で測定した値を示す。
【0171】
積層体(下地層+撥水膜)の内部応力は、下地層と同じ方法で測定した値を示す。撥水膜被覆物品の撥水膜の硬度は、下地層と同じ方法で測定した値を示す。
【0172】
【表2】

【0173】
評価
作製した各試料No.101から122に付き、防汚性、撥水性(初期の撥水性、初期滑落性)、耐久性(耐摩耗性試験)、耐候性を以下に示す方法で測定し、以下に示す評価ランクに従って評価した結果を表3に示す。
【0174】
《初期の撥水性:水の静的接触角測定》
撥水膜被覆物品の表面に3μLの水を滴下し、接触角測定器(協和界面科学(株)製接触角計CA−DT)を用いて滴下から15sec後の静的接触角を測定し、以下の基準で評価して初期の撥水性評価とした。
【0175】
初期の撥水性評価ランク
◎:静的接触角が、110°以上
○:静的接触角が、100°以上110°未満
△:静的接触角が、90°以上100°未満
×:静的接触角が、90°未満。
【0176】
《初期滑落性:水の転落角測定》
試料の撥水膜表面に50μLの水を滴下し、接触角測定器(協和界面科学(株)製接触角計CA−DT)の撥水性物品を保持しているステージの角度を0°(水平)から90°(鉛直)方向に徐々に傾斜させ、水滴が撥水性物品を移動し始める角度を測定し、以下の基準で評価して初期の滑落性評価とした。
【0177】
初期滑落性評価ランク
◎:転落角が、10°未満
○:転落角が、10°以上20°未満
△:転落角が、20°以上30°未満
×:転落角が、30°以上。
【0178】
《耐摩耗性試験》
耐摩耗性試験として、往復摩耗試験機(新東科学(株)製HEIDON−14DR)に摩耗材としてフェルト(0.63g/cm)を取り付け、荷重600g/cmの条件で試料の撥水膜表面を速度100mm/secで10000回往復摺動させた。その際、5000回往復終了時にフェルト摩耗材を新しいものに取替え、引き続き5000回の往復摺動を行うことで計10000回の往復摺動を行った。10000回終了時、撥水性及び滑落性を上記評価基準で評価して耐摩耗性評価とした。
【0179】
《耐候性試験》
耐候性試験は、耐紫外線試験器(アイスーパーUVテスター W−13、岩崎電機社製)を用いて行った。各防汚7積層体の防汚層を有する面側に、波長340nm、照射硬度0.6W/cmの紫外線を、ブラックパネル温度48±2℃の条件で、照射時間:20時間、暗黒保存:4時間のサイクルで、1時間ごとに30秒間のイオン交換水によるシャワーリングを行う条件で、合計400時間の紫外線照射を行った。上記耐候性試験を施した後の各防汚性積層体の表面(防汚層表面)の接触角を上記と同様の方法で測定し、同様のランクで耐候性試験後の撥水性を評価した。上記の作製直後の接触角に対し、接触角の低下が小さいほど、耐候性に優れていることを表す。
【0180】
(耐候性の評価ランク)
◎:静的接触角が、90°以上
○:静的接触角が、80°以上、90°未満
△:静的接触角が、70°以上、80°未満
×:静的接触角が、70°未満。
【0181】
【表3】

【0182】
表3に示す結果より明らかな様に、本発明で規定する無機化合物より形成された下地層、硬度が2.0GPaから7.0GPa、膜密度が、1.3g/cmから3.0g/cmでのフッ素含有化合物より形成された撥水膜、積層体の内部応力が0.1MPaから10MPaを有する本発明の撥水性皮膜物品は、比較例に対し、撥水性(初期の撥水性、初期滑落性)、耐久性(耐摩耗性試験)、耐候性に優れていることが確認された。本発明の有効性が確認された。
【0183】
実施例2
(基材の準備)
実施例1で準備した透明ソーダライムガラスと同じ透明ソーダライムガラスを準備した。
【0184】
《下地層形成済みガラス板の準備》
実施例1で準備した下地層形成済みガラス板No.1−15と同じ下地層を形成した下地層形成済みガラス板を準備した。
【0185】
《撥水膜の形成》
準備した下地層形成済みガラス板の下地層の上に、表4示す様に撥水膜を形成するフッ素化合物及びフッ素化合物と有機金属化合物との混合塗布液の種類を変えて、撥水膜被覆物品を作製し試料No.201から208とした。厚さ、硬度、フッ素密度は実施例1と同じ方法で測定した値を示す。
【0186】
(撥水膜被覆物品(試料No.201)の作製)
撥水膜形成用塗布液の調製
フッ素化合物として化合物9、1gをノベックHFE7100(住友3M社製)100gで希釈して、フッ素化合物の固形分濃度が0.2%の撥水層塗布液1を調製した。
【0187】
撥水膜形成用塗布液の塗布
次いで、上記作製した下地層を有する基材上に、乾燥後の膜厚が6nmとなる様に引き上げ速度を調整しながらディッピング法により、調製した撥水層形成用塗布液を塗布、乾燥させ、常温常湿環境下で1昼夜保管した後、アルコール洗浄により撥水層の余剰成分を取り除いて、撥水膜被覆物品を作製し試料No.201とした。
【0188】
(撥水膜被覆物品(試料No.202から208の作製))
撥水膜形成用塗布液の調製
表4に示す様にフッ素化合物の種類を変えた他は試料No.201に使用した撥水膜形成用塗布液と同じ方法で撥水膜形成用塗布液を調製した。
【0189】
撥水膜形成用塗布液の塗布
次いで、上記作製した下地層を有する基材上に、調製した撥水膜形成用塗布液を試料No.201と同じ条件で塗布、乾燥し撥水膜被覆物品を作製し、試料No.202から208とした。
【0190】
【表4】

【0191】
評価
作製した各試料No.201から208に付き、防汚性、撥水性(初期の撥水性、初期滑落性)、耐久性(耐摩耗性試験)、耐候性を実施例1と同じ方法で測定し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表5に示す。
【0192】
【表5】

【0193】
表5に記載の結果より明らかな様に、本発明で規定する無機化合物より形成された下地層の上に、フッ素化合物を有する撥水性膜を有する撥水性皮膜物品は、撥水性(初期の撥水性、初期滑落性)、耐久性(耐摩耗性試験)、耐候性に特に優れていることが確認された。本発明の有効性が確認された。
【0194】
実施例3
(基材の準備)
実施例1と同じ透明ソーダライムガラスを準備した。
【0195】
《下地層形成済みガラス板の準備》
図2に示す大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、予めアルコールで脱脂処理したソーダライムガラス基材上に、以下に示す条件で表6に示す様に下地層の形成材料と膜厚とを変えた他は実施例1の下地層形成済みガラス板No.1−15と同じ方法で、厚さ60nmの下地層を形成し下地層形成済みガラス板No.3−1から3−6とした。
【0196】
尚、厚さ、内部応力及び下地層の硬度は、実施例1と同じ方法で測定した値を示す。
【0197】
【表6】

【0198】
金属酸化物
A:SiO (原料ガス:テトラエトキシシラン)
B:TiO (原料ガス:テトラエトキシシランに代えて、テトライソプロポキシチタンを用いた)
C:Al (原料ガス:テトラエトキシシランに代えて、アルミニウムn−ブトキシドを用いた)
金属酸化窒化物
D:SiO (原料ガス:テトラエトキシシラン及び反応性ガスとして酸素及びアンモニアを用いた)
E:TiOxNy (原料ガス:テトライソプロポキシチタン及び反応性ガスとして水素を用いた)
F:Al (原料ガス:アルミニウムn−ブトキシド及び反応ガスとしてアンモニアを用いた)
《撥水膜被覆物品の作製》
準備した下地層形成済みガラス板No.3−1から3−6の下地層の上に、実施例2の試料No.205と同じ方法で、同じ撥水膜を形成し、表7に示す様に撥水膜被覆物品を作製し試料No.301から306とした。
【0199】
【表7】

【0200】
評価
作製した各試料No.301から306に付き、撥水性(初期の撥水性、初期滑落性)、耐久性(耐摩耗性試験)、耐候性を実施例1と同じ方法で測定し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表8に示す。
【0201】
【表8】

【0202】
表8に記載の結果より明らかな様に、本発明で規定する内部応力を持ち、下地層をAl、Si、Tiから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物もしくは金属酸化窒化物から形成される無機化合物で形成される下地層の上に、本発明で規定する範囲の硬度5.8GPa、パーフルオロアルキルエーテル化合物、膜密度を有する撥水性膜を有する撥水性皮膜物品は、撥水性(初期の撥水性、初期滑落性)、耐久性(耐摩耗性試験)、耐候性に優れていることが確認された。本発明の有効性が確認された。
【符号の説明】
【0203】
1 撥水膜被覆物品
101 基材
102 下地層
103 撥水膜
104 積層体
2 大気圧プラズマ放電処理装置
3 プラズマ放電処理室
4 電界印加手段
401a 第1電極
401b 第2電極
402 放電空間
5 ガス供給手段
6 電極温度調節手段
N、M 厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に少なくとも下地層と、前記下地層の表面を被覆する撥水膜とを有する積層体で被覆した撥水膜被覆物品であって、前記下地層は無機化合物より形成されており、前記撥水膜はフッ素含有化合物より形成されており、前記積層体のナノインデンテーション法により測定した硬度が、2.0GPaから7.0GPaであり、前記撥水膜の膜密度が、1.3g/cmから3.0g/cmであり、前記積層体の内部応力が0.1MPaから10MPaであることを特徴とする撥水膜被覆物品。
【請求項2】
前記フッ素含有化合物がパーフルオロアルキルエーテル化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の撥水膜被覆物品。
【請求項3】
前記下地層は大気圧プラズマCVD法によって形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の撥水膜被覆物品。
【請求項4】
前記無機化合物が金属酸化物、金属窒化物もしくは金属酸化窒化物の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の撥水膜被覆物品。
【請求項5】
前記無機化合物がAl、Si、Tiから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物、金属窒化物もしくは金属酸化窒化物から形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の撥水膜被覆物品。
【請求項6】
前記無機化合物が酸化珪素であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の撥水膜被覆物品。
【請求項7】
前記基体がガラスであることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の撥水膜被覆物品。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載の撥水膜被覆物品を用いて構成されていることを特徴とする建築用窓ガラス。
【請求項9】
請求項1から7の何れか1項に記載の撥水膜被覆物品を用いて構成されていることを特徴とする車両用窓ガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−285574(P2010−285574A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142001(P2009−142001)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】