説明

撮像レンズモジュール、カメラモジュールおよび撮像レンズモジュールの実装方法

【課題】 半田リフロー工程において、変形や歪みの心配がない撮像レンズモジュールやその実装方法を提供する。
【解決手段】 基板と、 その基板の上に固定された光学センサと、 その光学センサの上方に位置するレンズ群と、 そのレンズ群を前記光学センサの上方に位置させるために当該レンズ群を固定するためのバレルホルダと、を備えて形成する。 前記レンズ群は、前記光学センサ側に位置するガラス部と、 そのガラス部における反光学センサ側の中央部分が凸となるプラスチック製レンズとを備え、 そのプラスチック製レンズにおける反ガラス部側は、耐熱プラスチック製の樹脂コーティング層を備えて形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオカメラ、監視カメラ、車載カメラ及び、パソコンや携帯電話機用カメラ等の機器など組み込んで映像を撮像するのに用いる撮像レンズモジュール、およびそれを用いたカメラモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
CCDやCMOS等の撮像素子を用いた携帯電話等に組み込まれている撮像レンズモジュールは、忠実な被写体の再現性を備えていることが望ましい。
最近では、撮像素子が小型化されてきており、これに伴って、これらに組み込まれる撮像レンズも必然的に小型化、コンパクト化の要求が高まってきている。
さらに、撮像素子は、メガオーダーの高画素化となってきている。これを用いた撮像レンズモジュールは、安価で軽いことが要求されている。
【0003】
さて、回路部品を電子機器の回路基板に表面実装するには、半田のリフローによるのが便利である。しかし、透明プラスチック製レンズを用いた小型撮像レンズモジュールでは、摂氏260度以上に達するリフロー温度に耐えられずに変形してしまうおそれがある。
そのため、撮像レンズモジュールの基板への実装は、コネクターなどを介して、半田リフロー工程後に、別工程にて取り付けされている。
よって、必然的にコネクターの費用、取り付け工程費用がかかり、コストダウンという観点からも、半田リフロー温度に耐えうる小型撮像レンズモジュールが要求されている。
そこで、レンズにリフロー熱が極力伝わらないようにする技術として、特許文献1に記載されるような技術がある。
【0004】
【特許文献1】特開2003−289456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術では、まだ十分な耐熱性を得られない場合もある。
また、撮像レンズモジュールに求められている性能はメガピクセル以上となっている。こうした解像度が要求されると色収差の修正のため、レンズの数を増やすことで対応するしかない。そのため、レンズユニットの厚さが厚くなり、小型化が困難となる。
請求項1から請求項6に記載する発明が解決しようとする課題は、半田リフロー工程において、変形や歪みの心配がない撮像レンズモジュールを提供することである。
請求項7に記載する発明が解決しようとする課題は、半田リフロー工程において、変形や歪みの心配がない撮像レンズモジュールを提供することである。
請求項8および請求項9に記載する発明が解決しようとする課題は、半田リフロー工程において、変形や歪みの心配がない撮像レンズモジュールの実装方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1)
請求項1記載の発明は、 基板と、 その基板の上に固定された光学センサと、 その光学センサの上方に位置するレンズ群と、 そのレンズ群を前記光学センサの上方に位置させるために当該レンズ群を固定するためのバレルホルダと、を備えて形成する撮像レンズモジュールに係る。
前記レンズ群は、前記光学センサ側に位置するガラス部と、 そのガラス部における反光学センサ側の中央部分が凸となるプラスチック製レンズとを備え、 そのプラスチック製レンズにおける反ガラス部側は、耐熱プラスチック製の樹脂コーティング層を備えて形成したことを特徴とする。
【0007】
「光学センサ」とは、例えば1/7インチC−MOSセンサである。
「ガラス部」のガラスの厚さは、0.1〜1.0ミリメートルである。
「プラスチック製レンズ」とは、たとえば、ポリエーテルスルフォン(PES)製やシクロオレフィンポリマー(COC・COP)製のレンズである。その厚さは0.3〜1.0ミリメートル、直径は2.0〜5.0ミリメートルである。
「耐熱プラスチック製の樹脂コーティング層」とは、たとえば、透明のエポキシ樹脂によるコーティングである。その厚さは0.1〜1.0ミリメートルである。
【0008】
(作用)
光学的特性に優れたガラスが部分的に使われているため、プラスチック製レンズのみから構成されているレンズ群よりも、レンズ群全体の小型化が可能である。
プラスチック製レンズが耐熱性に優れたガラス部と耐熱プラスチック製の樹脂コーティングとに覆われているので、 半田リフロー工程においても、最も熱に弱いプラスチック製レンズに、変形やひずみなどが生じにくい。
具体的には、摂氏260度の半田リフロー工程において、30秒から180秒でも、プラスチック製レンズに対する変形や歪み、光学特性への影響が発見されなかった。
【0009】
(請求項2)
請求項2記載の発明は、請求項1にも示したレンズ群が複数組、用意された撮像レンズモジュールに係る。
すなわち、 基板と、 その基板の上に固定された光学センサと、 その光学センサの上方に位置するレンズ群と、 そのレンズ群を前記光学センサの上方に位置させるために当該レンズ群を固定するためのバレルホルダと、を備えて形成する撮像レンズモジュールである。
前記レンズ群は、前記光学センサ側に位置するガラス部と、 そのガラス部における反光学センサ側の中央部分が凸となるプラスチック製レンズとを一群のレンズ群として、複数群を備え、 各群のプラスチック製レンズにおける反ガラス部側は、耐熱プラスチック製の樹脂コーティング層を備えて形成したことを特徴とする撮像レンズモジュールに係る。
【0010】
レンズ群は、たとえば、1.3〜2.0メガピクセルが要求される場合には、1群3枚を2セットで実現させることが一般的である。
【0011】
(請求項3)
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の撮像レンズモジュールを限定したものである。
すなわち、前記プラスチック製レンズが前記バレルホルダには接しないように、前記ガラス部を形成したことを特徴とする。
【0012】
プラスチック製レンズが前記バレルホルダには接しないような形状をなしているので、プラスチック製レンズに熱が伝わりにくく、耐熱性向上に寄与している。
【0013】
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の撮像レンズモジュールを限定したものである。
すなわち、前記ガラス部における前記光学センサ側の面には、IRカットコーティングを施したことを特徴とする。
IRカットコーティングとしては、赤外域の光をカットするためのコーティングである。
IRカットコーティングがレンズ群の下面に施されていることとなり、光学的特性の向上に寄与する。
【0014】
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の撮像レンズモジュールを限定したものであり、前記樹脂コーティング層における上面には、ARコーティング(反射防止)を施したことを特徴とする。
ARコーティングがレンズ群の上面に施されていることとなり、光学的特性の向上に寄与する。
【0015】
(請求項6)
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の撮像レンズモジュールを限定したものであり、 前記プラスチック製レンズは、COC製、COP製、PES製のいずれかとしたことを特徴とする。
COC製、COP製、PES製のいずれも光学的特性上問題ないからである。
【0016】
プラスチック製レンズの材質としてCOC製、COP製、PES製のいずれかを採用することにより、撮像レンズ全体をコンパクトにすることに寄与する。
【0017】
(請求項7)
請求項7に記載の発明は、 請求項1から請求項6のいずれかに記載の撮像レンズモジュールを用いたことを特徴とするカメラに係る。
カメラとしては、デジタルカメラ、携帯電話搭載カメラ、車載用カメラ、監視用カメラなどである。
【0018】
(請求項8)
請求項8に記載の発明は基板と、 その基板の上に固定された光学センサと、 その光学センサの上方に位置するレンズ群と、 そのレンズ群を前記光学センサの上方に位置させるために当該レンズ群を固定するためのバレルホルダと、を備えて形成する撮像レンズモジュールを回路基板に表面実装する方法に係る。
すなわち、前記基盤の上において、前記レンズ群および前記バレルホルダを覆うことができる耐熱カバー材にて覆うカバー工程と、 半田にて前記撮像レンズモジュールを回路基板にリフローさせるリフロー工程と、 そのリフロー工程の後で前記耐熱カバー材を外すカバー取り外し工程と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
(請求項9)
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の撮像レンズモジュールの実装方法を限定したものであり、
耐熱カバー材は、セラミック製としたことを特徴とする。
【0020】
セラミックの種類としては、例えば、アルミナなどがある。
【0021】
耐熱カバー材の材質にセラミックを採用したので、当該カバー材を繰り返して使用することができる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1から請求項8によれば、メガオーダーの高画素に対応できるように収差補正が可能であり、且つ軽量コンパクトな撮像レンズを提供することができた。
請求項9によれば、メガオーダーの高画素に対応できるように収差補正が可能であり、且つ軽量コンパクトなカメラを提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図1から図4を参照させながら、本発明を実施形態によって更に詳しく説明する。
まず、1群3枚を1セットとして構成した撮像レンズに係る第一の実施形態を説明する。
【0024】
(図1)
図1は、第一の実施形態に係る撮像レンズの断面を示している。
第一の実施形態は、撮像レンズモジュールの主要部を示したものであり、 基板10と、 その基板10の上に固定された光学センサ11と、 その光学センサ11の上方に位置するレンズ群と、 そのレンズ群を前記光学センサの上方に位置させるために当該レンズ群を固定するためのバレルホルダ20と、を備える。また、レンズ群の下部には、前記バレルホルダ20の内側に固定されるリング状のストッパ40が固定され、レンズ群を支持している。更に、レンズ群の上部には、上ストッパ50が固定されている。
前記レンズ群は、前記光学センサ側に位置するガラス部21と、 そのガラス部21における反光学センサ11側の中央部分が凸となるプラスチック製レンズ22とを備え、 そのプラスチック製レンズ22における反ガラス部21側は、耐熱プラスチック製の樹脂コーティング層23を備える。
前記のバレルホルダ20およびストッパ40は、耐熱性のプラスチック、例えばLC(P液晶ポリマー)製としている。
【0025】
第一の実施形態に係る撮像レンズモジュールを用いて、デジタルカメラ、携帯電話搭載カメラ、車載用カメラ、監視用カメラなどを形成すると、以下のような効果がある。
第一に、メガオーダーの高画素に対応できるように収差補正が可能である。第二に、軽量コンパクトであり、比較的安価に製造できる。
【0026】
(図2)
以下、半田リフロー工程の前後を、図2を参照させながら説明する。
すなわち、前記基板10の上に設置し、前記レンズ群、前記ストッパ40、前記上ストッパ50および前記バレルホルダ30を覆うことができる耐熱カバー材30にて覆うカバー工程と、 半田にて前記撮像レンズモジュールを回路基板10にリフローさせるリフロー工程と、 そのリフロー工程の後で前記耐熱カバー材30を外すカバー取り外し工程とを含む。
【0027】
ここにいう「耐熱カバー材」は、撮像レンズモジュールに熱が伝わりにくくなる役目をもつ。材質は耐熱性に優れるとともに、熱による膨張などの変形が少ない材質が好ましい。本実施形態では、セラミック製のカバー30を採用した。
この耐熱カバー材があれば、摂氏260度の半田リフロー工程において、30秒から240秒でも、プラスチック製レンズに対する変形や歪み、光学特性への影響が発見されなかった。
【0028】
(図3)
図3に示すのは、第三の実施形態である。この実施形態は、1群3枚のレンズ群を2セットにて、撮像レンズモジュールを構成したものであり、1.3〜2.0メガピクセルが要求される場合に対応可能である。
【0029】
図4に示すのは、第四の実施形態である。この実施形態は、1群3枚のレンズ群を3セットにて、撮像レンズモジュールを構成したものであり、2.0メガピクセルを超えるスペックが要求される場合、例えばデジタルカメラに対応可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本願発明は、デジタルカメラや携帯電話などの携帯情報機器の製造業、車載カメラなどの自動車産業、監視用カメラなどの製造業などにおいて、利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第一の実施形態に係る撮像レンズの構成図である。
【図2】第二の実施形態に係る撮像レンズの構成図である。
【図3】第三の実施形態に係る撮像レンズの構成図である。
【図4】第四の実施形態に係る撮像レンズの構成図である。
【図5】先行技術を示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 基板 11 光学センサ
20 バレルホルダ
21 ガラス 21a IRカットコーティング
22 レンズ(プラスチック製)
23 樹脂コーティング+ARコーティング
30 カバー 40 ストッパ
50 上ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基盤と、
その基盤の上に固定された光学センサと、
その光学センサの上方に位置するレンズ群と、
そのレンズ群を前記光学センサの上方に位置させるために当該レンズ群を固定するためのバレルホルダと、
を備えて形成する撮像レンズモジュールであって、
前記レンズ群は、前記光学センサ側に位置するガラス部と、
そのガラス部における反光学センサ側の中央部分が凸となるプラスチック製レンズとを備え、
そのプラスチック製レンズにおける反ガラス部側は、耐熱プラスチック製の樹脂コーティング層を備えて形成したことを特徴とする撮像レンズモジュール。
【請求項2】
基板と、
その基板の上に固定された光学センサと、
その光学センサの上方に位置するレンズ群と、
そのレンズ群を前記光学センサの上方に位置させるために当該レンズ群を固定するためのバレルホルダと、
を備えて形成する撮像レンズモジュールであって、
前記レンズ群は、前記光学センサ側に位置するガラス部と、
そのガラス部における反光学センサ側の中央部分が凸となるプラスチック製レンズとを一群のレンズ群として、複数群を備え、
各群のプラスチック製レンズにおける反ガラス部側は、耐熱プラスチック製の樹脂コーティング層を備えて形成したことを特徴とする撮像レンズモジュール。
【請求項3】
前記プラスチック製レンズが前記バレルホルダには接しないように、前記ガラス部を形成したことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の撮像レンズモジュール。
【請求項4】
前記ガラス部における前記光学センサ側の面には、IRカットコーティングを施したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の撮像レンズモジュール。
【請求項5】
前記樹脂コーティング層における上面には、ARコーティングを施したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の撮像レンズモジュール。
【請求項6】
前記プラスチック製レンズは、COC製、COP製、PES製のいずれかとしたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の撮像レンズモジュール。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の撮像レンズモジュールを用いたことを特徴とするカメラモジュール。
【請求項8】
基板と、 その基板の上に固定された光学センサと、 その光学センサの上方に位置するレンズ群と、 そのレンズ群を前記光学センサの上方に位置させるために当該レンズ群を固定するためのバレルホルダと、を備えて形成する撮像レンズモジュールを回路基板に表面実装する方法であって、
前記基板の上において、前記レンズ群および前記バレルホルダを覆うことができる耐熱カバー材にて覆うカバー工程と、
半田にて前記撮像レンズモジュールを回路基板にリフローさせるリフロー工程と、
そのリフロー工程の後で前記耐熱カバー材を外すカバー取り外し工程と、を備えたことを特徴とする撮像レンズモジュールの実装方法。
【請求項9】
耐熱カバー材は、セラミック製としたことを特徴とする請求項8に記載の撮像レンズモジュールの実装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−160348(P2008−160348A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345333(P2006−345333)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(392034746)吉川化成株式会社 (22)
【Fターム(参考)】