説明

撮像レンズ

【課題】 敏感度の高い部分のレンズ面を非球面から球面に変えることにより、組立性を改善して量産性を改善し、収率を向上させることが可能な撮像レンズの提供。
【解決手段】 物体側から順次、絞り、第1レンズ、第2レンズ、第3レンズ、および第4レンズを備えるが、第1レンズは、正の屈折力を持つ正レンズであり、第2レンズは、負の屈折力を持つ負レンズであり、第3レンズは、少なくとも一面を非球面状とし、正の屈折力を持つ正レンズであり、第4レンズは、像側の面を非球面状とし、物体側の面を球面状とし、負の屈折率を持つ負レンズであり、次の条件式を満足するように構成されていることを特徴とする、本発明の撮像レンズを提供する。
(r3+r4)/(r3−r4)>−0.7 ・・・(1)
v1−v2>15.0 ・・・(2)
v3−v2>15.0 ・・・(3)
ここで、r3は第2レンズの物体側面の曲率半径であり、r4は第2レンズの像側面の曲率半径であり、v1、v2およびv3はそれぞれ第1レンズ、第2レンズ、第3レンズのアッベ定数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型情報端末機、例えばカメラ付き携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)などの搭載に適した撮像レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、パーソナルコンピュータの一般家庭等への普及に伴い、画像情報をパーソナルコンピュータに入力することが可能なデジタルスチールカメラ(digital still camera)(以下、デジタルカメラという)が急速に普及している。また、携帯電話の高機能化に伴い、小型の撮像モジュールを搭載したカメラ付き携帯電話も急速に普及している。その他、PDAなどの小型情報端末機器においても撮像モジュールを搭載したものが普及している。
【0003】
これらの撮像機能を備えた機器では、CCD(charge coupled device:電荷結合素子)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子が用いられている。これらの撮像素子は、最近、非常に小型化が進んでいる。そのため、CCDなどの撮像素子を用いた撮像機器において、機器本体およびそれに搭載されるレンズにも小型軽量化が要求されている。また、最近では、高画質を達成するために画素数の多い撮像素子が開発されており、これによりレンズ系にもより高解像で高コントラストの性能が要求されている。
【0004】
上述したように、最近の撮像素子は、小型化および高画素化が進んでおり、これにより特にデジタルカメラ用の撮像レンズには高い解像性能と構成のコンパクト化が求められている。一方、例えばカメラ付き携帯電話などの小型情報端末機器用の撮像レンズには、従来では低コストおよびコンパクト性が主に要求されていたが、最近ではカメラ付き携帯電話などにおいても撮像素子の高画素化が進んでいる傾向があり、例えば100万画素以上のメガピクセル対応のものが実用化されて性能面への要求も高まっている。このため、価格面、性能面およびコンパクト性を総合的に考慮した多種の様々なレンズの開発が要望されている。
【0005】
このような要求に対しては、例えばコンパクト化および低コスト化を図るためにレンズの枚数を3枚または4枚とし、高性能化を図るために非球面を積極的に使用することが考えられる。
【0006】
この場合、非球面はコンパクト化および高性能化に寄与するが、製造性の面で不利であるうえ、価格が高くなり易いという欠点がある。
【0007】
また、非球面を積極的に使用する場合、レンズの敏感度が増加して組立性が低下し、これにより量産性が低下するという問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、敏感度の高い部分のレンズ面を非球面から球面に変えることにより、組立性を改善して量産性を改善し、収率を向上させることが可能な撮像レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の撮像レンズは、物体側から順次、絞り、第1レンズ、第2レンズ、第3レンズ、および第4レンズを備えるが、第1レンズは、正の屈折力を持つ正レンズであり、第2レンズは、負の屈折力を持つ負レンズであり、第3レンズは、少なくとも一面を非球面状とし、正の屈折力を持つ正レンズであり、第4レンズは、像側の面を非球面状とし、物体側の面を球面状とし、負の屈折率を持つ負レンズであり、次の条件式を満足するように構成される。
【0010】
(r3+r4)/(r3−r4)>−0.7 ・・・(1)
v1−v2>15.0 ・・・(2)
v3−v2>15.0 ・・・(3)
ここで、r3は第2レンズの物体側面の曲率半径であり、r4は第2レンズの像側面の曲率半径であり、v1、v2およびv3はそれぞれ第1レンズ、第2レンズ、第3レンズのアッベ定数である。このように構成することにより、組立性が改善し、撮像レンズの製造が容易になり、また、敏感度の高い部分のレンズ面を球面レンズにすることで、撮像レンズの量産性が改善する。
【0011】
また、本発明に係る撮像レンズは、次の条件式を満足するように構成されている。
【0012】
0>R3R>R4F ・・・(4)
ここで、R3Rは第3レンズの像側面の中心における曲率半径を示し、R4Fは第4レンズの物体側面の中心における曲率半径を示す。このように撮像レンズを構成することにより、各レンズの形状を最適化することができる。
【0013】
また、第1レンズのパワーに関しては下記(5)の条件式を満足させ、光軸に沿って、全体レンズの寸法に関しては下記(6)の条件式を満足させるように構成される。
【0014】
0<f1/f<0.8 ・・・(5)
TL/f<1.7 ・・・(6)
ここで、fは全体撮像レンズの焦点距離を示し、f1は第1レンズの焦点距離を示し、TLは絞りの物体側と撮像面間の距離を示す。このように撮像レンズを構成することにより、各レンズのパワー配分を最適化することができる。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明の撮像レンズによれば、第3レンズの少なくとも一面を非球面状にし、第4レンズは像側の面を非球面状にし、物体側の面を球面状にするとともに、所定の条件式(1)〜(6)を満足させて各レンズの形状、パワー配分などを最適化するようにしたので、少ないレンズ枚数でありながら非球面を有効に使用し、敏感度の高い部分のレンズ面を非球面から球面に変えることにより、組立性を改善して量産性を改善し、収率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
また、以下の記載において、各レンズのパワーまたは各レンズ面の凸凹形状と言及するときは、原則的に光軸上の状態を示すものとする。
【0018】
図1に示す実施形態の撮像レンズは、物体側から順次、絞り2、第1レンズL1、第2レンズL2、第3レンズL3、および第4レンズL4を備え、光軸に沿って入射する光線を撮像素子(撮像面)3の結像位置に効率よくフォーカシングするようにした撮像レンズである。
【0019】
ここで、絞り2は、第1レンズL1の物体側の面に配置され、撮像レンズと撮像素子3との間にはカバーガラス1が配置されている。
【0020】
また、第1レンズL1は、正の屈折率を持つ正レンズであり、第2レンズL2は、負の屈折率を持つ負レンズである。
【0021】
本発明において、第3レンズL3は、正の屈折率を持つ正レンズであり、少なくとも一面が非球面状になっている。
【0022】
本実施の形態において、第3レンズL3の像側の面は非球面からなり、敏感度の高い第3レンズL3の物体側の面は球面からなることが好ましい。
【0023】
また、第4レンズL4は、負の屈折力を持つ負レンズであって、像側の面が非球面からなり、物体側の面が球面からなる。
【0024】
このような第1レンズL1〜第4レンズL4からなる本発明の撮像レンズは以下の条件式を満足する。
【0025】
(r3+r4)/(r3−r4)>−0.7 ・・・(1)
v1−v2>15.0 ・・・(2)
v3−v2>15.0 ・・・(3)
ここで、r3は第2レンズL2の物体側面の曲率半径であり、r4は第2レンズL2の像側面の曲率半径であり、v1、v2およびv3はそれぞれ第1レンズL1、第2レンズL2、第3レンズL3のアッベ定数である。
【0026】
また、本実施の形態の撮像レンズは、次の条件式を満足するように構成されている。
【0027】
0>R3R>R4F ・・・(4)
ここで、R3Rは第3レンズL3の像側面の中心における曲率半径を示し、R4Fは第4レンズL4の物体側面の中心における曲率半径を示す。
【0028】
また、第1レンズL1のパワーに関しては下記(5)の条件式を満足させ、光軸に沿って、全体レンズの寸法に関しては下記(6)の条件式を満足させるように構成される。
【0029】
0<f1/f<0.8 ・・・(5)
TL/f<1.7 ・・・(6)
ここで、fは全体撮像レンズの焦点距離を示し、f1は第1レンズの焦点距離を示し、TLは絞り2の物体側と撮像面3間の距離を示す。
【0030】
次に、本実施例形態による作用効果について説明する。
【0031】
第3レンズL3は、一面が非球面からなり、他の面は球面からなることにより、非球面に起因し、像面湾曲または球面収差を始めとした各収差が良好であるという効果があり、敏感度の高い一面を球面化することにより、レンズの組立性を改善することができる。
【0032】
また、第4レンズL4は、像側の面が非球面からなり、物体側の面が球面からなることにより、敏感度を低下させ、組立性を改善して収率を向上させることができる。
【0033】
このような本発明の撮像レンズは、様々な形態の変更を加えることが可能である。例えば、各レンズの曲率半径、レンズ間隔(或いはレンズ厚さ)、および非球面の形状を適切に変更することが可能である。
【0034】
また、レンズ材料としてプラスチック材を用いて構成することにより、コストダウンを図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態に係る撮像レンズの構成例を示すレンズ断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 カバーガラス
2 絞り
3 撮像面
Lj 物体側から第j番目のレンズ
r3 第2レンズの物体側面の曲率半径
r4 第2レンズの像側面の曲率半径
vi 物体側から第i番目のレンズのアッベ定数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順次、絞り、第1レンズ、第2レンズ、第3レンズ、および第4レンズを備えるが、
前記第1レンズは、正の屈折力を持つ正レンズであり、
前記第2レンズは、負の屈折力を持つ負レンズであり、
前記第3レンズは、少なくとも一面を非球面状とし、正の屈折力を持つ正レンズであり、
前記第4レンズは、像側の面を非球面状とし、物体側の面を球面状とし、負の屈折率を持つ負レンズであり、
次の条件式を満足するように構成されていることを特徴とする、撮像レンズ。
(r3+r4)/(r3−r4)>−0.7 ・・・(1)
v1−v2>15.0 ・・・(2)
v3−v2>15.0 ・・・(3)
(式中、r3は第2レンズの物体側面の曲率半径であり、r4は第2レンズの像側面の曲率半径であり、v1、v2およびv3はそれぞれ第1レンズ、第2レンズ、第3レンズのアッベ定数である。)
【請求項2】
次の条件式を満足するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の撮像レンズ。
0>R3R>R4F ・・・(4)
(式中、R3Rは第3レンズの像側面の中心における曲率半径を示し、R4Fは第4レンズの物体側面の中心における曲率半径を示す。)
【請求項3】
前記第1レンズのパワーに関しては下記(5)の条件式を満足させ、光軸に沿って、全体レンズの寸法に関しては下記(6)の条件式を満足させるように構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の撮像レンズ。
0<f1/f<0.8 ・・・(5)
TL/f<1.7 ・・・(6)
(式中、fは全体撮像レンズの焦点距離を示し、f1は前記第1レンズの焦点距離を示し、TLは前記絞りの物体側と撮像面間の距離を示す。)

【図1】
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【公開番号】特開2009−93149(P2009−93149A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177886(P2008−177886)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(508206357)マイクロプティクス株式會▲社▼ (1)
【Fターム(参考)】