撮像レンズ
【課題】より高性能な多焦点レンズを提供する。
【解決手段】透明基板上に光軸を中心とした同心円状に交互に配置される第1の光学部材と第2の光学部材とにより断面が矩形状の凹凸形状となる回折格子が形成される回折光学素子1と、屈折光学素子2とを備え、第1の光学部材および第2の光学部材は、所定の波長帯域の入射光に対してそれぞれ異なる屈折率およびアッベ数をもち、かつ|n1(λ)−n2(λ)|・d/λの値が前記波長帯域において実質的に等しくなる組み合わせであり、また、屈折光学素子2は、回折光学素子1から出射される少なくとも1組の1次以上の高次回折光を含む回折光を素子入射光とし、集光する側の最も高次の回折光である+L次回折光の焦点距離が最も長く、発散する側の最も高次の回折光である−L次回折光の焦点距離が最も短くなるように前記素子入射光である回折光を屈折させた屈折光を発現させる。
【解決手段】透明基板上に光軸を中心とした同心円状に交互に配置される第1の光学部材と第2の光学部材とにより断面が矩形状の凹凸形状となる回折格子が形成される回折光学素子1と、屈折光学素子2とを備え、第1の光学部材および第2の光学部材は、所定の波長帯域の入射光に対してそれぞれ異なる屈折率およびアッベ数をもち、かつ|n1(λ)−n2(λ)|・d/λの値が前記波長帯域において実質的に等しくなる組み合わせであり、また、屈折光学素子2は、回折光学素子1から出射される少なくとも1組の1次以上の高次回折光を含む回折光を素子入射光とし、集光する側の最も高次の回折光である+L次回折光の焦点距離が最も長く、発散する側の最も高次の回折光である−L次回折光の焦点距離が最も短くなるように前記素子入射光である回折光を屈折させた屈折光を発現させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の波長帯域の入射光に対して2つ以上の焦点を発現する撮像レンズ(以下、多焦点レンズという。)に関する。
【背景技術】
【0002】
CCDやCMOSセンサなどの撮像素子を使用するデジタルカメラや監視カメラをはじめとするデジタル撮像装置では、無限大もの遠方の画像から近方の画像までといった複数の距離にある物や風景を被写体にして撮像されたものに対して画像処理が行われている。
【0003】
しかし、遠方の風景を被写体とする場合と近方の物を被写体とする場合とで単一のレンズを用いると、それぞれで高い解像度の画像を得ることは難しい。
【0004】
しかし、例えば2つの焦点距離を持つ二焦点レンズを用いると、それぞれで高い解像度の画像を得ることが可能である。二焦点レンズの一例として、例えば、特許文献1に記載された回折作用を利用した多焦点レンズがある。
【0005】
また、回折作用を利用する回折光学素子に関する先行技術文献として、例えば、特許文献2,特許文献3および特許文献4がある。
【0006】
【特許文献1】特開2006−139246号公報
【特許文献2】特開平9−127321号公報
【特許文献3】特開平11−044808号公報
【特許文献4】特開2002−72082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載されている多焦点レンズは、それぞれ焦点距離の異なるレンズ部が同心状に複数回繰り返して配置されて1つのレンズとして構成されているため、該レンズを用いた場合、焦点距離の異なる輪帯領域を透過する光がそれぞれ他方の焦点距離においては迷光となってしまうという問題がある。
【0008】
また、特許文献2,特許文献3および特許文献4に記載されている回折光学素子に関する発明には、例えば、所望次数(または設計次数)の光線の回折効率を高めることを目的としている点、すなわち所望次数(または設計次数)以外の回折次数をもった光線を光学系に悪影響を与えるものとしてとらえている点からも明らかなように、回折作用を多焦点のために利用しようという思想は存在しない。
【0009】
とくに撮像系の多焦点レンズに要求されるものとしては、少なくとも可視光領域の光に対して一定の回折効率を有する機能が必要になる。入射する波長の光(色情報)に対して同等の光量レベルの光(画像)信号を後段の信号処理系に与える必要があるからである。
【0010】
また、焦点ごとに光量のレベルが異なることは、画像処理信号を行う上で都合が悪いので、異なる焦点においても同等の光量レベルになることが好ましい。
【0011】
そこで、本発明は、より高性能な多焦点レンズを提供することを目的とする。具体的には、2以上の焦点を発現させる撮像レンズであって、少なくとも当該撮像レンズの有効領域を透過する光を各焦点において有効な光線として利用することができる撮像レンズを提供することを目的とする。また、少なくとも可視光領域の波長の入射光に対して各焦点で同等の光量レベルの光信号を後段の信号処理系に与えることができる撮像レンズを提供することを目的とする。さらには、回折レンズで短い焦点距離を発現させる場合に問題になる色収差についても改善することが可能な撮像レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による撮像レンズは、所定の波長帯域の入射光に対して2つ以上の焦点を発現させる撮像レンズであって、回折光を発現させる回折光学素子と、屈折光を発現させる屈折光学素子とを備え、前記回折光学素子は、透明基板上に光軸を中心とした同心円状に交互に配置される第1の光学部材と第2の光学部材とにより、断面が矩形状の凹凸形状となる回折格子が形成されて、前記第1の光学部材と前記第2の光学部材とは、前記波長帯域の入射光に対してそれぞれ異なる屈折率およびアッベ数をもち、かつ当該第1の光学部材の前記波長帯域に含まれる任意の波長λに対する屈折率をn1(λ)とし、当該第2の光学部材の前記波長帯域に含まれる任意の波長λに対する屈折率をn2(λ)とし、かつ前記回折格子の厚さをdとするとき、|n1(λ)−n2(λ)|・d/λの値が前記波長帯域において実質的に等しく、前記屈折光学素子は、前記回折光学素子から出射される少なくとも1組の1次以上の高次回折光を含む回折光を素子入射光とし、前記回折光のうち最も高次の回折光を±L次回折光とすると、集光する側の+L次回折光の焦点距離が最も長く、発散する側の−L次回折光の焦点距離が最も短くなるように前記素子入射光である回折光を屈折させた屈折光を発現させることを特徴とする。
【0013】
また、前記回折光学素子は、所定の前記波長帯域の入射光に対して、直進透過する0次回折光と1組の1次以上の高次回折光とを発現させる回折格子であって、各次の回折効率が所定の前記波長帯域において実質的に等しい回折格子が形成されていてもよい。
【0014】
また、前記回折光学素子は、所定の前記波長帯域の入射光に対して、±1次回折光を発現させる回折格子であって、前記±1次回折光の回折効率が所定の前記波長帯域において実質的に等しい回折格子が形成されていてもよい。
【0015】
また、前記回折光学素子は、所定の前記波長帯域の入射光に対して、直進透過する0次回折光と±1次回折光とを発現させる回折格子であって、前記0次回折光と前記±1次回折光の回折効率が所定の前記波長帯域において実質的に等しい回折格子が形成されていてもよい。
【0016】
また、所定の前記波長帯域が、430〜660nmの範囲であってもよい。
【0017】
また、前記第1の光学部材または前記第2の光学部材のいずれか一方が、2種類以上の材料が透明基板に平行に積層される光学多層膜によって構成されていてもよい。
【0018】
また、前記光学多層膜は、Si02膜とTa2O5膜とが交互に積層されていてもよい。
【0019】
また、前記第1の光学部材または前記第2の光学部材のいずれか一方が、ナフタレン系化合物またはフルオレン系化合物によって構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、断面が矩形状をした回折格子を備えたバイナリ型回折レンズの特性を活かして、少なくとも1組の1次以上の高次回折光を含む回折光であって各回折光の回折効率が実質的に等しい回折光を回折光学素子から発現させ、その発現させた回折光を屈折光学素子で屈折させる構成になっているので、レンズの有効領域を透過する光を各焦点において有効な光線として利用することができる上に、色収差を低減させつつ各焦点を結ぶ回折された光の光量が実質的に等しい多焦点を発現する撮像レンズを提供することができる。なお、光量に関し実質的に等しいとは、任意の波長λにおける各回折光の回折効率または回折光の光量の差が20%以内となる場合をいうものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明による多焦点レンズの例を示す説明図である。図1に示す多焦点レンズ100は、回折光を発現させる回折光学素子1と、屈折光を発現させる屈折光学素子2とが組み合わされて構成されている。
【0022】
また、図2に、回折光学素子1の構成例が示されている。なお、図2(a)は、回折光学素子1の模式的平面図である。また、図2(b)は、回折光学素子1の模式的断面図(A−A’断面図)である。図2に示す回折光学素子1は、少なくとも透明基板13上に第1の光学部材11と第2の光学部材12とを光軸を中心とした同心円状に交互に配置させることにより形成されている。
【0023】
透明基板13として、例えばガラス、プラスチック製などの表面がフラットな基板を用いる。
【0024】
第1の光学部材11は、図2(b)に示すように、断面形状が矩形状であって、透明基板13上において凸部を構成する。以下、第1の光学部材11によって形成される凸部を凸部11と呼ぶ場合がある。図2に示す例では、平面形状が円状の凸部11Aを中心に、平面形状が輪帯状の凸部11B,12C,12Eが同心円状に配置されている。第1の光学部材11は、例えば、透明基板13の基板面に平行に形成される複数の層によって構成される光学多層膜であってもよい。なお、膜の材料、種類および層数は、所望の回折効率が得られるように選定される。
【0025】
第2の光学部材12は、第1の光学部材11とは異なるアッベ数および屈折率(ここでは所望の波長帯域で入射される光に対する屈折率に限る。)を有する充填材によって、少なくとも透明基板13上の第1の光学部材11による凸部の間すなわち凹部を充填するように形成されることにより、透明基板13上において凹部を構成する。以下、第2の光学部材12によって形成される凹部を凹部12と呼ぶ場合がある。なお、図2には、凸部の間の凹部のみならず凸部の上の部分も含めて充填する例が示されている。充填材として、例えば、エンチオール系の材料を用いる。また、第1の光学部材11と第2の光学部材12とを同じ厚さで形成する場合には、どちらを凸部または凹部といってもよく、どちらか一方を凸部とし他方を凹部とすればよい。すなわち、凸部の厚さと凹部の厚さを同じくする場合には、第1の光学部材11が凹部を構成し、第2の光学部材12が凸部を構成することも可能である。
【0026】
また、図2に示す例では省略しているが、第1の光学部材11および第2の光学部材12によって形成される凹凸層の透明基板13がある面とは反対の面(充填材側の面)に、ガラスや樹脂製の表面がフラットなカバーを設けてもよい。
【0027】
回折光学素子1は、第1の光学部材11と第2の光学部材12とによって形成される凹凸層を回折格子として作用させることにより、回折光を発現させる。本実施形態のように、断面形状が矩形となる凹凸状の回折格子を備える回折光学素子1は、一般にはバイナリ型回折レンズと呼ばれている。
【0028】
バイナリ型回折レンズの一方向(例えば、+1次回折光)の回折効率は、フレネル型回折レンズの回折効率と比べて小さいという特性があるが、これは回折光が他方向(例えば、−1次回折光)にも一定の光量で出射されることによる。本発明は、この複数方向に出射する回折光を利用することで、多焦点レンズを実現させている。
【0029】
回折レンズでは、回折格子である凹凸により生じる光の位相差やピッチ間隔(格子周期)によって回折効率および回折角度が変化する。バイナリ型であれば、少なくとも高次回折光(±k次回折光(kは1以上の自然数)))における+k次回折光と−k次回折光の回折効率は同じになる。
【0030】
本発明の多焦点レンズは、回折光学素子1をバイナリ型回折レンズとして具備することにより、光量が実質的にゼロではない少なくとも1組の回折光(±n次回折光(nは1以上の整数))を発現させる。バイナリ型回折レンズでは、各波長における回折効率は凸部と凹部の実効的な屈折率nの差(Δn)によって決まる。本発明では、回折光学素子1の凸部と凹部の屈折率に関し、次のような条件を定める。すなわち、所望の波長帯域に含まれる任意の波長λに対して、回折格子の厚さ(ここでは、凸部11の厚さ(厳密には、凹凸の突起部分の高さをいう。))をdとするとき、|n1(λ)−n2(λ)|・d/λの値が実質的に等しいことを条件とする。ここで、n1(λ)は波長λに対する凸部の屈折率を示し、n2(λ)は波長λに対する凹部の屈折率を示している。また、ここでいう実質的に等しいとは、この値の変動が0.2以内である場合をいうものとする。また、光量に関し実質的にゼロとは、回折効率が5%以下の範囲をいう。なお、凸部と凹部とを構成する光学部材の組み合わせに関し、一方の光学部材のアッベ数および屈折率(ここでは所望の波長帯域で入射される光に対する屈折率に限る。)が他方の光学部材よりも高い値となっていることを前提とする。
【0031】
ところで、屈折率nは波長λによって変化する性質(波長分散特性)をもっている。このため、所望の波長帯域において凸部と凹部の屈折率の差(Δn)に対する波長の割合が一定となるように、回折光学素子1の材料等を工夫することが好ましい。可視光波長帯域440nmから670nmにおいてその差(Δn)に対する波長の割合が一定になるように調整した回折光学素子1が、後述する実施例で提示される(実施例1〜3参照。)。
【0032】
なお、屈折光学素子2は、凸レンズ(屈折レンズ)として機能すればよい。より具体的には、回折光学素子1から出射される回折光に対して、光軸上に2以上の焦点を結ぶよう屈折させた屈折光を出射できればよい。すなわち、回折光学素子1から出射される回折光のうち最も高次の回折光を±L次回折光とすると、屈折光学素子2は、−L次回折光の焦点距離が最も長く、+L次回折光の焦点距離が最も短くなるように、それぞれの回折光を屈折させればよい。なお、本発明では、1組の高次回折光(±k次回折光(kは1以上の自然数))のうち光軸に向かって集光する方を+k次回折光といい、他方(発散する方)を−k次回折光という。
【0033】
図3に、回折光学素子1と屈折光学素子2とを組み合わせた多焦点レンズ100による結像の例を示す。図3には、平行光が入射されると回折光学素子1が±1次回折光を発現させ、屈折光学素子2がその±1次回折光を屈折させて、光軸上に2つの焦点が結ばれる様が示されている。図3に示す例では、1次の回折光のみを発現させているので、−1次回折光の焦点距離が最も長く、+1次回折光の焦点距離が最も短くなる。
【0034】
なお、多焦点レンズ100としては、回折光学素子1と屈折光学素子2とが、予め定めておいた位置関係を保つように撮像システム内で組み立てられればよい。また、図4に示すように、多焦点レンズ100は、さらに絞り3を備えていてもよい。なお、図4に示す例では、回折光学素子1と屈折光学素子2との間に絞り3を設ける例を示しているが、これに限定されるものではない。例えば、回折光学素子1と屈折光学素子2とで、光が入射する順番が逆になるように構成することも可能である。また、多焦点レンズ100として、さらに回折光学素子1と屈折光学素子2とを所定の位置関係で固定させる固定部材(図示省略)を備えていてもよい。
【0035】
以下、本発明の多焦点レンズ100における回折光学素子1のより具体的な構成例について実施例を用いて説明する。以下では、図2に示す例と同様に、第1の光学部材11がが凸部を構成し、第2の光学部材12が凹部を構成するものとして説明する。
【0036】
実施例1.
第1の実施例は、二焦点用回折光学素子1を実現する例である。図5は、本実施例の回折光学素子1から出射される回折光の例を示す説明図である。図5に示す例では、回折光学素子1が、入射される光(平行光)に対してほぼ同じ回折効率で+1次回折光と−1次回折光とを発現させることが示されている。なお、0次回折光(直進透過光)は発現させていない。
【0037】
図5に示すように、+1次回折光と−1次回折光とをほぼ同じ回折効率で発現させたい場合には、以下に示す式(1)を満たすように凹凸層(凸部11および凹部12)を形成すればよい。式(1)において、n1(λ)は上記と同様に波長λに対する凸部11の屈折率を示す。n2(λ)は上記と同様に波長λに対する凹部12の屈折率を示している。dは凸部11の厚さを示す(図6参照。)。なお、mは0以上の整数であればよい。
【0038】
{n1(λ)−n2(λ)}×d=(2m+1)λ/2 ・・・式(1)
【0039】
すなわち、凸部11と凹部12とで出射光の波長が半波長ずれるように、凸部11と凹部12の屈折率および凸部11の厚さを設計すればよい。しかし、前述したように屈折率nは波長λによって変化する性質(波長分散特性)をもつため、本実施例では、用いる充填材の屈折率n2(λ)に対して、凸部11の屈折率n1(λ)およびアッベ数を調整して、屈折率の差(Δn)に対する波長の割合が所望の波長帯域において一定となるようにしている。
【0040】
図7は、本実施例の凸部11(光学多層膜)を構成する各層の材料の設計例を示す説明図である。図7に示す設計例は、石英ガラス基板11の一方の面に、膜厚41nmのSi02膜と、膜厚198nmのTa2O5膜とを交互に20層重ねた光学多層膜を形成する場合の例である。例えば、図7で示される材料および膜厚で各層を順番に成膜していき、光学多層膜を形成する。そして、形成された光学多層膜を図1に示すような同心円状に広がる凹凸状に加工して、凸部11を形成する。各層の成膜は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法を用いて行えばよい。光学多層膜の凹凸形状への加工は、例えば、フォトリソグラフィおよびエッティングにより行えばよい。なお、本実施例におけるレンズ径は約10mmである。また、石英ガラス基板11の板厚は0.5mmである。また、Si02層とTa2O5層の波長589nmにおける屈折率はそれぞれ1.47と2.19であり、アッベ数はそれぞれ58と21である。
【0041】
この凸部11に対して、充填材として、波長586nmにおける屈折率が1.71であり、アッベ数が34であるエンチオール系の材料を用い、少なくとも凸部11の間を埋めるように充填する。そして、該充填材を接着剤にしてもう一方の石英ガラス基板(カバー)と接着させて、二焦点用回折光学素子1を作製する。このようにして作製される二焦点用回折光学素子1では、入射される平行光に対して+1次回折光と−1次回折光とを発現し、それぞれの回折光の焦点距離は約+1000mmと−1000mmとなる。この+1次回折光は凸レンズの出射光として機能し、−1次回折光は凹レンズの出射光として機能する。
【0042】
図8に、本実施例の回折光学素子1(二焦点用回折光学素子1)における凸部11と凹部12の各波長に対する実効的な屈折率の計算値を示す。図8に示すように、本実施例の回折光学素子1では、可視光波長帯域440nmから670nmにおいて凸部11(多層光学膜)と凹部12(充填材)の屈折率の差が波長に対して比例していることがわかる。
【0043】
また、図9に、本実施例の回折光学素子1(二焦点用回折光学素子1)の各波長に対する回折効率の計算値を示す。図9に示すように、本実施例の回折光学素子1では、可視光波長帯域440nmから670nmにおいて、発現する+1次回折光と−1次回折光の回折効率が実質的に等しくなっていることがわかる。また、集光する+1次回折光と発散する−1次回折光のそれぞれの回折効率が約40%となるとともに、直進する0次回折光はほとんど光量を発現しない(0次回折効率が実質的にゼロになっている)ことがわかる。
【0044】
このような回折光学素子1から発現される回折光(+1次回折光と−1次回折光)を図3に示すように屈折光学素子2で屈折させることにより、光量が実質的に等しい二焦点をもつ多焦点レンズを実現することができる。
【0045】
実施例2.
次に、本発明の第2の実施例について説明する。本実施例は、三焦点用回折光学素子1を実現する例である。図10は、本実施例の回折光学素子1から出射される回折光の例を示す説明図である。図10に示す例では、回折光学素子1が、入射される光(平行光)に対して実質的に等しい回折効率で+1次回折光と−1次回折光と0次回折光とを発現させることが示されている。
【0046】
図10に示すように、+1次回折光と−1次回折光と0次回折光とを実質的に等しい回折効率で発現させたい場合には、例えば、図11に示す設計例のように凸部11(光学多層膜)を構成すればよい。図11は、本実施例の凸部11(光学多層膜)を構成する各層の材料の設計例を示す説明図である。なお、図11に示す設計例は、充填材として波長589nmにおける屈折率が1.65、アッベ数が31のエンチオール系の材料を用いる場合の例である。
【0047】
図11に示す設計例は、石英ガラス基板11の一方の面に、膜厚34nmのTa2O5膜と、膜厚205nmのSi02膜とを交互に20層重ねた光学多層膜を形成する場合の例である。
【0048】
図12に、図11に示す設計例に従って作製される回折光学素子1(三焦点用回折光学素子1)の各波長に対する回折効率の計算値を示す。図12に示すように、本実施例の回折光学素子1では、可視光波長帯域440nmから670nmにおいて、発現する+1次回折光と−1次回折光と0次回折光の回折効率が実質的に等しくなっていることがわかる。また、集光する+1次回折光と発散する−1次回折光と直進する0次回折光のそれぞれの回折効率が約30%となることがわかる。
【0049】
図13に、本実施例の回折光学素子1と屈折光学素子2とを組み合わせた多焦点レンズ100による結像の例を示す。図13に示すように、本実施例の回折光学素子1から発現される回折光(+1次回折光と−1次回折光と0次回折光)を屈折光学素子2で屈折させているので、実質的に等しい回折効率を得ることにより、回折された光の光量が実質的に等しい三焦点をもつ多焦点レンズを実現することができる。
【0050】
実施例3.
次に、本発明の第3の実施例について説明する。本実施例は、三焦点用回折光学素子1を、光学多層膜ではない凸部によって実現する例である。本実施例では、凸部11の部材(第1の光学部材11)として、ナフタレン系またはフルオレン系の材料を用いる。より具体的には、板厚0.5mmの石英ガラス基板11の一方の面に、ナフタレンにアクリルをつけた材料(naphthalen−6−yl acrylate)をスピンコート法を用いて6.3μmの膜厚で成膜する。この材料の波長589nmにおける屈折率は1.56、アッベ数は49である。また、充填材は、波長589nmにおける屈折率が1.53、アッベ数が29のエンチオール系の材料を用いればよい。
【0051】
図14に、本実施例の回折光学素子1(三焦点用回折光学素子1)の各波長に対する回折効率の計算値を示す。図14に示すように、本実施例の回折光学素子1では、各波長における凸部11と凹部12の実効屈折の差が波長に対して比例するため、発現する+1次回折光と−1次回折光と0次回折光の回折効率が、可視光波長帯域440nmから670nmにおいて実質的に等しくなっていることがわかる。また、集光する+1次回折光と発散する−1次回折光と直進する0次回折光のそれぞれの回折効率が約30%となることがわかる。
【0052】
このように、充填材と組み合わせる光学部材として多層光学膜を用いなくても、光量が実質的に等しい三焦点をもつ多焦点レンズを実現することができる。
【0053】
なお、回折格子として機能する凸部11と凹部12により生じる光の位相差やピッチ間隔(格子周期)を調整することにより、複数組の回折光を発現させることが可能である。複数組の回折光を発現させることで、三焦点以上の多焦点レンズを実現できる。
【0054】
ところで、上記各実施例では、バイナリ型回折レンズの特性を活かして多焦点レンズを実現するために、所望の波長の範囲内で回折効率を一定とする回折光学素子1の例を示したが、回折レンズに見られる波長分散特性は、波長により焦点距離を変化させ、色収差としても現れる。特に、近距離の焦点を実現しようとすると色収差は顕著になる。
【0055】
本発明は、この色収差を低減させるためにも、回折レンズと屈折レンズとの組み合わせによる多焦点化を推奨している。回折レンズと屈折レンズとを組み合わせて多焦点化を実現させれば、回折レンズだけを用いて多焦点化を実現する場合と比べて、色収差の面で優位性をもたせることが可能だからである。
【0056】
例えば、撮像レンズの焦点距離としてf=100cmを実現しようとした場合に、焦点距離f1=200cmをもつ回折光学素子1と、焦点距離f2=200cmをもつ屈折光学素子2とを組み合わせることにより実現可能である。これは、本発明の構成のように、回折光学素子1と屈折光学素子2とを組み合わせて用いれば、焦点距離f=100cmをもつ回折レンズ単体で実現するよりも、色収差を少なく実現することができることを意味している。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、例えば、標準的な距離にある通常の被写体を撮影するとともに、通常の被写体よりも近い距離にある近接被写体を撮影するようなデジタルカメラ装置や情報処理端末等に装着する光学レンズおよび撮像システムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による多焦点レンズ100の構成例を示す説明図である。
【図2】回折光学素子1の構成例を示す説明図である。
【図3】回折光学素子1と屈折光学素子2とを組み合わせた多焦点レンズ100による結像の例を示す説明図である。
【図4】多焦点レンズ100の他の構成例を示す説明図である。
【図5】第1の実施例の回折光学素子1から出射される回折光の例を示す説明図である。
【図6】第1の実施例の回折光学素子1における凸部11と凹部12の屈折率および凸部11の高さの関係を示す説明図である。
【図7】第1の実施例の回折光学素子1における凸部11(光学多層膜)を構成する各層の材料の設計例を示す説明図である。
【図8】第1の実施例の回折光学素子1における凸部11と凹部12の屈折率の波長分散特性を示すグラフである。
【図9】第1の実施例の回折光学素子1の各波長に対する回折効率を示すグラフである。
【図10】第2の実施例の回折光学素子1から出射される回折光の例を示す説明図である。
【図11】第2の実施例の回折光学素子1における凸部11(光学多層膜)を構成する各層の材料の設計例を示す説明図である。
【図12】第2の実施例の回折光学素子1の各波長に対する回折効率を示すグラフである。
【図13】第2の実施例の回折光学素子1と屈折光学素子2とを組み合わせた多焦点レンズ100による結像の例を示す。
【図14】第3の実施例の回折光学素子1の各波長に対する回折効率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0059】
100 撮像レンズ
1 回折光学素子
11 第1の光学部材(凸部)
12 第2の光学部材(凹部)
13 透明基板
2 屈折光学素子
3 絞り
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の波長帯域の入射光に対して2つ以上の焦点を発現する撮像レンズ(以下、多焦点レンズという。)に関する。
【背景技術】
【0002】
CCDやCMOSセンサなどの撮像素子を使用するデジタルカメラや監視カメラをはじめとするデジタル撮像装置では、無限大もの遠方の画像から近方の画像までといった複数の距離にある物や風景を被写体にして撮像されたものに対して画像処理が行われている。
【0003】
しかし、遠方の風景を被写体とする場合と近方の物を被写体とする場合とで単一のレンズを用いると、それぞれで高い解像度の画像を得ることは難しい。
【0004】
しかし、例えば2つの焦点距離を持つ二焦点レンズを用いると、それぞれで高い解像度の画像を得ることが可能である。二焦点レンズの一例として、例えば、特許文献1に記載された回折作用を利用した多焦点レンズがある。
【0005】
また、回折作用を利用する回折光学素子に関する先行技術文献として、例えば、特許文献2,特許文献3および特許文献4がある。
【0006】
【特許文献1】特開2006−139246号公報
【特許文献2】特開平9−127321号公報
【特許文献3】特開平11−044808号公報
【特許文献4】特開2002−72082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載されている多焦点レンズは、それぞれ焦点距離の異なるレンズ部が同心状に複数回繰り返して配置されて1つのレンズとして構成されているため、該レンズを用いた場合、焦点距離の異なる輪帯領域を透過する光がそれぞれ他方の焦点距離においては迷光となってしまうという問題がある。
【0008】
また、特許文献2,特許文献3および特許文献4に記載されている回折光学素子に関する発明には、例えば、所望次数(または設計次数)の光線の回折効率を高めることを目的としている点、すなわち所望次数(または設計次数)以外の回折次数をもった光線を光学系に悪影響を与えるものとしてとらえている点からも明らかなように、回折作用を多焦点のために利用しようという思想は存在しない。
【0009】
とくに撮像系の多焦点レンズに要求されるものとしては、少なくとも可視光領域の光に対して一定の回折効率を有する機能が必要になる。入射する波長の光(色情報)に対して同等の光量レベルの光(画像)信号を後段の信号処理系に与える必要があるからである。
【0010】
また、焦点ごとに光量のレベルが異なることは、画像処理信号を行う上で都合が悪いので、異なる焦点においても同等の光量レベルになることが好ましい。
【0011】
そこで、本発明は、より高性能な多焦点レンズを提供することを目的とする。具体的には、2以上の焦点を発現させる撮像レンズであって、少なくとも当該撮像レンズの有効領域を透過する光を各焦点において有効な光線として利用することができる撮像レンズを提供することを目的とする。また、少なくとも可視光領域の波長の入射光に対して各焦点で同等の光量レベルの光信号を後段の信号処理系に与えることができる撮像レンズを提供することを目的とする。さらには、回折レンズで短い焦点距離を発現させる場合に問題になる色収差についても改善することが可能な撮像レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による撮像レンズは、所定の波長帯域の入射光に対して2つ以上の焦点を発現させる撮像レンズであって、回折光を発現させる回折光学素子と、屈折光を発現させる屈折光学素子とを備え、前記回折光学素子は、透明基板上に光軸を中心とした同心円状に交互に配置される第1の光学部材と第2の光学部材とにより、断面が矩形状の凹凸形状となる回折格子が形成されて、前記第1の光学部材と前記第2の光学部材とは、前記波長帯域の入射光に対してそれぞれ異なる屈折率およびアッベ数をもち、かつ当該第1の光学部材の前記波長帯域に含まれる任意の波長λに対する屈折率をn1(λ)とし、当該第2の光学部材の前記波長帯域に含まれる任意の波長λに対する屈折率をn2(λ)とし、かつ前記回折格子の厚さをdとするとき、|n1(λ)−n2(λ)|・d/λの値が前記波長帯域において実質的に等しく、前記屈折光学素子は、前記回折光学素子から出射される少なくとも1組の1次以上の高次回折光を含む回折光を素子入射光とし、前記回折光のうち最も高次の回折光を±L次回折光とすると、集光する側の+L次回折光の焦点距離が最も長く、発散する側の−L次回折光の焦点距離が最も短くなるように前記素子入射光である回折光を屈折させた屈折光を発現させることを特徴とする。
【0013】
また、前記回折光学素子は、所定の前記波長帯域の入射光に対して、直進透過する0次回折光と1組の1次以上の高次回折光とを発現させる回折格子であって、各次の回折効率が所定の前記波長帯域において実質的に等しい回折格子が形成されていてもよい。
【0014】
また、前記回折光学素子は、所定の前記波長帯域の入射光に対して、±1次回折光を発現させる回折格子であって、前記±1次回折光の回折効率が所定の前記波長帯域において実質的に等しい回折格子が形成されていてもよい。
【0015】
また、前記回折光学素子は、所定の前記波長帯域の入射光に対して、直進透過する0次回折光と±1次回折光とを発現させる回折格子であって、前記0次回折光と前記±1次回折光の回折効率が所定の前記波長帯域において実質的に等しい回折格子が形成されていてもよい。
【0016】
また、所定の前記波長帯域が、430〜660nmの範囲であってもよい。
【0017】
また、前記第1の光学部材または前記第2の光学部材のいずれか一方が、2種類以上の材料が透明基板に平行に積層される光学多層膜によって構成されていてもよい。
【0018】
また、前記光学多層膜は、Si02膜とTa2O5膜とが交互に積層されていてもよい。
【0019】
また、前記第1の光学部材または前記第2の光学部材のいずれか一方が、ナフタレン系化合物またはフルオレン系化合物によって構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、断面が矩形状をした回折格子を備えたバイナリ型回折レンズの特性を活かして、少なくとも1組の1次以上の高次回折光を含む回折光であって各回折光の回折効率が実質的に等しい回折光を回折光学素子から発現させ、その発現させた回折光を屈折光学素子で屈折させる構成になっているので、レンズの有効領域を透過する光を各焦点において有効な光線として利用することができる上に、色収差を低減させつつ各焦点を結ぶ回折された光の光量が実質的に等しい多焦点を発現する撮像レンズを提供することができる。なお、光量に関し実質的に等しいとは、任意の波長λにおける各回折光の回折効率または回折光の光量の差が20%以内となる場合をいうものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明による多焦点レンズの例を示す説明図である。図1に示す多焦点レンズ100は、回折光を発現させる回折光学素子1と、屈折光を発現させる屈折光学素子2とが組み合わされて構成されている。
【0022】
また、図2に、回折光学素子1の構成例が示されている。なお、図2(a)は、回折光学素子1の模式的平面図である。また、図2(b)は、回折光学素子1の模式的断面図(A−A’断面図)である。図2に示す回折光学素子1は、少なくとも透明基板13上に第1の光学部材11と第2の光学部材12とを光軸を中心とした同心円状に交互に配置させることにより形成されている。
【0023】
透明基板13として、例えばガラス、プラスチック製などの表面がフラットな基板を用いる。
【0024】
第1の光学部材11は、図2(b)に示すように、断面形状が矩形状であって、透明基板13上において凸部を構成する。以下、第1の光学部材11によって形成される凸部を凸部11と呼ぶ場合がある。図2に示す例では、平面形状が円状の凸部11Aを中心に、平面形状が輪帯状の凸部11B,12C,12Eが同心円状に配置されている。第1の光学部材11は、例えば、透明基板13の基板面に平行に形成される複数の層によって構成される光学多層膜であってもよい。なお、膜の材料、種類および層数は、所望の回折効率が得られるように選定される。
【0025】
第2の光学部材12は、第1の光学部材11とは異なるアッベ数および屈折率(ここでは所望の波長帯域で入射される光に対する屈折率に限る。)を有する充填材によって、少なくとも透明基板13上の第1の光学部材11による凸部の間すなわち凹部を充填するように形成されることにより、透明基板13上において凹部を構成する。以下、第2の光学部材12によって形成される凹部を凹部12と呼ぶ場合がある。なお、図2には、凸部の間の凹部のみならず凸部の上の部分も含めて充填する例が示されている。充填材として、例えば、エンチオール系の材料を用いる。また、第1の光学部材11と第2の光学部材12とを同じ厚さで形成する場合には、どちらを凸部または凹部といってもよく、どちらか一方を凸部とし他方を凹部とすればよい。すなわち、凸部の厚さと凹部の厚さを同じくする場合には、第1の光学部材11が凹部を構成し、第2の光学部材12が凸部を構成することも可能である。
【0026】
また、図2に示す例では省略しているが、第1の光学部材11および第2の光学部材12によって形成される凹凸層の透明基板13がある面とは反対の面(充填材側の面)に、ガラスや樹脂製の表面がフラットなカバーを設けてもよい。
【0027】
回折光学素子1は、第1の光学部材11と第2の光学部材12とによって形成される凹凸層を回折格子として作用させることにより、回折光を発現させる。本実施形態のように、断面形状が矩形となる凹凸状の回折格子を備える回折光学素子1は、一般にはバイナリ型回折レンズと呼ばれている。
【0028】
バイナリ型回折レンズの一方向(例えば、+1次回折光)の回折効率は、フレネル型回折レンズの回折効率と比べて小さいという特性があるが、これは回折光が他方向(例えば、−1次回折光)にも一定の光量で出射されることによる。本発明は、この複数方向に出射する回折光を利用することで、多焦点レンズを実現させている。
【0029】
回折レンズでは、回折格子である凹凸により生じる光の位相差やピッチ間隔(格子周期)によって回折効率および回折角度が変化する。バイナリ型であれば、少なくとも高次回折光(±k次回折光(kは1以上の自然数)))における+k次回折光と−k次回折光の回折効率は同じになる。
【0030】
本発明の多焦点レンズは、回折光学素子1をバイナリ型回折レンズとして具備することにより、光量が実質的にゼロではない少なくとも1組の回折光(±n次回折光(nは1以上の整数))を発現させる。バイナリ型回折レンズでは、各波長における回折効率は凸部と凹部の実効的な屈折率nの差(Δn)によって決まる。本発明では、回折光学素子1の凸部と凹部の屈折率に関し、次のような条件を定める。すなわち、所望の波長帯域に含まれる任意の波長λに対して、回折格子の厚さ(ここでは、凸部11の厚さ(厳密には、凹凸の突起部分の高さをいう。))をdとするとき、|n1(λ)−n2(λ)|・d/λの値が実質的に等しいことを条件とする。ここで、n1(λ)は波長λに対する凸部の屈折率を示し、n2(λ)は波長λに対する凹部の屈折率を示している。また、ここでいう実質的に等しいとは、この値の変動が0.2以内である場合をいうものとする。また、光量に関し実質的にゼロとは、回折効率が5%以下の範囲をいう。なお、凸部と凹部とを構成する光学部材の組み合わせに関し、一方の光学部材のアッベ数および屈折率(ここでは所望の波長帯域で入射される光に対する屈折率に限る。)が他方の光学部材よりも高い値となっていることを前提とする。
【0031】
ところで、屈折率nは波長λによって変化する性質(波長分散特性)をもっている。このため、所望の波長帯域において凸部と凹部の屈折率の差(Δn)に対する波長の割合が一定となるように、回折光学素子1の材料等を工夫することが好ましい。可視光波長帯域440nmから670nmにおいてその差(Δn)に対する波長の割合が一定になるように調整した回折光学素子1が、後述する実施例で提示される(実施例1〜3参照。)。
【0032】
なお、屈折光学素子2は、凸レンズ(屈折レンズ)として機能すればよい。より具体的には、回折光学素子1から出射される回折光に対して、光軸上に2以上の焦点を結ぶよう屈折させた屈折光を出射できればよい。すなわち、回折光学素子1から出射される回折光のうち最も高次の回折光を±L次回折光とすると、屈折光学素子2は、−L次回折光の焦点距離が最も長く、+L次回折光の焦点距離が最も短くなるように、それぞれの回折光を屈折させればよい。なお、本発明では、1組の高次回折光(±k次回折光(kは1以上の自然数))のうち光軸に向かって集光する方を+k次回折光といい、他方(発散する方)を−k次回折光という。
【0033】
図3に、回折光学素子1と屈折光学素子2とを組み合わせた多焦点レンズ100による結像の例を示す。図3には、平行光が入射されると回折光学素子1が±1次回折光を発現させ、屈折光学素子2がその±1次回折光を屈折させて、光軸上に2つの焦点が結ばれる様が示されている。図3に示す例では、1次の回折光のみを発現させているので、−1次回折光の焦点距離が最も長く、+1次回折光の焦点距離が最も短くなる。
【0034】
なお、多焦点レンズ100としては、回折光学素子1と屈折光学素子2とが、予め定めておいた位置関係を保つように撮像システム内で組み立てられればよい。また、図4に示すように、多焦点レンズ100は、さらに絞り3を備えていてもよい。なお、図4に示す例では、回折光学素子1と屈折光学素子2との間に絞り3を設ける例を示しているが、これに限定されるものではない。例えば、回折光学素子1と屈折光学素子2とで、光が入射する順番が逆になるように構成することも可能である。また、多焦点レンズ100として、さらに回折光学素子1と屈折光学素子2とを所定の位置関係で固定させる固定部材(図示省略)を備えていてもよい。
【0035】
以下、本発明の多焦点レンズ100における回折光学素子1のより具体的な構成例について実施例を用いて説明する。以下では、図2に示す例と同様に、第1の光学部材11がが凸部を構成し、第2の光学部材12が凹部を構成するものとして説明する。
【0036】
実施例1.
第1の実施例は、二焦点用回折光学素子1を実現する例である。図5は、本実施例の回折光学素子1から出射される回折光の例を示す説明図である。図5に示す例では、回折光学素子1が、入射される光(平行光)に対してほぼ同じ回折効率で+1次回折光と−1次回折光とを発現させることが示されている。なお、0次回折光(直進透過光)は発現させていない。
【0037】
図5に示すように、+1次回折光と−1次回折光とをほぼ同じ回折効率で発現させたい場合には、以下に示す式(1)を満たすように凹凸層(凸部11および凹部12)を形成すればよい。式(1)において、n1(λ)は上記と同様に波長λに対する凸部11の屈折率を示す。n2(λ)は上記と同様に波長λに対する凹部12の屈折率を示している。dは凸部11の厚さを示す(図6参照。)。なお、mは0以上の整数であればよい。
【0038】
{n1(λ)−n2(λ)}×d=(2m+1)λ/2 ・・・式(1)
【0039】
すなわち、凸部11と凹部12とで出射光の波長が半波長ずれるように、凸部11と凹部12の屈折率および凸部11の厚さを設計すればよい。しかし、前述したように屈折率nは波長λによって変化する性質(波長分散特性)をもつため、本実施例では、用いる充填材の屈折率n2(λ)に対して、凸部11の屈折率n1(λ)およびアッベ数を調整して、屈折率の差(Δn)に対する波長の割合が所望の波長帯域において一定となるようにしている。
【0040】
図7は、本実施例の凸部11(光学多層膜)を構成する各層の材料の設計例を示す説明図である。図7に示す設計例は、石英ガラス基板11の一方の面に、膜厚41nmのSi02膜と、膜厚198nmのTa2O5膜とを交互に20層重ねた光学多層膜を形成する場合の例である。例えば、図7で示される材料および膜厚で各層を順番に成膜していき、光学多層膜を形成する。そして、形成された光学多層膜を図1に示すような同心円状に広がる凹凸状に加工して、凸部11を形成する。各層の成膜は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法を用いて行えばよい。光学多層膜の凹凸形状への加工は、例えば、フォトリソグラフィおよびエッティングにより行えばよい。なお、本実施例におけるレンズ径は約10mmである。また、石英ガラス基板11の板厚は0.5mmである。また、Si02層とTa2O5層の波長589nmにおける屈折率はそれぞれ1.47と2.19であり、アッベ数はそれぞれ58と21である。
【0041】
この凸部11に対して、充填材として、波長586nmにおける屈折率が1.71であり、アッベ数が34であるエンチオール系の材料を用い、少なくとも凸部11の間を埋めるように充填する。そして、該充填材を接着剤にしてもう一方の石英ガラス基板(カバー)と接着させて、二焦点用回折光学素子1を作製する。このようにして作製される二焦点用回折光学素子1では、入射される平行光に対して+1次回折光と−1次回折光とを発現し、それぞれの回折光の焦点距離は約+1000mmと−1000mmとなる。この+1次回折光は凸レンズの出射光として機能し、−1次回折光は凹レンズの出射光として機能する。
【0042】
図8に、本実施例の回折光学素子1(二焦点用回折光学素子1)における凸部11と凹部12の各波長に対する実効的な屈折率の計算値を示す。図8に示すように、本実施例の回折光学素子1では、可視光波長帯域440nmから670nmにおいて凸部11(多層光学膜)と凹部12(充填材)の屈折率の差が波長に対して比例していることがわかる。
【0043】
また、図9に、本実施例の回折光学素子1(二焦点用回折光学素子1)の各波長に対する回折効率の計算値を示す。図9に示すように、本実施例の回折光学素子1では、可視光波長帯域440nmから670nmにおいて、発現する+1次回折光と−1次回折光の回折効率が実質的に等しくなっていることがわかる。また、集光する+1次回折光と発散する−1次回折光のそれぞれの回折効率が約40%となるとともに、直進する0次回折光はほとんど光量を発現しない(0次回折効率が実質的にゼロになっている)ことがわかる。
【0044】
このような回折光学素子1から発現される回折光(+1次回折光と−1次回折光)を図3に示すように屈折光学素子2で屈折させることにより、光量が実質的に等しい二焦点をもつ多焦点レンズを実現することができる。
【0045】
実施例2.
次に、本発明の第2の実施例について説明する。本実施例は、三焦点用回折光学素子1を実現する例である。図10は、本実施例の回折光学素子1から出射される回折光の例を示す説明図である。図10に示す例では、回折光学素子1が、入射される光(平行光)に対して実質的に等しい回折効率で+1次回折光と−1次回折光と0次回折光とを発現させることが示されている。
【0046】
図10に示すように、+1次回折光と−1次回折光と0次回折光とを実質的に等しい回折効率で発現させたい場合には、例えば、図11に示す設計例のように凸部11(光学多層膜)を構成すればよい。図11は、本実施例の凸部11(光学多層膜)を構成する各層の材料の設計例を示す説明図である。なお、図11に示す設計例は、充填材として波長589nmにおける屈折率が1.65、アッベ数が31のエンチオール系の材料を用いる場合の例である。
【0047】
図11に示す設計例は、石英ガラス基板11の一方の面に、膜厚34nmのTa2O5膜と、膜厚205nmのSi02膜とを交互に20層重ねた光学多層膜を形成する場合の例である。
【0048】
図12に、図11に示す設計例に従って作製される回折光学素子1(三焦点用回折光学素子1)の各波長に対する回折効率の計算値を示す。図12に示すように、本実施例の回折光学素子1では、可視光波長帯域440nmから670nmにおいて、発現する+1次回折光と−1次回折光と0次回折光の回折効率が実質的に等しくなっていることがわかる。また、集光する+1次回折光と発散する−1次回折光と直進する0次回折光のそれぞれの回折効率が約30%となることがわかる。
【0049】
図13に、本実施例の回折光学素子1と屈折光学素子2とを組み合わせた多焦点レンズ100による結像の例を示す。図13に示すように、本実施例の回折光学素子1から発現される回折光(+1次回折光と−1次回折光と0次回折光)を屈折光学素子2で屈折させているので、実質的に等しい回折効率を得ることにより、回折された光の光量が実質的に等しい三焦点をもつ多焦点レンズを実現することができる。
【0050】
実施例3.
次に、本発明の第3の実施例について説明する。本実施例は、三焦点用回折光学素子1を、光学多層膜ではない凸部によって実現する例である。本実施例では、凸部11の部材(第1の光学部材11)として、ナフタレン系またはフルオレン系の材料を用いる。より具体的には、板厚0.5mmの石英ガラス基板11の一方の面に、ナフタレンにアクリルをつけた材料(naphthalen−6−yl acrylate)をスピンコート法を用いて6.3μmの膜厚で成膜する。この材料の波長589nmにおける屈折率は1.56、アッベ数は49である。また、充填材は、波長589nmにおける屈折率が1.53、アッベ数が29のエンチオール系の材料を用いればよい。
【0051】
図14に、本実施例の回折光学素子1(三焦点用回折光学素子1)の各波長に対する回折効率の計算値を示す。図14に示すように、本実施例の回折光学素子1では、各波長における凸部11と凹部12の実効屈折の差が波長に対して比例するため、発現する+1次回折光と−1次回折光と0次回折光の回折効率が、可視光波長帯域440nmから670nmにおいて実質的に等しくなっていることがわかる。また、集光する+1次回折光と発散する−1次回折光と直進する0次回折光のそれぞれの回折効率が約30%となることがわかる。
【0052】
このように、充填材と組み合わせる光学部材として多層光学膜を用いなくても、光量が実質的に等しい三焦点をもつ多焦点レンズを実現することができる。
【0053】
なお、回折格子として機能する凸部11と凹部12により生じる光の位相差やピッチ間隔(格子周期)を調整することにより、複数組の回折光を発現させることが可能である。複数組の回折光を発現させることで、三焦点以上の多焦点レンズを実現できる。
【0054】
ところで、上記各実施例では、バイナリ型回折レンズの特性を活かして多焦点レンズを実現するために、所望の波長の範囲内で回折効率を一定とする回折光学素子1の例を示したが、回折レンズに見られる波長分散特性は、波長により焦点距離を変化させ、色収差としても現れる。特に、近距離の焦点を実現しようとすると色収差は顕著になる。
【0055】
本発明は、この色収差を低減させるためにも、回折レンズと屈折レンズとの組み合わせによる多焦点化を推奨している。回折レンズと屈折レンズとを組み合わせて多焦点化を実現させれば、回折レンズだけを用いて多焦点化を実現する場合と比べて、色収差の面で優位性をもたせることが可能だからである。
【0056】
例えば、撮像レンズの焦点距離としてf=100cmを実現しようとした場合に、焦点距離f1=200cmをもつ回折光学素子1と、焦点距離f2=200cmをもつ屈折光学素子2とを組み合わせることにより実現可能である。これは、本発明の構成のように、回折光学素子1と屈折光学素子2とを組み合わせて用いれば、焦点距離f=100cmをもつ回折レンズ単体で実現するよりも、色収差を少なく実現することができることを意味している。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、例えば、標準的な距離にある通常の被写体を撮影するとともに、通常の被写体よりも近い距離にある近接被写体を撮影するようなデジタルカメラ装置や情報処理端末等に装着する光学レンズおよび撮像システムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による多焦点レンズ100の構成例を示す説明図である。
【図2】回折光学素子1の構成例を示す説明図である。
【図3】回折光学素子1と屈折光学素子2とを組み合わせた多焦点レンズ100による結像の例を示す説明図である。
【図4】多焦点レンズ100の他の構成例を示す説明図である。
【図5】第1の実施例の回折光学素子1から出射される回折光の例を示す説明図である。
【図6】第1の実施例の回折光学素子1における凸部11と凹部12の屈折率および凸部11の高さの関係を示す説明図である。
【図7】第1の実施例の回折光学素子1における凸部11(光学多層膜)を構成する各層の材料の設計例を示す説明図である。
【図8】第1の実施例の回折光学素子1における凸部11と凹部12の屈折率の波長分散特性を示すグラフである。
【図9】第1の実施例の回折光学素子1の各波長に対する回折効率を示すグラフである。
【図10】第2の実施例の回折光学素子1から出射される回折光の例を示す説明図である。
【図11】第2の実施例の回折光学素子1における凸部11(光学多層膜)を構成する各層の材料の設計例を示す説明図である。
【図12】第2の実施例の回折光学素子1の各波長に対する回折効率を示すグラフである。
【図13】第2の実施例の回折光学素子1と屈折光学素子2とを組み合わせた多焦点レンズ100による結像の例を示す。
【図14】第3の実施例の回折光学素子1の各波長に対する回折効率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0059】
100 撮像レンズ
1 回折光学素子
11 第1の光学部材(凸部)
12 第2の光学部材(凹部)
13 透明基板
2 屈折光学素子
3 絞り
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の波長帯域の入射光に対して2つ以上の焦点を発現させる撮像レンズであって、
回折光を発現させる回折光学素子と、屈折光を発現させる屈折光学素子とを備え、
前記回折光学素子は、
透明基板上に光軸を中心とした同心円状に交互に配置される第1の光学部材と第2の光学部材とにより、断面が矩形状の凹凸形状となる回折格子が形成されて、
前記第1の光学部材と前記第2の光学部材とは、前記波長帯域の入射光に対してそれぞれ異なる屈折率およびアッベ数をもち、かつ当該第1の光学部材の前記波長帯域に含まれる任意の波長λに対する屈折率をn1(λ)とし、当該第2の光学部材の前記波長帯域に含まれる任意の波長λに対する屈折率をn2(λ)とし、かつ前記回折格子の厚さをdとするとき、|n1(λ)−n2(λ)|・d/λの値が前記波長帯域において実質的に等しく、
前記屈折光学素子は、前記回折光学素子から出射される少なくとも1組の1次以上の高次回折光を含む回折光を素子入射光とし、前記回折光のうち最も高次の回折光を±L次回折光とすると、集光する側の+L次回折光の焦点距離が最も長く、発散する側の−L次回折光の焦点距離が最も短くなるように前記素子入射光である回折光を屈折させた屈折光を発現させる
ことを特徴とする撮像レンズ。
【請求項2】
前記回折光学素子は、所定の前記波長帯域の入射光に対して、直進透過する0次回折光と1組の1次以上の高次回折光とを発現させる回折格子であって、各次の回折効率が所定の前記波長帯域において実質的に等しい回折格子が形成されている
請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項3】
前記回折光学素子は、所定の前記波長帯域の入射光に対して、±1次回折光を発現させる回折格子であって、前記±1次回折光の回折効率が所定の前記波長帯域において実質的に等しい回折格子が形成されている
請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項4】
前記回折光学素子は、所定の前記波長帯域の入射光に対して、直進透過する0次回折光と±1次回折光とを発現させる回折格子であって、前記0次回折光と前記±1次回折光の回折効率が所定の前記波長帯域において実質的に等しい回折格子が形成されている
請求項2に記載の撮像レンズ。
【請求項5】
所定の前記波長帯域が、430〜660nmの範囲である
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項6】
前記第1の光学部材または前記第2の光学部材のいずれか一方が、2種類以上の材料が透明基板に平行に積層される光学多層膜によって構成されている
請求項1から請求項5のうちのいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項7】
前記光学多層膜は、Si02膜とTa2O5膜とが交互に積層されている
請求項6に記載の撮像レンズ。
【請求項8】
前記第1の光学部材または前記第2の光学部材のいずれか一方が、ナフタレン系化合物またはフルオレン系化合物によって構成されている
請求項1から請求項5のうちのいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項1】
所定の波長帯域の入射光に対して2つ以上の焦点を発現させる撮像レンズであって、
回折光を発現させる回折光学素子と、屈折光を発現させる屈折光学素子とを備え、
前記回折光学素子は、
透明基板上に光軸を中心とした同心円状に交互に配置される第1の光学部材と第2の光学部材とにより、断面が矩形状の凹凸形状となる回折格子が形成されて、
前記第1の光学部材と前記第2の光学部材とは、前記波長帯域の入射光に対してそれぞれ異なる屈折率およびアッベ数をもち、かつ当該第1の光学部材の前記波長帯域に含まれる任意の波長λに対する屈折率をn1(λ)とし、当該第2の光学部材の前記波長帯域に含まれる任意の波長λに対する屈折率をn2(λ)とし、かつ前記回折格子の厚さをdとするとき、|n1(λ)−n2(λ)|・d/λの値が前記波長帯域において実質的に等しく、
前記屈折光学素子は、前記回折光学素子から出射される少なくとも1組の1次以上の高次回折光を含む回折光を素子入射光とし、前記回折光のうち最も高次の回折光を±L次回折光とすると、集光する側の+L次回折光の焦点距離が最も長く、発散する側の−L次回折光の焦点距離が最も短くなるように前記素子入射光である回折光を屈折させた屈折光を発現させる
ことを特徴とする撮像レンズ。
【請求項2】
前記回折光学素子は、所定の前記波長帯域の入射光に対して、直進透過する0次回折光と1組の1次以上の高次回折光とを発現させる回折格子であって、各次の回折効率が所定の前記波長帯域において実質的に等しい回折格子が形成されている
請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項3】
前記回折光学素子は、所定の前記波長帯域の入射光に対して、±1次回折光を発現させる回折格子であって、前記±1次回折光の回折効率が所定の前記波長帯域において実質的に等しい回折格子が形成されている
請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項4】
前記回折光学素子は、所定の前記波長帯域の入射光に対して、直進透過する0次回折光と±1次回折光とを発現させる回折格子であって、前記0次回折光と前記±1次回折光の回折効率が所定の前記波長帯域において実質的に等しい回折格子が形成されている
請求項2に記載の撮像レンズ。
【請求項5】
所定の前記波長帯域が、430〜660nmの範囲である
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項6】
前記第1の光学部材または前記第2の光学部材のいずれか一方が、2種類以上の材料が透明基板に平行に積層される光学多層膜によって構成されている
請求項1から請求項5のうちのいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項7】
前記光学多層膜は、Si02膜とTa2O5膜とが交互に積層されている
請求項6に記載の撮像レンズ。
【請求項8】
前記第1の光学部材または前記第2の光学部材のいずれか一方が、ナフタレン系化合物またはフルオレン系化合物によって構成されている
請求項1から請求項5のうちのいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−48997(P2010−48997A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212673(P2008−212673)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
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