説明

撮像光学系

【課題】小型で収差を良好に補正した撮像光学系を提供する。
【解決手段】物体側から順に、正のパワーを有し物体側に凸面を向けたメニスカス形状の第1レンズと、像面側に凹面を向けた第2レンズで構成するとともに第1レンズと第2レンズの焦点距離を適切な範囲に設定することを特徴とする撮像光学系。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子に光を導くことのできる撮像光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータの普及に伴い、手軽にパーソナルコンピュータに画像を取り込めるデジタルカメラが普及している。また、モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)等の情報処理機器にデジタルカメラを組み込むことも一般化している。このようなデジタルカメラの普及にともない、より小型のデジタルカメラが要望されるようになり、撮像光学系も一層小型にする必要がある。
【0003】
そこで、撮像光学系を小型にするために、特許文献1乃至3には物体側に凸面を向けたメニスカス形状の第1レンズと像面側に凹面を向けた第2レンズからなる2枚レンズで構成したものが提案されている。
【特許文献1】特開2005−107368号公報
【特許文献2】特開2004−4620号公報
【特許文献3】特開2004−109585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載されている光学系は携帯電話、携帯情報端末などのデジタルカメラ用としては撮像画角が狭く、また、特許文献1、2に記載されている光学系は広画角を確保しているが撮像レンズ全長が短くなっていない。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、小型で収差が良好に補正された撮像光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は次の構成により解決される。
【0007】
1. 被写体からの光を撮像素子上に結像させる撮像光学系において、
物体側から順に、正のパワーを有し物体側に凸面を向けたメニスカス形状の第1レンズと、像面側に凹面を向けた第2レンズで構成され、
前記第1レンズの焦点距離をf1、前記第2レンズの焦点距離をf2、全系の焦点距離をf、像面での最大像高をYで表すとき、
|f2|/f1>15、
1.3<f/Y<2.2
の関係を満たすことを特徴とする撮像光学系。
【0008】
2. 被写体からの光を撮像素子上に結像させる撮像光学系において、
物体側から順に、正のパワーを有し物体側に凸面を向けたメニスカス形状の第1レンズと、像面側に凹面を向けた第2レンズで構成され、
前記第1レンズの焦点距離をf1、前記第2レンズの焦点距離をf2、前記第1レンズの軸上距離をd1、前記第1レンズの物体側面から前記第2レンズの像側面までの軸上距離をd12で表すとき、
|f2|/f1>15、
0.15<d1/d12<0.37
の関係を満たすことを特徴とする撮像光学系。
【0009】
3. 前記第2レンズは、像面側が非球面であり、該非球面が光軸近傍で像面側に凹形状であり周辺部で像面側に凸形状であることを特徴とする1または2に記載の撮像光学系。
【0010】
4. 前記第1レンズの物体側に開口絞りが設けられていることを特徴とする1乃至3のいずれか1項に記載の撮像光学系。
【0011】
5. 前記第1レンズと前記第2レンズの両面が非球面であることを特徴とする1乃至4のいずれか1項に記載の撮像光学系。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、物体側から順に、正のパワーを有し物体側に凸面を向けたメニスカス形状の第1レンズと、像面側に凹面を向けた第2レンズで構成するとともに第1レンズと第2レンズの焦点距離を適切な範囲に設定することにより、小型で収差を良好に補正した撮像光学系を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
撮像光学系の構成について図1乃至図5に基づいて説明する。第1の実施形態を示す図1の撮像光学系は、物体側から順に、開口絞りS、正のパワーを有し物体側に凸面を向けたメニスカス形状である第1レンズL1、正のパワーを有し像面側に凹面を向けたメニスカス形状である第2レンズL2から構成される。
【0014】
第1レンズL1、第2レンズL2の各レンズ面はすべて非球面を有するが、特に第2レンズL2の像面側の非球面は、光軸近傍で像面側に凹形状であり、軸外光束が通過する周辺部で像面側に凸形状である。また、第1レンズL1、第2レンズL2は低分散のプラスチックレンズからなる。
【0015】
第2の実施形態を図2、第3実施形態を図3、第4実施形態を図4に示すが、レンズの構成、非球面の有無と形状、レンズ材質は第1実施形態と同様である。
【0016】
次に、第5実施形態を示す図5の撮像光学系は、物体側から順に、開口絞りS、正のパワーを有し物体側に凸面を向けたメニスカス形状である第1レンズL1、負のパワーを有し像面側に凹面を向けたメニスカス形状である第2レンズL2から構成される。
【0017】
第1レンズL1、第2レンズL2の各レンズ面はすべて非球面を有するが、特に第2レンズL2の像面側の非球面は、光軸近傍で像面側に凹形状であり、軸外光束が通過する周辺部で像面側に凸形状である。また、第1レンズL1、第2レンズL2は低分散のプラスチックレンズからなる。
【0018】
第1乃至5の実施形態には、カバーガラスと赤外線カットフィルタを含むフィルタFが撮像光学系の像面側に設けられている。なお、「パワー」とは焦点距離の逆数で定義される量を表す。
【0019】
ここまで説明した各実施形態における、撮像対象からの光を撮像素子上に結像させる撮像光学系は、物体側から順に、正のパワーを有し物体側に凸面を向けたメニスカス形状の第1レンズと、像面側に凹面を向けた第2レンズからなる2枚のレンズで構成されることより、撮像光学系の全長を短くすることができ、また、射出瞳が像面から遠くなって像面の周辺における入射角度が小さくなり、像面への入射光量を均一にすることができる。
【0020】
また、次の1式を満たす構成にすると良い。
|f2|/f1>15 ・・・式1
ただし、f2は第2レンズL2の焦点距離、f1は第1レンズL1の焦点距離である。
【0021】
式1は、第2レンズL2と第1レンズL1のパワーを適切な範囲に設定して、収差を良好に補正するものである。式1の範囲を越えると、ペッツバール和が補正不足となり、像面湾曲を補正することが困難となる。
【0022】
式1に代えて、式1′の関係を満たすようにすると一層良い。
|f2|/f1>20 ・・・式1′
さらに、式1に代えて、式1″の関係を満たすようにすると一層良い。
|f2|/f1>25 ・・・式1″
また、次の2式を満たす構成にすると良い。
1.3<f/Y<2.2 ・・・式2
ただし、Yは像面での最大像高である。
【0023】
式2は、像面での最大像高に対して全系の焦点距離を適切な範囲に設定して、収差を良好に補正するものである。式2の下限を下回ると、ペッツバール和が補正不足となり、像面湾曲を補正することが困難となる。逆に、式2の上限を上回ると、コマ収差が悪化し、更にペッツバール和が補正過剰になり、解像度が不足する。
【0024】
式2に代えて、式2′の関係を満たすようにすると一層良い。
1.4<f/Y<1.9 ・・・式2′
さらに、式2に代えて、式2″の関係を満たすようにすると一層良い。
1.5<f/Y<1.8 ・・・式2″
また、次の3式を満たす構成にすると良い。
0.15<d1/d12<0.37 ・・・式3
ただし、d1は第1レンズL1の軸上距離、d12は第1レンズL1の物体側面から第2レンズL2の像側面までの軸上距離である。
【0025】
式3は、第1レンズL1の物体側面から第2レンズL2の像側面までの軸上距離に対して第1レンズL1の軸上距離を適切な範囲に設定して、収差を良好に補正するものである。式3の下限を下回ると、球面収差がオーバー側に倒れすぎて、解像度が不足する。逆に、式3の上限を上回ると、球面収差がアンダー側に倒れすぎて、解像度が不足する。
【0026】
式3に代えて、式3′の関係を満たすようにすると一層良い。
0.2<d1/d12<0.35 ・・・式3′
さらに、式3に代えて、式3″の関係を満たすようにすると一層良い。
0.22<d1/d12<0.32 ・・・式3″
また、次の4式を満たす構成にすると良い。
−20<(r11+r12)/(r11−r12)<−2 ・・・式4
ただし、r11は第1レンズL1の物体側の曲率半径、r12は第1レンズL1の像面側の曲率半径である。
【0027】
式4は、第1レンズL1の両面の曲率半径を適切な範囲に設定して、収差を良好に補正するものである。式4の下限を下回ると、コマ収差が悪化し、更にペッツバール和が補正過剰になり、解像度が不足する。逆に、式4の上限を上回ると、ペッツバール和が補正不足となり、像面湾曲を補正することが困難となる。
【0028】
式4に代えて、式4′の関係を満たすようにすると一層良い。
−15<(r11+r12)/(r11−r12)<−3 ・・・式4′
さらに、式4に代えて、式4″の関係を満たすようにすると一層良い。
−10<(r11+r12)/(r11−r12)<−4 ・・・式4″
また、次の5式を満たす構成にすると良い。
2<(r21+r22)/(r21−r22)<200 ・・・式5
ただし、r21は第2レンズL2の物体側の曲率半径、r22は第2レンズL2の像面側の曲率半径である。
【0029】
式5は、第2レンズL2の両面の曲率半径を適切な範囲に設定して、収差を良好に補正するものである。式5の下限を下回ると、像面湾曲と歪曲収差のバランスがとれなくなり、像面の周辺性能の悪化を招く。逆に、式5の上限を上回ると、像面湾曲と歪曲収差のバランスがとれなくなり、像面の周辺性能の悪化を招く。
【0030】
式5に代えて、式5′の関係を満たすようにすると一層良い。
5<(r21+r22)/(r21−r22)<150 ・・・式5′
さらに、式5に代えて、式5″の関係を満たすようにすると一層良い。
10<(r21+r22)/(r21−r22)<100 ・・・式5″
また、第2レンズL2は、像面側が非球面であり、該非球面が光軸近傍で像面側に凹形状であり像面の周辺部で像面側に凸形状であることにより、光軸近傍の凹形状の非球面が光学系の全長を短くし、軸外光束が通過する周辺部の凸形状の非球面が射出瞳位置を像面から遠くすることができる。
【0031】
また、第1レンズL1の物体側に開口絞りが設けられていることにより、光学系の全長を短くしても射出瞳位置を像面から遠くすることができる。
【0032】
また、第1レンズL1と第2レンズL2の各両面が非球面であることにより、球面収差、コマ収差、歪曲収差を補正し、収差性能を良好にすることができる。
【0033】
本発明の撮像光学系は、動画を撮像するデジタルビデオカメラ、テレビ電話用カメラ、ドアホーン用カメラやモバイルコンピュータ、携帯情報端末等の情報処理機器に組み込まれるカメラに採用することも可能である。
【実施例】
【0034】
本発明の撮像光学系の構成を、コンストラクションデータ、収差図を挙げて、更に具体的に説明する。ここで実施例として説明する実施例1乃至5は、前述した第1乃至第5の実施形態にそれぞれ対応している。第1乃至第5の実施形態を表すレンズ構成図(図1乃至5)は、対応する実施例1乃至5のレンズ構成をそれぞれ示している。
【0035】
表1乃至10のコンストラクションデータにおいて、曲率半径をrで示し、物体側から順に番号を付し、軸上間隔をdで示し、物体側からの軸上間隔を表の上から順に表している。屈折率をN、アッベ数をνで示し、物体側からの屈折率、アッベ数を表の上から順に表している。また、屈折率およびアッベ数はd線に対するものであり、屈折率およびアッベ数は空気については省略してある。撮像素子が最終面の後ろに配置されている。全系の焦点距離距離(f)、Fナンバー(Fno)を他のデータとともに示す。焦点距離、曲率半径、軸上間隔の単位はmmである。
【0036】
非球面は次の式6で定義している。
X(H)=C・H2/{1+(1−ε・C2・H21/2}+ΣAk・Hk ・・・式6
ここで、Hは光軸に対して垂直な方向の高さ、X(H)は高さHの位置での光軸方向の変位量(面頂点基準)、Cは近軸曲率、εは2次曲面パラメータ、kは非球面の次数、Akはk次の非球面係数、HkはHのk乗である。非球面に関するデータを示す表2、4、6、8、10に付された文字Eは、該当する数値の指数部分を表し、例えば、1.0E−02であれば1.0×10-2を示す。
【0037】
図6乃至10に収差図を示す。球面収差の線dはd線の収差、線gはg線の収差、線cはc線の収差、線SCは正弦条件不満足量を表している。また、非点収差の線DMおよび線DSはそれぞれメリジオナル面およびサジタル面での収差である。単位は、歪曲の横軸のみ百分率であり、他の軸については全てmmである。
【0038】
条件式に対応する各実施例の値を表11に示し、各実施例はすべて条件式を満たしている。
<実施例1>
【0039】
【表1】

【0040】
[非球面データ]
【0041】
【表2】

【0042】
<実施例2>
【0043】
【表3】

【0044】
[非球面データ]
【0045】
【表4】

【0046】
<実施例3>
【0047】
【表5】

【0048】
[非球面データ]
【0049】
【表6】

【0050】
<実施例4>
【0051】
【表7】

【0052】
[非球面データ]
【0053】
【表8】

【0054】
<実施例5>
【0055】
【表9】

【0056】
[非球面データ]
【0057】
【表10】

【0058】
[条件式対応値]
【0059】
【表11】

【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1実施形態の撮像光学系の構成を示す図。
【図2】第2実施形態の撮像光学系の構成を示す図。
【図3】第3実施形態の撮像光学系の構成を示す図。
【図4】第4実施形態の撮像光学系の構成を示す図。
【図5】第5実施形態の撮像光学系の構成を示す図。
【図6】第1実施形態の撮像光学系の収差を示す図。
【図7】第2実施形態の撮像光学系の収差を示す図。
【図8】第3実施形態の撮像光学系の収差を示す図。
【図9】第4実施形態の撮像光学系の収差を示す図。
【図10】第5実施形態の撮像光学系の収差を示す図。
【符号の説明】
【0061】
L1〜L2 レンズ
S 開口絞り
F フィルタ
r1〜r7 面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの光を撮像素子上に結像させる撮像光学系において、
物体側から順に、正のパワーを有し物体側に凸面を向けたメニスカス形状の第1レンズと、像面側に凹面を向けた第2レンズで構成され、
前記第1レンズの焦点距離をf1、前記第2レンズの焦点距離をf2、全系の焦点距離をf、像面での最大像高をYで表すとき、
|f2|/f1>15、
1.3<f/Y<2.2
の関係を満たすことを特徴とする撮像光学系。
【請求項2】
被写体からの光を撮像素子上に結像させる撮像光学系において、
物体側から順に、正のパワーを有し物体側に凸面を向けたメニスカス形状の第1レンズと、像面側に凹面を向けた第2レンズで構成され、
前記第1レンズの焦点距離をf1、前記第2レンズの焦点距離をf2、前記第1レンズの軸上距離をd1、前記第1レンズの物体側面から前記第2レンズの像側面までの軸上距離をd12で表すとき、
|f2|/f1>15、
0.15<d1/d12<0.37
の関係を満たすことを特徴とする撮像光学系。
【請求項3】
前記第2レンズは、像面側が非球面であり、該非球面が光軸近傍で像面側に凹形状であり周辺部で像面側に凸形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像光学系。
【請求項4】
前記第1レンズの物体側に開口絞りが設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像光学系。
【請求項5】
前記第1レンズと前記第2レンズの両面が非球面であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮像光学系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−322478(P2007−322478A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149528(P2006−149528)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】