説明

撮像素子、これを有する光学機器

【課題】電子ズームにおいて良好な画質を実現できる撮像素子と、これを有する光学機器を提供する。
【解決手段】複数の受光素子を第1方向(H)に沿って配列した受光素子列を前記第1方向と交差する第2方向(W)に沿って配列すると共に、前記受光素子列の前記第2方向の配列ピッチ(Q)を、前記第2方向に沿った複数の前記受光素子列の配列の中央部の配列ピッチが前記第2方向に沿った前記複数の受光素子列の配列の端部の配列ピッチよりも小さくなるようにしたことを特徴とする撮像素子10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子と、これを有する光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラ等の光学機器において、撮像素子の中央部分のみの撮像信号を用いて擬似的に望遠レンズで撮影したように表示する、いわゆる電子ズームにより撮影された画像は、画素が少ない分通常撮影の画像に較べて画質が劣化した画像となってしまう。これを解決するために、撮像素子の所定領域中の画素を周辺部より細分化することで画素密度を高く構成して高倍ズーム時の画質の劣化を低減する撮像素子とこれを用いたカメラが提案されている(例えば、特許技術文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−86183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の撮像素子は、有効画素全体を使用する通常撮影において、画素密度を高くした所定領域中の画素情報を取出す際の駆動パルス周波数を画素密度の低い部分の駆動パルス周波数に比べて画素を細分化した分高くする必要があり、駆動回路が複雑になると言う問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、複数の受光素子を第1方向に沿って配列した受光素子列を前記第1方向と交差する第2方向に沿って配列すると共に、前記受光素子列の前記第2方向の配列ピッチを、前記第2方向に沿った複数の前記受光素子列の配列の中央部の配列ピッチが前記第2方向に沿った前記複数の受光素子列の配列の端部の配列ピッチよりも小さくなるようにしたことを特徴とする撮像素子を提供する。
【0006】
また、本発明は、前記撮像素子を有することを特徴とする光学装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、通常撮影時に駆動パルス周波数の変更が不要で、かつ高倍率電子ズームにおいて良好な画質を実現できる撮像素子と、これを有する光学機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態にかかる撮像素子を搭載した一眼レフカメラの断面概略構成図。
【図2】実施の形態にかかる撮像素子の画素構成を模式的に示す図であり、Aは等倍率(1倍)の撮影範囲、Bは高倍率電子ズームの撮影範囲をそれぞれ示す。
【図3】被写体の一例を示し、Bは図2の高倍率電子ズームに対応する範囲を示す。
【図4】図3のB部を表示部に拡大表示した例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態にかかる撮像素子について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、発明の理解を容易にするためのものに過ぎず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において当業者により実施可能な付加・置換等を施すことを排除することは意図していない。
【0010】
図1は、実施の形態にかかる撮像素子を搭載した一眼レフカメラの断面概略構成図であり、図2は、実施の形態にかかる撮像素子の画素構成を模式的に示す図であり、Aは等倍率(1倍)の撮影範囲、Bは高倍率電子ズームの撮影範囲をそれぞれ示す。図3は、被写体の一例を示し、Bは図2の高倍率電子ズームに対応する範囲を示す。図4は、図3のB部を表示部に拡大表示した例を示す。なお、「電子ズーム」のほかに「クロップ(crop)」も同様である。
【0011】
図1において、後述する実施の形態にかかる撮像素子10を搭載する一眼レフカメラ(以後カメラと略記する)100は、カメラ本体101と着脱可能な撮影レンズ102とから構成されている。カメラ本体102は、撮影レンズ102で集光した不図示の被写体からの光を焦点板104に反射して結像するクイックリターンミラー103と、焦点板104に結像した被写体像を正立化するペンタプリズム105と、焦点板104に結像した被写体像を観察するファインダ106を有している。
【0012】
また、カメラ本体102は、不図示のシャッタが切られたとき、クイックリターンミラー103が撮像光路から退避し、撮像素子10で被写体像を撮像する。撮像素子10の制御および撮像素子10からの画像信号を画像処理するCPU108と、画像処理された被写体像を表示する表示装置107と、画像データを記録するメモリ109を有している。
【0013】
図2に示すように、撮像素子10は、行(H)列(W)の二次元に配列された複数の受光素子(以後、画素(Hi,Wj)と記す)から構成されている。ここでは撮像素子10の画素(Hi,Wj)は、模式的に総画素数192個(行(H)=12、列(W)=16)の場合について説明するが、これに限られないことは言うまでもない。
【0014】
撮像素子10は、画素の行(H)の一端部(原点O)から行(H)方向に沿って行(H)の中央部(H5、W1〜W16)、および他端部(OH)から行(H)方向に沿って行の中央部(H8、W1〜W16)方向に向かって画素のピッチが変わっている。ちなみに、図2の場合、原点Oからの各画素(H1、W1〜W16)、(H2、W1〜W16)、(H11、W1〜W16)、(H12、W1〜W16)の行方向の画素ピッチをPとすると、各画素(H3,W1〜W16)、(H4、W1〜W16)、(H9、W1〜W16)、(H10、W1〜W16)の行方向の画素ピッチは(1/2)×Pピッチ、各画素(H5、W1〜W16)〜(H8、W1〜W16)の行方向の画素ピッチは(1/4)×Pピッチに構成されている。なお、画素ピッチは、上記関係に限定されないことは言うまでもない。
【0015】
また、撮像素子10は、画素の列(W)の一端部(原点O)から列(W)方向に沿って列(W)の中央部(H1〜H12、W5)、および他端部(OW)から列(W)方向に沿って列(W)の中央部(H1〜H12、W12)方向に向かって画素のピッチが変わっている。ちなみに、図2の場合、各画素(H1〜H12、W1)、(H1〜H12、W2)、(H1〜H12、W15)、(H1〜H15、W16)の列方向の画素ピッチをQとすると、各画素(H1〜H12、W3)、(H1〜H12,W4)、(H1〜H12、W13)、(H1〜H12、W14)の列方向の画素ピッチは(1/2)×Qピッチ、各画素(H1〜H12、W5)〜(H1〜H12、W12)の列方向の画素ピッチは(1/4)×Qピッチに構成されている。
【0016】
なお、画素ピッチは、上記関係に限定されないことは言うまでもない。また、画素ピッチは、行(H)方向のみ、あるいは列(W)方向のみを変更しても良い。また、本撮像素子10は、端部の画素(H1、H12)、(W1、W16)から中央部に向かってそれぞれの画素ピッチを徐々に小さくしても良いし、あるいは、画素ピッチを段階的に小さくしても良い。
【0017】
このように、本実施の形態にかかる撮像素子10は、行(H)と列(W)の数を変更することなく、撮像素子10の中央部領域Bの画素密度を大きくすることができる。この結果、従来の撮像素子のように全て等しいピッチで画素を形成した場合に比べ、撮像素子10の中央部領域Bの画素数を多くすることができ、電子ズームで高倍率画像を表示するときの画質の劣化を抑えることができる。
【0018】
例えば、図2において、本撮像素子では行列(H5、W5)〜行列(H8、H12)の領域Bは、画素数が4×8=32画素で形成されているが、12行16列の行列が同じで画素ピッチの一定((0.58P、0.68Q)、同一撮像素子サイズおよび同一画素数の場合)の従来方式の撮像素子では、約14画素分にしかならない。よって、本撮像素子10は、従来の撮像素子の画素数に対して約2.3倍の高画素化を実現している。この結果、撮像素子10では、高倍率電子ズーム領域Bを拡大して表示装置107に表示しても、従来に比較して良好な画質の画像を表示することができる。また、本撮像素子10は、撮影データから印画紙にプリントした際でも高倍率電子ズーム領域Bが高画素化されている分、良好な画像を印刷することができる。
【0019】
図3は、カメラ100の表示装置107被写体像の状態を示している。なお、等倍率の被写体像はファインダ106で確認しても良い。図3の表示装置107は、1倍(領域Aの画素)での被写体像を示しており、破線部Bは高倍率電子ズーム領域を示している。
【0020】
ユーザが、不図示の電子ズームボタンを操作して高倍率を指定したとき、カメラ100は、領域Bの画素(32画素)を取出して、表示装置107上に拡大して表示する。図4は、表示装置107上で高倍率電子ズーム(領域B)の被写体像を表示装置107の全面に表示した状態を示している。領域Bの被写体を表示装置107の全面に表示することで高倍率の電子ズーム画像が表示できる。
【0021】
なお、撮像素子で撮像した画像を表示装置107に表示するとき、一般的に撮像素子の画素数が表示装置の画素数より多いため、画像処理部で画素データの間引き処理が行われて表示装置に画像が表示される。このため、本撮像素子10において等倍率(1倍)画像Aを表示するときの画素ピッチが不等であることによる影響は、所定の間引き処理を行うことによって除くことができる。これにより、本撮像素子10で撮像した画像も従来と同様の歪のない表示画像にすることができる。
【0022】
また、実施の形態にかかる撮像素子10は、行および列それぞれの画素数は、従来(ピッチが一定)の撮像素子の画素数と同じである。この結果、撮像素子10から画素信号を読み出す際の駆動パルス周波数は、従来と同様一定の周波数を使って読み出すことができる。このため、同じ行数および列数の従来の撮像素子との互換性を確保することができ、駆動回路を変更する必要がない。よって従来のカメラ100の撮像素子と本実施の形態の撮像素子10とを置き換えることができる。このように本撮像素子10は、カメラ100の撮像素子と置き換えることで、カメラ100の高倍率電子ズームにおける画質を従来に比べ良好にすることができる。
【0023】
以上述べたように、本実施の形態にかかる撮像素子10、行および列の少なくとも一方に沿って、撮像素子10の端部から中央部方向に画素のピッチを小さく形成することで、撮像素子10の中央部領域の高画素化を達成することができる。
【0024】
また、本撮像素子10は、行数および列数が配列の途中で変わることが無いため、カメラにおける従来の撮像素子との互換性を確保することができる。また、本撮像素子10は、行数および列数が配列の途中で変わることが無いため、従来の駆動回路を使用して画素データを読み出すことができるので、カメラにおける新たな駆動回路の設計製作が不要となる。なお、上記の実施の形態では、一眼レフカメラを例に挙げたが、レフレックスを持たない、いわゆるコンパクトタイプのカメラなどにも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0025】
10 撮像素子
11 画素
H 行
W 列
A 等倍率(1倍)領域
B 高倍率領域
100 一眼レフカメラ(カメラ)
101 撮影レンズ
102 カメラ本体
103 クイックリターンミラー
104 焦点板
105 ペンタプリズム
106 ファインダ
107 表示装置
108 CPU
109 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受光素子を第1方向に沿って配列した受光素子列を前記第1方向と交差する第2方向に沿って配列すると共に、前記受光素子列の前記第2方向の配列ピッチを、前記第2方向に沿った複数の前記受光素子列の配列の中央部の配列ピッチが前記第2方向に沿った前記複数の受光素子列の配列の端部の配列ピッチよりも小さくなるようにしたことを特徴とする撮像素子。
【請求項2】
前記受光素子列の前記第2方向の配列ピッチは、前記画素の前記端部から前記中央部に向かって徐々に小さくなることを特徴とする請求項1に記載の撮像素子。
【請求項3】
前記受光素子の前記第2方向の配列ピッチは、前記画素の前記端部から前記中央部に向かって段階的に小さくなることを特徴とする請求項1に記載の撮像素子。
【請求項4】
前記第2方向に配列された前記複数の受光素子の前記第1方向の配列ピッチは、前記第1方向に沿った前記受光素子列の中央部の配列ピッチが前記第1方向に沿った前記受光素子列の端部の配列ピッチよりも小さいことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の撮像素子。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の撮像素子を有することを特徴とする光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−171619(P2010−171619A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11114(P2009−11114)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】