撮像装置、その制御方法及びプログラム
【課題】車載撮影において、自動的にオートフォーカスや露出制御用の評価領域を設定し、常に安定したピント、安定した露出での撮影を可能にする。
【解決手段】撮像光学系により結像された光学像を映像信号に変換する撮像素子106と、撮像素子106で得られる映像信号から動きベクトルを検出する動きベクトル検出回路114とを備え、カメラマイコン115は、動きベクトルの検出結果に応じてオートフォーカス枠又は測光枠を設定する。この場合に、撮像素子106で得られる映像をx方向及びy方向に複数のブロックに分割し、各ブロックで動きベクトルを検出し、各ブロックで検出した動きベクトルの交点領域をオートフォーカス枠又は測光枠とする。
【解決手段】撮像光学系により結像された光学像を映像信号に変換する撮像素子106と、撮像素子106で得られる映像信号から動きベクトルを検出する動きベクトル検出回路114とを備え、カメラマイコン115は、動きベクトルの検出結果に応じてオートフォーカス枠又は測光枠を設定する。この場合に、撮像素子106で得られる映像をx方向及びy方向に複数のブロックに分割し、各ブロックで動きベクトルを検出し、各ブロックで検出した動きベクトルの交点領域をオートフォーカス枠又は測光枠とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオカメラやデジタルカメラ等の撮像装置、その制御方法及びプログラムに関し、車両や移動体に搭載した車載撮影におけるオートフォーカスや自動露出制御等に適用される。
【背景技術】
【0002】
車両の運転席近傍に取り付けられる車載用ビデオカメラは、ドライブ中、その運転席から見える範囲の映像を常時撮影して記録媒体に記録し、事故が発生した時には、所定の短い時間経過後まで記録した後、その記録を停止するよう構成されている。これにより、事故直前から直後の撮影映像を再生して、その事故が如何なる原因で生じたかを検証することができる。
【0003】
このようなドライブ状態を撮影できる機能を備えたビデオカメラは、業務用車両のみならず、全ての個人の乗用車にも搭載されることが望ましい。しかしながら、このようなビデオカメラは実際には一部のタクシー等の業務用車両にしか搭載されていない。この種のビデオカメラは専用装置であるが故に高価なものであり、個人の乗用車等には搭載し難い。
【0004】
一方で、コンシューマ用ビデオカメラは年々安価になり、主に家庭用として大多数の家庭に普及している。特許文献1には、普及型の手振れ検出センサーを備えたビデオカメラを用いて、車両のドライブ中、その車両の前方の広範囲にわたる情景を容易に撮影、記録できるようにしたビデオステーション、ビデオカメラ、車載用ビデオカメラ装置及び車両が開示されている。
【0005】
従来より、ビデオカメラは、撮影対象物すなわち被写体にピントがあった最適合焦状態で確実に撮影を行うためにオートフォーカスが広く採用されている。オートフォーカスでは、画面の中央部分の測距領域に撮影対象物を位置させることで、上記撮影対象物に対する合焦状態を検出して、撮像光学系の合焦機構を自動調整する。被写体に対する合焦状態を検出する手法としては、合焦位置における撮像出力に含まれる先鋭度情報が最大になることを利用して合焦状態を検出する方式が知られている。
【0006】
また、近年では、画像の手振れ補正等のために、画像信号から動きベクトルを検出する検討が盛んに行われている。この動きベクトルを用いて、被写体の動きを検出し、被写体を追尾して自動合焦を行う被写体追尾方式の自動合焦機能の開発も盛んになりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−261865号公報
【特許文献2】米国特許3890462号明細書
【特許文献3】特公昭60−46878号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】B.K.P. Horn, Artificial Intelligence 17, p.185 〜203 (1981)
【非特許文献2】尾上守夫、情報処理Vol. 17, No.7, p.634 〜 640 July 1976
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来例で説明したビデオカメラでは、車載撮影等に特化した機能は無く、車載撮影には不都合が生じる場合がある。例えば、走行中の撮影の場合、通常の撮影とは異なり、撮影者が常に被写体を狙って撮影しているわけではなく、車体の一部に固定されていることが考えられる。車体に固定されている場合、進行方向に対するカメラの角度や、道路のカーブによっては、主被写体が常に画面の中央部分に存在するとは限らない。このような撮影において、画面の中央部分に測距領域を設定して焦点調節を行った場合、ユーザの意図とは違う被写体にピントが合ってしまい主被写体にボケが生じる可能性がある。
【0010】
また、走行中の撮影の場合、走行方向や速度に応じて、画面内の映像に流れが発生する。測距領域内の映像が流れた場合、測距値の変動が激しく変化して、正しい測距値が得られず、オートフォーカスが安定せず、映像にフワつきが発生してしまう可能性がある。
【0011】
さらに、車載撮影の場合、画面内に車体の一部、又は車内の一部が写り込む状態が発生しやすい。しかしながら、車内と車外の明るさに大きな変化があるため、露出を調整する評価枠の設定を誤ると適正露出にならずに、露出がアンダー又はオーバーな映像が記録されてしまう可能性がある。
【0012】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、車載撮影において、自動的にオートフォーカスや露出制御用の評価領域を設定し、常に安定したピント、安定した露出での撮影を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の撮像装置は、撮像光学系により結像された光学像を映像信号に変換する撮像手段と、前記撮像手段で得られる映像信号から動きベクトルを検出する動きベクトル検出手段と、前記動きベクトルの検出結果に応じて、所定の評価値を得るための当該映像上の評価領域を設定する評価領域設定手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車載撮影において、自動的にオートフォーカスや露出制御用の評価領域を設定し、常に安定したピント、安定した露出での撮影が可能になる。例えばコンシューマ用ビデオカメラを車載撮影のために車体に固定し撮影した場合においても、映像信号から検出される動きベクトルを用いることにより、映像の流れが少ない領域に評価領域を設定することができ、安定した評価値を取得することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態に係る撮像装置であるビデオカメラの構成を示す図である。
【図2】焦点調節制御を示すフローチャートである。
【図3】図2のフローチャートのTV−AF制御の詳細な処理を示すフローチャートである。
【図4】図3のフローチャートの微小駆動モードの詳細な処理を示すフローチャートである。
【図5】微小駆動モードでのフォーカスレンズの動作を示す特性図である。
【図6】図3のフローチャートの山登りモードの詳細な処理を示すフローチャートである。
【図7】山登り駆動モード時のフォーカスレンズの動作を示す特性図である。
【図8】動きベクトルに応じた評価枠の設定を説明するための図である。
【図9】車体の移動と動きベクトルとの関係を示す図である。
【図10】動きベクトルを用いた評価枠の設定判定を示すフローチャートである。
【図11】動きベクトルを用いた評価枠の設定例を示す図である。
【図12】動きベクトルを用いた評価枠の設定例を示す図である。
【図13】動きベクトルを用いた評価枠の設定例を示す図である。
【図14】動きベクトルを用いた評価枠の設定例を示す図である。
【図15】動きベクトルに応じた評価枠の大きさ変更を示す図である。
【図16】動きベクトルに応じた評価枠の設定を示すフローチャートである。
【図17】第2の実施形態に係る撮像装置であるビデオカメラの構成を示す図である。
【図18】露出制御を行う際のプログラム線図を示す図である。
【図19】カメラマイコンに保持される露出制御用のデータテーブルを示す図である。
【図20】露出調節制御を示すフローチャートである。
【図21】動きベクトルの交点領域を利用したAEの重み付けを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るビデオカメラの構成を示す図である。なお、本実施形態ではビデオカメラについて説明するが、本発明はデジタルスチルカメラ等、他の撮像装置への適用も可能である。
【0017】
図1において、101は第1固定レンズである。102は光軸方向に移動して変倍を行う変倍レンズである。103は絞りである。104は第2固定レンズである。105は変倍に伴う焦点面の移動を補正する機能とフォーカシングの機能とを兼ね備えたフォーカスコンペンセータレンズ(以下、フォーカスレンズという)である。これら第1固定レンズ101、変倍レンズ102、絞り103、第2固定レンズ104及びフォーカスレンズ105により撮像光学系が構成される。
【0018】
106は撮像光学系により結像される光学像を映像信号に変換する光電変換素子としての撮像素子であり、CCDセンサやCMOSセンサにより構成される。107はCDS/AGC/ADコンバータであり、撮像素子106の出力をサンプリング、ゲイン調整、デジタル化する。108はカメラ信号処理回路であり、CDS/AGC/ADコンバータ107からの出力信号に対して各種の画像処理を施す。109は表示装置であり、カメラ信号処理回路108からの映像信号を表示する。110は記録装置であり、カメラ信号処理回路108からの映像信号を磁気テープ、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録する。
【0019】
111はAFゲートであり、CDS/AGC/ADコンバータ107からの全画素の出力信号のうち焦点検出に用いられる領域の信号のみを通す。112は焦点信号処理回路であり、AFゲート111を通過した信号から高周波成分や該高周波信号から生成した輝度差成分(AFゲート111を通過した信号の輝度レベルの最大値と最小値の差分)等を抽出して焦点信号を生成する。ここで、焦点信号は、撮像素子106からの出力信号に基づいて生成される映像の鮮鋭度(コントラスト状態)を表すものであるが、鮮鋭度は撮像光学系の焦点状態によって変化するので、結果的に撮像光学系の焦点状態を表す信号となる。
【0020】
113は動きベクトル検出回路であり、映像信号に対して公知の動きベクトル検出処理を施し、映像上の複数の領域に対して動きベクトルを検出処理する。画像の符号化装置や画像触れ補正装置に必要な動きベクトル検出方法としては、特許文献2や特許文献3等に記載の時空間勾配法、或いは相関演算に基づく相関法やブロックマッチング法(テンプレートマッチング法)がある。時空間勾配法については、非特許文献1で詳しく論じられている。また、ブロックマッチング法については、非特許文献2で詳しく論じられている。時空間勾配法は、フレーム(或いはフィールド)間の輝度差dと画面内の画素間の輝度差Δから、画像の動き量をd/Δで表す方法である。これは、カメラから得られる信号がフィールド周期の時間平均であり、画像の動き量が大きいほどエッジが鈍り、画素間の輝度差Δが小さくなる性質を利用し、フレーム(或いはフィールド)間の輝度差dを信号Δで正規化したものである。一方、ブロックマッチング法は、入力画像信号を適当な大きさのブロック(例えば8画素×8ライン)に分割し、ブロック単位に前のフレーム(或いはフィールド)の一定範囲の画素との差を計算する。そして、この差の絶対値の和が最小となる前のフレーム(或いはフィールド)のブロックを探査する。当該ブロックの相対的なずれがそのブロックの動きベクトルを表している。
【0021】
114は交点領域検出回路であり、動きベクトル検出回路113の検出結果に基づいて動きベクトルの交点領域を算出し、その算出結果をカメラ/AFマイコン115に送信する。交点領域検出回路114の処理については後述する。115はカメラ/AFマイコン(以下、カメラマイコンという)である。カメラマイコン115は、動きベクトル検出回路113の検出結果に基づいて、交点領域に焦点検出に用いられる評価枠(評価領域)であるオートフォーカス枠(以下、AF枠と称する)を設定するようにAFゲート111へ情報を送信する。また、カメラマイコン115は、焦点信号処理回路112の出力信号に基づいて、後述するフォーカスレンズ駆動源116を制御してフォーカスレンズ105を駆動するとともに、記録装置110へ画像記録命令を出力する。
【0022】
117は変倍レンズ駆動源であり、変倍レンズ102を移動させるためのアクチュエータ及びそのドライバを含む。116はフォーカスレンズ駆動源であり、フォーカスレンズ105を移動させるためのアクチュエータ及びそのドライバを含む。変倍レンズ駆動源117及びフォーカスレンズ駆動源116は、ステッピングモータ、DCモータ、振動型モータ及びボイスコイルモータ等のアクチュエータにより構成される。
【0023】
次に、カメラマイコン115が実行する焦点調節制御の概要について説明する。図2は、本実施形態における焦点調節制御を示すフローチャートである。まずステップS201で、カメラマイコン115は、TV−AF制御の基本となる焦点信号を取得するためのAF枠の位置及び大きさを設定する。交点領域検出回路114で交点領域が検出された場合は該交点領域にAF枠を設定し、交点領域が抽出されなかった場合は固定のAF枠(初期位置)を設定する。この処理の詳細は図8〜図16を参照して後述する。
【0024】
次にステップS202で、カメラマイコン115の制御下で焦点信号処理回路112より、指定されたAF枠の焦点信号を取得する。このとき、焦点信号処理回路112内のフィルタ係数を設定し、抽出特性の異なる複数のバンドパスフィルタを構築する。抽出特性とはバンドパスフィルタの周波数特性であり、ここでの設定とは焦点信号処理回路112内のバンドパスフィルタの設定値を変更することを意味する。
【0025】
次にステップS203で、カメラマイコン115は、TV−AF制御により焦点調節を行う。この処理の詳細は図3を参照して後述する。その後、ステップS201へ戻る。
【0026】
図3は、図2のステップS203で実行されるTV−AF制御の詳細を示すフローチャートである。まずステップS301で、カメラマイコン115は、微小駆動モードであるかどうかを判別し、微小駆動モードである場合はステップS302へ遷移し、微小駆動モードでない場合はステップS308へ遷移する。ステップS302で、カメラマイコン115は微小駆動動作を行い、フォーカスレンズ105を所定の振幅で駆動し、合焦しているか、或いはどちらの方向に合焦点が存在するかを判別する。この処理の詳細は図4及び図5を参照して後述する。ステップS303で、カメラマイコン115は、ステップS302の微小駆動動作によって合焦判別が成功したかどうかを判別し、成功した場合はステップS306へ遷移し、成功しない場合はステップS304へ遷移する。ステップS304で、カメラマイコン115は、ステップS302の微小駆動動作によって方向判別が成功したかどうかを判別する。方向判別が成功した場合はステップS305へ遷移して山登り駆動モードへ移行し、成功しない場合はステップS301へ戻り、微小駆動モードを継続する。ステップS306で、カメラマイコン115は、合焦時の焦点信号レベルをカメラマイコン115内のメモリに格納した後、ステップS307へ遷移して再起動判定モードへ移行する。
【0027】
一方、ステップS308で、カメラマイコン115は、山登り駆動モードであるかどうかを判別し、山登り駆動モードである場合はステップS309へ遷移し、山登り駆動モードでない場合はステップS313へ遷移する。ステップS309で、カメラマイコン115は山登り駆動動作を行い、焦点信号が大きくなる方向へ所定の速度でフォーカスレンズ105を山登り駆動する。この処理の詳細は図6及び図7を参照して後述する。ステップS310で、カメラマイコン115は、ステップS309の山登り駆動動作によって焦点信号のピーク位置が発見されたかどうかを判別する。発見された場合はステップS311へ遷移し、発見されない場合はステップS301へ戻り、山登り駆動モードを継続する。ステップS311で、カメラマイコン115は、焦点信号がピークとなったフォーカスレンズ105の位置を目標位置に設定した後、ステップS312へ遷移し、停止モードへ移行する。
【0028】
一方、ステップS313で、カメラマイコン115は、停止モードであるかどうかを判別し、停止モードである場合はステップS314へ遷移し、停止モードでない場合はステップS316へ遷移する。ステップS314で、カメラマイコン115は、フォーカスレンズ105が焦点信号のピークとなる位置に戻ったかどうかを判別する。ピークとなる位置に戻った場合はステップS315へ遷移し、微小駆動(合焦判別)モードへの移行し、ピークとなる位置に戻っていない場合はステップS301へ戻り、停止モードを継続する。
【0029】
一方、ステップS316で、カメラマイコン115は、現在の焦点信号レベルとステップS306で保持した焦点信号レベルとを比較し、その変動量が所定値より大きいかどうかを判別する。変動量が大きい場合はステップS317へ遷移し、微小駆動(方向判別)モードへの移行を行い、変動量が大きくない場合はステップS301へ戻り、再起動判定モードを継続する。
【0030】
図3のステップS302で実行される微小駆動モードの詳細な処理について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、図3のステップS302で実行される微小駆動モードの詳細な処理を示すフローチャートである。ステップS401で、カメラマイコン115は、微小駆動の動作状態を示すカウンタが現在0であるかどうかを判別し、0である場合はステップS402へ遷移し、0でない場合はステップS403へ遷移する。ステップS402で、カメラマイコン115は、フォーカスレンズ105が至近側にある場合の処理として、現在のAF評価値レベルを保持する。ここでのAF評価値は、後述のステップS410でフォーカスレンズ105が無限側にあるときに撮像素子106に蓄積された電荷から生成された画像信号によるものである。
【0031】
ステップS403で、カメラマイコン115は、現在のカウンタが1であるかどうかを判別し、1である場合はステップS404へ遷移し、1でない場合はステップS409へ遷移する。ステップS404で、カメラマイコン115は、後述のステップS408でフォーカスレンズ105を駆動するための振動振幅、中心移動振幅を演算する。通常、これらの振幅は焦点深度内に設定されるのが一般的である。ステップS405で、カメラマイコン115は、ステップS402で保持した無限側のAF評価値レベルと後述のステップS410で保持した至近側のAF評価値レベルを比較する。その結果、前者が大きい場合はステップS406へ遷移し、後者が大きい場合はステップS407へ遷移する。ステップS406で、カメラマイコン115は、振動振幅と中心移動振幅を加算し、駆動振幅とする。一方、ステップS407で、カメラマイコン115は、振動振幅を駆動振幅とする。ステップS408で、カメラマイコン115は、ステップS406又はステップS407で求めた駆動振幅に基づき、無限方向へ駆動する。
【0032】
ステップS409で、カメラマイコン115は、現在のカウンタが2であるかどうかを判別し、2である場合はステップS410へ遷移し、2でない場合はステップS411へ遷移する。ステップS410で、カメラマイコン115は、フォーカスレンズ105が無限側にある場合の処理として、現在のAF評価値レベルを保持する。ここでのAF評価値は、ステップS402でフォーカスレンズ105が至近側にあるときに撮像素子106に蓄積された電荷から生成された画像信号によるものである。ステップS411で、カメラマイコン115は、後述のステップS415でフォーカスレンズ105を駆動するための振動振幅、中心移動振幅を演算する。通常、これらの振幅は焦点深度内に設定されるのが一般的である。ステップS412で、カメラマイコン115は、ステップS410で保持した至近側のAF評価値レベルとステップS402で保持した無限側のAF評価値レベルを比較する。その結果、前者が大きい場合はステップS413へ遷移し、後者が大きい場合はステップS414へ遷移する。ステップS413で、カメラマイコン115は、振動振幅と中心移動振幅を加算し、駆動振幅とする。一方、ステップS414で、カメラマイコン115は、振動振幅を駆動振幅とする。ステップS415で、カメラマイコン115は、ステップS413又はステップS414で求めた駆動振幅に基づき、至近方向へ駆動する。
【0033】
ステップS416で、カメラマイコン115は、現在方向判別モードであるかどうかを判別し、方向判別モードである場合はステップS417へ遷移し、方向判別モードでない場合はステップS419へ遷移する。ステップS417で、カメラマイコン115は、所定回数連続して同一方向に合焦点が存在しているかどうかを判別し、そうである場合はステップS418へ遷移し、そうでない場合はステップS421へ遷移する。ステップS418で、カメラマイコン115は向判別ができたものと判断する。一方、ステップS419で、カメラマイコン115は、フォーカスレンズが所定回数同一エリアで往復しているかどうかを判別し、そうである場合はステップS420へ遷移し、そうでない場合はステップS421へ遷移する。ステップS420で、カメラマイコン115は合焦判別できたものと判断する。ステップS421で、カメラマイコン115は、微小駆動の動作状態を示すカウンタが3であれば0に戻し、その他の値であればカウンタを加算する。
【0034】
図5は、微小駆動モードでのフォーカスレンズ105の動作を示す特性図である。上の図は画像信号の垂直同期信号を示し、下の図は横軸が時間、縦軸がフォーカスレンズ105の位置を表している。ラベルAの時刻に撮像素子106に蓄積された電荷に対するAF評価値EVAは、時刻TAでカメラマイコン115に取り込まれる。また、ラベルBの時刻に撮像素子106に蓄積された電荷に対するAF評価値EVBは、時刻TBでカメラマイコン115に取り込まれる。時刻TCではAF評価値EVAとEVBとを比較し、EVBが大きい場合のみ振動中心を移動する。なお、ここでのフォーカスレンズ105の移動は焦点深度を基準とし、画面で認識できない移動量に設定する。
【0035】
図3のステップS308で実行される山登り駆動モードの詳細な処理について、図6及び図7を参照して説明する。図6は、図3のステップS308で実行される山登り駆動モードの詳細な処理を示すフローチャートである。ステップS601で、カメラマイコン115はフォーカスレンズ105の駆動速度を設定する。ステップS602で、カメラマイコン115は、現在のAF評価値レベルが前回より増加しているかどうかを判別し、増加している場合はステップS603へ遷移し、増加していない場合はステップS604へ遷移する。ステップS603で、カメラマイコン115は、ステップS601で設定した速度に基づき、フォーカスレンズ105を前回と同じ方向に山登り駆動する。
【0036】
ステップS604で、カメラマイコン115は、AF評価値レベルがピーク位置を越えたかどうかを判別し、ピーク位置を超えた場合はステップS605へ遷移し、ピーク位置を超えていない場合はステップS606へ遷移する。ステップS605で、カメラマイコン115はピーク位置を発見したものと判断する。ステップS606で、カメラマイコン115は、ステップS601で設定した速度に基づき、フォーカスレンズ105を前回と逆の方向に山登り駆動する。なお、山登り駆動モードでこのステップS606を繰り返している場合、被写体のAF評価値の変化量が十分に得られないためにフォーカスレンズ105がハンチング状態にあることを意味する。
【0037】
図7は、山登り駆動モードでのフォーカスレンズ105の動作を示す特性図である。横軸がフォーカスレンズ105の位置、縦軸が焦点信号を表している。フォーカスレンズ105が範囲Aで駆動している場合はAF評価値が増加しているため、同じ方向への山登り駆動を継続する。ここで、フォーカスレンズ105を範囲Bで駆動するとAF評価値はピーク位置を越えて減少する。このとき、合焦点が存在するとして山登り駆動動作を終了し、フォーカスレンズ105をピーク位置まで戻した後、微小駆動動作に移行する。一方、範囲Cのようにピーク位置を越えずにAF評価値が減少した場合は駆動すべき方向を間違えたものとして反転し、山登り駆動動作を継続する。
【0038】
このように、TV−AF方式による焦点調節制御では、再起動判定→微小駆動→山登り駆動→停止→微小駆動→再起動判定を繰り返しながらフォーカスレンズ105を移動させることで、AF評価値が常に最大となるように合焦状態を維持する。
【0039】
以下、図8〜図16を参照して、動きベクトルの検出結果に応じたAF枠の設定方法について説明する。これは、図2のステップS201におけるAF枠の領域情報の決定処理の詳細な説明である。図8(a)は入力画像であり、x方向及びy方向に[7*5]のブロックに分割されている。進行方向は画像奥方向である。図8(b)は各ブロックで動きベクトルを検出した結果を示す。このような動きベクトルの分布図を一般にオプティカルフロー図と呼ぶ。画面奥方向に進行しているため、動きベクトルは進行方向を中心に放射状になる。図8(c)は動きベクトルの値を(x成分、y成分)に変換して表示したものである。この各々の成分に変換した値を用いて、評価枠を決定する。図8(d)は評価枠の設定方法を簡易的に示したものである。各々の動きベクトルは放射状に出ているため、動きベクトルの交点領域は領域Sであることが分かる。この動きベクトルの交点領域を評価枠とすることにより、安定したAF評価値の取得ができ、適切なオートフォーカスを行うことが可能になる。以下、その評価枠の設定方法について説明を行う。
【0040】
まず、動きベクトルに応じた評価枠の移動は常時行う必要はなく、車載カメラとして車体の一部に固定された状態で、且つ車体が移動している場合のみ行う処理である。図9、図10を参照して、評価枠の設定において、初期位置の評価枠を用いるか、動きベクトルに応じた評価枠を用いるかの切り替えを行う処理を説明する。
【0041】
図9は、初期位置の評価枠を用いるか、動きベクトルに応じた評価枠を用いるかの切り替えの判断を簡易的に示した図である。図8(a)が入力画像である場合に、図9(a)は車体が画像奥方向に駆動した初期状態を模した図である。画面の中央部分は画像の流れが少ないため、動きベクトルの発生は少ない。画面の端部分は画像の変化が大きいため、動きベクトルの発生がある。図9(b)は車体が加速した状態を模した図である。車体の移動量が増えたため、画面の内側部分の動きベクトルが発生する。画面の端部分は移動量が増えたことにより、動きベクトルの強度が増える傾向にある。図9(c)はさらに車体が加速した状態を模した図である。画面中央を除き、動きベクトルが発生する。このように、車体が停止から駆動状態に移行する際、動きベクトルは車体の移動量に伴い増加する。これを利用して、同じ領域内の動きベクトルの増加を監視し、動きベクトルの所定時間の増加が確認できた場合は、車体が駆動していると判断し、動きベクトルに応じた評価枠の設定を行う処理に移行する。図9(d)は、画面内のある領域の動きベクトルの変化を示した図である。本実施形態では、動きベクトルのサンプル間隔において、K回連続して増加した場合を、車体の移動が開始したと判断することとしている。
【0042】
図10は、動きベクトルを用いた評価枠の設定判定のフローチャートである。ステップS1002で、カメラマイコン115は、映像から動きベクトルが検出できたかどうかを判断する。動きベクトルが検出された場合はステップS1003へ遷移し、動きベクトルが検出されなかった場合はステップS1012へ遷移する。
【0043】
ステップS1003で、カメラマイコン115は、検出された動きベクトルを3次元配列Vector_x[n][h][i]、Vector_y[n][h][i]に格納する。hはx軸方向の動きベクトルの検出領域数、iはy軸方向の動きベクトルの検出領域数を示し、nは記憶した配列の番号を示している。格納する方法は、動きベクトルをx成分、y成分に分割し、それぞれを格納する。格納後、ステップS1004に遷移する。ステップS1004で、カメラマイコン115は配列の番号を示すnをインクリメントし、n+1とする。ステップS1005で、カメラマイコン115はnが1を超えているかどうかを判断する。nが1を超えている、すなわち1を超える数の動きベクトルがすでに格納されている場合はステップS1006へ遷移し、そうでない場合はステップS1012へ遷移する。
【0044】
ステップS1006で、カメラマイコン115は、n−1(1つ前)に格納した各々の動きベクトル検出領域のベクトル成分を比較し、ベクトルの成分が増加しているかどうかを判断する。ベクトルの比較は、各々の差分を抽出し、減少・増加の判断を行う。比較後、ステップS1007へ遷移する。
【0045】
ステップS1007で、カメラマイコン115は、動きベクトル検出領域の何%が増加しているかの確認を行う。本実施形態では、全検出領域の約60%以上が増加である場合を閾値Th1と設定することとするが、閾値Th1の値は十分な測定を行い、任意の値に設定することが可能である。全体の領域数Vsum=h*iに対して、増加している領域をカウントし、その領域数をVnumとする。増加割合[%]=Vnum÷Vsum×100で算出し、増加割合>Th1以上であれば、全体の動きベクトルの増加が確認されたとし、ステップS1008へ遷移する。そうでない場合はステップS1009へ遷移する。ステップS1009では、カメラマイコン115は、ベクトルの増加回数をカウントするVCountを0に初期化する処理を行い、ステップS1012へ遷移する。
【0046】
ステップS1008で、カメラマイコン115は、ベクトルの増加回数をカウントするVCountをインクリメントし、ステップS1010へ遷移する。ステップS1010で、カメラマイコン115は、ベクトルの増加カウントVCountがK回連続で増加したかどうかを判断する。本実施形態では、閾値Kの値を30回(実時間0.5秒に相当)に設定するが、閾値Kの値は十分な測定を行った上で任意の値に設定することが可能である。つまり、動きベクトルが増加傾向にある場合、具体的には動きベクトルの増加が連続して0.5秒間以上発生した場合は、車体がいずれかの方向に駆動中であると判断し、ステップS1011へ遷移する。そうでない場合はステップS1012へ遷移する。ステップS1011で、カメラマイコン115は、評価枠を動きベクトルに応じて変更する処理を行う。この処理の詳細は図11を参照して後述する。
【0047】
ステップS1012では、動きベクトルの増加が連続して0.5秒間以上発生していない、又は、動きベクトルが発生していない等の、動きベクトルに応じて評価枠を移動できない状態であるため、初期位置にある評価枠を設定することとする。
【0048】
図11は、動きベクトルに応じて評価枠を設定する領域である動きベクトルの交点領域の算出方法を示す図である。図11(a)は入力画像である。図11(b)は動きベクトルを図示したオプティカルフロー図である。図11(c)は動きベクトルを各成分に分割したものである。L1は画像内のx成分のみを抽出し、その成分の値をグラフ化したものである。座標x=1から7に向けてx成分は大きくなり、座標x=4でゼロクロス点があることを確認できる。これは、座標x=4を中心として、放射状に動きベクトルが発生しているためである。よって、x成分のグラフのゼロクロス点を求めることにより、動きベクトルのx方向の交点領域が特定できる。同様に、L2は画像内のy成分のみを抽出し、その成分の値をグラフ化したものである。座標y=1から5に向けてy成分は大きくなり、座標y=3でゼロクロス点があることを確認できる。これは、座標y=3を中心として、放射状に動きベクトルが発生しているためである。よって、y成分のグラフのゼロクロス点を求めることにより、動きベクトルのy方向の交点領域が特定できる。以上のように、図11(a)の入力画像は、座標(4,3)の位置に、動きベクトルの交点領域があると推測でき、その領域はもっとも動きベクトルが少なくなる。この座標(4,3)に評価枠を設定することにより、安定した評価値が得られ、適切なオートフォーカスが可能になる。このような処理を行うことにより、入力画像から、動きベクトルの交点領域を特定することが可能になる。
【0049】
図11では動きベクトルの交点領域が画像の中心にある例を示したが、続いて、交点領域が画像の中心以外にある例を示す。図12(a)は入力画像である。この画像は、進行方向の先にカーブがある場合や、カメラが進行方向に対してある程度の角度を持って設置されていた場合に起こりうる画像である。図12(b)は動きベクトルを図示したオプティカルフロー図である。図12(c)は動きベクトルを各成分に分割したものである。L3は画像内のx成分のみを抽出し、その成分の値をグラフ化したものである。座標x=1から7に向けてx成分は大きくなり、座標x=6でゼロクロス点があることを確認できる。これは、座標x=6を中心として、放射状に動きベクトルが発生しているためである。よって、x成分のグラフのゼロクロス点を求めることにより、動きベクトルのx方向の交点領域が特定できる。同様に、L4〜L6は、画像内のy成分のみを抽出し、その成分の値をグラフ化したものである。座標y=1から5に向けてy成分は大きくなり、座標y=3でゼロクロス点があることを確認できる。これは、座標y=3を中心として、放射状に動きベクトルが発生しているためである。よって、y成分のグラフのゼロクロス点を求めることにより、動きベクトルのy方向の交点領域が特定できる。ただし、交点から遠くなるほど、動きベクトルは平行になる性質があるため、X座標1行目の値をグラフ化したL6は、X座標3〜7行目の値をグラフ化したL4に比べてy成分の変化が小さくなる。仮に、y成分の変化が小さくなり、ゼロクロス点を持たない場合は、その行の値を無視し、他の行のゼロクロス点を参考にし、交点を求めることとする。以上のように、図12(a)の入力画像は、座標(6,3)の位置に、動きベクトルの交点領域があると推測できる。
【0050】
続いて、画面内にボンネットや室内等の写りこみがある例を示す。図13(a)は入力画像であり、物体Pは常時写りこんでいる被写体である。図13(b)は動きベクトルを図示したオプティカルフロー図である。物体Pは動きを持たないので、動きベクトルは発生していないことが確認できる。図13(c)は動きベクトルを各成分に分割したものである。L7はy座標2〜5列目のy成分のみを抽出し、その成分の値をグラフ化したものである。座標x=1から7に向けてx成分は大きくなり、座標x=4でゼロクロス点があることを確認できる。これは、座標x=4を中心として、放射状に動きベクトルが発生しているためである。L8はy座標1列目のx成分をグラフ化したものである。1列目は、物体Pにより、動きベクトルを持たないため、グラフにゼロクロス点が存在しない。よって、ゼロクロス点が存在しないグラフは無視し、y座標2〜5列目のゼロクロス点からベクトルの交点を求めることとする。よって、x成分のグラフのゼロクロス点はx=4となる。同様に、図13のL9はx座標6〜7列目のy成分のみを抽出し、その成分の値をグラフ化したものである。座標y=1から5に向けてy成分は大きくなり、座標y=3でゼロクロス点があることを確認できる。これは、座標y=3を中心として、放射状に動きベクトルが発生しているためである。L10はx座標1〜5列目のy成分のみを抽出し、その成分の値をグラフ化したものである。これも同様に、座標y=3にてゼロクロス点を持つ。以上のように、図13(a)の入力画像は、座標(4,3)の位置に、動きベクトルの交点領域があると推測できる。
【0051】
図14(a)は入力画像である。図14(b)は動きベクトルを図示したオプティカルフロー図である。図14(c)は動きベクトルを各成分に分割したものである。L11は、画像のx成分のみを抽出し、その成分の値をグラフ化したものである。x成分の変化はなく、ゼロクロス点も持たないことが分かる。また、L12はy成分をグラフ化したものである。同様にy成分の変化はなく、ゼロクロス点も持たないことが分かる。以上のように、図14(a)の入力画像は、ゼロクロス点を持たないため、動きベクトルの交点領域は存在しない。その場合は、画面全体に流れが発生していると判断し、初期位置にある評価枠の大きさを動きベクトルに応じて変更する。
【0052】
図15は、動きベクトルに応じた評価枠の大きさ変更を示す図である。図15(a)、図15(b)に示すように、動きベクトルが所定量Th2を越えた場合に、初期の評価枠Qから、評価枠Rのように大きさを動きベクトルに応じて変更する。これにより、画像の流れが発生した場合でも、評価枠を大きくすることにより、評価値の変動を少なくすることが可能になり、安定したオートフォーカスが可能になる。また、図15(c)に示すように動きベクトルが所定量Th3を越えた場合は、画像の流れが大きく、評価枠を大きく設定しても、評価値が安定しない。よって、評価枠の設定を行わず、前のピント状態を維持し、ピントのフワつきを防ぐ。なお、上記説明した処理の流れは図16のフローチャートを用いて説明する。
【0053】
図16は、動きベクトルに応じた評価枠の設定するための処理である。ステップS1602で、カメラマイコン115は、座標xのj行目のx軸方向の動きベクトルの成分の抽出を行う。成分の個数はシステムによって異なるが、本実施形態では、7*5の検出領域を用いているため、成分の個数は7個ということになる。抽出が終了後、ステップS1603へ遷移する。ステップS1603で、カメラマイコン115は、抽出された成分の描く曲線のゼロクロス点となる領域の算出を行う。算出方法の一例は、座標x=1から7の方向に向かい、値が増加又は減少していることを確認し、値が0を超える、或いは、符号が切り替わる点をゼロクロス点として特定する。ゼロクロス点が特定できない場合、x=0とする。ゼロクロス点の算出後、ステップS1604へ遷移する。ステップS1604で、カメラマイコン115はj行目の値を1つインクリメントする。
【0054】
ステップS1605で、カメラマイコン115は、画像内のすべての行において、算出が終了したかどうかの確認を行う。jが検出枠数よりも大きい場合は、すべての列の算出が終了したとして、ステップS1606へ遷移する。そうでない場合はステップS1602へ遷移して、同様の処理を繰り返す。
【0055】
ステップS1606で、カメラマイコン115は、上記の処理によって算出されたx成分の交点領域の座標の決定を行う。図11の例では、j行すべてが同じ成分であったため、交点領域は1つに求まったが、図13に示すような入力画像の場合は、交点領域候補が2点以上特定できる場合がある。その場合は、j行中で過半数を占めるゼロクロス点を採用し、その他の点は無視することとする。特定された点をXcrossとし、ステップS1607へ遷移する。
【0056】
ステップS1607で、カメラマイコン115は、座標yのk列目のy軸方向の動きベクトルの成分の抽出を行う。成分の個数はシステムによって異なるが、本実施形態では、7*5の検出領域を用いているため、成分の個数は5個ということになる。抽出が終了後、ステップS1608へ遷移する。ステップS1608で、カメラマイコン115は、抽出された成分の描く曲線のゼロクロス点となる領域の算出を行う。算出方法の一例は、座標y=1から5の方向に向かい、値が増加又は減少していることを確認し、値が0を超える、或いは、符号が切り替わる点をゼロクロス点として特定する。ゼロクロス点が特定できない場合、y=0とする。ゼロクロス点の算出後、ステップS1609へ遷移する。ステップS1609で、カメラマイコン115はk行目の値を1つインクリメントする。
【0057】
ステップS1610で、カメラマイコン115は、画像内のすべての列において、算出が終了したかどうかの確認を行う。kが検出枠数よりも大きい場合は、すべての列の算出が終了したとして、ステップS1611へ遷移する。そうでない場合はステップS1607へ遷移して、同様の処理を繰り返す。
【0058】
ステップS1611で、カメラマイコン115は、上記の処理によって算出されたy成分の交点領域の座標の決定を行う。図11の例では、k列すべてが同じ成分であったため、交点領域は1つに求まったが、図13に示すような入力画像の場合は、交点領域候補が2点以上特定できる場合がある。その場合は、k列中で過半数を占めるゼロクロス点を採用し、その他の点は無視することとする。特定された点をYcrossとし、ステップS1612へ遷移する。
【0059】
ステップS1612で、カメラマイコン115は、上記で特定されたベクトルの交点領域の確認を行う。上記の処理において、交点領域(Xcross,Ycross)が算出された場合はステップS1616へ遷移する。上記の処理において、交点が特定できなかった場合、つまり、交点領域(0,0)であった場合はステップS1613へ遷移する。ステップS1616で、カメラマイコン115は、交点領域が求まっているため、評価枠を交点領域(Xcross,Ycross)に設定し、処理を終了する。一方、交点領域が特定できなかった場合は、カメラが進行方向に向かって固定されていない、もしくは右折や左折等により映像がすべて流れている等が考えられる。この場合、動きベクトルの量に応じて、評価枠を変更する処理を行う。変更方法は、図15を用いて既に説明済みであるため省略する。
【0060】
ステップS1613で、カメラマイコン115は、交点領域が特定できなかった場合、画面内の動きベクトルの方向を確認する。画面内の動きベクトルが同一方向に向いている場合はステップS1614へ遷移する。そうでない場合はステップS1617へ遷移する。ステップS1614では、動きベクトルの大きさがTh2以上であるかどうかを確認する。Th2以上である場合は、画面内の映像の流れが大きく、評価値が安定できないと判断し、ステップS1615へ遷移する。そうでない場合はステップS1617へ遷移する。ステップS1617で、カメラマイコン115は、交点領域が特定できない、又は、動きベクトルが小さいという状況であるため、評価枠は初期位置のままで評価値の取得を行う。よって、評価枠を初期位置に設定し、処理を終了する。
【0061】
ステップS1615で、カメラマイコン115は、動きベクトルの大きさがTh3以上であるかのどうかを確認する。Th3以上である場合は、画面内の映像からは、適切な評価値は算出できないと判断し、ステップS1619へ遷移する。そうでない場合はステップS1618へ遷移する。ステップS1618で、カメラマイコン115は、動きベクトルが所定量Th2以上Th3以下あるため、評価枠を大きくして安定した評価値の取得を処理である。評価枠の大きさは図15(a)のグラフに基づき設定することとする。評価枠の設定後、処理を終了する。ステップS1619で、カメラマイコン115は、動きベクトルが所定量Th3以上あるため、画像から適切な評価値は取得できないので、評価枠を設定しない。さらに、画像のボケ・フワつきを抑えるためにオートフォーカスの制御は行わず前の状態でフォーカスをロックする。
【0062】
以上のように、車載撮影において、自動的にAF枠を設定し、常に安定したピントでの撮影が可能になる。例えばコンシューマ用ビデオカメラを車載撮影のために車体に固定し撮影した場合においても、映像から求まる動きベクトルを用いることにより、映像の流れが少ない領域にAF枠を設定することができ、安定した評価値を取得することが可能になる。
【0063】
カメラが進行方向に対して斜めに固定されている場合や、進行方向にカーブがある場合は、画像の中心画像は流れてしまうが、動きベクトルから交点領域を特定することにより、撮影の主被写体になるであろう進行方向の画像の流れが少ない領域に評価枠を設定することができる。これにより、カメラを固定した状態でも、適切な撮影を行うことが可能になる。
【0064】
また、画像から求まる動きベクトルから交点領域を特定することにより、車体の移動による画像の流れが発生している領域を避け、画像の流れが少ない領域に評価枠を設定することができる。
【0065】
さらに、画像の一部に車体、もしくは車内の一部が写りこんでいるような状態であっても、動きベクトルから交点領域を特定することにより、車外の画像の流れが少ない領域に評価枠を設定することができ、安定したピント、安定した露出での撮影が可能になる。
【0066】
<第2の実施形態>
図17は、第2の実施形態に係るビデオカメラの構成を示す図である。なお、本実施形態ではビデオカメラについて説明するが、本発明はデジタルスチルカメラ等、他の撮像装置への適用も可能である。以下では、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、第1の実施形態に係るビデオカメラと同様の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0067】
118は絞り部材駆動源であり、絞り103を駆動させるためのアクチュエータ及びそのドライバを含む。119はレンズから入射する光を減衰させるためのNDフィルタである。120はND部材駆動源であり、NDフィルタ119を駆動させるためのアクチュエータ及びそのドライバを含む。
【0068】
121は測光枠設定回路であり、CDS/AGC/ADコンバータ107からの全画素の出力信号のうち測光値検出に用いられる領域の信号のみを通す。122は輝度情報検波・演算回路であり、デジタルの画像データに基づいて輝度値を検波し、検波した輝度値を演算処理する。123は撮像素子駆動回路である。
【0069】
第1の実施形態と同様に、交点領域検出回路114は、動きベクトル検出回路113の検出結果に基づいて動きベクトルの交点領域を算出し、その算出結果をカメラマイコン115に送信する。カメラマイコン115は、交点領域に測光値検出に用いられる評価枠(評価領域)である測光枠を設定するように測光枠設定回路121へ情報を送信する。その後、画面内の測光枠の輝度値を取得するため、輝度情報検波・演算回路122により測光値を取得し、測光した測光値を演算により正規化する。このとき、同時に画面全体の測光値も輝度情報検波・演算回路122により演算を行う。そして、カメラマイコン115で測光値と適正な露出が得られるように設定された目標値との差分を算出する。その後、算出した差分からカメラマイコン115により絞りの補正駆動量を算出し、絞り部材駆動源118、ND部材駆動源120の駆動を制御する。
【0070】
次に、カメラマイコン115が実行する露出調節制御の概要について説明する。図20は、本実施形態における露出調節制御を示すフローチャートである。まずステップS2001で、カメラマイコン115の制御下で輝度情報検波・演算回路122より、露出制御の基本となる輝度信号を取得するための測光枠の位置と大きさを設定する。測光枠の大きさは、交点領域検出回路114において、交点領域が検出された場合は、該交点領域を測光枠位置と設定する。交点領域が抽出されなかった場合は、固定の測光枠(初期位置:中央重点測光)を評価枠と設定する。なお、この交点領域の特定方法の詳細は第1の実施形態にて説明済みであるため省略する。
【0071】
ステップS2002で、カメラマイコン115は、指定された測光枠の輝度信号を取得する。この処理の詳細は図21を参照して後述する。
【0072】
ステップS2003で、カメラマイコン115は、露出制御により輝度調整を行う。この処理の詳細は図18を参照して後述する。その後、ステップS2001へ戻り、この処理を繰り返す。
【0073】
ステップS2002における測光枠の輝度情報の取得について、図21を参照して説明する。図21(a)は、図11(a)の入力画像に動きベクトルを図示したオプティカルフロー図である。領域Sは、ステップS2001において複数の動きベクトルから特定されるベクトルの交点領域を示したものである。図21(b)は、カメラマイコンに記録されているAEの重み付け、AEウエイティングを示したものである。AEウエイティングについては後述することとする。ステップS2001によって特定された交点領域を中心に、領域S´のAEの重み付けを1とし、その周辺の重み付けを半分の0.5にしている。こうすることにより、交点領域を中心とした、画像に流れの少ない部分の測光値が取得でき、安定した露出制御が可能になる。なお、この設定は一例であり、十分な測定を行いその結果に基づいて、適切な露出が得られる値に設定を変更することも可能である。同様に、図21(c)は、図12(a)の入力画像に動きベクトルを図示したオプティカルフロー図である。図21(d)も上述の通り、領域Sを中心に重み付けを行っている。重み付けは図のとおりであるため、その説明を省略する。
【0074】
次に、ステップS2003における露出制御について説明する。撮影レンズからの光学像が絞り103を介して、撮像素子106にて光電変換され、CDS/AGC/ADコンバータ107を経て映像子音号となり、カメラ信号処理回路108に送られる。露出制御するための信号は、AGC回路より出力された輝度信号を測光枠設定回路121を通り、輝度情報検波・演算回路122を経て、カメラマイコン115に取り込まれる。カメラマイコン115は、そのレベルが所定の範囲内に入るように、絞り部材駆動源118を制御し、絞り103へと出力する。駆動電流を制御して、絞り103の開口量を可変する絞り制御により露出制御が行われる。
【0075】
CDS/AGC/ADコンバータ107による露出制御系は、絞り103による露出制御系同様、前記カメラマイコン115に取り込まれた輝度情報検波・演算回路122の出力レベルが所定の範囲内に入るように、CDS/AGC/ADコンバータ107のゲインのレベルを、カメラマイコン115にて制御することによる閉ループにより露出制御系が構成されている。
【0076】
シャッタ速度による露出制御系は、絞り103による露出制御系同様、カメラマイコン115に取り込まれたレベルが所定の範囲内に入るように、撮像素子駆動回路123をカメラマイコン115にて制御することによる閉ループにより露出制御系が構成されている。まず図18のプログラム線図を用いて、シャッタ速度と、絞りと、AGC回路による3種類の露出制御手段が照度に応じてどのように制御されているか説明する。このプログラム線図はカメラマイコンに記憶されており、そのデータテーブルについては図19において後述する。
【0077】
図18において、横軸は被写体照度、縦軸はアイリス、シャッタ速度、ゲインの各露出制御手段の設定値である。同図から明らかなように、各露出制御手段は被写体照度に応じてA,B,Cと3つの領域に分割されている。すなわち、被写体照度に応じて3種類の露出制御手段を組合わせることにより、露出の動作制御を行っている。領域Aにおいては、前記シャッタ速度は1/60(秒)に固定(PALは1/50(秒))され、且つ前記AGC回路のゲインも0dBで固定されており、前記絞りの開口量のみで露出が制御される。領域Bにおいては、前記絞り部材が開放で固定され、且つAGC回路のゲイン0dBで固定され、前記シャッタ速度は1/60(秒)に固定(PALは1/50(秒))されている。NDの挿入により0〜1/8までの間で照度に応じて連続的にND濃度を変化させることができ、NDにより露出が制御される。領域Cにおいては、前記絞り部材が開放で固定され、且つAGC回路のゲイン0dBで固定され、NDは1/8で固定されている。撮像素子の読み出しを制御して蓄積電荷量を制御することにより、前記シャッタ速度1/60(秒)から1/8(秒)までの間で照度に応じて連続的にシャッタ速度を変化させることができ、シャッタにより露出が制御される。領域Dにおいては、前記絞りが開放で固定され、且つ前記シャッタ速度が1/8(秒)で固定されており、前記AGC回路のみ露出が制御される。
【0078】
この露出制御モードを実行する撮影モードのデータテーブルは図19に示すようになっており、アイリス(絞り)、シャッタ、AGCゲインそれぞれにおけるプログラム線図の特性がパラメータごとに属性(関数か固定値か)、データ形式(しきい値か、マップ形式か、数値による定義か、コードによる定義か等)、実際のデータがそれぞれ記憶されており、これをカメラマイコン115に読み込むことによって図18におけるプログラム線図が設定される。また、情報テーブルには他の設定情報も記憶されており、同図のAEウエイティングは撮像画面を複数の測光領域に分割した際の各測光領域の重み付けのデータをマップ形式で記憶したものであり、同図に示すように、画面を16分割し、その中央部の重み付けを1とし、その周辺の重み付けを半分の0.5にしたものであり、所謂中央重点測光となっている。
【0079】
また、AE基準値は撮像信号のレベルが一定になるように露出制御する際の目標基準値を表している。またその他にもガンマ特性を撮影状態に応じて可変したり、フェード効果を施したりする等の画質調整、画像効果処理の有無についても設定されている。本実施形態では、"NORMAL"となっており、特別な画質、画像効果の処理は行われていないことを示している。
【0080】
なお、上記の4種類の露出制御系を制御するにあたり、本実施形態では被写体照度の明るい順に、絞り→ND→スローシャッタ→AGC回路の順で露出を制御したが、順序をアイリス→AGC→ND→スローシャッタのように変えることもできる。
【0081】
以上のように、車載撮影において、自動的に測光枠を移動し、常に安定した露出での撮影が可能になる。例えばコンシューマ用ビデオカメラを車載撮影のために車体に固定し撮影した場合においても、映像から求まる動きベクトルを用いることにより、映像の流れが少ない領域に測光枠を設定することができ、安定した評価値を取得することが可能になる。
【0082】
(その他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。すなわち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0083】
101:第1固定レンズ、102:変倍レンズ、103:絞り、104:第2固定レンズ、105:フォーカスコンペンセータレンズ、106:撮像素子、107:CDS/AGC/ADコンバータ、108:カメラ信号処理回路、109:表示装置、110:記録装置、111:AFゲート、112:焦点信号処理回路、113:動きベクトル検出回路、114:交点領域検出回路、115:カメラ/AFマイコン、116:フォーカスレンズ駆動源、117:変倍レンズ駆動源、118:絞り部材駆動源、119:NDフィルタ、120:ND部材駆動源、121:測光枠設定回路、122:輝度情報検波・演算回路、123:撮像素子駆動回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオカメラやデジタルカメラ等の撮像装置、その制御方法及びプログラムに関し、車両や移動体に搭載した車載撮影におけるオートフォーカスや自動露出制御等に適用される。
【背景技術】
【0002】
車両の運転席近傍に取り付けられる車載用ビデオカメラは、ドライブ中、その運転席から見える範囲の映像を常時撮影して記録媒体に記録し、事故が発生した時には、所定の短い時間経過後まで記録した後、その記録を停止するよう構成されている。これにより、事故直前から直後の撮影映像を再生して、その事故が如何なる原因で生じたかを検証することができる。
【0003】
このようなドライブ状態を撮影できる機能を備えたビデオカメラは、業務用車両のみならず、全ての個人の乗用車にも搭載されることが望ましい。しかしながら、このようなビデオカメラは実際には一部のタクシー等の業務用車両にしか搭載されていない。この種のビデオカメラは専用装置であるが故に高価なものであり、個人の乗用車等には搭載し難い。
【0004】
一方で、コンシューマ用ビデオカメラは年々安価になり、主に家庭用として大多数の家庭に普及している。特許文献1には、普及型の手振れ検出センサーを備えたビデオカメラを用いて、車両のドライブ中、その車両の前方の広範囲にわたる情景を容易に撮影、記録できるようにしたビデオステーション、ビデオカメラ、車載用ビデオカメラ装置及び車両が開示されている。
【0005】
従来より、ビデオカメラは、撮影対象物すなわち被写体にピントがあった最適合焦状態で確実に撮影を行うためにオートフォーカスが広く採用されている。オートフォーカスでは、画面の中央部分の測距領域に撮影対象物を位置させることで、上記撮影対象物に対する合焦状態を検出して、撮像光学系の合焦機構を自動調整する。被写体に対する合焦状態を検出する手法としては、合焦位置における撮像出力に含まれる先鋭度情報が最大になることを利用して合焦状態を検出する方式が知られている。
【0006】
また、近年では、画像の手振れ補正等のために、画像信号から動きベクトルを検出する検討が盛んに行われている。この動きベクトルを用いて、被写体の動きを検出し、被写体を追尾して自動合焦を行う被写体追尾方式の自動合焦機能の開発も盛んになりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−261865号公報
【特許文献2】米国特許3890462号明細書
【特許文献3】特公昭60−46878号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】B.K.P. Horn, Artificial Intelligence 17, p.185 〜203 (1981)
【非特許文献2】尾上守夫、情報処理Vol. 17, No.7, p.634 〜 640 July 1976
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来例で説明したビデオカメラでは、車載撮影等に特化した機能は無く、車載撮影には不都合が生じる場合がある。例えば、走行中の撮影の場合、通常の撮影とは異なり、撮影者が常に被写体を狙って撮影しているわけではなく、車体の一部に固定されていることが考えられる。車体に固定されている場合、進行方向に対するカメラの角度や、道路のカーブによっては、主被写体が常に画面の中央部分に存在するとは限らない。このような撮影において、画面の中央部分に測距領域を設定して焦点調節を行った場合、ユーザの意図とは違う被写体にピントが合ってしまい主被写体にボケが生じる可能性がある。
【0010】
また、走行中の撮影の場合、走行方向や速度に応じて、画面内の映像に流れが発生する。測距領域内の映像が流れた場合、測距値の変動が激しく変化して、正しい測距値が得られず、オートフォーカスが安定せず、映像にフワつきが発生してしまう可能性がある。
【0011】
さらに、車載撮影の場合、画面内に車体の一部、又は車内の一部が写り込む状態が発生しやすい。しかしながら、車内と車外の明るさに大きな変化があるため、露出を調整する評価枠の設定を誤ると適正露出にならずに、露出がアンダー又はオーバーな映像が記録されてしまう可能性がある。
【0012】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、車載撮影において、自動的にオートフォーカスや露出制御用の評価領域を設定し、常に安定したピント、安定した露出での撮影を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の撮像装置は、撮像光学系により結像された光学像を映像信号に変換する撮像手段と、前記撮像手段で得られる映像信号から動きベクトルを検出する動きベクトル検出手段と、前記動きベクトルの検出結果に応じて、所定の評価値を得るための当該映像上の評価領域を設定する評価領域設定手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車載撮影において、自動的にオートフォーカスや露出制御用の評価領域を設定し、常に安定したピント、安定した露出での撮影が可能になる。例えばコンシューマ用ビデオカメラを車載撮影のために車体に固定し撮影した場合においても、映像信号から検出される動きベクトルを用いることにより、映像の流れが少ない領域に評価領域を設定することができ、安定した評価値を取得することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態に係る撮像装置であるビデオカメラの構成を示す図である。
【図2】焦点調節制御を示すフローチャートである。
【図3】図2のフローチャートのTV−AF制御の詳細な処理を示すフローチャートである。
【図4】図3のフローチャートの微小駆動モードの詳細な処理を示すフローチャートである。
【図5】微小駆動モードでのフォーカスレンズの動作を示す特性図である。
【図6】図3のフローチャートの山登りモードの詳細な処理を示すフローチャートである。
【図7】山登り駆動モード時のフォーカスレンズの動作を示す特性図である。
【図8】動きベクトルに応じた評価枠の設定を説明するための図である。
【図9】車体の移動と動きベクトルとの関係を示す図である。
【図10】動きベクトルを用いた評価枠の設定判定を示すフローチャートである。
【図11】動きベクトルを用いた評価枠の設定例を示す図である。
【図12】動きベクトルを用いた評価枠の設定例を示す図である。
【図13】動きベクトルを用いた評価枠の設定例を示す図である。
【図14】動きベクトルを用いた評価枠の設定例を示す図である。
【図15】動きベクトルに応じた評価枠の大きさ変更を示す図である。
【図16】動きベクトルに応じた評価枠の設定を示すフローチャートである。
【図17】第2の実施形態に係る撮像装置であるビデオカメラの構成を示す図である。
【図18】露出制御を行う際のプログラム線図を示す図である。
【図19】カメラマイコンに保持される露出制御用のデータテーブルを示す図である。
【図20】露出調節制御を示すフローチャートである。
【図21】動きベクトルの交点領域を利用したAEの重み付けを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るビデオカメラの構成を示す図である。なお、本実施形態ではビデオカメラについて説明するが、本発明はデジタルスチルカメラ等、他の撮像装置への適用も可能である。
【0017】
図1において、101は第1固定レンズである。102は光軸方向に移動して変倍を行う変倍レンズである。103は絞りである。104は第2固定レンズである。105は変倍に伴う焦点面の移動を補正する機能とフォーカシングの機能とを兼ね備えたフォーカスコンペンセータレンズ(以下、フォーカスレンズという)である。これら第1固定レンズ101、変倍レンズ102、絞り103、第2固定レンズ104及びフォーカスレンズ105により撮像光学系が構成される。
【0018】
106は撮像光学系により結像される光学像を映像信号に変換する光電変換素子としての撮像素子であり、CCDセンサやCMOSセンサにより構成される。107はCDS/AGC/ADコンバータであり、撮像素子106の出力をサンプリング、ゲイン調整、デジタル化する。108はカメラ信号処理回路であり、CDS/AGC/ADコンバータ107からの出力信号に対して各種の画像処理を施す。109は表示装置であり、カメラ信号処理回路108からの映像信号を表示する。110は記録装置であり、カメラ信号処理回路108からの映像信号を磁気テープ、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録する。
【0019】
111はAFゲートであり、CDS/AGC/ADコンバータ107からの全画素の出力信号のうち焦点検出に用いられる領域の信号のみを通す。112は焦点信号処理回路であり、AFゲート111を通過した信号から高周波成分や該高周波信号から生成した輝度差成分(AFゲート111を通過した信号の輝度レベルの最大値と最小値の差分)等を抽出して焦点信号を生成する。ここで、焦点信号は、撮像素子106からの出力信号に基づいて生成される映像の鮮鋭度(コントラスト状態)を表すものであるが、鮮鋭度は撮像光学系の焦点状態によって変化するので、結果的に撮像光学系の焦点状態を表す信号となる。
【0020】
113は動きベクトル検出回路であり、映像信号に対して公知の動きベクトル検出処理を施し、映像上の複数の領域に対して動きベクトルを検出処理する。画像の符号化装置や画像触れ補正装置に必要な動きベクトル検出方法としては、特許文献2や特許文献3等に記載の時空間勾配法、或いは相関演算に基づく相関法やブロックマッチング法(テンプレートマッチング法)がある。時空間勾配法については、非特許文献1で詳しく論じられている。また、ブロックマッチング法については、非特許文献2で詳しく論じられている。時空間勾配法は、フレーム(或いはフィールド)間の輝度差dと画面内の画素間の輝度差Δから、画像の動き量をd/Δで表す方法である。これは、カメラから得られる信号がフィールド周期の時間平均であり、画像の動き量が大きいほどエッジが鈍り、画素間の輝度差Δが小さくなる性質を利用し、フレーム(或いはフィールド)間の輝度差dを信号Δで正規化したものである。一方、ブロックマッチング法は、入力画像信号を適当な大きさのブロック(例えば8画素×8ライン)に分割し、ブロック単位に前のフレーム(或いはフィールド)の一定範囲の画素との差を計算する。そして、この差の絶対値の和が最小となる前のフレーム(或いはフィールド)のブロックを探査する。当該ブロックの相対的なずれがそのブロックの動きベクトルを表している。
【0021】
114は交点領域検出回路であり、動きベクトル検出回路113の検出結果に基づいて動きベクトルの交点領域を算出し、その算出結果をカメラ/AFマイコン115に送信する。交点領域検出回路114の処理については後述する。115はカメラ/AFマイコン(以下、カメラマイコンという)である。カメラマイコン115は、動きベクトル検出回路113の検出結果に基づいて、交点領域に焦点検出に用いられる評価枠(評価領域)であるオートフォーカス枠(以下、AF枠と称する)を設定するようにAFゲート111へ情報を送信する。また、カメラマイコン115は、焦点信号処理回路112の出力信号に基づいて、後述するフォーカスレンズ駆動源116を制御してフォーカスレンズ105を駆動するとともに、記録装置110へ画像記録命令を出力する。
【0022】
117は変倍レンズ駆動源であり、変倍レンズ102を移動させるためのアクチュエータ及びそのドライバを含む。116はフォーカスレンズ駆動源であり、フォーカスレンズ105を移動させるためのアクチュエータ及びそのドライバを含む。変倍レンズ駆動源117及びフォーカスレンズ駆動源116は、ステッピングモータ、DCモータ、振動型モータ及びボイスコイルモータ等のアクチュエータにより構成される。
【0023】
次に、カメラマイコン115が実行する焦点調節制御の概要について説明する。図2は、本実施形態における焦点調節制御を示すフローチャートである。まずステップS201で、カメラマイコン115は、TV−AF制御の基本となる焦点信号を取得するためのAF枠の位置及び大きさを設定する。交点領域検出回路114で交点領域が検出された場合は該交点領域にAF枠を設定し、交点領域が抽出されなかった場合は固定のAF枠(初期位置)を設定する。この処理の詳細は図8〜図16を参照して後述する。
【0024】
次にステップS202で、カメラマイコン115の制御下で焦点信号処理回路112より、指定されたAF枠の焦点信号を取得する。このとき、焦点信号処理回路112内のフィルタ係数を設定し、抽出特性の異なる複数のバンドパスフィルタを構築する。抽出特性とはバンドパスフィルタの周波数特性であり、ここでの設定とは焦点信号処理回路112内のバンドパスフィルタの設定値を変更することを意味する。
【0025】
次にステップS203で、カメラマイコン115は、TV−AF制御により焦点調節を行う。この処理の詳細は図3を参照して後述する。その後、ステップS201へ戻る。
【0026】
図3は、図2のステップS203で実行されるTV−AF制御の詳細を示すフローチャートである。まずステップS301で、カメラマイコン115は、微小駆動モードであるかどうかを判別し、微小駆動モードである場合はステップS302へ遷移し、微小駆動モードでない場合はステップS308へ遷移する。ステップS302で、カメラマイコン115は微小駆動動作を行い、フォーカスレンズ105を所定の振幅で駆動し、合焦しているか、或いはどちらの方向に合焦点が存在するかを判別する。この処理の詳細は図4及び図5を参照して後述する。ステップS303で、カメラマイコン115は、ステップS302の微小駆動動作によって合焦判別が成功したかどうかを判別し、成功した場合はステップS306へ遷移し、成功しない場合はステップS304へ遷移する。ステップS304で、カメラマイコン115は、ステップS302の微小駆動動作によって方向判別が成功したかどうかを判別する。方向判別が成功した場合はステップS305へ遷移して山登り駆動モードへ移行し、成功しない場合はステップS301へ戻り、微小駆動モードを継続する。ステップS306で、カメラマイコン115は、合焦時の焦点信号レベルをカメラマイコン115内のメモリに格納した後、ステップS307へ遷移して再起動判定モードへ移行する。
【0027】
一方、ステップS308で、カメラマイコン115は、山登り駆動モードであるかどうかを判別し、山登り駆動モードである場合はステップS309へ遷移し、山登り駆動モードでない場合はステップS313へ遷移する。ステップS309で、カメラマイコン115は山登り駆動動作を行い、焦点信号が大きくなる方向へ所定の速度でフォーカスレンズ105を山登り駆動する。この処理の詳細は図6及び図7を参照して後述する。ステップS310で、カメラマイコン115は、ステップS309の山登り駆動動作によって焦点信号のピーク位置が発見されたかどうかを判別する。発見された場合はステップS311へ遷移し、発見されない場合はステップS301へ戻り、山登り駆動モードを継続する。ステップS311で、カメラマイコン115は、焦点信号がピークとなったフォーカスレンズ105の位置を目標位置に設定した後、ステップS312へ遷移し、停止モードへ移行する。
【0028】
一方、ステップS313で、カメラマイコン115は、停止モードであるかどうかを判別し、停止モードである場合はステップS314へ遷移し、停止モードでない場合はステップS316へ遷移する。ステップS314で、カメラマイコン115は、フォーカスレンズ105が焦点信号のピークとなる位置に戻ったかどうかを判別する。ピークとなる位置に戻った場合はステップS315へ遷移し、微小駆動(合焦判別)モードへの移行し、ピークとなる位置に戻っていない場合はステップS301へ戻り、停止モードを継続する。
【0029】
一方、ステップS316で、カメラマイコン115は、現在の焦点信号レベルとステップS306で保持した焦点信号レベルとを比較し、その変動量が所定値より大きいかどうかを判別する。変動量が大きい場合はステップS317へ遷移し、微小駆動(方向判別)モードへの移行を行い、変動量が大きくない場合はステップS301へ戻り、再起動判定モードを継続する。
【0030】
図3のステップS302で実行される微小駆動モードの詳細な処理について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、図3のステップS302で実行される微小駆動モードの詳細な処理を示すフローチャートである。ステップS401で、カメラマイコン115は、微小駆動の動作状態を示すカウンタが現在0であるかどうかを判別し、0である場合はステップS402へ遷移し、0でない場合はステップS403へ遷移する。ステップS402で、カメラマイコン115は、フォーカスレンズ105が至近側にある場合の処理として、現在のAF評価値レベルを保持する。ここでのAF評価値は、後述のステップS410でフォーカスレンズ105が無限側にあるときに撮像素子106に蓄積された電荷から生成された画像信号によるものである。
【0031】
ステップS403で、カメラマイコン115は、現在のカウンタが1であるかどうかを判別し、1である場合はステップS404へ遷移し、1でない場合はステップS409へ遷移する。ステップS404で、カメラマイコン115は、後述のステップS408でフォーカスレンズ105を駆動するための振動振幅、中心移動振幅を演算する。通常、これらの振幅は焦点深度内に設定されるのが一般的である。ステップS405で、カメラマイコン115は、ステップS402で保持した無限側のAF評価値レベルと後述のステップS410で保持した至近側のAF評価値レベルを比較する。その結果、前者が大きい場合はステップS406へ遷移し、後者が大きい場合はステップS407へ遷移する。ステップS406で、カメラマイコン115は、振動振幅と中心移動振幅を加算し、駆動振幅とする。一方、ステップS407で、カメラマイコン115は、振動振幅を駆動振幅とする。ステップS408で、カメラマイコン115は、ステップS406又はステップS407で求めた駆動振幅に基づき、無限方向へ駆動する。
【0032】
ステップS409で、カメラマイコン115は、現在のカウンタが2であるかどうかを判別し、2である場合はステップS410へ遷移し、2でない場合はステップS411へ遷移する。ステップS410で、カメラマイコン115は、フォーカスレンズ105が無限側にある場合の処理として、現在のAF評価値レベルを保持する。ここでのAF評価値は、ステップS402でフォーカスレンズ105が至近側にあるときに撮像素子106に蓄積された電荷から生成された画像信号によるものである。ステップS411で、カメラマイコン115は、後述のステップS415でフォーカスレンズ105を駆動するための振動振幅、中心移動振幅を演算する。通常、これらの振幅は焦点深度内に設定されるのが一般的である。ステップS412で、カメラマイコン115は、ステップS410で保持した至近側のAF評価値レベルとステップS402で保持した無限側のAF評価値レベルを比較する。その結果、前者が大きい場合はステップS413へ遷移し、後者が大きい場合はステップS414へ遷移する。ステップS413で、カメラマイコン115は、振動振幅と中心移動振幅を加算し、駆動振幅とする。一方、ステップS414で、カメラマイコン115は、振動振幅を駆動振幅とする。ステップS415で、カメラマイコン115は、ステップS413又はステップS414で求めた駆動振幅に基づき、至近方向へ駆動する。
【0033】
ステップS416で、カメラマイコン115は、現在方向判別モードであるかどうかを判別し、方向判別モードである場合はステップS417へ遷移し、方向判別モードでない場合はステップS419へ遷移する。ステップS417で、カメラマイコン115は、所定回数連続して同一方向に合焦点が存在しているかどうかを判別し、そうである場合はステップS418へ遷移し、そうでない場合はステップS421へ遷移する。ステップS418で、カメラマイコン115は向判別ができたものと判断する。一方、ステップS419で、カメラマイコン115は、フォーカスレンズが所定回数同一エリアで往復しているかどうかを判別し、そうである場合はステップS420へ遷移し、そうでない場合はステップS421へ遷移する。ステップS420で、カメラマイコン115は合焦判別できたものと判断する。ステップS421で、カメラマイコン115は、微小駆動の動作状態を示すカウンタが3であれば0に戻し、その他の値であればカウンタを加算する。
【0034】
図5は、微小駆動モードでのフォーカスレンズ105の動作を示す特性図である。上の図は画像信号の垂直同期信号を示し、下の図は横軸が時間、縦軸がフォーカスレンズ105の位置を表している。ラベルAの時刻に撮像素子106に蓄積された電荷に対するAF評価値EVAは、時刻TAでカメラマイコン115に取り込まれる。また、ラベルBの時刻に撮像素子106に蓄積された電荷に対するAF評価値EVBは、時刻TBでカメラマイコン115に取り込まれる。時刻TCではAF評価値EVAとEVBとを比較し、EVBが大きい場合のみ振動中心を移動する。なお、ここでのフォーカスレンズ105の移動は焦点深度を基準とし、画面で認識できない移動量に設定する。
【0035】
図3のステップS308で実行される山登り駆動モードの詳細な処理について、図6及び図7を参照して説明する。図6は、図3のステップS308で実行される山登り駆動モードの詳細な処理を示すフローチャートである。ステップS601で、カメラマイコン115はフォーカスレンズ105の駆動速度を設定する。ステップS602で、カメラマイコン115は、現在のAF評価値レベルが前回より増加しているかどうかを判別し、増加している場合はステップS603へ遷移し、増加していない場合はステップS604へ遷移する。ステップS603で、カメラマイコン115は、ステップS601で設定した速度に基づき、フォーカスレンズ105を前回と同じ方向に山登り駆動する。
【0036】
ステップS604で、カメラマイコン115は、AF評価値レベルがピーク位置を越えたかどうかを判別し、ピーク位置を超えた場合はステップS605へ遷移し、ピーク位置を超えていない場合はステップS606へ遷移する。ステップS605で、カメラマイコン115はピーク位置を発見したものと判断する。ステップS606で、カメラマイコン115は、ステップS601で設定した速度に基づき、フォーカスレンズ105を前回と逆の方向に山登り駆動する。なお、山登り駆動モードでこのステップS606を繰り返している場合、被写体のAF評価値の変化量が十分に得られないためにフォーカスレンズ105がハンチング状態にあることを意味する。
【0037】
図7は、山登り駆動モードでのフォーカスレンズ105の動作を示す特性図である。横軸がフォーカスレンズ105の位置、縦軸が焦点信号を表している。フォーカスレンズ105が範囲Aで駆動している場合はAF評価値が増加しているため、同じ方向への山登り駆動を継続する。ここで、フォーカスレンズ105を範囲Bで駆動するとAF評価値はピーク位置を越えて減少する。このとき、合焦点が存在するとして山登り駆動動作を終了し、フォーカスレンズ105をピーク位置まで戻した後、微小駆動動作に移行する。一方、範囲Cのようにピーク位置を越えずにAF評価値が減少した場合は駆動すべき方向を間違えたものとして反転し、山登り駆動動作を継続する。
【0038】
このように、TV−AF方式による焦点調節制御では、再起動判定→微小駆動→山登り駆動→停止→微小駆動→再起動判定を繰り返しながらフォーカスレンズ105を移動させることで、AF評価値が常に最大となるように合焦状態を維持する。
【0039】
以下、図8〜図16を参照して、動きベクトルの検出結果に応じたAF枠の設定方法について説明する。これは、図2のステップS201におけるAF枠の領域情報の決定処理の詳細な説明である。図8(a)は入力画像であり、x方向及びy方向に[7*5]のブロックに分割されている。進行方向は画像奥方向である。図8(b)は各ブロックで動きベクトルを検出した結果を示す。このような動きベクトルの分布図を一般にオプティカルフロー図と呼ぶ。画面奥方向に進行しているため、動きベクトルは進行方向を中心に放射状になる。図8(c)は動きベクトルの値を(x成分、y成分)に変換して表示したものである。この各々の成分に変換した値を用いて、評価枠を決定する。図8(d)は評価枠の設定方法を簡易的に示したものである。各々の動きベクトルは放射状に出ているため、動きベクトルの交点領域は領域Sであることが分かる。この動きベクトルの交点領域を評価枠とすることにより、安定したAF評価値の取得ができ、適切なオートフォーカスを行うことが可能になる。以下、その評価枠の設定方法について説明を行う。
【0040】
まず、動きベクトルに応じた評価枠の移動は常時行う必要はなく、車載カメラとして車体の一部に固定された状態で、且つ車体が移動している場合のみ行う処理である。図9、図10を参照して、評価枠の設定において、初期位置の評価枠を用いるか、動きベクトルに応じた評価枠を用いるかの切り替えを行う処理を説明する。
【0041】
図9は、初期位置の評価枠を用いるか、動きベクトルに応じた評価枠を用いるかの切り替えの判断を簡易的に示した図である。図8(a)が入力画像である場合に、図9(a)は車体が画像奥方向に駆動した初期状態を模した図である。画面の中央部分は画像の流れが少ないため、動きベクトルの発生は少ない。画面の端部分は画像の変化が大きいため、動きベクトルの発生がある。図9(b)は車体が加速した状態を模した図である。車体の移動量が増えたため、画面の内側部分の動きベクトルが発生する。画面の端部分は移動量が増えたことにより、動きベクトルの強度が増える傾向にある。図9(c)はさらに車体が加速した状態を模した図である。画面中央を除き、動きベクトルが発生する。このように、車体が停止から駆動状態に移行する際、動きベクトルは車体の移動量に伴い増加する。これを利用して、同じ領域内の動きベクトルの増加を監視し、動きベクトルの所定時間の増加が確認できた場合は、車体が駆動していると判断し、動きベクトルに応じた評価枠の設定を行う処理に移行する。図9(d)は、画面内のある領域の動きベクトルの変化を示した図である。本実施形態では、動きベクトルのサンプル間隔において、K回連続して増加した場合を、車体の移動が開始したと判断することとしている。
【0042】
図10は、動きベクトルを用いた評価枠の設定判定のフローチャートである。ステップS1002で、カメラマイコン115は、映像から動きベクトルが検出できたかどうかを判断する。動きベクトルが検出された場合はステップS1003へ遷移し、動きベクトルが検出されなかった場合はステップS1012へ遷移する。
【0043】
ステップS1003で、カメラマイコン115は、検出された動きベクトルを3次元配列Vector_x[n][h][i]、Vector_y[n][h][i]に格納する。hはx軸方向の動きベクトルの検出領域数、iはy軸方向の動きベクトルの検出領域数を示し、nは記憶した配列の番号を示している。格納する方法は、動きベクトルをx成分、y成分に分割し、それぞれを格納する。格納後、ステップS1004に遷移する。ステップS1004で、カメラマイコン115は配列の番号を示すnをインクリメントし、n+1とする。ステップS1005で、カメラマイコン115はnが1を超えているかどうかを判断する。nが1を超えている、すなわち1を超える数の動きベクトルがすでに格納されている場合はステップS1006へ遷移し、そうでない場合はステップS1012へ遷移する。
【0044】
ステップS1006で、カメラマイコン115は、n−1(1つ前)に格納した各々の動きベクトル検出領域のベクトル成分を比較し、ベクトルの成分が増加しているかどうかを判断する。ベクトルの比較は、各々の差分を抽出し、減少・増加の判断を行う。比較後、ステップS1007へ遷移する。
【0045】
ステップS1007で、カメラマイコン115は、動きベクトル検出領域の何%が増加しているかの確認を行う。本実施形態では、全検出領域の約60%以上が増加である場合を閾値Th1と設定することとするが、閾値Th1の値は十分な測定を行い、任意の値に設定することが可能である。全体の領域数Vsum=h*iに対して、増加している領域をカウントし、その領域数をVnumとする。増加割合[%]=Vnum÷Vsum×100で算出し、増加割合>Th1以上であれば、全体の動きベクトルの増加が確認されたとし、ステップS1008へ遷移する。そうでない場合はステップS1009へ遷移する。ステップS1009では、カメラマイコン115は、ベクトルの増加回数をカウントするVCountを0に初期化する処理を行い、ステップS1012へ遷移する。
【0046】
ステップS1008で、カメラマイコン115は、ベクトルの増加回数をカウントするVCountをインクリメントし、ステップS1010へ遷移する。ステップS1010で、カメラマイコン115は、ベクトルの増加カウントVCountがK回連続で増加したかどうかを判断する。本実施形態では、閾値Kの値を30回(実時間0.5秒に相当)に設定するが、閾値Kの値は十分な測定を行った上で任意の値に設定することが可能である。つまり、動きベクトルが増加傾向にある場合、具体的には動きベクトルの増加が連続して0.5秒間以上発生した場合は、車体がいずれかの方向に駆動中であると判断し、ステップS1011へ遷移する。そうでない場合はステップS1012へ遷移する。ステップS1011で、カメラマイコン115は、評価枠を動きベクトルに応じて変更する処理を行う。この処理の詳細は図11を参照して後述する。
【0047】
ステップS1012では、動きベクトルの増加が連続して0.5秒間以上発生していない、又は、動きベクトルが発生していない等の、動きベクトルに応じて評価枠を移動できない状態であるため、初期位置にある評価枠を設定することとする。
【0048】
図11は、動きベクトルに応じて評価枠を設定する領域である動きベクトルの交点領域の算出方法を示す図である。図11(a)は入力画像である。図11(b)は動きベクトルを図示したオプティカルフロー図である。図11(c)は動きベクトルを各成分に分割したものである。L1は画像内のx成分のみを抽出し、その成分の値をグラフ化したものである。座標x=1から7に向けてx成分は大きくなり、座標x=4でゼロクロス点があることを確認できる。これは、座標x=4を中心として、放射状に動きベクトルが発生しているためである。よって、x成分のグラフのゼロクロス点を求めることにより、動きベクトルのx方向の交点領域が特定できる。同様に、L2は画像内のy成分のみを抽出し、その成分の値をグラフ化したものである。座標y=1から5に向けてy成分は大きくなり、座標y=3でゼロクロス点があることを確認できる。これは、座標y=3を中心として、放射状に動きベクトルが発生しているためである。よって、y成分のグラフのゼロクロス点を求めることにより、動きベクトルのy方向の交点領域が特定できる。以上のように、図11(a)の入力画像は、座標(4,3)の位置に、動きベクトルの交点領域があると推測でき、その領域はもっとも動きベクトルが少なくなる。この座標(4,3)に評価枠を設定することにより、安定した評価値が得られ、適切なオートフォーカスが可能になる。このような処理を行うことにより、入力画像から、動きベクトルの交点領域を特定することが可能になる。
【0049】
図11では動きベクトルの交点領域が画像の中心にある例を示したが、続いて、交点領域が画像の中心以外にある例を示す。図12(a)は入力画像である。この画像は、進行方向の先にカーブがある場合や、カメラが進行方向に対してある程度の角度を持って設置されていた場合に起こりうる画像である。図12(b)は動きベクトルを図示したオプティカルフロー図である。図12(c)は動きベクトルを各成分に分割したものである。L3は画像内のx成分のみを抽出し、その成分の値をグラフ化したものである。座標x=1から7に向けてx成分は大きくなり、座標x=6でゼロクロス点があることを確認できる。これは、座標x=6を中心として、放射状に動きベクトルが発生しているためである。よって、x成分のグラフのゼロクロス点を求めることにより、動きベクトルのx方向の交点領域が特定できる。同様に、L4〜L6は、画像内のy成分のみを抽出し、その成分の値をグラフ化したものである。座標y=1から5に向けてy成分は大きくなり、座標y=3でゼロクロス点があることを確認できる。これは、座標y=3を中心として、放射状に動きベクトルが発生しているためである。よって、y成分のグラフのゼロクロス点を求めることにより、動きベクトルのy方向の交点領域が特定できる。ただし、交点から遠くなるほど、動きベクトルは平行になる性質があるため、X座標1行目の値をグラフ化したL6は、X座標3〜7行目の値をグラフ化したL4に比べてy成分の変化が小さくなる。仮に、y成分の変化が小さくなり、ゼロクロス点を持たない場合は、その行の値を無視し、他の行のゼロクロス点を参考にし、交点を求めることとする。以上のように、図12(a)の入力画像は、座標(6,3)の位置に、動きベクトルの交点領域があると推測できる。
【0050】
続いて、画面内にボンネットや室内等の写りこみがある例を示す。図13(a)は入力画像であり、物体Pは常時写りこんでいる被写体である。図13(b)は動きベクトルを図示したオプティカルフロー図である。物体Pは動きを持たないので、動きベクトルは発生していないことが確認できる。図13(c)は動きベクトルを各成分に分割したものである。L7はy座標2〜5列目のy成分のみを抽出し、その成分の値をグラフ化したものである。座標x=1から7に向けてx成分は大きくなり、座標x=4でゼロクロス点があることを確認できる。これは、座標x=4を中心として、放射状に動きベクトルが発生しているためである。L8はy座標1列目のx成分をグラフ化したものである。1列目は、物体Pにより、動きベクトルを持たないため、グラフにゼロクロス点が存在しない。よって、ゼロクロス点が存在しないグラフは無視し、y座標2〜5列目のゼロクロス点からベクトルの交点を求めることとする。よって、x成分のグラフのゼロクロス点はx=4となる。同様に、図13のL9はx座標6〜7列目のy成分のみを抽出し、その成分の値をグラフ化したものである。座標y=1から5に向けてy成分は大きくなり、座標y=3でゼロクロス点があることを確認できる。これは、座標y=3を中心として、放射状に動きベクトルが発生しているためである。L10はx座標1〜5列目のy成分のみを抽出し、その成分の値をグラフ化したものである。これも同様に、座標y=3にてゼロクロス点を持つ。以上のように、図13(a)の入力画像は、座標(4,3)の位置に、動きベクトルの交点領域があると推測できる。
【0051】
図14(a)は入力画像である。図14(b)は動きベクトルを図示したオプティカルフロー図である。図14(c)は動きベクトルを各成分に分割したものである。L11は、画像のx成分のみを抽出し、その成分の値をグラフ化したものである。x成分の変化はなく、ゼロクロス点も持たないことが分かる。また、L12はy成分をグラフ化したものである。同様にy成分の変化はなく、ゼロクロス点も持たないことが分かる。以上のように、図14(a)の入力画像は、ゼロクロス点を持たないため、動きベクトルの交点領域は存在しない。その場合は、画面全体に流れが発生していると判断し、初期位置にある評価枠の大きさを動きベクトルに応じて変更する。
【0052】
図15は、動きベクトルに応じた評価枠の大きさ変更を示す図である。図15(a)、図15(b)に示すように、動きベクトルが所定量Th2を越えた場合に、初期の評価枠Qから、評価枠Rのように大きさを動きベクトルに応じて変更する。これにより、画像の流れが発生した場合でも、評価枠を大きくすることにより、評価値の変動を少なくすることが可能になり、安定したオートフォーカスが可能になる。また、図15(c)に示すように動きベクトルが所定量Th3を越えた場合は、画像の流れが大きく、評価枠を大きく設定しても、評価値が安定しない。よって、評価枠の設定を行わず、前のピント状態を維持し、ピントのフワつきを防ぐ。なお、上記説明した処理の流れは図16のフローチャートを用いて説明する。
【0053】
図16は、動きベクトルに応じた評価枠の設定するための処理である。ステップS1602で、カメラマイコン115は、座標xのj行目のx軸方向の動きベクトルの成分の抽出を行う。成分の個数はシステムによって異なるが、本実施形態では、7*5の検出領域を用いているため、成分の個数は7個ということになる。抽出が終了後、ステップS1603へ遷移する。ステップS1603で、カメラマイコン115は、抽出された成分の描く曲線のゼロクロス点となる領域の算出を行う。算出方法の一例は、座標x=1から7の方向に向かい、値が増加又は減少していることを確認し、値が0を超える、或いは、符号が切り替わる点をゼロクロス点として特定する。ゼロクロス点が特定できない場合、x=0とする。ゼロクロス点の算出後、ステップS1604へ遷移する。ステップS1604で、カメラマイコン115はj行目の値を1つインクリメントする。
【0054】
ステップS1605で、カメラマイコン115は、画像内のすべての行において、算出が終了したかどうかの確認を行う。jが検出枠数よりも大きい場合は、すべての列の算出が終了したとして、ステップS1606へ遷移する。そうでない場合はステップS1602へ遷移して、同様の処理を繰り返す。
【0055】
ステップS1606で、カメラマイコン115は、上記の処理によって算出されたx成分の交点領域の座標の決定を行う。図11の例では、j行すべてが同じ成分であったため、交点領域は1つに求まったが、図13に示すような入力画像の場合は、交点領域候補が2点以上特定できる場合がある。その場合は、j行中で過半数を占めるゼロクロス点を採用し、その他の点は無視することとする。特定された点をXcrossとし、ステップS1607へ遷移する。
【0056】
ステップS1607で、カメラマイコン115は、座標yのk列目のy軸方向の動きベクトルの成分の抽出を行う。成分の個数はシステムによって異なるが、本実施形態では、7*5の検出領域を用いているため、成分の個数は5個ということになる。抽出が終了後、ステップS1608へ遷移する。ステップS1608で、カメラマイコン115は、抽出された成分の描く曲線のゼロクロス点となる領域の算出を行う。算出方法の一例は、座標y=1から5の方向に向かい、値が増加又は減少していることを確認し、値が0を超える、或いは、符号が切り替わる点をゼロクロス点として特定する。ゼロクロス点が特定できない場合、y=0とする。ゼロクロス点の算出後、ステップS1609へ遷移する。ステップS1609で、カメラマイコン115はk行目の値を1つインクリメントする。
【0057】
ステップS1610で、カメラマイコン115は、画像内のすべての列において、算出が終了したかどうかの確認を行う。kが検出枠数よりも大きい場合は、すべての列の算出が終了したとして、ステップS1611へ遷移する。そうでない場合はステップS1607へ遷移して、同様の処理を繰り返す。
【0058】
ステップS1611で、カメラマイコン115は、上記の処理によって算出されたy成分の交点領域の座標の決定を行う。図11の例では、k列すべてが同じ成分であったため、交点領域は1つに求まったが、図13に示すような入力画像の場合は、交点領域候補が2点以上特定できる場合がある。その場合は、k列中で過半数を占めるゼロクロス点を採用し、その他の点は無視することとする。特定された点をYcrossとし、ステップS1612へ遷移する。
【0059】
ステップS1612で、カメラマイコン115は、上記で特定されたベクトルの交点領域の確認を行う。上記の処理において、交点領域(Xcross,Ycross)が算出された場合はステップS1616へ遷移する。上記の処理において、交点が特定できなかった場合、つまり、交点領域(0,0)であった場合はステップS1613へ遷移する。ステップS1616で、カメラマイコン115は、交点領域が求まっているため、評価枠を交点領域(Xcross,Ycross)に設定し、処理を終了する。一方、交点領域が特定できなかった場合は、カメラが進行方向に向かって固定されていない、もしくは右折や左折等により映像がすべて流れている等が考えられる。この場合、動きベクトルの量に応じて、評価枠を変更する処理を行う。変更方法は、図15を用いて既に説明済みであるため省略する。
【0060】
ステップS1613で、カメラマイコン115は、交点領域が特定できなかった場合、画面内の動きベクトルの方向を確認する。画面内の動きベクトルが同一方向に向いている場合はステップS1614へ遷移する。そうでない場合はステップS1617へ遷移する。ステップS1614では、動きベクトルの大きさがTh2以上であるかどうかを確認する。Th2以上である場合は、画面内の映像の流れが大きく、評価値が安定できないと判断し、ステップS1615へ遷移する。そうでない場合はステップS1617へ遷移する。ステップS1617で、カメラマイコン115は、交点領域が特定できない、又は、動きベクトルが小さいという状況であるため、評価枠は初期位置のままで評価値の取得を行う。よって、評価枠を初期位置に設定し、処理を終了する。
【0061】
ステップS1615で、カメラマイコン115は、動きベクトルの大きさがTh3以上であるかのどうかを確認する。Th3以上である場合は、画面内の映像からは、適切な評価値は算出できないと判断し、ステップS1619へ遷移する。そうでない場合はステップS1618へ遷移する。ステップS1618で、カメラマイコン115は、動きベクトルが所定量Th2以上Th3以下あるため、評価枠を大きくして安定した評価値の取得を処理である。評価枠の大きさは図15(a)のグラフに基づき設定することとする。評価枠の設定後、処理を終了する。ステップS1619で、カメラマイコン115は、動きベクトルが所定量Th3以上あるため、画像から適切な評価値は取得できないので、評価枠を設定しない。さらに、画像のボケ・フワつきを抑えるためにオートフォーカスの制御は行わず前の状態でフォーカスをロックする。
【0062】
以上のように、車載撮影において、自動的にAF枠を設定し、常に安定したピントでの撮影が可能になる。例えばコンシューマ用ビデオカメラを車載撮影のために車体に固定し撮影した場合においても、映像から求まる動きベクトルを用いることにより、映像の流れが少ない領域にAF枠を設定することができ、安定した評価値を取得することが可能になる。
【0063】
カメラが進行方向に対して斜めに固定されている場合や、進行方向にカーブがある場合は、画像の中心画像は流れてしまうが、動きベクトルから交点領域を特定することにより、撮影の主被写体になるであろう進行方向の画像の流れが少ない領域に評価枠を設定することができる。これにより、カメラを固定した状態でも、適切な撮影を行うことが可能になる。
【0064】
また、画像から求まる動きベクトルから交点領域を特定することにより、車体の移動による画像の流れが発生している領域を避け、画像の流れが少ない領域に評価枠を設定することができる。
【0065】
さらに、画像の一部に車体、もしくは車内の一部が写りこんでいるような状態であっても、動きベクトルから交点領域を特定することにより、車外の画像の流れが少ない領域に評価枠を設定することができ、安定したピント、安定した露出での撮影が可能になる。
【0066】
<第2の実施形態>
図17は、第2の実施形態に係るビデオカメラの構成を示す図である。なお、本実施形態ではビデオカメラについて説明するが、本発明はデジタルスチルカメラ等、他の撮像装置への適用も可能である。以下では、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、第1の実施形態に係るビデオカメラと同様の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0067】
118は絞り部材駆動源であり、絞り103を駆動させるためのアクチュエータ及びそのドライバを含む。119はレンズから入射する光を減衰させるためのNDフィルタである。120はND部材駆動源であり、NDフィルタ119を駆動させるためのアクチュエータ及びそのドライバを含む。
【0068】
121は測光枠設定回路であり、CDS/AGC/ADコンバータ107からの全画素の出力信号のうち測光値検出に用いられる領域の信号のみを通す。122は輝度情報検波・演算回路であり、デジタルの画像データに基づいて輝度値を検波し、検波した輝度値を演算処理する。123は撮像素子駆動回路である。
【0069】
第1の実施形態と同様に、交点領域検出回路114は、動きベクトル検出回路113の検出結果に基づいて動きベクトルの交点領域を算出し、その算出結果をカメラマイコン115に送信する。カメラマイコン115は、交点領域に測光値検出に用いられる評価枠(評価領域)である測光枠を設定するように測光枠設定回路121へ情報を送信する。その後、画面内の測光枠の輝度値を取得するため、輝度情報検波・演算回路122により測光値を取得し、測光した測光値を演算により正規化する。このとき、同時に画面全体の測光値も輝度情報検波・演算回路122により演算を行う。そして、カメラマイコン115で測光値と適正な露出が得られるように設定された目標値との差分を算出する。その後、算出した差分からカメラマイコン115により絞りの補正駆動量を算出し、絞り部材駆動源118、ND部材駆動源120の駆動を制御する。
【0070】
次に、カメラマイコン115が実行する露出調節制御の概要について説明する。図20は、本実施形態における露出調節制御を示すフローチャートである。まずステップS2001で、カメラマイコン115の制御下で輝度情報検波・演算回路122より、露出制御の基本となる輝度信号を取得するための測光枠の位置と大きさを設定する。測光枠の大きさは、交点領域検出回路114において、交点領域が検出された場合は、該交点領域を測光枠位置と設定する。交点領域が抽出されなかった場合は、固定の測光枠(初期位置:中央重点測光)を評価枠と設定する。なお、この交点領域の特定方法の詳細は第1の実施形態にて説明済みであるため省略する。
【0071】
ステップS2002で、カメラマイコン115は、指定された測光枠の輝度信号を取得する。この処理の詳細は図21を参照して後述する。
【0072】
ステップS2003で、カメラマイコン115は、露出制御により輝度調整を行う。この処理の詳細は図18を参照して後述する。その後、ステップS2001へ戻り、この処理を繰り返す。
【0073】
ステップS2002における測光枠の輝度情報の取得について、図21を参照して説明する。図21(a)は、図11(a)の入力画像に動きベクトルを図示したオプティカルフロー図である。領域Sは、ステップS2001において複数の動きベクトルから特定されるベクトルの交点領域を示したものである。図21(b)は、カメラマイコンに記録されているAEの重み付け、AEウエイティングを示したものである。AEウエイティングについては後述することとする。ステップS2001によって特定された交点領域を中心に、領域S´のAEの重み付けを1とし、その周辺の重み付けを半分の0.5にしている。こうすることにより、交点領域を中心とした、画像に流れの少ない部分の測光値が取得でき、安定した露出制御が可能になる。なお、この設定は一例であり、十分な測定を行いその結果に基づいて、適切な露出が得られる値に設定を変更することも可能である。同様に、図21(c)は、図12(a)の入力画像に動きベクトルを図示したオプティカルフロー図である。図21(d)も上述の通り、領域Sを中心に重み付けを行っている。重み付けは図のとおりであるため、その説明を省略する。
【0074】
次に、ステップS2003における露出制御について説明する。撮影レンズからの光学像が絞り103を介して、撮像素子106にて光電変換され、CDS/AGC/ADコンバータ107を経て映像子音号となり、カメラ信号処理回路108に送られる。露出制御するための信号は、AGC回路より出力された輝度信号を測光枠設定回路121を通り、輝度情報検波・演算回路122を経て、カメラマイコン115に取り込まれる。カメラマイコン115は、そのレベルが所定の範囲内に入るように、絞り部材駆動源118を制御し、絞り103へと出力する。駆動電流を制御して、絞り103の開口量を可変する絞り制御により露出制御が行われる。
【0075】
CDS/AGC/ADコンバータ107による露出制御系は、絞り103による露出制御系同様、前記カメラマイコン115に取り込まれた輝度情報検波・演算回路122の出力レベルが所定の範囲内に入るように、CDS/AGC/ADコンバータ107のゲインのレベルを、カメラマイコン115にて制御することによる閉ループにより露出制御系が構成されている。
【0076】
シャッタ速度による露出制御系は、絞り103による露出制御系同様、カメラマイコン115に取り込まれたレベルが所定の範囲内に入るように、撮像素子駆動回路123をカメラマイコン115にて制御することによる閉ループにより露出制御系が構成されている。まず図18のプログラム線図を用いて、シャッタ速度と、絞りと、AGC回路による3種類の露出制御手段が照度に応じてどのように制御されているか説明する。このプログラム線図はカメラマイコンに記憶されており、そのデータテーブルについては図19において後述する。
【0077】
図18において、横軸は被写体照度、縦軸はアイリス、シャッタ速度、ゲインの各露出制御手段の設定値である。同図から明らかなように、各露出制御手段は被写体照度に応じてA,B,Cと3つの領域に分割されている。すなわち、被写体照度に応じて3種類の露出制御手段を組合わせることにより、露出の動作制御を行っている。領域Aにおいては、前記シャッタ速度は1/60(秒)に固定(PALは1/50(秒))され、且つ前記AGC回路のゲインも0dBで固定されており、前記絞りの開口量のみで露出が制御される。領域Bにおいては、前記絞り部材が開放で固定され、且つAGC回路のゲイン0dBで固定され、前記シャッタ速度は1/60(秒)に固定(PALは1/50(秒))されている。NDの挿入により0〜1/8までの間で照度に応じて連続的にND濃度を変化させることができ、NDにより露出が制御される。領域Cにおいては、前記絞り部材が開放で固定され、且つAGC回路のゲイン0dBで固定され、NDは1/8で固定されている。撮像素子の読み出しを制御して蓄積電荷量を制御することにより、前記シャッタ速度1/60(秒)から1/8(秒)までの間で照度に応じて連続的にシャッタ速度を変化させることができ、シャッタにより露出が制御される。領域Dにおいては、前記絞りが開放で固定され、且つ前記シャッタ速度が1/8(秒)で固定されており、前記AGC回路のみ露出が制御される。
【0078】
この露出制御モードを実行する撮影モードのデータテーブルは図19に示すようになっており、アイリス(絞り)、シャッタ、AGCゲインそれぞれにおけるプログラム線図の特性がパラメータごとに属性(関数か固定値か)、データ形式(しきい値か、マップ形式か、数値による定義か、コードによる定義か等)、実際のデータがそれぞれ記憶されており、これをカメラマイコン115に読み込むことによって図18におけるプログラム線図が設定される。また、情報テーブルには他の設定情報も記憶されており、同図のAEウエイティングは撮像画面を複数の測光領域に分割した際の各測光領域の重み付けのデータをマップ形式で記憶したものであり、同図に示すように、画面を16分割し、その中央部の重み付けを1とし、その周辺の重み付けを半分の0.5にしたものであり、所謂中央重点測光となっている。
【0079】
また、AE基準値は撮像信号のレベルが一定になるように露出制御する際の目標基準値を表している。またその他にもガンマ特性を撮影状態に応じて可変したり、フェード効果を施したりする等の画質調整、画像効果処理の有無についても設定されている。本実施形態では、"NORMAL"となっており、特別な画質、画像効果の処理は行われていないことを示している。
【0080】
なお、上記の4種類の露出制御系を制御するにあたり、本実施形態では被写体照度の明るい順に、絞り→ND→スローシャッタ→AGC回路の順で露出を制御したが、順序をアイリス→AGC→ND→スローシャッタのように変えることもできる。
【0081】
以上のように、車載撮影において、自動的に測光枠を移動し、常に安定した露出での撮影が可能になる。例えばコンシューマ用ビデオカメラを車載撮影のために車体に固定し撮影した場合においても、映像から求まる動きベクトルを用いることにより、映像の流れが少ない領域に測光枠を設定することができ、安定した評価値を取得することが可能になる。
【0082】
(その他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。すなわち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0083】
101:第1固定レンズ、102:変倍レンズ、103:絞り、104:第2固定レンズ、105:フォーカスコンペンセータレンズ、106:撮像素子、107:CDS/AGC/ADコンバータ、108:カメラ信号処理回路、109:表示装置、110:記録装置、111:AFゲート、112:焦点信号処理回路、113:動きベクトル検出回路、114:交点領域検出回路、115:カメラ/AFマイコン、116:フォーカスレンズ駆動源、117:変倍レンズ駆動源、118:絞り部材駆動源、119:NDフィルタ、120:ND部材駆動源、121:測光枠設定回路、122:輝度情報検波・演算回路、123:撮像素子駆動回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系により結像された光学像を映像信号に変換する撮像手段と、
前記撮像手段で得られる映像信号から動きベクトルを検出する動きベクトル検出手段と、
前記動きベクトルの検出結果に応じて、所定の評価値を得るための当該映像上の評価領域を設定する評価領域設定手段とを備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記動きベクトル検出手段は、前記撮像手段で得られる映像をx方向及びy方向に複数のブロックに分割し、各ブロックで動きベクトルを検出することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記評価領域設定手段は、前記各ブロックで検出した動きベクトルの交点領域を前記評価領域とすることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記評価領域設定手段は、前記各ブロックで検出した動きベクトルのx成分のゼロクロス点及びy成分のゼロクロス点を求めて、前記交点領域を特定することを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記評価領域設定手段は、前記撮像手段で得られる映像上で動きベクトルが一方向に向いている場合、その動きベクトルの大きさに応じて、初期位置にある評価領域の大きさを変更することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記評価領域設定手段は、前記撮像手段で得られる映像の一定の割合以上の領域において動きベクトルが増加傾向にない場合、初期位置にある評価領域を用いることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記評価領域は焦点信号を取得するためのオートフォーカス枠であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記評価領域は測光値を取得するための測光枠であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
撮像光学系により結像された光学像を映像信号に変換する撮像手段を備えた撮像装置の制御方法であって、
前記撮像手段で得られる映像信号から動きベクトルを検出するステップと、
前記動きベクトルの検出結果に応じて、所定の評価値を得るための当該映像上の評価領域を設定するステップとを有することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項10】
撮像光学系により結像された光学像を映像信号に変換する撮像手段を備えた撮像装置において評価領域を設定するためのプログラムであって、
前記撮像手段で得られる映像信号から動きベクトルを検出する処理と、
前記動きベクトルの検出結果に応じて、所定の評価値を得るための当該映像上の評価領域を設定する処理とをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項1】
撮像光学系により結像された光学像を映像信号に変換する撮像手段と、
前記撮像手段で得られる映像信号から動きベクトルを検出する動きベクトル検出手段と、
前記動きベクトルの検出結果に応じて、所定の評価値を得るための当該映像上の評価領域を設定する評価領域設定手段とを備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記動きベクトル検出手段は、前記撮像手段で得られる映像をx方向及びy方向に複数のブロックに分割し、各ブロックで動きベクトルを検出することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記評価領域設定手段は、前記各ブロックで検出した動きベクトルの交点領域を前記評価領域とすることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記評価領域設定手段は、前記各ブロックで検出した動きベクトルのx成分のゼロクロス点及びy成分のゼロクロス点を求めて、前記交点領域を特定することを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記評価領域設定手段は、前記撮像手段で得られる映像上で動きベクトルが一方向に向いている場合、その動きベクトルの大きさに応じて、初期位置にある評価領域の大きさを変更することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記評価領域設定手段は、前記撮像手段で得られる映像の一定の割合以上の領域において動きベクトルが増加傾向にない場合、初期位置にある評価領域を用いることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記評価領域は焦点信号を取得するためのオートフォーカス枠であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記評価領域は測光値を取得するための測光枠であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
撮像光学系により結像された光学像を映像信号に変換する撮像手段を備えた撮像装置の制御方法であって、
前記撮像手段で得られる映像信号から動きベクトルを検出するステップと、
前記動きベクトルの検出結果に応じて、所定の評価値を得るための当該映像上の評価領域を設定するステップとを有することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項10】
撮像光学系により結像された光学像を映像信号に変換する撮像手段を備えた撮像装置において評価領域を設定するためのプログラムであって、
前記撮像手段で得られる映像信号から動きベクトルを検出する処理と、
前記動きベクトルの検出結果に応じて、所定の評価値を得るための当該映像上の評価領域を設定する処理とをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−242759(P2012−242759A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115121(P2011−115121)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]