説明

撮像装置、及びその制御方法

【課題】被写体の色を利用して露出制御を行う際に、光源の誤検出に起因する悪影響を低減する。
【解決手段】被写体を撮像して画像データを生成する撮像手段と、前記画像データに基づいて、前記被写体の光源色及び輝度を判定する判定手段と、前記判定手段により判定された光源色に基づいて、前記画像データにおいて特定の色の被写体が含まれる領域を検出する第1検出手段と、前記判定手段による判定とは無関係に予め定められた光源色に基づいて、前記画像データにおいて前記特定の色の被写体が含まれる領域を検出する第2検出手段と、前記第1検出手段の検出結果、及び前記第2検出手段の検出結果に基づいて、前記撮像手段の露出制御を行う制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記判定手段により判定された前記被写体の輝度に基づき、前記予め定められた光源色が前記被写体の光源色である可能性が高いほど、前記第2検出手段の検出結果の重み付けを大きくして、前記露出制御を行うことを特徴とする撮像装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、デジタルカメラなどの撮像装置において被写体の色を利用して露出制御を行う技術が知られている。例えば、特許文献1には、人物などを撮影する場合に、撮影画面内の人物の顔(肌色領域)を検出し、顔を適正な輝度で撮影できるように露出制御を行う技術が提案されている。また、特許文献2には、被写体の色に応じた反射率の相違による影響を抑えるように露出制御を行う技術が提案されている。
【0003】
ところで、デジタルカメラにより撮像される画像においては、被写体の色は光源色に応じて異なった色で表現される。従って、被写体の色を正確に識別するためには、光源色に応じた色の変化を加味する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−041830号公報
【特許文献2】特開2001−228501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、画像撮像時に光源を正確に識別することは困難であり、光源の誤検出が発生する場合もある。従って、撮像画像に基づいて被写体の色を自動的に正確に識別することも困難である。
【0006】
例えば、画像において肌色の被写体が含まれる領域(肌色領域)を検出する場合、特定の光源色において肌色を表現する色相範囲に含まれる画素を検出することにより、画像中の肌色領域が検出される。従って、検出された光源が正しくない場合、肌色の被写体が検出対象の色相範囲に含まれないため、肌色領域を正しく検出することができない。この場合、検出対象の色相範囲を広めに設定すると、検出された光源が正しくなくても肌色領域の検出に成功する可能性が向上する反面、実際には肌色ではない領域まで肌色領域として誤検出する可能性も高くなる。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、被写体の色を利用して露出制御を行う際に、光源の誤検出に起因する悪影響を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第1の本発明は、被写体を撮像して画像データを生成する撮像手段と、前記画像データに基づいて、前記被写体の光源色及び輝度を判定する判定手段と、前記判定手段により判定された光源色に基づいて、前記画像データにおいて特定の色の被写体が含まれる領域を検出する第1検出手段と、前記判定手段による判定とは無関係に予め定められた光源色に基づいて、前記画像データにおいて前記特定の色の被写体が含まれる領域を検出する第2検出手段と、前記第1検出手段の検出結果、及び前記第2検出手段の検出結果に基づいて、前記撮像手段の露出制御を行う制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記判定手段により判定された前記被写体の輝度に基づき、前記予め定められた光源色が前記被写体の光源色である可能性が高いほど、前記第2検出手段の検出結果の重み付けを大きくして、前記露出制御を行うことを特徴とする撮像装置を提供する。
【0009】
なお、その他の本発明の特徴は、添付図面及び以下の発明を実施するための形態における記載によって更に明らかになるものである。
【発明の効果】
【0010】
以上の構成により、本発明によれば、被写体の色を利用して露出制御を行う際に、光源の誤検出に起因する悪影響を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係るDSC10の構成例を示すブロック図
【図2】第1の実施形態に係るDSC10の動作を示すフローチャート
【図3】特定色検出処理のための相対枠及び絶対枠の設定処理の概念図
【図4】特定色に応じた輝度オフセット値ΔCの最大値を示す図
【図5】被写体輝度BVに応じた、絶対枠及び相対枠の重み付けの一例を示す図
【図6】重み付け係数kの算出処理を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせすべてが、本発明に必須とは限らない。
【0013】
[第1の実施形態]
以下、本発明の撮像装置をデジタルスチルカメラ(DSC)に適用した実施形態について説明する。
【0014】
●(DSC10の構成)
図1は、第1の実施形態に係るDSC10の構成例を示すブロック図である。撮像レンズ11は、本実施形態ではオートフォーカス機構及びズーム機構を有するレンズであり、ズーム制御部44からの制御信号に従ってズームレンズが駆動可能であるほか、焦点制御部45からの制御信号に従ってフォーカスレンズが駆動可能である。
【0015】
絞り12は、絞り制御部43からの制御信号に従って開口の大きさが変化し、撮像素子14への入射光量を制御する。シャッタ13は、シャッタ制御部42からの制御信号に従って開閉することで、撮像素子14の露光時間を制御する。
【0016】
撮像素子14は、蓄積型の撮像素子(例えばCMOSイメージセンサ)であり、撮像素子制御部41からの制御信号に従い、画素毎に光電変換を行って電荷を蓄積し、光学像を電気信号(画像データ)に変換して出力する。
【0017】
AGC回路15は、撮像素子14が出力する画像データに対し、ゲイン制御部40からの制御信号に従ったゲイン調整を行い、A/D変換器16に出力する。A/D変換器16は、AGC回路15からの、ゲイン調整された画像データをA/D変換する。A/D変換後の画像データは、画像処理部20とメモリ制御部21とを介して、或いはメモリ制御部21のみを介して、メモリ30に書き込まれる。
【0018】
画像処理部20は、A/D変換器16又はメモリ制御部21からの画像データに対し、画素補正処理、色変換処理、AF(オートフォーカス)処理、AE(自動露出)処理、EF(ストロボプリ発光)処理、AWB(オートホワイトバランス)処理等を行う。
【0019】
システム制御部50は、画像処理部20の演算結果に基づいて、ゲイン制御部40、撮像素子制御部41、シャッタ制御部42、絞り制御部43、ズーム制御部44、焦点制御部45、及びストロボユニット46に対する制御を実行する。
【0020】
ゲイン制御部40は、AGC回路15のゲインを制御する。撮像素子制御部41は、撮像素子14の蓄積時間及び画素加算数を制御する。シャッタ制御部42は、シャッタ13の開閉動作を制御する。絞り制御部43は、絞り12の開口の大きさを制御する。ズーム制御部44は、撮像レンズ11のズーミングを制御する。焦点制御部45は、撮像レンズ11が有するフォーカスレンズを駆動し、焦点位置を制御する。ストロボユニット46は、AF補助光の投光機能、及びストロボ調光機能を有する。
【0021】
システム制御部50は、例えばCPU、ROM、及びRAMを有し、DSC10全体の動作を制御する。なお、システム制御部50が、上述したゲイン制御部40、撮像素子制御部41、シャッタ制御部42、絞り制御部43、ズーム制御部44、及び焦点制御部45の制御の少なくとも一部を実行してもよい。
【0022】
メモリ30は、システム制御部50の動作用の定数、変数、及びプログラム等を記憶している。表示部32は、例えばLCDであり、システム制御部50の制御に従い、メニュー画面や、DSC10の各種情報などの表示を行う。また、本実施形態のDSC10は、撮像スタンバイ状態において、連続的に撮像を行って撮像画像を表示部32に表示することで、表示部32を電子ビューファインダとして機能させるものとする。
【0023】
シャッタスイッチ60は、シャッタスイッチSW1とSW2とを含み、シャッタスイッチSW1は、シャッタボタン(不図示)の半押しでオンし、シャッタスイッチSW2は、シャッタボタンの全押しでオンする。
【0024】
シャッタスイッチSW1のオンは、システム制御部50によって撮像準備処理の開始指示として認識され、システム制御部50は、AF(オートフォーカス)処理、及びAE(自動露出)処理等の動作を開始する。また、シャッタスイッチSW2のオンは、本撮像(記録用画像の撮像)処理の開始指示としてシステム制御部50に認識される。本撮像処理において、システム制御部50は、AE処理に従った絞り値とシャッタ速度(露光時間)で撮像素子14を露光する露光制御を行う。ストロボ撮像モードの場合、システム制御部50は、ストロボユニット46の発光制御も行う。
【0025】
また、システム制御部50は、撮像素子14で得られた画像データをA/D変換器16、及びメモリ制御部21を介してメモリ30に書き込む。更にシステム制御部50は、画像処理部20での演算結果を用いて、メモリ30に存在する画像データに現像処理(色補間処理など)を行う。更にシステム制御部50は、現像処理後の画像データをメモリ30から読み出し、例えば画像ファイルの形式で記録部70が有する記録媒体に書き込む記録処理を実行する。なお、システム制御部50は、必要に応じて画像データの符号化も実行する。記録部70は、例えば半導体メモリカードのような記録媒体を備え、システム制御部50の制御に従って記録媒体に対するデータの読み書きを行う。
【0026】
●(DSC10の動作)
次に、図2に示すフローチャートを参照して、DSC10の動作を説明する。本フローチャートの処理は、DSC10の電源がオンされ撮影モードに設定されると開始する。後述するS102における初回蓄積制御の後、DSC10は撮像スタンバイ状態になる。上述のように、撮像スタンバイ状態でDSC10は連続的な撮像を行っており、表示部32が電子ビューファインダとして機能している。
【0027】
最初にS102で、システム制御部50は、測光用の最初の蓄積制御(初回蓄積制御)を実行する。具体的には、システム制御部50は、DSC10に要求される測光範囲の中心の輝度に対応する出力が撮像素子14のダイナミックレンジ(最小出力値乃至最大出力値)の中央値となる蓄積時間(Tv0)及び画素加算数(Kv0)を設定する。例えば、本実施形態では要求される測光範囲がBV−5乃至+15であるため、システム制御部50は、その中心であるBV5の輝度に対応する出力が撮像素子14のダイナミックレンジの中央値となるような露出制御値Pを設定する。なお、本実施形態では、蓄積制御の際には絞り12が常に開放状態であるものとして説明を行うが、予め決められたプログラム線図に従って絞り12を設定するようにしてもよい。
【0028】
そして、システム制御部50は、設定した蓄積時間で測光用の蓄積(撮像)を行う。設定した蓄積時間が終了すると、システム制御部50は、画像処理部20に、得られた撮像画像を分割した複数の測光エリア(分割領域)の各々について、輝度に関する測光出力値Yを算出させる。本実施形態では、画像を横に6分割、縦に4分割し、計24の測光エリアを設定するものとする。なお、測光エリアの分割数は上記の数に限定されるものではなく、測光エリアの形も撮像画像を縦横に等間隔に分割した形でなくてもよい。
【0029】
次に、システム制御部50は、画像処理部20が算出した測光エリア毎の測光出力値Yについて、重み付け係数kによる加重平均値Ywを以下のように算出する。
Yw=Σ(Yij×kij)/Σkij
ここで、i,jは測光エリアの場所を表す添字であり、本実施形態では横6×縦4の測光エリアが存在するので、i:0〜5,j:0〜3である。重み付け係数kは、測光モードなどに応じて規定されており、例えば中央重点測光モードの場合、画像の中央付近の測光エリアに対応する重み付け係数kは、画像の周辺付近の測光エリアに対応する重み付け係数kよりも大きい。また、重み付け係数kは、後述するように肌色検出の結果等によっても変化する。
【0030】
システム制御部50は更に、算出した加重平均値Ywと露出制御の目標輝度値との差を以下のように算出する。
ΔY=log2(Yw/Ytarget)
ここで、目標輝度値Ytargetは、加重平均値Ywの目標とする値である。
【0031】
システム制御部50は、次式に従い、加重平均値Ywが目標輝度値Ytargetに近づくように次回の露出制御値Pを設定する。
P(次回)=P(初回)+ΔY
【0032】
S103で、システム制御部50は、シャッタスイッチSW1がオンであるか否かを判定する。オンの場合、処理はS104に進み、そうでない場合、S103における判定が繰り返される。
【0033】
S104で、システム制御部50は、露出制御値Pに基づいて撮像素子14の蓄積時間を決定し、蓄積処理を行い、画像データを生成する。
【0034】
S105で、システム制御部50は、S104で生成した画像データに基づき、光源色の色温度と、この光源色において撮像素子14で無彩色を撮影したときのRGB値とを判断する。ここで判断されたRGB値は、次のS106における特定色検出処理で利用される。
【0035】
S106で、システム制御部50は、特定色検出処理を行い、次のS107におけるAE処理で用いる重み付け係数kと、輝度オフセット値ΔCを算出する。なお、特定色検出処理の詳細は、図3及び図6を参照して後述する。また、重み付け係数k及び輝度オフセット値ΔCの算出処理の詳細は、図4乃至図6を参照して後述する。
【0036】
S107で、システム制御部50は、画像処理部20に対して、S104で生成した画像データに基づいてAE処理用の画像処理を実行させる。ここで画像処理部20は、測光エリア毎の測光出力値Yに輝度オフセット値ΔCを加算したものについて、重み付け係数kによる加重平均値Ywを算出する。
Yw=Σ((Yij+ΔCij)×kij)/Σkij
【0037】
そしてシステム制御部50は、加重平均値Yw、蓄積時間、及び絞り12の絞り値から得られる被写体輝度に基づいて、本撮像時の露出制御値(シャッタ速度、絞り値、感度など)を決定する。なお、露出制御値の決定には任意の知られている技術を利用可能であるため、その詳細な説明を省略する。
【0038】
システム制御部50は更に、算出した加重平均値Ywと露出制御の目標輝度値との差を以下のように算出する。
ΔY=log2(Yw/Ytarget)
ここで、目標輝度値Ytargetは、加重平均値Ywの目標とする値である。
【0039】
システム制御部50は、次式に従い、加重平均値Ywが目標輝度値Ytargetに近づくように、次回の露出制御値Pを設定する。
P(次回)=P(今回)+ΔY
【0040】
S108で、システム制御部50は、画像処理部20を用いて、入力された画像データに基づく既知のコントラスト方式のAF(オートフォーカス)処理を行う。
【0041】
S109で、システム制御部50は、本撮像処理の開始指示のためのシャッタスイッチSW2がオンであるか否かを判定する。オンの場合、処理はS110に進み、そうでない場合、処理はS103に戻る。S110で、システム制御部50は、S107のAE処理で算出した本撮像時の露出制御値に基づいて、本撮像処理を実行する。
【0042】
●(特定色検出処理)
次に、S106における特定色検出処理の詳細について説明する。本実施形態のDSC10が有する撮像素子14は、原色カラーフィルタを備えており、各画素は、R(赤)、G(緑)、又はB(青)のいずれかに対応する分光特性を有している。RGBの値は、以下の式によりColorX−Y色空間のパラメータに変換可能である。
ColorX={R−B}/{R+2×G+B}
ColorY={(R+B)−2×G}/{R+2×G+B}
【0043】
ここで図3(a)を参照すると、ColorX−Y色空間上に、約2000〜12000Kの範囲の黒体輻射の軌跡100が示されている。また、図3(a)において、蛍光灯101及び電球102は、それぞれの光源下で無彩色を撮影したときの撮像素子14のRGB出力をColorX,ColorYに変換してプロットしたものである。
【0044】
上記のColorX−Y色空間は、Bに対してRが相対的に大きいほど、ColorXは大きくなる。また、R及びBの合計値がGに対して相対的に大きいほど、ColorYが大きくなる。黒体輻射の軌跡100上には、晴天日陰103(7800K)、晴天日向104(5000K)、及び夕焼け105(3000K)のColorX、ColorY座標がプロットされている。色温度が高くなるほど相対的にBが大きくなるため、ColorXが小さくなっている。また、蛍光灯下では、GがR及びBの合計値に対して相対的に大きいため、黒体輻射の軌跡よりもColorYが小さい。
【0045】
図3(b)は、ColorX−Y色空間において、光源が晴天日陰、晴天日向、及び蛍光灯の場合の、肌色が分布する範囲を示している。肌色は、各種光源から、黒体輻射の軌跡100に沿って相対的に右上に存在することが分かっている。そこで、システム制御部50は、S105で検出した光源のRGB値をColorX−Y座標に変換し、その後、光源座標から黒体輻射の軌跡100に沿って右上に肌色検出用の相対枠110を設定する。図3(c)は、光源が晴天日向の場合の相対枠110の一例を示す。相対枠110は、光源に応じてその位置が変化するため、「相対」枠と呼ばれる。
【0046】
ところで、光源色検出結果が誤差を伴う場合、相対枠110を利用すると肌色領域が検出されない可能性がある。また、日向と日陰が混在するような撮影シーンにおいては、相対枠110が晴天日向に対応して設定された場合は日陰に存在する肌色領域が検出されず、相対枠110が晴天日陰に対応して設定された場合は日向に存在する肌色領域が検出されない可能性がある。
【0047】
そこで、本実施形態では、システム制御部50は、図3(d)に示すように、晴天日向及び晴天日陰の両方に対応する絶対枠120を設定し、相対枠110及び絶対枠120の両方を肌色領域の検出に利用する。絶対枠120は、検出された光源が「晴天日向」又は「晴天日陰」の場合だけではなく、その他の光源(例えば、「蛍光灯」)の場合にも設定される。このように、絶対枠120は光源に関わらず同じ位置に設定されるため、「絶対」枠と呼ばれる。
【0048】
システム制御部50は、このように設定された相対枠110について肌色領域の検出(第1検出)を行い、更に、絶対枠120についても肌色領域の検出(第2検出)を行う。例えば図6(a)に示すように、外光下の撮影シーンにおいて、顔の右側に日が当たっており、顔の左側が陰になっている場合を考える。システム制御部50は、図6(b)に示すように、画像データを6×4の分割エリア200に分割して肌色領域の検出を行う(即ち、検出は分割領域の単位で行われる)。この場合、絶対枠120については、図6(c)に示すように絶対枠肌色領域210が検出され、相対枠110については、図6(d)に示すように相対枠肌色領域220が検出される。
【0049】
このように、肌色領域は、相対枠110及び絶対枠120のそれぞれについて、独立して検出される。システム制御部50は、両検出結果を所定の重み付けで利用する。これにより、被写体の色を利用して露出制御を行う際に、光源の誤検出に起因する悪影響を低減することが可能となる(詳細は図4乃至図6を参照して後述する)。
【0050】
なお、ここでは肌色領域を検出する場合を例にとって相対枠110及び絶対枠120設定方法を説明したが、他の色の領域を検出する場合も同様の方法で相対枠及び絶対枠を設定可能である。即ち、本実施形態の構成は、画像データにおいて任意の特定の色の被写体が含まれる領域を検出するために利用可能である。
【0051】
また、絶対枠は、「晴天日向」及び「晴天日陰」に対応するものに限定される訳ではなく、重視する撮影シーンに応じて適宜設定可能である。例えば、「夕焼け」及び「電球」の両方に対応する絶対枠を設定してもよいし、「電球」のみに対応する絶対枠を設定してもよい。
【0052】
また、図3を参照して説明した特定色検出処理は、一例に過ぎない。本実施形態において重要なことは、DSC10が、光源検出処理により判定された光源色に基づく検出、及び、判定された光源色とは無関係に予め定められた光源色に基づく検出の両方を行うことである。
【0053】
●(輝度オフセット値ΔCの算出処理)
次に、S106における輝度オフセット値ΔCの算出処理の詳細について説明する。一般的に、DSCは、光源からの光が被写体に当たって反射した、反射光を測光する。そのため、反射率の高い菜の花(黄色)のような被写体は、測光値が高くなるために露出アンダー目の写真となる。また、反射率の低い木の葉(深緑)のような被写体は、測光値が低くなるために露出オーバー目の写真となる。
【0054】
そこで、システム制御部50は、各エリアの特定色検出結果に応じて、各エリアの測光値(輝度)を調整する輝度オフセット値ΔCを算出する。図4は、特定色に応じたΔCの最大値を示す。例えば黄色い被写体は、測光値を最大で1.0段低めにすることで、1.0段露出オーバー目の写真となる。
【0055】
また、絶対枠120に関して検出された特定色は、絶対枠120に対応する光源(図3(d)の例では、晴天日向及び晴天日陰)でのみ意味を持つ。S105における光源検出結果に関わらず本当の光源が晴天日向又は晴天日陰であるか否かは、被写体輝度BVに基づいて判断することができる。被写体輝度BVは、測光エリア毎のセンサ出力値Yの平均値Y_ave、蓄積時間、及び絞り値から算出可能である。BVが高い場合、光源が晴天日向又は晴天日陰である可能性が高く、BVが低い場合、光源が晴天日向又は晴天日陰である可能性は低い。そこで、システム制御部50は、BVに応じて、絶対枠120に対応するΔCの重み付けを決定する。
【0056】
図5は、被写体輝度BVに応じた、絶対枠及び相対枠の重み付けの一例を示す図である。絶対枠については、BVが大きいほど光源が絶対枠に対応している可能性が高いため、重み付けも大きい。他方、相対枠については、光源はS105において検出されたものであるため、BVに関わらず重み付けは一定である。例えば、BV=9の場合、相対枠の重み付けは0.4であり、絶対枠の重み付けも0.4である。相対枠及び絶対枠の両方について特定色が検出された場合には、その加算値である0.8が最終的な重み付けとして使用される。最終的な輝度オフセット値ΔCは以下の式より算出される。
ΔC=ΔC(max)×(最終的な重み付け)
【0057】
また、前述のように、絶対枠は他の光源、例えば「電球」に対応するように設定されてもよい。この場合、絶対枠の重み付けが、BVが本当の光源が電球である可能性の高い値を取る場合に大きくなり、そうでない場合に小さくなるように、図5のグラフが適宜修正される。換言すると、絶対枠に対応する光源色が被写体の本当の光源色である可能性が高いほど、相対枠の検出結果に対する絶対枠の検出結果の比重が大きくなる。
【0058】
輝度オフセット値ΔCを上記のように設定し、上述したS107のAE処理で使用することにより、被写体の色を利用して露出制御を行う際に、光源の誤検出に起因する悪影響を低減することが可能となる。
【0059】
●(重み付け係数kの算出処理)
次に、S106における重み付け係数kの算出処理の詳細について説明する。重み付け係数kは、DSC10の撮像モード、測光モード、又は撮影シーンなどに応じて各測光エリアの測光出力値の重み付けを変えるための係数である。例えば、測光モードが中央重点測光モードであれば、画像の中央付近の測光エリアに対する重み付け係数を画像の周辺付近に対する重み付け係数よりも大きくする。また、評価測光モードであれば、肌色等の特徴領域に対応する測光エリアに対する重み付け係数を他の測光エリアに対する重み付け係数よりも大きくする。ここでは特に、人物の顔(肌色領域)に応じた重み付け係数kの算出処理について説明する。
【0060】
例えば図6(a)に示すように、外光下の撮影シーンにおいて、顔の右側に日が当たっており、顔の左側が陰になっている場合を考える。前述の通り、システム制御部50は、図6(b)に示すように、画像データを6×4の分割エリア200に分割して肌色領域の検出を行う。この場合、絶対枠120については、図6(c)に示すように絶対枠肌色領域210が検出され、相対枠110については、図6(d)に示すように相対枠肌色領域220が検出される。
【0061】
そして、システム制御部50は、輝度オフセット値ΔCの算出処理の場合と同様、被写体輝度BVに応じて、重み付け係数kを決定する。具体的には、システム制御部50は、図5のグラフに従い、絶対枠及び相対枠のそれぞれについて重み付け係数を決定する(図6(c)及び図6(d)参照)。システム制御部50は、それぞれの重み付け係数を合計することにより、各測光エリアの最終的な重み付け係数kを算出する(図6(e)参照)。但し、絶対枠及び相対枠のいずれにおいても肌色が検出されなかった測光エリアについては、重み付け係数k=0.1とする。
【0062】
重み付け係数kを上記のように設定し、上述したS107のAE処理で使用することにより、被写体の色を利用して露出制御を行う際に、光源の誤検出に起因する悪影響を低減することが可能となる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態によれば、DSC10は、光源検出処理により判定された光源色に応じて設定される相対枠、及び、光源検出処理とは無関係に特定の光源色に対応して設定される絶対枠の両方について、画像データにおいて特定の色の被写体の領域を検出する処理を行う。そして、DSC10は、相対枠及び絶対枠それぞれに関する特定色検出結果に基づき、露出制御を行う。この際に、DSCは、被写体輝度BVに基づき、絶対枠に対応する特定の光源色が被写体の本当の光源色である可能性が高いほど、相対枠の特定色検出結果に対する絶対枠の特定色検出結果の比重を大きくする。これにより、被写体の色を利用して露出制御を行う際に、光源の誤検出に起因する悪影響を低減することが可能となる。
【0064】
[その他の実施形態]
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像して画像データを生成する撮像手段と、
前記画像データに基づいて、前記被写体の光源色及び輝度を判定する判定手段と、
前記判定手段により判定された光源色に基づいて、前記画像データにおいて特定の色の被写体が含まれる領域を検出する第1検出手段と、
前記判定手段による判定とは無関係に予め定められた光源色に基づいて、前記画像データにおいて前記特定の色の被写体が含まれる領域を検出する第2検出手段と、
前記第1検出手段の検出結果、及び前記第2検出手段の検出結果に基づいて、前記撮像手段の露出制御を行う制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記判定手段により判定された前記被写体の輝度に基づき、前記予め定められた光源色が前記被写体の光源色である可能性が高いほど、前記第2検出手段の検出結果の重み付けを大きくして、前記露出制御を行う
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記画像データを複数の分割領域に分割する分割手段を更に備え、
前記第1検出手段、及び前記第2検出手段は、前記特定の色の被写体が含まれる領域を前記分割領域の単位で検出し、
前記制御手段は、前記複数の分割領域それぞれの輝度を判定し、当該判定された輝度に基づいて前記露出制御を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記特定の色の被写体が含まれる分割領域については、前記判定された輝度を当該特定の色に応じて補正する
ことを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記特定の色は、人物の顔の色を含み、
前記制御手段は、当該人物の顔の色の被写体が含まれる分割領域の重み付け係数を他の分割領域よりも大きくして、前記複数の分割領域それぞれの輝度の加重平均値を算出し、当該加重平均値に基づいて前記露出制御を行う
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の撮像装置。
【請求項5】
被写体を撮像して画像データを生成する撮像手段を備える撮像装置の制御方法であって、
前記撮像装置の判定手段が、前記画像データに基づいて、前記被写体の光源色及び輝度を判定する判定工程と、
前記撮像装置の第1検出手段が、前記判定工程により判定された光源色に基づいて、前記画像データにおいて特定の色の被写体が含まれる領域を検出する第1検出工程と、
前記撮像装置の第2検出手段が、前記判定工程による判定とは無関係に予め定められた光源色に基づいて、前記画像データにおいて前記特定の色の被写体が含まれる領域を検出する第2検出工程と、
前記撮像装置の制御手段が、前記第1検出工程の検出結果、及び前記第2検出工程の検出結果に基づいて、前記撮像手段の露出制御を行う制御工程と、を備え、
前記制御工程において前記制御手段は、前記判定工程により判定された前記被写体の輝度に基づき、前記予め定められた光源色が前記被写体の光源色である可能性が高いほど、前記第2検出工程の検出結果の重み付けを大きくして、前記露出制御を行う
ことを特徴とする制御方法。
【請求項6】
コンピュータに、請求項5に記載の制御方法の各工程を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−78086(P2013−78086A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218323(P2011−218323)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】