説明

撮像装置、撮像方法

【課題】ロックイン撮像により取得された画像の信号雑音比を上げること。
【解決手段】本発明は、光源と、自身と光源との間の光路中に置かれた測定対象を撮像するカメラと、を備える撮像装置に適用される。本発明の撮像装置は、光源のON期間中にカメラで撮像された複数のフレーム画像から、光源のOFF期間中にカメラで撮像された同数のフレーム画像を差し引き、その差画像を積分する制御部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源およびカメラを備え、両者の間の光路中に測定対象を置く撮像装置に関し、特に、光源のON/OFFと同期させて測定対象の撮像を行う撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源およびカメラを備え、両者の間の光路中に測定対象を置く撮像装置がある。この撮像装置において、光源のON/OFFに同期させて測定対象の撮像(所謂、ロックイン撮像)を行うことにより、光源以外の輻射による画像を除去することができると共に、1/fノイズのような低周波ノイズを相殺することができる。
【0003】
例えば、非特許文献1に記載されているように、赤外線領域からTHz(テラヘルツ)領域に感度があるカメラに対し、周期的にON/OFFを繰り返すTHz光源からのTHz波を入射させた場合、カメラでは、赤外線と周期的なTHz波とが重畳された電磁波が検出され画像化される。THz光源のON期間中の画像データとOFF期間中の画像データとの差を取ることにより、赤外画像を相殺してTHz画像だけを取得することができる。それにより、赤外線を遮断しTHz波だけを透過させるフィルターが不要になる。
【0004】
上述の撮像装置の具体的な配置を図8に示す。
【0005】
図8に示すように、冷凍機101に取り付けたQCL(Quantum Cascade Laser:量子カスケードレーザ)102から出射された4.3THz(波長70μm)のTHz波は、軸外し放物面鏡103により平行光線になり、次の軸外し放物面鏡104により封筒(測定対象)105に照射される。封筒105を透過したTHz波は、Siレンズ106によりマイクロボロメータカメラ(フレームレート60Hz)107中の320x240画素のマイクロボロメータアレイセンサ108に集光され画像化される。
【0006】
図8に示した撮像装置において、ロックイン撮像を行う方法を図9に示す。
【0007】
図9に示すように、Frame1でQCL102をON、Frame2とFrame3でQCL102をOFFにする。
【0008】
Frame1では、赤外線とQCL102からのTHz波とがマイクロボロメータアレイセンサ108に集光されて画像化され、Frame2とFrame3では、赤外線だけがマイクロボロメータアレイセンサ108に集光されて画像化される。
【0009】
そこで、Frame1の画像データとFrame3の画像データとの差を取ることにより、QCL102からのTHz波だけを画像化したTHz画像を取得することができる。
【0010】
なお、Frame2を使わない理由は、Frame1が切り替わってから、マイクロボロメータアレイセンサ108の熱時定数である約13msecよりも十分長い時間を置くことにより、Frame1との間の画像データの差を大きくするためである。
【0011】
図9に示した方法により、鉛筆で“MIT”という文字を書いた紙109を入れた封筒105を、フレームレート20Hzで撮像したTHz画像110を図10に示す。このように、封筒105を開封せずに“MIT”の文字を確認することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】A. W. M. Lee等、IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS、第18巻、2006年、1415〜1417頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述した撮像装置においては、光源のON期間中の1枚の画像データとOFF期間中の1枚の画像データとの差を取るだけなので、信号雑音比が思ったほど上がらないという課題があった。
【0014】
そこで、本発明の目的は、上述した課題を解決することができる撮像装置、撮像方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の撮像装置は、
光源と、自身と前記光源との間の光路中に置かれた測定対象を撮像するカメラと、を備える撮像装置であって、
前記光源のON期間中に前記カメラで撮像された複数のフレーム画像から、前記光源のOFF期間中に前記カメラで撮像された同数のフレーム画像を差し引き、その差画像を積分する制御部を備える。
【0016】
本発明の第2の撮像装置は、
光源と、自身と前記光源との間の光路中に置かれた測定対象を撮像するカメラと、を備える撮像装置であって、
前記光源のON期間中に前記カメラで撮像された複数のフレーム画像を積分し、前記光源のOFF期間中に前記カメラで撮像された同数のフレーム画像を積分し、前記光源のON期間中の積分画像から前記光源のOFF期間中の積分画像を差し引き、その差画像を取得する制御部を備える。
【0017】
本発明の第1の撮像方法は、
光源と、自身と前記光源との間の光路中に置かれた測定対象を撮像するカメラと、を備える撮像装置による撮像方法であって、
前記光源のON期間中に前記カメラで撮像された複数のフレーム画像から、前記光源のOFF期間中に前記カメラで撮像された同数のフレーム画像を差し引き、
その差画像を積分する。
【0018】
本発明の第2の撮像方法は、
光源と、自身と前記光源との間の光路中に置かれた測定対象を撮像するカメラと、を備える撮像装置による撮像方法であって、
前記光源のON期間中に前記カメラで撮像された複数のフレーム画像を積分し、
前記光源のOFF期間中に前記カメラで撮像された同数のフレーム画像を積分し、
前記光源のON期間中の積分画像から前記光源のOFF期間中の積分画像を差し引き、
その差画像を取得する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の撮像装置および第1の撮像方法によれば、光源のON期間中の複数のフレーム画像から、光源のOFF期間中の同数のフレーム画像を差し引き、その差画像を積分する。
【0020】
本発明の第2の撮像装置および第2の撮像方法によれば、光源のON期間中の複数のフレーム画像の積分画像から、光源のOFF期間中の同数のフレーム画像の積分画像を差し引き、その差画像を取得する。
【0021】
したがって、本発明は、光源のON期間中の1枚の画像と光源のOFF期間中の1枚の画像との差を取って差画像を取得する関連技術と比較して、信号雑音比を高めることが可能になるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態の撮像装置の構成を示す図である。
【図2】本実施形態の撮像装置において用いられるパルス列を説明する図である。
【図3A】本実施形態の撮像装置において、画像データの位相を補償するための機能を説明する図である。
【図3B】本実施形態の撮像装置において、撮影タイミング信号、外部IF出力タイミング信号および画像取り込みタイミング信号の関係を説明する図である。
【図4A】本実施形態の撮像装置において、THz光源のON期間中の画像、OFF期間中の画像およびこれらの差画像を格納する第1の方法を説明する図である。
【図4B】本実施形態の撮像装置において、THz光源のON期間中の画像、OFF期間中の画像およびこれらの差画像を格納する第2の方法を説明する図である。
【図4C】本実施形態の撮像装置において、THz光源のON期間中の画像、OFF期間中の画像およびこれらの差画像を格納する第3の方法を説明する図である。
【図4D】本実施形態の撮像装置において、THz光源のON期間中の画像、OFF期間中の画像およびこれらの差画像を格納する第4の方法を説明する図である。
【図4E】本実施形態の撮像装置において、THz光源のON期間中の画像、OFF期間中の画像およびこれらの差画像を格納する第5の方法を説明する図である。
【図4F】本実施形態の撮像装置において、THz光源のON期間中の画像およびOFF期間中の画像を格納する方法を説明する図である。
【図5】本実施形態の撮像装置で用いたサンプルを説明する図である。
【図6】本実施形態の撮像装置において、図5のサンプルに対し、THz光源ON期間中の複数の画像の積分画像からOFF期間中の複数の画像の積分画像を差し引いた差画像を示す図である。
【図7】本実施形態の撮像装置において、図5のサンプルに対し、THz光源ON期間中の1枚の画像からOFF期間中の1枚の画像を差し引いた差画像を示す図である。
【図8】関連する撮像装置の構成を示す図である。
【図9】関連する撮像装置において、差画像を取得する方法を説明する図である。
【図10】関連する撮像装置を用いて取得したTHz透過画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0024】
図1に、本実施形態の撮像装置の構成を示す。
【0025】
図1に示すように、本実施形態の撮像装置は、THz光源1と、THzカメラ4と、1/n逓倍回路6と、高圧パルス電源8と、論理積回路10と、駆動回路12と、画像データ取得装置13と、を有している。また、画像データ取得装置13は、CPU14と、バッファ15と、位相補償回路16と、を有している。
【0026】
なお、図1において、CPU14は制御部の一例であり、高圧パルス電源8は第1のパルス回路の一例であり、1/n逓倍回路6は第2のパルス回路の一例である。
【0027】
THz光源1からのTHz波2は、サンプル(測定対象)3に照射され、反射波または透過波としてTHzカメラ4で検出され画像化される。本実施形態では、THz波2が反射波として検出されるものとする。
【0028】
THzカメラ4の撮影タイミングを表すSync信号(撮影タイミング信号)5は、THzカメラ4から1/n逓倍回路6に入力され、1/n逓倍回路6は、Sync信号5を1/nに逓倍してパルス列7(第2のパルス列)を生成する。
【0029】
パルス列7は、高圧パルス電源8からのパルス列9(第1のパルス列)と共に論理積回路10に入力され、論理積回路10は、パルス列7とパルス列9を基に新しいパルス列11(第3のパルス列)を生成する。
【0030】
パルス列11は、駆動回路12に入力され、駆動回路12は、パルス列11に従ってTHz光源1を発振(駆動)させる。
【0031】
このように、THzカメラ4は、THz光源1のON/OFFの周期とTHzカメラ4の撮影タイミングとの同期を取ることによってサンプル3のロックイン撮像を行う。THzカメラ4で撮像されたフレーム画像(以下、フレーム画像を単に「画像」と呼ぶことにする)の画像データは、画像データ取得装置13に記録される。
【0032】
ここで、本実施形態の撮像装置の具体的な実施例について述べる。
【0033】
THz光源1としては、周波数3.1THzの輝線を放射するQCL(量子カスケードレーザ)を用いる。
【0034】
高圧パルス電源8からのパルス列9は、パルス幅300nsecであり、繰返し周波数1kHzである。
【0035】
THzカメラ4からのSync信号5は、60Hzの矩形波である。
【0036】
1/n逓倍回路6は、nの値が任意に設定可能であり、設定されたnの値でSync信号5を1/nに逓倍して、例えば、15Hz、7.5Hzおよび3.75Hzの矩形のパルス列7を生成する。なお、パルス列7の周波数をロックイン周波数と呼ぶ。
【0037】
パルス列7は、パルス列9と共に論理積回路10に入力され、図2に示すように、論理積回路10は、パルス列7とパルス列9とのANDを演算してパルス列11を生成する。駆動回路12は、パルス列11に従ってTHz光源(QCL)1を発振させる。図2は、ロックイン周波数が3.75Hzの場合の例である。
【0038】
図2に示すように、パルス列7が3.75Hzの場合、THz光源(QCL)1のON期間133.3msecに、フレームレート60Hzの8枚の画像がTHzカメラ4により画像化され、その画像データが画像データ取得装置13に記録され、積分等の画像処理が行われる。以下では、ロックイン周波数が3.75Hzであるものとして説明する。
【0039】
ここで、画像データ取得装置13の内部に設けられた位相補償回路16の機能について、図3Aおよび図3Bを参照して説明する。
【0040】
図3Aに示すように、THzカメラ4は、THzアレイセンサ17と、読出回路18と、補正回路19と、バッファ20と、USB(Universal Serial Bus)等の外部IF(インターフェース)21と、を有している。
【0041】
THzカメラ4の内部では、THzアレイセンサ17の一部である読出回路18は、Sync信号5に同期して、THzアレイセンサ17で画像化された画像データを取得する。これにより、画像データが更新される(以下、この画像データを内部画像データと呼ぶことにする)。
【0042】
また、THzカメラ4の内部では、THzアレイセンサ17のセンサ素子毎の感度ばらつきや環境温度変化に伴うセンサ素子の感度変動等、様々な外乱の影響を軽減するために、補正回路19により画像データの補正処理が行われる。
【0043】
THzカメラ4の外部には、補正回路19による補正処理後の画像データが出力(以下、この画像データを外部出力画像データと呼ぶことにする)されることになる。そのため、外部出力画像データの更新タイミングと内部画像データの更新タイミングは異なることになる。また、外部出力画像データは、データの欠落を防ぐために、通常、THzカメラ4の内部に設けられたバッファ20を経由して外部IF21に出力されるので、さらに更新タイミングがずれることになる。例えば、データ更新用の書き込みバッファと外部IF出力用の読み出しバッファの2つのバッファを用いて処理を行う場合には、補正回路19での補正処理による遅延に加えて、1フレーム分更新タイミングがずれる。
【0044】
図3Bは、Sync信号5と外部IF出力タイミング信号22とのずれの一例を示している。ここで、図3Bの外部IF出力タイミング信号22とは、外部出力画像データの更新タイミングを表す信号である。このずれのため、Sync信号5と同期してTHzカメラ4の外部出力画像データをCPU14に取り込むと、フレームを跨いだ画像やフレームが遅延した画像の画像データが取得されてしまい、画像データ取得装置13で正確な画像処理を行うことができなくなるという問題がある。
【0045】
この問題を解決するために、本実施形態では、位相補償回路16は、Sync信号5の位相と外部出力画像データの位相の位相差を補償する。具体的には、位相補償回路16は、Sync信号5を所定時間(補正回路19の補正処理時間+バッファ20の更新時間)だけ遅延させて画像取り込みタイミング信号23を生成し、CPU14は、画像取り込みタイミング信号23に基づいて、THzカメラ4から外部出力画像データを取り込む。
【0046】
次に、画像データ取得装置13内のCPU14がバッファ15に、THz光源(QCL)1のON期間中の画像データ、OFF期間中の画像データ、およびこれらの差画像の画像データを格納する方法の例について、図4A〜図4Eを参照して説明する。
【0047】
図4Aに示す第1の方法では、3種類のバッファX,Y,Zを用意する。そして、バッファXを構成する8個のバッファメモリX1〜X8にTHz光源1のON期間中に取得した8枚の画像データを格納し、バッファYを構成する8個のバッファメモリY1〜Y8にOFF期間中に取得した8枚の画像データを格納し、それらの差画像の画像データを、バッファZを構成する8個のバッファメモリZ1〜Z8に格納する。
【0048】
図4Bに示す第2の方法では、2種類のバッファX,Yを用意する。そして、バッファXを構成する8個のバッファメモリX1〜X8にTHz光源1のON期間中に取得した8枚の画像データを格納し、バッファYを構成する8個のバッファメモリY1〜Y8にOFF期間中に取得した8枚の画像データを格納し、それらの差画像の画像データを、バッファXを構成する8個のバッファメモリX1〜X8に再び格納する。
【0049】
図4Cに示す第3の方法では、2種類のバッファX,Yを用意する。そして、バッファXを構成する8個のバッファメモリX1〜X8にTHz光源1のON期間中に取得した8枚の画像データを格納し、バッファYを構成する8個のバッファメモリY1〜Y8にOFF期間中に取得した8枚の画像データを格納し、それらの差画像の画像データを、バッファYを構成する8個のバッファメモリY1〜Y8に再び格納する。
【0050】
図4Dに示す第4の方法では、2種類のバッファX,Yを用意する。ただし、一方のバッファXのバッファメモリの数は、上記の第2および第3の方法と同様に8個であるが、他方のバッファYのバッファメモリの数は、上記の第2および第3の方法とは異なり、2個である。つまり、まず、バッファXを構成する8個のバッファメモリXi(i=1,2,…,8)にTHz光源1のON期間中に取得した8枚の画像データを格納する。次に、バッファYを構成する1番目のバッファメモリY1にOFF期間中の1枚目の画像データを格納し、ON期間中の1枚目の画像データとの差を演算し、その差画像の画像データを、バッファXを構成する1番目のバッファメモリX1に格納する。この演算と格納を行っている間にバッファYを構成する2番目のバッファメモリY2にOFF期間中の2枚目の画像データを格納し、ON期間中の2枚目の画像データとの差を演算し、その差画像の画像データを、バッファXを構成する2番目のバッファメモリX2に格納する。この演算と格納の手順を、バッファYを構成する2個のバッファメモリY1,Y2を交互に利用して実施する。これにより、X2n+1−Y1(n=0,1,2,3)の演算結果はX2n+1に格納され、X2n−Y2(n=1,2,3,4)の演算結果はX2nに格納される。
【0051】
図4Eに示す第5の方法では、THz光源1のON期間とOFF期間の各々8枚の画像データをバッファ1に格納し、それらの差画像の画像データをバッファ2に格納する。
【0052】
CPU14は、上記のようにして得られた差画像の画像データを積分し、差画像の積分画像データを表示する。
【0053】
なお、CPU14は、上述のように、差画像の画像データを得た後に積分を行う方法以外に、差画像の画像データを得る前に積分を行う方法も実施可能である。
【0054】
すなわち、CPU14は、THz光源(QCL)1のON期間中の複数の画像データを積分し、OFF期間中の複数の画像データを積分し、ON期間中の複数の画像データの積分画像データとOFF期間中の複数の画像データの積分画像データとの差を取り、その差画像の積分画像データを表示することも可能である。
【0055】
この場合に、画像データ取得装置13内のバッファ15に、THz光源(QCL)1のON期間中の画像データおよびOFF期間中の画像データを格納する例について、図4Fを参照して説明する。
【0056】
ただし、CPU14は、差画像の画像データを得た後に積分を行う方法と、差画像の画像データを得る前に積分を行う方法と、を同時に行うことはできない。そのため、CPU14には予めいずれかの方法を設定しておくことになる。
【0057】
図4Fに示す方法では、2種類のバッファX,Yを用意する。そして、バッファXを構成する8個のバッファメモリX1〜X8にTHz光源1のON期間中に取得した8枚の画像データを格納し、バッファYを構成する8個のバッファメモリY1〜Y8にOFF期間中に取得した8枚の画像データを格納する。
【0058】
次に、上記のようにして差画像の積分画像データを求めることにより、信号雑音比が関連技術に比べて2〜3倍向上した例について、図5、図6および図7を参照して説明する。以下では、差画像の画像データを得る前に積分を行うものとする。
【0059】
図5に示すように、サンプル3として、Alテープを貼った反射板24の上に黒い布テープ25を貼った物を用意する。そして、液体窒素で冷却したTHz光源(QCL)1からの周波数3.1THzの輝線を反射板24の一部の領域26に照射し、その輝線が反射板24で反射した反射画像を、画素数320x240で画素ピッチ23.5μmであるTHzアレイセンサ17を搭載したTHzカメラ4で撮像した。
【0060】
図6は、THz光源(QCL)1からの輝線が反射板24で反射した反射画像である(中央付近の細長い部分)。細長い形状をしているのは、THz光源(QCL)1の内部に用いられている軸外し放物面鏡(図示していない)に収差があるためである。布テープ25は反射率が低いため、細長い形状の中央付近で低輝度の部分27が認められる。低輝度の部分27は布テープ25の位置28に対応する。
【0061】
図6は、ロックイン周波数として3.75Hzを選択し、THz光源1のON期間中の2枚目〜8枚目までの7枚の画像データの積分画像とOFF期間中の2枚目〜8枚目までの7枚の画像データの積分画像との差を取った差画像である。ここで最初の1枚目の画像データを使わなかった理由は、THzアレイセンサ17の時定数が16msecであるため、THz光源(QCL)1のON期間中とOFF期間中の最初のフレームの信号が十分に立ち上がっていない又は信号が十分落ち切っていないことを考慮したためである。また、バッファ15への画像データの格納方法として、上記の図4Fの方法を用いた。また、信号雑音比を更に高めるため、24×24画素の画像データを積分した。なお、図6のQCLの画像のうち右側の高輝度部29の信号雑音比は約400である。
【0062】
一方、関連技術に比べて本発明が信号雑音比をどのくらい向上させたかを確かめるために、THz光源(QCL)1のON期間中の1枚の画像データとOFF期間中の1枚の画像データとの差を取った差画像を図7に示す。この差画像は、関連技術の撮像装置の機能を再現して取得した画像に対応する。サンプル3は図6の画像取得時と同じ物である。また、図7の画像も図6と同じ形状をしている。ロックイン周波数も3.75Hzである。図7のQCLの画像のうち右側の高輝度部29の信号雑音比は約135である。
【0063】
このように、本発明(図6)においては、関連技術(図7)に比べて、信号雑音比を約2〜3倍向上できることが分かった。
【0064】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0065】
例えば、本実施形態では、THz光源1のON/OFF期間中の全8枚の画像データのうち、連続する7枚の画像データを用いたが、THzアレイセンサ17の時定数が早ければ、全8枚の画像データを用いても構わないし、1枚目〜7枚目までの7枚の画像データを用いても構わない。すなわち、本発明は、THz光源1のON/OFF期間中の全ての画像データのうち任意の連続した複数の画像データを選択して用いて構わない。
【0066】
また、本実施形態では、サンプル3で反射した反射画像を取得したが、サンプル3を透過した透過画像を取得する構成でも構わない。
【0067】
また、本実施形態では、THz周波数帯の電磁波を対象にしたが、本発明はこの周波数帯に限った技術ではなく、他の周波数帯の電磁波に対しても適用することができる。
【0068】
上記の実施の形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
光源と、自身と前記光源との間の光路中に置かれた測定対象を撮像するカメラと、を備える撮像装置であって、
前記光源のON期間中に前記カメラで撮像された複数のフレーム画像から、前記光源のOFF期間中に前記カメラで撮像された同数のフレーム画像を差し引き、その差画像を積分する制御部を備える撮像装置。
(付記2)
前記制御部は、
前記光源のON期間中に前記カメラで撮像された複数のフレーム画像を第1のバッファに格納し、
前記光源のOFF期間中に前記カメラで撮像された同数のフレーム画像を第2のバッファに格納し、
前記第1のバッファに格納された複数のフレーム画像から、前記第2のバッファに格納された同数のフレーム画像を差し引き、その差画像を第3のバッファに格納し、
前記第3のバッファに格納された差画像を積分する、付記1に記載の撮像装置。
(付記3)
前記制御部は、
前記光源のON期間中に前記カメラで撮像された全フレーム画像のうち任意の連続した複数のフレーム画像を選択し、
前記光源のOFF期間中に前記カメラで撮像された全フレーム画像のうちON期間中の複数のフレーム画像に対応する連続した同数のフレーム画像を選択する、付記2に記載の撮像装置。
(付記4)
前記制御部は、
前記第3のバッファとして、前記第1のバッファまたは前記第2のバッファを使用する、付記2または3に記載の撮像装置。
(付記5)
前記制御部は、
前記光源のON期間中に前記カメラで撮像された複数のフレーム画像と前記光源のOFF期間中に前記カメラで撮像された同数のフレーム画像を第1のバッファに格納し、
前記第1のバッファに格納された複数のフレーム画像から、前記第1のバッファに格納された同数のフレーム画像を差し引き、その差画像を第2のバッファに格納し、
前記第2のバッファに格納された差画像を積分する、付記1に記載の撮像装置。
(付記6)
光源と、自身と前記光源との間の光路中に置かれた測定対象を撮像するカメラと、を備える撮像装置であって、
前記光源のON期間中に前記カメラで撮像された複数のフレーム画像を積分し、前記光源のOFF期間中に前記カメラで撮像された同数のフレーム画像を積分し、前記光源のON期間中の積分画像から前記光源のOFF期間中の積分画像を差し引き、その差画像を取得する制御部を備える撮像装置。
(付記7)
前記制御部は、
前記光源のON期間中に前記カメラで撮像された全フレーム画像のうち任意の連続した複数のフレーム画像を選択して積分し、
前記光源のOFF期間中に前記カメラで撮像された全フレーム画像のうちON期間中の複数のフレーム画像に対応する連続した同数のフレーム画像を選択して積分する、付記6に記載の撮像装置。
(付記8)
第1のパルス列を発生する第1のパルス回路と、
前記カメラの撮影タイミングを表す撮影タイミング信号を基にして該撮影タイミング信号の周波数よりも低い周波数の第2のパルス列を発生する第2のパルス回路と、
前記第1のパルス列と前記第2のパルス列との論理積を演算する論理積回路と、
前記論理積回路の論理積の演算結果である第3のパルス列にしたがって前記光源を駆動する駆動回路と、を備える、付記1から7のいずれか1項に記載の撮像装置。
(付記9)
前記第2のパルス回路は、
前記撮影タイミング信号の周波数よりも低い任意の周波数が設定可能であり、設定された周波数の前記第2のパルス列を発生する、付記8に記載の撮像装置。
(付記10)
前記撮影タイミング信号を所定時間だけ遅延させた画像取り込み信号を生成する位相補償回路を備え、
前記制御部は、
前記画像取り込み信号にしたがって、前記カメラで撮像されたフレーム画像を取り込む、付記8または9に記載の撮像装置。
(付記11)
光源と、自身と前記光源との間の光路中に置かれた測定対象を撮像するカメラと、を備える撮像装置による撮像方法であって、
前記光源のON期間中に前記カメラで撮像された複数のフレーム画像から、前記光源のOFF期間中に前記カメラで撮像された同数のフレーム画像を差し引き、その差画像を積分する、撮像方法。
(付記12)
光源と、自身と前記光源との間の光路中に置かれた測定対象を撮像するカメラと、を備える撮像装置による撮像方法であって、
前記光源のON期間中に前記カメラで撮像された複数のフレーム画像を積分し、
前記光源のOFF期間中に前記カメラで撮像された同数のフレーム画像を積分し、
前記光源のON期間中の積分画像から前記光源のOFF期間中の積分画像を差し引き、その差画像を取得する、撮像方法。
【符号の説明】
【0069】
1 THz光源
2 THz波
3 サンプル
4 THzカメラ
5 Sync信号(撮影タイミング信号)
6 1/n逓倍回路
7 パルス列
8 高圧パルス電源
9 パルス列
10 論理積回路
11 パルス列
12 駆動回路
13 画像データ取得装置
14 CPU
15 バッファ
16 位相補償回路
17 THzアレイセンサ
18 読出回路
19 補正回路
20 バッファ
21 外部IF(インターフェース)
22 外部IF出力タイミング信号
23 画像取り込みタイミング信号
24 反射板
25 黒い布テープ
26 THz光源の照射領域
27 THz光源(QCL)の画像の低輝度部
28 黒い布テープの位置
29 THz光源(QCL)の画像の高輝度部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、自身と前記光源との間の光路中に置かれた測定対象を撮像するカメラと、を備える撮像装置であって、
前記光源のON期間中に前記カメラで撮像された複数のフレーム画像から、前記光源のOFF期間中に前記カメラで撮像された同数のフレーム画像を差し引き、その差画像を積分する制御部を備える撮像装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記光源のON期間中に前記カメラで撮像された複数のフレーム画像を第1のバッファに格納し、
前記光源のOFF期間中に前記カメラで撮像された同数のフレーム画像を第2のバッファに格納し、
前記第1のバッファに格納された複数のフレーム画像から、前記第2のバッファに格納された同数のフレーム画像を差し引き、その差画像を第3のバッファに格納し、
前記第3のバッファに格納された差画像を積分する、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記光源のON期間中に前記カメラで撮像された全フレーム画像のうち任意の連続した複数のフレーム画像を選択し、
前記光源のOFF期間中に前記カメラで撮像された全フレーム画像のうちON期間中の複数のフレーム画像に対応する連続した同数のフレーム画像を選択する、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第3のバッファとして、前記第1のバッファまたは前記第2のバッファを使用する、請求項2または3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記光源のON期間中に前記カメラで撮像された複数のフレーム画像と前記光源のOFF期間中に前記カメラで撮像された同数のフレーム画像を第1のバッファに格納し、
前記第1のバッファに格納された複数のフレーム画像から、前記第1のバッファに格納された同数のフレーム画像を差し引き、その差画像を第2のバッファに格納し、
前記第2のバッファに格納された差画像を積分する、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
光源と、自身と前記光源との間の光路中に置かれた測定対象を撮像するカメラと、を備える撮像装置であって、
前記光源のON期間中に前記カメラで撮像された複数のフレーム画像を積分し、前記光源のOFF期間中に前記カメラで撮像された同数のフレーム画像を積分し、前記光源のON期間中の積分画像から前記光源のOFF期間中の積分画像を差し引き、その差画像を取得する制御部を備える撮像装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記光源のON期間中に前記カメラで撮像された全フレーム画像のうち任意の連続した複数のフレーム画像を選択して積分し、
前記光源のOFF期間中に前記カメラで撮像された全フレーム画像のうちON期間中の複数のフレーム画像に対応する連続した同数のフレーム画像を選択して積分する、請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
第1のパルス列を発生する第1のパルス回路と、
前記カメラの撮影タイミングを表す撮影タイミング信号を基にして該撮影タイミング信号の周波数よりも低い周波数の第2のパルス列を発生する第2のパルス回路と、
前記第1のパルス列と前記第2のパルス列との論理積を演算する論理積回路と、
前記論理積回路の論理積の演算結果である第3のパルス列にしたがって前記光源を駆動する駆動回路と、を備える、請求項1から7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
光源と、自身と前記光源との間の光路中に置かれた測定対象を撮像するカメラと、を備える撮像装置による撮像方法であって、
前記光源のON期間中に前記カメラで撮像された複数のフレーム画像から、前記光源のOFF期間中に前記カメラで撮像された同数のフレーム画像を差し引き、
その差画像を積分する、撮像方法。
【請求項10】
光源と、自身と前記光源との間の光路中に置かれた測定対象を撮像するカメラと、を備える撮像装置による撮像方法であって、
前記光源のON期間中に前記カメラで撮像された複数のフレーム画像を積分し、
前記光源のOFF期間中に前記カメラで撮像された同数のフレーム画像を積分し、
前記光源のON期間中の積分画像から前記光源のOFF期間中の積分画像を差し引き、
その差画像を取得する、撮像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−205217(P2012−205217A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70058(P2011−70058)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/ICTによる安全・安心を実現するためのテラヘルツ波技術の研究開発」の委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(596118600)NEC Avio赤外線テクノロジー株式会社 (13)
【Fターム(参考)】