説明

撮像装置および撮像方法

【課題】撮影画像に含まれるかげろう現象などのゆらぎ現象の影響を軽減する。
【解決手段】撮像装置100は、切替装置102を装備する。切替装置102は、レンズ101と撮像素子103の間に挿入される光学フィルタを切替可能に構成される。撮像素子103で結像された光学像は、メモリ104を経由して解析部105に出力され、解析部105で解析される。判断部107は、解析部105の解析結果に基づいて画像中にかげろう現象が含まれるか否かを判断する。かげろう現象が含まれる場合、かげろう検出信号がタイマ108を経由して切替制御部109に出力される。切替制御部109は、かげろう検出信号の非入力時には光学フィルタをIRカットフィルタ102Aとし、かげろう検出信号の入力時には光学フィルタを可視光カットフィルタ102Bとするように、切替装置102を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に遠方の被写体を撮像する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラなどの撮像装置のなかには、複数の光学フィルタを備えるものがある。たとえば、特開平7−284111号公報(特許文献1)や特開2000−131748号公報(特許文献2)には、赤外光カットフィルタと可視光カットフィルタとを挿脱可能に配置するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−284111号公報
【特許文献2】特開2000−131748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、熱による上昇気流が生じて密度の異なる大気が混在する空気層(密度が変化している空気層)が被写体と撮像装置との間に存在すると、被写体からの光がその空気層でランダムな方向に屈折されるため、撮影画像がゆらいでしまう現象(以下、「ゆらぎ現象」ともいう)が生じる。なお、ゆらぎ現象は、太陽光(日射)による熱によって生じる「かげろう現象」としてよく知られるが、焚き火やストーブの炎あるいはエンジンなどの排熱によっても引き起こされる現象である。
【0005】
監視用カメラなどによる撮像画像に上述のゆらぎ現象の影響が含まれていると、監視が困難になるという問題が発生する。しかしながら、上述した特許文献1、2には、このような問題を解決する手法について何ら言及されていない。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、撮影画像に含まれるゆらぎ現象の影響を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る撮像装置は、被写体を撮像する撮像素子と、被写体と撮像素子との間に挿入される光学フィルタを赤外光を遮断する第1フィルタおよび可視光を遮断する第2フィルタのいずれかに切替可能な切替装置と、撮像された被写体の画像に基づいて、被写体と撮像素子との間に密度の異なる大気が混在する空気層が存在することによって生じるゆらぎ現象の有無を判断する判断部と、判断部の判断結果に応じて切替装置を制御して光学フィルタの切替を制御する制御部とを備える。
【0008】
好ましくは、判断部は、撮像された被写体の画像が動く距離および方向を示す動きベクトルに基づいて、ゆらぎ現象の有無を判断する。
【0009】
好ましくは、撮像装置は、単位時間あたりに撮像された被写体の複数の画像を用いて動きベクトルを複数検出する検出部をさらに備える。判断部は、複数の動きベクトルの向きおよび加算平均値に基づいて、ゆらぎ現象の有無を判断する。
【0010】
好ましくは、判断部は、複数の動きベクトルの向きが特定の一つの向きではなく、かつ、加算平均値が略零である場合に、ゆらぎ現象が生じていると判断する。
【0011】
好ましくは、第2フィルタは、第1フィルタに比べて、被写体の画像にゆらぎ現象の影響が含まれ難くする特性を有する。制御部は、光学フィルタを第1フィルタとして判断部によるゆらぎ現象の有無の判断が可能な状態とし、判断部がゆらぎ現象が生じていると判断した時点で光学フィルタを第1フィルタから第2フィルタに切替える。
【0012】
好ましくは、制御部は、光学フィルタを第2フィルタに切替えた時点から所定時間が経過した時点で、光学フィルタを再び第1フィルタに戻す。
【0013】
好ましくは、第2フィルタは、第1フィルタに比べて、被写体の画像にゆらぎ現象の影響が含まれ難くする特性を有する。撮像素子は、被写体を監視するための第1撮像素子と、ゆらぎ現象の有無を判断するため第2撮像素子とを含む。切替装置は、被写体の像が第1撮像素子に入力される経路上に設けられる。判断部は、第2撮像素子で撮像した被写体の画像に基づいてゆらぎ現象の有無を判断する。制御部は、判断部がゆらぎ現象が生じていないと判断している間は光学フィルタを第1フィルタに維持し、判断部がゆらぎ現象が生じていると判断している間は光学フィルタを第2フィルタに維持する。
【0014】
この発明の別の局面に係る撮像方法は、被写体を撮像する撮像素子と、被写体と撮像素子との間に挿入される光学フィルタを赤外光を遮断する第1フィルタおよび可視光を遮断する第2フィルタのいずれかに切替可能な切替装置と、を備えた撮像装置が行なう撮像方法であって、撮像された被写体の画像に基づいて、被写体と撮像素子との間に密度の異なる大気が混在する空気層が存在することによって生じるゆらぎ現象の有無を判断するステップと、判断するステップでの判断結果に応じて切替装置を制御して光学フィルタの切替を制御するステップとを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、撮影画像に含まれるゆらぎ現象の影響を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】撮像装置の全体ブロック図(その1)である。
【図2】IRカットフィルタの感度と可視光カットフィルタの感度を示す図である。
【図3】被写体から撮像装置に入力される光の経路を模式的に示す図である。
【図4】画像を模式的に示す図(その1)である。
【図5】画像を模式的に示す図(その2)である。
【図6】画像の動きベクトルを示す図(その1)である。
【図7】画像の動きベクトルを加算平均したベクトルを示す図(その1)である。
【図8】画像の動きベクトルを示す図(その2)である。
【図9】画像の動きベクトルを示す図(その3)である。
【図10】画像の動きベクトルを加算平均したベクトルを示す図(その2)である。
【図11】撮像装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】撮像装置の全体ブロック図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則として繰り返さない。
【0018】
[実施の形態1]
図1は、本実施の形態に従う撮像装置100の全体ブロック図である。撮像装置100は、レンズ101、切替装置102、撮像素子103、メモリ104、解析部105、映像処理部106、判断部107、タイマ108、切替制御部109を含む。なお、撮像装置100は、高倍率ズームレンズを搭載して遠方の監視を行なうことが可能な監視用に好適であるが、その用途は遠方監視用であることに限定されない。
【0019】
被写体像(被写体からの光)はレンズ101を介して撮像素子103に結像する。レンズ101と撮像素子103の間には切替装置102が装備される。
【0020】
切替装置102は、IRカットフィルタ102Aと、可視光カットフィルタ102Bと、切替制御部109からの制御信号によって制御されるモータ(図示せず)とを含む。切替装置102は、モータの駆動により、レンズ101と撮像素子103の間に挿入される光学フィルタ(以下、単に「光学フィルタ」という)を、IRカットフィルタ102Aと可視光カットフィルタ102Bとの間で切替可能に構成される。
【0021】
図2は、IRカットフィルタ102Aの感度(一点鎖線)と、可視光カットフィルタ102Bとの感度(実線)とを比較した図である。図2に示すように、IRカットフィルタ102Aは、可視光領域に含まれる可視光波長成分を通過させ、近赤外光(IR)を含むその他の波長成分を遮断する。なお、IRカットフィルタ102Aを用いることにより、近赤外光の悪影響(たとえばグリーン系の色がグレーや赤茶色に写ったり青紫色の花の色が赤紫色に写ってしまうこと)を排除できる。一方、可視光カットフィルタ102Bは、可視光領域に含まれる波長成分を遮断し、近赤外光(IR)を含むその他の波長成分を通過させる。
【0022】
図1に戻って、光学フィルタ(IRカットフィルタ102Aおよび可視光カットフィルタ102Bのいずれか)を通過して撮像素子103で結像された光学像は電気信号に変換されてメモリ104に画像データとして蓄積される。
【0023】
メモリ104に蓄積された画像データは、解析部105および映像処理部106に出力される。
【0024】
映像処理部106は、メモリ104からの画像データを撮像装置100の内部あるいは外部に設けられるディスプレイ(図示せず)に表示されるための映像信号に変換し、ディスプレイに出力される。これにより、ディスプレイには、撮像装置100で撮像した画像が表示される。
【0025】
解析部105は、メモリ104からの画像データ(被写体画像)の動きベクトルを検出し、検出した動きベクトルの特徴を解析する。なお、動きベクトルとは、被写体画像が動く距離および方向をベクトルで表わしたものである。
【0026】
判断部107は、解析部105の解析結果に基づいて、被写体画像中にゆらぎ現象の影響が含まれるか否かを判断する。なお、「ゆらぎ現象」とは、既に述べたように、熱による上昇気流が生じて密度の異なる大気が混在する空気層が被写体と撮像装置との間に存在することによって撮影画像がゆらいでしまう現象である。以下では、ゆらぎ現象の例として、主として「かげろう現象」について説明する。判断部107は、被写体画像中にかげろう現象の影響が含まれると判断した場合、その時点でかげろう検出信号をタイマ108に出力する。なお、判断部107の機能については後に詳述する。
【0027】
タイマ108は、判断部107からかげろう検出信号を受信すると、かげろう検出信号を受信してからの経過時間の計測(カウンタCのカウントアップ)を開始するとともに、切替制御部109および映像処理部106にかげろう検出信号を出力する。タイマ108は、カウンタCが規定値tに達するまで(かげろう検出後の経過時間が所定時間未満の場合)はかげろう検出信号の出力を継続し、カウンタCが規定値tに達した時点(かげろう検出後の経過時間が所定時間に達した時点)でかげろう検出信号の出力を終了する。なお、タイマ108が、カウンタCが規定値tに達した時点で切替制御部109および映像処理部106にかげろう検出終了信号を出力するようにしてもよい。
【0028】
切替制御部109は、かげろう検出信号の非入力時には光学フィルタをIRカットフィルタ102Aとし、かげろう検出信号の入力時には光学フィルタを可視光カットフィルタ102Bとするように、切替装置102を制御する。
【0029】
図3は、被写体1(図3に示す例では樹木を想定)から撮像装置100に入力される光αの経路を模式的に示した図である。地面や建物が太陽光(日射)で熱せられると、熱による上昇気流2が生じて密度の異なる大気が混在する空気層3が発生する。以下では、空気層3を「かげろう3」とも称する。このかげろう3が光αの経路上に存在すると、光αが空気層3で屈折されるため、画像がゆらいでしまう現象が生じる。この現象が、かげろう現象である。かげろう現象の影響は、可視光と近赤外光とでは異なる。すなわち、近赤外光は、可視光に比べて波長が長く直進性が高いため、かげろうの影響が少ない。この相違を利用して、切替制御部109は、かげろう検出時に光学フィルタを可視光カットフィルタ102Bに切替えてかげろう現象の影響を軽減する。
【0030】
図1に戻って、映像処理部106は、かげろう検出信号の非入力時(光学フィルタがIRカットフィルタ102Aである場合)は映像信号をカラー信号とし、かげろう検出信号の入力時(光学フィルタが可視光カットフィルタ102Bである場合)は映像信号を白黒信号とする。なお、かげろう検出時に映像信号を白黒にするのは、可視光がカットされるため撮像素子103にカラー情報が入力されなくなり適切な色再現ができなくなり、そのままカラー映像として出力しても本来の色を再現できず監視に不適切なためである。
【0031】
以上のように、撮像装置100は、通常はIRカットフィルタ102Aを装着し、かげろう検出時には可視光カットフィルタ102Bに切り替える。これにより、かげろう検出時には、かげろう現象の影響を受け易い(ゆらぎ易い)可視光波長成分を除去し、かつ直進性が高くかげろう現象の影響を受け難い(ゆらぎ難い)近赤外波長成分を通過させることができる。そのため、撮像素子103に結像する被写体像に対してかげろうによる像のゆらぎを減少させることが可能となる。
【0032】
次に、判断部107によるゆらぎ現象の判断手法について詳細に説明する。
図4は、かげろう非発生時の被写体1の画像g1を模式的に示す図である。図5は、かげろう発生時の被写体1の画像g1´を模式的に示す図である。図4に示すように、被写体1のような樹木は本来動きがなく静止しており画像g1にはゆらぎは生じないが、かげろう発生時は空気のゆらぎにより光が屈折するため、図5に示すように画像g1´もゆらいでしまう。
【0033】
通常、かげろう3は、0.1〜0.5秒程度の周期でゆらいでいる。単位時間あたりに撮像される複数のフレーム間の画像に対して動きベクトルに着目すると、かげろう3を通過して入力された画像の動きベクトルには、主に2つの特徴がある。1つめの特徴は、特定の1つの方向ではなくランダムな方向(主に水平方向)に動きベクトルが発生し続けるという特徴である。2つめの特徴は、数秒程度の時間で動きベクトルを加算平均するとほとんど動きが無い状態と等価になるという特徴である。なお、ここでいう「加算平均」とは、複数のベクトルを大きさおよび向きを含めて合成することをいい、「加算平均値」とは、その合成ベクトルの大きさをいうものとする。したがって、たとえば互いに大きさが等しく向きが反対の2つの動きベクトルの加算平均値は「0」となる。
【0034】
図6は、かげろう発生時のある瞬間の画像g1´の動きベクトルVを示す図である。上述のように、被写体1のような静止像は本来、動きがなく、動きベクトルは発生しないが、空気のゆらぎによりフレーム間でみれば動きがあり、動きベクトルが発生する。発生する方向はランダムであるが、主に水平のゆらぎが大きいため水平方向に発生しやすい。
【0035】
図7は、かげろう発生時のある瞬間の画像g1´の動きベクトルVを数秒間に渡って加算平均した平均ベクトルVaveを示す図である。ゆらぎによる動きベクトルVを加算平均した場合、ゆらぎ方向が平均化されるため、平均ベクトルVaveの大きさは略零となる。このため、結果的にゆらぎが発生していない場合と同じく、動きベクトルがほぼ生じていないことと等価となる。
【0036】
図8は、かげろう発生時に撮像した、一定方向に移動している人物の画像g2の動きベクトルを示す図である。図8に示すように、動きのある人物の画像g2の場合は、被写体自体の動きがあり一定方向に動きベクトルが発生する。
【0037】
図9は、かげろう発生時に撮像した、図8の動きのある人物の画像g2に対して、人物の動きによる動きベクトルを除いて、かげろうによる動きベクトルのみを示した画像g2´を示す図である。図10は、かげろう発生時に撮像した、一定方向に移動している人物の画像g2の動きベクトルの加算平均値を示す図である。人物が移動している場合であっても、図9に示すように、かげろうによる動きベクトルはランダムに発生する。したがって、像自体の移動による一定方向の動きベクトルとかげろうによるランダム方向の動きベクトルとを含めた加算平均値は、図10に示すように、大きさには多少の差はあるが、基本的には同じ向きにほぼ統一される。
【0038】
なお、図8、9、10では、かげろう発生時でゆらぎがある場合の画像を示すものであるが、図中では便宜的に像のゆらぎを示していない。
【0039】
このように、かげろう発生時においても、動きがある被写体と静止した被写体とでは動きベクトルの振る舞いが異なるため、被写体の動きとかげろうによる動きとは区別可能ではある。しかしながら、その区別を正確に行なうためにはより複雑な制御が必要になり実際には難しい。そこで、本実施の形態においては、判断部107が、主に背景等の静止画部分に対して上述したかげろう現象の特徴(動きベクトルがランダムな方向に発生しかつその加算平均値が略零であるという特徴)の有無を判断し、その特徴があると判断した時点で、かげろう検出信号をタイマ108に出力する。
【0040】
図11は、上述した判断部107および切替制御部109の機能を実現するための撮像装置100の処理手順を示すフローチャートである。以下に示すフローチャートの各ステップ(以下、ステップを「S」と略す)は、ハードウェアによって実現してもよいしソフトウェアによって実現してもよい。図11に示すフローチャートは、光学フィルタをIRカットフィルタ102Aとし映像信号をカラーとする定常状態で開始されるものとする。
【0041】
S10にて、撮像装置100は、複数のフレーム間の画像を比較して動きベクトルを検出する。
【0042】
S11にて、撮像装置100は、動きベクトルが一定方向でなくランダムな方向に動く領域があるかどうかを解析する。動きベクトルがランダムな方向に動く領域がある場合(S11にてYES)、処理はS12に移される。そうでない場合(S11にてNO)、この処理は終了する。
【0043】
S12にて、撮像装置100は、S11にてランダムな方向に動くと判断された領域の動きベクトルの所定時間Tの加算平均値が略零であるか否かを判断する。なお、所定時間Tは、かげろうの状況に応じて最適な値に調整される。また、動きベクトルの加算平均値との比較対象である略零値を、かげろうの状況に応じて「0.01」、「0.1」、「0.11」など複数の値に調整できるようにしておけばよい。動きベクトルの所定時間Tの平均値が略零である場合(S12にてYES)、処理はS13に移される。そうでない場合(S12にてNO)、この処理は終了する。
【0044】
S13にて、撮像装置100は、かげろうを検出したものと判断し、タイマを起動し、カウンタCのカウントアップを開始する。なお、カウントダウンでも対応可能である。
【0045】
S14にて、撮像装置100は、カウンタCが規定値tに達したか否かを判断する。
カウンタCが規定値tに達するまでは(S14にてNO)、撮像装置100は、S15にて、光学フィルタを可視光カットフィルタ102Bにする。本処理の直前に光学フィルタがIRカットフィルタ102Aであった場合には、本処理の実行により光学フィルタがIRカットフィルタ102Aから可視光カットフィルタ102Bに切替えられることになる。この際、映像信号が白黒に設定される。S15の処理後は、処理はS14に戻される。
【0046】
一方、カウンタCが規定値tに達した場合(S14にてYES)、撮像装置100は、S16にて、光学フィルタをIRカットフィルタ102Aにする。すなわち、かげろう検出によって可視光カットフィルタ102Bに切替えられていた光学フィルタを、IRカットフィルタ102Aに戻す。この際、映像信号もカラーに戻される。その後、S17にてカウンタCがリセットされ、処理は終了される。
【0047】
以上のように、従来はかげろう発生時に被写体像がゆらぎ、適正な監視が困難になっていたが、本実施の形態に従う撮像装置100を用いれば、被写体像のかげろうの影響を除去することが実現可能となる。そのため、被写体像が安定し、適正な監視を行なうことが可能となる。
【0048】
なお、本実施の形態においては、タイマによる時間経過時に光学フィルタをIRカットフィルタに戻していたが、タイマに代えてあるいは加えて、光学フィルタの切替を行なう外部制御を設けてもよい。たとえば、カウンタCが規定値tに達しなくても、外部制御入力時には、かげろう検出の有無に関わらず、光学フィルタを強制的にIRカットフィルタ102Aに戻すようにしてもよい。
【0049】
[実施の形態2]
上述の実施の形態1では、被写体の監視とかげろうの検出とを1つの撮像素子103で行なっていた。したがって、かげろう検出時に可視光カットフィルタへ切り替えた後はかげろう検出ができなくなるため、タイマによる時間経過時にIRカットフィルタに戻すようにした。
【0050】
これに対し、本実施の形態では、撮像素子103を被写体監視用とし、撮像素子103とは別にかげろう検出専用の撮像素子203を新たに設ける。この専用の撮像素子203で撮像した画像に基づいてかげろう検出を行なうため、光学フィルタの切替をかげろう現象の有無に応じて適切に行なうことができる。
【0051】
図12は、本実施の形態に従う撮像装置200の全体ブロック図である。撮像装置200は、レンズ101、切替装置102、撮像素子103、メモリ104、プリズム201、IRカットフィルタ202、撮像素子203、メモリ204、解析部205、映像処理部206、判断部207、切替制御部209を含む。なお、レンズ101、切替装置102、撮像素子103、メモリ104の機能は、上述の実施の形態1で既に述べたため、ここでの詳細な説明は原則として繰り返さない。
【0052】
プリズム201は、レンズ101に入力された被写体の光路を、撮像素子103に入力される光路と、撮像素子203に入力される光路とに分離する。かげろう検出用の撮像素子203の前面にはIRカットフィルタ202を固定で装着しておく。撮像素子203で撮像された画像はメモリ204を経由して解析部205に出力され、解析部205で解析される。解析部205の解析結果を用いて判断部207はかげろう現象の有無を検出する。メモリ204、解析部205、判断部207の基本的な機能は、実施の形態1で述べたメモリ104、解析部105、判断部107と同様である。
【0053】
切替制御部209は、判断部207からかげろう検出信号を受信していない間は光学フィルタをIRカットフィルタ102Aに維持し、かげろう検出信号を受信している間は光学フィルタを可視光カットフィルタ102Bに維持するように、切替装置102を制御する。
【0054】
以上のように、本実施の形態によれば、かげろう検出専用の撮像素子203を新たに設け、常時かげろう検出が可能となるため、かげろう検出の有無に応じて光学フィルタの切替を適切に行なうことが可能となる。
【0055】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0056】
1 被写体、2 上昇気流、3 空気層(かげろう)、100,200 撮像装置、101 レンズ、102 切替装置、102A,202 IRカットフィルタ、102B 可視光カットフィルタ、103,203 撮像素子、104,204 メモリ、105,205 解析部、106,206 映像処理部、107,207 判断部、108 タイマ、109,209 切替制御部、201 プリズム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像する撮像素子と、
前記被写体と前記撮像素子との間に挿入される光学フィルタを赤外光を遮断する第1フィルタおよび可視光を遮断する第2フィルタのいずれかに切替可能な切替装置と、
撮像された前記被写体の画像に基づいて、前記被写体と前記撮像素子との間に密度の異なる大気が混在する空気層が存在することによって生じるゆらぎ現象の有無を判断する判断部と、
前記判断部の判断結果に応じて前記切替装置を制御して前記光学フィルタの切替を制御する制御部とを備える、撮像装置。
【請求項2】
前記判断部は、撮像された前記被写体の画像が動く距離および方向を示す動きベクトルに基づいて、前記ゆらぎ現象の有無を判断する、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像装置は、単位時間あたりに撮像された前記被写体の複数の画像を用いて前記動きベクトルを複数検出する検出部をさらに備え、
前記判断部は、複数の前記動きベクトルの向きおよび加算平均値に基づいて、前記ゆらぎ現象の有無を判断する、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記判断部は、複数の前記動きベクトルの向きが特定の一つの向きではなく、かつ、前記加算平均値が略零である場合に、前記ゆらぎ現象が生じていると判断する、請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第2フィルタは、前記第1フィルタに比べて、前記被写体の画像に前記ゆらぎ現象の影響が含まれ難くする特性を有し、
前記制御部は、前記光学フィルタを前記第1フィルタとして前記判断部による前記ゆらぎ現象の有無の判断が可能な状態とし、前記判断部が前記ゆらぎ現象が生じていると判断した時点で前記光学フィルタを前記第1フィルタから前記第2フィルタに切替える、請求項1〜4のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記光学フィルタを前記第2フィルタに切替えた時点から所定時間が経過した時点で、前記光学フィルタを再び前記第1フィルタに戻す、請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記第2フィルタは、前記第1フィルタに比べて、前記被写体の画像に前記ゆらぎ現象の影響が含まれ難くする特性を有し、
前記撮像素子は、前記被写体を監視するための第1撮像素子と、前記ゆらぎ現象の有無を判断するため第2撮像素子とを含み、
前記切替装置は、前記被写体の像が前記第1撮像素子に入力される経路上に設けられ、
前記判断部は、前記第2撮像素子で撮像した前記被写体の画像に基づいて前記ゆらぎ現象の有無を判断し、
前記制御部は、前記判断部が前記ゆらぎ現象が生じていないと判断している間は前記光学フィルタを前記第1フィルタに維持し、前記判断部が前記ゆらぎ現象が生じていると判断している間は前記光学フィルタを前記第2フィルタに維持する、請求項1〜4のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項8】
被写体を撮像する撮像素子と、前記被写体と前記撮像素子との間に挿入される光学フィルタを赤外光を遮断する第1フィルタおよび可視光を遮断する第2フィルタのいずれかに切替可能な切替装置と、を備えた撮像装置が行なう撮像方法であって、
撮像された前記被写体の画像に基づいて、前記被写体と前記撮像素子との間に密度の異なる大気が混在する空気層が存在することによって生じるゆらぎ現象の有無を判断するステップと、
前記判断するステップでの判断結果に応じて前記切替装置を制御して前記光学フィルタの切替を制御するステップとを含む、撮像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−90152(P2012−90152A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236324(P2010−236324)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】