説明

撮像装置の動きを補償する方法及び装置

撮像装置は、その装置の液体レンズを含むレンズアセンブリを通して画像を得ることによって物体の画像を取得する間、その動きが補償され、画像を取得する間その撮像装置の動きを検知し、その撮像装置の動きの画像への影響を補償するように液体レンズを制御する。その液体レンズは焦点距離を変えるように制御されるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
この発明は、一般的に画像を取得する間、撮像装置の動きを補償する方法及び装置に関し、例えば手持ちカメラにおけるカメラぶれ、特にバーコードスキャナの場合におけるそのような補償に関する。
【0002】
デジタルカメラの解像度の増加と共に、典型的な写真における画像領域センサの1画素に利用可能な光子の数が急減している。各画素の光検知素子が使用可能な信号を得るために光を積分しなければならないので、今日のカメラにおいて50msecもの長い積分時間
(integration times)を見出すことは、珍しいことではない。残念ながら、これは三脚なしで写真を撮るためには致命的に長い時間である。その結果、カメラがその積分期間中に動くため、ぼけた画像になる。これは、特にカメラがバーコードや二次元コードのような走査されるコードを読み取ろうとする場合に問題がある。
【0003】
カメラぶれは、写真撮影においてよく知られている問題である。その技術は一般に「画像安定化」と称される補償の方法を確立している。2つの一般的な技術である、光学的方法と電子的方法が用いられてきた。光学的方法によれば、カメラの動きがジャイロセンサや加速度センサのようなセンサによって検出され、それが、レンズ又は撮像装置を物理的に動かすことによって補償される。光学的方法は、可動部を必要とするため、電子的方法より信頼性や安定性が劣る傾向がある。
【0004】
電子的方法は、画像の動きを推定して、その動きを補償するようにその画像を処理する。電子方法は信頼性はあるが、非常にプロセッサに集中し(processor intensive)時間がかかる。それらは数秒もかかることがある。バーコードスキャナや二次元コードスキャナのような応用装置では、200msec未満での画像安定化が通常要求される。
【0005】
まず、図1の斜視図によって示すように、ここで言う動きの異なるタイプを定義する。動きは、撮像素子の原点で撮像される物体を見るように、三次元デカルト座標系において定義される。そのX座標は右方に向かって増加する水平軸であり、Y座標は上方に向かって増加する垂直軸であり、Z座標は物体の方に向かって増加する画像の深度である。「ピッチ」はX軸に関する回転で、「ヨー」はY軸に関する回転であり、「ロール」はZ軸に関する回転である。常に、時計回りの回転を正とする。(図1参照)
【0006】
図2を参照して、撮像される物体の画像に対する平行移動(translation)及び回転移動の影響を説明する。「平行移動」(図2(a))は一つの軸に沿った動きであり、一方、「回転移動」は一つの軸に関する角度移動である。センサに対する物体の移動は、回転移動では距離に応じて増加するが、平行移動では一定のままであることに留意されたい。物体から離れて行われる典型的な写真撮影は、そのため、特に回転振動に敏感であり、平行移動は通常無視される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、コードスキャナのような特定の応用においては、物体はセンサから通常約50mm〜200mmの範囲内にある。この開示において、そのようなコードスキャナは「近い」視野で作動すると考えられるであろう。その近い視野において、その画像は平行移動と回転移動の両方に関して同等に安定されなければならない。これは画像安定化に対してより厳しい要求を課すものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明によれば、撮像装置は、その装置における液体レンズを含むレンズサブアセンブリを通して画像を得ることによって物体の画像を取得する間、その動きが補償されるように、画像を取得する間その装置の動きを感知しており、装置の動きによる画像に対する影響を補償するために液体レンズを制御する。その液体レンズは、その焦点距離を変えるように制御されるのが望ましい。
【0009】
この発明の一つの特徴によれば、物体は撮像装置の近い視野内にあり、その装置の平行移動と回転移動の両方が感知される。
前述の簡単な説明及び更なる目的、特徴並びに利点は、以下に詳述するこの発明の好ましい実施形態の記載を添付図面と共に参照することによって、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ここで言う画像センサの動きの異なるタイプを説明するための斜視図である。
【図2】図2(a)及び図2(b)からなり、画像に対する平行移動と回転移動の影響を説明する図である。
【図3】この発明を実施したコードリーダのブロック図である。
【図4】液体レンズを組み込んだレンズサブアセンブリの好ましい例を示す概略図である。
【図5】図5(a)及び図5(b)からなり、この発明の一つの特徴により物体に向かうZ軸方向の動きとその補償の効果を説明する図である。
【図6】レーザ追尾(tracking)を組み込んだスキャナの使用状態を示す斜視図である。
【図7】図7(a)(b)及び(c)からなり、レーザ追尾動作を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図3には、この発明を実施したコードリーダ10の概略化したブロック図が開示されている。そのコードリーダは、感知した動きを光学的に補償するために光学アセンブリ14を制御する出力をするサブアセンブリ12を備えている。変更された画像が画像センサ15に与えられ、その画像センサ15の出力が処理サブアセンブリユニット16によって受け取られる。
【0012】
処理ユニット16において、その画像の処理は、特にサブアセンブリ12によって検知された動きのいくつかを補償し、画像化されたコードを抽出するために行われる。その結果、処理ユニット16によって作られた処理画像は、スキャナ10の平行移動と回転移動に対して安定化された画像となる。
【0013】
図4は、光学サブアセンブリ14の好ましい例を示す概略図である。このアセンブリは、液体レンズ100と同様に任意の従来のレンズL1及びL2を含むレンズサブアセンブリ150を有する。液体レンズは電子制御されるデバイスであり、2つの液体の界面の形状が光学レンズを規定し、それが印加される制御電圧によって変形され得る。そのようなレンズは、現在この技術分野においては周知である。
【0014】
この場合、レンズ100の三次元を変えるために電圧制御部30から印加される電圧が、2つの液体の間の界面の形状定め、それによって液体レンズの効力を決定する。例えば、その界面の曲率を適切に変えることにより、レンズ100の有効な焦点距離をカメラの振れを補償する適当な量だけ変化させることができる。
【0015】
この焦点距離の修正は、何ら機械的な可動部品を用いることなくなされる。電圧制御部30によって生成される電圧は、次に、ソフトウェア18を用いる画像処理部20(プロセッサ16の一部)により制御される。この画像処理部は、動き感知サブアセンブリ12から出力される情報に応答する。
【0016】
例えば、その動き感知サブアセンブリ12は、Z軸に沿ってスキャナ10の動きを感知するために距離センサを有している。あるいは、回転移動を感知するためにジャイロセンサを有している。当業者には、ピッチとヨーと物体からの距離を検知することによって、物体の移動量を引き出すことが可能であることが分かるであろう。
【0017】
図5(a)及び図5(b)からなる図5は、物体に向かうZ軸方向への移動の影響とこの発明の一例によるその補償を示している。センサによって観測される全視野が実質的に減少する。X軸におけるそのような動きが検知されると、画像処理部20は、レンズ100の焦点距離を減少させるように電圧制御部30を動作させ、元の視野を回復させるようにレンズアセンブリ150の視野を広くする。これが、実質的にZ軸方向の動きを補償することである。
【0018】
それはまた、X軸及びY軸に沿ったスキャナ10の平行移動を補償するために、図4に破線a,bで示すように、レンズ100がその曲率の中心をずらすように制御されることを意図している。
【0019】
それはまた、動きセンササブアセンブリ12がレーザ追尾を含むことも意図している。図6は二次元コードCを走査するのに用いられるスキャナ10の例を示す。図示のように、スキャナ10がコードCに対して相対的に対角線のぶれ移動Mを示すと想定する。
【0020】
この場合、図7(a)及び図7(b)に示すように、スキャナ10による参照レーザビームとスポットSが画像内で検知される。画像処理部20がコードCに対して相対的なスポットSの動きを検知すると、それは直ちに図7(c)に示すようにその画像を補償し得る。
【0021】
液体レンズは、カメラの動きによって与えられるフィードバックによって制御される。その液体レンズは、必要な修正に応じて異なる通電がなされる複数の電極を有する。特に、検知された動きに応じて、液体レンズ表面の曲率が変更されるか、あるいはレンズの中心が上下方向又は左右方向にずらされる。従って、動きの修正は可動部分なしで行なわれるが、液体レンズを再調整することが考慮される。
【0022】
この発明の好ましい実施例を開示してきたが、当業者であれば特許請求の範囲によって規定されるこの発明の範囲及び精神から逸脱することなく、種々の追加、変更、置き換えが可能であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の画像を取得する間における撮像装置の動きを補償する方法であって、
液体レンズを含む前記撮像装置におけるレンズサブアセンブリを介して前記画像を取得し、
画像を取得する間、前記撮像装置の動きを検知し、
前記撮像装置の動きの画像への影響を補償するために前記液体レンズを制御することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記液体レンズがその焦点距離を変更するために制御されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
前記液体レンズの焦点距離が、物体に近づく動き及び物体から遠ざかる動きによって、それぞれ減少及び増加することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
前記動きがジャイロセンサ、加速センサ、及びレーザ追尾装置のうちの少なくとも1つの手段によって検知されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
前記物体が、前記撮像装置の近い視野にあることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
前記撮像装置と前記物体との間の距離が約50mmから約200mmの範囲であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
前記動きの検知は、前記撮像装置の平行移動と回転移動を検知することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法において、
前記動きの検知は、前記撮像装置の平行移動と回転移動を検知することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、
前記動きの検知は、前記撮像装置の平行移動と回転移動を検知することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、
前記動きの検知は、回転移動を検知することによって、並行移動と前記撮像装置から前記物体までの距離を判断することを特徴とする方法。
【請求項11】
撮像装置において、物体の画像を取得する間の前記撮像装置の動きを補償するための組み合わせであって、
前記画像を取得するための液体レンズを含む前記撮像装置におけるレンズサブアセンブリと、
画像を取得する間、前記撮像装置の動きを検知する動きセンサと、
前記撮像装置の動きの前記画像への影響を補償するために前記液体レンズを制御するコントローラとの組み合わせ。
【請求項12】
請求項11に記載の組み合わせにおいて、
前記コントローラが、前記液体レンズをその焦点距離を変えるように制御することを特徴とする組み合わせ。
【請求項13】
請求項12に記載の組み合わせにおいて、
前記コントローラが、物体に近づく動きと物体から遠ざかる動きとに応じて、前記液体レンズの焦点距離をそれぞれ減少及び増加させることを特徴とする組み合わせ。
【請求項14】
請求項13に記載の組み合わせにおいて、
前記動作センサが、ジャイロセンサ、加速センサ及びレーザ追尾装置のうちの1つであることを特徴とする組み合わせ。
【請求項15】
請求項11に記載の組み合わせにおいて、
前記物体が前記撮像装置の近い視野内にあることを特徴とする組み合わせ。
【請求項16】
請求項15に記載の組み合わせにおいて、
前記撮像装置と前記物体との間の距離が約50mmから約200mmの範囲であることを特徴とする組み合わせ。
【請求項17】
請求項16に記載の組み合わせにおいて、
前記動きセンサが、前記撮像装置の平行移動と回転移動を検知することを特徴とする組み合わせ。
【請求項18】
請求項15に記載の組み合わせにおいて、
前記動きセンサが、前記撮像装置の平行移動と回転移動を検知することを特徴とする組み合わせ。
【請求項19】
請求項11に記載の組み合わせにおいて、
前記動きセンサが、前記撮像装置の平行移動と回転移動を検知することを特徴とする組み合わせ。
【請求項20】
請求項11に記載の組み合わせにおいて、
前記動きセンサが、回転移動と前記装置から前記物体までの距離を検知することによって平行移動を検知することを特徴とする装置。
【請求項21】
シンボルデコーダと、液体レンズと、少なくとも二次元における動きを検出するための少なくとも1つの検出器と、コントローラとを有する撮像装置であって、
前記液体レンズは、複数の電極への電圧の制御により再形成(reconfigure)するための制御が可能であり、
前記コントローラは、前記少なくとも1つの検出器から入力を受けて、前記撮像装置の不要な動きを補償するために、前記液体レンズを複数の次元において再形成するように前記複数の電極への電圧を制御する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項22】
請求項21に記載の撮像装置において、
前記複数の次元が三次元であることを特徴とする撮像装置。
【請求項23】
請求項21に記載の撮像装置において、
前記液体レンズの形状を異なる次元で制御するための異なる電極のセットを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項24】
請求項21に記載の画像装置において、
前記液体レンズの形状を異なる次元で制御するための共通の電極のセット組を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項25】
請求項21に記載の画像装置において、
前記複数の電極が、前記液体レンズを変形させることによって前記液体レンズの中心を新しい位置に移動させるように作動することを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−521277(P2011−521277A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504976(P2011−504976)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/060291
【国際公開番号】WO2009/128817
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(391062872)株式会社オプトエレクトロニクス (70)
【出願人】(592252968)オプチコン インコーポレイテッド (31)
【Fターム(参考)】