説明

撮像装置及びその制御方法

【課題】 クロスセンサを備えた撮像装置において、撮像装置の姿勢が変更された場合でも、安定した焦点検出を行うこと。
【解決手段】 撮像装置は、クロスセンサを構成する第1の及び第2のラインセンサ対(401、402)からそれぞれ出力される信号の少なくとも一部に基づいて、信号の位相のずれ量をラインセンサ対ごとに検出し、位相差方式で焦点状態を求める。撮像装置の姿勢を検知し(S21)、検知された姿勢に基づいて第1及び第2のラインセンサ対それぞれを構成するの複数の光電変換素子の内、ずれ量の検出に用いる信号を出力する検出範囲を変更する(S24)。その際、撮像装置の姿勢が変更した場合は、変更前の前記第1のラインセンサ対の検出範囲を、変更後の前記第2のラインセンサ対の検出範囲として変更すると共に、変更前の前記第2のラインセンサ対の検出範囲を、変更後の前記第1のラインセンサ対の検出範囲として変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及びその制御方法に関し、特に、撮像装置において焦点状態を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、カメラの姿勢に基づいて、カメラの姿勢が横位置のときと縦位置のときとで、焦点検出の制御を切り替えるカメラが知られている。
【0003】
この種のカメラでは、一般的に撮影画面が横長であることから、焦点検出を行う複数の測距点が縦方向よりも横方向に長く配置されている。そのため、カメラの姿勢が横位置のときと縦位置のときの、最も上に位置する測距点と、最も下に位置する測距点におけるデフォーカス量の差を比べると、カメラの姿勢が縦位置のときの方がデフォーカス量の差が大きくなりやすい。そのため、複数の測距点の内、被写体までの距離が一番近い測距点を選択する近点優先のフォーカス制御では、測距点によってデフォーカス量が大きく異なることが多い縦位置のときに、主被写体よりも近距離の被写体を選択することがある。
【0004】
そこで、参考文献1では、複数の測距点をあらかじめ複数のグループに分け、各グループの最近点のデフォーカス量の差が所定値内の最近点を選択する方法が提案されている。これにより、撮影者から見て主被写体より手前、かつ、他方向に測距可能な被写体があったとしても主被写体を選択することができる。
【0005】
また、この種のカメラでは、横位置と縦位置とでカメラを持ち替えたときに、あらかじめ選択していた測距点は変更されない。そのため、カメラを持ち替える前と同じ構図で撮影するには、測距点を選択し直さなければならない。
【0006】
そこで、参考文献2では、例えば、予め最も上に位置する測距点が選択されていた場合に、横位置から縦位置にカメラを持ち替えた後、最も上に位置する測距点を選択するように変更する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−82678号公報
【特許文献2】特開平9−90202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、1次結像面上において複数の光電変換素子を交差するようにセンサ面上に配置させたクロスセンサで被写体の捕捉力を向上させたカメラが知られている。この種のカメラでは、クロスセンサを用いることで複数の方向の被写体のエッジを検出できるようにしている。これにより、複数の光電変換素子の中のいずれかの光電変換素子の向きと被写体のエッジの向きとを直交させることができ、被写体の捕捉力が向上する。
【0009】
一方、このようなクロスセンサは、例えば、図9に示すように、ある方向に配置させた光電変換素子数が、他方向にある方向に配置させた光電変換素子数と異なることがある。光電変換素子数が少なければ、背景の影響を受けにくくなるが、検出可能な最大のデフォーカス量が小さくなる。一方、光電変換素子数が多ければ、検出可能な最大のデフォーカス量が大きくなるが、背景の影響を受けやすくなる。このように、各方向に配置させた光電変換素子数が異なれば、クロスセンサは異なる測距特性を持つ。
【0010】
このため、これらの測距特性は配置した光電変換素子の並び方向に依存することになる。つまり、カメラの姿勢が横位置のときと縦位置のときとで、同じ被写体を測距していても焦点検出能力が異なる。そのため、カメラを横位置と縦位置とで持ち変えた途端、これまで安定していた焦点検出が不安定になったり、背景に引っ張られやすくなることがあり、撮影者はAFの動作に同じ安定感を得られない。
【0011】
ここで、図9(a)のような、縦方向の光電変換素子vの画素数より、横方向の光電変換素子hの画素数が多いクロスセンサで、斜線で塗りつぶした背景と塗りつぶしていない被写体を測距するときを例に挙げて説明する。図9(a)では、図9(c)に示すように、横方向の光電変換素子hから出力される被写体の像信号を用いて焦点検出を行う。一方、カメラの姿勢を90度回転させた図9(b)に示す状態で、同じ被写体を測距する場合には、図9(d)に示すように光電変換素子vから出力される被写体の像信号で焦点検出を行うことになる。このとき、図9(d)に示す像信号は、図9(b)に示す像信号と比べ、光電変換素子vの画素数が光電変換素子hより少ない分、像信号の端がかけることになり、焦点検出が不安定になる。
【0012】
逆に、クロスセンサが図9(b)に示すような状態で焦点検出が安定している時に、カメラの姿勢を90度回転させてクロスセンサが図9(a)のような状態になると、測距範囲が広がるので、背景に引っ張られやすくなる。
【0013】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、クロスセンサを備えた撮像装置において、撮像装置の姿勢が変更された場合でも、安定した焦点検出が行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、位相差方式で焦点状態を検出するための、一列に配置された2つのラインセンサから成る第1のラインセンサ対、及び、該第1のラインセンサ対に対して垂直を為すように一列に配置された2つのラインセンサから成る第2のラインセンサ対とを有し、前記第1及び第2のラインセンサ対から出力される信号の少なくとも一部に基づいて、前記第1及び第2のラインセンサ対ごとに前記信号の位相のずれ量を検出し、焦点状態を求める焦点検出手段と、前記撮像装置の姿勢を検知する姿勢検知手段と、前記姿勢検知手段により検知された姿勢に基づいて、前記第1及び第2のラインセンサ対それぞれを構成するの複数の光電変換素子の内、前記ずれ量の検出に用いる信号を出力する光電変換素子の範囲である検出範囲を変更する変更手段とを有し、前記変更手段は、前記撮像装置の姿勢が変更された場合に、変更前の前記第1のラインセンサ対の検出範囲を、変更後の前記第2のラインセンサ対の検出範囲として変更すると共に、変更前の前記第2のラインセンサ対の検出範囲を、変更後の前記第1のラインセンサ対の検出範囲として変更する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、クロスセンサを備えた撮像装置において、撮像装置の姿勢が変更された場合でも、安定した焦点検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態における撮像装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施形態における2組のラインセンサ対の配置を説明する図。
【図3】焦点状態を検出する原理を説明する為の光路図。
【図4】本発明の第1の実施形態における撮影処理を示すフローチャート。
【図5】本発明の第1の実施形態における焦点検出範囲変更処理を説明するフローチャート。
【図6】本発明の第1の実施形態における光電変換素子の検出範囲と測距点との位置関係を説明する図。
【図7】本発明の第1の実施形態における検出範囲の変更を説明するための図。
【図8】本発明の第2の実施形態における焦点検出範囲変更処理を説明するフローチャート。
【図9】従来の一対の光電変換素子と測距点の位置関係、および、像信号を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0018】
●装置構成
図1は、本発明の実施の形態における撮像装置の一例として、デジタルカメラの構成を示すブロック図である。図1において、101は撮影レンズである。図では1枚のレンズで表現しているが、実際には複数のレンズの組み合わせにより構成されている。107は撮影レンズ101を通過した被写体光学像を結像させる、CCDやCMOSセンサ等の撮像素子であり、結像された被写体光学像の光量に応じて電荷に変換して得られた画像信号を出力する。撮像素子107から出力された画像信号は、アナログ信号処理回路109を介して、A/D変換器110によりデジタル画像信号に変換される。
【0019】
102は、半透過部を有する主ミラーであり、撮影時には撮影光路外へ退避し、焦点検出時に撮影光路に斜設される。図1では撮影光路に挿入された状態(ミラーダウン)を示している。また、主ミラー102は、撮影光路に斜設された状態で、撮影レンズ101を通過した光束の一部をピント板103、ペンタプリズム104および接眼レンズ105から構成されるファインダ光学系に導く。
【0020】
106は、主ミラー102の動作に同期して主ミラー102に対して、折り畳み、展開可能なサブミラーである。主ミラー102の半透過部を通過した光束の一部は、サブミラー106によって下方へ反射され、位相差方式の焦点検出部108に入射し、焦点検出部108において撮影レンズ101の合焦状態が検出される。
【0021】
また、カメラ全体の制御を行うCPU、記憶装置であるRAMなどから構成されるシステムコントローラ112を備え、後述する各部の動作を適宜制御する。
【0022】
113は、システムコントローラ112に接続され、撮影レンズ101と通信を行う通信回路と、焦点調節を行うためにレンズ駆動を行うレンズ駆動機構と、その駆動回路を備えたレンズ駆動部である。114は、システムコントローラ112に接続され、主ミラー102を撮影光束外へ駆動するためのミラー駆動部である。115は、システムコントローラ112に接続され、焦点検出部108を制御するためのセンサ制御回路である。116は、システムコントローラ112に接続され、撮像素子107を駆動するための撮像素子駆動部である。
【0023】
111は、システムコントローラ112に接続され、A/D変換器110から出力されたデジタル画像信号にシェーディング補正やガンマ補正などの画像処理を施すデジタル信号処理回路である。
【0024】
117は、デジタル信号処理回路111に接続され、撮像素子107で撮像された複数フレーム分のデータを記憶することが可能なバッファメモリであり、A/D変換された信号は一旦このバッファメモリ117に記憶される。デジタル信号処理回路111ではバッファメモリ117に記憶されたデータを読み込んで上述した各処理を行い、処理後のデータは再びバッファメモリ117に記憶される。
【0025】
118は、デジタル信号処理回路111に接続され、バッファメモリ117に一旦記憶された、デジタル信号処理回路111により各種処理が施された画像データを、メモリカード等の外部記憶媒体119に記録する記録・再生信号処理回路である。また、画像データを外部記憶媒体119から読み込む際、記録・再生信号処理回路118は、画像データの伸長処理を行う。
【0026】
121は、撮像された画像を表示するための表示部であり、撮像素子107から得られた画像信号を表示したり、また、記憶媒体119に記録されている画像データを再生する際にも用いられる。表示部121に画像を表示する場合には、バッファメモリ117に記憶された画像データを読み出し、D/A変換器120によりデジタル画像データをアナログ映像信号に変換して、表示部121に画像を表示する。
【0027】
122は、システムコントローラ112に接続され、カメラの姿勢を検知する姿勢検知回路である。カメラの姿勢検知には、物体の角度や角速度を計測するジャイロスコープを用いても良い。
【0028】
123は、システムコントローラ112に接続され、カメラの電源をオン・オフするための電源スイッチ、レリーズボタン、人物撮影モードなどの撮影モードを選択するための設定ボタンなど、カメラを操作するための操作部材が設けられた操作部である。これらのスイッチやボタンを操作すると、その操作に応じた信号がシステムコントローラ112に入力される。なお、レリーズボタンには、撮影者により操作されるレリーズボタンの第1ストローク操作(半押し操作)によりONするSW1と、レリーズボタンの第2ストローク操作(全押し操作)によりONするSW2とが接続されている。
【0029】
図2は、位相差方式の焦点検出部108に含まれる、ラインセンサ対401(第1のラインセンサ対)と、ラインセンサ対402(第2のラインセンサ対)を示す図である。ラインセンサ対401は、一列に配置された一対の縦方向のラインセンサ401aと401bとからなり、ラインセンサ対402は、一列に配置された一対の横方向のラインセンサ402aと402bとからなる。各ラインセンサは、複数の光電変換素子から構成されており、ここでは、カメラが横位置の状態の場合を示している。なお、ここではラインセンサ401aと401bは、それぞれ光電変換素子V1〜V40により構成され、また、ラインセンサ402aと402bは、それぞれ光電変換素子H1〜H50により構成されているものとする。ただし、ここで示すラインセンサ401a及び401b、402a及び402bの構成は本第1の実施形態を説明するための一例であり、光電変換素子の数はこれに限られるものでは無いことは言うまでもない。
【0030】
図3は、焦点検出部108により焦点状態を検出する原理を説明するための光路図であり、構成要素を撮影レンズ101の光軸上に展開して示したものである。ただし、主ミラー102およびサブミラー106は省略している。また、図3では、図2に示すラインセンサ対401について示しているが、ラインセンサ対402についても、同様に構成されている。なお、図3において、図1及び図2と同じ構成要素には同じ参照番号を付している。
【0031】
図3において、109は撮影レンズ101の予定焦点面、即ちフィルム面と共役な面付近に配置された視野マスク、201は同じく予定焦点面の付近に配置されたフィールドレンズである。202は2つのレンズ202aと202bからなる2次結像系であり、203は2つのレンズ202aと202bにそれぞれ対応してその後方に配置された一対の縦方向のラインセンサ401aと401bを備えたラインセンサ対401である。204は2次結像系202の2つのレンズ202aと202bに対応して配置された2つの開口部204aと204bを有する絞り、205は分割された2つの領域205aと205bを含む撮影レンズ101の射出瞳を示している。
【0032】
このような構成において、例えば撮影レンズ101を図中左方に繰り出して、撮像素子107より左方に光束が結像すると、ラインセンサ対401に結像された一対の像は矢印Aの方向に変位する。この一対の像の相対的なずれ量を光電変換素子203で検出することで、撮影レンズ101の合焦状態を検出し、さらに撮影レンズ101の焦点調節駆動を行うことが可能である。なお、撮影レンズ101を図中右方に繰り込んだ場合、ラインセンサ対401上の一対の像は、図中矢印Aの方向とは反対方向に変位する。
【0033】
<第1の実施形態>
図4を参照して、上記構成を有するカメラによる、本発明の第1の実施形態における撮像処理の全体的な流れを説明する。
【0034】
S11において、システムコントローラ112は、操作部123の内、レリーズスイッチの押下によりSW1がONされたかどうかを判断する。SW1がONされていなければ、SW1がONされるまで処理を繰り返し、SW1がONされるとS12へ進む。S12では、姿勢検知回路122により検知されたカメラの姿勢に基づいて、焦点検出範囲を変更する。なお、焦点検出範囲変更処理の詳細については後述する。
【0035】
次に、S13においてシステムコントローラ112が焦点検出部108を用いて焦点状態(デフォーカス量)を検出する。
【0036】
ここで、焦点状態を検出する領域について説明する。図6(a)は、撮像素子107の有効画素領域における複数の測距点501〜505を示し、図6(b)は、図6(a)に示す測距点と図2に示す縦方向のラインセンサ対401及び横方向のラインセンサ対402との位置関係を示す図である。なお、複数の測距点501〜505の内、焦点調節に用いる測距点は、撮影者による指示や、近点優先AF処理など、公知の方法によって選択される。そして、測距点501が選択された場合には、光電変換素子V1〜V13、測距点505が選択された場合には、光電変換素子V27〜V40から出力される信号を用いる。同様に、測距点502が選択された場合には、光電変換素子H1〜H15、測距点504が選択された場合には、光電変換素子H35〜H50から出力される信号を用いる。また、測距点503が選択された場合には、光電変換素子V13〜V27及び光電変換素子H16〜H35から出力される信号を用いる。
【0037】
S14では、上述した測距点から得られた信号に基づいて検出した焦点状態が合焦を表しているどうかを判断する。合焦していなければS15へ進み、システムコントローラ112はS13で検出したデフォーカス量を撮影レンズ101の駆動量であるパルス数に変換し、レンズ駆動部113を介して撮影レンズ101を駆動する。一方、合焦していれば、S16へ進む。
【0038】
S16では、システムコントローラ112は、操作部123の内、SW1がONされているかどうかを再び判断する。ここでSW1がOFFであればS11へ戻り、ONであればS17へ進む。S17において、システムコントローラ112は、レリーズスイッチの操作によりSW2がONされたかどうかを判断し、ONされていなければS16へ戻り、ONされていればS18へ進む。
【0039】
S18では、システムコントローラ112がミラー駆動部114を介して、主ミラー102及びサブミラー106を撮影光路外へ退避させ、撮像素子駆動部116を介して撮像素子107を駆動することにより、撮影を行う。
【0040】
次に、図4のS12で行われる焦点検出範囲変更処理について図5を参照して説明する。
【0041】
S21では、システムコントローラ112が姿勢検知回路122を駆動させ、カメラの姿勢(縦位置、横位置)を検知し、S22で検知したカメラの姿勢が前回検知した姿勢と同じであるかどうかを判断する。同じであれば(S22でNO)、焦点検出範囲を変更する必要がないので、図4の処理に戻り、姿勢が変わっていれば(S22でYES)、S23に進む。
【0042】
縦位置から横位置への姿勢の変更である場合、変更前は、図2のラインセンサ対401が地面に対して水平、ラインセンサ対402が垂直な状態であるが、変更後はラインセンサ対402が水平、ラインセンサ対401が垂直な状態となる。同様に、横位置から縦位置への姿勢の変更である場合、変更前は、図2のラインセンサ対402が地面に対して水平、ラインセンサ対401が垂直な状態であるが、変更後はラインセンサ対401が水平、ラインセンサ対402が垂直な状態となる。
【0043】
そこで、S23では、ラインセンサ対401に対応する測距点が選択されていた場合には、ラインセンサ対402に変更し、ラインセンサ対402に対応する測距点が選択されていた場合には、ラインセンサ対401に変更する。また、測距点503が選択されている場合には、ラインセンサ対401と402の水平・垂直方向を交換する。
【0044】
続いてS24において、変更後のラインセンサ対401及び、または402を構成する光電変換素子の内、焦点検出に利用する信号を出力する光電変換素子の範囲(検出範囲)を変更する。ここで、S24で行われる処理について、図6及び図7を参照して詳しく説明する。図7は、検出範囲の変更を説明するための図である。ここでは、測距点として、図6に示す測距点503が選択されているものとする。
【0045】
図6(b)に示すような横位置から図6(c)に示すような縦位置に姿勢を変更する場合、まず、横位置では水平方向のラインセンサ対402の内、光電変換素子H16〜H35(20素子)が検出範囲である。これを縦位置に変更すると、ラインセンサ対401が水平方向になる。ラインセンサ対401の測距点503に対応する検出範囲は、光電変換素子V14〜V27(14素子)であるので、図7からも分かるように、変更前のラインセンサ対402の検出範囲と比べて狭くなってしまう。一方、変更前の横位置では垂直方向のラインセンサ対401の内、光電変換素子V14〜V27が検出範囲であるが、これを縦位置に変更すると、ラインセンサ対402が垂直方向になる。ラインセンサ対402の測距点503に対応する検出範囲は、光電変換素子H16〜H35であるので、図7からも分かるように、変更前と比べて、検出範囲が広くなってしまう。そこで、本第1の実施形態では、横位置から縦位置への変更後は、ラインセンサ対401の検出範囲をV11〜V27に拡大すると共に、ラインセンサ対402の検出範囲をH19〜H32に縮小する。図6(c)は、このように検出範囲を変更した後の状態を示す図である。
【0046】
また、縦位置において、図6(c)に示すような検出範囲である場合に、カメラの姿勢が再び横位置に戻された場合には、検出範囲は次のように変更される。即ち、変更後に水平方向となるラインセンサ対402の検出範囲を光電変換素子H19〜H32からH16〜H32に拡大すると共に、垂直方向となるラインセンサ対401の検出範囲を光電変換素子V11〜V27からV14〜V27に縮小する。つまり、図6(b)のような検出範囲に戻す。
【0047】
このように検出範囲を変更することで、カメラの姿勢が横位置から縦位置、縦位置から横位置に変わった場合であっても、被写体画像の同じ領域の信号を焦点検出に用いることができるため、安定した焦点調節を行うことが可能となる。
【0048】
一方で、ラインセンサ対401またはラインセンサ対402のどちらか一方のみの測距点501、502、504、505は姿勢によらず光電変換素子の範囲は固定である。
【0049】
なお、検出範囲の変更は、システムコントローラ112が行う。この時、システムコントローラ112は、センサ制御回路115を介して焦点検出部108から得られる信号の内、演算に利用する範囲を変更して抽出することで検出範囲を変更しても良い。また、光電変換素子から信号を読み出す範囲を変更することで検出範囲を変更しても良い。さらに、光電変換素子の電荷蓄積を行う範囲を変更することで検出範囲を変更しても良い。
【0050】
上記のようにして、S24において検出範囲の変更を終えると、図4の処理に戻る。
【0051】
上記のように本第1の実施形態によれば、カメラの姿勢が横位置から縦位置、縦位置から横位置に変わった場合であっても、安定した焦点調節を行うことが可能となる。
【0052】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、本第2の実施形態における全体的な撮像処理の流れは図4に示すものと同様であるので、ここでは説明を省略する。ただし、S12で行われる検出範囲変更処理が第1の実施形態で説明した図5と異なるため、検出範囲変更処理について図8を参照して以下に説明するが、図5と同様の処理にはステップ番号を付して、適宜説明を省略する。
【0053】
S21では、システムコントローラ112が姿勢検知回路122を駆動させ、カメラの姿勢(縦位置、横位置)を検知し、S22で検知したカメラの姿勢が前回検知した姿勢と同じであるかどうかを判断する。同じであれば(S22でNO)、焦点調節範囲を変更する必要がないので、図4の処理に戻り、姿勢が変わっていれば(S22でYES)、S31に進む。
【0054】
S31では、先のルーチンで図4のS13で検出した焦点状態が不安定になったかどうかを判断する。焦点状態が不安定になったならS23へ進み、焦点状態が不安定になってなければ、図4の処理に戻る。なお、焦点状態が不安定になったかどうかの判断は、検出範囲から得られる信号の相関量が、前回の相関量と比べて大幅に低くなったことから判断しても良いし、光電変換素子の蓄積時間が大きく延びたことから判断しても良い。また、デフォーカス量が大きく前ピン、もしくは、後ピンになったことから判断しても良い。いずれにしても、焦点状態の安定度を表す指標が、予め設定された範囲内にあるかどうかを判断すればよい。
【0055】
S23及びS24の処理は、第1の実施形態で図5〜図7を参照して説明した処理と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0056】
上記の通り本第2の実施形態によれば、焦点状態が不安定になった場合にのみ、ラインセンサ対の水平・垂直方向を変更すると共に検出範囲を変更するため、第1の実施形態と同様の効果に加え、検出範囲の変更に伴う煩雑な制御を簡略化することが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相差方式で焦点状態を検出するための、一列に配置された2つのラインセンサから成る第1のラインセンサ対、及び、該第1のラインセンサ対に対して垂直を為すように一列に配置された2つのラインセンサから成る第2のラインセンサ対とを有し、前記第1及び第2のラインセンサ対から出力される信号の少なくとも一部に基づいて、前記第1及び第2のラインセンサ対ごとに前記信号の位相のずれ量を検出し、焦点状態を求める焦点検出手段と、
撮像装置の姿勢を検知する姿勢検知手段と、
前記姿勢検知手段により検知された姿勢に基づいて、前記第1及び第2のラインセンサ対それぞれを構成するの複数の光電変換素子の内、前記ずれ量の検出に用いる信号を出力する光電変換素子の範囲である検出範囲を変更する変更手段とを有し、
前記変更手段は、前記撮像装置の姿勢が変更された場合に、変更前の前記第1のラインセンサ対の検出範囲を、変更後の前記第2のラインセンサ対の検出範囲として変更すると共に、変更前の前記第2のラインセンサ対の検出範囲を、変更後の前記第1のラインセンサ対の検出範囲として変更することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記撮像装置の姿勢が変更された場合に、前記焦点検出手段から得られる焦点状態の安定度を表す指標が、予め設定された範囲内にあるかどうかを判断する判断手段を更に有し、
前記判断手段が、前記安定度を表す指標が予め設定された範囲内に無いと判断した場合に、前記変更手段は、前記第1及び第2のラインセンサ対の検出範囲を変更することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記焦点検出手段は、前記第1及び第2のラインセンサ対から出力される信号の内、前記検出範囲に対応する信号を抽出して前記ずれ量を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記焦点検出手段は、前記第1及び第2のラインセンサ対の光電変換素子の内、前記検出範囲に対応する光電変換素子から信号を読み出すことを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記焦点検出手段は、前記第1及び第2のラインセンサ対の光電変換素子の内、前記検出範囲に対応する光電変換素子において電荷の蓄積を行わせることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項6】
位相差方式で焦点状態を検出するための、一列に配置された2つのラインセンサから成る第1のラインセンサ対、及び、該第1のラインセンサ対に対して垂直を為すように一列に配置された2つのラインセンサから成る第2のラインセンサ対とを有し、前記第1及び第2のラインセンサ対から出力される信号の少なくとも一部に基づいて、前記第1及び第2のラインセンサ対ごとに前記信号の位相のずれ量を検出し、焦点状態を求める焦点検出手段を有する撮像装置の制御方法であって、
姿勢検知手段が、撮像装置の姿勢を検知する姿勢検知工程と、
前記姿勢検知工程で検知された姿勢に基づいて、変更手段が、前記第1及び第2のラインセンサ対それぞれを構成するの複数の光電変換素子の内、ずれ量の検出に用いる信号を出力する光電変換素子の範囲である検出範囲を変更する変更工程とを有し、
前記変更工程では、前記撮像装置の姿勢が変更した場合に、変更前の前記第1のラインセンサ対の検出範囲を、変更後の前記第2のラインセンサ対の検出範囲として変更すると共に、変更前の前記第2のラインセンサ対の検出範囲を、変更後の前記第1のラインセンサ対の検出範囲として変更することを特徴とする撮像装置の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−59346(P2011−59346A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208597(P2009−208597)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】