説明

撮像装置及びその制御方法

【課題】ジオラマ風の撮影を行う際に簡便で効果的な設定を可能とし、使い勝手を向上させること。
【解決手段】撮像装置において、被写体と撮像装置との間の高低差を撮影者が設定する(S504)。制御手段は、高低差に対応した撮像光学系の焦点距離の情報に基づいて、指定された高低差に対する焦点距離を算出する(S505)。算出された焦点距離に従って光学ズーム又はデジタルズームの制御が行われ(S506)、被写体の選択後、被写体領域が判定されると(S509)、ピントをぼかす所定領域が自動設定される(S510)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオラマ風の画像効果による撮影機能を有する撮像装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラにおいて、これまで特殊なレンズやフィルム、現像処理で行っていた映像表現をデジタル処理で実現することが望まれている。この映像表現のための画像効果は、単純にデジタル画像処理を施せば得られるわけではなく、画角や被写体との角度、露出設定等の撮影パラメータを被写体に関して最適に設定しないと所望の効果が得られないという問題があった。
例えば、従来アオリレンズを使用して、逆アオリを行うことでピント位置を画面の水平または垂直方向における一部のみに合わせ、他の部分をぼかすことによって、実在する風景が玩具のように撮影できる、ジオラマ風の撮影手法が知られている。この画像効果をデジタル画像処理によって行う撮影モードが提案されている(特許文献1参照)。また、ズーム制御により主被写体像の大きさを一定に保つ方法として、光学ズームとデジタルズームを利用して、主被写体像の大きさを維持して背景のボケ量を制御する方法が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3910120号公報
【特許文献2】特開2008−22386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の装置では、デジタル画像処理で所望のボケ量を指定することは可能であるが、画角や、カメラと被写体との距離及び高低差を効果的に設定することが難しいという問題があった。
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、ジオラマ風の撮影を行う際に、簡便で効果的な設定を可能とし、使い勝手を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明に係る装置は、被写体を撮像して画像データを出力する撮像手段と、前記撮像手段より出力される画像データにジオラマ風の画像効果を施す画像処理手段と、を有する撮像装置であって、前記撮像装置と前記被写体との間の高低差を指定する指定手段と、前記指定手段によって指定される高低差に基づいて前記撮像手段の焦点距離の情報を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得される前記焦点距離に従ってズーム制御を行う制御手段と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ジオラマ風の画像効果を適用した撮影を行う際、簡便で効果的な設定が可能となり、使い勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態に係る撮像装置としてのデジタルカメラを示す外観図である。
【図2】デジタルカメラの構成例を示すブロック図である。
【図3】デジタルカメラの全体的な動作例を示すフローチャートである。
【図4】静止画記録モードにおける処理例を示すフローチャートである。
【図5】ジオラマ風モードにおける処理例を示すフローチャートである。
【図6】ジオラマ風モードにて表示される画面例を示す図である。
【図7】カメラから被写体までの距離D及びカメラのアオリ角度θから、被写体位置を基準した撮影場所の高さHを算出する方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態に係る撮像装置及びその制御方法について説明する。尚、以下の実施形態では、ジオラマ風の画像効果を適用して被写体を撮影可能なデジタルカメラに適用した例として説明する。
【0009】
図1はデジタルカメラ100の外観を例示する斜視図である。カメラ本体の背面にある画像表示部28は、画像や各種情報を表示する。カメラ本体の上面に配置した電源スイッチ72は、撮影者が電源のオン/オフを切り替える際に使用する。その横には撮影時に使用するシャッタボタン61が位置する。カメラ本体の背面にあるモード切替スイッチ60は、撮影者がデジタルカメラ100における各種モードを切り替える際に使用する。具体的には、静止画記録モード、動画記録モード、再生モード等のモード切り替えが可能である。これらのボタンやスイッチは操作部70を構成しており、撮影者から各種の操作指示を受け付ける。操作部70は各種ボタンに限らず、画像表示部28の画面上に設けられたタッチパネル等の操作デバイスも含む。各種ボタンの具体例としては、消去ボタン、メニューボタン、SETボタン、セルフタイマーボタン、十字配置の4方向ボタン(上下及び左右の各ボタン)、ホイール73等がある。
接続ケーブル111は、デジタルカメラ100と不図示の外部機器を接続する。コネクタ112を介して接続ケーブル111とデジタルカメラ100が接続される。記録媒体200にはメモリカードやハードディスク等が使用され、記録媒体スロット201は記録媒体200を格納する。記録媒体スロット201に格納された記録媒体200はデジタルカメラ100と通信可能になる。撮影者は記録媒体200を記録媒体スロット201に収容した後、蓋202を閉じる。
【0010】
図2はデジタルカメラ100の構成例を示すブロック図である。
撮像光学系は、撮影レンズ103と、絞り機能を備えるシャッタ101を含む。レンズバリア102は撮像光学系を覆うことにより汚れや破損を防止する。撮像部22は光学像を電気信号に変換するCCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)素子等を用いて構成される。
A/D変換器23は撮像部22が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換し、また音声制御部11が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換する。タイミング信号発生部12は撮像部22、音声制御部11、A/D変換器23、D/A変換器13にクロック信号や制御信号を供給する。タイミング信号発生部12は、メモリ制御部15及びシステム制御部50により制御される。画像処理部24は、A/D変換器23からのデータ、又はメモリ制御部15からのデータに対し所定の画素補間や、縮小等のリサイズ処理、色変換処理を行う。また画像処理部24は、撮像した画像データを用いて所定の演算処理を行い、その演算結果に基づいてシステム制御部50が露光制御、焦点状態検出制御を行う。これにより、TTL(スルー・ザ・レンズ)方式のAF(オートフォーカス)処理、AE(自動露出)処理、EF(フラッシュプリ発光)処理が行われる。画像処理部24は更に、撮像した画像データを用いて所定の演算処理を行い、得られた演算結果に基づいてTTL方式のAWB(オートホワイトバランス)処理も行う。そして、画像処理部24はジオラマ風の画像効果を得るモードの選択時に、撮像される画像の所定領域にぼかし処理を施す。具体的には、画像処理部24は所定領域にローパスフィルタをかけてぼかす。また、この方法に限らず、一度縮小処理をかけた画像を再び元の画像サイズにリサイズすることで高周波成分を減らすぼかし処理を施した画像を、所定領域について元の画像と合成し、または置き換える方法が挙げられる。
【0011】
A/D変換器23の出力データは、画像処理部24及びメモリ制御部15を介して、或いはメモリ制御部15を直接介して、メモリ32に書き込まれる。メモリ32は、A/D変換器23がデジタルデータに変換した、撮像部22による画像データや、画像表示部28に画像を表示するための画像データを記憶する。尚、メモリ32は、マイクロホン10を用いて録音した音声データや、静止画像、動画像、および画像ファイルを構成するファイルヘッダの格納にも使用される。メモリ32は、所定枚数の静止画像や所定時間の動画像および音声のデータの格納に十分な記憶容量をもつ。
圧縮/伸張部16は、適応離散コサイン変換(ADCT)等により画像データを圧縮し、また圧縮されたデータを伸張する。圧縮/伸張部16は、シャッタ101の動作をトリガにしてメモリ32に格納された撮影画像データを読み込んで圧縮処理を行い、処理後のデータをメモリ32に書き込む。また圧縮/伸張部16は、記録媒体200の記録部19等からメモリ32に読み込まれた圧縮画像データに対して伸張処理を行い、処理後のデータをメモリ32に書き込む。圧縮/伸張部16によりメモリ32に書き込まれた画像データは、システム制御部50のファイル管理部にてファイル化され、I/F(インターフェース)部18を介して記録媒体200に記録される。また、メモリ32は画像表示用のビデオメモリを兼ねている。D/A変換器13は、メモリ32に格納されている画像表示用データをメモリ制御部15から受信すると、アナログ信号に変換して画像表示部28に出力する。画像表示部28はLCD等の表示器に、D/A変換器13からのアナログ信号に応じて画像を表示する。
【0012】
マイクロホン10が出力する音声信号は、アンプ等で構成される音声制御部11を介してA/D変換器23に供給されてデジタル信号に変換された後、メモリ制御部15によってメモリ32に格納される。一方、記録媒体200に記録されている音声データはメモリ32に読み込まれた後、D/A変換器13でアナログ信号に変換される。音声制御部11は、このアナログ信号を受けてスピーカ39を駆動し、音声を出力する。
不揮発性メモリ56は電気的に消去及び記録可能なメモリであり、例えばEEPROM等が用いられ、システム制御部50の動作用の定数、プログラム等を記憶する。ここでいうプログラムとは、本実施形態にて後述する各種フローチャートに従って処理を実行するためのプログラムのことである。
【0013】
システム制御部50はデジタルカメラ100全体を制御し、不揮発性メモリ56に記憶されたプログラムを実行することで、後述の各処理を実現する。システムメモリ52にはRAM(Random Access Memory)が使用され、システム制御部50の動作用の定数及び変数、不揮発性メモリ56から読み出したプログラム等が展開されて記憶される。
モード切替スイッチ60、第1シャッタスイッチ62、第2シャッタスイッチ64、操作部70は、システム制御部50に各種の動作指示を入力するための操作手段である。モード切替スイッチ60は各種モードの切替信号をシステム制御部50に送出する。第1シャッタスイッチ62と第2シャッタスイッチ64は、シャッタボタン61によって操作される。第1シャッタスイッチ62は、シャッタボタン61の操作途中(半押し)でオン状態となり、第1シャッタスイッチ信号(SW1と記す)を発生させる。システム制御部50はSW1を受けて、AF処理、AE処理、AWB処理、EF処理等の動作を開始させる。第2シャッタスイッチ64は、シャッタボタン61の操作完了(全押し)でオン状態となり、第2シャッタスイッチ信号(SW2と記す)を発生させる。システム制御部50はSW2を受けて、撮像部22から信号を読み出して、記録媒体200に画像データを書き込むまでの一連の撮影処理を開始させる。
【0014】
操作部70を構成する操作部材は、後述のように撮像装置と被写体との間の高低差を指定する際などに使用する。また操作部70は、画像表示部28に表示される種々の機能アイコンを選択操作するための各種機能ボタンを有する。撮影者は画像表示部28の表示画面を見ながら各種の設定操作を行うことができる。
電源スイッチ72は電源の投入と遮断操作に使用する。電源制御部80は電池の装着の有無、電池の種類、電池残量を検出し、その検出結果及びシステム制御部50の指示に基づいてDC−DCコンバータを制御し、必要な電圧を必要な期間に亘って、記録媒体200を含む各部へ供給する。電源部30には一次電池や二次電池、ACアダプター等が使用され、コネクタ33及び34で電源制御部80に接続される。
【0015】
RTC(Real Time Clock )40は、日付及び時刻を計時する。RTC40は、電源制御部80とは別に内部に電源部を有し、電源部30からの電源供給が停止した状態でも計時動作を続ける。システム制御部50は起動時にRTC40より取得した日時情報を用いてシステムタイマを設定し、タイマ制御を実行する。
I/F部18はメモリカードやハードディスク等の記録媒体200と接続処理を行い、コネクタ35,36を介して記録媒体200のI/F部37と接続される。記録媒体着脱検知部96はコネクタ35に記録媒体200が装着されているか否かを検知して、検知結果をシステム制御部50に通知する。記録媒体200は、半導体メモリや磁気ディスク等から構成される記録部19、I/F部37、記録媒体200とデジタルカメラ100とを接続するコネクタ36を備える。
通信部110はコネクタ112(無線通信の場合はアンテナ)を介してデジタルカメラ100を他の機器と接続する。
【0016】
図3は、デジタルカメラ100の全体的な動作を説明するフローチャートである。
電源スイッチ72が操作され電源がオンに切り替わると、S301の初期設定が行われる。システム制御部50はフラグや制御変数等の値を初期化する。S302にて、記録媒体200に記録されているファイルの管理処理が開始する。
S303、S305、S307において、システム制御部50は、モード切替スイッチ60の設定位置を判断することにより、モードを判別する。S303は静止画記録モードか否かの判定処理であり、現在のモードが静止画記録モードに設定されていれば、S304へ進み、システム制御部50は静止画記録モード処理を実行する。静止画記録モード処理の詳細は図4を用いて後述する。現在のモードが静止画記録モードに設定されていない場合、S305に進む。ここでシステム制御部50は、現在のモードが動画記録モードに設定されているか否かを判定し、動画記録モードに設定されていれば、S306へ進み、動画記録モード処理を実行する。また、現在のモードが動画記録モードに設定されていない場合、S307に進む。ここでシステム制御部50は、現在のモードが再生モードに設定されているか否かを判定する。再生モードに設定されていた場合、S308へ進み、システム制御部50は再生モード処理を実行する。再生モード以外のその他のモードに設定されていた場合、処理はS309へ進み、システム制御部50は選択されたモードに応じた処理を実行する。その他のモードとしては、例えば記録媒体200に格納されたデータを読み出して送信する送信モードや、外部機器からデータを受信して記録媒体200に格納する受信モード等が挙げられる。
【0017】
S304、S306、S308、S309の後、S310へ進み、システム制御部50は電源スイッチ72の設定位置を判断する。電源スイッチ72が電源オンの位置に設定されていれば、S303に戻る。一方、電源スイッチ72が電源オフの位置に設定されていれば、S311へ進み、システム制御部50は終了処理を行う。システム制御部50は画像表示部28の表示を終了状態に変更し、レンズバリア102を閉じて撮像部22を保護し、フラグ、制御変数等を含むパラメータや設定値、設定モードのデータを不揮発性メモリ56に記録し、電源供給が不要な部分への電源供給を遮断する。S311の終了処理が完了すると、前記一連の処理が終了し、電源のオフ状態へ移行する。
【0018】
次に、静止画記録モード処理(S304)について説明する。
図4は図3のS304における静止画記録モード処理を例示するフローチャートである。尚、この静止画記録モード処理は、モード切替スイッチ60の操作により他のモードへの切替が行われた場合や電源スイッチ72がOFF状態にセットされた場合、割り込み処理等により終了するものとする。
システム制御部50は静止画記録モードを開始すると、S401において撮影モードを確定する。撮影モードの確定は、以下の(1)又は(2)によって行われる。
(1)不揮発性メモリ56より前回の静止画記録モード終了時における撮影モードの情報をシステム制御部50が取得してシステムメモリ52に格納すること。
(2)撮影者が操作部70を操作することで撮影モードの設定入力があった場合に、その設定入力された撮影モードの情報をシステム制御部50がシステムメモリ52に格納すること。
【0019】
ここで、撮影モードとは撮影シーンに適したシャッタ速度や絞り値、ストロボ発光状態、感度設定等を組み合わせて実現されるモードのことである。デジタルカメラ100は、以下の撮影モードを有する。
・オートモード:カメラの各種パラメータを、計測された露出値に基づいてデジタルカメラ100に組み込まれたプログラムにより自動的に決定するモード。
・マニュアルモード:カメラの各種パラメータを撮影者が自由に変更可能なモード。
・シーンモード:撮影シーンに適したシャッタ速度や絞り値、ストロボ発光状態、感度設定等の組み合わせを自動で設定するモード。
尚、シーンモードには以下のモードが含まれる。
・ポートレートモード:背景をぼかして人物を浮き立たせる画像効果を得る、人物撮影に特化したモード。
・夜景モード:人物にストロボ光をあて背景を遅いシャッタ速度で記録する、夜景の撮影に特化したモード。
・風景モード:広がりのある風景の撮影に特化したモード。
・ナイト&スナップモード:三脚なしで夜景と人物をきれいに撮るのに適したモード。
・キッズ&ペットモード:よく動き回る子供やペットを、シャッタチャンスを逃さず撮影するモード。
・新緑&紅葉モード:新緑等の木々や葉を色鮮やかに撮影するのに適したモード。
・パーティーモード:蛍光灯や電球のもとで、手振れを抑えて被写体に忠実な色味で撮影するモード。
・スノーモード:雪景色を背景にしても人物が暗くならず、青みも残さずに撮影するモード。
・ビーチモード:太陽光の反射の強い海面や砂浜でも、人物等が暗くならずに撮影するモード。
・花火モード:打ち上げ花火を最適な露出で鮮やかに撮影するモード。
・水族館モード:屋内の水槽内の魚等を撮影するのに適した感度、ホワイトバランス、色味を設定するモード。
・水中モード:水中に最適なホワイトバランスに設定し、青みを押さえた色合いで撮影するモード。
・ジオラマ風モード:画像中の所定領域をぼかすことで、風景を玩具のように撮影するモード。
【0020】
S401において撮影モードが確定すると、S402でシステム制御部50は、撮像部22からの画像データを画像表示部28に表示する(スルー表示)。続いて、S403でシステム制御部50は、バッテリや記録媒体200をチェックする。電源制御部80から得た電源部30の残容量や、記録媒体200の有無や残容量が、デジタルカメラ100の動作上問題ないと判断された場合、S405に進むが、そうでない場合、S404に進む。ここで、画像表示部28は画像や音声により所定の警告表示を行ってから、処理がS401に戻る。
S405でシステム制御部50は、必要に応じて分類情報の自動付与について入/切設定を行う。自動付与の入/切設定は、操作部70に含まれるメニューボタンを押すことで画像表示部28に表示されるメニュー画面(不図示)により撮影者が任意に設定可能である。分類情報の自動付与の入/切設定は、シーンモード及び被写体条件により分類情報を自動で付与するか否かを示すフラグの値を設定することであり、設定値(フラグのON/OFF値)はシステムメモリ52が保持する。このように分類情報の自動付与について設定機能をカメラにもたせることで、撮影者の意図しない分類情報が付与されないように防止できる。
【0021】
次のS406でシステム制御部50は、スルー表示される画像中に、被写体の部位である主被写体(本例では顔)の画像が存在するか否かを検出する(いわゆる顔検出処理)。システム制御部50は、顔検出処理において人の顔が検出された場合、画像中に検出した顔の位置座標、サイズ(幅、高さ)、検出個数、信頼性係数等を顔情報としてシステムメモリ52に記憶する。顔検出処理において顔が検出されなかった場合、システム制御部50は、システムメモリ52内の位置座標、サイズ(幅、高さ)、検出個数、信頼性係数等の領域にゼロを設定する。
続くS407でシステム制御部50は、SW1がON状態であるか否かを判定する。SW1がOFF状態の場合、処理はS405に戻り(丸枠内にAを付して示すノード参照)、前記S405、S406が繰り返される。一方、SW1がON状態と判定された場合、S408に進む。ここでシステム制御部50は、焦点状態検出処理を行って撮影レンズ103の焦点を被写体に合わせるとともに、測光処理を行って絞り値及びシャッタ時間(シャッタスピード)を決定する。尚、測光処理において、必要であればフラッシュの設定も行われる。このとき、前記S406で顔が検出されていれば、検出した顔の範囲内で焦点状態検出処理を実行するようにシステム制御部50がAF制御を行うことも可能である。
【0022】
次に、S409でシステム制御部50はSW2のON/OFF状態を判定する。SW2がON状態の場合、S411に進み、SW2がOFF状態の場合、S410に進んで、システム制御部50はSW1のON/OFF状態を判定する。SW1がOFF状態になると(つまり、SW2がオンせずに、更にSW1も解除された場合)、処理はS410からS405へ戻る(ノードA参照)。また、SW1がON状態(かつSW2がOFF状態)の間は、S409及びS410の処理が繰り返される。
S411にてシステム制御部50は、画像表示部28の表示状態をスルー表示から固定色表示状態に設定する。そして、S412でシステム制御部50は、露光処理や現像処理を含む撮影処理を実行する。尚、露光処理では、撮像部22、A/D変換器23を取得した画像データが、画像処理部24及びメモリ制御部15を介して、或いはA/D変換器23から直接メモリ制御部15を介して、メモリ32に書き込まれる。また、現像処理ではシステム制御部50が、メモリ制御部15と必要に応じて画像処理部24を用いて、メモリ32に書き込まれた画像データを読み出して各種処理を行う。次のS413でシステム制御部50は、画像表示部28に対し、撮影処理で得た画像データのレックレビュー表示を行う。レックレビューとは、撮影画像の確認のために、被写体の撮影後であって記録媒体への記録前に、予め決められた時間(レビュー時間)だけ画像データを画像表示部28に表示する処理である。
【0023】
レックレビュー表示後、S414でシステム制御部50は、撮影処理で得た画像データを画像ファイルとして記録媒体200に書き込む(記録処理)。次のS415でシステム制御部50は、SW2のON/OFF状態を判定する。SW2がON状態の場合、SW2がOFF状態となるまでS415の判定処理が繰り返される。この間、前記レックレビューの表示が継続する。即ち、S414の記録処理が終了した際に、SW2がOFF状態になるまでの間、画像表示部28はレックレビュー表示を続行する。これにより、撮影者はシャッタボタン61の全押し状態を持続することで、レックレビューによる撮影画像データの確認を入念に行うことが可能となる。
撮影者がシャッタボタン61を全押し状態にして撮影を行った後、シャッタボタン61から手指を放して全押し状態が解除されると、処理はS415からS416へ進む。ここでシステム制御部50は、予め定められたレビュー時間が経過したか否かを判断する。レビュー時間として決められる最小時間については、判定基準時間として事前に設定される。レビュー時間を越える時間が経過していればS417に進み、未経過の場合、S416の判定処理が繰り返される。
S417でシステム制御部50は、画像表示部28の表示状態をレックレビュー表示の状態からスルー表示状態に戻す。この処理により、レックレビュー表示によって撮影画像データを撮影者が確認した後、画像表示部28の表示状態は次の撮影のために撮像部22からの画像データを逐次表示するスルー表示状態に自動的に切り替わることになる。
そしてS418でシステム制御部50は、SW1のON/OFF状態を判定し、SW1がON状態の場合はS409へ戻る。またSW1がOFF状態の場合、S405へ戻る(ノードA参照)。即ち、シャッタボタン61の半押し状態が継続している場合(SW1がON状態)には、システム制御部50は次の撮影の準備にかかる(S409)。一方、シャッタボタン61が解放された場合(SW1がOFF状態)、システム制御部50は、一連の撮影動作を終えて撮影待機状態に戻す(S405)。
【0024】
次に、図5のフローチャートを用いてジオラマ風モードの処理について説明する。尚、本処理は静止画記録モード処理及び動画記録モード処理のどちらでも実行可能である。なお、本実施形態では、ジオラマ風に画像を見せるために、画像処理部24は撮影された画像データに対して画像中の所定領域をぼかす処理を施す。図6(d)はその一例として、垂直方向に上・中・下と3つの領域に分け、上領域601及び下領域603の画像をぼかすことでジオラマ風画像効果を実現したものである。本実施形態は、カメラと被写体との間の高低差に応じたジオラマ設定で簡単に撮影が行えるようにしたものであり、ぼかす所定領域はこれに限らない。ただし、カメラと被写体との間の高低差が見え方に影響を与えるような処理に対して、本実施形態はより効果がある。
システム制御部50は、静止画記録モード及び動画記録モードのどちらにおいても、ジオラマ風モードの選択が可能である。ジオラマ風モードが選択された場合、システム制御部50は、ジオラマ風の画像効果を適用した撮影に好適な撮影条件をガイドするか否かを判定し(S501)、撮影ガイドを行う場合、撮影画面内に主被写体である顔の像が存在するか否かを判定する(S502)。撮影画面内に被写体像の顔が検出された場合、システム制御部50は顔の大きさ、例えば顔領域の面積が所定の基準値以上の大きさであるか否かを判定する(S503)。被写体像の顔の大きさが基準値以上である場合、システム制御部50は被写体がジオラマ風効果のある写真撮影に適さない旨のメッセージを画像表示部28に表示させる(S512)。図6(b)は、ジオラマ効果に不適な被写体の場合に画像表示部28が表示するガイダンスを例示する。そしてS507に進む。また、被写体の顔が認識できない場合や顔の大きさが基準値未満の場合、S504に進む。画像表示部28は、カメラと撮影しようとしている被写体との間の高低差について撮影者に指定を促すためのメッセージ等を表示する。図6(a)は、カメラと被写体との高さを設定する際に画像表示部28が表示する画面例を示す。この画面を見ながら、撮影者は操作部70を操作して高低差を設定する。
操作部70によって高さ入力が行われた後、システム制御部50は入力された高さ、つまりカメラと被写体との間の高低差に基づいて、ジオラマ風の画像効果に好適な焦点距離を算出する(S505)。本実施形態では、下表1に示す焦点距離のテーブルを用いて焦点距離の算出処理(補間計算処理を含む)が行われる。
【0025】
【表1】

高さ値の増加につれて、算出される焦点距離が長くなっていく。被写体とカメラとの高低差については、図7に示すように、カメラから被写体までの距離(被写体距離)(図7のD参照)及びカメラのアオリ角度(図7のθ参照)から算出することも可能である。すなわち、撮影場所の高さ(図7のH参照)は、カメラと被写体との高低差を表しており、図7に示す直角三角形の幾何学的関係から式「H = D × sinθ」によりHの値を算出できる。被写体距離は、距離センサを用いる方法やズーム制御及び自動焦点調節に係る焦点状態の検出に基づく既知の方法で取得できる。またカメラのアオリ角度はカメラ本体の姿勢、つまり被写体に対するカメラの向きをセンサ等により検出することで取得できる。上式で算出した高さ値が指定されると、これに対応する焦点距離が取得される。なお、テーブル参照による焦点距離の算出方法に限らず、高さ値と焦点距離との関係を規定する計算式を用いた算出方法を用いることもできる。
【0026】
次にシステム制御部50は、算出した焦点距離に応じてズーム移動を行う(S506)。なお、ズーム移動は、光学ズームによる移動でもデジタルズームの換算焦点距離による移動でもよい。前者の場合にはシステム制御部50から不図示のレンズ駆動回路に送られる制御信号に従って焦点距離に対応したズーム位置に変倍用レンズが駆動される。
S501、S506、またはS512からS507に進むと主被写体が選択され、画像表示部28は主被写体が選択可能である旨を表示する。システム制御部50は、指定された領域を中心に色情報、被写体までの距離情報を用いて被写体領域の判定及び算出処理を行う(S508)。次に被写体領域を算出できたか否かが判定され(S509)、該領域が算出できた場合、システム制御部50は算出した領域の範囲を外してぼかす所定領域を自動で設定する(S510)。
一方、被写体領域が算出できなかった場合、システム制御部50はぼかす所定領域を不揮発性メモリ56から読み出したデータに基づいて設定する(S511)。該データは、ぼかす所定領域として事前に撮影者が設定するか、または初期値として不揮発性メモリ56に記憶されている。なお、ぼかす所定領域は、S511以降に設定可能である。従来、ズーム制御、並びにぼかす所定領域についてすべて撮影者の指定によるものであったため、ジオラマ風画像効果をもつ写真撮影の場合に有効な設定を行うことが難しかった。本実施形態により、ジオラマ風画像効果による撮影に好適な設定を簡便に行うことが可能となる。また、被写体領域の算出結果を用いて、ピントの合う範囲の指定を自動で行うこともできる。すなわち、被写体領域の設定範囲にピントが合うようにフォーカシングが行われることで、さらに好適な設定にすることができる。
【0027】
図6(c)は、焦点距離の決定(図5のS505参照)後に、撮影者がぼかす所定領域を選択する操作例を示す。本実施形態では画像表示部28に設けたタッチパネルで撮影者がぼかす所定領域とそうでない領域の境界位置を指定することができ、指定位置のデータはシステム制御部50に送られる。これに限らず、撮影者が十字操作キー等のボタン操作で表示画面上のカーソルを移動させて設定する実施形態でもよい。図6(d)は被写体領域の判定後に、ぼかす所定領域(上領域601及び下領域603)と、ぼかさない領域(中間領域602)を画像表示部28が表示した例を示す(図5のS509及び510参照)。
本実施形態ではジオラマ風モード時の設定についてズーム及びぼかしたい領域の設定方法を説明したが、他の撮影設定についても適用可能である。例えば、被写体領域の抽出方法にて、タッチパネルで撮影者が指定した領域を抽出してもよい。また、ストロボプリ発光等の反射光の受光量に基づいて被写体領域を算出することも可能である。
【0028】
図5のS512では被写体がジオラマ風画像効果をもつ写真撮影に適さない例として、撮影画面内で被写体像の顔が占める割合が大きい場合について説明した。これに限らず、画面が一様で撮影した画像が平坦な場合や、カメラから被写体までの距離が基準値よりも短い場合等において、S512の処理を実行し、ジオラマ風の画像効果が期待でいない旨をガイダンス表示してもよい。
以上、デジタルカメラへの適用例を説明したが、本発明はこれに限らず携帯電話や携帯端末等、画像再生が可能な各種装置に適用可能である。
【0029】
(その他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0030】
24 画像処理部
28 画像表示部
50 システム制御部
70 操作部
100 デジタルカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像して画像データを出力する撮像手段と、
前記撮像手段より出力される画像データにジオラマ風の画像効果を施す画像処理手段と、を有する撮像装置であって、
前記撮像装置と前記被写体との間の高低差を指定する指定手段と、
前記指定手段によって指定される高低差に基づいて前記撮像手段の焦点距離の情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得される前記焦点距離に従ってズーム制御を行う制御手段と、を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記被写体の像の大きさを検出する検出手段を有し、
前記制御手段は、前記被写体の部位である主被写体の像の大きさが予め定められた基準値よりも大きい場合、前記被写体が前記画像効果を適用した撮影に不適である旨を表示させる制御を行うことを特徴とする、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記画像処理手段は、前記ズーム制御が行われた状態で前記撮像手段によって撮像される画像の所定領域にぼかし処理を施すことで、前記画像データに前記ジオラマ風の画像効果を施すことを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記被写体の領域を算出する算出手段を有し、
前記画像処理手段は、前記所定領域が前記算出手段によって算出された被写体の領域を含まないように、前記所定領域を設定することを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記撮像装置から前記被写体までの距離である被写体距離と、前記撮像装置のアオリ角度に基づいて、前記撮像装置と前記被写体との間の高低差を算出する算出手段を有し、
前記指定手段は、前記算出手段で算出された高低差を指定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
被写体を撮像して画像データを出力する撮像手段と、該撮像手段より出力される画像データにジオラマ風の画像効果を施す画像処理手段とを有する撮像装置で実行される制御方法であって、
前記撮像装置と前記被写体との間の高低差を指定する指定ステップと、
前記指定ステップで指定された高低差に基づいて前記撮像手段の焦点距離の情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにて取得された前記焦点距離に従ってズーム制御を行う制御ステップと、を有することを特徴とする撮像装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−60213(P2012−60213A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198754(P2010−198754)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】