説明

撮像装置

【課題】 撮影光学系に加わる振れを検知し、この振れの方向と大きさに応じて該撮影光学系の結像位置に設けたイメージセンサを撮影光軸と直交する平面内で移動させて像振れをキャンセルする像振れ補正機構を備えた撮像装置において、イメージセンサ周りの構造の小型化、簡略化を図る。
【解決手段】 イメージセンサと、該イメージセンサの直前に位置する撮影光学系の最終レンズ群とを、像振れ補正機構によって一緒に移動される一体移動ユニットとしたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置に関し、特に像振れ補正が可能な撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラなどの撮像装置において、筺体に手振れなどが加わったときに撮像面上での像振れが起こらないようにする、いわゆる像振れ(手振れ)補正機能を備えたものが実用化されている。最近は特に、撮像媒体としてCCDやCMOSなどのイメージセンサを用いたデジタルカメラで像振れ補正機能を備えたタイプが多くなっている。この種のデジタルカメラでは、イメージセンサを撮影光軸と直交する平面内で移動させることにより像振れ補正を行うことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
デジタルカメラは、イメージセンサの特性上、撮影光学系の像面側をテレセントリックにする必要があるため、イメージセンサの直前に位置する最終レンズ群の有効径が大きくなりがちである。そして像振れ補正のためにイメージセンサを光軸直交方向に移動可能にすると、最終レンズ群の有効径をさらに大きくしなければならず、装置が大型化してしまうおそれがあった。
【0004】
また、イメージセンサは、受光面(撮像面)への埃の付着を防ぐために防塵構造にされており、防塵構造も含めた構造の簡略化が望まれている。
【0005】
したがって本発明は、像振れ補正機能を備えつつ、イメージセンサ周りの構造が簡単で小型化が可能な撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の撮像装置は、撮影光学系に加わる振れを検知し、この振れの方向と大きさに応じて該撮影光学系の結像位置に設けたイメージセンサを撮影光軸と直交する平面内で移動させて像振れをキャンセルする像振れ補正機構を備え、イメージセンサと、該イメージセンサの直前に位置する撮影光学系の最終レンズ群とを、像振れ補正機構によって一緒に移動される一体移動ユニットとしたことを特徴としている。
【0007】
最終レンズ群とイメージセンサは内部に密封空間を有する共通保持枠内に保持され、イメージセンサの受光面が密封空間に位置していることが好ましい。さらに、共通保持枠内に、最終レンズ群とイメージセンサの間に位置させてローパスフィルタを保持すると良い。
【0008】
共通保持枠を支持し、撮影光軸と直交する平面内で直進移動可能な第1の可動枠と、該第1の可動枠を支持し、撮影光軸と直交する平面内で第1の可動枠の移動方向と直交する方向へ直進移動可能な第2の可動枠とで像振れ補正機構を構成することが好ましい。
【0009】
さらに、撮影状態から非撮影状態になるときに、最終レンズ群とイメージセンサの一体移動ユニットを、撮影光軸と直交する方向において像振れ補正用可動域を超えた光軸外の退避位置まで移動させる退避駆動機構を備えてもよい。
【発明の効果】
【0010】
以上の本発明によれば、像振れ補正機能を備えた撮像装置において、イメージセンサ周りの構造を小型で簡単なものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[レンズ鏡筒全体の説明]
図1と図2に断面を示すズームレンズカメラのズームレンズ鏡筒10は、箱形のハウジング11と、該ハウジング11内に伸縮可能に支持される伸縮筒部12を有している。ハウジング11の外側はカメラの外装部材で覆われているが、外装部の図示は省略している。ズームレンズ鏡筒10の撮影光学系は、物体側から順に、第1レンズ群13a、シャッタ13b、絞13c、第2レンズ群13d、第3レンズ群(最終レンズ群)13e、ローパスフィルタ13f及びCCDイメージセンサ(以下、CCD)13gからなっている。図5に示すように、CCD13gは画像処理回路を備えた制御回路14aと電気的に接続しており、カメラ外面に設けた液晶モニタ14bに電子画像を表示し、当該電子画像データをメモリ14cに記録することが可能である。そして、図2に示す撮影状態では、撮影光学系を構成する全ての光学要素が同一の撮影光軸Z1上に位置するが、図1の鏡筒収納(沈胴)状態で、第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13gが撮影光軸Z1から離れてハウジング11内を上方に退避移動し、この退避移動の結果生じるスペースに第2レンズ群13dが進入する。これにより鏡筒の収納長を短縮することが可能となっている。以下、光学要素の退避機構を含めたズームレンズ鏡筒10の全体構造を説明する。なお、以後の説明中では、ズームレンズ鏡筒10を搭載するズームレンズカメラのボディを正面から見たときの上下方向をy軸、同じくカメラ正面から見て左右方向をx軸と定義する。
【0012】
ハウジング11は、中空の箱状部15と、撮影光軸Z1を囲むようにして該箱状部15の前壁15aに形成した中空の固定環部16とを有する。固定環部16の中心である回転中心軸Z0は、撮影光軸Z1と平行で該撮影光軸Z1よりも下方に偏心している。箱状部15内には、固定環部16の上方に退避スペースSP(図1、図2)が形成されている。
【0013】
固定環部16の内周面側には、回転中心軸Z0と平行な軸で回動可能なズームギヤ17(図8)が支持されている。ズームギヤ17は、ハウジング11に支持されたズームモータMZ(図5、図10及び図11)によって正逆に回転される。また、固定環部16の内周面には、雌ヘリコイド16aと、回転中心軸Z0を中心とした環状をなす周方向溝16bと、回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)と平行な直進案内溝16cとが形成されている(図3、図4参照)。
【0014】
固定環部16の内側には、回転中心軸Z0を中心として回動可能にヘリコイド環18が支持されている。ヘリコイド環18は、雌ヘリコイド16aに螺合する雄ヘリコイド18aを有し、雌ヘリコイド16aと雄ヘリコイド18aの関係によって回転しながら光軸方向に進退することができる。ヘリコイド環18はまた、雄ヘリコイド18aの前方の外周面上に回転案内突起18bを有しており、固定環部16に対して最も前方に移動した状態(図2ないし図4)では、雌ヘリコイド16aと雄ヘリコイド18aの螺合が解除されるとともに回転案内突起18bが周方向溝16bに摺動可能に嵌まり、ヘリコイド環18は光軸方向移動が規制されて定位置回転のみが可能になる。ヘリコイド環18の外周面にはさらに、雄ヘリコイド18aと同一周面位置に、撮影光軸Z1と平行なギヤ歯を有する環状のスパーギヤ18cが形成されており、該スパーギヤ18cに対してズームギヤ17が噛合している。ズームギヤ17は軸線方向に長く形成され、図1及び図10に示すヘリコイド環18の収納状態から図2及び図11に示す繰出状態まで、常にスパーギヤ18cとの噛合を維持する。なお、ヘリコイド環18は、光軸方向に分割可能な2つの環状部材を組み合わせて構成されており、図10及び図11では、ヘリコイド環18のうち後方の環状部材のみを図示している。
【0015】
ヘリコイド環18の内側には直進案内環20が支持されている。図4に示すように、直進案内環20は、その後端部付近に設けた直進案内突起20aを固定環部16の直進案内溝16cに摺動可能に係合させることで、回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)に沿う方向へ直進案内されている。ヘリコイド環18は、該ヘリコイド環18の内周面と直進案内環20の外周面との間に設けた回転案内部21を介して、直進案内環20に対して相対回転自在かつ光軸方向には一緒に移動するように支持されている。回転案内部21は、軸線方向に位置を異ならせて設けた複数の周方向溝と、各周方向溝に摺動可能に嵌まる径方向突起とからなっている。
【0016】
直進案内環20は内周面に回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)と平行な直進案内溝20bを有し、該直進案内溝20bに対して1群直進案内環22の直進案内突起22aと、2群直進案内環23の直進案内突起23aとがそれぞれ摺動可能に係合している。1群直進案内環22は、内周面の直進案内溝22b(図3)を介して1群支持枠24を回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)と平行な方向に直進案内し、2群直進案内環23は、直進案内キー23bを介して2群支持枠25を回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)と平行な方向に直進案内している。1群支持枠24はフォーカシング枠29を介して第1レンズ群13aを支持し、2群支持枠25は第2レンズ群13dを支持している。
【0017】
直進案内環20の内側には回転中心軸Z0を中心として回動可能なカム環26が設けられ、該カム環26は、回転案内部27、28(図4)を介して、1群直進案内環22と2群直進案内環23に対してそれぞれ相対回転自在かつ光軸方向には一緒に移動するように支持されている。回転案内部27は、カム環26の外周面側に設けられた周方向溝と、1群直進案内環22に設けられ該周方向溝に摺動可能に嵌まる径方向突起により構成されている。回転案内部28は、カム環26の内周面側に設けられた周方向溝と、2群直進案内環23に設けられ該周方向溝に摺動可能に嵌まる径方向突起により構成されている。
【0018】
図4に示すように、カム環26は径方向外側に突出するフォロア突起26aを有し、該フォロア突起26aが、直進案内環20のフォロアガイド溝20cを貫通し、ヘリコイド環18の内周面に形成した回転伝達溝18dに係合している。回転伝達溝18dは回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)と平行な溝であり、該回転伝達溝18dに対してフォロア突起26aは周方向への相対移動を規制された状態で摺動可能に嵌まっている。つまり、回転伝達溝18dとフォロア突起26aの関係によって、ヘリコイド環18の回転がカム環26に伝達される。一方、フォロアガイド溝20cは、図にその展開形状が表れていないが、回転中心軸Z0を中心とする周方向溝部と、雌ヘリコイド16aと同方向に傾斜するリード溝部とを有するガイド溝である。よって、ヘリコイド環18によってカム環26が回転されるとき、フォロア突起26aがフォロアガイド溝20cのリード溝部内に位置する状態では、カム環26が回転しながら回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)に沿う方向へ進退し、フォロア突起26aがフォロアガイド溝20cの周方向溝部内に位置する状態では、カム環26は前後への進退は行わずに定位置回転する。
【0019】
カム環26は外周面と内周面にそれぞれカム溝26b、26cを有する両面カム環であり、外周面側のカム溝26bには、1群支持枠24から径方向内方に突出されたカムフォロア24aが摺動可能に係合し、内周面側のカム溝26cには、2群支持枠25から径方向外方に突出されたカムフォロア25aが摺動可能に係合している。つまり、カム環26が回転されると、1群直進案内環22を介して直進案内された1群支持枠24は、カム溝26bの形状に従って回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)に沿う方向へ所定の軌跡で進退される。同様に、カム環26が回転されると、2群直進案内環23を介して直進案内された2群支持枠25は、カム溝26cの形状に従って回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)に沿う方向へ所定の軌跡で進退移動される。
【0020】
2群支持枠25は、第2レンズ群13dを保持する筒状部25b(図1、図2参照)の前部に、シャッタ13bと絞13cを開閉可能に支持している。シャッタ13bと絞13cはそれぞれ、2群支持枠25に支持されたシャッタ駆動アクチュエータMSと絞駆動アクチュエータMA(図5、図15)によって開閉させることができる。
【0021】
第1レンズ群13aを保持するフォーカシング枠29は、1群支持枠24に対して回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)に沿う方向へ移動可能に支持されており、フォーカシングモータMF(図5)によってフォーカシング枠29を前後に移動させることができる。
【0022】
ズームモータMZ、シャッタ駆動アクチュエータMS、絞駆動アクチュエータMA、フォーカシングモータMFはそれぞれ制御回路14aによって駆動制御される。ズームレンズ鏡筒10は、カメラのメインスイッチ14d(図5)のオンによりズームモータMZが駆動されて図2の撮影状態となり、メインスイッチ14dのオフにより該撮影状態から図1の収納状態になる。
【0023】
以上のズームレンズ鏡筒10の動作をまとめると、図1の鏡筒収納状態においてメインスイッチ14dをオンにしてズームギヤ17を繰出方向へ回転駆動すると、ヘリコイド環18が回転しながら光軸方向前方に移動し、該ヘリコイド環18と共に直進案内環20も光軸方向前方へ直進移動する。また、ヘリコイド環18から回転力が伝達されたカム環26が、直進案内環20に対して回転しながら光軸方向前方に相対移動する。1群直進案内環22と2群直進案内環23は、カム環26と共に光軸方向前方に直進移動する。1群支持枠24と2群支持枠25はそれぞれ、カム環26に対して光軸方向に所定の軌跡で相対移動する。つまり、収納状態から鏡筒を繰り出すときの第1レンズ群13aと第2レンズ群13dの光軸方向移動量は、固定環部16に対するカム環26の相対移動量と、カム環26に対する1群支持枠24と2群支持枠25の相対移動量(各カム溝26b、26cによる進退移動量)の合算値として決定される。
【0024】
図6は、ヘリコイド環18、カム環26、そして該カム環26に対する第1レンズ群13aと第2レンズ群13dのそれぞれの移動軌跡(カム溝26b、26cの軌跡)を示したものであり、縦軸が鏡筒収納状態からテレ端までの鏡筒回転量(角度位置)を示し、横軸が光軸方向への移動量を示している。同図に示すように、ズームレンズ鏡筒10が収納位置(図1)からワイド端(図2上半、図3)まで繰り出されるほぼ中間の回転角θ1までは、ヘリコイド環18は回転しながら光軸方向前方に繰り出され、この回転角θ1以降は、テレ端(図2の下半、図4)に至るまで前述の定位置回転を行う。一方、カム環26は、鏡筒収納位置からワイド端に至る直前の回転角θ2まで、回転しながら光軸方向前方に繰り出され、この回転角θ2からテレ端に至るまでは、ヘリコイド環18と同様に前述の定位置回転を行う。そして、ワイド端からテレ端までのズーム領域での第1レンズ群13aと第2レンズ群13dの光軸方向移動量は、定位置回転するカム環26に対する1群支持枠24と2群支持枠25の相対移動量(各カム溝26b、26cによる進退移動量)によって決定され、この第1レンズ群13aと第2レンズ群13dの相対移動によって変倍がなされる。図7は、ヘリコイド環18及びカム環26の移動量とカム溝26b、26cによる移動量とを合成した、第1レンズ群13aと第2レンズ群13dの実際の移動軌跡を示している。
【0025】
ワイド端とテレ端の間のズーム領域では、フォーカシングモータMFによって第1レンズ群13aを単独で光軸方向に移動させることでフォーカシングが行われる。
【0026】
以上は第1レンズ群13aと第2レンズ群13dの動作であるが、前述の通り、本実施形態のズームレンズ鏡筒10では、第3レンズ群13eからCCD13gまでの光学要素が、撮影光軸Z1上の撮影位置から、該撮影位置より上方の光軸外退避位置Z2へと退避移動可能である。また、この第3レンズ群13eからCCD13gまでの光学要素を、撮影光軸Z1と直交する平面に沿って移動させて像振れ補正を行うことが可能である。続いてこの退避機構と像振れ補正機構を説明する。
【0027】
図8及び図19に示すように、第3レンズ群13eとローパスフィルタ13fとCCD13gは、CCDホルダ(共通保持枠)30に保持されてユニット化されている。CCDホルダ30は、ホルダ本体30a、パッキン30b、押さえ板30cを備え、ホルダ本体30aの前端開口部に第3レンズ群13eが保持され、該ホルダ本体30aの内側に設けたフランジとパッキン30bの間にローパスフィルタ13fが挟持され、パッキン30bと押さえ板30cの間にCCD13gが挟持されている。ホルダ本体30aと押さえ板30cは、CCDホルダ30の中心軸(撮影状態での撮影光軸Z1)を中心として離間させて配置した3本の固定ビス30d(図15及び図18)によって互いに固定されている。3本の固定ビス30dはまた、画像伝送FPC31の一端部を押さえ板30cの後面に共締めしており、CCD13gの支持基板と画像伝送FPC31とが電気的に接続されている。
【0028】
画像伝送FPC31は、CCD13gへの接続端部からハウジング11内の退避スペースSPへ向けて延出されており、撮影光軸Z1と略直交し上方へ向かう第1直線状部31aと、該第1直線状部31aから下方に向けて湾曲されたU字状部31bと、該U字状部31bに続いて下方に向かう第2直線状部31cと、該第2直線状部31cから再び上方へ向けて折り返された第3直線状部31dとを有している(図1、図2参照)。第3直線状部31dはハウジング11の前壁15aの内面に沿って固定されており、この第3直線状部31d以外の第1直線状部31a、U字状部31b及び第2直線状部31cが、CCDホルダ30の移動に応じて変形可能な変形部となっている。
【0029】
CCDホルダ30は、該CCDホルダ30の中心軸(撮影状態での撮影光軸Z1)を中心として離間させて配置した3本の調整ビス33(図15及び図18)を介して左右移動枠(第1の可動枠)32に支持される。CCDホルダ30と左右移動枠32の間には、3つの圧縮コイルばね34が3つ配されている。3つの調整ビス33の軸部はそれぞれ、圧縮コイルばね34に挿通されており、各調整ビス33の締め付け量を変化させると、対応する圧縮コイルばね34の圧縮量が変化する。調整ビス33と圧縮コイルばね34は、第3レンズ群13eの光軸を囲む配置で3個所設けられているため、3つの調整ビス33の締め付け量を変化させることにより、左右移動枠32に対するCCDホルダ30の傾き調整、つまり撮影光軸Z1に対する第3レンズ群13eの光軸の傾き調整を行うことができる。
【0030】
図16に示すように、左右移動枠32は、x軸方向に向く左右ガイド軸35を介して、上下移動枠(第2の可動枠)36に対して移動可能に支持されている。詳細には、左右移動枠32は、CCDホルダ30を囲む四角の枠状部32aと、該枠状部32aから側方に延出された腕部32bとを有し、枠状部32aの上面にばね支持突起32cが形成され、腕部32bの先端部には傾斜面32dと位置規制面32eが形成されている。位置規制面32eはy軸と平行な平面である。一方、上下移動枠36は、x軸方向に離間して設けた一対の移動規制枠36a、36bと、該一対の移動規制枠36a、36bの間に位置するばね支持部36cと、該ばね支持部36cに対してx軸方向の延長上に位置する上方軸受部36dと、該上方軸受部36dの下方に位置する下方軸受部36eとを有している。図17に示すように、一対の移動規制枠36a、36bの間のスペースに枠状部32aを位置させ、移動規制枠36bと上方軸受部36dの間に腕部32bの傾斜面32dと位置規制面32eを位置させた状態で、左右移動枠32が上下移動枠36に支持される。
【0031】
上下移動枠36における移動規制枠36aと上方軸受部36dには、左右ガイド軸35の一端部と他端部が固定されており、移動規制枠36bとばね支持部36cには、左右ガイド軸35を挿通させる貫通孔が形成されている。左右移動枠32の腕部32bとばね支持突起32cには、左右ガイド軸35に対して摺動可能に嵌まる左右貫通孔32x1、32x2(図17)が形成されており、この左右貫通孔32x1、32x2と左右ガイド軸35の摺動関係により、左右移動枠32が上下移動枠36に対してx軸方向へ移動可能に支持される。ばね支持突起32cとばね支持部36cの間には、左右ガイド軸35を囲む態様で左右移動枠付勢ばね37が配設されている。左右移動枠付勢ばね37は圧縮コイルばねであり、ばね支持突起32cを移動規制枠36aに接近させる方向(図17の左方)へ向けて左右移動枠32を付勢している。
【0032】
上下移動枠36の上方軸受部36dと下方軸受部36eにはさらに、撮影光軸Z1と直交しかつy軸方向に向く、上下貫通孔36y1、36y2(図16)が形成されている。上下貫通孔36y1と上下貫通孔36y2は一直線上に位置しており、上下ガイド軸38(図8、9)に対して摺動可能に挿通されている。上下ガイド軸38の両端部はハウジング11に固定されており、したがって上下移動枠36は、上下ガイド軸38に沿ってカメラ内をy軸方向に移動することができる。より詳細には、CCDホルダ30内の第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13gの中心を撮影光軸Z1上に位置させた図1の撮影位置と、これら第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13gの中心が固定環部16よりも上方の光軸外退避位置Z2に位置する図2の退避位置との間を、上下移動枠36が移動可能である。
【0033】
上下移動枠36の一側部にはばね掛け部36fが突設され、該ばね掛け部36fとハウジング11内のばね掛け部11a(図8、図15)との間に上下移動枠付勢ばね39が張設されている。上下移動枠付勢ばね39は引張ばねであり、上下移動枠36を下方、すなわち図1に示す撮影位置側へ付勢している。
【0034】
以上のように、CCDホルダ30を保持する左右移動枠32は上下移動枠36に対してカメラ左右方向へ移動可能に支持され、上下移動枠36はy軸方向へ移動可能に支持されている。このCCDホルダ30のx軸方向及びy軸方向の移動によって像振れ(手振れ)補正を行うことが可能であり、その駆動機構として左右駆動レバー40と上下駆動レバー41が設けられている。左右駆動レバー40と上下駆動レバー41は、ハウジング11内に固定され撮影光軸Z1と平行をなす共通のレバー回動軸42により、それぞれ独立して回動(揺動)可能に軸支されている。
【0035】
図9及び図20に示すように、左右駆動レバー40は、下端部がレバー回動軸42に軸支され、上端部に先端着力部40aを有する。この先端着力部40aの近傍には、光軸方向後方に向けて突出された操作ピン40bと、ばね掛け部40cが設けられている。図12に示すように、左右駆動レバー40の先端着力部40aは第1移動部材43に当接している。第1移動部材43は、一対のガイドバー44(44a、44b)によってx軸方向へ摺動可能に支持されており、第1移動部材43に対してナット45が当接している。ナット45は、ガイドバー44bに摺動可能に嵌まる回転規制溝45aと、ねじ孔45bとを有し、ねじ孔45bに対して第1ステッピングモータ46のドライブシャフト(送りねじ)46aが螺合している。図13及び図14に示すように、カメラ正面から見て、ナット45は第1移動部材43の左側から当接している。また、左右駆動レバー40のばね掛け部40cには引張ばね47の一端部が係合し、引張ばね47の他端部はハウジング11内のばね掛け部11b(図12参照)に係合している。引張ばね47は、第1移動部材43をナット45に当接させる方向、すなわち図13、図14及び図20における反時計方向へ向けて左右駆動レバー40を回動付勢している。この構造から、第1ステッピングモータ46を駆動するとナット45がガイドバー44に沿って移動し、該ナット45と共に第1移動部材43が移動して左右駆動レバー40が揺動される。具体的には、図13及び図14の右方に向けてナット45を移動させると、引張ばね47の付勢力に抗しながら第1移動部材43が押圧され、左右駆動レバー40が同図の時計方向に回動する。逆に同図の左方に向けてナット45を移動させると、引張ばね47の付勢力によって第1移動部材43が追随して左方に移動し、左右駆動レバー40が反時計方向に回動する。
【0036】
左右駆動レバー40に設けた操作ピン40bは、図20に示すように、左右移動枠32の腕部32bの先端部に設けた位置規制面32eに当接している。左右移動枠32は左右移動枠付勢ばね37によって同図の左方へ移動付勢されているため、位置規制面32eと操作ピン40bが当接した状態が維持される。そして、左右駆動レバー40が揺動すると操作ピン40bの位置がx軸方向に変位するので、左右ガイド軸35に沿って左右移動枠32が移動する。具体的には、図20の時計方向に左右駆動レバー40を回動させると、操作ピン40bが位置規制面32eを押圧し、左右移動枠付勢ばね37の付勢力に抗して左右移動枠32が同図の右方向へ移動する。逆に図20の反時計方向に左右駆動レバー40を回動させると、操作ピン40bが位置規制面32eから離れる方向に移動するため、左右移動枠付勢ばね37の付勢力によって左右移動枠32が追随して左方向へ移動する。
【0037】
図9及び図21に示すように、上下駆動レバー41は、下端部が左右駆動レバー40と同様にレバー回動軸42に軸支され、上端部に先端着力部41aを有する。上下駆動レバー41は左右駆動レバー40よりも長く、先端着力部41aは先端着力部40aよりも上方に突出している。レバー回動軸42と先端着力部41aの間には、押圧斜面41bが側方へ突出形成され、該押圧斜面41bの上方にはばね掛け部41cが設けられている。図12に示すように、先端着力部41aは第2移動部材50に当接している。第2移動部材50は、一対のガイドバー51(51a、51b)によってx軸方向へ摺動可能に支持されており、第2移動部材50に対してナット52が当接している。ナット52は、ガイドバー51bに摺動可能に嵌まる回転規制溝52aと、ねじ孔52bとを有し、ねじ孔52bに対して第2ステッピングモータ53のドライブシャフト(送りねじ)53aが螺合している。図13及び図14に示すように、カメラ正面から見て、ナット52は第2移動部材50の左側から当接している。また、上下駆動レバー41のばね掛け部41cには引張ばね54の一端部が係合し、引張ばね54の他端部はハウジング11内のばね掛け部(不図示)に係合している。引張ばね54は、第2移動部材50をナット52に当接させる方向、すなわち図13、図14及び図20における反時計方向へ向けて上下駆動レバー41を回動付勢している。この構造から、第2ステッピングモータ53を駆動するとナット52がガイドバー51に沿って移動し、該ナット52と共に第2移動部材50が移動して上下駆動レバー41が揺動する。具体的には、図13及び図14の右方に向けてナット52を移動させると、引張ばね54の付勢力に抗しながら第2移動部材50が押圧され、上下駆動レバー41が同図の時計方向に回動する。逆に同図の左方に向けてナット52を移動させると、引張ばね54の付勢力によって第2移動部材50が追随して左方に移動し、上下駆動レバー41が反時計方向に回動する。
【0038】
上下駆動レバー41の押圧斜面41bは、図21に示すように、上下移動枠36の上方軸受部36dから前方に向けて突設した被押圧ピン36gに当接可能である。上下移動枠36は上下移動枠付勢ばね39によって同図の下方へ移動付勢されているため、被押圧ピン36gと押圧斜面41bが当接した状態が維持される。そして、上下駆動レバー41が揺動すると、被押圧ピン36gに対する押圧斜面41bの当接角度が変位し、その結果、上下ガイド軸38に沿って上下移動枠36が移動する。具体的には、図21の時計方向に上下駆動レバー41を回動させると、押圧斜面41bが被押圧ピン36gを上方に向けて押圧し、上下移動枠付勢ばね39の付勢力に抗して上下移動枠36が同図の上方向へ移動する。逆に図21の反時計方向に上下駆動レバー41を回動させると、被押圧ピン36gに対する押圧斜面41bの当接個所が下方に変位するため、上下移動枠付勢ばね39の付勢力によって上下移動枠36が下方向へ移動する。
【0039】
以上の構造により、第1ステッピングモータ46を正逆に駆動させることにより、左右移動枠32をx軸方向へ正逆に移動させることができ、第2ステッピングモータ53を正逆に駆動させることにより、上下移動枠36をy軸方向へ正逆に移動させることができる。
【0040】
第1移動部材43と第2移動部材50はそれぞれ板状部43a、50aを備えており、この板状部43a、50aの通過をフォトインタラプタ55、56によって検知することによって、左右移動枠32と上下移動枠36の初期位置を検出することができる。フォトインタラプタ55、56は、ハウジング11の前壁15aに形成した孔15a1、15a2(図8)に支持されている。
【0041】
本実施形態のズームレンズカメラは、撮影光軸Z1と直交する平面内において互いに直交する2軸(カメラの上下軸と左右軸)周りにおける移動角速度を検出する像振れ検知センサ57(図5)を備えており、カメラに加わった振れの大きさと方向は、この像振れ検知センサ57によって検知される。制御回路14aは、像振れ検知センサ57の検出した2軸方向の振れの角速度を時間積分して移動角度を求め、該移動角度から焦点面(CCD13gの受光面)上でのx軸方向及びy軸方向の像の移動量を演算すると共に、この像振れをキャンセルするための各軸方向に関する左右移動枠32と上下移動枠36の駆動量及び駆動方向(第1ステッピングモータ46、第2ステッピングモータ53の駆動パルス)を演算する。そして、この演算値に基づいて、第1ステッピングモータ46と第2ステッピングモータ53を駆動制御する。これにより、左右移動枠32と上下移動枠36はそれぞれ、撮影光軸Z1の振れをキャンセルするべく所定方向に所定量駆動され、焦点面上での画像位置が一定に保たれる。撮影モード切替スイッチ14e(図5)のオンによってこの像振れ補正モードに入ることができ、撮影モード切替スイッチ14eをオフにした状態では、像振れ補正機能が停止されて通常撮影を行うことができる。
【0042】
本実施形態のズームレンズカメラは、以上の像振れ補正機構の一部を利用して、鏡筒収納時における第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13gの光軸外退避位置Z2への退避動作を行わせる。図22及び図23に示すように、上下移動枠36の下方には、回動軸60aを中心として回動(揺動)可能に退避駆動レバー60が支持されている。退避駆動レバー60に隣接して、この回動軸60aと同軸で回動可能な同軸ギヤ61が設けられ、該同軸ギヤ61に対して、2つの中継ギヤ62、63を介して連動ギヤ64から回転力が伝達される。退避駆動レバー60及び同軸ギヤ61の回動軸60aと、中継ギヤ62、63及び連動ギヤ64の回動軸はそれぞれ、回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)と平行である。
【0043】
図22及び図23に示すように、退避駆動レバー60は回動軸60aの近傍に扇形断面の回転伝達突起60bを有し、同軸ギヤ61は、この回転伝達突起60bの周方向延長上に回転伝達突起61aを有している。同軸ギヤ61は、回転伝達突起61aを回転伝達突起60bに当接させることにより退避駆動レバー60に回転力を伝達し、回転伝達突起60bから回転伝達突起61aが離れる方向に移動するときには、同軸ギヤ61の回転力が退避駆動レバー60に伝達されない。退避駆動レバー60は、トーションばね60cによって図22及び図23の反時計方向に回動付勢されており、ハウジング11には、この付勢方向への退避駆動レバー60の回動端を定めるストッパ65が突設されている。
【0044】
上下移動枠36の下面には、弧状面66aとリード面66bからなる被押圧面66が形成されている。弧状面66aは退避駆動レバー60の回動軸60aを中心とする円弧の一部をなす形状であり、リード面66bは、該弧状面66aとの接続部分が最も下方に位置し、弧状面66aから離れるにつれて(図22及び図23における上下移動枠36の左側面に接近するにつれて)徐々に上方に向かう直線状の傾斜面として形成されている。
【0045】
連動ギヤ64は、軸線方向に位置を異ならせてギヤ部64aと回転規制部64bとを有している。回転規制部64bは、ギヤ部64aよりも大径の不完全な円筒状をなす大径円筒部64b1と、該大径円筒部64b1の一部を略直線(平面)状に切り欠いた平面部64b2とからなる非円形(D字状)の断面形状を有しており、平面部64b2の形成領域では、回転規制部64bよりも径方向の外方にギヤ部64aの歯先が突出している。平面部64b2は、連動ギヤ64の回転軸線と平行な直線を含む平面として形成されている。
【0046】
連動ギヤ64はヘリコイド環18の外周面に対向する位置に設けられており、ヘリコイド環18の光軸方向移動に応じて、スパーギヤ18cが、連動ギヤ64のギヤ部64aに対向する状態(図11、図14)と、回転規制部64bに対向する状態(図10、図13)とになる。ヘリコイド環18が前述の定位置回転を行うときには、スパーギヤ18cはギヤ部64aに噛合している。そして、この定位置回転状態からヘリコイド環18が収納方向に移動していくと、スパーギヤ18cは回転規制部64bに対向し、連動ギヤ64への回転伝達が解除される。
【0047】
退避駆動レバー60の動作を具体的に説明する。図23はワイド端での状態を示している。ワイド端では、第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13gは撮影光軸Z1上に位置している(図2の上半)。またヘリコイド環18は定位置回転状態にあり(図6参照)、連動ギヤ64のギヤ部64aがヘリコイド環18のスパーギヤ18cと噛合している。ヘリコイド環18がワイド端から収納方向へ回転すると、連動ギヤ64と中継ギヤ62及び63を介して、同軸ギヤ61が図23の時計方向へ回転する。同図に示すように、ワイド端では回転伝達突起61aと回転伝達突起60bが若干離間しているため、同軸ギヤ61が回転してから少しの間は退避駆動レバー60へ回転力が伝達されない。つまり、退避駆動レバー60は、トーションばね60cの付勢力によってストッパ65に当て付いた位置に保持される。そして、回転伝達突起61aが回転伝達突起60bに当接して押圧すると、トーションばね60cに抗して退避駆動レバー60が時計方向に回動を始める。本実施形態では、この退避駆動レバー60の回動開始のタイミングは、カム環26が前述の定位置回転から光軸方向後方への収納移動を開始する角度位置θ2と略同じである(図6参照)。
【0048】
退避駆動レバー60が図23の角度位置から時計方向へ回動すると、その先端着力部60dが上下移動枠36の被押圧面66のリード面66bに当接する。退避駆動レバー60がさらに時計方向に回転を続けると、リード面66bの傾斜形状に応じて退避駆動レバー60が上下移動枠36を上方へ押し上げ、その結果、上下ガイド軸38にガイドされて上下移動枠36がハウジング11内を上方に移動する。
【0049】
収納方向へ回動するヘリコイド環18は、その角度位置が図6のθ1を超えると定位置回転が終わり、回転しながら光軸方向後方へ移動される。すると、スパーギヤ18cが連動ギヤ64のギヤ部64aとの噛合を解除して、代わりにスパーギヤ18cは回転規制部64bの平面部64b2に対向する。スパーギヤ18cとギヤ部64aはそれぞれ光軸方向へ所定の長さがあるため、ヘリコイド環18が上記θ1位置で定位置回転状態から回転進退状態に切り換わると直ちに噛合を解除するのではなく、若干鏡筒収納方向に進んだθ3の角度位置で噛合解除する。この噛合解除によりヘリコイド環18の回転力が連動ギヤ64に伝達されなくなるため、退避駆動レバー60の上昇回動が停止される。上昇回動が停止した状態の退避駆動レバー60を図22に示す。同図から分かるように、退避駆動レバー60の先端着力部60dは、弧状面66aとリード面66bの境界部を乗り越えて弧状面66aに当接している。このとき、退避駆動レバー60によって上方へ押し上げられた上下移動枠36は、図1に示すようにハウジング11内の退避スペースSP内へ移動されている。
【0050】
ズームレンズ鏡筒10の収納は、上下移動枠36が上方への退避移動を完了したθ3の角度位置では完了せず、ヘリコイド環18やカム環26がさらに回転しながら光軸方向後方へ移動する。そして、図1の収納状態まで達すると、第2レンズ群13dを保持する2群支持枠25の筒状部25bが、撮影時において上下移動枠36が占めていた空間まで入り込む。これにより、収納状態での撮影光学系の光軸方向の厚みを小さくすることができ、ズームレンズ鏡筒10及びそれを搭載するカメラの薄型化が可能になっている。
【0051】
以上の鏡筒収納動作において、連動ギヤ64のギヤ部64aとヘリコイド環18のスパーギヤ18cの噛合が解除されるθ3の角度位置以降は、スパーギヤ18cに対して回転規制部64bの平面部64b2が対向する。この対向状態において平面部64b2はスパーギヤ18cの歯先(外縁部、歯先円)に近接しており、連動ギヤ64が回転しようとしても、平面部64b2がスパーギヤ18cの外縁部に当て付いて回転することができない(図10、図13参照)。これにより、鏡筒収納状態では連動ギヤ64が不用意に回転するおそれがなくなり、退避駆動レバー60を確実に上昇回動位置に係止させておくことができる。つまり、図22の退避状態において、退避駆動レバー60はトーションばね60cによって同図の反時計方向へ回動付勢されているが、退避駆動レバー60の当該方向への回動は、同軸ギヤ61、中継ギヤ62、63及び連動ギヤ64からなるギヤ列によって規制される。そして、連動ギヤ64の平面部64b2とスパーギヤ18cとの当接関係が、この退避駆動レバー60に対する回動規制手段として機能するため、複雑な係止機構を設けることなく確実に退避駆動レバー60を停止状態に保持することができる。
【0052】
また、上下移動枠36を上方に退避させた状態で退避駆動レバー60の先端着力部60dが当接している弧状面66aは、退避駆動レバー60の回動軸60aを中心とする円弧状面であるから、退避駆動レバー60の角度が変化しても、その先端着力部60dが弧状面66aに当接している限りは、上下移動枠36の高さ位置は変化せず一定の位置に維持される。
【0053】
ワイド端から収納までの退避機構の動作は以上の通りである。一方、ワイド端からテレ端までのズーム領域では、定位置回転するヘリコイド環18のスパーギヤ18cと連動ギヤ64のギヤ部64aが噛合を維持しており、ヘリコイド環18の回転に従って連動ギヤ64も回転される。しかし、図23に示すワイド端の状態からテレ端方向にへリコイド環18が回転するとき、同軸ギヤ61は同図の反時計方向、すなわち回転伝達突起61aを回転伝達突起60bから離間させる方向へと回転される。したがって、ワイド端からテレ端までのズーム領域では、退避駆動レバー60への回転力伝達がなされず、退避駆動レバー60は図23の角度位置に保たれる。これにより、退避駆動レバー60の回動範囲は最小限で済み、鏡筒の大型化を避けることができる。
【0054】
なお、図24に示すように、上下移動枠36が光軸外退避位置Z2側へ退避されると、左右移動枠32の腕部32bに設けた位置規制面32eと左右駆動レバー40に設けた操作ピン40bの係合が解除され、左右移動枠32は左右移動枠付勢ばね37の付勢力によって同図の左方に移動されて、その枠状部32aが上下移動枠36の移動規制枠36aに当て付く。この状態から上下移動枠36が再び撮影光軸Z1側に移動されると、図24に二点鎖線で示すように左右移動枠32の傾斜面32dが操作ピン40bに当接する。傾斜面32dは、上下移動枠36の下降動作に従って操作ピン40bを位置規制面32e側に案内するように傾斜しているため、上下移動枠36が撮影位置まで下降されると、図20に示すように再び操作ピン40bが位置規制面32eに係合し、左右移動枠32の枠状部32aが移動規制枠36aと移動規制枠36bの間の中立位置に戻る。
【0055】
図25ないし図32は第2の実施形態を示している。先の第1実施形態では、上下移動枠36の振れ補正用の駆動手段として上下駆動レバー41と第2ステッピングモータ53が設けられ、退避用の駆動手段として退避駆動レバー60が設けられているが、第2実施形態では、第2ステッピングモータ70がこれらの駆動手段を兼用している。そのため、第1の実施形態における上下駆動レバー41、第2移動部材50、ガイドバー51、ナット52、第2ステッピングモータ53及び引張ばね54に相当する部材は、この第2実施形態では設けられていない(図29参照)。なお、図25ないし図32において、第1実施形態と共通する部分については同符号で示しており、詳細な説明は省略する。
【0056】
図27、図28、図30及び図31に示すように、第2ステッピングモータ70は上下ガイド軸38の近傍に設けられ、該上下ガイド軸38と平行なドライブシャフト(送りねじ)70aを備えている。図26に示すように、ナット71は、上下ガイド軸38に摺動可能に係合する回転規制溝71aと、ドライブシャフト70aに螺合するねじ孔71bとを有しており、第2ステッピングモータ70を駆動してドライブシャフト70aが正逆に回転すると、上下ガイド軸38に沿ってナット71がy軸方向に移動する。図27、図28、図30及び図31に示すように、ナット71は上下移動枠(第2の可動枠)136の下方軸受部136eに対して下方から当接している。この構造から、第2ステッピングモータ70を駆動するとナット71が上下ガイド軸38に沿って移動し、該上下ガイド軸38に沿って上下移動枠136が移動する。具体的には、ナット71を上方へ駆動すると、該ナット71が下方軸受部136eを上方に向けて押圧し、上下移動枠付勢ばね39の付勢力に抗して上下移動枠136が上方向へ移動する。逆に、下方へ向けてナット71を駆動すると、これに追随して、上下移動枠付勢ばね39の付勢力によって上下移動枠136が下方向へ移動する。
【0057】
左右移動枠(第1の可動枠)132には、腕部32bを延長して板状部32fが形成されている。板状部32fは、カメラ正面から見て逆L字状をなしており、その先端部が上下移動枠36の下方軸受部136eの近傍に達するようにy軸方向に長く形成されている。また、上下移動枠136には、下方軸受部136eの先端部に板状部36sが形成されている。図27及び図28に示すように、ハウジング11内には、左右移動枠132に設けた板状部32fの通過を検出することが可能なフォトインタラプタ155と、上下移動枠136に設けた板状部36sの通過を検出することが可能なフォトインタラプタ156が設けられている。各板状部32f、36sの通過をフォトインタラプタ155、156で検知することによって、左右移動枠132と上下移動枠136の初期位置を検出することができる。
【0058】
第2ステッピングモータ70は、ワイド端とテレ端の間の撮影状態では、第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13gが撮影光軸Z1上から離脱しない範囲内(像振れ補正用の可動領域内)で、上下移動枠136を上下ガイド軸38に沿ってy軸方向に移動させる。この撮影状態では、ナット71はドライブシャフト70aの下端付近に位置している(図28、図31)。そして、カメラのメインスイッチ14dがオフされて鏡筒収納状態になるとき、第2ステッピングモータ70は、ドライブシャフト70aの上端付近までナット71を移動させて上下移動枠136を光軸外退避位置Z2まで退避させる(図27、図30)。ドライブシャフト70aは、上下移動枠136を撮影光軸Z1から光軸外退避位置Z2まで到達させることができるように、上下ガイド軸38と平行な長い送りねじとして構成されている。詳細には、ドライブシャフト70aは、y軸方向において撮影光軸Z1と光軸外退避位置Z2の間の距離よりも長い軸長を有している。
【0059】
上下移動枠136のy軸方向の退避移動量は、フォトインタラプタ156で検出された初期位置からの第2ステッピングモータ70の駆動パルス数をカウントすることで得られ、所定のパルス数となったら第2ステッピングモータ70が停止される。これにより、上下移動枠136がハウジング11内の退避スペースSP(図1、図2)に収納される。なお、上下移動枠136の退避動作を開始させるタイミングと終了させるタイミングは任意に設定することが可能である。例えば第1実施形態と同様に、図6及び図7におけるθ2の位置で退避動作を開始させ、θ3の位置で退避動作が完了するように第2ステッピングモータ70の駆動を制御するとよい。
【0060】
[本発明の特徴部分の説明]
以上の第1、第2の実施形態のいずれにおいても、第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f、CCD13gの3つの光学要素は、共通のCCDホルダ30に保持されてユニット化されており、像振れ補正時と、ハウジング11内の退避スペースSPへの退避移動時(及び退避位置から撮影光軸Z1側への進出時)には一緒に移動される。
【0061】
第3レンズ群13eは、撮影光学系を構成するレンズ群のうちCCD13gやローパスフィルタ13fの直前に位置する最終レンズ群である。この最終レンズ群である第3レンズ群13eとCCD13gとを一緒に移動させることにより、第3レンズ群13の有効径を大きくすることなく像面(CCD13g)側にテレセントリックな光学系を構成することができる。すなわち、本実施形態と異なり、像振れ補正に際して第3レンズ群13eは移動せずCCD13gのみが撮影光軸Z1と直交する方向に移動するものと仮定すると、CCD13gが移動した状態でも該CCD13gの受光面全域と第3レンズ群13eの光出射面が対向していなければならないため、第3レンズ群13eの有効径を大きくする必要がある。これに対し本実施形態では、第3レンズ群13eとCCD13gはユニット化されて一体移動するので互いの位置関係が変化せず、第3レンズ群13eの有効径を大きくする必要がない。
【0062】
また、ズームレンズ鏡筒10が撮影状態から収納状態になるとき、像振れ補正機構の一部(上下ガイド軸38)を用いて上下移動枠36をハウジング11内の退避スペースSPへと退避移動させるが、このとき、CCDホルダ30によってユニット化された第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f、CCD13gの3つの光学要素が一緒に移動する。そのため、CCD13gを単独で退避させるよりも撮影光軸Z1上に得られる空きスペースが広くなり、当該スペースに第2レンズ群13dなどを効率よく収納することができる(図1参照)。
【0063】
また、CCDホルダ30内は、パッキン30bやローパスフィルタ13fによってCCD13gの受光面への埃の付着を防ぐ防塵(密封)構造となっており、上記の像振れ補正時と退避移動時のいずれにおいても、この防塵構造を維持したままCCDホルダ30全体が移動される。そのためCCD13gを移動させても防塵性が損なわれるおそれがなく、高い光学性能を得ることができる。
【0064】
以上、図示実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態はズームレンズカメラへの適用例であるが、本発明はズームレンズカメラ以外の撮像装置にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明を適用した沈胴式のズームレンズ鏡筒の収納状態における断面図である。
【図2】同ズームレンズ鏡筒の撮影状態の断面図である。
【図3】同ズームレンズ鏡筒のワイド端において一部を拡大した断面図である。
【図4】同ズームレンズ鏡筒のテレ端において一部を拡大した断面図である。
【図5】同ズームレンズ鏡筒を備えるカメラの主要な電気回路構成を示すブロック図である。
【図6】ヘリコイド環とカム環のそれぞれの移動軌跡と、カム環による第1レンズ群及び第2レンズ群の移動軌跡とを示す概念図である。
【図7】ヘリコイド環とカム環の移動軌跡を含めた、第1レンズ群及び第2レンズ群のそれぞれの合成移動軌跡を示す概念図である。
【図8】ズームレンズ鏡筒の分解斜視図である。
【図9】像振れ補正機構及び退避機構の要部を示す分解斜視図である。
【図10】鏡筒収納時におけるCCDホルダの退避状態を示す、像振れ補正機構及び退避機構の前方斜視図である。
【図11】撮影時におけるCCDホルダの光軸上進出状態を示す、像振れ補正機構及び退避機構の前方斜視図である。
【図12】像振れ補正機構の要部を図10及び図11の裏側から見た後方斜視図である。
【図13】図10の状態を光軸方向前方から見た正面図である。
【図14】図11の状態を光軸方向前方から見た正面図である。
【図15】図10及び図13の退避状態を裏側から見た後方斜視図である。
【図16】CCDホルダを支持する左右移動枠及び上下移動枠を示す前方斜視図である。
【図17】左右移動枠及び上下移動枠の正面図である。
【図18】左右移動枠及び上下移動枠の背面図である。
【図19】図17のD1-D1断面線に沿う、CCDホルダ、左右移動枠及び上下移動枠の断面図である。
【図20】左右駆動レバーによる左右方向の像振れ補正の作用を説明するための正面図である。
【図21】上下駆動レバーによる上下方向の像振れ補正の作用を説明するための正面図である。
【図22】退避駆動レバーによるCCDホルダ、左右移動枠及び上下移動枠の退避状態を示す正面図である。
【図23】退避駆動レバーによる押し上げが解除されて、CCDホルダ、左右移動枠及び上下移動枠が撮影用の光軸上位置に戻った状態を示す正面図である。
【図24】CCDホルダ、左右移動枠及び上下移動枠の上下方向動作と左右駆動レバーとの関係を説明するための正面図である。
【図25】本発明の第2の実施形態におけるズームレンズ鏡筒の分解斜視図である。
【図26】第2の実施形態における像振れ補正機構及び退避機構の要部を示す分解斜視図である。
【図27】第2の実施形態で鏡筒収納時におけるCCDホルダの退避状態を示す、像振れ補正機構及び退避機構の前方斜視図である。
【図28】第2の実施形態で撮影時におけるCCDホルダの光軸上進出状態を示す、像振れ補正機構及び退避機構の前方斜視図である。
【図29】x軸方向の像振れ補正機構の要部を図27及び図28の裏側から見た後方斜視図である。
【図30】図27の状態を光軸方向前方から見た正面図である。
【図31】図28の状態を光軸方向前方から見た正面図である。
【図32】第2の実施形態でCCDホルダを支持する左右移動枠及び上下移動枠を示す前方斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
MZ ズームモータ
SP 退避スペース
Z0 回転中心軸
Z1 撮影光軸
Z2 光軸外退避位置
10 ズームレンズ鏡筒
11 ハウジング
12 伸縮筒部
13a 第1レンズ群
13b シャッタ
13c 絞
13d 第2レンズ群
13e 第3レンズ群(最終レンズ群)
13f ローパスフィルタ
13g CCDイメージセンサ
14a 制御回路
16 固定環部
17 ズームギヤ
18 ヘリコイド環
18c スパーギヤ
20 直進案内環
22 1群直進案内環
23 2群直進案内環
24 1群支持枠
25 2群支持枠
26 カム環
30 CCDホルダ(共通保持枠)
31 画像伝送FPC
32 132 左右移動枠(第1の可動枠)
35 左右ガイド軸
36 136 上下移動枠(第2の可動枠)
37 左右移動枠付勢ばね
38 上下ガイド軸
39 上下移動枠付勢ばね
40 左右駆動レバー
41 上下駆動レバー
43 第1移動部材
46 第1ステッピングモータ
50 第2移動部材
53 第2ステッピングモータ
55 56 155 156 フォトインタラプタ
60 退避駆動レバー
60a 回動軸
60b 回転伝達突起
60c トーションばね
61 同軸ギヤ
61a 回転伝達突起
62 63 中継ギヤ
64 連動ギヤ
64a ギヤ部
64b 回転規制部
64b1 大径円筒部
64b2 平面部
65 ストッパ
66 被押圧面
66a 弧状面
66b リード面
70 第2ステッピングモータ
70a ドライブシャフト
71 ナット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光学系に加わる振れを検知し、この振れの方向と大きさに応じて該撮影光学系の結像位置に設けたイメージセンサを撮影光軸と直交する平面内で移動させて像振れをキャンセルする像振れ補正機構を備え、
イメージセンサと、該イメージセンサの直前に位置する撮影光学系の最終レンズ群とを、上記像振れ補正機構によって一緒に移動される一体移動ユニットとしたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1記載の撮像装置において、上記最終レンズ群とイメージセンサは内部に密封空間を有する共通保持枠内に保持され、イメージセンサの受光面が上記密封空間に位置している撮像装置。
【請求項3】
請求項2記載の撮像装置において、上記共通保持枠内に、上記最終レンズ群とイメージセンサの間に位置させてローパスフィルタを保持している撮像装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の撮像装置において、像振れ補正機構は、
上記共通保持枠を支持し、撮影光軸と直交する平面内で直進移動可能な第1の可動枠と;
該第1の可動枠を支持し、撮影光軸と直交する平面内で第1の可動枠の移動方向と直交する方向へ直進移動可能な第2の可動枠と;
を備えている撮像装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の撮像装置において、撮影状態から非撮影状態になるときに、上記最終レンズ群とイメージセンサの一体移動ユニットを、撮影光軸と直交する方向において像振れ補正用可動域を超えた光軸外の退避位置まで移動させる退避駆動機構を備えている撮像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2006−154680(P2006−154680A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349192(P2004−349192)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】