説明

撮像装置

【課題】 ピント位置を補正する機能を有した撮像装置を提供する。
【解決手段】 撮像装置(20)は、レンズ(1)と、レンズ枠(2)と、固定筒(3)と、前記レンズとレンズ枠を前記固定筒に対して光軸方向に移動可能に支持する支持部材(4)と、前記レンズユニットを前記光軸方向に移動させるバイモルフ型圧電素子(6)と、バイモルフ型圧電素子を制御するコントローラ(12)と、光軸方向の加速度が検知可能な加速度センサ(5)と、前記加速度センサからの信号によりレンズの変位量を求める変位量演算手段(10)とを備えている。前記コントローラは、前記変位量演算手段の出力信号に応じて、前記バイモルフ型圧電素子を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイモルフ型圧電素子と加速度センサ又は傾斜角センサを用いた、ピント位置を補正する機能を有した撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バイモルフ型圧電素子をオートフォーカス用レンズの駆動源に使う撮像装置が種々提案されている。特許文献1は、このような撮像装置について開示している。図4は、従来の撮像装置50の構成を示す斜視図である。撮像装置50は、図4に示すように、レンズ51と、レンズを保持する保持部52と、固定部53と、一端を保持部52に固定し、他端を固定部53に固定されるバネ部材54と、固定部53から突出させた比較的剛性が低く撓み易いL字部材55と、L字部材55を挟持するように設置されたバイモルフ型圧電素子56と、バイモルフ型圧電素子56に電圧を印加する電源部57を有している。この撮像装置50は、電源部57によって、バイモルフ型圧電素子56に電圧を印加すると、バイモルフ型圧電素子56は、ほぼC字状に屈曲変位する。従って、バイモルフ型圧電素子56に挟持されるL字部材55も、屈曲する。よって、レンズ51を保持する保持部52を光軸方向に移動させることができる。
【0003】
ここで、バイモルフ型圧電素子である程度大きな移動量を得るには、印加する電圧をあげるか、バイモルフ型圧電素子の全長(スパン)を長くする必要がある。しかし、撮像装置の消費電力の関係上、印加する電圧はむやみに上げることができない。従って、バイモルフ型圧電素子の全長を長くすることが提案されている。バイモルフ型圧電素子の全長を長くすることにより、バイモルフ型圧電素子の変位量が大きくなるからである。
【特許文献1】特開平5−210861
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バイモルフ型圧電素子の全長を長くすると、バイモルフ型圧電素子が支持するオートフォーカス用レンズの重量によっては、バイモルフ型圧電素子自身の弾性変形が大きくなる。しかも、近年CCD(電荷結合素子)の高画素化にともない、撮像装置が備えるレンズの枚数が増加している。このため、オートフォーカス用レンズの重量が重くなる傾向にある。従って、撮像装置を水平方向に対して、上下方向に構えた時にレンズの重量により、レンズが所望位置より移動してしまう場合がある。この結果、ピントが定まらないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的はバイモルフ型圧電素子と加速度センサ又は傾斜角センサを用いた、ピント位置を補正する機能を有した撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、被写体像を所定の位置に結像可能なレンズを備えたレンズユニットと、前記レンズユニットが設けられる固定部材と、前記レンズユニットを前記固定部材に対して光軸方向に移動可能に支持する支持部材と、前記レンズユニットを前記光軸方向に移動させる圧電素子と、前記圧電素子を制御するコントローラ部と、前記レンズユニットの光軸方向の加速度が検知可能な加速度センサと、前記加速度センサからの信号によりレンズユニットの変位量を求める変位量演算手段とを備え、前記コントローラ部は、前記変位量演算手段の出力信号に応じて、前記アクチュエータを制御することのできる撮像装置である。
【0007】
この構成により、レンズユニットの光軸方向の加速度が検知され、レンズユニットの重量や姿勢よる意図しない移動量を補正して、レンズユニットを所定の位置に移動することができる。従って、レンズユニットの重量や傾きに影響されることなくピントの位置を保つことができる。
【0008】
また請求項2に記載の発明は、被写体像を所定の位置に結像可能なレンズを備えたレンズユニットと、前記レンズユニットが設けられる固定部材と、前記レンズユニットを前記固定部材に対して光軸方向に移動可能に支持する支持部材と、前記レンズユニットを前記光軸方向に移動させる圧電素子と、前記アクチュエータを制御するコントローラ部と、前記レンズユニットの水平に対する光軸の傾きが検知可能な傾斜角センサと、前記傾斜角センサからの信号により前記レンズユニットの変位量を求める変位量演算手段とを備え、前記コントローラ部は、前記変位量演算手段の出力信号に応じて、前記アクチュエータを制御する撮像装置である。
【0009】
この構成によっても、レンズユニットの水平に対する光軸方向の傾斜角が検知され、レンズユニットの重量や姿勢よる意図しない移動量を補正して、レンズユニットを所定の位置に移動することができる。従って、レンズユニットの重量や傾きに影響されることなくピントの位置を保つことができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記加速度センサは、前記レンズユニット又は前記固定部材に設けられている撮像装置である。この構成により、設計上の自由度を高くすることができる。また、レンズユニットの加速度を正確に検出することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記傾斜角センサは、前記レンズユニット又は前記固定部材に設けられている撮像装置である。この構成により、設計上の自由度を高くすることができる。また、レンズユニット又は固定部材の加速度を正確に検出することができる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記圧電素子は、バイモルフ型圧電素子である撮像装置である。この構成により、バイモルフ型圧電素子の弾性係数と、レンズユニットの重量と、加速度センサ又は傾斜角センサの出力によって、意図しない移動量を簡単に計算することができる。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記支持部材に、平行リンク機構を用いる撮像装置である。この構成により、撮像素子面とレンズユニットのレンズ面は常に平行に保つことができる。
【0014】
請求項7に記載の発明は、前記支持部材は、ガイドシャフトとガイドスリーブである撮像装置である。この構成によっても、撮像素子面とレンズユニットのレンズ面は常に平行に保つことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、バイモルフ型圧電素子と加速度センサ又は傾斜角センサを用いて、ピント位置を補正する機能を有した撮像装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明に係る撮像装置の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本実施形態に係る撮像装置20の構成図と、撮像装置20の制御方法を示した簡単なブロック図である。図2は、撮像装置20の正面図である。本実施形態における撮像装置20は、図1に示すように、レンズ1、レンズ枠2、固定筒3、レンズ枠支持部材4、加速度センサ5、バイモルフ型圧電素子6、撮像素子7、加速度センサドライバ8、アンプ9、変位量演算手段10、レンズ移動指示手段11、コントローラ12、圧電素子ドライバ13を備える。
【0018】
レンズ1は、1又は複数のレンズで構成されている。レンズ枠2は、レンズ1を支持するように構成されている。固定筒3は、少なくともレンズ枠支持部4、バイモルフ型圧電素子6、撮像素子7を設けている。レンズ枠支持部4は、長さが等しい一対のレバー4A、4Bで構成される。レバー4A、4Bは、一端はレンズ枠2に、他端は固定筒3に設置され、それぞれ回動可能に接続されている。また、レバー4A、4Bは平行に設置されており、平行リンク機構を構成している。バイモルフ型圧電素子6は、厚み方向に分極された2枚の圧電素子を張り合わせた構造になっている。バイモルフ型圧電素子6は、長手方向の一端は固定筒3に固定され、他端はレンズ枠2の係り止め部2A、2Bに係合されている。ここで、バイモルフ型圧電素子6は、電圧を印加すると自由端がほぼ光軸方向に曲がり変形する。従って、バイモルフ型圧電素子6に電圧を印加することによって、レンズ1を光軸方向に移動させることができる。尚、バイモルフ型圧電素子6は、無通電のときは、無限遠の位置に設定される。撮像素子7は、レンズ2により結像された被写体像の光を電気信号に変換する。加速度センサ5は、レンズ枠2に固設されていて、光軸方向の加速度を検知する。加速度センサ5については、詳しくは後述する。
【0019】
加速度センサドライバ8は、加速度センサ5に電源を供給する。アンプ9は、加速度センサ5からの出力信号を増幅する。変位量演算手段10は、アンプ9からの出力信号に応じて重力によるレンズ枠2の移動量と移動方向を演算し、その結果をコントローラ12に出力する。レンズ移動指示手段11は、オートフォーカス撮影時あるいはマニュアル撮影時に、撮影者の意図に従ってレンズを所定量移動するよう指示する。コントローラ12は、レンズ移動指示手段11と変位量演算手段10からの入力に応じて、最適なレンズ移動量を演算し移動を指示する。圧電素子ドライバ13は、コントローラ12からの出力信号に応じて、バイモルフ型圧電素子6に電圧を印加する働きをする。このような構成で、撮影者は、レンズ1を光軸方向に移動させ、ピントの調整を行う。
【0020】
次に、本実施形態の作用について説明する。図3は、撮像装置20の傾きと、地面の垂直方向及び水平方向の関係を簡単に示した図である。地面に対して垂直方向をY軸、水平方向をX軸とする。撮像装置20の光軸21方向をx軸とし、光軸21方向に垂直方向をy軸とする。図3に示すように、垂直方向に働く重力加速度を22とし、光軸21方向に働く重力加速度を23とする。ここで、光軸21の水平面に対する傾きをθxとし、レンズ1とレンズ枠2の合計の重量をmとし、バイモルフ型圧電素子6の弾性係数をk、バイモルフ型圧電素子6の変位量をδ、垂直方向に働く重力加速度をGとし、光軸21方向に働く重力加速度をAxとすると、重力とバイモルフ型圧電素子6の弾性力のつりあいは次式で表される。但しレンズ枠支持部4との間の摩擦はゼロと仮定する。
【0021】
【数1】

したがってバネの変位量δは、次式で求められる。
【0022】
【数2】

ここで、重力加速度Gとの関係を次式で示す。
【0023】
【数3】

すなわち、撮像装置20の光軸21方向の加速度を測定することで、光軸21が傾いた事と、それに伴うバイモルフ型圧電素子6の変位量δが求まる。そしてバイモルフ型圧電素子6を、同じ変形量で逆方向に変形させることで、位置の補正を行うことができる。
【0024】
例えば、撮像装置20の光軸が水平(θx=0)である場合について、以下に説明する。加速度センサ5は、X軸の加速度を検出する。θx=0の場合、(2)の式から、X軸加速度Axは「0」である。従って、加速度センサ5は、X軸加速度Axを「0」として、アンプ9を介して、変位量演算手段10に信号を送信する。変位量演算手段10は変位量δを「0」としてコントローラ12へ出力する。コントローラ12は、変位量δが「0」なので、レンズ移動指示手段11からの指示どおりの移動量を駆動するべく、圧電素子ドライバ13に対して、バイモルフ型圧電素子6に所定の電圧を印加するよう指示を出す。電圧が印加されるとバイモルフ型圧電素子6は曲がり変形する。この変形により、バイモルフ型圧電素子6の自由端に係合している係り止め部2A、2Bを介してレンズ枠2に力を伝える。この結果、平行リンクを構成している支持部4に支持されたレンズ枠2は、光軸方向に所定量移動することになる。
【0025】
次に、撮像装置20の光軸がθx傾いている場合について、以下に説明する。θx傾いている場合、(2)の式から、X軸加速度Axは「Gsinθx」である。従って、加速度センサ5は、X軸加速度Axを「Gsinθx」として、アンプ9を介して、変位量演算手段10に信号を送信する。変位量演算手段10は(1)の式から変位量を演算する。従って、変位量演算手段10は、変位量δを「(m/k)Gsinθx」としてコントローラ12へ出力する。コントローラ12は、レンズ移動指示手段11による移動量に、変位量演算手段10の変位量を加減算した移動量を駆動するべく、圧電素子ドライバ13に対して、バイモルフ型圧電素子6に所定の電圧を印加するよう指示を出す。その結果、レンズ枠2は水平に対する光軸の傾きによる変形量を補正して移動することが可能になる。従って、撮像装置20は、撮像装置20の傾きに関わらず、常にピントを正しく保持することが可能となる。
【0026】
このように、レンズ1及びレンズ枠2の光軸方向の加速度が検知され、レンズ1及びレンズ枠2の重量や姿勢よる意図しない移動量を補正して、レンズ1及びレンズ枠2を所定の位置に移動することができる。従って、レンズ1及びレンズ枠2の重量や傾きに影響されることなくピントの位置を保つことができる。加えて、バイモルフ型圧電素子6の弾性係数と、レンズ1及びレンズ枠2の重量と、加速度センサ又は傾斜角センサの出力によって、意図しない移動量を簡単に計算することができる。更に、平行リンク機構により、撮像素子7とレンズ1を常に平行に保つことができる。
【0027】
尚、レンズ枠支持部4は図1に示すような平行リンク機構に限らず、固定筒3に固設されたガイドシャフトに、レンズ枠2に設けられたガイドスリーブが摺動するといったガイドシャフト−ガイドスリーブ機構でも良い。また、加速度センサ5はレンズ枠2に固設しているが、これに限らず固定筒3に固設していてもよい。
【実施例2】
【0028】
次に、実施例2の撮像装置について説明する。実施例2の撮像装置と、実施例1の撮像装置20との相違は、実施例1の撮像装置20には、加速度センサ5が用いられていたのに対し、実施例2の撮像装置は、傾斜角センサを用いる点で異なる。その他の構成は、実施例1の撮像装置と同様である。傾斜角センサから求まる撮像装置の水平に対する傾き角度と、(2)式から加速度Axを求めても、同様の効果を得ることが可能である。
【0029】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、当業者にとっては、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲内で、さらに、種々の態様で実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施例に係る撮像装置の簡単な構成を示した図である。
【図2】本実施例に係る撮像装置の正面図である。
【図3】撮像装置の傾きと、地面の垂直方向及び水平方向の関係を簡単に示した図である。
【図4】従来の撮像装置の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 レンズ
2 レンズ枠
2A、2B 係り止め部
3 固定筒
4 レンズ枠支持部
4A、4B レバー
5 加速度センサ
6 バイモルフ型圧電素子
7 撮像素子
8 加速度センサドライバ
9 アンプ
10 変位量演算手段
11 レンズ移動支持手段
12 コントローラ
13 電素子ドライバ
20 装置
21 光軸
22 重力加速度
23 重力加速度の光軸方向成分



【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体像を所定の位置に結像可能なレンズを備えたレンズユニットと、
前記レンズユニットが設けられる固定部材と、
前記レンズユニットを前記固定部材に対して光軸方向に移動可能に支持する支持部材と、
前記レンズユニットを前記光軸方向に移動させる圧電素子と、
前記圧電素子を制御するコントローラ部と、
前記レンズユニットの光軸方向の加速度が検知可能な加速度センサと、
前記加速度センサからの信号により前記レンズユニットの変位量を求める変位量演算手段とを備え、
前記コントローラ部は、前記変位量演算手段の出力信号に応じて、前記圧電素子を制御することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
被写体像を所定の位置に結像可能なレンズを備えたレンズユニットと、
前記レンズユニットが設けられる固定部材と、
前記レンズユニットを前記固定部材に対して光軸方向に移動可能に支持する支持部材と、
前記レンズユニットを前記光軸方向に移動させる圧電素子と、
前記圧電素子を制御するコントローラ部と、
前記レンズユニットの水平に対する光軸の傾きが検知可能な傾斜角センサと、
前記傾斜角センサからの信号により前記レンズユニットの変位量を求める変位量演算手段とを備え、
前記コントローラ部は、前記変位量演算手段の出力信号に応じて、前記圧電素子を制御することを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
前記加速度センサは、前記レンズユニット又は前記固定部材に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記傾斜角センサは、前記レンズユニット又は前記固定部材に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記圧電素子は、バイモルフ型圧電素子であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記支持部材は、平行リンク機構であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記支持部材は、ガイドシャフトとガイドスリーブであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−209029(P2006−209029A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24538(P2005−24538)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】