説明

撮像装置

【課題】光学フィルタ類の保持機構のさらなる薄型化を図ることができる撮像装置を提供する。
【解決手段】CCD22の保護ガラス23上にCCDプレート24を載せ、このCCDプレート24上にCCDマスク26、光学LPF27、光学LPFカバー28を順に積層し、CCDプレート24と光学LPFカバー28をビス29により締結するとこでユニット化し、ユニットとして、位置及び傾き調整をできるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関し、特に、鏡筒内での撮像素子の固定技術に特徴のある撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CCDやCMOSのような撮像素子を用いて、撮影光学系によって結像された被写体象を電気信号に変換する電子スチルカメラ、いわゆるデジタルカメラが普及している。これら撮像素子には、人間の目には見えない赤外光に対して感度を持つものがあり、赤外光による画質の低下を防止するために、撮影光学系内部に赤外カットフィルタを配置した撮像装置がある。
【0003】
また、撮像素子の画素ピッチによって決まるサンプリング周波数を含む被写体を撮像した場合に発生する偽色やモアレによる画質低下を防止するために、以下の撮像装置も知られている。即ち、複屈折現象を呈する水晶により作られた光学ローパスフィルタを撮像素子の被写体側前面に配置した撮像装置である。
【0004】
これら赤外カットフィルタまたは光学ローパスフィルタまたはその両方(以降、光学フィルタ類と称する)を保持するために、以下の構造が提案されている。即ち、撮影光束が通る開口を有するとともに光学フィルタ類を大きくずれること無く位置決めするための窪みを有する地板に対して、光学フィルタ類をはめ込み、接着固定する構造である。
【0005】
ところで、撮像素子表面にごみが付着した場合、そのごみの部分は光が当たらないため、被写体像にごみの影が入り、撮影画像にごみの影が写り込んでしまう問題がある。さらに、撮像素子は、通常撮影レンズの内部に位置しており、ユーザーは撮像素子を掃除することできない。従って、撮影画像にごみの影が写り込まないようにするためには、ごみが撮像素子に付かないような構造にする必要がある。そのため、撮像素子は通常その前面が保護ガラスにより覆われている。
【0006】
しかし、ごみが大きい場合は、保護ガラス面にごみが付いても画像にごみが写り込んでしまう場合がある。そこで、光学フィルタ類と保護ガラスの間を密閉された空間とすることで、ごみが保護ガラス表面に付着しないようにした撮像装置がある。
【0007】
さらには、撮影光学系の製造誤差を吸収するために、撮像面の位置及び姿勢を微調整する機構が必要とされる場合がある。また、光学フィルタ類や撮像素子の組み立て性の向上は、組立コスト削減のため常に求められるものである。加えて、撮像装置の携帯性を向上するために、光軸方向への光学系の厚さは薄い方が良い。
【0008】
保護ガラスと光学フィルタ類の間を密閉した構造を有し、かつ、それら構造が占める光学系の光軸方向への厚さを薄くするために、撮像素子及び光学フィルタ類を鏡筒に保持する機構については従来から種種の提案がなされている。
【0009】
例えば、特許文献1によれば、光学フィルタ類を保持する薄板状の金属部材からなるローパスフィルタホルダを配置し、光軸方向への厚さを薄くしている。また、特許文献2によれば、光学フィルタ類と撮像素子を接着固定することにより保持している。
【特許文献1】特開2006−67356号公報
【特許文献2】特開2005−12334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1記載の技術では、撮像素子の背面に撮像素子を保持するCCDプレートが配置されているので、CCDプレートの厚さ分だけ光軸方向への厚さが厚くなっている。
【0011】
また、上記特許文献2記載の技術では、光学フィルタ類と撮像素子とを接着しているが、接着剤が硬化するまで、光学フィルタ類を保持しなければならないので組み立て性が悪かった。また、分離が困難であるので、仮に、光学フィルタ類か撮像素子のどちらかが破損した場合には、破損していない方の部品も損品となり、廃棄しなければならない。さらに、特許文献1と同様に、撮像素子の背面に撮像素子を保持するCCDプレートが配置されているので、CCDプレートの厚さ分だけ光軸方向への厚さが厚くなっている。
【0012】
さらに加えて、特許文献1と特許文献2の両方において、撮像面の光軸方向の位置及び光軸に対する傾きを調整することはできない。
【0013】
本発明の目的は、光学フィルタ類の保持機構のさらなる薄型化を図ることができる撮像装置を提供することにある。加えて、光学フィルタ類と撮像素子の組み立て性を良くするとともに、光学フィルタ類と撮像素子を容易に分離可能とすることができる撮像装置を提供することにある。さらに加えて、撮像素子の光軸方向への位置や光軸に対する傾きを調整することができる撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、撮像光学系を通過した被写体像を電気信号に変換する撮像素子と、被写体光束が通過する光学素子と、前記撮像素子と前記光学素子の間に配置されるとともに、被写体光束が通過する開口を有し、前記撮像素子を保持する保持部材と、前記保持部材との間に前記光学素子を挟んで配置され前記光学素子を保持する弾性部材とを備え、前記弾性部材と前記保持部材を締結し、撮像素子ユニットを構成することを特徴とする撮像装置。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、光学フィルタ類の保持機構のさらなる薄型化を図ることができる撮像装置を提供することができる。また、光学フィルタ類と撮像素子の組み立て性を良くするとともに、光学フィルタ類と撮像素子を容易に分離可能とすることができる。また、撮像素子の光軸方向への位置や光軸に対する傾きを調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係る撮像装置としてのデジタルカメラにおける沈胴状態の外観斜視図である。
【0018】
図1において、デジタルカメラは、撮影レンズ1、電源ボタン2、モードダイヤル3、レリーズボタン4を備える。
【0019】
撮影レンズ1は、電源がオフ状態で撮影に供せず、保管するための状態であるところの沈胴状態にある。電源ボタン2を操作することにより、デジタルカメラの電源をオンにすることができる。さらに、モードダイヤル3の操作により使用者は撮影モードを選択することができる。
【0020】
図2は、本発明の実施の形態に係る撮像装置としてのデジタルカメラにおける撮影状態の外観斜視図である。
【0021】
図2において、一群ホルダ11、一群案内筒21が示される。撮影モード状態では、レリーズボタン4を押圧操作することにより、撮影レンズ1を通して、被写体を撮像することができる。
【0022】
図3は、本発明の実施の形態に係る撮像装置としてのデジタルカメラにおける沈胴状態の断面図である。
【0023】
以下、その構成を説明する。
【0024】
図3において、第一群レンズ10は一群ホルダ11に保持される。同様に、第二群レンズ12は二群ホルダ13に保持され、第三群レンズ14は三群ホルダ15に保持され、第四群レンズ16は四群ホルダ17に保持される。
【0025】
カム環18は筒状を成し、図示しないが、その内面には二群ホルダ13及び三群ホルダ15を光軸方向へ変位させるカム溝を有する。また、二群ホルダ13及び三群ホルダ15にはカムフォロワーピンが植設されており、それぞれカム環18の内面のカム溝にカム係合する。さらに、カム環18の外面には、一群ホルダ11を光軸方向へ変位させるカム溝を有しており、一群ホルダ11に植設されたカムフォロワーピンがこのカム溝にカム係合する。
【0026】
固定筒19は、その内面にカム環18を光軸方向へ繰り出すカム溝を有する。駆動環20は、デジタルカメラの電源オン及び撮影モードへの移行に伴い、駆動源からの駆動力により光軸周りに回転する筒部材である。カム環18は駆動環20に係合しており、駆動環20の回転とともに回転する。その際に、カム環18は固定筒19のカム溝に倣って、回転しながら光軸方向へ進退する。
【0027】
一群案内筒21は、一群ホルダ11を光軸方向へ進退可能に支持するとともに、撮影レンズ1の繰り出し時に一群ホルダ11と固定筒19の間にできる隙間を隠す役割を有する、外観に現れる部品である。
【0028】
第四群レンズ16は、被写体距離に応じてねじ送り機構により光軸方向へ進退し、撮像面に被写体のピントを位置させる機能を有する、いわゆるフォーカシングレンズである。
【0029】
図3においては、撮影レンズ1は沈胴状態にあり、沈胴時の鏡筒長さを縮めるために、第四群レンズ16は最も撮像面に近い位置に移動している。
【0030】
上記第一群レンズ10、第二群レンズ12、第三群レンズ14及び第四群レンズ16からなる撮像光学系を通して結像した被写体像は、撮像素子であるところのCCD22において電気信号に変換される。CCD22には、その被写体側前面(図の左側面、撮像光学系側前面)にCCD22を保護する保護ガラス23が固着されている。また、CCD22の背面には不図示であるがCCD22への電気的な配線となるフレキシブルプリント基板が接続される。
【0031】
CCDプレート(保持部材)24は金属板からなる部品で、保護ガラス23上に当接するように載置され、その状態でCCD22に接着固定される。そして、CCDプレート24は、CCDホルダ(撮像素子ホルダ)25の所定位置にビスにより締結される。
【0032】
CCDプレート24の被写体側前面には、CCDマスク26、光学LPF(光学LOW PASS FILTER)(光学素子)27が順に積層される。そして、光学LPF27の被写体側前面にはLPFカバー28が配置され、LPFカバー28は、CCDプレート24に後述するビス29により固定される。次に、図4及び図5により、CCD22周りの構成についてより詳細に説明する。
【0033】
図4は、図3におけるCCD周りの部品の分解斜視図である。図5は、図3におけるCCD周りの部品の断面図である。
【0034】
CCDプレート24には被写体光束が通過する開口24Aが設けられている。さらに、接着穴24Bが設けられ、この接着穴24Bの中に、図5に示すように接着剤30が塗布され、CCDプレート24はCCD22に接着固定される。
【0035】
CCDプレート24の被写体側前面にはCCDマスク26が隙間無く当接するように配置される。但し、CCDマスク26は、被写体像以外の光線が撮像面に入り込みゴーストとなることを防止するものであり、撮影光学系によっては不要となることもある。
【0036】
CCDマスク26のさらに被写体側前面には、光学LPF27がCCDマスク26に密着するように配置される。このような順番で各部品を配置することにより、保護ガラス23と光学LPF27の間がCCDプレート24により密封されることになり、保護ガラス23の表面にごみが付着しなくなるので、被写体像に付着したごみの影が映りこむのを防止できる。尚、CCDマスク26が不要な撮影光学系の場合には、CCDプレート24の被写体側前面に直接光学LPF27を配置することになる。
【0037】
ところで、CCDプレート24には、光学LPF27の設置位置をその外形により決めるための位置決めダボ24Cが設けられており、この位置決めダボ24Cを利用して光学LPF27を配置する。また、CCDマスク26には、位置決めダボ24Cに嵌合する穴が開いており、この穴と位置決めダボ24Cを嵌めあうことにより、CCD22に対するCCDマスク26の位置を決めることができる。
【0038】
尚、本実施の形態においては、保護ガラス23の被写体側前面に位置する光学素子を光学LPF27としているが、赤外カットフィルタまたは赤外カットフィルタと光学LPFの積層部品であっても良い。さらには、何らフィルタ作用を有しない平行平板ガラスであっても構わないし、パワーを持つ光学レンズであっても構わない。
【0039】
光学LPF27の前面に配置されるLPFカバー28は薄い金属板(弾性部材)からなる。このLPFカバー28は、反射防止のため黒色のような光の反射率の低い色で塗装またはメッキされている。ビス29により、CCDプレート24とLPFカバー28は締結される。
【0040】
これにより、CCD22、CCDプレート24、不図示のフレキシブルプリント基板、CCDマスク26、光学LPF27及びLPFカバー28が一体となる。以降、この一体部品をCCDユニット(撮像素子ユニット)と称する。
【0041】
尚、ビス29を外すことによりCCDユニットを各部品に分解することができるので、例えば、密閉空間にごみが入っていた場合、または保護ガラス23表面が汚れていた場合には、CCDユニットを分解し、ごみを取り除き、あるいは表面を清掃することができる。
【0042】
尚、LPFカバー28は前述したが薄い金属板からできているので、例えば、製造誤差により厚さの厚い光学LPF27が組み込まれたときでも、LPFカバー28が弾性変形し、光学LPF27に過度の圧力が加わることは無い。
【0043】
また、図5から明らかなように、CCD22の背面(被写体側前面と反対側の面、図の右側面)に、CCDプレート24が配置されない。かつ、薄い金属板からなるLPFカバー28により光学LPF27を保持するので、CCDユニットの光軸方向への厚さを薄くすることが実現される。
【0044】
CCDユニットはCCDホルダ25にビスにより締結される。また、CCDホルダ25には固定筒19が締結され、さらに、CCDホルダ25はデジタルカメラ本体に締結される。CCDユニットの最被写体側には薄い金属板からなるLPFカバー28が配置されているので、図3に示すように、第四群レンズ16と光学LPF27の間隔を小さくすることができる。
【0045】
図6は、図3におけるCCDユニットとCCDホルダの取り付け構造を説明するための分解斜視図である。
【0046】
図6において、CCDユニットとCCDホルダの組立時には、まず、3つの圧縮ばね31をそれぞれCCDホルダ25の有底穴25Aに入れる。次に、CCDユニットを、CCDホルダ25の位置決めダボ25Bをガイドとして利用し、CCDホルダ25に組み込む。このとき、圧縮ばね31は、CCDプレート24に当接することにより、CCDユニットをCCDホルダ25から離間する方向へ付勢することになる。
【0047】
この状態で、CCDビス32をCCDユニットのCCDプレート24側からCCDホルダ25にねじ込むことにより、CCDユニットはCCDビス32に追従する。これにより、CCDビス32のねじ込み量を変化させることでCCDユニットの光軸方向の位置を微調整することができる。また、位置決めダボ25BのCCDユニットへの嵌合を緩くすることで、3本のCCDビス32のそれぞれのねじ込み量を変えて、CCDユニットの傾きを微調整することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態に係る撮像装置としてのデジタルカメラにおける沈胴状態の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る撮像装置としてのデジタルカメラにおける撮影状態の外観斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る撮像装置としてのデジタルカメラにおける沈胴状態の断面図である。
【図4】図3におけるCCD周りの部品の分解斜視図である。
【図5】図3におけるCCD周りの部品の断面図である。
【図6】図3におけるCCDユニットとCCDホルダの取り付け構造を説明するための分解斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
1 撮影レンズ(撮像光学系構成要素)
2 電源ボタン
3 モードダイヤル
4 レリーズボタン
10 第一群レンズ(撮像光学系構成要素)
11 一群ホルダ
12 第二群レンズ(撮像光学系構成要素)
13 二群ホルダ
14 第三群レンズ(撮像光学系構成要素)
15 三群ホルダ
16 第四群レンズ(撮像光学系構成要素)
17 四群ホルダ
18 カム環
19 固定筒
20 駆動環
21 一群案内筒
22 CCD(撮像素子)
23 保護ガラス
24 CCDプレート(保持部材)
24A 開口
24B 接着穴
24C 位置決めダボ
25 CCDホルダ(撮像素子ホルダ)
25A 有底穴
25B 位置決めダボ
26 CCDマスク
27 光学LPF(光学素子)
28 LPFカバー(弾性部材)
29 ビス
30 接着剤
31 圧縮ばね
32 CCDビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系を通過した被写体像を電気信号に変換する撮像素子と、
被写体光束が通過する光学素子と、
前記撮像素子と前記光学素子の間に配置されるとともに、被写体光束が通過する開口を有し、前記撮像素子を保持する保持部材と、
前記保持部材との間に前記光学素子を挟んで配置され前記光学素子を保持する弾性部材とを備え、
前記弾性部材と前記保持部材を締結し、撮像素子ユニットを構成することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記撮像素子の前記撮像光学系側の前面には、保護ガラスが設けられることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像素子ユニットを撮像素子ホルダに圧縮ばねにより取り付けることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−283358(P2008−283358A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124446(P2007−124446)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】